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ATRA(all-trans retinoic acid)服用中に発症した急性腎不全の一例
安城更生病院 腎臓内科
遠藤信英
症例
61歳 男性
既往歴:特記事項なし
病歴:2008年7月16日、近医から採血異常に
て当院紹介受診。骨髄検査にて急性前骨髄球性白血病(M3)と確定診断。治療を開始した。
臨床経過
7月18日より、ATRA(ベサノイド80mg)の内
服治療を開始。治療効果あり、血球数は改善傾向であった。8月4日頃から倦怠感と37度台の微熱が顕在化し、正確な時期は不明だが赤ワイン様の肉眼的血尿が出現。抗生剤(ファーストシン・ビクリン)投与するも解熱せず、採血にてCRP5台であった。Crは8/7 1.14, 8/11 2.12,8/14 2.67と急速に悪化し、8/14に腎臓内科に紹介された。
身体所見
意識清明
体温 37.7℃血圧 124/80mmHg, 脈拍 72回/分尿量 1600ml/日、赤ワイン様の血尿
足背、下腿に淡い小紅斑あり。
検査所見(8/14)WBC 1800 /mlHb 6.9 g/dlPlt 6.2
×10⁴/ml
TP 6.3 g/dlAlb 3.2 g/dlAST 25 IU/lALT 9 IU/lCr 2.67 mg/dlBUN 29 mg/dlUA 5.6 mg/dl
Na 140 mmol/l
K 4.5 mmol/l
Cl 99 mmol/l
CRP 5.64 mg/dl
抗核抗体 (-)
MPO-ANCA (-)
PR3-ANCA (-)
尿所見
pH 6.0
比重 1.010
蛋白 (1+)
潜血 (3+)
RBC 100↑
WBC 5-9
RBC円柱 1/100LPF
蛋白 0.82g/day
画像所見
腎は軽度腫大(長径11.96cm)皮質の高輝度化は見られない
画像所見
臨床経過
RBC円柱と肉眼的血尿を認め、急速進行性糸球体腎炎が考えられた。原因としてATRAによる薬剤性
を第一に考えた。血小板数が低いため腎生検は行えず、8/15からATRAの中止と共にPSL30mgで診
断的治療を開始した。肉眼的血尿は中止日より消失した。倦怠感・微熱も一日で改善。腎機能はCr2前後へ改善した。PSLは漸減したが、症状の再燃は見られなかった。
8・25に腎生検を行った。
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2008
/7/1
620
08/7
/23
2008
/7/3
020
08/8
/620
08/8
/13
2008
/8/2
020
08/8
/27
2008
/9/3
Cr
CRP
7/18- 8/14ATRA内服
8/15~PSL30mg.5mg/週で漸減
肉眼的血尿
8/25腎生検
ATRA症候群
発熱(81%)
呼吸不全(84%)
肺浸潤影(52%)
胸水・心嚢水(36%)
低血圧(18%)
腎不全(11%)
臨床経過からの考察
ATRAによる副作用は、一般にATRA症候群として知られている。一般的にはWBC上昇や呼吸障害を伴うことが多く、血液内科では本症例はATRA症候群ではないとされた。ATRA症候群での腎生検の報告例は数少ないが、皮質壊死や間質性腎炎の報告がある。
また、ATRAによる薬剤性血管炎の報告があるが、その臨床症状の報告は皮疹が主である。
今回の腎障害に関しては著明な血尿があり、ATRAによる血管炎がRPGNを引き起こしたと考えられないか。腎生検を行った症例報告は少なく、病理所見の検討をお願いいたします。