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日本シミュレーション医療教育学会@宮崎 シミュレーション医療教育の科学と実践 “Instructional Simulation” 池上敬一 日本医療教授システム学会 140628

140628 シム医療教育の科学と実践@宮崎

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日本シミュレーション医療教育学会@宮崎

シミュレーション医療教育の科学と実践

“Instructional Simulation”

池上敬一日本医療教授システム学会

140628

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1999年のビッグバン、患者安全とシミュレーション

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患者安全、医療の標準化、

チーム医療、多職種連携

プロフェッショナリズム、卒前教育、

卒後研修、生涯発達

教育、研究、患者ケア

失敗から学ぶ、経験学習、

振り返り、デブリーフィング

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● シミュレーション医療教育はどのようなものか

を記述

● しかし、処方箋にはならない

● プランA:見て学ぶ(徒弟制)

● プランB:処方の仕方を学ぶ(認知的)

○ Instructional Simulation

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医療現場の「パイロット」だけの訓練法?

コスト時間労力・・・日本にはない

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ヘルスケアのタスクフォース効果的・効率的に養成する

Simulated LearningEnvironmentsSLEs

”Experiential Learning"

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Simulated Learning Environments(SLEs)

● 講義○ ペーパーペイシェント、ケースベース

● Problem-based learning● モデルを用いたタスクトレーニング● バーチャル、マイクロワールド、勉強会

○ メンタル・シミュレーション

● 全身マネキンを用いたシミュレーション○ フィジカル・シミュレーション

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● 「できる」医療者に育つ/育てる

○ コンピテンシー・アウトカム基盤

● 効果的・効率的・魅力的な学習基盤

○ 卒前教育

○ 卒後研修

○ 生涯発達

● 患者のアウトカムにインパクトを与える

● 安価に、手軽に、いつでも、誰でも、何度でも

シミュレーション医療教育

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シミュレーション医療教育What to Learn & How to Learn

医療を安全・確実に実践する

能力(パフォーマンス)

パフォーマンス能力の構造

● 静的な能力

● 動的な問題解決能力

● 社会的な能力

● リスク軽減能力

Learning by doing● 学習デザイン

● 経験学習

● 振り返り

Instructional Simulation● 動的な業務プロセスのなかで知識

・手技・対人技能などを学習

● 能力(アビリティ)と事例データベー

スを組立てる

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静的な能力

● チアノーゼをみて「チアノーゼ」と宣言できる

● 呼吸器疾患、循環器疾患を疑う

● とりあえず酸素を投与● 目の前の患者の診断・治

療のプランを立案する

● 識別

● 概念

● ルール

● 問題解決

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静的な能力:状況から切り離された技能

● チアノーゼをみて「チアノーゼ」と宣言できる

● 呼吸器疾患、循環器疾患を疑う

● とりあえず酸素を投与● 目の前の患者の診断・治

療のプランを立案する

● 識別

● 概念

● ルール

● 問題解決

知的技能

状況から切り離された手技

リスク軽減技能

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動的な状況での問題解決・基本スキーマ

状況設定・リソース制約

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

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動的な問題解決能力・基本スキーマの構造

状況設定・リソース制約

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

概念事例データベース

ルール 問題解決

識別 手技

リスク軽減技能

識別

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動的な状況における問題解決行動

前状態 状態1 状態2 状態3

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動的な状況における問題解決行動

前状態 状態1 状態2 状態3

動的な問題解決能力・基本スキーマを利用

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動的な状況における問題解決行動のモデル

前状態 状態1 状態2 状態3

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

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動的な状況における問題解決行動のモデル

前状態 状態1 状態2 状態3

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

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全体像(形式知)教授デザインとインストラクションの基盤(マップ)

前状態 状態1 状態2 状態3

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

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動的な状況における問題解決行動

前状態 状態1 状態2 状態3

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

シミュレーションInstructional Simulationの構造

シナリオ状態が変化する、学習者選択

学習目標 1確実・全員・集中

学習目標 2確実・全員・集中

学習目標 n確実・全員・集中

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社会的な能力

対人技能

● 交渉力

● 影響力

● チームワーク

● 記録

チームワーク

● 指揮系統・伝達法

● 役割と責任

● 自己の限界(能力・心理)

● 情報の共有

● お互いの尊重

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リスク軽減能力

● 手技・操作にともなう合併

症・副作用の知識

● 結末に関するストーリー

(事例データベース)

● 正しい手技・手順

● モニタと異常の判断

● 中止・中断の決定

● ダメージコントロール

○ 説明

○ 処置

○ 報告

○ 合併症・副作用の検査

・治療

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高度な認知能力

反応する自己に対応する

● 感情のモニタリング

● リスク評価

● コントロール

他者に対応する

● 他者の理解

● 理解・コミュニケーションス

タイルの理解

● メッセージの解釈

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ストーリーベース教材 1/8  看護師の山田さんは新卒でA病院に

入職し8年目。外科病棟、救急外来を経

験し、いまは内科病棟勤務です。山田さ

んは患者や同僚から信頼されている「よ

くできる」看護師。通常の仕事はもちろ

ん、予期せぬ状況でも適切に対応でき

ます。新人看護師は「山田さんと一緒の

勤務だと安心だ」と感じています。

ハイ・パフォーマー

コンピテンシーモデル

パフォーマンスのレベル

● レベル1(normal)○ 定型的な繰返し業務○ ルーチン業務

● レベル2(abnormal)○ 頻度の高い非定型的な業務・状

況への対応○ 問題解決

● レベル3(emergency)○ 稀・危機的状況への対応○ 高度な問題解決

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ストーリーベース教材 2/8  山田さんはこれから準夜勤です。いつ

も申し送りの前に受持ち患者を訪室しま

す。「今日はこれから勤務です。お変わ

りはありませんか?」と声をかけながら

変化の有無をチェックしていきます。最

後に、今日の午後、緊急入院になった

鈴木さん(46歳男性)訪室します。メモに

は以下のような記載があります。

態度技能・習慣になっている・そうすることに価値がある

知的技能・概念(不安定、安定の概念)・概念を使って判断・ルール(判断で計画が決まる)

運動技能(手技)・じっさいにやってみせる

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ストーリーベース教材 3/8  工事中、痛みで仕事ができなくなり整

形外科受診。左下腿から足背に発赤・

腫脹あり。骨折ないため救急外来に紹

介。全身状態は問題ない。血圧

160/110 mmHg、脈拍数110/分、呼吸

は問題なし、体温38℃、WBC

12000/cmm、CRP 8 mg/dl、血糖220

mg/dl。下腿蜂窩織炎の診断で入院。身

長165㎝、体重95㎏、単身生活。

過去の事例の検索と引用問題解決法の再利用・修正

・「蜂窩織炎」言語情報・炎症反応(WBC, CRP):知的技能・抗生剤療法:知的技能・入院の適応:知的技能

評価・判断・データを自分自身解釈・自分の結論(仮説)を生成・臨床推論開始

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ストーリーベース教材 4/8 「看護師の山田です」。鈴木さんは布団

にくるまっている。視線は合うが表情は

辛そう。顔色はよい。呼吸は大きく速い

が、異常な音は聞こえない。「痛みはど

うですか?」「まだ痛い」。橈骨動脈をす

ぐに触知。脈拍はやや速く、皮膚は暖か

く乾燥している。「鈴木さん、あとでまた

きますからね」と部屋を出る。解釈を総括し、次に起こりそうなイベントを予測、そのさいのプランA/Bを立案

フィジカルアセスメント・知的技能・手技(運動技能)

知的技能・運動技能・問題発見法(BLSサーベイ、一次評価)

・概念とルールを使っている・もし 表情=苦悶 なら不安定

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ストーリーベース教材 5/8「今夜の要注意は鈴木さんね。呼吸も脈

も速いし、敗血症になりかけかもしれな

い・・・」。

次の訪室、点滴が終わること、では、い

まの状態がさらに悪化しているかどうか

を判断しよう。

悪化していれば・・・

評価と判断、さらに将来を予測し、その対応策(プラン)を策定

知的技能・問題の特定・問題解決法の創出(ルール、以前に 行なった問題解決の再利用・改変)

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

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ストーリーベース教材 6/8 

 抗生剤が終了する頃、鈴木さんの部

屋を訪室。鈴木さんの目線はうつろで、

さっきに比べるとぐったりした感じ。表情

はさらに苦しそう。近づくと「ハァー

ハァー」、呼吸は速い。呼びかけても返

事はない。顔色はやや紅潮し、脈をみる

と弱く速い。皮膚は暖かく乾燥している。

過去の事例の検索と引用問題解決法の再利用・修正

事例データベースを作る・長期記憶に紐付け収納する・再利用する、このプロセスが学習

フィジカルアセスメント・知的技能・手技(運動技能)

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 山田さんは呼吸・循環の状態が悪化し

ていると判断する。予想通り敗血症に進

展した。「患者急変時の対応」ルールに

従い迅速対応を開始。

準夜勤のチームで手分けして、一人が

主治医及び今日の救急対応チームの

リーダー医師への連絡を行い、山田さ

んが鈴木さんの状況把握と安定化の

リーダーとなる。

ストーリーベース教材 7/8 

知的技能・判断に基づくルールの選択・ルールの実行を決定

社会的な能力・対人技能、チームワーク高度な認知能力

予測 評価 判断 決定 実行結果の評価

識別   概念    ルール 問題解決 リスク軽減・手技 識別

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ストーリーベース教材 8/8山田さんは酸素投与の準備と救急カー

トを持ってくるよう指示。持ってきても

らった動脈血酸素飽和時計でSpO2を

測定。90%を示したとき酸素投与の準

備ができたので、フェイスマスクで酸素

10L/分でスタート。血圧を測定しながら

SpO2が92%、94%に上昇するのを確

認する。

知的技能・測定、評価、判断、治療手技・ME機器の迅速な使用

評価、判断、決定、実行、手続き、問題解決、チームワーク

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ストーリーベースのインストラクショナル・シミュレーション

● エキスパートのパフォーマ

ンスを教材化

○ 状況変化への適応

● 学習目標を明確化

○ 予測と評価・判断

○ 概念とルール

○ 問題解決、など

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ストーリーベースのインストラクショナル・シミュレーション

● エキスパートのパフォーマ

ンスを教材化

○ 状況変化への適応

● 学習目標を明確化

○ 予測と評価・判断

○ 概念とルール

○ 問題解決、など

● メンタル・シミュレーション

○ ペーパーペイシェント

○ eラーニング

● フィジカル・シミュレーション

○ 全身マネキンン

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インストラクショナル・シミュレーション

特徴

● 状況が変化する動的モデル

● 状況の変化への対応から学習

● 非線形

● 効果的・効率的・魅力的な学習

● 教授ゴール達成

以下を強化

● 医療の場・患者の注意深い観察

● 異常の監視と早期発見

● 統合的な能力

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インストラクショナル・シミュレーション

教授ゴール(総合的・現実的)の一般的な記述

● どのような<状況>で

● <学習者>が

● どんな<ツール>を使って

● どのような<パフォーマンス>を実行し

● <状況>や<システム>に影響を与え

● どのような<質・属性>の<アウトカム>をもたらす

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インストラクショナル・シミュレーション

ストーリー・シナリオ

教授ゴールのデザイン

学習者制御

フィードバック

学習環境のデザイン

シミュレーション制御

評価データの管理

● 7つのレイヤー構造

● 精緻化モデル○ 卒前教育:簡単な事例

○ 卒後研修:普通の事例

○ 生涯発達:難しい事例

● 基本的な技能の学習の導

入としても有用○ メリルのID第一原理

○ 真正性・エンゲージメント

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シミュレーション医療教育の科学と実践

● 科学:学習科学、教授システム学

● 実践:Instructional Simulation○ フィジカル・シミュレーション

○ メンタル・シミュレーション

○ 前提の学習、発展学習、現場でのトレーニングとセット

● 卒前教育・卒後研修、生涯発達の共通基盤

● インストラクショナル・シミュレーション研究会○ 日本シミュレーション医療教育学会+JSISH○ 卒前教育と卒後研修の共通基盤つくり

○ FD開発、トレーナー養成