12
釜炒り茶と煎茶の渋味の解析 誌名 誌名 日本食品科学工学会誌 ISSN ISSN 1341027X 著者 著者 松尾, 啓史 林, 宣之 氏原, ともみ 藤田, 進 龍野, 利宏 御手洗, 正文 槐島, 芳徳 豊満, 幸雄 木下, 統 谷口, 知博 巻/号 巻/号 59巻1号 掲載ページ 掲載ページ p. 6-16 発行年月 発行年月 2012年1月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

釜炒り茶と煎茶の渋味の解析,1 University of Miyazaki,ト 1Gakuen Kibanadai-nishi, Miyazaki社lI, Miyazaki 889-2192 In the pres巴ntstudy, we evaluated the astringencies

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釜炒り茶と煎茶の渋味の解析

誌名誌名 日本食品科学工学会誌

ISSNISSN 1341027X

著者著者

松尾, 啓史林, 宣之氏原, ともみ藤田, 進龍野, 利宏御手洗, 正文槐島, 芳徳豊満, 幸雄木下, 統谷口, 知博

巻/号巻/号 59巻1号

掲載ページ掲載ページ p. 6-16

発行年月発行年月 2012年1月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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6 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. 59, No. 1. 6~16 (2012) (報文〕

釜r:!iり茶と煎茶の渋昧の解析

松尾啓史川林宣之2 氏原ともみ藤田進龍野利宏御手洗正文

椀島芳徳豊満幸雄仁木下手f,谷口知↑専4

i宮崎県稔合農業試験場茶業支場

2独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所

3独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所

4国立大学法人宮崎大学

As坑tringencyof Kama♂iri-cha and Sen-cha

( 6 )

Hirofumi Matsud4', Nobuyuki Hayashi2

, Tomomi Ujihara3, Susumu Fujita1

, Toshihiro Tatsund, Masafumi Mitarai'¥

Yoshinori Gejima4, Yukio Toyomitsu4

• Osamu Kinoshita4 and Tomohiro Taniguchi4

1 Tea Branch Facility, Miyazaki Prefectural Agricultural R巴searchInstitut巴,

17070 Kawaminami Kawaminamトcho,Miyazaki 889-1301

2 National Agriculture and Food Research Organization, National Food Research Institute, 2-1-12 Tsukuba, Ibaraki 305-8642

3 National Agriculture and Food Research Organization, National Institute of Vegetable and Tea Science,

2769 Kanaya, Shimada, Shizuoka 428…8501

,1 University of Miyazaki,ト1Gakuen Kibanadai-nishi, Miyazaki社lI, Miyazaki 889-2192

In the pres巴ntstudy, we evaluated the astringencies of infusions of Kamairi-cha and Sen-cha using a taste sensor system. The results obtained using the taste s巴nsorsystem showed that the astringency of Kamairi-cha was lower than that of Sen叩chaand that th巴 astringencyof Sen-cha decreased with increasing steaming duration. Both catechin and water句solublepectin contents were lower in the Kamairi-cha infusion than in the Sen-cha infusion. Mor巴over,the elution ratio of water伺solublep色ctinin Kamairi-cha was lower than in Sen-cha. This differenc色 isattribut巴dto the shorter duration of the pressing process for the tea leaves used in the production of Kamairi-cha than for the production of Sen-cha. In contrast, as steaming duration is increased, the water-soluble pεctin content in the tea leaves increases. How巴ver,water-soluble pectin content did not demonstrate an upward trend during post-steaming drying at a constant rate. Based on these results, we surmised that th日water-solublepectin content in tea leaves increases when leaves are heated to approximately 90-100

oC. The results of multiple linear regression

analysis of the obtained data showed that astringency was related to the catechin and water-soluble pectin content in the tea infusion and astringency increas巴das content of catechins increas巴dand content of water-soluble pectin decreased. (Rec巴ivedAug. 12,2011 ; Accepted Sep. 25, 2011)

Keywords : astringency, a taste sensor system, Kamairi-cha, catechin, water-soluble pectin キーワード &1味,味覚センサー~をj:J;り茶,カテキン,水溶性ベクチン

渋味は,うま味や苦味,甘味とともに緑茶の畏味構造を

構成する重要な要素であり1l縁茶の種類や製法の特徴を説

明するために使われることも多い 例えば釜妙り茶は,茶

葉を釜で妙ることにより酸化酵素を不活性化して作る緑茶

であるが2) その滋味は煎茶と比べて渋味が少なく,さっぱ

りとしていて喉ごしが良いとされている刊また,普通煎

茶よりも蒸熱時間を 2~3 倍長くした深蒸し茶では,渋味

1〒889-1301宮崎県児湯郡川南町大字川11有17070

2宇305-8642茨城県つくば市観音台 2-1-12

3 "i'428-8501静岡県島田市金谷務土蔚2769

4〒889-2192宮崎県宮崎市学鼠木花台西 1-1

牟連絡先 (Correspondingauthor 2 [email protected]

が少なくなると言われているで

渋味と成分組成の関係を解明するために,これまで茶葉

や浸出液に対して多くの分析や調査が行われてきた.例え

ば,緑茶の渋味は主としてタンニン,特にカテキンによる

ものであることで釜妙り茶が煎茶よりも渋くないのは浸出

液のカテキン含有量が少ないからであること6) 多糖類が渋

味を緩和している可能性があることわなどである, しかし

これらの研究における渋味程度の評価は成分の絶対量から

の推測である場合も多く,成分間の滋味の増強あるいは抑

制効果などを加味した評価などが国難であったり,官能審

査で行う場合にも客観性に課題があるのが現状であり,数

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( 7 ) 松尾・他:釜妙り茶と煎茶の渋味の解析 7

f度化された客観性の高い評価手段の開発が望まれてきた

これに対ーして近年,酸味,塩味,苦味, うま味そして渋

味に対して人の舌が滋味を感じるのと同様に応答する味覚

センサーが開発され…この装置を用いた緑茶の渋味ゃう

ま味の客観的評価法が確立された出町そこで本研究では,

釜妙り茶と煎茶について味覚センサーを用いた渋味の比較

を行うとともに,渋味に関与する成分であるカテキンなら

びに渋味を緩和する効果があると考えられているベクチ

ン山3'についても分析を行い考察した結果,若干の知見

を得たので報告する.

実験方法

1. 試料の鵠製

(1)釜妙り茶と煎茶の渋味評価およびカテキン, 71(?容性

ベクチン含有量の測定

実験には宮崎県総合農業試験場茶業支場内ほ場の‘やぶ

きた'成|認 (20a)を2009ij三の各茶期ごとに 2分割し,この

うち 10aから摘採される茶葉を用いて釜妙り茶を,残り

lOaから摘採される茶葉を用いて煎茶を製造し供試した

供試した茶葉の原葉特性と擁採践を表 1に示す.

釜妙、り茶と煎茶の実験[Rと各実験区における製茶ライン

構成は表2のとおりである.茶種の違いに加えライン構成

の違いが渋味へ与える影響を調査するために,釜妙り茶で

は生産現場で普及している代表的な 3 種類(実験区 1~3)

のライン構成に加え,採捻工程を他の 21音にあたる 50分

間実施するライン(実験区 4)を加えた 4種類を,煎茶は蒸

熱時簡を変えた 3 種類(実験区 5~7) のラインの合計 7 種

類のライン構成で,標準製茶法により荒茶にまでそれぞれ

3反復ずつ製造した また,それぞれの製茶ラインを構成

する工程ごとに工程終了後の茶葉を採取し 500

Cで4時間

風乾し試料とした 製造した荒茶および各工程終了後に採

取し風乾した茶葉は -30'tで保存した.なお荒茶について

は,標準審査法による審査を 3人の審査員により実施し,

製造ミスによる欠点がないことを確認した上で、実験へ供試

した.

(2)妙り築工桂における円筒釜の加熱温度の違いが茶葉

の水i容性ペクチン含有量へ及ぼす影響

実験には宮崎県総合農業試験場茶業支場内ほ場で 2011

年 6月17日に採取されたιやぶきた'を用いた.供試した茶

葉の原葉特性を表 1に示す.この茶葉を用いて妙り業機

表 1 供試した茶葉の原繁特性

:<1'- 摘採日

4月28日

4月29日

6月 11日

6月 12日2009

7月 16日

7月 17日

2011 6月 1713

茶稔妙り業a)

災験区(l20K)b)

釜妙り茶 2

3

4

茶稜 実験区 (T蒸M-主3九00)

5

定自 舟十そ 6

7

品種 茶稔合水率 出開き皮 芽長 業数 百芽丞

(96d. b.) (96) (cm) (枚) (g)

釜:J:)iり茶 363.1 35.2 8.8 3.2 60.0 百I 主5 350.4 39.9 8.4 2.9 61.2

やぶきたJjtj 2長 363.2 44.3 9.1 3.3 57.6

室長妙、り茶 358.3 48.3 9.7 3.6 61.3

釜妙り茶 314.7 63.6 8.3 4.2 53.3 I計1 完E 320.5 57.8 8.4 3.9 48.8

やぶきた 386.5 21.3 9.1 3.4 60.2

表 2 実験区と各実験区における製茶ラインの構成

;fJH柔(KS-35)

キ且採(KS-35)

採捻(]-35)

採捻(]-35)

中採

(C-35)

r:jJ採

(C-35)

第一水乾 第二水乾 乾燥(80K) (50K) (ND-120)

精採 乾燥(HSA-60) (ND-120)

a)妙り葉機の円筒釜加熱温度は第一バーナ一一第二バーナーー第三バーナー=360'C一340'C…280'Cである.

b)撃さ茶機械の裂式を示す,製造元は妙り業機,第一水乾機,第二水車Z機は森鉄工株式会社,それ以外の機械は

(株)寺田製作所である

C) f時間は各工程に要したおおよその時会問を xは来実施の工程であることを示す。

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8 日本食品科学工学会誌第 59巻 第 l号 2012年 1月 ( 8 )

完験区

8

9

表 3 内筒釜の加熱温度

F号館主査加熱湯度('t) 間定釜

第一バーナー第二バーナー第三バーナー釜底温度('t)

360

390

340

370

280

280

160

160

(森鉄工株式会社製 120K)の円筒釜加熱温度を低温度帯

(実験包 8)と高j昆慶子苦(実験[K9)に設定してそれぞれ妙

り業処理したのち,凍結乾燥し実験へ供試した具体的な

加熱温度を表3に示す.なお,高温度帯で処理された茶葉

にはコゲが発生する可能性があったので,妙り葉処理後の

茶葉は十分に粉取機で処理し分析前には茶葉を目指で確

認するなど,i共試する茶葉にコゲが混入しないよう留意し

た.

2, 味覚センサーによる釜妙り茶と煎茶の渋味評価

Hayashiらの方法10) ~こより行った すなわち荒茶 2,Og

をプラスチックフィルタ-1すきガラス製ポット(セレック

社製 GAV-2)に量り取り,沸騰した純水 200mLで5分間

浸出した水溶液をろ紙でろ過して測定試料とした これを

専用の測定カップに入れ,味覚センサー装置(インテリジェ

ントセンサーテクノロジ一社製 SA402)で測定した.測定

は同一試料に対して三間行い,得られたセンサー出力僚の

平均を各試料の渋味センサー出力値とした こうして得ら

れた渋味センサー出力伎は, 0,65mMのコニピガロカテキン

水溶液を測定した場合に得られるセンサー出力値を Oとし

て, 20%濃度差のエピガロカテキンガレート水溶液関のセ

ンサー出力差を l目盛りとするスケール上の備に換算し,

渋味推定伎とした.つまり, 0,65mMのエピガロカテキン

ガレート水溶液が示す渋味よりも強い場合にはプラスの,

弱い場合にはマイナスの渋味推定値が示される.

3, 官能審査による釜妙り茶と煎茶の渋味評価

実験区 1~7 の一,こ番茶会計 14 種類の荒茶浸出液につ

いて,官能審査による渋味の評価を行った 評価は宮崎県

総合農業試験場茶業支場の殺員 9名で反援して行った 浸

出液は 2,Ogの荒茶に対して 200mLの熱湯を詮ぎ, 5分間

浸出することで調製したこの浸出液を口控内に 5秒間合

み,舌に収数味を強く感じるものをより渋味が強いと判定

し,各自別偲に渋味を強く感じたものから)IJ質番に並べるこ

とでj綴f立付けした.

4, 茶葉および漫出液に含まれるカテキン類の含有量測定

Mizukamiらの方法により行ったヤすなわち茶葉につ

いては,粉末化した試料 0.25gに内部標準液(カテコール

70mgとアスコルピン駿 180mgを超純水で 100mLに定

容したもの)1.0mLを加え,水.アセトニトリル=1: l(v/v)

溶液で 25mLに定容,抽出したのち遠心分離し上ずみを

蒸留水で、 10倍希釈して 0.45μmのフィルターでろ過した

ものを試料とした.茶浸出液については 2,Ogの荒茶に対

して 200mLの熱湯を注ぎ, 5分跨浸出することで調製し

た浸出液1.0mLに内部標準液 2,OmLと超高IJ!7J(3.0 mLを

加え, 0.45μmのフィルターでろ過したものを試料とした.

カテキンについては, (+トカテキン, (一)ーカテキンガレ-

~, (一)ーガロカテキン, (一)-ガロカテキンガレート, (一)ーエ

ピカテキン, (一)同エピカテキンガレート, (一)同エピガロカテ

キン, (一)ーエピガロカテキンガレートの 8種類について分

析定量しこの合計量をカテキン含有最とした使用した

HPLC (島津製作所袈 LC-lOADvp)の測定条件は以下のと

おりである.カラム;Wakopak Navi Cl8-5 ; 5μm, 4.6x

150mmを2本直列接続,ガードカラム (5μm,4.6 x 10 mm)

を併用.カラムオーブン;40oC. 移動相 A;リン酸0.25%

溶液・アセトニトリル=20: 1 (v/v). 移動相 B;移動相

A:メタノール=5:1(v/v). 流速・1.0mLlmin. グラジエ

ント:[0~10 分〕移動相 B = 10%, [1O~20 分〕移動相 B

を50%まで藍線的にグラジエント, [20~30 分〕移動相 B

を95%まで直線的にグラジエント, [30~65 分〕移動相 B

=95%. 検出波長;21Onm. 注入量;1011L.

5. 茶葉および浸出液に含まれる水溶性ベクチンの含有

量測定

仁村11の方法b に従い行った.すなわち,茶粉末1.0gを

70 %エタノールで FATEX(三田村理研工業株式会社製)

を用いて 2時関連続抽出し無色になったものを 600

Cで乾

燥した乾燥した茶粉末をビーカーに移し水を少量加えて

浸透させたのち,水約 60mLを加えてよく撹詳し 200

Cで

16時間放置した放置後これを 100mLに定容しろ過し

て,ろi夜を水溶性ベクチン液としたこの水j容性ベクチン

液 2.0mLを25mL共桧試験管にとり,氷水中で冷却しな

がら硫駿 12mLを加えよく混合した これを室温に戻し

沸騰浴中で 10分間加熱後流水で、冷却した これに 0.05%

カルパゾール,エタノール溶液 1.0mLを加え,よく混合し

た後,室温で1.5時防放置して発色させ, 520nmの吸光度

を分光光度計(日本分光株式会社製 V-560)で測定した

問時にガラクツロン自主 10,30, 50, 70, 90μg/mLの溶液を

作成し,各i夜2.0mLを同様に処理したものの 520nmの吸

光度を測定し検量線を作成した なお,浸出液中の水溶

性ベクチンは 2.0gの荒茶に対して 200mLの熱湯を注ぎ

5分間浸出した後,この茶殻を凍結乾燥しこれの中に含

まれる水溶性ベクチンを上記の方法で定量し茶葉に含ま

れる7](i容性ベクチン含有量より熱湯浸出後の茶殻に含まれ

る水溶性ベクチン含有量を差しヲlいたものを,浸出液の水

溶性ベクチン含有量とした

6. 統計処理

本実験において実施した統計処理のうち, Tukey' s test,

Mann-Whitney's U-test, Student's t司testは IEXCEL統計

V巴r.5.0J(株式会社エスミ),相関は「なるほど統計学とお

どろき EXCEL統計処理J(医学図書出版株式会社),重回

帰分析は rMicrosoftOffice Exce12007 Jの各ソフトを用い

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( 9 ) 松尾・他・釜妙、り茶と煎茶の渋味の解析 9

4 言宗 a

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2

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自主-2 L ー.J

.-<ひ~σ3 てt吋

E録84S( 凶童tJ)話{ 凶意旅義 在意tJ)記義{

Uコミ.0 t-, MφM 司0< lfコミ.0、 I~吋<"l σ3 司0<lf)(J:)t­

凶凶凶:t泌凶凶凶凶 jさi凶l凶 i認凶凶 i凶凶凶

襲撃緩!鐙鐙鐙緩繁議議j鋒餐議緩餐議録w(! D常務w( w( w( ~ W(!W(斜W(Ðli<W(~W(

〔 釜妙り茶 〕 〔 煎茶 J ( 釜妙り茶 J ( 煎茶 雪量妙り茶 J ( 煎茶 〕

“ " 一番茶 二番茶 三番茶

図 1 釜妙り茶と煎茶の渋味推定値

a)同一茶期の同一文字問に有意差なし (Tuk巴y'stestρ く 0,05),エラーパーは標準備笈, 11=3,

て検定した

実験結果

1. 味覚センサーによる釜妙り茶と煎茶の渋味評価

釜妙、り茶と煎茶の渋味を 味覚センサーを用いて測定し

た結果を国 lに示す 同一茶期で比較した場合,三番茶の

実験1X4を除き,釜妙り茶は煎茶よりも渋味推定績が低く

なり,各茶期とも実験区 3の渋味推定値が最も低くなった

実験区3と同じライン構成であるが, :jjc捻工程に要する時

間が2倍である実験区 4の渋味推定値は,実験区 1,2と問

もしくは高い結果となった 煎茶においては,蒸熱時閣

が長くなると渋味推定値が低くなる傾向にあり,実験1X7

は実験医 5よりも有意に低い結果となった.

2, 官能審査と味覚センサーによる渋味評価の棺関関係

官能審査と味覚センサーによる渋味評価の相関関係を図

2に示す.これらの間には Hayashiらの結果10)同様有意で

高い相関がみられ,今回の実験においても味覚センサーで

の渋味評備はとトの感じる渋味謹度をよく表現しているも

のと考えられた

3, 荒茶および荒茶浸出液のカテキン含有量

荒茶のカテキン含有量を函 3に,荒茶浸出液のカテキン

を毘]4に示す.荒茶では,同一茶期において実験区

1~7 のカテキン含有量に差はなかった.浸出液では,議妙、

り茶のカテキン含有量が煎茶よりも少ない結果となった

が,煎茶である実験区 5~7 においては差がなく,釜妙、り茶

では実験1X3のカテキン含有量が最も少ない結果となっ

た Takashimaらは,同じ茶葉から製造された釜妙り茶と

煎茶のカテキン含有量は 荒茶では差がないが浸出液では

釜妙り茶のほうが少ないことを61 高;fgfiらは煎茶において蒸

熱時間を変えて製茶した場合でも,荒茶および浸出液でカ

テキン含有量に差がないことを報告している附 17!が,今回

の実験でも同様の結果であった.

4, 各工程終了時の茶葉および茶葉浸出液のカテキン会

有髪

釜妙、り茶および煎茶の製茶ラインにおける,各工程終了

時の茶葉および茶葉浸出液のカテキン含有量を国 5に

す 各工程終了時の茶葉のカテキン含有量は,釜妙り茶,

煎茶ともにあまり変化がなかった(閣 5A,C),一方で茶

葉浸出液のカテキン含有量は,釜妙り茶の場合,操捻工程

までもしくは中採工程を実施する場合には中採工程まで増

加する傾向があった(図 5B),煎茶の場合,組採工程でカ

テキン含有量が大幅に増加し次の按捻工桂では微増もし

くはほぼ横ばいとなった後は大きな変化はなかフた(鴎

5D),なお,煎茶に関しては,高柳ら18)および島田ら加も

同様の報告をしている.

5, 荒茶および荒茶浸出液の水溶性ぺクチン含有量

水溶性ベクチン含有量について,荒茶の場合を図 6に,

浸出液の場合を函7に示す.荒茶,浸出液の双方において,

釜妙り茶では,同一茶期における実験区間の水溶性ペクチ

ン含有量に有意な差はなかったが,煎茶では過去の報告関

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( 10 ) 2012年 1月第 1号第 59巻日本食品科学工学会誌10

14

15

13 銀

12

y= 3.6x十1.99

&2) = 0.98242"3)

0=後妙り茶一千幸茶

口出熊茶一番茶

.釜妙り茶二番予定

掴寸目茶二番茶

沖乙fL8

6

5

4

3

2

11

10

記~ tO ム4

断線道星組

9

7

刷出制相川窓袋

十旦Jl

。4 3 2

渋味推定値

1 。12-

争強

凶 2 官能審査と味覚センサーによる渋味評価の相関関係

1)数字は表2における笑験区君子一号を示す エラーバーは襟準偏差

2) スペアマン順位相関係数

3)林立有惹;主をあり (P<O.Ol).

渋l床強度書号

ド凶蝋閣僚〕

也援護一服

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22

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(国

CCHSN時¥国)入叶トhh

6

20

• エラーパーは標準偏差,日=3.

三番茶“ 二番茶

関 3 荒茶のカテキン含有最

a)向一茶拐の向一文字路に有窓差なし (Tukey'stestρ く 0.01).

一番茶“

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11 松尾・他:釜妙り茶と煎茶の渋味の解析( 11 )

22

20

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凶凶凶:I泌凶凶凶銭銭緩j昔話緩昔話昔話旅線旅j線旅勝以

〔 煎茶 JI [ 議妙り茶 〕

F 吋 ひq σ3 てが

凶凶凶凶銭緩昔話童話~撚~ ~

〔 釜妙り茶〕

O

"

関 4 荒茶浸出液のカテキン含有量

a)同一茶拐の同一文字問に有意差なし (Tukey'stestρく0.01),エラーバーは標準偏差,11=3,

茶番一一一“ 二番茶一番茶“

水溶性ペクチンの溶出都合表 4

茶期

議妙、り茶

)

ku *

*

68,2 :l: 2,3

70.2 :l: 1. 7

73.9 :l: 2ι

実験区 5

実験区 6

実験区 7

ぃι為、

咋AH

~

tJI}

*

*

35.9土 2.1

36.3土1.5

34.1土1.7

35.1土1.2

75.0 :l: 0.9

76.1土1.9

74.8土 2.2

33.9 :l: 2.2

32.9 :l: 1. 7

31.4 :l: 1.5

31.6 :l: 0.8

実験区 l

実験区 2

実験区 3

実験!R4

釜妙、り茶

*。*T

-

75.7土 2.1

71.3土1.8

76.1土1.5

実験区5

実験区6

実験区 7

a)平均値土襟準偏差, 11 = 3

b) 料=釜妙り茶と煎茶の溶出割合には有意表あり(lvIann-

Whitney's U-test.戸く 0.01)

溶出割合(%)3)

34.8士1.7

37.8玄 2.3

34.1士 l町5

37.1士 2.2一番茶

実験区 l

実験区 2

5ミ験区3実験区4

実験区 5

実験区 6

実験区 7

三番茶

~

sII

蒸熱時間が長くなると水溶性ベクチンの含有量が

増加する傾向にあった 荒茶では議妙り茶の水溶性ベクチ

ン含有量は,蒸熱持聞が 30秒である実験区 5と同根度で

あったが,浸出液では煎茶の水溶性ベクチン含有量が釜妙

り茶より多い結果となった.

4に水溶性ペクチンが荒茶から浸出液へ溶出した割合

を示す 去を妙り茶の溶出割合は煎茶の溶出割合より有意に

抵い結果となったが,議妙り茶,煎茶それぞれにおける実

験区間の溶出割合には差がなかった

6, 各工程終了時の茶葉および茶葉浸出液の水溶性ベク

チン含有璽

釜妙り茶および煎茶の製茶ラインにおける,各工程終了

時の茶葉および茶葉浸出液の水溶性ベクチン含有量を図 8

に示す 茶葉の水溶性ベクチン含有量は,釜妙り茶では実

験区潟の差は判然とせず 工程毎の含有量にも大きな変化

はなかった(図 8A). 一方煎茶では,蒸熱工程終了時の茶

葉で荒茶の場合と間様,蒸熱時間が長いほど水溶性ベクチ

ンの含有量が多い傾向がみられたが,その後の工積毎の含

には傾向のある変化がみられなかった(菌 8C). 浸出

液の水溶性ペクチン含有量は,釜妙り茶では茶葉の場合と

同様実験j豆潤で大きな差はなかったが,工程別にみてみる

と,妙り葉ー工程終了時の含有量が最も少なく,採捻工設ま

で増加する傾向があった(図 8B) 煎茶の場合,浸出液で

も蒸熱時聞が長いほど水溶性ベクチンの含有量が多い傾向

実験区

実験区 1

笑験i玄2

3定験区 3

実験区 4

茶穏

今後妙り茶

茶~

沼り

二番茶

Page 8: 釜炒り茶と煎茶の渋味の解析,1 University of Miyazaki,ト 1Gakuen Kibanadai-nishi, Miyazaki社lI, Miyazaki 889-2192 In the pres巴ntstudy, we evaluated the astringencies

( 12 ) 2012年 l月第 l第四巻日本食品科学工学会誌12

ーや一実重量区 l-・一実草案区 2--d 実験s3--A --5起草案s4

B

22

20

bD 18 o ~ 16

霊14¥、

~ 12 入

サ 101ト4そ

6

8

一骨~島章、区 1-+一実験区 2

d--実験区 31ω 5慰霊主区 4

22

20

8

6

4

2

0

吋,A

S4

EA

Eム

Eよ

(出。。凶器製¥国)入サホbh 8

6

第二水乾

一乾

」第水

中採

4

2

O

4

2

。採捻妙、り茶籾採第二

水乾一乾

第水

中採採捻妙り茶粗採

釜妙、り茶・浸出液

区区区

時制験絞

笑出火山先

D

22γ

20ト

~ 1凶8トb1J

o 5記ミ 1日6ト

霊H、、 j

、3野 lロ2~入|

4叶ト 10ト

主8L6l

;[

〔釜妙り茶・茶葉

C

22

20 1-

し!iiド111

oopoa告の

F

U

A

U

a田直

EA

E4

司EA

Eふ

(国

CCH容認¥凶)入十恥快 8

6 一+一実験区 5ー古一実験区 61 一実験区 74

27 01

精採中採採捻粗採蒸熱精採中援採捻粗篠蒸熱

〔煎茶・浸出液

各工程終了時の茶葉 (A.C)および茶葉浸出液 (B.D)のカテキン含有譲(一番茶)

a)エラーパーは標準偏差, 11=3

〔煎茶・茶葉〕

図 5

にあり,工桂別では,各実験区とも蒸熱工程終了時の含有

量が最も少なく,採捻工程まで増加する傾向にあった(関

8D). 高柳らは,煎茶の場合,茶葉および浸出液において

水溶性ベクチンは蒸熱葉が最も多く,組採工程以降は減少

する傾向があったとしている凶が,今回は少し異なる結果

となった

妙り葉工程における円簡釜の加熱温度の遣いが茶葉

の水溶性ベクチン含有議ヘ及ぼす影響

盟9に示すとおり,円筒釜の加熱温度が高い実験包 9で

茶葉の水溶性ベクチン含有量が高い結果となった

渋味推定値を目的変数とした場合の愛国帰分析の結果表 5

P 11直

戸く 0,001

βく 0,001

係数

0.560

0.001

カテキン含有量(浸出液)

水溶性ペクチン含有最 o支出液)

説明変数

水溶性ベクチン含有量を説明変数として重回帰分析を行っ

た結果を表 5に示す.自由度修正済決定係数は 0.961と高

く,カテキン含有量,水溶性ベクチン含有量ともに有意な

係数が得られた 水溶性ペクチンの係数が小さいが,これ

は測定値の単位を mgとしたため,水溶性ペクチン含有量

が大きな値をとっていることが影響している.得られた係

数から,カテキン含有量が高いほど,水溶性ペクチン含有

浸出液のカテキン含有量および

渋味推定値を目的変数,

7.

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13 松尾・他:釜妙り茶と煎茶の渋味の解析( 13 )

a

'hU』

a勾

jit--11b b

n

u

n

u

n

U

A

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n

u

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n

U

A

U

A性

η

L

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u

n

E

e-a

噌geeA

24

(加。。阿容認¥ME)

入ホ

hmy記防総特

600

200

1800

1600

400

"

a1I6 荒茶の水溶性ペクチン含有蜜

a)同一茶郊の同一文字問に有意まをなし (Tukey'stest戸く0.05) エラーパーは標準偏差,n=3

三番茶二番茶

ド凶船田派〕

由選一wm鱗

J

[

ud

叩凶袋駅〕

ur一路盤燃焼

N

凶餐採金

d

u

M

H

凶謹一味〔

alli--ji--J1lJhM出袋駅}

bLHIμ由

C

T

ム山ハハハペJiU出凶鐙撚〔

dγ一七刊当噌凶鋒派〕

d

1開問礼的凶柑掛川祢慨

ι

y

dγ問

d

?期間出同一凶鐙撚〔

川川川11川リリ川司

1ζ凶袋線〕

b

Uけハハハハ川比一凶銭鍬探

C

T

山一円川一一己的凶鐙氷川

噌凶幅四撚]

的一凶緩燃焼

N

凶柑務執初

刊一凶蝦関川林〔

a

b

c

a

1800

1600

1400 3 o ~ 1200 毒事

翌日00E

入泳、γ 記長室特

800

200

O

三番茶

図 7 荒茶浸出液の水溶性ペクチン含有最

a)同一茶期の同一文字問に有意差なし (Tukey'stest戸く0.05) エラーパーは標準備主主,n=3.

二番茶‘ 一番茶“

かる.またこの 2つの説明変数の他に, i茶種jを煎茶 0,

釜妙り茶=1とダミー変数で設定し説明変数に加えて重回

帰分析を行ったが,茶種の係数に対する ρ値は 0.327とな

量が低いほど渋味推定伎は高くなることが分かるーつま

り, 7J(溶性ペクチン含有量が高いほど渋味推定値は低くな

り,水溶性ベクチンが渋味を抑制する傾向があることが分

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14

1600 A

1400

~12001ーCCココ,.....

量E削

800

ホ 600司yh

400

200

O

日本食品科学工学会誌第 59巻第 l号 2012年1月 ( 14 )

1600

1400ぃ

ハU

A

U

n

U

A

U

A

U

A

u

n

u

n

u

qL

ハUn

D

n

h

u

宅24

Z4

300E袋一躍¥凶阿国)入小、v、 400

200

一+一実験区 1-一実験区 24 一一実験1R3-..a.-実験1R4

妙り茶粗採採捻中採第一第二水乾水 乾

〔釜妙り茶・茶葉 〕

C 7111111833tsti

?Ill1&Ill1品

TiLT』

Ti4ιiziii

験綴数

吻犬申犬申犬

O 蒸熱糧援孫、捻中採精援

〔煎茶・茶葉〕

1600 B

一+一実験区 1-・一実験区 2マ也 実験区 3

.-定量主区 4

1400

ハun

U

ハU

ハU

n

U

A

U

A

U

A

U

9

h

n

u

R

U

F

O

gム

EA

(切。。州島#同峰、

E)入小、v、 400

200

O 妙り茶粗採採捻中採第一第二

水乾水乾

〔釜妙り茶・浸出液 〕

1600 D

1400

b;i 1200 CCコD

言1醐

800

ホそY¥ 600

200

O

了Ill1ム宇ltiti

Tiよ今ii

TIlli--lli

,,

J

,, T

ia什if

蒸 熱 粗 採 採捻中採精採

〔煎茶・浸出液〕

図 8 各ヱ程終了時の茶葉 (A,C) および茶葉浸出液 (B,D)のペクチン含有翠(…番茶)

a) エラーパーは標準偏差• 1l=3

り,有意な結果が得られなかった以上より,渋味推定値

は茶種の違いではなく,浸出液のカテキンおよび、水溶性ベ

クチン含有量から説明できることになる.これまでに堀江

らは,多糖類が渋味の抑制に寄与している可能性を示唆

し7) Hayashiらは,ガレート型カテキンが示す渋味がベク

チンとの複合体形成により抑制されることを明らかにし

た?今回得られた結果は,これらの予測や実験結果と一

致するものであった.

この重回帰分析の結果をもとに,釜妙り茶および煎茶の

渋味について考察する.今国の実験では,釜妙、り茶におい

て浸出液のカテキン含有量(罰 4)は実験区 3で有意に低

く,水溶性ベクチン含有量(国 7)には差がなかった.つま

り釜妙り茶では,水溶性ペクチンによる渋味抑制効果はど

の実験区でも間程度であり,結果として浸出液のカテキン

含有量の差が渋味推定値(図1)の差となったと考えられ

る.一方で煎茶では,浸出液のカテキン含有量(関心には

差がなく • 7](i容性ベクチン含有量(関 7)は蒸熱時間が長く

なるほど増加した.つまり煎茶の場合,カテキンにより示

される渋味桂度はどの実験区も向程度であり,水溶性ベク

チン含有量の違いによる渋味抑制効果の差が渋味推定値

(図1)の差となったと考えられる 浸出液の水溶性ベクチ

ン含有量が釜妙り茶よりも多い煎茶で,釜妙り茶よりも渋

味が高い結果となったのは 水溶性ベクチンによる渋味抑

制の効果以上にカテキン含有量の違いによる渋味桂度の差

があったためと考えられた.

次に,釜妙、り茶と煎茶において,カテキンや水溶性ベク

チンの含有量に差が生じる理由について考察する.釜妙り

茶の内容成分は煎茶よりも溶出しにくく,その理由は茶葉

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( 15 ) 松尾・他:設妙り茶と煎茶の渋味の解析 15

1000

b1800 <::> <::>

警600l)I) g

入、令400

記長生特

200

O 実験援8 実験政9

限 9 門街釜の加熱温度のi重いが茶葉の水溶性ペクチン含有翠へ及ぼす影響

呂)*口有意差あり (Studenfs t-test.戸く0.05)

b)エラーパーは襟準偏差,11=3

へ採!圧を加える工躍が少ないためと考えられているおい今

回の結果でも,荒茶中のカテキン含有量:は釜妙り茶,煎茶

ともに同程度にもかかわらず(図 3),浸出液のカテキン含

有量は煎茶よりも釜妙り茶で少なく,また釜妙り茶の中で

も採圧を加える工程が一番少ない実験1R3でカテキン含有

量が最も少ない結果となった(関心.実験註3と同じ製茶

ライン構成で諜捻工程の時間を 2倍にした実験区4では,

実験区 3よりも浸出液のカテキン含有最が多いこと,また

採圧を加える工程を経るごとにカテキンの含有量が増加し

ていること(図 5B)などからも,茶葉へ探圧を加える時間

の長さがカテキンの溶出割合へ影響していることがうかが

える

一方,荒茶の水溶性ベクチン含有量は,釜妙、り茶では実

験区間で差がなく,煎茶では蒸熱時間が長いほど多くなる

傾向があった(図 6).高羽11らは,カルシウムやマグネシウ

ムと結合した塩類可溶性ベクチンが加熱されることで,こ

れらの塩類が離脱し水溶性ベクチンが増加する可能性があ

るとしているや煎茶の蒸熱工程同様,釜妙り茶で殺青(茶

葉中の欝素を失活させること)を行うのは妙り葉工程であ

るが,今回,煎茶では実験区間の蒸熱時間を変えることで

茶葉への加熱程度を変えているのに対し,釜妙り茶の実験

区 1~4 では同じ加熱条件で妙り薬工程を行った高柳ら

の推澱から考えると,このことが煎茶では実験区間で水溶

性ベクチン含有量に差が生じる一方,釜妙り茶である実験

IR 1~4 では差が生じなかった理由と推察される 妙、り築

工程の円筒釜加熱過度を上げると茶葉の水溶性ベクチン合

夜量が増加する(図 9) ことからも,このことがうかがえ

たしかし現在生産現場で、用いられている妙り葉機は,

殺青以外に茶葉の乾燥も行う機械で,異なる処理を一つの

熱源だけで処理する構造であるため,茶葉の状態にあわせ

た温度管理が難しく 1不用意に加熱混度を高く設定すると

コゲ等の欠点を生じやすくなる.実際,今田の実験におい

て高温で処理した実験1R9の茶葉は,かなり過乾燥状態と

なっており,コゲも散見された.これらのことから,通常

の釜妙、り茶製造では煎茶のように水溶性ベクチン含有量を

大幅に増加させることは閤難と考えられる.

また,妙り葉および蒸熱工程後の各工程における茶葉の

水溶性ベクチン含有量には 増減のはっきりした傾向がみ

られなかった(図 8A,C). 製茶工程は茶葉を乾燥するため

の工程であり,採捻工程以外のすべての工程で茶葉は加損

されるにも関わらず,これらの工程で水溶性ベクチン含有

量に明確な増加傾向がみられない.これは,緑茶は殺青工

程後,品質を保つために恨率乾燥状態を保ちながら製茶さ

れるため,その茶温は終始370

C前後に保たれるおりことと関

係がある可能性がある つまり茶葉が 90~lOOOC 程度の高

温にまで加熱されるのは,殺脊工程21)と荒茶製造後の火入

れ工程のみであり,蒸熱時間が長くなると水溶性ベクチ

ン含有量は増加するが.途中の工程での増減にははっきり

した傾向がないこと(図 8C)や,火入れ工桂で水溶性ベク

チンの増加が確認されたとする報告内)などと考え合わせ

ると,茶葉が比較的低温に保たれる工程では,水溶性ベク

チン含有量に明確な変化は生じないが,茶葉が 90~ lOOOC

程度に加熱される殺青や火入れ工程では,水溶性ベクチン

含有量が増加するものと推察された

一方で,浸出液中の水溶性ペクチン含有量は,カテキン

同様釜妙、り茶が煎茶よりも低く(函 7),i容出割合も釜妙り

茶が煎茶よりも低い結果(表4)となったこれは先述し

たとおり,茶葉に対して釜妙り茶の製茶工程では,煎茶ほ

ど操圧が加えられないためと考えられるが,釜妙り茶浸出

液において,カテキンではみられた実験区ー問における含有

量の違いが,水溶性ベクチンでは観察されなかった荒茶

のベクチンはカテキンに比べて高分子であるため宍煎茶

よりも茶葉細胞組織が破壊されていない釜妙り茶では,カ

テキンよりも溶出しにくいものと推祭される.

また,水溶性ベクチンは浸出液に粘度を与えるため,こ

くに影響するとも考えられている 11 釜妙り茶は喉ごしが

よくさっぱりした飲み応えがあるのも特徴であるが,1) これ

は浸出液の水溶性ペクチン含有量が少ないためと考えられ

る.

要 約

釜妙り茶と煎茶の渋味について味覚センサーを用いて比

較を行ったところ,釜妙り茶は煎茶よりも渋味が少ないこ

と煎茶では蒸熱時間が長くなると渋味が緩和されること

が明らかとなった.また味覚センサーでの渋味推定債を日

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16 日本食品科学工学会誌第 59巻第 1号 2012年1月 ( 16 )

的変数,浸出液のカテキンおよび水溶性ペクチン含有量を

説明変数として重回帰分析を行った結果,渋味は浸出液の

カテキンおよび水溶性ペクチン含有量で説明でき,カテキ

ン含有量が多いほど,水溶性ペクチン含有量が少ないほど

渋味が強くなることが判明した 浸出液のカテキンおよび

水溶性ベクチン含有量は,釜妙り茶よりも煎茶で多く,水

溶性ベクチンの溶出割合は,釜妙り茶よりも煎茶で高い結

果となったが,これは茶葉に対して釜妙り茶の製茶工程で

は,煎茶ほど採圧が加えられないためと考えられた また

茶葉中の水溶性ベクチンは,蒸熱時間が長くなると増加し

恒率乾燥が保たれる殺青以降の工程では明確な増加がみら

れないことから,茶一葉が 90~lOOt程度に加熱される工程

で増加するものと推察された.

本研究の遂狩にあたり,野菜茶業研究所茶業研究監木幡

勝剥博士,元野菜茶業研究所上席研究員阿南豊正博士には

研究全般に関して懇切なご指導をいただいた.宮崎大学教

育文化学部教授藤井良宜博士には統計解析に関して懇切な

ご指導をいただいた.元農林水産省茶業試験場長中川致之

博士にはベクチンの分析に関してご助言を,野菜茶業研究

所主任研究員水上裕造博士にはカテキンの分析に関してご

をいただいた.宮崎県食品開発センター副部長柚木崎

千鶴子博士,技蹄松浦靖氏,技師寺崎三季氏にはベクチン

分析に捺して,宮崎県総合農業試験場花き部副部長中村葉

博士にはカテキン分析に際して,宮崎県総合農業試験場茶

業支場の職員諸氏には官能審査に際して多大なるご支援を

いただいた.この場をお借りして深謝する.

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(平成 23年 8月12日受付,平成 23年 9月25B受理)