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ト マ ト ハモグリバエの発生生態と殺虫剤感受性 289 トマトハモグリバエの発生生態と殺虫剤感受性 とくま る すすむ くりた ひでき は やしだ よしきみ いし やま まさひろ 京 都府病害虫防除所 徳丸 * ・栗田 秀樹・林田 吉王・石山 正弘 ト マ ト ハモグ リ ノfエ Lin'omyza sativae B LANCARIJ は, 1 999 年 に 日 本で初 め て 発 生 が 確 認 さ れ た (岩崎 ら, 2000) 。 その後, 本種は急速に分布を拡大している (徳 丸 ・阿部, 2001 ) 。 本 種 は寄主範囲が非常 に 広 く , 特に こ れ ま でハモ グ リ パ エ の 被害 が そ れ ほ ど 問題 と な ら な か っ た ウ リ 科作物で多発す る (徳丸 ・阿部, 2001 ) 。 また, 本 種は 19 90 年 に 日 本 に 侵入定着 し た マ メ ハモ グ リ パ エ , 土着 の ナ ス ハモ グ リ パエ と 形態お よ び加害様式が類似 し てお り, 識別が非常に困難である (岩崎ら, 2000) 。 都府内 の 施設 栽培 ト マ ト では, これら 3種が同時に発生 し た 事例が あ る (A BE and KA\VAAA , 2001 ) 。 こ れ ま で に マ メ ハモ グ リ パ エ に は 1 0 種 の 殺 虫 剤 薬登録されている。 しかし, ト マ ト ハモグ リ パエ に 対 し てはシ ロ マ ジ ン 液剤 と ス ピ ノ サ ド 水和 剤 の み で あ る (2002年 5 月 1 0 日 現在 ) 。 また, 本 種の 日 本 産個体群 各種殺虫剤に対す る 感受性については 不明である。 ここ では, 我が国におけ る ト マ ト ハモグ リ パエの発生 生態の現状 と各種殺虫剤に対する感受性試験結果につい 述べたい。 I 1 圏内における地理的分布 ト マ ト ハモグ リ パエ は, 1 999 年 に 沖縄 県, 山口県, 京 都府に おいて我が国で初めて発生が確認さ れた (徳 ・ 阿部 , 2001 ) 。 本 種の分布は 2 000 年に は九州, 近畿 地方, 2001 年 に は 中 国, 四国, 東海, 関 東 甲信越地 方 まで広がった。 2002 年 5 月 1 0 日 現在, 1都2 30 で本 種の発生が確認さ れている (図1)。 京 都府内 では, 2000年に府内の ほぼ全域で本 種の発生が確認さ れた (徳丸 ・阿部, 2001 ) 。 マ メハモグ リ パエ は, 我が国で初 めて発生が確認されてから3年後に1都 I 16 に広 Biology and Insecticide Susceptibility of the Vegetable Leaf. miner Liriomyzα皿tivae B LANCA RD. By Susumu TOKUMAI札1, Masao FUKUI, Hideki KUI UT A , Yoshikimi HAYASlllDA and Masa. hiro ISl llYAMA ( キーワード:トマトハモグリノてエ, マメハ グリパエ, ナスハ リパ 殺虫剤感受性 地理的分布) * 現在東京府農業総合研究所環境部 5 ふくい まきお 京 都府農業総合研究所環境部 ネ富 正男 初発生"1: .:1ω附 9999州 9伴 �中縄県 図-1 トマト ハモ グリパエが分布する都府県の初発生 (2002年5月 10現在) がった (西 東 , 1993)。 2 発生消長 ト マ ト ハモグ リ パ エ は 1 999 年お よ び 2000 年 に は 京 都 府向 日市の 施設 ト マ ト で春期 に 発生 せ ず, 8月から12 まで断続的に発生した (ABE and KAWAII A RA 2001 ; 丸 ・阿部, 2001 ) 。 しかし, 2001 年に は本 種の発生が 5月から始まっており, 本 種が加温設備の整っ た施設内 で越冬 し , 府内に定着した可能性が高い。 ト マ ト ハモグ リ パエ は, 京 都府向 日市の施設 トマトに おい て 1 999年に は マ メハモ グ リ パ エ お よ び ナ ス ハモ グ パエと, 同時に発生していた (ABEand KAAARA 2001 ) 。 しかし, 2000 年 に は マ メ ハモ グ リ パ エ と ナ ス ハ モグ リ パエの個体数が急激に減少し, ト マ ト ハモグ リ パ エ が優占 種 に な っ た (徳丸 ・阿部, 2001 ) 0 2001 年 に は マメハ モグリパエが全く見られなくなり, ナ ス ハモグ リ パエ も さ ら に 少 な く な っ た 。 マ メ ハモ グ リ パエ と ナ ス ハ モグ リパエが減少し, ト マ ト ハモグリパエが優占的にな った原因は不明である

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ト マ ト ハモグリ バエの 発生生態と殺虫剤感受性 289

トマトハモグリバエの発生生態と殺虫剤感受性とくま る すすむ くり た ひでき は やしだ よしきみ いし やま まさひろ

京 都府病害虫防除所 徳丸 膏*・栗田 秀樹・林田 吉王・石山 正弘

は じ め に

ト マ ト ハモグ リ ノfエ Lin'omyza sativae BLANCllARIJ は,

1 999 年 に 日 本で初 め て 発 生 が 確 認 さ れ た (岩崎 ら ,

2000) 。 そ の 後, 本 種 は 急速 に 分布 を 拡大 し て い る (徳

丸 ・阿部, 2001 ) 。 本 種 は 寄主範囲が非常 に 広 く , 特 に

こ れ ま でハモグ リ パエ の 被害が そ れ ほ ど問題 と な ら な か

っ た ウ リ 科作物で多発す る (徳丸 ・阿部, 2001 ) 。 ま た ,

本 種 は 19 90 年 に 日 本 に 侵入定着 し た マ メ ハモグ リ パエ,

土着の ナ ス ハモグ リ パエ と 形態お よ び加害様式が類似 し

て おり, 識別 が非常 に 困難 で あ る (岩崎 ら , 2000) 。 京

都府内 の施設栽培 ト マ ト で は, こ れ ら 3 種が同時 に 発生

し た 事例があ る (ABE and KA\VAllAI<A, 2001 ) 。

こ れ ま で に マ メ ハモグ リ パエ に は 1 0 種の殺虫剤 が農

薬登録 さ れ て い る 。 し か し , ト マ ト ハモグ リ パエ に対 し

て は シ ロ マ ジ ン 液 剤 と ス ピ ノ サ ド 水和 剤 の み で あ る

(2002年 5 月 1 0 日 現在 ) 。 ま た , 本 種の 日 本 産個体群の

各種殺虫剤に対す る 感受性に ついて は不明であ る 。

こ こ では, 我が国におけ る ト マ ト ハモグ リ パエ の発生

生態の 現状 と 各種殺虫剤 に対す る 感受性試験結果 に つ い

て 述べた い。

I 発 生 生 態

1 圏内における地理的分布

ト マ ト ハモ グ リ パ エ は, 1 999 年 に 沖縄 県, 山 口 県,

京 都府 に おいて 我 が 国 で初 め て 発生 が 確認 さ れ た (徳

丸 ・阿部, 2001 ) 。 本 種の分布 は 2000 年 に は 九州, 近畿

地方, 2001 年 に は 中 国, 四国, 東 海, 関 東 甲信越地 方

に ま で広 が っ た 。 2002 年 5 月 1 0 日 現在, 1 都 2 府 30 県

で本 種の発生が確認 さ れて い る ( 図 1 ) 。 京 都府内 で は ,

2000 年 に 府 内 の ほ ぼ全域 で本 種 の 発 生 が確 認 さ れ た

(徳丸 ・阿部, 2001 ) 。 マ メハモグ リ パエ は, 我が国で初

め て 発生が確認 さ れ て か ら 3 年後 に 1 都I府16県 に 広

Biology and Insecticide Susceptibility of the Vegetable Leaf.

miner Liriomyzα皿tivae BLANCllARD . By Susumu TOKUMAI札1,

Masao FUKUI , Hideki KUIUTA, Yoshi kimi HAYASlllDA and Masa. hiro ISlllYAMA

(キーワード:トマトハモグリノてエ, マメハモグリパエ, ナスハ

モグリパエ, 殺虫剤感受性, 地理的分布)

* 現在東京府農業総合研究所環境部

一一一 5

ふくい まきお

京 都府農業総合研究所環境部 ネ富井 正男

初発生"1:

年.:1ω附99朔州99州9伴

臼 :川2初捌訓削0∞削卿0α∞o

昌 :コ川川2初捌捌0∞削0引l 年z脇�:川2却m卿0∞仰0ω2年

�中縄県図 - 1 トマトハモグリパエが分布する都府県の初発生年

(2002年5月10現在)

が っ た (西東, 1 993) 。

2 発生消長

ト マ ト ハモグ リ パエ は 1 999 年お よ び 2000 年 に は 京 都

府向 日市の 施設 ト マ ト で春期 に 発生 せ ず, 8 月 か ら 1 2

月 ま で断続的 に 発生 し た (ABE and KAWAIIARA , 2001 ;

徳丸 ・阿部, 2001 ) 。 し か し , 2001 年 に は 本 種 の 発生が

5 月 か ら 始 ま っ て お り , 本 種 が加温設備の整 っ た 施設内

で越冬 し , 府内 に 定着 し た 可能性が高い。

ト マ ト ハモグ リ パエ は, 京 都府向 日市の 施設 ト マ ト に

おいて 1 999年に は マ メハモ グ リ パエ お よ び ナ ス ハモ グ

リ パエ と , 同 時 に 発生 し て いた (ABE and KA\VAllARA,

2001 ) 。 し か し , 2000 年 に は マ メ ハモ グ リ パエ と ナ ス ハ

モグ リ パエ の個体数が急激 に 減少 し , ト マ ト ハモグ リ パ

エ が優占 種 に な っ た (徳丸 ・阿部, 2001 ) 0 2001 年 に は

マ メ ハモグ リ パ エ が全 く 見 ら れ な く な り , ナ ス ハモグ リ

パエ も さ ら に 少な く な っ た 。 マ メ ハモグ リ パエ と ナ ス ハ

モグ リ パエ が減少 し , ト マ ト ハモグリパ エ が優占的 に な

っ た 原因 は不明であ る 。

Page 2: サKM - jppa.or.jp

(2002 年)

(株) 大 起 理 化 工 業) を 用 い て l噴霧 し , 25"C長 日 条 件

( 15 L 9 D) 下の恒温 器 内 で飼育 し た 。 施用 前 の 幼虫数,

施用後の蝋化個体数お よ び羽化成虫 数 を 記録 し た 。 死虫

率 は , 水散布 の 値 を 対 照 と し て ABBOTT ( 1925) の 方法

に よ り 補正 し た 。 マ メ ハモグ リ パエ沖縄 県糸満市産個体

群お よ びナ ス ハモグ リ パエ 京 都府久美浜町産個体群に つ

い て も 同様に検定 し た 。

3 種ハモグ リ パエ 2 齢幼虫 に 対す る 各種殺虫 剤 の累積

補正死虫率 を 図 2 に 示 し た 。 トマ トハモ グ リ パエ の 幼

虫期間 の死虫 率 が 90%以上と な っ た 殺虫 剤 は , イ ソ キ

サチオ ン 乳剤, カ ル タ ッ プ水溶剤, チ オ シ ク ラ ム 水和

剤, シ ロ マ ジ ン液剤, ス ピ ノ サ ド 水和 剤, エ マ メ ク チ ン

安息香酸温乳剤 で あ っ た 。 ま た , 80%以上9 0%未満 と

な っ た 殺虫 剤 は , シ ペ ル メ 卜 リ ン 水和 剤 お よ び ミ ルベ メ

ク チ ン乳剤 で あ っ た 。 幼 虫 期 間 の死虫 率 は 8 0%未満 で

あ っ た が, 踊期 間 の累積死虫 率 が 80%以上と な っ た 薬

剤 は ア セ フ ェ ー ト水和 剤, ル フ ェ ヌ ロ ン乳剤, ニ テ ン ピ

ラ ム 水溶剤, ク ロ ル フ ェ ナ ピ ル水和 剤 で あ っ た 。

第 7 号第 56 巻植

殺虫剤感受性

トマ トハモグ リ パエ は, 京 都府城陽市 ( 京 都J ) お よ

び 向 日 市 ( 京 都 M) に お い て 採 集 し , 25"C長 日 条 件

(15 L 9 D) 下 で累代 飼育 し た 2 個体群 を 供試 し た 。 有

機 リ ン 剤, ネ ラ イ ス トキ シ ン 剤, 合成 ピ レ ス ロ イ ド 剤,

昆虫成長制御剤, ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 剤 な ど合計 21 種類

の殺虫剤 に対す る 感受性 を調べ た 。 ハモグ リ パエ 2 齢幼

虫 が寄生 し た イ ン ゲ ン マ メ の 初 生 葉 の 表 裏 に , 0 .007

m l/ cm 2 の 殺 虫 剤 を 農 薬 散 布 器 (機 種:DIK-7320,

3 寄主植物と被害

我が国 で は こ れ ま で に , 本 種の寄主 と し て ウ リ 科, ナ

ス 科, マ メ 科, ア ブ ラ ナ 科, キ ク 科お よ び ア オ イ 科の 6

科 38 種の植物が記録 さ れて い る (徳丸 ・阿部, 2001 ) 。

特 に ウ リ 科作物 に 本 種 は 多 く 発 生 す る (徳丸 ・阿部,

20 01 ) 0 20 01年に は, 京 都府内 に お い て , キ ュ ウ リ お よ

びトマ トが定植後 に 本 種 に 加害 さ れ, 栽培 を 継続できな

く な っ た 事例が あ っ た 。

E

疫防物290

71 6お13962 93 45 138 91 6M 7-170 27 12-1 . .ß 121 -15 11365 80 3ラ93 21 46 3R 10596 55 50 30 2537 30 110 529643 68 32 105 81 86 45 99 57 100

50

。ル7.'.7-

ロンEC

X2.000

7)レフェノ

クスロンEC

X2.000

シロマジンS

XI,OOO

ベルメ

トリンEC

X2,O肌}

エトフェン

7'1ゴyクY、EC

XI,OOO

ンベル

メ卜リンWP

XI.O∞

チオシク

ラムWP

XI,OOO

カル亨ップSP

XI.OOO

サKM

,ノ1ra,E

L14fx

MEPEC

XI.OOO

アセ7ェートWP

XI,OOO

昆虫成長ì1jlJ御斉IJ

21お3 74 2-1

合成ピレスロイド斉IJ

114 70 6純47 47 6045 1056911165 93 64 5846 1-163 52 32 62 8769 34 67 36 138 48 71 43 52 63 110 97 45 32

累積補正死虫率(%) 100

50

ネライストキンン剤有機リン斉IJ

0

ベ汁UA

レι

I

U欠×

トル7"ンピラドEC

XL!JOO

寸〆Daのυ

w

ノ、ノ工

,ン-フ×

クロルフェ

ナピルWP

X2.000

エマメク

チンEC

X2.000

U川淵

ーサ× 一

品灯明削

マ砕い羽

キ〉

アセタミ

プリドSP

X2.000

イミダクロ

コ刈ト"WP

X2.0凹日

ニテンビ

ラムSP

XI.OOO

その他薬剤

図-2 3種 ハモ グ リ パエ 2齢 幼虫寄生葉 に各秘 殺虫 剤 を 散布し た昨年の累積補正死虫尋ュ(注 ) 幼虫期間の死虫 率官罰: ト マ ト ハ モ グ リ パエ (京都J ) , 0: ト マ ト ハ モ グ リ パエ (京都M ) , 医�: マ メ ハ モ グ リ パエ

(沖縄 ) , _: ナ ス ハモ グ リ ノてエ (京都 ) , 仁コ: 蝋期間の死虫 率. 俸上の数値 は供試虫数 , SP は 水溶剤IJ, S は 液剤 を示す.

一一一 6 一一一

ネオニコチノイド削

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ト マ ト ハモグリ パエの発生生態と殺虫剤感受性 291

ト マ ト ハモグ リ パエ の 京 都 M 個体群に 対 す る エ ト フ

ェ ン プ ロ ッ ク ス 乳剤の幼虫期間の死虫率 は 100% であっ

た が, 京 都J 個体群に 対 し て は 35 . 1 % と 低かった 。

ト マ ト ハモグ リ パエ に 対す る 殺虫効果 を殺虫剤の系統

間で比較す る と , 有機 リ ン剤で は , イ ソ キ サ チ オ ン乳剤

が幼虫期 間 の 死虫 率 が 90%以上 を 示 し た 。 ア セ フ ェ ー

ト 水和剤は, 幼虫期間の死虫率は低かった が, 蝋期 に お

け る 累積死虫 率 は 80%以上 に 達 し た 。 ネ ラ イ ス ト キ シ

ン の 2剤に は 高 い感受性 を示 し た 。 合成ピ レ ス ロ イ ド剤

では殺虫剤の種類 に よ り 感受'性 に 差があった 。 昆虫成長

制 御剤 で は, シ ロ マ ジ ン 液剤 の 幼 虫 期 間 の 死虫 率 は

90%以上 を 示 し た 。 フ ル フ ェ ノ ク ス ロ ン 乳剤お よ びルブ

ェ ヌ ロ ン乳剤は遅効的で あった 。 ネオ ニ コ チ ノ イ ド剤で

は, い ず れ の 殺虫剤 も 幼虫期間の死虫 率 は 90%以 下で

あった 。 3 種ハモグ リ パエ の死虫率が いずれ も 90%以上

と なった 殺虫剤は, イ ソ キ サ チ オ ン 乳剤, カ ル タ ッ プ水

溶剤, チ オ シ ク ラ ム 水和 剤, シ ロ マ ジ ン液剤, ス ピ ノ サ

ド 水和剤, エ マ メ ク チ ン安息香酸塩乳剤であった 。 ト マ

ト ハモ グ リ パ エ の 幼 虫 期間の死虫 率 が 50%以 下 で, マ

メ ハモ グ リ パ エ お よ び ナ ス ハモ グ リ パ エ で の死虫 率 が

70%以上 の殺虫剤は, ア セ フ ェ ー ト 水和剤, ペル メ ト リ

ン乳剤, ジ ノ テ フ ラ ン 水和剤お よ び ト ル フ ェ ン ピ ラ ド 乳

剤であった 。 ト マ ト ハモグ リ パエ の幼虫期間の死虫率 は

70%以上で, マ メ ハモグ リ パエ お よ びナ ス ハモグ リ パエ

での死虫率が 50%以下の殺虫剤 は な かった 。

お わ り に

ト マ ト ハモ グ リ パ エ は 中 国 で は, シ ペルメ ト リ ン

表-1 3種 ハモ グ リ パエ に対す る各種 殺虫 剤の 殺虫効果および登録状況 (2002 年5月1 0 日 現在 )

殺虫効巣 殺録状況

殺虫 剤の

系統 と種 類名

ト マ ト マ メ ナ ス

ハモ グ リ パエ ハモ グ リ パエ ハモ グ リ パエ

京都J 京都M 沖縄糸満

ト マ ト マ メ ナ ス

ハモ グ リ パエ ハ モ グ リ パエ ハ モ グ リ パエ京都久美浜

有機 リ ン 剤

ア セ ブエ ー トWp (id!事 O傘 <1]> (id! +

MEP EC 0事 X' ムホ O

イ ソ キサ チ オ ンEC (id! (id! (Ç>> (id! 十

ネ ラ イ ス ト キ シ ン剤カJレ タ ッ プ塩 酸堀 Sp

チ オ シ ク ラ ムwp

合成 ピレ ス ロ イ ド 斉IJ

シベ ル メ ト リ ンWP

エ トプェンプロックスECペル メ ト リ ンEC

O O

O x

x X

昆虫成長制御 剤シ ロ マジ ン S 。 O フ ル フ ェ ノ ク ス ロ ンEC O' O'

ル フ ェヌ ロ ンEC 。 o 事

ネ オ ニ コチ ノ イ ド 剤ニ テ ン ピ ラ ム SP O O

イ ミ ダ ク ロ プ リ ドWP X ×

ア セ タ ミ プ リ ド SP × ×

チ ア メ ト キサ ム SP × どエーーーーーーー・・・・・・・・ー・・・ー・・・・・・・・・ー・ー・ ・・ー・ ・ ・その他薬剤j

ス ピノサ ド WP 。 。エ マ メ ク チ ン安息香 酸塩EC (id! 。ク ロ ル フ ェ ナ ピ ルWP 。事 。傘

ジ ノ テ フ ラ ンWP × ×

ト ノレ フ ェ ン ピ ラ ドEC ×

ミ ルベ メ ク チ ンEC 。 。

0

00

+

O ム*

ム事

十十 +

o (id! X X

/), X

ム 。

。 O 十 + +

。 。 +

ム申 。*

O 。 十

O 。 +

。 O

(注 ) SP : 水溶剤, S : ì夜 剤, + 登録あり . (id!: 幼虫 期間の死虫 率が 90% 以上 , 0: 70�89% , ム :5 0�69% , X : 49% 以下 未

検定. ただし , *印 は幼虫および蝋期の累積死虫 率.

7

Page 4: サKM - jppa.or.jp

292 植 物 防 疫 第 56 巻 第 7 号 (2002年)

(FAN et al., 1998) , エ マ メ ク チ ン安息香酸塩 と 同類の ア

パ メ ク チ ン( C!IEN et al., 1998) に 高 い感受性 を 示 し て

い る 。 京 都府向 日市の 施設 ト マ ト で は, 本積 を マ メ ハモ

グ リ パエ と 同時 に 防除す る た め に , シ ロ マ ジ ン液剤, ス

ピ ノ サ ド水和剤お よ びエ マ メ ク チ ン安息香酸塩乳剤を散

布 し , い ずれ も 高 い 防除効果 を得て い る 。

今回の感受性試験では, 現在マ メ ハモグ リ パエ に 登録

の あ る 10 種の殺虫剤の う ち , イ ソ キ サ チ オ ン 乳剤, カ

ル タ ッ プ水溶剤, チ オ シ ク ラ ム 水和 剤, シ ロ マ ジ ン 液

剤, ス ピ ノ サ ド 水和剤, エ マ メ ク チ ン安息香酸塩乳剤,

ミ ノレベ メ ク チ ン 乳剤の 7剤は本種 に 対 し て も 高い殺虫効

果 を 示 し た ( 表ー 1 ) 。 し か し , ア セ フ ェ ー ト 水和 剤お よ

び 卜 ル フ ェ ンピラ ド 乳剤は, 本種の幼虫期間の殺虫効果

は マ メ ハモグ リ パエ と 比べて 低かった 。 フ ル フ ェ ノ ク ス

ロ ン は マ メ ハモグ リ パエ に対 し で も , ト マ ト ハモグ リ パ

エ に 対 し て も , 殺虫効果 は 中程度で あった ( 図 2) 。

トマ ト ハモグ リ パエ は , 我が固に お け る 分布 を 急速に

a・・''v

---h'w

ょ…

だ…

央…

中…

0農薬に含まれるダイオキシン類の調査結果の公表について

農林水産省 は, 農薬 に 含 ま れ る ダイ オ キ シ ン類の調査結果 に つ い て 発表 し た 。 そ の概要 は以下の と お り 。

ダイ オ キ シ ン類の含有 に つ い て 過去 に 報告の あった 6農 薬( 2, 4-D, MCP, TPN, CNP, PCp, PCNB) につ いて , 農林水産省 と し てダイ オ キ シ ン類の分析 を行った と ころ , 現在登録の あ る 2, 4-D, MCP, TPN に つ いて は すべて 農薬中ダイ オ キ シ ン類の検査基準( 農薬中ダイ オ キ シ ン類の基準 と し て , 作物残留があった場合で も人 の 健康影響 を未然 に 防止す る こ と が可能であ り , 環境影響 を 十分低 く す る こ と が可能 な 水準) 未満 で あ ったが, 既 に 登録が失 効 し , 流通 し て い な い CNP, PCP, PCN B に つ い て は検査基準 を 上 回 る ダイ オ キ シ ン 類が確認 さ れた 。

検出 さ れ た ダイ オ キ シ ン類の濃度 は, CNP は検査基準未 満 � 1 3, OOOng- TEQ/g, PCP は 4. 5�7, 500ng­TEQ/g, PCNB は検査基準未満 �3 . 7 ng-TEQ/g で あり , 概ねこれ ま で公 表 さ れ て い る も の と 同 程 度 で あ った 。

今回ダイ オ キ シ ン類の 含有が明らか に なった 農薬の うち , CNP, PCP は 主 に 水聞で 使 用 さ れ た 除 草剤,PCNB は 主 に ア ブ ラ ナ 科野菜等 に 使 用 さ れた 土壌処理殺菌剤であった こ と から, い ずれ も 作物 に 直接施用 さ れる こ と は なしダイ オ キ シ ン類が作物 に 付着す る こ と はな かった と 考 え られ る 。

ま た , ダイ オ キ シ ン類 は 極め て 水 に 溶 け に く いこ と から, 土壌中 の ダイ オ キ シ ン類が作物 に 吸収 さ れ る こ と はほ と んどな い と さ れて い る 。

今回の誠査結果 を も と に 農用地土壌への影響 を試算 し

拡大 し , 京 都府内 で は キ ュ ウ リ お よ び ト マ ト などで 被害

を与 え て い る 。 し か し , キ ュ ウ リ で は 本種 に 対 し て 登録

さ れ た 農薬 は な く , ト マ ト で も 2剤 の み で あ る ( 2002

年 5 月 10 日 現在) 。 今後, 各作物 に 適用 で き る 有効 な殺

虫剤の登録促進が望 ま れ る 。

今回行った 殺虫剤感受性試験は, ハモグ リ パ エ の幼虫

に 施用 し た も の で あ り , 他の 発育段階(卵, 煽, 成虫)

に 施用 し た 場合の感受性 は不明であ る 。 今後, 他の発育

段階 に 施用 し た 時の感受性 に つ い て も 検討 し , 3 種ハモ

グ リ パエ 聞 の感受性の差異 を 明らか に し た い 。

引 用 文 献1 ) ABE, Y. and T. KAWAIIARA (200 1 ) : Appl. Entomol. 2001.

36: 277�281. 2) ABHOTT, W. S. (1 925 ) : J. Econ. Entomol. 18: 265 �267. 3) CHEN, Y. et al. ( 1 998) : Wuri Sci. Jour. 14: 1 85 �188. 4) FAN, Q. et al. ( 1998) : ibid. 14: 1 89� 1 92

5 )岩崎暁生 ら (2000) : 植物防疫 54 : 1 42�147 6)西東 カ ( 1 993) : 向上 47 : 123� 1 24. 7)徳丸 晋 ・ 阿部芳久 (200 1 ) :向上 55 : 64�66

た と こ ろ , CNP 及 び PCP に 由来 す る 水 田 土 壌 中 ダイオ キ シ ン類濃度 は 合わ せ て 13. 5 pg-TEQ/g, PCNB に由来 す る 畑 地 土 壌 中 ダ イ オ キ シ ン 類 濃 度 は 0. 04 pg TEQ/g と なった 。

な お, 環境省 と 農林水産省が連携 し て 実施 し た 「農用地土壌及 び農作物 に 係 る ダイ オ キ シ ン類調査結果J 等 をも と に 水田土壌 中 の ダイ オ キ シ ン類濃度 の 平均値 を算出す る と 46. 5 pg- TEQ/g で あ り , これ は 土壌 中 の ダイ オキ シ ン類の 環境基準値0, 000 pg-TEQ/g) 及 び調査指標値( 250 pg- TEQ/g) を 大 き く 下回って い る 。

今回の調査 に よ り ダイ オ キ シ ン類の含有が明らか に なった 農薬の う ち , CNP に つ い て は 平成 1 1 年 7 月 に 製造業者 の分析 に よ り ダイ オ キ シ ン類の 含有が明らか に なった こ と から, 農林水産省の 指示 に よ り 農家段階で保管 されて い た 製品 の 回収 を行い, 製造 ・ 流通段 階 に あった もの と 併せ, 工場内 の 貯蔵施設 に 厳重 に 保管 さ れて い る 。

PCP 及 び PCN B に つ い て は, 新 た に 検査基準 を 上 回る ダイ オ キ シ ン類の含有が明らか と なった こ と から, 製造業者 に 対 し , これらの 農薬 の 回 収 を 行 う よ う 指 示 した 。

現在, PCP 製造業者 及 び PCNB製造業者 は, そ れ ぞれ 「 回収セ ン タ ーj を設置 し , フ リ ー ダイ ヤ/レに 寄せられた, 農家等 からの目撃情報等 を も と に を回収 を 行ってい る 。

以下 に PCP, PCNBの 回 収 セ ン タ ー の 連絡先 を 示 すの で, 関係者へ の 周 知 に 努め て い た だ き た い。

PCP 製品 回収 セ ン タ ー : 0 120- 35-3694 フ リ ー ダイ ヤlレ

PCNB製 品 回収 セ ン タ ー : 0120-39 1 -321 フ リ ー ダイヤル

本件 に 対す る 問 い 合わ せ先は, 農林水産省生産局生産資材課農薬対策室, 電話 03-3502-8 1 1 1(内線 3785 都築ま で) へ。

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