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2011年12月22日、アイティメディア社内で開かれた勉強会の資料です。主に次の点について喋っています。 - ITジャーナリストの方法 -Androidへの向き合い方 - 10億台のAndroid端末が存在する数年後の世界への考察
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Android Now and Future :ある技術ジャーナリスト
のアプローチ 2011年12月22日
星 暁雄(フリーランスITジャーナリスト)
略歴
• 1986年~2006年 日経マグロウヒル社/日経BP社 • 『日経エレクトロニクス』記者『日経オープンシステム』(現:日経SYSTEMS) 副編集長『日経Javaレビュー』編集長などを経験
• 2006年、独立。「コモンズ・マーカー」を企画開発• 2009年、フリーランスITジャーナリストとして活動
私の経歴の要約•エンジニアの教育を受け•技術ジャーナリストの訓練を積み•メディアビジネスを経験し•独立後、事業立ち上げに失敗したので、ITジャーナリストに戻る
お断り(1)
• IT分野全般に関心があります。エンタープライズ系の仕事もしています
• 2011年に書いた記事のうち、Android関連記事の本数半分以下です
• iPhone/iPad関連の仕事がなんで来ないんだろう?
お断り (2)
• iPhoneもiPadもすばらしい製品だと思います。私も使っていますよ
• Android開発者で、iPhoneをDisっている人に会ったことがありません
•みんないい人ですよ!
記事の例• “変なソフト”として進化する人気Android日本語入力「Simeji」• 英語圏でも人気、操作性にこだわったTwitterクライアント「twicca」 • tagletの瞬発力、Suica Readerのハッカー精神 / IMoNiの連携力、FxCameraの対応力 - Androidアプリ開発者たちの挑戦
Android端末との出会い• 2008年10月、最初のAndroid端末 G1 発売 -- 入手せず• 2009年6月、GDD Phone配布 -- 欠席• 2009年7月、HT-03A発売 -- この時点では購入せず• 2009年11月、ABC 2009 Fall -- Androidコミュニティの活気・熱気に触れる• 2009年12月、HT-03A入手• 2010年2月、Nexus One入手(その後、14機種を評価)• 2010年12月、Nexus S入手(その後、10機種近くを評価)• 2011年12月、Galaxy Nexus入手
個人的な感想
•Androidの端末とOSの進化はものすごいスピードです•古い機種で良くない印象を受けても、最新機種ではガラリと変わります(PCもそうですよね?)•そしてインテントは素晴らしい!
お題:メディアとしてどう付き合うか
•Androidという分野の特性•情報のノイズ、バイアスが多い!•多様性(端末 / プレイヤーが多い)→ 視点の設定、事実の確認に要注意
Androidは「生き残り」
•モバイルOSの主導権を賭けて、多くのプレイヤーがリングに上がった
• General Magic, Windows Mobile, Palm, SavaJe(JavaFX Mobile), MeeGo, WebOS・・・
•たまたまAndroidが生き残った!
なぜAndroidを追うのか?
•仕事のオファーがあったから (ITproに感謝!)
•これは「重要」だと直感が告げたから
「重要」と判断した理由
•端末の進化が速い!•活発な開発者コミュニティが早期に形成されていた!(後述)
端末の進化が速い•G1からNexus Oneへの飛躍• G1: 2008/10発売• Nexus One : 2010/1発売•スマートフォンのスペックの頂点を1年3ヶ月で奪取
23年前の世界最速級
• スマートフォンのLinpackベンチマーク値• 2010/6、 34MFLOPS、Nexus One• 2011/12、 76MFLOPS、Galaxy SⅡ LTE• スーパーコンピュータ• 1985、 45MFLOPS、NEC SX-2• 1988、 74MFLOPS、CRAY Y-MP
ちょっと一休み
「何が重要か」 を見る方法
「変化はコントロールできない。できることは、その先頭に立つことだけである」
•では先頭とは何か?•発見方法はあるのか?
技術ジャーナリズムの方法
•「エンジニアの精神で、エンジニアに取材する」
•「川上を見る」•「直感を重視する」
「技術ジャーナリスト」
•会社に入った頃のキャッチフレーズ「私たちはペンを持ったエンジニアです」•古い? だがAndroidというターゲットには有効なアプローチかもしれない
良いエンジニアは•調べて、手を動かす•常識、既存の仕組み、他人から聞いた情報を疑う•他人がやらないことを探す•直感を重視するが、検証を欠かさない•文献を重視するが、検証を欠かさない•動くモノを作る
良いジャーナリストは• まず事実ありき( "Fact" 確認の労力を惜しまない)• 常に疑う• 事実の中に潜むストーリーを発掘する(事実が先、ストーリー/アジェンダは後)• 言葉を重視する(伝える労力を惜しまない)• 立場、利害に偏らない
つまり
エンジニアの価値観とジャーナリストの価値観は意外に共通点が多いのです
疑問
•その「良いエンジニア」って古いんじゃないの?•顧客の問題解決は?•工数管理は?
忘れがちな真実•その古くさいタイプのエンジニアが、人類の富を生み出してきたのです
•エンジニアの精神が滅びれば、歴史は停滞するでしょう
•「古い」と「未来」はつながっている•もちろん古くさいだけではダメですよ!
基本戦術•技術者コミュニティの反応は「先行指標」
•良い開発者コミュニティがある技術は「しぶとい!」
•統計は、最後にやってくる「遅行指標」
「川上を見る」• 技術開発(技術の対外発表、技術系カンファレンス、技術者コミュニティの動き)→製品化(意向表明、発表、発売)→初期の利用者コミュニティの形成→市場形成(市場統計)
• 普及サイクル全体を見る。短くて3年。長ければ10年。関心事を継続的にウォッチする
Androidはどうだった?
実機がない段階で開発者コミュニティができていた(重要な先行指標!)
初期コミュニティの動き
•2008年9月、「日本Androidの会」発足(G1発売前)
• 2008年11月 Simejiバージョン1 リリース(G1発売の翌月)
•日経Linux 2009年2月号 「AndroidをZaurusに入れて楽しむ」
衝撃の体験•「起きたら欲しいアプリがあった」事件、2010年2月
• QR2Tweet ( esmasuiさん作 )• ポメラDM20のQRコードを読んでTwitterクライアントに渡す
• Twitterベースの開発。1晩で完成
技術者から見たAndroidとは
•格好の題材。デバイス、OS、フレームワーク、アプリ、UIデザイン、いろいろなレイヤーで工夫の自由がある
メッセージの変遷•Googleから開発者へのメッセージ•初期「バッテリーの持ち最優先」• 2010年「性能が重要。UIスレッドと通信処理を分離」
• 2011年「美しく。Androidらしく」
ここで統計
•Android端末の増加ペース•直近の世界市場•直近の日本市場
統計(1)• Androidの「1日あたりアクティベート数」
• 2010/2 6万台/日• 2010/12 30万台 /日• 2011/7 55万台 /日
Android端末の1日あたりアクティベート数
•単調増加→台数は2次曲線で増加
と、いうことは・・
•グラフはほぼ直線に見える(横軸がおかしい。上向きの曲線のはず・・ここでは直線と仮定)
•増加率がリニアに(直線で)増加!•つまり端末台数の増加曲線は・・
問題:Android端末台数が描くカーブの形は?
•仮定:増加率が直線で増加 (簡単のため初期値を0とする)
• t 時間• Δn 端末台数の増加率• N 端末台数•答は「放物線」
統計(2) 100億ダウンロード
カーブは放物線を描いています
統計(3) 世界市場シェア
• 2011年第3四半期(7~9月期)のスマートフォン販売台数のシェア(Gartner調べ)
世界で何台?
•2011年第3四半期(7~9月期)に「約6000万台を販売」(Gartner調べ)
• 4倍して、2億4000万台/年(増加率が増加しているため、 「それ以上の増加」が見込まれる)
統計(4)日本国内市場
日本で何台売れた?•2011年度上期(4月~9月)のスマートフォン販売台数は前年比4.5倍の1,004万台(MM総研調べ)
•OS別ではAndroidが799万台で1位(シェア79.6%)
• 2倍すると、約1600万台/年
10億台まで何年?
•仮定1:増加率が直線で伸びる•仮定2:係数 a を90万台/月とする (Google発表の値を参考に)
• 先に導いた N = at2 /2 を解く• 48カ月で10億台を越える•あと2年! (注意:フェルミ推定です)
と、いうことは・・•需要の飽和か?•モデルチェンジによる価格維持戦略• 次の10億台への飛躍か?•端末の低価格化 • 「100ドル以下」のAndroid機が出始めた•端末の多様化(子供、老人、特定業務)
頭を切り換えて
•10億台のクラウド端末で何が起こる?•ちょっと「川上」を見てみよう•「彼ら(=研究開発エンジニア)」の心情で、想像力を働かせて・・・
可能性を考える
•10億人が使うクラウド端末• 10億人の情報が、クラウドに集まる
10億人が使うデバイス
•道路の監視(事例:渋滞情報、段差検出)
•みんなの放射線測定(事例あり)• 10億人のデータ≈ リアルワールドの反映!
人の心を読むクラウド
•Facebookの自殺防止の取組み ソーシャルメディア書き込みで察知→電話相談窓口の情報をメール
•ソーシャルゲームの先にあるもの•脈拍、身動き、声色、脳波・・・• IBMの未来予測2011に「読心術」登場
先端エンジニアの仕事
•鉄を作る•蒸気機関を作る•内燃機関を作る•電子機器を作る•ソフトウエアを作る(←イマココ)
なぜソフトが先端?
•PCの普及•インターネットの普及•Webコンピューティングの普及•では、前提条件が変わったら?
リアルの逆襲•Webコンピューティングはブラウザから出られない。実世界に触れない!•スマートフォンアプリは現時点で実世界とつながっている• カメラ、GPS、重力センサー、ジャイロ、NFC、歩数計、脈拍計、ガイガーカウンター、脳波センサー…
リアル×クラウド
•スマートフォンはデータ収集の一等地•プロトタイプエンジニアに需要•スマートフォン+外部デバイスでIoT•「モノ」作りに再び脚光が?
ノマド・オブジェ
•ノマド(定住民ではない人々)は持ち歩ける価値あるモノを好む(アタリ『21世紀の歴史』)
•宝飾品、楽器・・スマートフォン•次のノマド・オブジェは何か?
より人に近く
•眼鏡は? (参考:「電脳コイル」)•腕時計は? (参考:ソニーエリクソン LiveView)
•体内埋め込み?(参考:「ニューロマンサー」)
社会的インパクト
•プライバシー情報利用の積極派と慎重派が対立?
•例:個人に密着したデバイスへの情報(脈拍、歩行、etc. )の委託の度合いで保険料率が変わる(アタリの予言)
おっと・・
•ジャーナリズムというより、エンジニア目線の空想が混じっちゃいましたが
•エンジニアの発想でAndroidを追ってみると面白いと思いますよ!