海へ～ toward the sea ～520×520mm／木版／ 2014

マリエンバートにて520×520mm／木版／ 2009

［コメント］

版画では常に「技法」が問われますが、どんな技法

も作り手の従者でなければなりません。

こちらが技法に囚われてはならないのです。

大切なことは、まず何を創りたいか、次にそのため

には自分にとって何が必要かを見極めることです。

私は絵が描きたかった。なのに、描くということか

らもっとも遠い位置にあると思われる木版を選びま

した。

筆で、あるいはニードルで描けば造作もないことが、

彫刻刀では思うようにならない。美しい線ひとつ刻

むことすらできない。ならば、どうすれば思い通り

に表現できるのか。そのように制限された中で模索

し、工夫を重ね、自分に最適のやり方を見出してい

く。技法とは本来、個々の内側から発生するものを

具現化するための手段です。

自分だけのものを見つけることができたとき、それ

はとても幸福なマリアージュとなります。

1988 年 多摩美術大学大学院美術研究科修了（木版画専攻）

　　　　　第 56 回日本版画協会展　協会賞受賞

1989 年 平成元年度文化庁芸術家国内研修員

2001 年 平成 12 年度文化庁買上優秀美術作品

2006 年 第 14 回ソウル国際版画ビエンナーレ　買上賞受賞

岩切　裕子　IWAKIRI Yuko