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1 学術情報サービスの ユーザビリティ・デザイン - ユーザーの視点から - 国立情報学研究所 実証研究センター 助手 大向 一輝 講演の概要 現状分析 研究者にとっての学術情報サービス ユーザビリティ・デザインの課題 提案 コミュニティ指向サービスの可能性 自己紹介 大向 一輝(おおむかい いっき) 国立情報学研究所 実証研究センター 助手 研究テーマ 情報共有システム ブログ 人間関係ネットワーク メタデータ セマンティックWeb ヒューマンインターフェイス・検索の専門家ではな 本講演では,いちユーザーの立場から現状分析 おことわり 本講演ではいくつかのサービスを取り上げて説明していき ますが,特定のサービスについての評価を目的としている わけではありません. 研究者にとっての学術情報サービス 文献(情報)を得るための手段 論文 書籍 Webコンテンツ その目的は, 過去の知見を利用するため Stand on the shoulders of giants 自分の研究の「新しさ」を明示的に定義するため 「新しさ」= 自分の発想 ー 過去の知見 研究者にとっての学術情報サービス 過去の知見の網羅性が研究(論文)の信頼性を担保する 学術情報サービスが使いこなせるかどうかは研究者に とって死活問題 網羅性の保証を阻むもの 研究者=情報検索のプロであるとは限らない ユーザビリティの問題 研究環境の根本的な変化 例)境界領域への取り組み 構造的な問題

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学術情報サービスのユーザビリティ・デザイン

- ユーザーの視点から -国立情報学研究所 実証研究センター 助手

大向 一輝

講演の概要 現状分析

研究者にとっての学術情報サービス ユーザビリティ・デザインの課題

提案 コミュニティ指向サービスの可能性

自己紹介 大向 一輝(おおむかい いっき)

国立情報学研究所 実証研究センター 助手 研究テーマ

情報共有システムブログ人間関係ネットワーク

メタデータセマンティックWeb

ヒューマンインターフェイス・検索の専門家ではない本講演では,いちユーザーの立場から現状分析

おことわり 本講演ではいくつかのサービスを取り上げて説明していきますが,特定のサービスについての評価を目的としているわけではありません.

研究者にとっての学術情報サービス 文献(情報)を得るための手段

論文 書籍 Webコンテンツ …

その目的は, 過去の知見を利用するため

Stand on the shoulders of giants 自分の研究の「新しさ」を明示的に定義するため

「新しさ」= 自分の発想 ー 過去の知見

研究者にとっての学術情報サービス 過去の知見の網羅性が研究(論文)の信頼性を担保する

学術情報サービスが使いこなせるかどうかは研究者にとって死活問題

網羅性の保証を阻むもの 研究者=情報検索のプロであるとは限らない

ユーザビリティの問題 研究環境の根本的な変化 例)境界領域への取り組み

構造的な問題

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境界領域研究の例 社会ネットワーク分析

人間関係ネットワークの特性を分析し,コミュニティの発見や重要人物の特定を行う

「スケールフリーネットワーク」の発見 Barabasi, “Dynamics of Random Networks:Connectivity and First Order PhaseTransitions”, Condensed Matter, 1999.

Web上で同じ構造を発見 Nature Science Physical Review…

境界領域研究の例 社会ネットワーク分析

他の分野でのスケールフリーネットワーク構造空港ネットワーク細胞のネットワーク人間関係のネットワーク…

社会学との融合 分析的研究から工学的研究へ

どのように人間関係を作らせるか

境界領域研究の例 セマンティックWeb

Tim Berners-Leeによる新しいWebの提案要素技術の「ケーキ」応用範囲

Web AIエージェントセキュリティモバイルユビキタス…

ある研究者の悩み どこまでチェックすれば研究が成立するのか?

コミュニティに留まっていられない 研究コミュニティや論文誌・雑誌は専門分化することによって情報収集のオーバーヘッドを低減させた 口コミ型情報流通 情報の編集・フィルタリング

コミュニティの外にある情報の収集 コンテキスト不在の論文集合が対象に

自分と同じ興味を持つ人はどこにいるのか 引用・被引用情報だけが頼り

本当に重要な論文だけを読みたい 客観的な重要性とは何か? 主観的な重要性とは何か?

学術情報サービスのプレイヤー 学術情報サービス

公的機関・大学・企業によって整備されたアーカイブ 人手によってクオリティを保証

SCOPUS(Elsevier)・HighWire(Stanford)・GeNii(NII)・JDream(JST)

複数のデータベースから構成されている Webから自動構築されたアーカイブ

Google Scholar・CiteSeer(NEC) 単一のデータベースに格納されている

研究者個人のWebページ 論文ファイルを個人的にアップしている

検索エンジン Yahoo!・Google

「論文を探す」とは 論文を探す

存在することはわかっているが,場所がわからない 論文検索

情報を探す 存在するかどうかがわからない 論文探索

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論文検索 論文のメタデータに基づいて,論文ファイルを探す

タイトル・著者・掲載誌・ページ・年… 完全情報型

すべてのメタデータを知っている場合 学術情報サービスと検索エンジンに差異はない

いつかは見つかる 検索結果に対する信頼性を考慮する必要はほとんどない

不完全情報型 「○○と同じ著者・○○と同じ論文集だったはず」

学術情報サービスと検索エンジンは補完関係 穴埋めを検索エンジンで,論文検索を学術情報サービスで 信頼性の判断が必要となる

ポータル(入口)として検索エンジンが使われる可能性は高い 取り扱っている情報空間が広い 検索結果(出口)は学術情報サービスあるいは個人のWebページ

論文探索 メタデータ不在の検索

何を探しているのかが明確でない 探索の過程ではじめてメタデータが作られる ネットサーフィン型

論文探索の支援こそが学術情報サービス vs. 検索エンジンの主戦場になる? 課題

情報空間の広さユーザビリティ

学術情報サービスの課題 論文探索プロセスにおける主体的な選択・決断のタイミング 探索空間を狭めるような決断をいつ行うか

データベースが分割されている出力が分割されているカテゴリが分割されている分割しない

ラベルの導入 いかに情報技術によって主体的な決断をぎりぎりまで遅らせるか?

学術情報サービスのアーキテクチャ

仮想ポータル インターフェイスの統一 すぐに振り分けられてしまう

データベース 目的指向 探索空間が狭い

検索エンジン 探索空間が広い コンテキストがない

学術情報サービスのアーキテクチャ

仮想ポータル

ラベル 1つの論文に複数設定可能 ラベル間の関連を記述することで いつでも別のクラスターに移動可能

キーワード検索 適切なキーワードが発見できれば問題はほとんど解決するが… ノウハウは暗黙知のレベルに留まっている

キーワード推薦 Webcat Plus (NII) Google Suggest Vivisimo (Highwireにも導入)

探索プロセスの中で自分が何を探しているのかがわかるようなシステムに

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キーワード検索 学術情報サービスの競争力 アーカイブ自体の信頼性

人手による編集の結果 充実したメタデータによる検索とナビゲーション

引用・被引用情報 ラベル・オントロジー(ラベルの体系)

論文探索プロセスの支援

コミュニティ指向の情報サービス アーカイブ+キーワード・メタデータ検索とは異なるアプローチ

人工知能学会全国大会 大会支援システム(Polysuke2005)

Web上のデータを用いて参加者間の関係を推定,人間関係ネットワークを構築

学会参加者のスケジュール情報をSNSで共有し,論文の協調フィルタリングに応用

(暗黙的に理解している)身の回りの知人の専門性をキーにした情報検索

コミュニティ指向の情報サービス

コミュニティ指向の情報サービス ユーザをどのように巻き込み,継続性を持たせるかが課題 Double-loop Gratification [takeda, ohmukai05]

ユーザ自身のためになるサービスの提供(instantgratification)

同じサービスを利用する他者からよりよい情報を得る(translucence strategy)

サービス全体から得られる新たな効用の提供(delayed gratification)

コミュニティ指向の情報サービス 例:論文作成支援としての学術情報サービス

Instant gratification論文のクリッピング引用文献管理(Bibファイル作成支援)

Translucence strategy知人のクリッピングを閲覧 → 取り込み

Delayed gratification Hot topicの同定明示的な引用・被引用情報名寄せ・誤字問題の解決 → 情報サービスのクオリティ向上

論文の書き方自体が変わる?

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まとめ 研究者にとっての学術情報サービス

検索の手段から探索の手段へ 探索に適したインターフェイスの提供と信頼性の担保

コミュニティ指向の学術情報サービス キーワード検索からキーパーソン検索へ ユーザを巻き込むことによってアーカイブのクオリティを高める

Thank You!

http://research.nii.ac.jp/~i2k/または

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