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機器分析化学3.核磁気共鳴(NMR)法(1)
2011年度
5.核磁気共鳴スペクトル法(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)
キーワード 原子核 磁気 共鳴
ⅰ) 原子核 (陽子+中性子)原子番号(=陽子数)質量数(=陽子数+中性子数)
もし原子番号も質量数も偶数の場合 その原子核はスピンを持たない。そうでない場合(どちらか、あるいは一方が奇数)は核スピンを持つ。
例) 水素原子核(proton) 1H spinあり炭素(carbon) 12C spinなし
13C spinあり窒素 14N spinあり
15N spinあり
Spin 自転 角運動量 h/2 → 1/2 → 磁気モーメント(電子の場合は磁石の原因)
Spinとは?
角運動量のベクトル表示
角運動量の性質
I
MR
R=I x M (ベクトル積)
歳差運動
物質中の各核スピンは普段はバラバラの方向を向いているが、磁場が加わることにより磁場方向を中心とする歳差運動を引き起こす。
B0がない時
B0がある時
I=-1/2
I=1/2
B0
量子論的には
Upスピンの数>Downスピンの数(Boltzman分布)
磁化の原因磁化の原因(巨視的磁化)
00 B
N
S
巨視的磁化(スピンの集合)
この磁化もスピンと同じ力学的振る舞いをする!
N
S
試料
振動磁場が発生
y
z
x
RF
xy平面内の回転磁場( )
x
y
0
0
0
B0
y
z
x
B1
0
y
z
x
回転座標系の導入
実験室系
y’
z’
x’
回転系(外部磁場がゼロになる)
B0B0=0M0 M0
y
z
x
B1
0
y’
z’
x’
B0=0M0
B1
回転系(回転磁場がxy平面内の静磁場になる)
M0
y’
z’
x’
M0
B1
もしB1がとx’と一致したときM0はz’y’平面内で回転運動をする(これは歳差運動)
このときの回転周波数は
1
11
21B
tr
(一回転の時間)
RFをこのようにパルス状に加えるとTp
の間、M0はz’y’平面内を回転する
Tp
11 B
そこでTpを
124
1
BtT rp
のように設定するとM0は90度回転する
112 B
y’
z’
x’B1
y’
z’
x’
y’
z’
x’
これを90度パルスという1
2 2 BT
y
z
x
あたかもy’軸に磁化M0が生じている
これを実験室系に戻すと
y
z
x
誘導起電力=NMR信号
y
z
x
y
z
x
y
z
x
その後
y
z
x
y
z
x
信号の減衰 信号が無くなる
t
S
さらにその後
初期状態
化学シフト(Chemical Shift)
原子核の周りには必ず電子が存在
1s
外部磁場(B0)
遮蔽磁場(Screening Field)
その結果 核の感じる磁場はB=B0(1-Δ)
Δ:電子の磁化率(その原子の化学的環境に依存する。
→化学シフト(ppmオーダー)
CH3ーCH2ーOH
Δ 大 中 小
共鳴周波数が微妙に異なる
化合物の構造を推定できる
X
RF-Synthesizer
Pulse
Modulator
TransmitterPreamplifier
Receiver
(Detector)
Computer
(+ADC)
Reference Signal
Control Bus
LN2
LHe
SC-Magnet
Probehead
Block Diagram of NMR spectrometer
NMR信号の検出(detect)について → 検波
XNMR signal
Reference signal
NMR signal
Reference signal
)/exp()cos()( *
20 TttStS
)cos()( 00 tRtR
ttTtRStRtS 0
*
200 cos)cos()/exp()()(
tttt )(cos)(cos2
1cos)cos( 000
第一項を無視すると
)cos()/exp()()( *
200 TtRStRtS
0
Chemical Shift(化学シフト)分析において、最も重要なinformation
(電子密度)
(CH3)4Si (TMS) = 0ppm
高磁場低磁場 0ppm
CH3CH2OH の 水素(proton)スペクトル
CH3
CH2
OH
は共鳴線の積分3
2
1
スピン結合ーーー共鳴線の構造
CH3 CH2
OH
ここの三つのプロトンは磁気的に等価
ここの二つのプロトンも磁気的に等価
実際は
ここCH3の1s電子の存在確率がここCH2にもある
磁場
CH2のスピンの配向による小さな磁場をCH3のプロトンは感じる!!!
スピンは磁場中では上向き(↑)か下向き(↓)の二通り(量子化)
大きい磁場を感じる磁場はキャンセルして感じない
小さい磁場を感じる
X X
本来の共鳴点 本来の共鳴点
合わせると
1:2:1の三重線(triplet)
1
2
1
CH3 CH2
一方CH2に注目すると 相手はCH3
つまりスピンが三つ
磁場の強さ1:3:3:1の四重線(quartet)
1
3 3
1
この間隔は等しくなる(結合定数:J)
スピン結合(スカラーカップリング) 結合定数~数Hz
ーCH2-OH はO原子でスピン結合が非常に小さくなる ので
CH3CH2OH
CH3CH2OHのプロトンスペクトルは
プロトン共鳴線の微細構造は隣の炭素についている水素の数で決まる!!
重要
スピン結合定数はコンフォメーションに依存する
H
H’
φ
φ
J
これは、化合物の局所的な構造を探るためには重要な情報となる!
ここで、例題MSG(Mono Sodium Glutamate:グルタミン酸ナトリウム)のProton NMR スペクトルはどのような風になるか予測してみる。
NH2 -CH(α)-CH2(β)-CH2(γ)-COONa
NH2
ⅰ)化学シフトα位置にはCOOHとNH2が結合β位置はCHとCH2が結合γ位置はCOONaが結合
化学シフトテーブルから、β位置のCH2が最も高磁場にシフトしていると考えられる。αとγを比べるとαはメチンであることとアミドが結合していることから、αの方が低磁場シフトすると考えられる。
CH2(β)CH2(γ)CH(α)
ⅱ)次にスピン結合は?
CH(α)はとなりにCH2(β)があるためトリプレットになる。CH2(γ)も隣がCH2(β)なので、これもトリプレットになる。問題はCH2(β)である。これは両側の影響を受ける。
CH(α)-CH2(β)-CH2(γ)
Doublet(J1) Triplet(J2)
CH(α)との結合でDoublet(J1)
次にCH2(γ)との結合でTriplet(J2)
合わせると
J1
J2
CH2(β)CH2(γ)CH(α)
最終的には
NH2 -CH(α)-CH2(β)-CH2(γ)-COONa
COOH
実際の実験試料を重溶媒に溶かすD2O, CDCl3,(CD3)2CO,C6D6・・・・・・試料管に入れる→ 測定
重溶媒の役割は二つⅰ)溶媒のプロトン信号を出さない(100%はないので、多尐は出る)ⅱ)磁場ロック(単に 「ロックをかける」 という=重水素のNMR信号を使う。)
測定するためのパルスプログラムを選択→測定(積算)→フーリエ変換→スペクトルの吟味
シングルパルス法(最もシンプルなプログラム)
RF-PULSE NMR-Signal(Free Induction Decay:FID)
Fourier-Transformation
ここでフーリエ変換 ふたたび
dttfeF ti )(2
1)(
だと大変なのでコサイン変換だけを考える。
dttftF )(cos2
)(0
ここの部分をよく見ると
x
=
=
=
=
=
5
0
0
値
0
0
s
1
2
3
4
5
1 2 3 4 5
s
一般にFIDは
という形をしている。
*
20 exp)cos(),(
TttStS
振動部分 減衰部分
FT→
ω
線幅
φは?
φは? 位相
FT→
13C-NMRについて問題点 1)感度が低い(1.1%)
2)水素とのスピンカップリング3)スピン格子緩和時間が長い
CH3 CH2
OH
CH3は quartet
CH2は triplet
CHは doublet
Cは singlet
Decoupling
2)スピンカップリングに対する解決策
13C
1H
プロトン共鳴周波数のRF(ノイズ)を照射
高速回転・・・・時間平均するとプロトンスピンが作る磁場はゼロ
1H
13C
CH2(デカップリング無し)
CH2(デカップリング有)
13Cの感度も上がる(NOE:Nuclear Overhouser Effect)
MSGの13Cスペクトル
200 150 100 50 PPM
デカップリング無し
デカップリング有
NH2 -CH(α)-CH2(β)-CH2(γ)-C(2)OONa
C(1)OOH
C(1) C(2)
CH2(β)CH2(γ)
CH(α)
NOEにより感度アップ
13Cの化学シフト・・・・・ 1H
と同じような動き
0200
CHn--C=C-
-C=O
07
13C
1H
100
ベンゼン環の置換基分布について
1置換
X c
b
ba
a
化学シフトを σa>σb>σcと仮定したとき
7ppm
ab
c
120ppm
13C
1H
a b
cX
X
b
b a
a
2置換の場合(オルト)
X
X
b’
ba’
aY
120ppm
13C
120ppm
X Ya a’ b b’
X a b
X
b
c
ab
X
X
b’
c
ab
Y
メタの場合
120ppm
13C
X ab
c
120ppm
X a b cb’
X
a
X
X
a’
aa
パラの場合
120ppm
13C
X
a
120ppm
X
a a’
aa
a
Y
a’
Y
X
Z
ab
c
3置換の場合
Y
X
Z
a
b
c
Y
120ppm
X
a b
Y
c
Z
120ppm
a=b=c
X=Y=Z
X
a b
Y
c
Z
120ppm