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基板上の ZnTe エピタキシャル膜の光学的評価 竹内 瀬戸 悟 (石川工業高等専門学校) Optical characterizations of ZnTe epilayers grown on InP substrates Takeuchi Takashi and Satoru Seto (Ishikawa National College of Technology) 1. はじめに テルル化亜鉛(Zn Te) は直接遷移型半導体で、 室温でのバンドギャップが 2.26eV(波長にして 約550nm)であることから高輝度純緑色発光素子 として期待されている。今回はこのZnTe をGaAs 及び InP の基板上(300℃) にエピタキシャル成 長させて今回の実験を行った。これまではよく GaAs 基板上にZnTe が作られてきたが、より格子 定数の違いの小さい InP 基板上での成長で、ZnTe がどのような結晶性を持つのかを検証する。 2. 実験 ZnTe の格子定数は常温で 6.1037[Å ]、GaAs 5. 65 33 [Å]、In Pは 5. 8687[Å ]である。300℃で GaAs やInPの基板上にZnTe を成長させると ZnTe のほうが線熱膨張係数が大きいため、結晶が冷 える過程で ZnTe に引っ張り応力が働く。この引 っ張り応力によって、成長した ZnTe 膜には結晶 欠陥が生じてしまう。この結晶欠陥をフォトル ミネッセンス法や X線解析で調べることによっ て、ZnTe の成長時間(膜厚)とその結晶性の関 係を調べ、各基板上のZnTe の結晶性を比較した。 3. 結果と考察 図 1に見られるように InP 基板上のZnTe の成 長時間が長くなるほど(膜厚が厚くなるほど) バンド端近傍からの励起子発光強度が強くなっ ている。これは界面近傍に発生した結晶欠陥が 厚い膜の表面では目立たなくなったことを意味 している。一方、成長時間の短い薄い膜では、 650nm 付近に結晶欠陥に起因すると思われる深 い準位からの発光が顕著になっている。GaAs 板においても成長時間が長くなるほどバンド端 近傍からの励起子発光強度が強くなった。 次に InP 基板上の ZnTe 薄膜の成長時間と膜中 の歪の関係を調べるため、X線による θ-2θス キャンを用いて各成長時間ごとの格子定数を求 めグラフ化すると図2のような結果が得られた。 この図が下に凹なのはできた結晶が冷える際に 引っ張り応力を受けて結晶が引き伸ばされたた めで、膜が薄いときには弾性歪エネルギーに耐 えられず結晶転位を発生させることによって引 っ張り応力による歪エネルギーを緩和している からと考えられる。また厚い膜の格子定数がバ ルクの格子定数より小さいのは、格子不整合の 大部分が成長温度近傍で緩和されるが、室温ま での冷却過程で ZnTe のほうがより縮むために、 面に水平な方向では引張り歪が加わり、面に垂 直方向には圧縮歪となって膜に加わっているか らと考えられる。 一方 GaAs 基板では InP 基板とは逆に圧縮応力 がかかることが確認された。これはZnTe の結晶 と比べ GaAs の格子定数が小さすぎるため、温度 が下がって ZnTe が縮んでもなお GaAs の格子定 数のほうが小さいためだと考えられる。 これらの結果において8時間の膜ではInPの 歪が0.05688%、G aAsでは0.03903%とGaAsの ほうが膜質がよくなっていることが確認された。 これにより格子定数が近い材料よりも熱膨張係 数が同じような材料を選んだほうが膜質が良く なることがわかった。 Intensity (a. u.) 800 750 700 650 600 550 Wavelength (nm) Growth period: 8 hr 2 hr 1 hr 30 min ZnTe on InP T=11 K He-Cd laser (325 nm) excitation 図1 PL スペクトルの成長時間依存性 6. 096 6. 097 6. 098 6. 099 6. 1 6. 101 6. 102 6. 103 6. 104 6. 105 0. 0 1.0 2.0 3.0 4. 0 5.0 6. 0 7.0 8.0 成長時間[h] ZnTeの格子定数[Å] 測定したZnTeの格子定数 バルクのZnTeの格子定数 図2 InP の成長時間に対する基板に 垂直方向の格子定数の変化

基板上の ZnTe エピタキシャル膜の光学的評価 · Title: ZnTe薄膜の光学的評価に関する研究 Author: takeuchi Created Date: 2/27/2003 5:06:55 AM

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  • ZnTe

    Optical characterizations of ZnTe epilayers grown on InP substrates Takeuchi Takashi and Satoru Seto

    (Ishikawa National College of Technology) 1.

    ZnTe

    2.26eV

    550nm

    ZnTe GaAs

    InP 300

    GaAs ZnTe

    InPZnTe

    2. ZnTe 6.1037[]GaAs

    5.6533[]InP 5.8687[]300

    GaAsInPZnTeZnTe

    ZnTe

    ZnTe

    X

    ZnTe

    ZnTe

    3.

    1InPZnTe

    650nm

    GaAs

    InPZnTe

    X -

    2

    ZnTe

    GaAsInP

    ZnTe

    GaAs

    ZnTe GaAs

    8 InP

    0.05688GaAs 0.03903 GaAs

    Inte

    nsi

    ty (

    a. u

    .)

    800750700650600550

    W avelength (nm )

    G ro w th p erio d : 8 hr

    2 hr1 hr

    30 m in

    ZnTe o n InPT= 1 1 KH e-C d laser (3 2 5 nm ) excita tio n

    PL

    6.096

    6.097

    6.098

    6.099

    6.1

    6.101

    6.102

    6.103

    6.104

    6.105

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0

    [h]

    ZnTe[]

    ZnTe

    ZnTe

    InP

    Optical characterizations of ZnTe epilayers grown on InP substrates