6
第 2 章:心電図の基礎 24 心臓が収縮運動をするので電気が起きるわけではない。電気が起きるので、その結果筋肉が収縮する。 電気が起きても(心電図が発生していても)心筋が収縮しない、電気機械乖離という状態もある。 電解質イオンと心電図波形の関係 1.4 心室筋の活動電位と心電図波形の対応 心室筋での活動電位と実際に観察される心電図波形は図のような関係になっています ※1 。外部からの刺 激(刺激伝導系からの電流の流入)によって、急速に電位が高くなる脱分極の時間を 0 相といい、これ が次々と細胞を伝播して、心電図波形の QRS 波を形成します。続く第 1 相は、Na チャネルが閉じて脱分 極が終了し、一過性に K イオンで出ることで膜電位がわずかに下がる時間です。第 2 相は Na に続いて 細胞内に流入する Ca 2+ イオンと流出する K イオンとのバランスで維持されている時間でプラトー相と もいい、電位変動がほとんどないため心電図波形のレベルが変化しない ST 区間にあたります。第 3 相は、 急激な再分極時間にあたり、Ca 2+ イオンの流入が終わるとともに K イオンが一過性に多量に流出する ことで起こり、T波を形成します。T 波の前半部は、K が出始めてもまだ Ca 2+ の流入が完全には終わっ ていない区間にあたるので傾斜がなだらかで、正常な T 波は左右が非対称形になります。第 4 相は細胞 が分極状態になっている時で、拡張期にあたります。0 相から 3 相まで、心電図波形では QRS 波から T 波 終了まで(Q T 間隔)が、心室筋が収縮している時間にあたり、心室筋の活動電位持続時間(action potential duration;APD)といいます。 ※1 心電図波形は心臓全体の活動を見ている。1 つの心室筋細胞での電位変化と心電図波形を対応させた上図 は正確なものではないが、電解質イオンと心電図波形の対応の概略を理解するためにはこのように考えてよい。 が出始めてもまだ が入っている区間 K Ca 2+ T波は左右非対称 T波の前はなだらか、後ろは急傾斜 前はかなりなだらかで、T波の始まり が分からなくても異常ではない。 T波の終わりははっきり していなければいけない。 Note とりあえず 電解質イオン の出入り 細胞内の電位 Na Ca K 2+ 時間 +30mV -90mV 0 R T ST S 心室の心電図波形 時間 0 100 200 300 400 (msec) 刺激 再分極 脱分極 静止膜電位 0相 1相 2相 3相 4相 心室拡張期 心室拡張期 K K Na Ca 2+ K 心電図波形は心室筋全体を 見たものであるが、およそ このような対応と考えてよい。 活動電位持続時間(APD) 心室収縮期 が重複している区間 K Ca 2+ Na Ca 2+ K

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第 2 章:心電図の基礎

24

心臓が収縮運動をするので電気が起きるわけではない。電気が起きるので、その結果筋肉が収縮する。

電気が起きても(心電図が発生していても)心筋が収縮しない、電気機械乖離という状態もある。

電解質イオンと心電図波形の関係

1 . 4 心室筋の活動電位と心電図波形の対応心室筋での活動電位と実際に観察される心電図波形は図のような関係になっています※ 1。外部からの刺

激(刺激伝導系からの電流の流入)によって、急速に電位が高くなる脱分極の時間を 0 相といい、これ

が次々と細胞を伝播して、心電図波形の QRS 波を形成します。続く第 1 相は、Na チャネルが閉じて脱分

極が終了し、一過性に K +イオンで出ることで膜電位がわずかに下がる時間です。第 2 相は Na に続いて

細胞内に流入する Ca 2 +イオンと流出する K +イオンとのバランスで維持されている時間でプラトー相と

もいい、電位変動がほとんどないため心電図波形のレベルが変化しない ST 区間にあたります。第 3 相は、

急激な再分極時間にあたり、Ca 2 +イオンの流入が終わるとともに K +イオンが一過性に多量に流出する

ことで起こり、T 波を形成します。T 波の前半部は、K +が出始めてもまだ Ca 2 +の流入が完全には終わっ

ていない区間にあたるので傾斜がなだらかで、正常な T 波は左右が非対称形になります。第 4 相は細胞

が分極状態になっている時で、拡張期にあたります。0 相から 3 相まで、心電図波形では QRS 波から T 波

終了まで(Q T 間隔)が、心室筋が収縮している時間にあたり、心室筋の活動電位持続時間( a c t i o n

potential duration;APD)といいます。

※ 1  心電図波形は心臓全体の活動を見ている。1 つの心室筋細胞での電位変化と心電図波形を対応させた上図は正確なものではないが、電解質イオンと心電図波形の対応の概略を理解するためにはこのように考えてよい。

 が出始めてもまだ   が入っている区間

K+

Ca2+

T波は左右非対称T波の前はなだらか、後ろは急傾斜前はかなりなだらかで、T波の始まりが分からなくても異常ではない。

T波の終わりははっきりしていなければいけない。

Note

P litfal

ECG

とりあえず

電解質イオン

の出入り

細胞内の電位

(内向き電流)

細胞内に入る

(外向き電流)

細胞外に出る

Na

Ca

K

2+

時間

+30mV

-90mV

0

R

T

ST

S

心室の心電図波形

時間

0 100 200 300 400 (msec)

刺激

再分極脱分極

静止膜電位

0相

1相2相

3相

4相

心室拡張期心室拡張期

K+

K+

Na+ Ca2+ K+

心電図波形は心室筋全体を見たものであるが、およそこのような対応と考えてよい。

活動電位持続時間(APD)

心室収縮期

と  が重複している区間K+Ca2+

Na+ Ca2+ K+

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33

2心電図の基礎

心電図波形は輪郭だけを線で表している

上向きの R 波や T 波は、その波形の幅の間向かっ

てくる電流が流れてくることで上向きの波形に

なりますが、画面や記録紙にはその外側の形=

輪郭線だけが表示されます。前半が向かってく

る電流を、後半が逆向きの電流を表していると

いうことではありません。

( 1 )脱分極が進んでいく時 ( 2 )脱分極が継続している時 (3 )再分極が進んでいく時

( 5 )再分極が外膜側から始まった時心室壁の最も外側に脱分極持続時間の最も短い細胞の層があるので、再分極は心室筋の最外膜側から始まり

電位が低くなっていきます。この時、境界面には外向きの電流が発生し、外側の(+)電極に向かってくる電

流となって上向きのT 波になります。再分極の始まりの電位の低下は非常にゆるやかなので、最初は電流

も小さく T 波の上昇は少しずつ始まります。近接する細胞間の電位差はごくわずかずつであり、外側の

細胞がこの電流によって再び分極することはないので、再分極は内側への一方向へ進んでいきます。

T 波の始まりはなだらかで左右非対称形

再分極の始まりは非常になだらかな変化で電流も

ゆっくりと増加し T 波の前半は緩やかな上昇をし

ますが、内膜側で再分極が終了する時の電流は急

速に減少するため、T 波の後半は急傾斜で左右非

対称形になります。

( 6 )再分極が中央付近まで進んだ時

( 8 )心室全体が再分極した時

心室筋内に電位差がなくなり、電流は発生しな

くなって再び基線に戻ります。脱分極に比べ再

分極はゆっくりした変化なので、それが伝わる

時間も遅く、T 波は R 波より幅が広くなります。

再分極が内側に向かって進むに従い、電流も大きくなって T 波の上昇も次第に大きくなっていきます。

( 7 )最内膜側が再分極を始めた時

再分極が最内膜側に達した頃、外膜側の電位が静止膜電位まで低下して全体の電位差が最大となります。

この時に電流が最も大きくなって T 波の振幅が最大まで上がります。しかし、この時でも電位勾配が脱

※1 T波の振幅

電位の勾配が緩やかであれば、電位差( 電圧) が同じでも通過する細胞膜は多く全体の抵抗値も大きくなる。した

がって、オームの法則【電流=電圧 / 抵抗】から発生する電流値は小さくなるので、T 波の最大振幅も低くなる。

Note

一瞬大きな電流が流れた

電流が次第に大きくなった

次第に小さくなった

外側の輪郭線だけを表示すると

心室筋における再分極の進行と T 波の形

心電図波形は輪郭線を表す

興奮の進む方向

R

興奮の進む方向

ST

興奮の進む方向

T

電流

脱分極が進む

電流

すべて脱分極

電流

電流

再分極が進む

電流は流れない

分極の時に比べて緩やかなため T 波の最大値も R

波よりは小さくなります※1。この後、内膜側の電

位も急激に低下します。

+

+

+

再分極した部分再分極していない部分

T波

電極

静止膜電位

-90mV

+30mV

細胞膜電位電流の向き

電流がまだ小さい

電流が少し大きい

電流が最大

+電流が急激に減少

電流がゆっくり増えていく

電流が急激に減少していく

内膜側

外膜側

再分極が進む方向

脱分極電位

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第 2 章:心電図の基礎

52

心電図の『どうして?』みんなの疑問① 基礎編

とりあえず

おかわり!

チャネルを通って出ているK イオンや脱分極時に一気に入ったN a イオンは、一方でN a - K 交換ポンプ

によっていつでも戻されています。

その2

 外向きに流れているのに、どうして「内向き整流」なのか?

その3

 K チャネルの名前は、IK1 とか、IKto とか、IKs とか、わけが分からないんだけど?

イオンチャネルの名前には統一性がなく、見つかった順でつけられたり、性質の違いでつけられ

たりと統一性がありません。一度記号の意味を知るとその性質と役割が分かりやすくなります。

その4

刺激伝導系から直接電流が流れてきて脱分極するのは確かに刺激伝導系のそばの細胞だけです。

しかし、この細胞が脱分極してその隣の細胞との間に電位差が生じると、そこに新たな電流が発

生しこれが次の細胞の刺激となり、次々と伝わっていきます。

くわしくは 21ページ

くわしくは 20ページ

くわしくは 19ページ

くわしくは 26ページ

その6

 R 波は電位が上がる時なので上向き、では電位が下がる時の T 波はどうして下向きにならないのか?

心電図波形は、心筋細胞で起きる電位やその変化そのものではありません。心室全体で脱分極や

再分極が進行する時に発生する電流を捉えて波形にしています。電位が上がる脱分極も、下がる

再分極も、心室筋の厚み全体でその時に発生する電流は同じで外側から見ると向かって流れてく

るので、波形はどちらも上向きになります。 くわしくは 32ページ

その1

 K イオンはいつも出ている。 イオンは入る一方。そのうちに、中と外が逆転しないのか?Na

静止膜電位を決めている チャネルは「内向き整流型 チャネル」であると本に書いてあります。

そして、これは外向きよりも内向きの方に流しやすいからだ、とも書いてあります。しかし、K

イオンはいつでも外に向かって流れていて、内向きに流れる時はありません。なのになぜ?と、

多くの人がここでイオンチャネルの勉強をあきらめてしまうようです。

実は、普段外向きに流れているとはいっても、それはあまり多くなく、もしも膜電位が低くなりす

ぎると、平衡を保つために外向きよりも内向きにもっともっとたくさんの K を流すことができる性

質があるということです。しかし、正常な場合は、このような事態にはならないのです。

K K

Na 刺激伝導系からの刺激で チャネルが開くのは分かった。しかし、刺激伝導系から離れている細

 胞も脱分極するのはどうして?

その5

 電流は+から-に向かって流れる。では、+側の電極に向かって流れてくるのはどうして?

確かに電流は電圧の+から-に向かって流れます。しかし電極の の記号は、機械が表示する波

形の向きを決めるための名前で、電圧の を示しているのではありません。+側と決めた電極に

向かって流れてくる電流で波形を上向きに動かしているのです。 くわしくは 29ページ

+,-

+,-

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第 4 章:心電図波形の異常

84

T波の変化

脱分極の後半に、静止膜電位を決めている K チャネルを流れる外向きの K 電流が増えるため再分極がよ

り早く起きるようになります。さらに、電位依存性のある遅延 K チャネルも早く開くようになるので、

再分極が急速に進む結果、T 波の形が左右対称形で幅は狭くなり、増高、尖鋭化していわゆるテント状

T 波を呈します。ただし、T 波の振幅は個人差が大きく、電極の位置によってもかなり異なります。

テント状 T 波とは左右対称形のものをさすことに注意し、大きさよりも左右対称形と幅の変化を重視す

べきです。

2.3 高カリウム(K)血症の心電図波形

T 波の振幅は個人差が大きく、高K 血症でも

振幅の変化では分からない人もいる。

左右対称形になることは個人差がないの

で、とりあえずこれで見つけること。

とりあえず

QRS波の変化

高K 血症による外向きK 電流の増加とT 波の変化

高K 血症による心電図の変化

-90 0 細胞膜電位+-

外向き電流

外向きK電流が

より速く、大きくなる

外向き

内向き

電流の向き

-90 0 +30

- +(mV)

(mV)

細胞膜電位

テント状T波

静止膜電位

外向きK電流と細胞膜電位の変化

静止膜電位が上がる

心電図波形

正常

高K血症

再分極が速く急になるさらに

高K

正常K濃度静止膜電位

K濃度が上がると

膜電位が上昇する膜電位が上がると

再分極が急速化する脱分極が鈍化する

T波はさらに左右対称で幅が狭くなる

R波が鈍化する

遅延Kチャネルが早く開くNaチャネルが開きにくくなる

高K

(テント状T波)

T波が大きい人(若年者に多い)

正常時 高K血症

高さはそれほど変わらない

T波が小さい人 (高齢者に多い)

高さはそれほど変わらない

左右対称形のテント状T波

左右対称形のテント状T波

高K 血症で静止膜電位が上がるに従い、N a チャネ

ルが開き難くなるうえ、細胞内のマイナス電位

に引きつけられる力も弱くなるためにN a + イオン

の流入が緩慢になって、脱分極が鈍化し、Q R S の

幅がより広くなり、振幅も低下していき、より悪

化すると、次第にT 波と区別がつかないような形

になって、心電図全体がS I N 波状になってしまい

ます。さらに 高 K 血症が進行し、静止膜電位が上

がると、もはや Na チャネルが開かなくなるので、

心停止に至ります。

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97

4心

心筋障害がある時の電位変化と心電図波形

障害電流の影響

障害が心室筋の内膜側に起きている時は、そこから流れ出す障害電流は外膜側に向かい、外側にある+

側電極から流れ込む形になるため、心電計の電位はその電流の大きさだけ上昇します。

逆に、障害が外膜側に起きている時は、障害電流は反対向きになるので、心電計の電位は低下します。

障害の状態が一定であれば電流の大きさも変化せずこの電位変化も一定で定常的な直流電位になります。

ただし、心電計では直流電位の変化は観察されず、障害電流が流れている時も常に一定の基線として記

録されています。

心電図波形の見え方

障害部位もイオン交換ポンプが正常ではないだ

けで脱分極することはできるので、興奮時には

正常部位と同じ電位まで上昇し、その時には電

位差はなくなり、本来の 0 電位になります。そ

の結果、興奮時の脱分極電位が、本来は変化し

ていないにもかかわらず相対的に変化して記録

されるので、脱分極期間に当たる ST 部分が低

下あるいは上昇して観測されるわけです。

障害電流による変化

障害が内膜側の場合

障害が外膜側の場合

+0V

電極

障害電流によって高くなる

心室筋

障害部位

正常部位

障害電流

+ 0V

電極障害電流によって低くなる

記録される波形

心室筋

障害部位正常部位

障害電流

電流が流れ込んでくるので

電流が流れ出ていくので

記録される波形

-90mV障害電流

静止膜電位

正常部位より高い

-90mV

障害電流 静止膜電位

正常部位より高い

内膜側 外膜側

障害電流

障害範囲

心室筋

電極

+-

障害範囲

心室筋

電極

すべて脱分極

<分極時> <脱分極時>

障害部位の電位変化

正常部位の電位変化

0V

<細胞膜電位の変化>

障害電流

この差で障害電流が流れる

脱分極中は電位差がない

+ +

0V

障害電流によって静止時の直流電位が上がる

<電極に現れる 電位変化>

本来の基線

新たな基線

実際の見え方

<記録される 心電図波形>

内膜側 外膜側

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第 5 章:不整脈

126

2.2 上室期外収縮、心房期外収縮

上室期外収縮と心室期外収縮の違い

期外収縮が心室以外で発生した場合、上室期外収縮(Premature supraventricular contraction: PSVC)

とします。これは、心房および房室接合部で起きたものの総称で、心室変行伝導を起こさない限り QRS

以降は正常な形になります。

心房期外収縮

QRS 波の前に P 波があれば、心房期外収縮(Premature atrial contraction : PAC,APC)で、P 波は洞

結節以外の場所で発生するため異所性 P 波となって形が異なることが多くなります。ただし、発生タイ

ミングが早いと直前の T 波に重なるので見つけにくくなります。この時は、T 波が 2 峰性になったり、頂

点に重なると T 波の振幅がやや大きくなるので、前後の正常な T 波と比較して確認するようにします。

また、心房期外収縮の後は、心房で発生した刺激が洞結節に進入し一旦リセットしてあらためて洞結節

の自動能周期で始まることになります。そのため、心房期外収縮の後の RR 間隔は正常な洞周期よりも

少しだけ長くなります。この場合は、心室期外収縮とは異なり代償性休止期とはいいません。

房室接合部収縮

房室結節およびその近傍で期外収縮が起きた場合は房室接合部収縮で、心房と心室は同時に収縮するた

め、QRS に重なり P 波は見えなくなります。房室結節より下部で発生すると、心室の方が心房より早く

収縮するため、QRS のすぐ後ろに、心房を下から上に向かう逆行性 P 波として見えることがあります。

心室期外収縮P波はない

(a)心室期外収縮

代償性休止期

刺激は心室内で起こり、心室壁に沿って伝わる。心房へは伝わらない。

心室期外収縮(間入性)

前後の正常なT波と比較して同じ形なので、P波は重なっていない

(左室側で起きたものを右室側から見た場合)

異所性P波の場合、形が異なることが多い 心房期外収縮

洞周期 期外収縮波が洞結節に到達した時から新たに始まる洞周期

必ずP波がある

(b)心房期外収縮

刺激は心房内で起こり、

刺激伝導系で心室に伝わる。

心房期外収縮

発生タイミングが早いとP波がT波に重なり変形する

房室接合部収縮

洞周期

P波がない

(c)房室接合部収縮

刺激は房室結節またはその近くで起こり、

心房と心室は同時に収縮する。

QRSの後ろに逆行性P波として陰性P波が出ることもある

房室接合部収縮

(心房より下側から見た場合)

期外収縮波が洞結節に到達した時から新たに始まる洞周期

心室変行伝導P波がある

(d)心房期外収縮の心室変行伝導

R波の立上がり部分は正常、

ノッチがあり分裂する(右脚ブロック型)刺激は心房内で起こり、

左脚で左室には伝わるが、

右脚はブロックしてしまう。

心室変行伝導P波がT波に重なると振幅が大きくなる

前後の正常なT波の高さと比較するとP波が分かる

(右室側から見た場合)

Premature supraventricular contraction:PSVCPremature atrial contraction : PAC,APC