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パルス管の内圧による変形 2002.01.23 KEK 1 内圧による伸び 圧を けるパルス パルス を引き す。 R o R i Lp ける き、 ける πR 2 i p π (R 2 o R 2 i ) あるから、 x 、ヤング E して ように められる。 Hook’s lawx L = R 2 i p E(R 2 o R 2 i ) LRp 2Et ただし、 して  t R o R i R o orR i R R o R i x = LRp 2Et 2 胴の膨らみによる歪み-Poisson 比の効果 圧によって らむ。 p わって R R +∆R らむ きガスが に対してする pV f びを l すれ f l = pV より f = pRL tL あるから 引っ σ = f tL = pR t Hook’s law から l/l l l = σ E る。 あれ 、これ Poisson ってい る。したがって れたために こる xL = ν pR Et 1

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パルス管の内圧による変形2002.01.23

KEK 鈴木 敏一

1 内圧による伸び内圧を受けるパルス管の端面に働く全圧力はパルス管を引き伸ばす。

外径Ro、内径Ri、長さ L、の管が内圧 pを受けるとき、管の端面が受ける全圧力:πR2

i p

管壁の断面積:π (R2o − R2

i )

であるから、軸方向の伸び∆x′は、ヤング率をEとして次のように求められる。

Hook’s law:∆x′L

=R2

i p

E(R2o−R2

i )� LRp

2Et

ただし、薄肉として  t ≡ Ro − Ri � RoorRi、R ≡ Ro ≈ Ri

∆x′ =LRp

2Et

2 胴の膨らみによる歪み-Poisson比の効果内圧によって胴が膨らむ。

内圧 pが加わって管径がR → R + ∆Rに膨らむときガスが管の弾性変形に対してする仕事はp∆V。管の周方向の張力を f、伸びを∆lとすれば、f∆l = p∆V より

f = pRL

管壁の厚さ t、長さ Lであるから周方向の引っ張り応力は

σ =f

tL=

pR

t

Hook’s lawから周方向歪み∆l/lは∆l

l=

σ

E

となる。

このとき等方弾性体であれば管長方向の歪みは、これの Poisson比倍で、符号は逆になってい

る。したがって胴が膨れたために起こる長さ方向の縮みは

∆x”

L= −ν

pR

Et

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3 内圧による全変形

先の結果をあわせて、

∆x = ∆x′ +∆x” =

(1

2− ν

)pRL

Et

Landau Lifshitzによると熱力学的要請から、Poisson比の許される範囲は、−1 ≤ ν ≤ 1/2であるが、現実物質では 0 < ν < 1/2。それ故少なくとも一様なパルス管では∆x = 0にはできないが、できるだけ Poisson比が 1/2に近い材料でパルス管を作って∆xを小さく抑えることが考えられる。

ところが、理科年表でしらべると Poisson比が 1/2に近い物質はパルス管材料としては現実味がない。

先の式を体積弾性率 k ≡ E3(1−2ν)

で書き換えれば、

∆x =pRL

6kt

となるので、体積弾性率の大きな物質を探す。これらの中で実際のパルス管として使えるのは鋼かニッケルくらいであろうか。

表 1: 弾性に関する定数 (理科年表より)

物質 E [GPa] ν k [GPa]

ゴム (1.5− 5.0)× 10−3 0.46-0.49 -

ポリエチレン 0.4-1.3 0.458 -

鉛 16.1 0.44 45.8

金 78.0 0.44 217.0

鋼 201-216 0.28-0.30 165-170

Ni 219.2 0.306 187.6

Pt 168 0.377 228.0

WC 534.4 0.22 319.0

パルス管に縦の溝を入れる、あるいは補強を入れて、実効的にポアソン比を大きくするアイデアが出た。これは手計算では難しいので、有限要素法でのシミュレーションを試みる。

4 ANSYS simulation

モデルは、φ40 mm ×200 mm, t=1 mm の管。両端は φ50 mm ×10 mm の円盤で蓋をする。管の肉厚 1mmは実際のパルス管としては厚すぎるとの指摘があるかもしれない。あまり薄く

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すると上手くモデルが作れないので 1mmにとった。それでも手計算とANSYSの計算を比較するには十分である。このような管の一端を固定した場合の振動モードは、通常の構造材(Al合金、SUS、Ti、Ni、で計算)の場合 400 Hz 以上なので、典型的なパルス管冷凍機の圧力変動周期 1Hzに比べて十分高い。したがって、パルス管モデルの応答は静水圧に対して調べれば十分である。内圧は p=2

MPa を加える。Elementは Solid72 、volumeの boolean glueから free meshingでモデルを生成した。境界条件は上端のNodesをDで固定(Translation, Rotation)、下端の変位を調べた。

4.1 手計算との比較

手計算とANSYSの結果の比較は次の表に示す。∆xANSY Sは自由端の蓋の最大変位(中央部)の値。手計算では底板との接続部分の変形を無視しているのだが、約 10%で一致している。

表 2: 手計算とANSYSの計算結果の比較(φ40×200, t=1 直管)

物質 E [GPa] ν k [GPa] ∆xcalc [µm] ∆xANSY S [µm]

SUS 210 0.29 167 8.0 8.3

Al alloy 73 0.335 72.2 18 20

Ti 115.7 0.321 107.7 12 13

Ni 219.2 0.306 187.6 7.1 7.4

WC 534.4 0.22 319.0 4.2 4.2

図 1: 内圧による変形の計算例

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4.2 補強付きの管

パルス管の周囲 60度毎に外径 φ50 mm、内径 φ40 mm、θ =20度の扇形の補強柱を 6本つける。補強柱無しと補強柱付きのパルス管断面積の比は 0.35になる。計算結果は以下の表にまとめた。変形量は確かに減っているが、ほぼ断面積が増えた効果に見える。単純に数値を比べると断面

表 3: 補強柱(od=50 mm, id=40 mm, θ=20 deg, 6本)付きパルス管の伸び、ANSYSの計算結果

物質 E [GPa] ν k [GPa] ∆xANSY S [µm] 補強無しとの∆xANSY Sの比SUS 210 0.29 167 3.2 0.39

Al alloy 73 0.335 72.2 7.7 0.39

Ti 115.7 0.321 107.7 5.1 0.39

Ni 219.2 0.306 187.6 2.8 0.38

WC 534.4 0.22 319.0 1.7 0.40

積増加分より悪い。ANSYS計算からは補強柱で実効的Poisson比を大きくするのはあまり期待できない。単純に補強柱をYoung率の大きな材料で作って管の伸びを抑えるのが有効に思われる。

両端は SUS板、円筒部と補強柱の材料をいくつか変えた結果を次の表にまとめた。Young率

表 4: 補強柱(od=50 mm, id=40 mm, θ=20 deg, 6本)付きパルス管の伸び、ANSYSの計算結果

円筒部 底板 補強柱 ∆xANSY S [µm]

Al alloy SUS SUS 3.2

SUS SUS WC 1.7

Al alloy SUS Ni 3.0

WC SUS SUS 2.8

SUS SUS Ti 4.3

SUS SUS Ni 3.0

SUS SUS Al alloy 5.3

Ni SUS SUS 3.0

Ni SUS Ni 2.8

の大きなWCの補強柱を付けると、∆xANSY S は確かに小さくなる。熱伝導率が小さくYoung

率の大きな材料で補強するのが有利である。

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WCは熱伝導率1 、熱膨張率2 ともに低温でのデータが見つからなかったので正確にはわからない。室温付近の熱膨張率だけを比べると、SUSの約 1/3程度なので、仮に SUSの円筒にWC

の補強を付けて冷却すると冷却後は円筒に引っ張り応力、補強には圧縮応力が残り、駆動ガスの圧力に対しての変形を止める効果が薄れるかもしれない。

Young率(正確には繊維方向の引っ張り弾性率)をみると Zylon(東洋紡)は 270GPaで数値としては SUSの 1.3倍近いのだが、Zylonや ZFRPの繊維方向熱膨張率は負(室温付近で≈ 6×10−6K−1)なので SUSとの熱膨張の差はWCより大きくでる。Zylonの熱伝導率3 は SUS

とほぼ同じで、熱侵入に関しては全てを SUSで作るのと同じになる。

図 2: 補強付き P.T.の計算例。PT=Plates=SUS, 補強=WC

単純なモデルでのANSYS計算の結果ではいまのところ肉厚のパルスチューブを作る、あるいは補強柱で断面積を増やして内圧による伸縮を抑えるしかなさそうである。いずれにしても熱侵入に対しては不利になる。

1 データ(blue book)は 2000◦C付近のみで約 0.5W/cm·K2 室温付近で α � 4 × 10−6K−1

3 H.Fujishiro 他, JJAP 38 (1997) 5633-5637.

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