Transcript
Page 1: 研究開発部 技術レポート SDN/OpenFlowを活用した 体はあくまで考え方・手段であり、 ゼロから考える技術もあるため、目の前の問題に振り

通信しづらくなることがあります。これらの原因であるサービス利用の急増やネットワーク機器の故障に対処するためには、全国に設置されているネットワーク機器をそれぞれ設定し直さなければならないため、膨大な時間と人手を要してしまいます。NTTコムウェアでは、SDN/OpenFlowの利点であるネットワークの集中制御技術を活用することで、このような状況を解決できないかと考えました。 SDN/OpenFlowはもともと、データセンター等の比較的小規模なネットワークを対象とした技術であるため、大規模なネットワークの状況変化を想定した技術はこれまでになく、広域ネットワークへの適用は多くの課題がありました。 NTTコムウェアではNTTグループの提供する電話やインターネット、NGNといった広域ネットワークのシステム開発を行っており、ネットワークサービスの品質推定やネットワークの故障早期検出に関するノウハウを豊富に持っています。それは、通信の遅れや混雑などのネットワーク状況に関する情報を収集し、過去の故障傾向と照らし合わせることで、広域ネットワークの故障箇所を高速に推定する手法ならびに利用しているお客さまが体感しているサービスの品質を推定する手法です。これらのノウハウを用いることで、広域ネットワークへ適用する上での課題を解決し、災害や故障に強いネットワークを実現するための研究開発に取り組んでいます。 災害や故障に強いネットワークを実現するには、つながらなくなったところを見つけ、新しい迂回路を作ることを、全国規模で実現する必要があります。さらに迂回路を通したことで、サービス品質が低下しないように配慮しないといけません。従来は、熟練した技術者たちが多くの時間をかけてネットワー

ク機器への設定を行っていました。NTTコムウェアでは、全国規模の広域ネットワーク全体の回線品質を監視し状態を常に把握した上で、提供中のサービス個々の品質を測定し改善を必要とするサービスを特定し、現在のネットワーク状況から個別の迂回路を決定・移動させることでネットワーク全体を自動で最適化する方式も研究開発しています。

全国規模のOpenFlowネットワークでの検証実験

 広域ネットワークにおけるSDN/OpenFlowの実現に向けて、NTTコムウェアは独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)と共同で全国規模のOpenFlowネットワークでの実験を実施しています。実際の全国規模のネットワークでの実験を通じNTTコムウェアの技術の完成度を高めていくことで、サービスに対するお客さまの体感品質を向上させたり、緊急事態の最適化処理を行ったりできるような新世代ネットワークの実現に貢献していきます。

データセンターで導入が進められているSDN/OpenFlow

 現在、クラウドサービスは、自社にサーバがなくても、使いたい時に使いたい量のコンピュータリソースを利用できるという利便性や経済性の高さから利用が拡大しています。そして、クラウドを実現するコア技術が、ハードウェアの仮想化です。サーバやディスクを分割して限られた機器やサービスを複数存在するように利用できる仮想化技術は利用環境が整いつつありますが、一方でネットワークの仮想化技術は実現されておらず、新しくお客さまにクラウドを提供する際にはネットワーク機器への設定で時間を要しているのが現状です。 そこで考えられたのがSDN/OpenFlowです。SDN/Open Flowを簡単に説明すると、「ネットワークを見渡して、ソフトウェアでネットワーク全体を一度に制御できる技術」です。Open Flowは、SDNを実現するオープンな技術として、70社以上の企業が参加する「ONF」(Open Networking Foundation)

によって仕様策定が進められており、NTTコムウェアもNTTグループの一員として参加し、OpenFlowネットワークのオペレーション手法に関する検討を期待されています。SDN/Open Flowによりネットワークを構成する一つひとつのネットワーク機器の構成を変更することなく、全体のNW制御をつかさどる「コントローラ」からの設定だけでネットワーク全体の構成変更が可能です。これによりネットワークの機器の一つひとつに必要だった設定変更が自動化できクラウドサービスの提供開始が可能になるといわれています。 このように、SDN/OpenFlowはクラウドサービスのお客さまの利便性向上のために考えられた技術であり、クラウドを提供するデータセンター事業者により導入検討が進められています。

SDN/OpenFlowによる広域ネットワークの実現

 社会インフラとして重要な役目を担っているインターネットやNGNなどの広域ネットワークは、災害などの発生により

近年、ネットワーク技術で注目されているキーワードが「SDN*1/OpenFlow*2」です。SDN/OpenFlowはネットワークをソフトウェアにより設定可能であるという特長を持っています。この特長をNTTグループが提供する広域ネットワークにも活用し、災害や故障に強い広域ネットワークの実現を目指した研究にNTTコムウェアは取り組んでいます。

研 究 開 発 部技 術 レポ ート

SDN/OpenFlowを活用したより便利に・つながるネットワークの実現に向けて~ 災害や故障に強い、いつでも安心して使える 新世代ネットワーク実現を目指した研究開発の取り組み~

*1 SDN:Software Defi ned Networkの略。個々のネットワーク機器に設定をするのではなく、ネットワーク全体をソフトウェアで集中制御し構築する考え方。*2 OpenFlow: SDNを実現する最有力候補の国際標準規格。従来はスイッチにあった制御機能を分離し、コントローラと呼ばれるネットワーク全体を管理するソフトウェア

から個々のスイッチを一括して制御する規格。

■図1 SDN/OpenFlowの導入による迅速なクラウドサービス提供

SDN/OpenFlow自体はあくまで考え方・手段であり、ゼロから考える技術もあるため、目の前の問題に振り回されることが少なくありません。しかし、どんな世界を実現したいか、ネットワークの理想像を常に考え、そこに到達するために必要な技術の積み上げを意識することで、ネットワークの全体最適化に向けて着実に技術・ノウハウを蓄積していきたいと思います。

社会インフラとしてのネットワークには多様なサービスや高い品質、高い信頼性などさまざまな要求がありますが、SDN/OpenFlowはそれらを実現するための重要なコンセプトであるとNTTコムウェアでは考えています。SDN/OpenFlowによる広域ネットワークの実現にはまだまだ検討していかなければならない技術も多い状態ですが、これまで獲得してきた知見やノウハウを基に、着実な技術の蓄積を図っていきます。また、標準規格であるOpenFlowについては、NTTコムウェアが広域ネットワークへの適用で獲得した知見を基に機能の標準化提言を行い、標準規格の改善にも貢献していく予定です。NTTコムウェアはいつでも・どこでも・高品質につながる新世代ネットワークの実現に向けて、さらなる技術の向上に努めていきます。

略歴 2010年度入社 基盤技術本部 研究開発部配属、NGNのサービス基盤であるSDPの管理技術の研究開発に従事、その後SDN/OpenFlowによるフロー制御技術の研究開発を担当、現在に至る。

品質生産性技術本部研究開発部

山田 啓

■図2 つながる広域SDN/OpenFlowネットワークの実現に向けて

ネットワーク機器情報の監視ネットワークの状態を推定

 つながるネットワークに再設定

 問題発生の検知

1

2

3

SDN/OpenFlowにより、便利で安心な広域ネットワークの実現を目指します

作業者 オペレータ

お客さま

物理サーバ

スイッチスイッチ設定指示

クラウド利用申請 クラウド利用申請

オペレータ

仮想サーバの追加 仮想サーバの追加

コントローラ

手作業

お客さま

設定指示

一括設定

従来のデータセンター SDN/OpenFlowを採用したデータセンター

15 16

Recommended