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2-6 トランジスタの特性 【目 的】 エミッタ てを い、 られた h パラメータを いて する。 【原 理】 1 トランジスタの動作原理 トランジスタ 体から ある。 、一 しく い。 より多い 体を n 体、 より多い 体を p いう。n p それぞれ (キャリア) (negative) (positive) かを す。トランジスタ pnp また npn される。pnp トランジスタ 1 トランジスタ 1(a) すように、 央に n 体があり、これをベース (B) いう。ベースを さむ p エミッタ (E) れ、 む。他 p く、コレクタ (C) れている。npn トランジスタ pnp トランジスタ p

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2-6 トランジスタの特性

【目 的】

エミッタ接地増幅回路の設計と組立てを行い、静特性実験で得られた hパラメータを用いて動特

性を検討する。

【原 理】

1 トランジスタの動作原理

トランジスタとは不純物半導体から成る素子である。不純物半導体では、一般に伝導電子の数と

正孔の数が等しくない。電子の数が正孔より多い半導体を n型半導体、正孔の数が電子より多い半

導体を p型半導体という。n型、p型はそれぞれ電流の担い手 (キャリア)が主に負 (negative)か

正 (positive)かを表す。トランジスタは pnpまたは npn接合で構成される。pnpトランジスタで

図 1 トランジスタの動作原理

は、図 1(a)に示すように、中央に薄い n型半導体があり、これをベース (B)という。ベースをは

さむ p型半導体の一方はエミッタ (E)と呼ばれ、高い濃度の不純物を含む。他方の p型半導体は

不純物濃度が低く、コレクタ (C) と呼ばれている。npn トランジスタは、pnp トランジスタの p

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型と n型を入れ換えたものになっている。

エミッタ接地した場合の pnpトランジスタについて、そのエネルギー準位構造から増幅作用を

考えてみる。pnp接合のエネルギー準位は、外部から起電力を加えないときは、図 1(b)に示すよ

うになっている。図 1(c)のようにベースとコレクタに VB と VC の電圧を加えると、エネルギー準

位は図 1(d)のようになる。VB によりベースのエネルギー準位が低下し、エミッタとベースのエネ

ルギー差が減少することにより、キャリアは拡散しやすくなる。エミッタからベースに正孔が拡散

し、ベースからエミッタへは電子が拡散する。ここで、エミッタの不純物濃度は高く、ベースの不

純物濃度はそれに比べて低くしてあるので、エミッタからベースに拡散する正孔の数は、ベースか

らエミッタに拡散する電子の数より多い。ベースに拡散した正孔の一部は電子と結合し、ベース電

流 IB となるが、大半がベースに残る。これを正孔の注入という。コレクタの不純物濃度は低くし

てあるので、正孔密度がベースで高く、コレクタで低くなり、正孔はベースからコレクタへ拡散す

る。ここで、ベースをなるべく薄く作っておくと、注入された正孔はほとんど再結合することなく

コレクタ側の接合面に到達する。VC の電圧を加えると、コレクタのエネルギー準位が低くなり、

正孔は接合面での電位差で加速されてコレクタに流れ込む。しかし、VC をいくら大きくしても、

コレクタに拡散してくる正孔の数は、ベースに注入される正孔の数より増えることはない。すなわ

ち、コレクタへ拡散する正孔の数は、エミッタからベースに注入した正孔の数に依存することにな

る。エミッタのホール濃度はベースの電子濃度より 2桁程度大きく作ってあるので、コレクタ電流

IC はベース電流 IB の数百倍程度となる。このように、エミッタ接地のトランジスタには電流を増

幅する働きがある。

2 トランジスタの静特性

静特性とはエミッタ‐ベース間の電圧 VBEとベース電流 IB、エミッタ‐コレクタ間の電圧 VCE、

コレクタ電流 IC の 4つの変数間の関係を示すものである。測定のための回路を図 2に示す。トラ

ンジスタの静特性は、トランジスタが 2つのダイオードから成っているというモデルから計算でき

るが、本実験ではこれを実験的に求める。図 3にその測定例を示す。特に興味深いのは第 1、第 2

象限である。第 1 象限のグラフは後述する動作点の決定に使用され、第 2 象限は µA オーダーの

ベース電流 IB で、数 100倍大きなコレクタ電流 IC を制御できることを示している。

図 2 エミッタ接地回路

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図 3 静特性曲線

3 hパラメータ

四端子回路では、入出力の電圧 ·電流のうちの 2つを独立変数とすれば、他の 2つの変数が決定

される。エミッタ接地トランジスタでは入力信号をベース電流として加え、あるコレクタ電圧を与

えておいてコレクタ電流を制御する。したがって、IB と VCE を独立変数とし、VBE と IC を従属

変数として表す h(ハイブリッド)パラメータ表示が便利である。ある動作点 (IB、VCE)の近傍で

微小変化が生じたとき、IC と VBE の微小変化を{∆IC = hf∆IB + ho∆VCE

∆VBE = hi∆IB + hr∆VCE(1)

と書いた場合の 4つのパラメータを hパラメータと呼ぶ。

ho =

(∂IC∂VCE

)IB

:出力アドミッタンス (入力解放)

hf =

(∂IC∂IB

)VCE

:電流増幅率 (出力短絡)

hi =

(∂VBE

∂IB

)VCE

:入力インピーダンス (出力短絡)

hr =

(∂VBE

∂VCE

)IB

:電圧帰還率 (入力解放)

3

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hの添え字は、それぞれ、output、forward、input、reverseを意味している。hパラメータは、静

特性曲線 (図 3)の各象限の動作点近傍における曲線の傾きから求めることができる。第 1象限か

ら順に、ho、hf、hi、hr が求まる。

4 エミッタ接地電圧増幅回路

先に述べたように、エミッタ接地の場合、トランジスタは電流増幅素子として働く。図 2の回路

のベース側に入力信号を、コレクタ側に負荷抵抗をつなぐことにより、電圧増幅が可能となる。ト

ランジスタを増幅器として用いる場合には、各電極には、はじめ一定の電圧をかけておいて、これ

に信号電圧を重ねて動作させる。このときにかけておく一定の電圧をバイアス電圧という。エミッ

タ接地増幅回路では、図 4のようにしてバイアス電圧をかける。

エミッタ接地増幅回路における電圧増幅の原理を静特性曲線を用いて説明する。図 5に増幅の様

子を示す。ベース‐エミッタ間の電圧 VBE に入力信号を重ねることにより入力電圧が ∆VBE だけ

変化したとする。このとき、静特性の第 3象限における曲線にしたがって、入力電圧の変化はベー

ス電流の変化 ∆IB となる。第 2象限における電流増幅率に対応する直線の傾きにしたがって ∆IB

は hf(∼ 102)倍され、大きなコレクタ電流の変化 ∆IC が得られる。ここで、コレクタ側に負荷抵

抗 RL をつないでおけば、その両端で∆IC ·RL の変化となって、増幅された電圧変化が得られる。

図 4では信号源と直流電源が直列に接続されているが、信号源が故障するのを防ぐため、実際に

は、図 6、図 7のようにコンデンサーなどにより両者を分離する必要がある。

図 4 エミッタ接地増幅回路 図 5 電圧増幅の原理

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図 6 固定バイアスを用いた回路 図 7 自己バイアスを用いた回路

5 負荷線、動作点の決め方

コレクタ側の電源電圧を VC としたとき、負荷抵抗 RL が付加されるとエミッタ‐コレクタ間の

電圧 VCE は、VCE = VC − IC ·RL (2)

となる。この式は、図 5の第 1象限に示した直線に対応し、これを負荷線と呼ぶ。増幅回路を設計

するときには、この負荷線と、IB をパラメータとした出力特性曲線の疎密等を考慮して、動作点

(図 5の点 P)を定めなければならない。一般に用いられる A級増幅では、VCE の変化範囲が最も

広くなるように、VC の 1/2にして用いることが多い。

例えば、まず、VC を-9Vと定めれば図 5の点 Qが定まり、次に、点 Pが VC の半分の位置にく

るように VCE=VC/2(=-4.5V)とする。最後に、IB または RL が与えられれば、動作点および負荷

線は定まる。今、IB=-30µAの出力特性を用いるとすると、動作点 Pは VCE=-4.5Vと IB=-30µA

の曲線の交点となる。点 Pと点 Qを結んだ線が負荷線である。VCE=-4.5Vとするための RL の値

は負荷線の傾き、切片等から (2)式を用いれば求まる。また、IB=-30µAを作るには図 4の VB を

調節すればよい。以上で図 4に示す回路は完成し、増幅された出力は動作点 Pを中心に負荷線上

で働くことになる。

6 バイアスのかけ方

IB を流すためのバイアス電圧は、図 4の VB が与えるが、通常はこのように VB、VC の 2つの

電源を用いることは少ない。VB を取り去り、VC の一部をバイアス電圧として用いてベース電流

IB を流す方法が取られる。図 6に示す固定バイアス法がその例である。ここでは、IB は抵抗 RB

で一定の値に固定され、次式に示す関係を満たす。

IBRB + VBE = VC (3)

ここで、VBE ≪ VC なので、次式のように近似できる。

RB ≈ VC/IB (4)

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半導体は温度に敏感で IC が変化しやすく、一定の特性が得難い。そのため、IC の変化に伴って

IB の方も自動的に変化させ、常に一定の特性を得る方法が考えられている。自己バイアス法 (電圧

負帰還)や電流帰還バイアス法などがその例である。図 7に自己バイアスを用いた増幅回路を示し

た。抵抗 RF は次式を用いて決定できる。

IBRF + VBE = VCE (5)

ここで、VCE=VC/2(A級増幅)であり、VBE ≪ VCE なので、次式のように近似できる。

RF ≈ VC/2IB (6)

自己バイアス法では、温度が上がって IC が増すと、RL での電圧降下が大きくなり、コレクタの

電位が高くなるため、IB が減少して IC の増加を防ぐ電圧負帰還回路となっている。

7 hパラメータによる解析

トランジスタの電圧と電流の変化が小さいときの増幅特性は、hパラメータを用いて以下のよう

に計算できる。(1)と (2)式より電圧増幅度 Av と電流増幅度 Ai が以下のように求められる。

Av =∆VCE

∆VBE= − hfRL

hi + hihoRL − hfhrRL(7)

Ai =∆IC∆IB

=hf

1 + hoRL(8)

また、回路の入力抵抗 Rin と出力抵抗 Rout も同様に計算される。

Rin =∆VBE

∆IB= hi −

hfhrRL

1 + hoRL(9)

Rout =∆VCE

∆IC=

hi

hiho − hfhr(10)

ただし、入力電源の持つ内部抵抗は非常に小さいとして無視した。

8 ハイパスフィルター

図 8のような回路の出力電圧と入力電圧の絶対値の比は、∣∣∣∣Vout

Vin

∣∣∣∣ = 1√1 + (fc/f)2

と計算される。ここで、

fc =1

2πRC(11)

である。図 9 に示すように、図 8 のような回路は fc 以上の高周波をよく通し、fc 以下の低周波

は通りにくくなる。このような回路をハイパスフィルターといい、fc をカットオフ周波数という。

f = fc で |Vout/Vin| = 1/√2となる。

図 6や図 7の増幅回路においても、コンデンサー C1 と増幅回路の入力インピーダンス Rin に

より低周波の入力信号がカットされる。これを利用して、カットオフ周波数 fc から増幅回路の入

力抵抗 Rin を見積もることができる。

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図 8 ハイパスフィルター 図 9 ハイパスフィルターの透過特性

図 10 静特性測定回路

表 1 測定データ表

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【実 験 方 法】

図 10に示す回路を用いて図 3の静特性曲線を求める。手順は以下の通りである。

1. R1、R2 が反時計回りいっぱいに回っていることを確認する。R2 を回し |IB|=10µA とし

て、そのときの VCE、IC、VBE を表 1のように記す。

2. 次に、R1 を回し |VCE|=1.0V にする。このとき IB は急激に変化するので、R2 を用いて

再び |IB|=10µAにして、|VBE|と |IC|を測定し表に記入する。同時にグラフ用紙にデータをプロットする (図 3 参照)。このようにして |VCE|=1.0、2.0· · · と変え、そのたびごとに|IB|=10µAになるように R2 で調節し、表とグラフを完成させる。

3. |IB|=20、30、40、50µA について同様な測定を行う。但し、30µA では 0.5V ごとに測定

する。

4. 図 3の第 1、4象限のグラフが完成したら、|VCE|=4.5Vについて第 2、3象限のグラフを完

成させる。

5. 各象限の曲線を用いて h パラメータを決定する。ただし、動特性で必要となるので、

|IB|=30µA、|VCE|=4.5Vについて決定する。

6. 静特性の出力特性図に負荷線を引く。ただし、A 級増幅とし、|VC|=9V、動作点 P は、

|IB|=30µAと |VCE|=4.5Vの交点付近とする。負荷線を基にして (2)式より、RLを求める。

7. 固定バイアスを用いた回路 (図 6) または自己バイアスを用いた回路 (図 7)のいずれかを基

板上に組み立てる。RB、RF は (4)、(6)式を用いて決定する。

8. オシレータを信号源とし、電圧がピーク‐ピーク値で約 50mV、周波数が約 10kHzの正弦

波を自作の回路に与えて動作を確認する。電圧測定にはオシロスコープを用いよ (図 11)。

信号の電圧が高過ぎるとトランジスタを破損する。

9. 1kHzと 10kHzのそれぞれについて、入力信号電圧が Vin が 0から 0.3V程度の範囲で出力

電圧 Vout の値を測定し、電圧増幅度 Av の変化を調べる (図 12参照)

10. 入力信号電圧 Vin を一定値 (40mV程度)に保ったまま、信号の周波数を 100Hzから 1MHz

まで変化させ、電圧利得 [デシベル:dB=20· log (Vout/Vin)] の変化を調べる (図 13 参照)。

周波数を変化させると入力電圧も変化するので、その度に入力電圧を設定しなおす必要があ

る。グラフより、電圧利得が-3dBとなる周波数 (カットオフ周波数)fc を求める。

図 11 動特性測定用配線

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図 12 入力電圧と出力電圧の関係 図 13 電圧利得の周波数依存性

【課 題】

1. 動作点違いにより出力波形はどのように変わるか考察せよ。

2. 電圧増幅度 Av の実測値を (7)式と比較せよ。

3. カットオフ周波数 fc から (11) 式を用いて増幅回路の入力抵抗 Rin を求め、(9) 式と比較

せよ。

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