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現代は、従来の紙媒体に代わって、各 種情報端末で様々な最新情報を入手でき る時代です。しかし、最新の研究会議や 研修会に参加し、先端の研究者からじか に聞く情報、関係者の間でしか交わされ ない話など、人と人が顔を合わせること で初めて知ることができる情報があるこ とも確かです。そこで、今回はページ数 を増やし、当所の研究員が、様々な会議、 研修会等に参加させていただいた中で得 た、多くの最新情報をご紹介します。 web 公開のメリットを活かすため、広 く一般の方にもお読みいただけるよう、 わかりやすい記事も掲載していますの で、ご覧いただければ幸いです。 平成 25 10 11 日、日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会)に出席しました。こ の研究会は乳房炎に取組む臨床現場と研究機関の結びつきを目的に発足し、年 1 回の学 術集会では現場の取組みから大学の基礎研究まで、幅広い内容が発表されます。本年度 の発表のうち、酪農現場で応用可能なものを抜粋してお伝えします。 1. Streptococcus 乳房炎に対する泌乳期ショート乾乳の効果 (ちば NOSAI 連、埼玉 NOSAI 連、静岡県畜技研、麻布大学ほか) Streptococcus (ストレプトコッカス、い わゆるレンサ球菌)乳房炎は近年、難治性 のため、問題視されており、とくに、 Streptococcus uberis (ストレプトコッカス ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、 バルク乳体細胞数を上昇させます。 平成 25 10 28 12 13 号合併号 静岡県畜産技術研究所 418-0108 静岡県富士宮市猪之頭 1945 TEL 0544-52-0146 FAX 0544-52-0140 特集・最新研究トレンド等のご紹介 平成 25 年度 日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会) ・・・・・ 1 平成 25 年度 畜産草地部会現地研究会・那須の農視察報告 ・・・・・ 8 牛肉の科学的分析について ・・・・・ 13 黒毛和種の血統について ・・・・・ 19 特定外来生物「アレチウリ」にご用心! ・・・・・ 24 少子高齢化が進行する農業における農作業研究の動向 ・・・・・ 28 特集・最新研究トレンドのご紹介 平成 25 年度 日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会) 1

静岡畜技研だより - Shizuoka Prefecture...Streptococcus uberis(ストレプトコッカス ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、 バルク乳体細胞数を上昇させます。

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Page 1: 静岡畜技研だより - Shizuoka Prefecture...Streptococcus uberis(ストレプトコッカス ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、 バルク乳体細胞数を上昇させます。

現代は、従来の紙媒体に代わって、各

種情報端末で様々な最新情報を入手でき

る時代です。しかし、最新の研究会議や

研修会に参加し、先端の研究者からじか

に聞く情報、関係者の間でしか交わされ

ない話など、人と人が顔を合わせること

で初めて知ることができる情報があるこ

とも確かです。そこで、今回はページ数

を増やし、当所の研究員が、様々な会議、

研修会等に参加させていただいた中で得

た、多くの最新情報をご紹介します。

web 公開のメリットを活かすため、広

く一般の方にもお読みいただけるよう、

わかりやすい記事も掲載していますの

で、ご覧いただければ幸いです。

平成 25 年 10 月 11 日、日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会)に出席しました。こ

の研究会は乳房炎に取組む臨床現場と研究機関の結びつきを目的に発足し、年 1 回の学

術集会では現場の取組みから大学の基礎研究まで、幅広い内容が発表されます。本年度

の発表のうち、酪農現場で応用可能なものを抜粋してお伝えします。

1. Streptococcus 乳房炎に対する泌乳期ショート乾乳の効果 (ちば NOSAI 連、埼玉 NOSAI 連、静岡県畜技研、麻布大学ほか)

Streptococcus(ストレプトコッカス、い

わゆるレンサ球菌)乳房炎は近年、難治性

の た め 、 問 題 視 さ れ て お り 、 と く に 、

Streptococcus uberis(ストレプトコッカス

ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、

バルク乳体細胞数を上昇させます。

静静岡岡畜畜技技研研だだよよりり 平成 25 年 10 月 28 日 第 12 号 13 号合併号

静岡県畜産技術研究所 〒418-0108

静岡県富士宮市猪之頭 1945 T E L 0 5 4 4 - 5 2 - 0 1 4 6

F A X 0 5 4 4 - 5 2 - 0 1 4 0

目 次

特集・最新研究トレンド等のご紹介 平成 25 年度 日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会) ・・・・・ 1 平成 25 年度 畜産草地部会現地研究会・那須の農視察報告 ・・・・・ 8 牛肉の科学的分析について ・・・・・ 13黒毛和種の血統について ・・・・・ 19特定外来生物「アレチウリ」にご用心! ・・・・・ 24少子高齢化が進行する農業における農作業研究の動向 ・・・・・ 28

特集・最新研究トレンドのご紹介

平成 25 年度 日本乳房炎研究会(第 18 回学術集会)

1

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従来、乳房炎治療では手搾りによる頻回

搾乳が指導されてきました。しかし、搾乳

刺激を繰り返すことで、かえって炎症の悪

化が懸念されることから、搾乳後 1 回のみ

乳房炎軟膏を注入し、その後は罹患分房を

3 日間搾乳しない「泌乳期ショート乾乳法」

が逆説的に考案されました。これには、白

血球の乳房集積による治癒効果も期待され

ます。千葉県や埼玉県の臨床現場で試行さ

れてきたショート乾乳法を科学的に検証す

るため、麻布大学と静岡県畜産技術研究所

が参加し、さらには神奈川県や静岡県の臨

床獣医師も参加して研究を進めました。

その結果、Streptococcus 乳房炎に対す

る シ ョ ー ト 乾 乳 法 の 治 癒 率 は 69.2 %

(27/39)で、対照群(乳房炎軟膏を 3 日間

連続注入)の 40.0%(2/5)より治癒率が高

い傾向を示しました。とくに、乳腺上皮細

胞に感染して抗生物質が届きにくく、難治

性になりやすい Streptococcus uberis 乳房

炎に対して 63.6%(14/22)の治癒率を示

したことは注目されました。さらに、乳汁

中ラクトフェリン濃度は搾乳休止 3 日目で

ピークとなり、その後 6~12 日目で減少し、

乳汁中の免疫グロブリン(IgG1、IgG2)濃度

も同様の動きを示しました。さらに、当研

究所でおこなった乳汁の好中球化学発光能

(CL 能)検査においても、CL 値は搾乳休

止 3 日目に初診時より増加する傾向を示

し、その後は減少しました。CL 能は好中球

が異物を貪食して活性酸素を放出する際の

微弱発光を測定するもので、好中球機能の

指標になります。当研究所で実施した乳汁

検査データを以下に示します。

以上のことから、ショート乾乳(3 日間

の罹患分房の搾乳休止)によって、乳房内

の免疫細胞が活性化され、治癒に作用して

いることが推察されました。なお、3 日程

度、搾乳を休止しても、その後の乳量は回

復しています。

従来の手法を見直すことで新しい乳房炎

治療法を見出した点が評価され、本発表は

発表 13 演題から選ばれて、新設された「高

山百合子学術賞」を受賞しました。

ショート乾乳法は関東および静岡県の臨

床現場で、獣医師の指導の下、少しずつ普

及しており、北海道でも一部実施されてい

ます。慢性で治りにくい乳房炎に対する新

たな治療法として注目されており、今後と

も当研究所ではショート乾乳の有用性の証

明と、さらなる治癒率向上を目指して研究

に取り組んでいきます。

乳汁中 好中球化学発光能(CL能)

1.E+06

1.E+07

1.E+08

1.E+09

0(Pre) 3 6 9 病日

RLU

:log

乳汁中 総ラクトフェリン濃度

0

400

800

1200

1600

2000

0(Pre) 3 6 9 病日

μg/m

l

**

**:P<0.01vsPre

**

2

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乳汁中 IgG1濃度

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0(Pre) 3 6 9 病日

μg/m

l

*:P<0.05vsPre

*

乳汁中 IgG2濃度

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0(Pre) 3 6 9

病日

μg/

ml

2. 黄色ブドウ球菌および大腸菌性乳房炎の発症と乳中感染菌量の関連性 (動衛研、ちば NOSAI 連ほか)

黄色ブドウ球菌(SA)、大腸菌(EC)

は乳房炎の代表的な原因菌です。そこで、

SA および EC の感染菌量を遺伝子定量

PCR 法で測定し、体細胞数等との関連性を

調査しました。その結果、菌量の分布と体

細胞数には相関は見られませんでした。す

なわち、体細胞数が低くても、感染菌量が

多い場合が認められたことから、乳房炎の

罹患程度の指標は体細胞数に加えて、菌の

危険性を考慮した菌種同定が重要であるこ

とが確認されました。今後、動衛研では SA、

EC に対するイムノクロマトキット(妊娠

診断薬のように簡易に SA、EC を測定でき

る検査キット)を開発中です。

乳汁中 IgG2 濃度

3. ラクトフェリン加水分解物乳房内注入による潜在性乳房炎治療効果と免疫動態

(ちば NOSAI 連、麻布大学、動衛研)

ラクトフェリン加水分解物(LFH)は抗

菌作用をはじめ、免疫調節作用を有するこ

とが知られています。そこで、精製した LFH

を潜在性乳房炎罹患 13 分房に朝夕 2 回、2

日間注入し、生理食塩水 10ml を注入した

対照区と比較しました。その結果、LFH 注

入 1 日後にすべての分房で乳房腫脹と凝固

物(ブツ)の著しい増加が見られましたが、

7~14 日後には消失しました。平均細菌数

は投与 3 日後に減少、5 日目に一時増加し

たものの、21 日後には投与前の 21%に減

少しました。一方、抹消血中の白血球ポピ

ュレーション(白血球の種類別分布)を調

査したところ、好中球および CD14 陽性細

胞率は LFH 注入 1 日目に有意に低下し、そ

の後、回復しました。また、CD8 陽性細胞

率は LFH 注入 5 日目から有意に高く推移し

ました。対照区では、このような抹消血白

血球の有意な増減は見られませんでした。

3

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以上のことから、LFH の乳房内注入は乳

房における好中球の集積を惹起し、その後、

全身性にリンパ球(ヘルパーT 細胞など)を

主体とした免疫反応に移行することが示唆

されました。すなわち、LFH の乳房注入は

その殺菌作用に加えて、免疫応答を惹起す

ることで、潜在性乳房炎に有効に作用する

ことが推察されました。

4. 乾乳後期牛への牛ラクトフェリン乳房内注入が分娩後の乳房炎発症に与える影響 (NOSAI 山形中央家畜診療所)

ラクトフェリン(Lf)には生体の免疫機

構に関与した抗菌作用が知られており、乾

乳期用の乳房炎治療薬としてラクトフェリ

ン製剤が発売されています(マストラック、

共立製薬)。本試験では、分娩 2~28 日前に

本剤を注入し(Lf200mg/分房)、抗生物

質軟膏注入群および無処置群と分娩後の乳

房炎発症率、CMT 陽性率、細菌数および体

細胞数等を比較しました。その結果、乳房

炎発症率と CMT 陽性率は Lf 注入群および

抗生物質注入群が無処置群より有意に低

く、平均体細胞数は Lf 群が無処置群より有

意に低くなりました。

分娩直後(おおむね 10 日以内)に発症

する乳房炎は、その多くが乾乳期にすでに

感染が成立しています。したがって、乾乳

期の Lf 乳房内注入は分娩直後の乳房炎制

御において、抗生物質と同等の効果を示し、

乳房炎の予防的治療に有効であることが示

唆されました。

5. バルク乳体細胞数を 3 万個/mlに維持する酪農技術

(北海道十勝、中村牧場)

日本乳房炎研究会は文字通り、乳房炎の

制御のために活動していますが、その研究

が現場で活用されるためには、研究者や関

係機関が酪農現場のことをよく知っておく

必要があります。とくに、優良生産者の酪

農技術を知ることは、研究を進める上で有

用との観点から、今回、初めて生産者の方

を招いて講演を行いました。

北海道、十勝の中村牧場は家族経営、搾

乳頭数 45 頭程度と北海道では小規模です。

そのため、生産ロスを減じて生産性を高め

ることが重要で、乳房炎に対してもさまざ

まな取り組みをしてきました。2008 年には

バルク乳体細胞数 10 万個/ml 以下を達成し

ましたが、2009 年には 10 万個/ml を上回

る結果になりました。しかし、その後も努

力を続ける中で、2012 年には全頭・全分房

乳出荷でバルク乳体細胞数 3 万個/ml 台を

一定期間維持するという成績を達成しまし

た。その後、バルク乳体細胞数は増減する

ものの、高くなった場合には早期に乳房炎

牛を摘発し、悪化する前に手を打っていま

す。

これらの成功要因として、中村氏はいく

つかのポイントを説明しました。

・ 牛床にはパスチャ―マット、また、放

牧を実施しているので、牛舎中央通路

にはゴムマットを敷いている。これは

牛だけではなく、搾乳作業等を行う人

にも優しい。

4

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・ 年間の半分は放牧しているが、これは

蹄にとても良い。また、カウコンフォ

ートに配慮した牛床管理をしているの

で、飛節は腫れもなくスッキリしてお

り、蹄角度も良い。

・ 飲水を重要視しており、全頭同時飲水

で 対 応 で き る 給 水 設 備 を 設 置 し て い

る。

・ 換気は風洞実験まで行って、牛舎内の

風量を一定にコントロールすることに

成功した。ドアの開閉まで風の流れに

影響することがわかった。

・ 搾乳システムの年 1 回チェックは必須

である(メーカー依頼)。また、バル

ク 乳 の 培 養 検 査 も 定 期 的 に 行 っ て お

り、耐熱性菌が一定数検出された場合

は洗浄不足と判断して、洗浄機能と各

部パッキン類の汚れをチェックする。

・ バルク乳温の遠隔監視システムを導入

して、万一の事故に備えている。

・ 家族経営のため、搾乳者全員の手法は

ほぼ統一されている。すみやかな搾り

きりを重視して、マッサージを含むマ

シンストリッピングは一切行わない。

・ 堆肥発酵については、嫌気性発酵菌と

の出会いが大きい。これにより、良質

堆肥生産と土壌つくりが促進された。

・ 問題解決のために、常に酪農雑誌や講

演会を通じて情報を収集し、人脈を作

っている。

・ 何か問題が生じたときは、人に会い、

その人が信用できると見定めれば、そ

の 人 の 助 言 指 導 に 解 決 の 糸 口 を 見 出

す。

中村氏は、良質な堆肥→良質な土→良質

な粗飼料→健康な牛→乳房炎を含む生産病

の低減、という信念を持っておられ、それ

がバルク乳体細胞数低下の総合要因である

と力説された。そして、日本乳房炎研究会

をはじめ、多くの研究機関が尽力している

にもかかわらず、乳房炎が減らないのは、

生産者の意識の問題と提言されました。

しかし、土作りにまでさかのぼった総合

的な牛群管理によって乳房炎制御を実証し

た中村氏の発表は、乳房炎に特化した本研

究会へ強烈なメッセージを投げかけたよう

に感じました。すなわち、乳房炎の問題は、

乳房炎対策だけでは解決できず、総合的な

対策を実施しないと解決できないことが示

唆されました。しかし、中村氏と懇談した

ところ、同牧場では酪農雑誌で知ったショ

ート乾乳をすでに実践しており、有効性を

感じているとのことでした。このことは、

総合的な農場管理と、個々の問題解決のた

めに開発された研究成果・技術が結合する

ことで、高い成果が得られることを物語っ

ています。

いいかえると、乳房炎の新しい解決策を

見出しても、それを自農場の状況にあわせ

て受け入れる力量を生産者が持たないと、

結局は効果が発揮されないことが推察され

ます。中村氏の発表を聞いて、乳房炎に限

らず、さまざまな生産ロスを低減する要諦

は、農場自らの問題解決能力を高めること

であり、農場のマネジメント力を引き出す

ことであると実感しました。中村牧場は知

らずのうちに、優良企業が持っているマネ

ジメント力を有していると思われます。今

後は、農場の継続的改善能力を引き出し、

生産ロスを低減するためのシステム研究

が、疾病や飼養管理の研究と併せて、より

重要になると思われました。

6.その他 本研究会では、ほかにも多くの発表があ り、合計してシンポジウム 5 題、一般演題

5

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13 題が発表されました。また、発表の合間

にはポスターセッションの時間が設けら

れ、展示された一般演題 13 題のポスター

の周囲で、活発な質疑応答が行われました。

本研究会の発表プログラムを以下に列記

します。

一般講演 ウシ乳腺組織における L 型アミノ酸オキシターゼの発現解析

(東京農工大、石川県畜試)

ウシ乳腺上皮細胞の酸化ストレス応答に及ぼす N アセチル L システインの影響

(東北大学院)

抗菌ペプチド S100A7 ヤギ乳腺での産生

(広島大学院)

Streptococcus 乳房炎に対する泌乳期ショート乾乳の効果

(ちば NOSAI 連、埼玉 NOSAI 連、静岡県畜技研、麻布大学ほか)

黄色ブドウ球菌および大腸菌性乳房炎の発症と乳中感染菌量の関連性

(動衛研、ちば NOSAI 連、旭化成)

ラクトフェリン加水分解物乳房内注入による潜在性乳房炎治療効果と免疫動態

(ちば NOSAI 連、麻布大学、動衛研)

乾乳後期乳牛への牛ラクトフェリン乳房内注入が分娩後の乳房炎発症に与える影響

(NOSAI 山形中央家畜診療所)

Klebsiella pneumoniae による乳牛の甚急性乳房炎における血清および乳中の急性相蛋白

とサイトカインの動態

(NOSAI えひめ、酪農学園大学)

遺伝仕組換えカイコを用いたウシ GM-CSF の大量調製

(生物資源研、動衛研、畜草研)

組換えウシ GM-CSF と抗生剤の併用投与による乳房炎治療効果の検討

(群馬畜試、動衛研)

枯草菌給与による乳牛の乳房炎予防

(宮城畜試、東北大学院、カルピス株式会社)

枯草菌給与によるウシ乳房炎発症予防と血中栄養因子およびストレス指標の変動

(東北大学院、宮城畜試、カルピス株式会社)

枯草菌給与によるウシ乳房炎発症予防と血中樹状細胞の動態

(東北大学院、宮城畜試、カルピス株式会社)

シンポジウム「牛群検定成績と現場実践経験から引き出す乳房炎の新たな研究課題」

座長:河合一洋(麻布大学)、菊 佳男(動衛研)

牛群検定を活用した体細胞数の改善

(家畜改良事業団、相原光男)

バルク乳体細胞数を 3 万個/ml に維持する酪農技術

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(北海道十勝、中村牧場、中村寿夫)

現場再度から乳房炎研究会に望むこと

(十勝 NOSAI、大林 哲)

現場に還元するための乳房炎研究

(広島大学院、磯部直樹)

日本乳房炎研究会は、臨床現場と研究機関を結ぶ場であり、情報交換や研究ネットワー

ク構築にきわめて有効な研究会です。今後とも本研究会に参加して研究成果を発信すると

ともに、得られた情報を本県畜産農家、関係機関の皆様にお伝えしたいと考えています。

(酪農科 赤松 裕久)

7

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平成 25 年度 畜産草地部会現地研究会

平成 25 年 9 月 24 日~25 日、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究

所主催の関東東海北陸農業試験研究推進会議畜産草地部会現地研究会が栃木県で開催さ

れ、地域資源を活用したエコフィード TMR を製造・供給している農業生産法人(株)那

須の農を視察しました。

1. 農業生産法人(株)那須の農 1) 沿革 「農業生産法人(株)那須の農」は豊か

な村社会の存続を目指し、酪農畜産農家と

耕種農家をつなぐパイプ役となり、耕畜連

携による地域循環型農業の実現を目指して

いる。

平成 11 年 10 月に前身である「那須 TMR

株式会社」を創立。同時期に畜産農家 27

人で「那須 TMR 利用者懇談会」を設立し、

懇談会メンバーを中心に TMR の供給を開

始。

平成 19 年 3 月に「那須 TMR 利用者懇談

会」を中心とした粗飼料生産・堆肥利用コ

ントラクター(農作業受託組織)「(株)

那須の農」を設立し、平成 20 年 10 月から

本格的な飼料稲ホールクロップサイレージ

(WCS)の生産受託を開始。しかし、農閑期

(受託作業の端境期)に収入減となる問題

が出てきたため、平成 22 年 9 月に「那須

TMR(株)」と「(株)那須の農」を統合

し、「農業生産法人(株)那須の農」を設

立、人材、物資、資金、情報の集中化を図

ることで事業の平準化の体制を整えた。

TMR 事業課、コントラ事業課、業務課の

3 課から構成され、TMR 事業課では副産物

飼料化事業と TMR 供給事業を、コントラ

事業課では自給飼料生産事業と農作業受託

事業を、業務課では生産物供給事業と管理

業務を行っている。

現在、「農業生産法人(株)那須の農」

では年間 15,000 トンを製造し、懇談会メン

バーを中心とした畜産農家に供給してい

る。メンバー以外でも利用は可能で、他県

への配送も行っている。

(株)那須の農の社屋

◎TMR(Total Mixed Ration):完全混合飼料。粗飼

料と濃厚飼料を混合したもの。乳牛が要求するす

べての飼料成分を適正に配合している。

8

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◎WCS(Whole Crop Silage):稲やとうもろこしの

実と茎葉を一緒に収穫し、発酵調製した飼料。

2) 経営方針 施設をすべて賃貸とすることで設備投資

を最小限に抑え、従業員の多くをシルバー

世代を雇用することでコスト削減に取り組

み、財務内容の強化をはかっている。また、

品質確保、商品開発に積極的に取り組み社

会的信用の獲得を目指すとともに、生産者

側・利用者側双方の値頃感の創出に努めて

いる。

3) 製造設備 飼料保管棟(3棟)、TMR 製造棟(ミキ

サー2 棟、梱包 1 棟、フレコン詰 2 棟)、

サブセンター棟、ストックヤード、事務所

棟等から成る。これら設備はすべて雪印種

苗株式会社の所有であり、賃貸となってい

る。

4) 平成 24 年度実績

・ 食品副産物飼料化事業 7,350 トン

・ TMR 飼料供給数量 4,810 トン

・ 飼料稲 WCS 生産受託事業 107 ヘクタ

ール

・ 自給飼料供給事業 (自社生産)1,650

トン (調達流通)610 トン

・ とうもろこし WCS 生産受託面積

22 ヘクタール

・ 堆肥散布事業 17 ヘクタール

安定的に TMR を製造・供給している。

とうもろこし WCS 生産受託面積は着実に

拡大傾向にあり、堆肥散布事業も増加傾向

にある。

飼料保管庫(鉄パイプにテント張りの簡素な造り)

2.「農業生産法人(株)那須の農」の取り組み 1) エコフィードのサイレージ化技術の開発 (株)那須の農では地域で発生するエコ

フィード(食品製造副産物飼料)を積極的

に活用し、混合飼料を製造・供給している。

エコフィード主体のプレミックス(乳牛用

4 種、肉牛用 1 種)の他、TMR を製造して

いる。また、農家の要望により指定された

9

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飼料原料の個別混合にも対応している。 飼料の低コスト化のため、当初は比較的

日持ちがよいビール粕を利用していたが、

第 3 のビールの登場により供給が不安定と

なった。そのため、醤油粕、トウフ粕、き

のこ菌床粕などの利用も開始した。ただし、

トウフ粕やきのこ菌床粕は変敗しやすいと

いう欠点があった。そこで雪印種苗(株)

との共同研究により、セルラーゼと乳酸菌

添加によるサイレージ化技術を開発。食品

工場から飼料原料が出荷される時点でサイ

レージ化の調製を行うことで、変敗を防い

でいる。

エコフィードの原料は種類によっては時

期により入手しやすさが変動するため、そ

の時期に入手しやすいものを使用してい

る。大きな食品製造企業と提携することで、

安定的に食品製造副産物の供給を受けるこ

とが可能となった。

これまで企業は食品製造副産物を産業廃

棄物として処理費用を支払って処分してい

たが、エコフィード原料として飼料製造業

者に提供することで、処理費用が節約でき

る。また、飼料製造者も原料を安価に入手

できるため、双方に利点がある。

那須の農で使用される主なエコフィード原料

種 類 特 性 種 類 特 性

トウフ粕 水分 80%、TDN91%

CP26% 変敗しやすい

リンゴジュース粕 水分 82%、TDN80%

CP9%

きのこ菌床粕 水分 50~65%

TDN50%

緑茶粕 TDN71%

CP30%

カテキン、ビタミン含む

醤油粕 水分 30%、TDN71%

CP28%、塩分 7~10%

小麦ストロー TDN44%、CP4%

ビール粕 水分 72%、TDN71%

CP22%

※ TDN(可消化養分総量)、CP(粗タンパク質)、ともに飼料中の栄養価の指標

敷地内に並べられた原料(トウフ粕) トウフ粕(フレコンバッグの中身)

10

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コンテナに移されたトウフ粕 きのこ菌床粕

緑茶粕 アミノ酸ケーキ(アミノ酸抽出時の副産物)

混合工程 製品のフレコン詰

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2) 六面圧縮成型ベール技術の開発 製造した飼料はフレコンバッグや自走式

フィーダー車で畜産農家に配送する。栃木

県北部を中心とした 15~20km 圏内が主だ

が、岩手県、福島県、群馬県、新潟県での

利用もある。長距離輸送の場合、フレッシ

ュ TMR の供給は困難なため、長期貯蔵可

能な包装の必要が出てきた。そこで、雪印

種苗(株)と共同で六面圧縮成型技術を開

発した。この技術で成型されたベールは乾

物密度がフレコンバッグの 2 倍あり、半年

以上の長期保存にも耐えうる。また、トラ

ックに隙間なく積載可能なため、1 回の配

送でより多くのベールを運搬できるという

利点もある。

六角圧縮成型ベール梱包機

3. 所感 「農業生産法人(株)那須の農」の事業

は地域内で着実に進展しることが伺えまし

た。今後も地域自給飼料生産の拡大、生産

物の品質向上と安全性の確保に努めて、県

内外コントラクター及び関係機関との連携

強化をはかりながら、より高度な技術を創

出することで地域循環型農業の実現へ貢献

を目指し、活動を続けていくとのことでし

た。

飼料高騰と乳価下落により、国内酪農家

の多くが、厳しい状況に追い込まれており、

静岡県内の酪農家戸数も減少の一途をたど

っています。しかし、静岡県は食品産業が

発達した都市圏に近いこと、県内にも数多

くの食品工場があること、さらにそれを活

用するための交通網も発達していることか

ら、エコフィード飼料の利用度はさらに高

まっていくと思われます。

(酪農科 永井 三紀子)

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牛肉の科学的分析について

「美味しい物が食べたい」というのは誰しもが望むところだと思います。しかし、「美

味しさ」の評価は人それぞれで、一概に優劣をつけることは不可能です。牛肉においても

同様で、市場の取引価格は脂肪交雑、いわゆるサシによって決定されますが、実際に食べ

てどれだけ美味しいのかは(美味しいことに間違いはなくても)わかりません。

ただ、見た目ではわからなくても、様々な食味に関わる成分などを機械的に分析し、数

値化することは可能で、これらの数値を用いることにより「美味しさ」を視覚化すること

ができます。そこで、当所で行っている牛肉の科学的分析について、分析手順から解析方

法、品質評価などの視点から紹介したいと思います。

1. 剪断力価

2. 水分 一定の肉片を噛み切るのに必要な力で、

肉の柔らかさを表します。ワーナーブレッ

ツェラーの力価計(図 1)という道具を使

って測定し、力価が低ければ柔らかく、高

ければ硬いということになります。剪断力

価は、品種、部位などによって異なり、一

般に黒毛和種や褐毛和種はサシの影響も

あって低い値を示します。

肉に含まれる水分の含有率です。牛肉の

水分は通常 70~75%程度で、肉汁のもとに

なりますが、あまり高いとドリップが出や

すいため、傷みやすくなります。一定量の

ミンチ肉を加熱し、減少した重量を水分が

蒸発したものとして算出します。

3. 保水性・圧搾肉汁率

保水性は肉が水分を保持する性質で、加

圧したときの食肉に占める肉汁の割合を

圧搾肉汁率といいます。これらの性質は水

分含有率と併せて、肉のきめ細かさやジュ

ーシーさに関係することが知られていま

す。

4. 肉色 肉の色調を表現するのは一般に Lab 色

差が用いられます。これは色差計(図 2)

という機械で測定し、L 値は明るさ、a 値

は赤色の強さ、b 値は黄色の強さを表しま

す。この 3 つの値の組み合わせで全ての色

が表現できると言われています(図 3)。

牛肉の赤身がかった色は、筋肉中の色

素が分解されるため、時間の経過に従って

くすんだ暗い色調に変わっていきます。販

売時には明るくて

図 1 剪断力価計

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赤っぽい色の方が好まれるようです。

5. 脂肪酸組成 牛肉の脂肪中には脂肪酸というものが

含まれています。脂肪酸には色々な種類の

ものがあり、大きく飽和脂肪酸、一価不飽

和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分かれます

(表 1 、図 4)。一価不飽和脂肪酸が多い

と脂肪が柔らく融けやすいといわれてい

て、最近ではオレイン酸が有名です。脂肪

酸組成は飼養管理などにも影響されます

が、牛の遺伝的要因で変わってきます。最

近の研究ではオレイン酸増加に関わる遺

伝子なども発見され、注目を集めていま

す。また、一部の県でオレイン酸に着目し

た改良や販売に力を入れているところも

あります。

通常は腎臓周囲の脂肪をサンプルとし

て使い、脂汁から脂肪酸を有機溶媒などで

抽出します。測定はガスクロマトグラフィ

ーという機械で行います。

図 2 色差計

図 3 Lab 色差

表 1 脂肪酸の分類

飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸

ラウリン酸

ミリスチン酸

ペンタデシル酸

パルミチン酸

ステアリン酸

ミリストレイン酸

パルミトイル酸

オレイ

ン酸

リノール酸

リノレン酸

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0% 50% 100%

C

B

A 飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸

図 4 当所牛肉サンプルの脂肪酸組成

6. 脂質酸化 牛肉の脂肪に限らず、脂質は時間の経過

に従って劣化し、品質が低下します。食品

中の脂質の酸化の評価には、酸度、過酸化

物価、TBARS(チオバルビツール酸反応物

質)等の指標が用いられ、牛脂は TBARS

で評価するのが一般的です。

TBARS の測定は、肉を粉々に砕いてか

ら試薬等を加え、分光光度計という機械で

発色の度合いを測ることにより行います。

脂質酸化のされ

やすさは脂肪酸の

飽和状態に左右さ

れます。不飽和の

力価が高いほど酸

化がされやすく、

飽和脂肪酸は比較

的 安 定 し て い ま

す。先程、不飽和

脂肪酸は融点が低

くて溶けやすいこ

と を 述 べ ま し た

が、品質保持の視

点から考えると、

単に多ければいいというものでもありま

せん。脂質酸化は、遮光包装や低温貯蔵、

脱酸素などによって、ある程度防ぐことが

できます。

7. アミノ酸含有量 牛肉は牛の筋肉でできています。筋肉は

タンパク質で構成されていて、と殺後、分

解酵素の働きでペプチドやアミノ酸に分

解されます。各遊離アミノ酸は甘味・うま

味・塩味・苦味・酸味の 5 味成分を複合的

0

5000

10000

15000

0 21 28 35 42

熟成日数

総ア

ミノ

酸含

量(μ

g/g)

**

**

15

****

図 5 熟成に伴うアミノ酸の増加

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に持っています(表 2)。中でも有名なの

はグルタミン酸やアスパラギン酸で、昆布

の主要なうま味成分として知られており、

化学的に合成したものが調味料などに使

われています。

飼養管理や血統がアミノ酸含有量に影

響するかどうかは不明ですが、と殺直後は

まだタンパク質が分解されていないため、

あまり多くはありません。熟成が進むに従

って増えていきます(図 5)。

アミノ酸分析計という機械を使い、高速

液体クロマトグラフィーという方法で各

遊離アミノ酸含有量を測定することがで

きます。それにあたっては、一定量のミン

チ肉からの水溶性成分抽出などの前処理

が必要となります。

表 2 各アミノ酸と 5 味成分

アミノ酸 甘 塩 酸 苦 旨

グリシン ○ アラニン ○ △ トレオニン ○ プロリン ○ ○ セリン ○ △ フェニルアラニン ○ トリプトファン ○ アルギニン ○ イソロイシン ○ バリン △ ○ ロイシン ○ メチオニン ○ △ ヒスチジン ○ アスパラギン酸 △ ○ ○ グルタミン酸 ○ ○

8. 核酸関連物質 9. 香気成分 リボヌクレオチドと呼ばれる一連の物

質で、食味成分としてイノシン酸やグアニ

ル酸が有名です。イノシン酸は、鰹節のう

ま味の主成分で、牛肉においてはと畜後 2

~3 日間増加した後、緩やかに減少してい

きます。測定は、アミノ酸と同様の方法で

行われます。

香りは美味しさを構成する大きな要因

で、鼻をつまんで食べると味がわかりにく

くなるのは有名な話です。特に和牛肉は輸

入牛肉と比べて甘いコクのある香り(和牛

香)が強く、魅力の一つとなっています。

その香りには、ラクトン、ケトン、アルデ

ヒド類などの脂肪由来の香気成分が関与

していることが報告されています(表 3)。 肉のうま味はグルタミン酸とイノシン

酸を中心に、その他のアミノ酸等の食味成

分が補助的あるいは相乗的に作用して形

成されると考えられています。

牛肉中の香気成分含量は給与飼料に影

響され、穀物給与によりラクトン類が増加

することが報告されています。

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分 類 成 分 アルコール

および アルデヒド類

1-ヘキサノール ヘキサナール 2-ノネナール

ケトン類 ジアセチル アセトイン 2-トリデカノン

ラクトン類

γ-ヘキサラクトン γ-オクタラクトン γ-ノナラクトン γ-ドデカラクトン

直鎖炭化水素 ドデカン テトラデカン オクタデカン

香気成分の分析には GC-MS という機械

が使われます(図 6)。単に成分を測定す

るだけでなく、測定者が実際に成分を嗅ぎ

ながら主要成分を特定することもできま

す。

図 6 GC-MS

10. 官能評価 特に、食べて美味しいかどうか評価する

方法は嗜好型(消費者型)と呼ばれ、訓練

されていない一般の人をパネリスト(評価

者)として行います。サンプルの種類や数、

目的に応じて方法を選択します(表 4)。

官能評価は、食品の味を評価する上で最

も重要な項目です。これまで紹介してきた

評価項目は、牛肉の物理的性状や食味成分

を機械的に測定するものでしたが、結局の

ところ食べてどうなのかは食べてみなけ

ればわかりません。これは、食味要素の作

用が複合的で複雑であるのに加え、閾値

(ある程度までの濃度は違いを感じない)

や直線性(濃度が 2 倍なら味が 2 倍とは限

らない)、最適値(塩が少ないと物足りな

いが、多すぎるとしょっぱい)等の問題が

あるからです。

く誤解されますが、官能評価は試食会の

延長ではなく、科学的な実験手法です。実

施にあたっては、サンプルの調整方法や提

示方法、パネリストのコントロール等、綿

密に計画する必

要があります。そのため、当所でも頻繁

に行うことはできませんが、美味しさの評

価、さらにそれを活用した商品 PR をする

上では非常に有用です。

そこで、実際に人間が食べてみてどのよ

うに感じるか評価するのが官能評価です

(図 7)。

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表 4 官能評価の実験手法

二点法 2 つのサンプルを比較し、味や香り、食感などの特性についてどちらが好ましいか評価する

三点識別法 2 種類のサンプルの内、一方を 2 つ、もう一方を 1 つ提示し、「違うもの」を選ばせる

評点法 サンプルの特性について点数をつける

順位法 サンプル間を比較して順位で回答させる

シェッフェの 一対比較法

2 種類のサンプルを順番に提示し、最初のサンプルに対して次のサンプルがどうであるか回答させる

図 7 官能評価の当所実施例

わが国の肉牛生産は、在来の役用種を基

に、血統、飼養管理、選抜育種等、様々な

視点から改良が進められてきました。美し

い大理石様の脂肪交雑をもった和牛肉は、

特に牛肉輸入の自由化以降、飛躍的な進化

を遂げ、世界に誇る高品質を実現していま

す。

その一方で、輸入飼料価格の高騰や流

通価格の高止まり、牛肉消費

の伸び悩み等、農家経営は厳しさを増し

ています。このような状況の下、国内食肉

生産の維持向上を図るためには、多様化す

る消費者ニーズをとらえ、それにきめ細

かく対応することが必要です。また、生産

から消費への橋渡しとなる「美味しさ」は

必要不可欠の要素となるでしょう。

当所としても今後、従来行ってきた技

術開発や技術支援に加

え、消費者にわかりやすい形で牛肉の良

さを伝えることができる方策を検討し、静

岡県の肉牛生産により一層貢献したいと

考えています。

(肉牛科 土屋 貴幸)

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黒毛和種の血統について 1. 和 牛 の来 歴

4~ 6 世 紀 に 朝 鮮 半 島 経 由 で 渡 来 し た と さ れ る 日 本 の 肉 用 牛 =和 牛 は 、 江 戸 時 代 に は 役

畜 と し て 広 く 活 用 さ れ 、 明 治 頃 に 外 国 産 の エ ア シ ャ ー 種 や ブ ラ ウ ン ス イ ス 種 等 と 交 配 を

行 い 、和 牛 と し て 改 良 さ れ ま し た 。昭 和 20 年 頃 に な る と 、黒 毛 和 種 、褐 色 和 種 、無 角 和

種 そ し て 日 本 短 角 和 種 が 品 種 と し て 成 立 し ま し た 。 同 時 に 、 農 業 機 械 等 の 普 及 に よ り 、

和 牛 の 役 割 は 役 用 か ら 肉 用 へ と シ フ ト し て い き ま す 。 さ ら に 、 和 牛 の 肉 用 種 へ の 転 換 に と も な っ て 、 個 別 飼 育 か ら 多 頭 飼 育 、 放 牧 か ら 舎 飼

い 、 自 給 飼 料 か ら 輸 入 飼 料 へ と 変 化 し て き ま し た 。 牛 の 改 良 に つ い て も 、 直 接 検 定 法 か

ら 間 接 検 定 法 、 さ ら に 育 種 価 に よ る 現 場 検 定 へ と 、 科 学 的 な 手 法 に 基 づ く 全 国 的 な 取 り

組 み よ っ て 産 肉 能 力 が 大 き く 向 上 し て い ま す 。 そ こ で 、 こ の 改 良 に 貢 献 し た 種 雄 牛 の 5つ の 血 統 に つ い て 紹 介 し ま す 。

【 藤 良 系】 【 田 尻 系】 藤 良 系 は 第 7 糸 桜( 島 根 県 )の 子 孫 で 構

成 さ れ た 血 統 で 、 そ の 特 徴 は 体 積 系 で あ

り 、ロ ー ス 芯 面 積 が 大 き い も の が 多 い よ う

で す 。

田 尻 系 と は 田 尻( 兵 庫 県 )の 子 孫 で 構 成

さ れ た 血 統 で 、そ の 特 徴 は 脂 肪 交 雑 、肉 色

に 優 れ た 資 質 系 で す 。 人 気 の 種 雄 牛 に 「 安 福 久 」 や 「 光 平 照 」

な ど が い ま す 。「 安 福 久 」に つ い て は す べ

て の 遺 伝 病 が フ リ ー と い う 点 も 人 気 の 理

由 の ひ と つ に な っ て い ま す 。

有 名 な 種 雄 牛 に「 芳 之 国 」が お り 、す で

に 複 数 の 産 子 が BMS12 に 格 付 け さ れ て い

ま す 。共 励 会 で も 最 優 秀 に ラ ン ク さ れ た 実

績 を も っ て い ま す 。

安 福 久 芳 之 国

( 家 畜 改 良 事 業 団 21 後 期 現 検 定 種 雄 牛 案 内 )

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【 気 高 系】 気 高 系 と は 気 高( 鳥 取 県 )の 子 孫 で 構 成

さ れ た 血 統 で 、そ の 特 徴 は 発 育 、肉 量 の 良

い 体 積 系 で す 。 有 名 な 種 雄 牛 に「 百 合 茂 」が お り 、増 体 、

肉 質 と も に よ く 、「 平 茂 勝 」の 後 継 牛 と し

て 高 い 人 気 を 誇 っ て い ま す 。

若 茂 勝 ( 家 畜 改 良 事 業 団 21 後 期 現 検 定 種 雄 牛 案 内 )

【 栄 光 系】

栄 光 系 は 、現 在 で は 希 少 と な り つ つ あ り

ま す が 、体 積 、肉 質 の バ ラ ン ス が 良 い と 評

価 さ れ て い ま す 。 代 表 的 な 種 雄 牛「 金 幸 」が お り 、そ の 子

に「 金 福 晴 」が い ま す 。「 金 福 晴 」は 雌 牛

の 系 統 を 選 ば ず 好 成 績 が 出 て い ま す 百 合 茂

【 茂 金 系】 田 尻 系 か ら の 派 生 で す が 、田 尻 系 で 劣 り

が ち な 肉 量 に 優 れ て い ま す 。 資 質 系 で す

が 、 や や サ シ が 荒 い 傾 向 が あ り ま す 。 代 表 的 な 種 雄 牛 に は 「 若 茂 勝 」 が お り 、

サ シ ム ラ の な い 枝 肉 を 生 産 し 、人 気 が 高 ま

っ て き て い ま す 。

金 福 晴 ( 家 畜 改 良 事 業 団 21 後 期 現 検 定 種 雄 牛 案 内 )

他 に も 、 菊 美 系 や 岩 田 系 な ど さ ま ざ ま な 系 統 が あ り ま す 。 2. 交 配 方法

日 本 で は 古 く よ り 、優 良 形 質 の 固 定 の た

め 近 親 交 配 が 進 め ら れ て き ま し た 。し か し

近 親 交 配 が 進 み 、 近 交 係 数 が 高 く な る と 、

肺 炎 や 腸 炎 な ど が 多 い 虚 弱 な 子 牛 や 発 育

の 悪 い 牛 が 産 出 さ れ る リ ス ク が 高 く な り

ま す 。そ こ で 、現 在 で は 5 元 交 配 が 推 奨 さ

れ て い ま す 。5 元 交 配 と は 、茂 金 系 、栄 光

系 、田 尻 系 、藤 良 系 、気 高 系 等 を 交 互 に 交

配 し 、近 親 交 配 を 避 け る 方 法 で す 。こ う す

る こ と で 、安 定 し た 産 肉 、健 康 で 肥 育 性 に

富 む 牛 の 産 出 、雑 種 強 勢 効 果 の 発 揮 等 の 効

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果 が 期 待 で き ま す 。 図 1 の 交 配 例 で は 母 の 父 が 資 質 系 の「 福

栄 」、母 の 祖 父 が 体 積 系 の「 糸 晴 」な の で 、

父 に 体 積 系 の「 平 茂 勝 」を 選 択 す る こ と で 、

増 体 、 肉 質 に 優 れ た 産 子 が 期 待 で き ま す 。

枝 肉 共 励 会 等 の 成 績 か ら は サ ン ド イ ッ

チ 交 配 が も っ と も 成 績 が 良 く 安 定 し て い

る と い う 結 果 が 出 て い ま す 。サ ン ド イ ッ チ

交 配 と は 、例 え ば 、母 の 父 が 資 質 系( 体 積

系 )、母 の 祖 父 が 体 積 系( 資 質 系 )な ら ば 、

父 を 体 積 系( 資 質 系 )に す る 、い わ ゆ る サ

ン ド ウ ィ ッ チ 型 に 交 配 す る 方 法 で す 。

現 状 で は 、サ ン ド ウ ィ ッ チ 交 配 を 基 本 に

資 質 系 と 体 積 系 の バ ラ ン ス 比 を と り つ つ 、

5 元 交 配 を す る こ と が 理 想 と い え ま す 。

母 の 父

資 質 系 福 栄

体 積 系 平 茂 勝

体 積 系 糸 晴

母 の 祖 父

増 体 ・ 肉 質 に 優 れ た 産 子

図 1 サ ン ド ウ ィ ッ チ 交 配 例

3. 育 種 価を 利 用 した 交 配 方法 上 記 交 配 法 と は 別 に 繁 殖 雌 牛 の 評 価 に

よ り 交 配 す る 方 法 も あ り ま す 。現 在 、産 肉

能 力 は 「 枝 肉 重 量 」 、 「 BMS No( サ シ の

量 )」、「 ロ ー ス 芯 面 積 」、「 バ ラ の 厚 さ 」、

「 皮 下 脂 肪 厚 」、「 歩 留 基 準 値 」の 6 形 質

を 評 価 し て い ま す( 表 1)。各 形 質 に つ い

て 、県 平 均 か ら の 差 が 評 価 と し て 表 示 さ れ

ま す 。平 均 よ り 高 け れ ば + 、低 け れ ば - の

数 値 に な り ま す が 、よ り わ か り や す く す る

た め 各 項 目 を A~ C の 三 段 階 で 表 示 し て い

ま す 。 上 位 1/4 を A、 下 位 1/2 を C、 そ の

中 間 が B と な り ま す 。こ れ ら の 評 価 情 報 を

育 種 価 と 呼 び ま す 。繁 殖 雌 牛 は そ の 産 子 や

血 縁 牛 が 出 荷 さ れ て お り 、デ ー タ ベ ー ス に

登 録 さ れ て い れ ば 推 定 育 種 価 が わ か り ま

す 。こ れ に よ り 母 牛 の 強 み 、弱 み を 知 る こ

と が で き 、効 率 的 な 繁 殖 雌 牛 の 更 新 が 可 能

と な り ま す 。ま た 交 配 例 と し て は 、表 1 に

示 し た「 ぎ じ ゅ つ 」と い う 繁 殖 雌 牛 は 、ロ

ー ス 芯 面 積 、皮 下 脂 肪 厚 等 で A と 高 評 価 を

得 て い ま す が 、枝 肉 重 量 、バ ラ の 厚 さ で Cと 低 評 価 を 受 け て い ま す 。そ こ で 掛 け 合 わ

せ る 種 雄 牛 は 、精 液 在 庫 が 表 2 の よ う な 場

合 な ら 、 若 茂 勝 、 菊 花 国 、 茂 勝 栄 が 枝

肉 重 量 、 バ ラ の 厚 さ と も に A 評 価 な の で 、

こ れ ら が 候 補 と な り ま す 。枝 肉 重 量 と バ ラ

の 厚 さ の 改 良 に 優 れ る 種 雄 牛 を 掛 け 合 わ

せ る こ と で 、 よ り よ い 産 子 が 期 待 で き ま

す 。

表 1 育 種 価 情 報

枝肉重量

育種価

ロース芯面

積育種価

脂肪交雑

育種価

バラの厚さ

育種価

皮下脂肪

育種価

歩留基準

値育種価

価 評

価 評

価No. 登録番号

2 ぎじゅつ 13.8 C 10.4 A 1.287 0.52 C -0 .273 1.88 AB A

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表 2 精 液 在 庫 例

若茂勝 0.057 A 1.908 A 1.87 A菊花国 -0.514 C 2.523 A 1.713 A茂勝栄 -0.255 C 1.56 A 1.575 A美津照 -38.983 C -2.246 C -0.672 A -0.45 C 0.243 C 1.322 A北湖2 -28.315 C 5.524 A -0.452 A -0.262 C 1.111 A 1.229 A安福勝 18.45 B 7.488 A 1.123 A -0.161 C 1.779 A 1.256 A美津福 -41.918 C 3.248 B -0.336 A -0.476 C 1.235 A 1.687 A

皮下脂肪の厚さ 歩留基準値 脂肪交雑

36.647 A 15.07 A 0.422 A62.332 A 14.657 A 1.185 A43.837 A 9.268 A 0.818 A

枝肉重量 ロース芯面積 バラの厚さ

4. 肉 牛 の遺 伝 病

一 部 の 種 雄 牛 は 遺 伝 病 を 保 因 し て い ま

す 。遺 伝 病 の 保 因 が わ か っ て い る 種 牛 の 精

液 を 使 用 し て 、生 ま れ た 子 牛 が そ の 遺 伝 病

で 死 亡 し た と 診 断 さ れ た 場 合 に は 保 険 金

は 支 払 わ れ ま せ ん 。こ の こ と か ら 遺 伝 病 は

経 済 被 害 が 大 き い と 言 え ま す 。 バ ン ド 3 欠 損 症 、 ク ロ ー デ ィ ン 16 欠 損

症 、チ ェ デ ィ ア ッ ク ヒ ガ シ 症 候 群 、モ リ ブ

デ ン 補 酵 素 欠 損 症 等 が 有 名 で す が( 表 3)、

最 近 発 見 さ れ た も の に IARS 異 常 症 が あ り

ま す 。 IARS 異 常 症 は 、 常 染 色 体 単 純 劣 性

遺 伝 に よ り 引 き 起 こ さ れ ま す 。タ ン パ ク 質

の 基 を 作 る 遺 伝 子( IARS)が欠 損 す る と 、

生 時 体 重 が 小 さ い 、 自 力 哺 乳 や 起 立 困 難 、

虚 弱 で 下 痢 や 肺 炎 等 に 罹 り や す い な ど の

症 状 が 見 ら れ ま す 。産 肉 能 力 が 優 れ た 種 雄

牛 で あ っ て も 、 IARS 異 常 遺 伝 子 を 保 因 し

て い る も の( 表 4)に つ い て は 、非 保 因 牛

と 交 配 す れ ば 発 症 牛 が 生 ま れ る 可 能 性 は

あ り ま せ ん が 、一 方 、保 因 牛 同 士 を 交 配 す

る と 25% の 確 立 で 虚 弱 の 子 牛 が 生 ま れ る

場 合 が あ る の で 交 配 に は 注 意 が 必 要 で す

( 図 2)。た だ し 発 症 し な け れ ば 肥 育 成 績

等 に 影 響 は あ り ま せ ん 。「 光 平 照 」、「 芳

之 国 」等 よ く 使 わ れ る 種 雄 牛 も 保 因 牛 な の

で 、交 配 に 使 用 す る 場 合 は 、繁 殖 雌 牛 の 遺

伝 子 検 査 を し 、雌 牛 の 保 因 の 有 無 を 確 認 す

る こ と を 推 奨 し ま す 。し か し 、全 頭 検 査 す

る と な る と か な り の 費 用 が か か っ て し ま

い ま す 。ま た 遺 伝 病 に は 、ま だ わ か っ て い

な い も の も あ る と さ れ て い ま す 。 そ こ で 、

も し 虚 弱 な 子 牛 が 生 ま れ た 場 合 は 、そ の 母

牛 に 同 じ 精 液 を 使 わ な い の が 無 難 で あ る

と 考 え ら れ ま す 。

表 3 主 要 遺 伝 病

遺 伝 病 名 主 な 症 状 原 因 バ ン ド 3 欠 損 症 貧 血 、 黄 疸 バ ン ド 3 タ ン パ ク 質 の 欠 損

チ ェ デ ィ ア ッ ク ヒ ガ シ 症 止 血 不 全 、 赤 目 血 小 板 機 能 異 常 、 メ ラ ニ ン 顆 粒 の 異 常

モ リ ブ デ ン 補 酵 素 欠 損 症 腎 障 害 に よ る 発 育 不 モ リ ブ デ ン 補 酵 素 硫 化 酵 素 遺 伝 子 の 変

ク ロ ー デ ィ ン 16 欠 損 症 尿 毒 症 ク ロ ー デ ィ ン 16 タ ン パ ク 質 の 欠 損

第 13 因 子 欠 損 症 止 血 不 全 血 液 凝 固 第 13 因 子 の 欠 損

眼 球 形 成 異 常 症 完 全 盲 目 眼 球 形 成 に 関 わ る 遺 伝 子 の 変 異

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母 : 保 因 父 : 保 因

50% 保 因 25% 正 常 25% 発 症

図 2 IARS 異 常 遺 伝 子 保 因 牛 同 士 の 交 配

名 号

谷 美 安 照 福 琴 福 栄 福 谷

安 福 栄 福 美 津 光 平 照 但 好

谷 照 美 桜 9 美 琴 貴 平 3

八 重 糸 糸 菊 谷 芳 之 国 杉 蔦

安 次 郎 北 湖 2 琴 照 安 安 平 照

福 栄 福 安 美 美 津 安 照 安 金

第 7 安 福 谷 福 長 谷 風

照 幸 重 若 茂 勝 王 将

鶴 谷 福 若 鶴 山 紋 次 郎

表 4 IARS 異 常遺 伝子保 因 牛

5.最後に

近年、TPP(環太平洋連携協定)問題により

日本の農業は先行きが不透明な状態が続いてい

ます。もし関税が撤廃されてしまうと、牛肉に

ついては 3 等級以下のものは一部を除き、安い

輸入牛肉に置き換わり、生産量は 68%減、生産

額は 3600 億円の減少という試算もあります。

しかし「和牛」は日本独自のものであり、輸入

牛肉と戦うための武器でもあります。今後は高

品質なものを安定して生産していく必要があり

ます。 当所としては和牛の発展、改良に努めつつ、

畜産経営者の皆様の声に応えられるよう尽力し

ていきます。 (肉牛科 宮本泰成)

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特定外来生物「アレチウリ」にご用心! はじめに

近年、飼料価格の高騰に伴い、自給飼料を見直す動きが強まっており、牧草地や飼料畑での雑草

対策の重要性がますます高まっています。ギシギシやイチビなど、除草剤を適切に使用すれば効果

的に防除できるものもありますが、近年、ワルナスビやイヌホオズキなど、防除が難しい雑草が勢

力を拡大しつつあります。今回は、そうした難防除雑草のうち、驚異的な生長スピードを持ち、特

定外来生物にも指定されている「アレチウリ」について触れたいと思います。

1. アレチウリの生態 アレチウリは、ウリ科の一年生の植物です。

つる性で、生育速度が非常に速く、長さは数~

十数 m にもなり、何本にも枝分かれするため、

1 株でも広い面積を覆ってしまいます(写真 1)。 芽生えは同じウリ科のキュウリやカボチャ

とよく似ています。大きくなるとクズ(マメ科)

と似ていますが、葉の形の違い(写真 2)や、

クズの葉やつるには黄褐色毛があることなので

識別は容易です。原産地は北米で、日本では

1952 年に清水港で初めて発見され、現在では全

国に広まっています。概ね 5~10 月に発生し、

開花期は概ね 8~10 月です(写真 3)。 開花は短日で促進されるため、9 月以降に出

芽したものは植物体が小さくても開花・結実し

ます。1 株あたり 400~500 個の種子をつける

とされていますが、もっと多いとの報告もあり

ます。1 個の実に 1 個の種子が入っていますが、

数個の実が 1 箇所にまとまって付く(写真 4)

ため、実が落ちたところを中心に群生します。 種子には休眠性があり、土壌に落ちた種子は

何年かにわたって発芽します。なお、実には鋭

いトゲがあり、軍手や薄手の作業着を突き抜け

てチクチクと痛みます。 冬には枯死しますが、丈夫なつるは枯れても

原型をとどめるため、他の植物の生育を妨げて

しまいます。

写真 1 繁茂したアレチウリ 写真 2 クズの葉(上)とアレチウリの葉(下)

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写真 3 アレチウリの花 写真 4 アレチウリの果実の塊

2. 生息場所、伝播経路 日当たりがよく、豊かな土壌を好みます。畑

地や有機物の多い河川敷をはじめ、路傍や原野

など、たいていの場所で生育できます。輸入さ

れた穀物や飼料に種子が混ざって日本に侵入し

たと考えられています。中央農業総合研究セン

ター(以下中央農研)の研究によれば、国内の

アレチウリの遺伝的変異が小さいことから、同

じような種子が同時期に異なる地方に持ち込ま

れたと推測されるそうです。 飼料畑や牧草地への侵入ルートとしては、輸

入飼料→糞→堆肥(→ほ場への散布)が考えら

れています。種子は水にも強く、排水路や河川

など、水の流れに乗って分布を拡大しているよ

うです。 3. 農作物や環境への影響 アレチウリの特徴は、「つる性で」「成長が

早い」ことです。トウモロコシなどの飼料作物

で発生すると、作物に巻きつき、覆いかぶさり、

ひどい場合には倒伏させてしまいます。飼料用

トウモロコシの場合、1 ㎡あたり 2 本程度で 80

%、5 本程度では 90%以上の減収になるといわ

れています。河川敷などでは他の植物を圧倒し、

在来植物を著しく減少させてしまいます。最近

では、水田輪作地帯の大豆畑の一部にも侵入し、

地域によっては壊滅的な被害を受けています。 4. 特定外来生物 以上のような理由から、アレチウリは「特定

外来生物」に指定されています。「特定外来生

物」は飼育や栽培、保管及び運搬することが原

則として禁止されており、違反した場合には刑

罰が科せられることもあります(研究目的で栽

培する場合でも許可が必要で、厳密な管理が要

求されます)。また、日本生態学会がまとめた

「外来種ハンドブック」では、特に影響の大き

い侵略的外来種として「日本の侵略的外来種ワ

ースト 100」にも選ばれています。

5. 防除法 現時点でもっとも取組みが進んでいるのは長

野県の千曲川及び犀川流域です。国土交通省北

陸地方整備局の千曲川河川事務所や長野県、長

野市など河川行政の関係者が平成 5 年から継続

的に防除活動を行っており、詳細な冊子も作成

していますので、その成果を中心に紹介します。 アレチウリは繁茂すると長く枝分かれしたツ

ルが互いに絡み合い、刈取や除去が非常に困難

です。種子をつけてしまうと翌年以降も大量に

発生します。また、5 月~10 月頃までだらだら

と発芽するので、一度除去してもしばらくする

と元の状態に戻ってしまいます。 (1) 抜き取り 原始的ですが、多発に至っていない場合には

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一番確実です。ポイントは「種子をつける前に」

「できるだけ小さいうちに」「1 年に複数回」

「発生しなくなるまで数年間続けて」抜き取る

ことです。 アレチウリは植物体は大きいものの、根の張

りはあまり強くないので、簡単に抜くことがで

きます。長さ 1~2m くらいの時が見つけやす

く、枝分かれも少なく抜きやすいので、このス

テージで抜き取りをすると作業効率が良くなり

ます。夏には 1 ヶ月くらいで急速に成長するの

で、千曲川流域の場合、6 月下旬、7 月下旬~8月上旬、9 月上旬の 3 回抜き取るのが効果的と

されています(5 月中旬、6 月下旬の 2 回のみ

の場合、10 月には繁茂してしまったそうです)。 (2) 刈取り 労力の点から、草刈機による刈り取りを行う

場合もあると思われます。しかし、刈り取りで

は、残った節から再生するおそれがありますの

で、繁茂するのを防ぐためには、抜き取りと同

程度以上の頻度で刈り取る必要があると考えら

れます。また、繁茂した場合、草刈機に絡みつ

いて作業が困難になってしまいます。 なお、河川敷の管理で年 1 回しか除草作業が

できない場合、開花~結実前(調査箇所(愛知

県逢妻女川)では 8 月中旬~9 月上旬)に機械

で刈取を実施することで、発生密度を低下させ

ることができるとの報告があります。 (3) 除草剤 飼料用トウモロコシについて、現在利用可能

な除草剤と作付体系を組み合わせたアレチウリ

防除法が、(独)畜産草地研究所から提案され

ているので紹介します。 飼料用トウモロコシで登録のある除草剤の

うち、アレチウリに対しては有効とされている

ものは、土壌処理剤ではアトラジンを含むもの

(ゲザプリム等)、生育期の茎葉処理剤ではニ

コスルフロンを含むもの(ワンホープ)です。

播種直後のアトラジン処理によりアレチウリの

発生はある程度抑えられるものの、その効果は

不安定とされています。また、アトラジンの残

効が減少すると、アレチウリが出芽してくるの

で、実生が生育してきたらワンホープ散布が必 要となります。アレチウリ対策の観点からは、

ワンホープ散布時期は、使用基準の範囲内でで

きるだけ遅くするのが望ましいとされていま

す。ワンホープ散布以降に可能な防除手段は手

作業での抜き取りや刈り取りのみです。アレチ

ウリは 8 月上旬(早いところでは 7 月下旬)か

ら開花し、開花後 30 日程度で種子が成熟する

ので、これより前に収穫できる極早生~早生品

種であれば、トウモロコシの収穫に伴いアレチ

ウリも種子が成熟する前に刈り取られます(図

1)。 なお、この防除体系は北関東を想定したもの

であり、冬作は極早生イタリアンライグラスが

想定されていますが、富士西麓地域など、4 月

下旬でのイタリアンライグラス収穫が難しい地

域では、晩夏播きエンバクが現実的と思われま

す。市販の超極早生エンバクであれば、当研究

所(標高 688m)でも 9 月中旬播種で年内に出

穂することが確認されています。

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図 1 アレチウリの防除体系の一案

6. 処分上の注意 ①②は、処分をする上での原則です。自治体や

市民団体で駆除の取組を行っているところで

は、③の手続きを取っているところが多いとの

ことです。また、④にあるとおり、一つの敷地

の中で除去したものを敷地内の一部に集積して

処分(焼却、除草剤散布等)する場合は「移動」

したとはみなされないので、草地や飼料畑で見

つけた場合には、すみやかに敷地内で処分する

ことが可能です。ただし、「廃棄物の処理およ

び清掃に関する法律」では、廃棄物の屋外焼却

は原則として禁止されています。「農林漁業を

営む上でやむを得ない場合」(田の畔草の焼却

など)には例外的に認められますが、人家の近

くで焼却を行う場合には、防火はもちろんのこ

と、有害なガスを発生させないことや、風向、

悪臭にも十分な注意が必要です。

前述のとおり、アレチウリは「特定外来生物

に指定されており、「生きたままでの移動」が

原則として禁止されています。こう言われると、

実際に駆除することになった場合にどうすれば

よいのでしょうか?これについて、環境省の関

東地方環境事務所に照会してみましたので、そ

の要点を紹介します。 ①生きたまま運搬するのことは出来ない(特に

種子、あるいは種子がついた状態)。 ②移動させる場合には、枯死させてから行う。 ③生きた植物体や種子を、こぼれないようにし

て運搬し、散逸する心配のない場所・方法で処

分することは可能である。ただし、地方環境事

務所に所定の届けを行い、許可を得ることが必

要である。 ④外の道路を通らず、敷地内で動かす分には、

「移動」とはみなさない。 7. アレチウリの拡大を食い止めるために

残念ながら、アレチウリを含め「特定外来生

物」の侵入を監視し食い止める体制は十分では

ありません。アレチウリについていえば、生息

環境である河川敷周辺や道路沿い、農地を管轄

する行政部署は皆異なっており、一元的な対策

が取れている地区は長野県などに限られていま

す。これは個人的な意見ですが、アレチウリに

限らず、ワルナスビ等も農耕地以外に生息域を

広げつつある現状を考えますと、特定外来生物

に対応する情報や対策を共有する体制が必要だ

と考えております。

これまでみてきたとおり、アレチウリは、飼

料作物畑や大豆畑では強害難防除雑草であり、

自然生態系においては在来植物を抑圧し生物多

様性を損なう「特定外来生物」で、農業・環境

の両面で、「駆除すべき植物」であり、「分布

を拡大させてはいけない植物」です。特に富士

山麓では、富士山が世界文化遺産に指定された

ことから、より一層良好な景観や環境を保つこ

とが求められています。前述のとおり、牧草地

や飼料畑から水系沿いに種子が流出して分布を

拡大するおそれがありますので、農地では、発

見し次第、速やかに駆除することが望まれます。

駆除に際しては、誤って種子や種子のついた植

物体を生きたまま持ち出さないよう、注意する

必要があります。

(飼料環境科 高野 浩)

参考文献 国土交通省北陸地方整備局千曲川河川事務所調

査課 2003. 千曲川・犀川のアレチウリ-河

川の自然を守るための外来植物対策- 佐藤節郎 2012. 飼料畑で問題になりつつある

帰化雑草の発生実態と防除法. 平成24年度自

給飼料研究会飼料:61-74 長野県環境部水大気環境課 2011. アレチウリ

対策研修会資料 西村薫・三木直人・吉野知明・鈴木正幸 2010.

逢妻女川における特定外来生物「アレチウリ

」の防除対策とモニタリング. 土木学会第65回年次学術講演会講演概要集:363-364.

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少子高齢化が進行する農業における農作業研究の動向

こ こ 1 年 は 、 公 私 に 係 わ ら ず 、 電 子 工 学 、 人 間 工 学 、 ロ ボ ッ ト 工 学 、 福 祉 医 療 の 先 端

的 研 究 者 が 参 加 す る 各 種 情 報 交 換 会 や 会 議 に 参 加 さ せ て い た だ く 機 会 を 得 て い ま す 。 そ

こ で 、 キ ラ キ ラ し た 異 分 野 の 最 先 端 の 技 術 ・ 情 報 に ふ れ る た び に 、 “ の ん び り ” し た 農

業 分 野 と は 違 っ た 刺 激 を も ら っ て い ま す 。は じ め は 個 人 的 な 興 味 が 動 機 で し た が 、将 来 、

そ し て 現 在 の 農 業 が か か え る 深 刻 な 課 題 を 対 象 と し た 研 究 も 数 多 く あ る 事 が わ か り 、 し

か も 多 く が 、 我 が 国 の 畜 産 分 野 で は 、 未 開 拓 の 研 究 分 野 で も あ る こ と が 印 象 付 け ら れ ま

し た 。 次 年 度 よ り 、 予 備 的 な 関 連 研 究 課 題 を は じ め る に あ た り 、 関 連 す る 周 辺 事 情 を ご

紹 介 し ま す 。 1. 社 会 保障 費 の 抑制

御 存 知 の よ う に 、日 本 の 人 口 比 率 は 著 し

い 少 子 高 齢 化 に 進 ん で お り 、 す で に 2015年 に は 、 4 人 に 1 人 は 高 齢 者 ( 65 才 以 上 )

に な る こ と が 確 実 で す 。増 大 す る 社 会 保 障

費( 年 金 、医 療 、福 祉 、そ の 他 )を ど の よ

う に 支 え て い く か と い う 政 策 研 究 が 、消 費

税 率 の 見 直 し 等 の 制 度 研 究 と と も に 続 い

て い ま す が 、な か な か 明 る い 展 望 が 開 け て

い な い の が 実 情 で す 。こ れ は 、日 本 だ け に

限 っ た 話 で は な く 、先 進 国 全 て に 共 通 す る

社 会 問 題 で す が 、国 に よ り 社 会 環 境 や 歴 史

的 な 背 景 が 異 な る た め 、課 題 解 決 に 向 け た

ア プ ロ ー チ は 様 々 で す 。時 々 、ニ ュ ー ス で

欧 州 の カ ト リ ッ ク 圏 に お け る 若 者 の 失 業

率 が 知 ら さ れ ま す が 、 す で に 50%を 超 え 、

少 子 高 齢 化 以 上 に 深 刻 な 課 題 を 抱 え て い

る の で 、日 本 以 上 に 先 が 見 え な い 状 況 に あ

る の か も し れ ま せ ん 。

デ ィ サ ブル ド ・ パー ソ ン ズ( 高 齢 者・ 障 が い者 ・ 女 性) の 労 働研 究

社会保障費は年々増大。 医療費・介護の低減が急務

社会保障費の将来推計 2. 農 業 にお け る 高齢 化

と り わ け 、農 業 部 門 の 少 子 高 齢 化 は 深 刻

で 、す で に 農 業 の 基 幹 労 働 力 と な る 従 事 者

の 3 人 に 1 人 が 65 才 以 上 の 高 齢 者 に な っ

て い ま す 。同 時 に 、他 産 業 に 比 較 し て 若 年

層 の 労 働 力 の 比 率 が 、 著 し く 低 い の も 農

業 の 特 徴 で あ り 、そ の た め に 基 幹 労 働 年

齢 の 国 内 平 均 は 、 ほ ぼ 60 才 に 達 し て い ま

す 。 こ の 傾 向 は 、 年 を 追 っ て 顕 著 に な り 、

大 き な 産 業 的 な 変 革 が な い 限 り 、高 齢 者 が

農 業 生 産 の 主 体 的 な 役 割 を 背 負 い 続 け る

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構 造 は 続 く と 予 想 さ れ て い ま す 。 こ れ は 、

産 業 と し て 見 た 農 業 に 係 わ る 世 帯 数 の 減

少 と 若 者 の 新 規 就 農 の 減 少 と い う 2 つ の

原 因 が 影 響 し て い ま す 。た だ し 、生 産 効 率

の 改 善 に よ り 産 業 規 模 が 、農 業 人 口 に 比 例

す る よ う に 大 き く 減 少 し て い る わ け で は

あ り ま せ ん 。

3. 高 齢 化関 連 研 究

さ て 、少 子 高 齢 化 に 関 す る 研 究・政 策 に

つ い て て で す が 、従 来 は 社 会 の お 荷 物 と し

て と ら え 、社 会 的・経 済 的 衰 退 の 要 因 と し

て ネ ガ テ ィ ブ な 点 を 追 求 す る 研 究 が 数 多

く 展 開 さ れ て き ま し た が 、 80 年 代 か ら 徐

々 に 、高 齢 化 の 主 体 性 、つ ま り 、健 康 や 生

き 甲 斐 の 追 求( サ ク セ ス フ ル・エ イ ジ ン グ )

と 社 会 的 自 立 の 追 求( プ ロ ダ ク テ ィ ブ・エ

イ ジ ン グ )の 2 つ の 側 面 か ら 研 究 さ れ る よ

う に な っ て い ま す 。も う 、支 え る と い う 上

か ら 目 線 で は な く 、い っ し ょ に ど こ ま で 頑

張 れ る か と い う 視 点 の 変 更 と い ず れ 誰 も

が 高 齢 者 に な る と い う こ と に 気 づ い た 事

が 契 機 に な っ た の で し ょ う 。 さ ら に 、社 会 を 支 え る 存 在 と し て 、高 齢 者

だ け で な く 、障 が い 者 や 女 性 の 社 会 参 加 も

重 視 さ れ 、 「 デ ィ ー セ ン ト ・ ワ ー ク =( 経

済 的 に 成 立 す る 、 や り が い の あ る 仕 事 ) 」

農業部門

非農業部門

将来的にも、高齢者が支え続ける日本の農業

年齢階層別農業従事者・非農業従事者の推移 (www.sta t .go. jp /data /chouk i /zuhyou/07-04.x ls )

農業の働き頭は高齢者

年齢階層別農業従事者の推移 (www.sta t .go. jp /data /chouk i /zuhyou/07-04.x ls )

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の 実 現 が 、労 働 条 件 と 生 活 水 準 の 改 善 を 目

指 す 国 際 機 関 で あ る ILO( 国 際 労 働 機 関 )

の 目 標 の 1 つ に も な っ て い ま す 。 そ こ で

は 、筋 力・体 力 等 に 弱 み を 持 っ た「 高 齢 者

・障 が い 者・女 性 」を デ ィ サ ブ ル ド・パ ー

ソ ン ズ と し て 表 現 さ れ て い ま す が 、 つ ま

り 、誰 も が よ り 多 く の 年 を 重 ね て 、デ ィ サ

ブ ル ド・パ ー ソ ン ズ と し て 生 き る 時 代 に な

っ た 中 で 、「 社 会 が デ ィ サ ブ ル ド・パ ー ソ

ン ズ を 支 え 、デ ィ サ ブ ル ド・パ ー ソ ン ズ が

支 え る 」と い う 社 会 の 仕 組 み を 作 る 時 期 に

到 達 し た よ う で す 。 そ こ で 、農 業 部 門 に お け る サ ク セ ス フ ル ・

エ イ ジ ン グ 、す な わ ち 、デ ィ サ ブ ル ド・パ

ー ソ ン ズ の 農 業 従 事 と 健 康 や 生 き 甲 斐 の

関 係 に 注 目 し た 研 究 ト レ ン ド を 見 て み ま

し ょ う 。

4. サ ク セス フ ル ・エ イ ジ ング ~ 農 業の 健 康 増進 効 果 研究 今 ま で の 経 済 合 理 性 一 辺 倒 の 農 業 生 産

で は 、「 い か に 効 率 良 く 生 産 し 、い く ら 儲

か っ た か 」が 、最 大 の 評 価 ポ イ ン ト で し た

が 、そ の 見 方 を 変 え て 、農 業 生 産 に 従 事 す

る 中 で 、ど の よ う に 日 々 を 心 豊 か に 生 き る

か 、つ ま り 生 活・人 生 の 質( QOL : Quality of Life)を 重 視 し た 研 究 で す 。た だ し 、経

済 合 理 性 を 無 視 し た も の で は な く 、個 々 の

特 性 を ど の よ う に 活 か し て 合 理 的 に 生 産

す る か と い う 観 点 に 立 っ て い る も の で す 。

関 連 す る 報 告 の 中 に は 、「 体 を 動 か す 」肉

体 的 効 果 と「 収 入 確 保 」と い う 心 理 的 効 果

が 、生 き 甲 斐 に つ な が る プ ラ ス 効 果 が 推 定

さ れ て い ま す 。一 方 、農 作 業 そ の も の は 心

的 ス ト レ ス に な る と い う マ イ ナ ス 面 が あ

る も の の 、自 由 度 が 高 い 性 質( 制 約 が 少 な

い )が あ る た め 、ス ト レ ス 対 処 の し や す い

特 性 が 評 価 さ れ て い る よ う で す 。農 家 経 済

の 視 点 で は 、特 に 、家 族 主 体 の 農 業 経 営 で

は 、家 族 の 要 介 護 機 会 や 受 診 機 会 を 減 ら す

こ と は 、生 産 性 の マ イ ナ ス を 減 ら す こ と に

な る た め 、生 産 性 を 低 下 さ せ な い と い う 意

味 で 、農 業 生 産 性 の 向 上 と と ら え る こ と も

で き ま す 。こ の 分 野 の 研 究 は 、こ の 数 年 で

よ う や く 本 格 化 し 、様 々 な 成 果 が 出 始 め て

い ま す 。当 然 、農 業 の 健 康 増 進 効 果 は 、高

齢 者 だ け で な く 、障 が い 者 や 女 性 に つ い て

も 研 究 さ れ 、 土 や 家 畜 と ふ れ あ う こ と で

「 心 の 癒 し 作 用 」を 求 め る ホ リ ス テ ィ ッ ク

農 業 は 、す で に 実 用 化 さ れ て い る 分 野 も あ

り ま す 。

い く つ か の 統 計 的 分 析 結 果 か ら 、高 齢 者

の 医 療 費・介 護 費 を 、農 業 従 事 者 と 非 従 事

者 で 比 較 す る と 、明 ら か に 前 者 で 、そ の 費

用 が 低 く な る こ と が わ か っ て い ま す 。高 齢

化 社 会 で は 、生 活 習 慣 が 原 因 す る 生 活 習 慣

病 が 、医 療 費 の 3 割 、死 亡 原 因 の 6 割 を 占

め ま す が 、日 々 の 健 康 状 態 の 維 持 に 農 作 業

が 有 用 で あ る と い う 調 査 報 告 が い く つ か

出 て き て い ま す 。そ こ で 、農 作 業 が ど の よ

う な 理 由 で 高 齢 者 の 健 康 維 持 に 役 立 っ て

い る か を 科 学 的 な 視 点 で 研 究 さ れ 始 め て

い ま す 。 農業は健康を作る

30一人当たり老人医療費と有業率の関係

(平成 14 年度就業構造基本調査 厚労省)

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5. プ ロ ダク テ ィ ブ・ エ イ ジン グ 研 究~

次 に 、サ ク セ シ ブ ル・エ イ ジ ン グ 研 究 の

次 に 、プ ロ ダ ク テ ィ ブ・エ イ ジ ン グ の 研 究

ト レ ン ド を 見 て み ま す 。い く つ か の 研 究 ト

レ ン ド が あ り ま す が 、私 達 の 産 業 分 野 で 注

目 さ れ る の は 、筋 力・体 力・反 応 性 が 劣 っ

て き た デ ィ サ ブ ル ド・パ ー ソ ン ズ が 、効 率

的 に 働 く た め の 研 究 開 発 が 主 体 と 考 え ら

れ ま す 。 デ ィ サ ブ ル ド ・ パ ー ソ ン ズ の 保 有 能 力

は 、個 人 差 が 大 き く 、人 生 観 や 価 値 観 も 多

様 な た め 、個 々 の 特 性 を 考 慮 し た 適 合 性 の

高 い 作 業 機 器 の 開 発 や 作 業 環 境 の 研 究 が

必 須 で す 。特 に 、農 業 で は 、単 純 な 反 復 作

業 、危 険 な 作 業 、さ ら に 肉 体 的 に つ ら い 持

続 的 な 中 腰 姿 勢 や 重 量 物 の 上 げ 下 げ の 繰

り 返 し 等 を 対 象 に し た 研 究 が 主 体 に な っ

て い ま す 。 機 械 的 な 要 素 で 人 の 負 担 を 減 ら す 手 法

と し て 、 全 て 機 械 ま か せ に す る 「 自 動 化 =ロ ボ ッ ト 化 」、人 の 体 力 を 強 化 す る「 増 力

化 =パ ワ ー ド ス ー ツ 」 、 そ し て 人 の 動 作 を

楽 に す る 「 軽 労 化 =ア シ ス ト ス ー ツ 」 の 3つ が あ り ま す 。い ず れ も 、ア ベ ノ ミ ク ス で

研 究 強 化 さ れ た 研 究 部 門 で す が 、農 業 と い

う よ り 、高 齢 化 に 伴 う 介 護 労 働 力 の 負 担 軽

減 を 目 的 に 厚 労 関 連 の 研 究 が 先 行 し て き

て い ま す 。

1) ロ ボ ッ ト 、 パ ワ ー ド ス ー ツ

こ れ ら は 健 常 者 を 対 照 と し た 技 術 で 省

力 化 、効 率 化 を 前 提 と し た も の な の で 、今

回 の テ ー マ と は 異 な り ま す が 、次 節 の 理 解

の た め に 簡 単 に 説 明 し て お き ま す 。 農 水 省 で は 、基 盤 的 技 術 開 発 と し て 、農 作

業 の ロ ボ ッ ト 化 研 究 が 集 中 的 に 展 開 さ れ 、

新 聞 雑 誌 等 で 、広 い 圃 場 の ト ラ ク タ 作 業 の

自 動 化 、ハ ウ ス 栽 培 施 設 に お け る 管 理 や 収

穫 を 自 動 化 す る ロ ボ ッ ト 、収 穫 物 を 選 別 ・

出 荷 整 理 の 自 動 化 を す る ロ ボ ッ ト 研 究 等

が 紹 介 さ れ る 機 会 が 増 え て い ま す 。我 々 の

分 野 で は 、搾 乳 ロ ボ ッ ト や 哺 乳 ロ ボ ッ ト が

す で に 実 用 化 さ れ て お り 、農 業 の 自 動 化 に

関 し て は 先 行 し て い ま す 。 当 然 、こ の よ う な「 自 動 化 」に は 、大 き

な 資 本 投 下 を 必 要 と す る た め 、経 済 的 に ペ

イ す る た め に は 、大 規 模 な 生 産 基 盤 を 必 要

と し ま す 。農 業 用 ロ ボ ッ ト は 、室 内 で 決 ま

っ た 材 料 に 対 す る 決 ま っ た 工 程 を 任 さ れ

る 産 業 用 ロ ボ ッ ト 異 な り 、屋 外 、時 に 不 整

地 で 様 々 な 対 象 物 、例 え ば 収 穫 物 、雑 草 や

畑 の 耕 運 と い っ た 対 象 物 が 一 定 で は な い

物 を 相 手 に す る 点 で 、技 術 的 に 高 度 な も の

が 要 求 さ れ ま す 。 我 々 の 分 野 で は 、搾 乳 ロ ボ ッ ト や ほ 乳 ロ

ボ ッ ト が 既 に 実 用 化 さ れ て い ま す が 、画 一

的 に 育 種 さ れ た 家 畜 を 施 設 内 で 扱 う と い

う 点 に つ い て は ロ ボ ッ ト 化 し や す い 特 性

が あ り ま す 。現 在 、実 用 化 ま た は 実 用 化 直

前 の ロ ボ ッ ト と し て は 、 キ ュ ウ リ 、 柑 橘 、

も も 、花( ガ ー ベ ラ )、綿 花 の 自 動 収 穫 ロ

ボ ッ ト 、ト ウ モ ロ コ シ 植 え 付 け 、雑 草 除 去 、

水 平 圃 場 耕 運 ロ ボ ッ ト な ど が あ り ま す 。 次 に 、人 の 体 力 で は 、と て も 動 か せ な い

重 量 物 の 移 動 や 継 続 的 な 重 労 働 、四 肢 欠 損

な ど に よ り 物 理 的 に で き な く な っ た 動 作

を 機 械 的 に 補 完 す る 増 力 装 置( パ ワ ー ド ス

ー ツ )を 作 業 者 に 装 着 す る「 増 力 化 」の 研

究 も 盛 ん に 行 わ れ て い ま す 。最 近 、農 機 メ

ー カ ー か ら 、一 日 中 腕 を 上 げ た ま ま の つ ら

い 姿 勢 を 強 い ら れ る 、果 実 の 受 粉 作 業 用 の

パ ワ ー ド ス ー ツ が 発 売 さ れ 、話 題 に な り ま

し た 。た だ し 、こ れ も 数 十 万 以 上 の 価 格 で

あ り 、導 入 に は 、そ れ な り の 経 営 規 模 が 必

要 で す 。 2) ア シ ス ト ス ー ツ

機 械 力 に よ り 、効 率 化・省 力 化 を 達 成 す

る 前 2 者 に 対 し て 、手 作 業 主 体 の 農 作 業 の

負 担・疲 労 を 軽 減 す る「 軽 労 化 」の 研 究 も

盛 ん に 展 開 さ れ て い ま す 。「 軽 労 化 」と は 、

例 え ば 、中 腰 姿 勢 の 際 に 負 担 の 大 き い 腰 の

筋 力 の 何 割 か を ゴ ム や バ ネ に よ っ て 軽 く

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Page 32: 静岡畜技研だより - Shizuoka Prefecture...Streptococcus uberis(ストレプトコッカス ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、 バルク乳体細胞数を上昇させます。

し た り 、立 ち 座 り の 筋 力 を 同 様 の 方 法 で 軽

減 さ せ る 研 究 で す 。元 々 は 、高 齢 者・障 が

い 者 の 介 護 作 業 者 の 軽 労 化 研 究 が 発 端 で

あ り 、す で に 、介 護 施 設 等 で 実 用 化 さ れ て

い る も の も あ り ま す 。そ の た め 、室 内 の 限

定 し た 用 途 で 開 発 さ れ た 技 術 を 農 業 向 け

に 屋 外 の 様 々 な 作 業 形 態 に ア レ ン ジ す る

研 究 が 主 体 に な っ て い ま す 。国 内 発 の 成 果

物 と し て は 、市 場 普 及 は 、今 ひ と つ で す が 、

コ ン ブ を 浜 に 干 す 作 業 や イ カ の 水 揚 げ 作

業 用 の 樹 脂 板 利 用 ア シ ス ト ス ー ツ を 始 め 、

畑 で の 立 ち 座 り を 軽 減 す る ゴ ム 板 利 用 ア

シ ス ト ス ー ツ 、中 腰 姿 勢 の 維 持 を 軽 減 す る

コ イ ル バ ネ 式 ア シ ス ト ス ー ツ 等 が 完 成 し

て い ま す 。

両腕を上げた長時間作業用のアシストスーツ (12.6 万円)

両護用アシストスーツから発展した製品

(スマートサポート社 HP より)

5. 米 国 の 農 作 業 ア シ ス ト 技 術 研 究 農 業 分 野 に お け る ア シ ス ト 技 術 の 研 究

で 最 も 進 ん で い る の は 米 国 で し ょ う 。米 国

農 務 省 が 主 体 と な っ て 、国 家 プ ロ ジ ェ ク ト

と し て デ ィ サ ブ ル ド・パ ー ソ ン ズ の 農 業 参

加 を 支 援 す る ア グ ラ ビ リ テ ィ ー・プ ロ グ ラ

ム と い う 事 業 を 20 年 以 上 前 か ら 展 開 し て

い ま す 。こ れ は 、農 業 国 で あ る と 同 時 に 成

人 病 の 増 加 、傷 痍 軍 人 の 社 会 復 帰 の 課 題 を

抱 え る 米 国 が 、 超 党 派 の 議 員 立 法 に よ り 、

地 域 の 平 和 な 農 村 社 会 を 保 つ こ と で 、安 定

し た 社 会 構 造 を 維 持 す る 事 を 目 的 と し て

い ま す 。莫 大 な 国 家 予 算 を 投 じ て 、米 国 農

業 の 主 力 で あ る 畜 産 を 中 心 に 様 々 な 研 究 、

技 術 開 発 が 実 施 さ れ 、国 立 研 究 所 、大 学 研

究 所 、農 機 メ ー カ ー 、障 が い 者 団 体 が 協 力

し て 、働 き や す い 農 場 設 計 、障 が い( デ ィ

サ ビ リ テ ィ ー )に 応 じ た 、訓 練 、資 金 援 助 、

作 業 に 最 適 な 器 具 の 選 択 と 導 入 評 価 等 、多

様 な 援 助 が 体 系 的 に 実 施 さ れ て い ま す 。畜

産 は 、農 業 の 中 で 最 も 機 械 化 が 進 ん で い る

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Page 33: 静岡畜技研だより - Shizuoka Prefecture...Streptococcus uberis(ストレプトコッカス ウベリス) は再発傾向が強く、慢性化して、 バルク乳体細胞数を上昇させます。

こ と 、そ し て 何 よ り 、米 国 農 業 の 主 力 で あ

る こ と か ら 、最 も 多 く の 成 功 例 が 報 告 さ れ

て い ま す 。す で に 、膨 大 な 技 術 デ ー タ が あ

る こ と か ら 、国 内 の ア シ ス ト 研 究 も 、畜 産

が 主 体 に 進 ん で い く 可 能 性 が 大 き い と 考

え ら れ て い ま す 。

ア グ ラ ビ リ テ ィ ー は 大 変 に 大 き な プ ロ

ジ ェ ク ト で 、 興 味 の あ る 方 は http:/ / fyi .uwex.edu/agrabil i ty/、 : / /www.agrabil i ty.org/Resources/disabi l i ty/ index.cfm を ご 覧 下

さ い 。

市販スキッドローダハンドオペ用ハンドル 農務省、大学の研究機関が監修した農業用アシスト機器の導入ガイドブック 足の操作なしでスキッドローダを操作できる

アグラビリティーで開発

「 少 子 高 齢 化 」 、 「 デ ィ サ ブ ル ド ・ パ ー ソ ン 」 等 々 、 今 ま で 、 我 々 の 分 野 か ら は 縁 の

遠 い 話 題 を 取 り 上 げ ま し た が 、 4 人 に 1 人 が 高 齢 者 、 20 人 に 1 人 が 障 が い 者 、 そ し て 2人 に 1 人 が 女 性 で す 。 特 別 な 事 で は な く 、 今 ま で 、 気 が つ か な か っ た だ け な の で す 。 興

味 の あ る な し に か か わ ら ず 、 と て も 身 近 な 事 実 で す 。

拡大表示した注意レバー延長による操作負荷

筋力低下者用操作アシストレバーの事例 視力低下者の操作性向上のための拡大

表示の事例

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