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コントラスト CEDEC2016 レギュラーセッション ゲームデザイン 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

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コントラスト

CEDEC2016 レギュラーセッション ゲームデザイン

「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

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自己紹介• パソコンゲーム時代からゲーム業界で活躍(業界歴24年くらい?)

• フリーのディレクター、プランナー、コンサル、プログラマー、ライター

• 最近は、Unity Technologies Japanの人(ゲームディレクター・QAマネージャー)

• 昨年「3Dゲームをおもしろくする技術」でCEDEC著述賞を受賞(「Unityではじめる2Dゲーム作り徹底ガイド」の著者) 大野 功二

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実は、書籍の没原稿が数百ページ……

今日は書籍で語れなかった、ゲームデザインの「コア」なお話です

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ゲーム開発で困ったことはありませんか?

•緊張感がでない•インパクトがない•盛り上がらない•ドラマティックにならない

Page 6: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

これらの問題を解決するのが、

“コントラスト”(Contrast)

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これらの問題を解決するのが、

“コントラスト”(Contrast)

比対

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なぜ、ゲームに「コントラスト」が必要なのか?

人間は、「コントラスト」の「差」が大きいものでなければ、

ハッキリと認知できない

Page 9: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

なぜ、ゲームに「コントラスト」が必要なのか?

人間は、「コントラスト」の「差」が大きいものでなければ、

ハッキリと認知できない

Page 10: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

なぜ、ゲームに「コントラスト」が必要なのか?

人間は、「コントラスト」の「差」が大きいものでなければ、

ハッキリと認知できない

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ゲームがおもしろくならない

•緊張感がでない•インパクトがない•盛り上がらない•ドラマティックにならない

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おもしろいゲームとは!?

•緊張感がある!(成功・失敗)•インパクトがある!(静・動)•最高に盛り上がる!(高・低)•ドラマティック!(明・暗)

比対

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コントラストの種類

•映像•画像•音•時間•物語の盛り上がり

変化のあるものなら、コントラストが存在する

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コントラストの基本

・インパクト・ギャップ・アタックコントラストの差 →

が最大

コントラストを感じられない コントラストを強く何度も感じる

クライマックス

←コントラストの差が最大

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S:10min

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ゲームデザインの基本

“ゲームのおもしろさ”(Fun & Interesting & Amusing)

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ゲームプランニング&ゲームデザイン

•企画(コンセプト、売り、アイデア、ルック)

•ゲームシステム•全体の設計(デザイン)•ゲームメカニクス(ゲームの仕組み)• エモーショナルデザイン(感情の設計)

•レベルデザイン(ゲームプレイ展開設計)

•実装確認&管理

プランニング

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「ゲームシステム」のおもしろさを5要素にわける

•アクション → リスク&リターンのおもしろさ

•パズル → 試行錯誤のおもしろさ

•リソース → 管理のおもしろさ

•官能性 → 生理的気持ち良さ・おもしろさ

•運 → 運試し(逆転)のおもしろさ

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5要素の組み合わせ

格闘ゲームアクション パズル

リソース 官能性

将棋

アクション

パズル

リソース官能性

リソース

パズル

アクション

官能性

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「ゲームプレイ展開」のおもしろさとは?

•レベルデザイン→ ゲーム状況の展開のおもしろさ

•ナラティブ → キャラクタと物語のおもしろさ

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ゲームにおける「幅」と「深さ」

•幅 ゲームの横軸のおもしろさプレイヤーの衣装の多さ、ステージの数の多さ

•深さ ゲームの縦軸のおもしろさ戦略・戦術の組み立てのおもしろさ

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ゲームにおける「幅」と「深さ」

ゲームの幅

ゲームの深さ

広い狭い

浅い

深い

格闘ゲーム

アドベンチャー

RPG

音ゲー

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S:10min

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ゲームシステムをおもしろくするコントラストの考え方=ゲームにメリハリを持たせる=

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「緊張感」「達成感」を生み出すコントラストの作り方

「リスク」&「リターン」(“Risk & Return” and Contrast)

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ゲームシステムの「リスク」&「リターン」とは?

「2Dゲームをおもしろくする技術」より

CEDEC 2013 「あなたはなぜゲームを作るのか?」桜井政博氏

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レベルデザインの「リスク」&「リターン」とは?

「2Dゲームをおもしろくする技術」 「3Dゲームをおもしろくする技術」より

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リスク&リターンのコントラストを応用したゲームシステム

B ボタンが

「リスク」&「リターン」のコントラストを最大にするボタンになっている

アクション リスク リターン

通常ダッシュ 制御しやすい 遅い、低いジャンプ

Bダッシュ 制御しにくい 早い、遠く高くジャンプ

「2Dゲームをおもしろくする技術」 「3Dゲームをおもしろくする技術」より

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「リスク」に立ち向かって「リターン」を得る体験が「緊張感」と「達成感」を生む

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「リスク」&「リターン」のコントラスト

•自由選択型:格闘ゲーム強攻撃 ダメージは大きい・技の出は遅い弱攻撃 ダメージは小さい・技の出は早い

•選択強制型:STG,FPS弾の発射中はプレイヤー移動が遅くなるなど

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選択自由型におけるリスク・リターンのコントラストの取り方

弱攻撃A

リスク

リターン

強攻撃B

弱攻撃A

強攻撃B

弱攻撃A

強攻撃B

弱攻撃A

強攻撃B

リスクの伸び幅の差が小さい

メリットのほうがまさっているので、攻撃 Bしか使わなくなるかも

リスクの伸び幅の差をあげる!

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ゲームの「手ごたえ」を生み出すコントラストの作り方

「アクション」と「リアクション」(“Action & Reaction” and Contrast)

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「アクション」と「リアクション」とは?

アクション リアクション

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「アクション」 におけるコントラスト

「3Dゲームをおもしろくする技術」より

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「アクション」 におけるコントラスト

インパクト

← コントラストの差が最大

「3Dゲームをおもしろくする技術」より

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しかし、どんなに「アクション」をがんばって作っても、「手ごたえ」を感じないゲームができてしまうのは、

なぜ?

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ゲームの「手ごたえ」を作るのは「リアクション」だからです

リアクション

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「ダメージリアクション」におけるコントラスト

リアクションの要素 コントラストの差が小さい コントラストの差が大きい

姿勢 変えない シルエットが変わるくらい崩す

位置 その場でダメージ ノックバックする

エフェクト なし 巨大なダメージエフェクト

色 元と同じ色 赤くしたり反転したり点滅など

音 無音 アタックの強いボリュームの大きい低音

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「ダメージリアクション」 におけるコントラスト

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アクションの連続とコントラスト

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アクションの連続とコントラスト

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リアクションでゲーム世界を表現する

ゲームの奥深さ

ゲームの幅 「2Dゲームをおもしろくする技術」「3Dゲームをおもしろくする技術」より

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リアクションのコントラストが薄いと……

•手ごたえが薄くなる•ダメージがわからなくなる•効果がわからなくなる•失敗の原因や理由がわからなくなる

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ただし……

•コントラストが弱い 微妙

•コントラストをバランス良く リアル

•コントラストを強調 アンリアル(ゲームは派手になるが、表現が記号化される)

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「戦術」「戦略」を作り出すコントラストの作り方

「時間」(“Time” and Contrast)

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時間

A. ゲームテンポ(速度)のコントラストB. アクション速度のコントラストC. 「時間差」のコントラスト

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A.ゲームテンポ(速度)のコントラスト

【インベーダー】敵の数が減るほど、ゲームスピードがアップして、ゲームのテンポが早くなる

インパクト

コントラストの差 →が最大

「2Dゲームをおもしろくする技術」 より1ステージ

1分〜30秒くらい

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B.アクション速度のコントラスト

【格闘ゲーム】攻撃アクション速度のコントラスト

「3Dゲームをおもしろくする技術」 より

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C.「時間差」のコントラスト【ボンバーマン】爆弾を「設置(アクション)」してから「爆発(結果)」するまで、時間差がある(読み合いが発生)

「2Dゲームをおもしろくする技術」 より

応用して、いろいろな攻撃やアイテムをつくることが可能

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パズルにおけるコントラストの作り方

「試行錯誤」と「結果」(“Try & Error” and Contrast)

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クロスワードにおける「試行錯誤」と「結果」

A

B C

A B

BA C

問題 問題

ヒント:ヘルシーな食べ物

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クロスワードにおける「試行錯誤」と「結果」

A

B C

A B

BA C

問題 問題

か な

い わ

か な

い わ

か い わ れ

ヒント:ヘルシーな食べ物

Page 53: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

クロスワードにおける「試行錯誤」と「結果」

A

B C

A B

BA C

問題 問題

か な

い わ

か な

い わ

か い わ れ

ヒント:ヘルシーな食べ物

答えを見るまで、正解が分からない

答えが問題を解いている過程で見えてくる

答えを見るまで、正解が分からない答えを見るまで、正解が分からない

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「試行錯誤」と「結果」のコントラスト

試行錯誤 正解!!

試行錯誤 結果 試行錯誤 結果 試行錯誤 正解!!

感情の変化のインパクト

感情の変化のインパクト 感情の変化のインパクト 感情の変化のインパクト

クロスワードパズルA

クロスワードパズルB

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パズルには「解き味」がある

「解き味」を作るには、適度なタイミングで、「試行錯誤」の結果を知るための「結果」がわかるメカニクスが必要

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「戦術」「戦略」を作り出すコントラストの作り方

「リソース」(“Resource Control” and Contrast)

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「リソース」におけるポイント

A. パラメーター強さのコントラストB. パラメーターの属性(三すくみ)C. 「積み重ね(過程)」と「結果」

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A.パラメーターのコントラスト

「パラメーターの値を2倍にすると、2倍強いのか?」問題

例えば、RPGのATK(攻撃力)などのパラメーターは、防御力計算やAIの行動によっても、実際にプレイヤーが感じる強さが変わる

ATK(攻撃力)

レベルLV1 LV8

テストプレイ

プレイヤーが感じる実際の強さ

LV1 LV8

2倍

設計と実際のプレイでズレが発生

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パラメーターとエモーショナルデザイン

実際にテストプレイで感じた「感情の差(エモーションのコントラスト)」から、パラメータを調整する

プレイヤーが感じる実際の強さ

LV1 LV8

テストプレイ

ATK(攻撃力)

レベル LV1 LV8

2倍以上

エモーショナルデザイン

調整

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B.三すくみ

「ゲームの深さ」を作るパラメータのコントラスト

色を例にして考えると……

明暗 色相

どんなに値を広げても、表現できるのは「明暗のコントラスト」のみ

「色相」を加えることで、「様々な色のコントラスト」を作ることができる

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色相

https://ja.wikipedia.org/wiki/色相

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B.三すくみゲームも同じ

「強さ」というパラメーターだけでは、ゲームの深みは「明暗」でしか作れない

明暗

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B.三すくみ「属性」の違うパラメータを作る

色相

「3Dゲームをおもしろくする技術」 より

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パラメーターの作り方

色相明暗

強さ

強いグー

強いチョキ

強いパー

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三すくみパラメーター作りの落とし穴

• 「強さA」と「強さB」という2つのパラメータがあっても、「強さA」と「強さB」において、「属性のコントラスト」が機能しないシステムは、「明暗」を作っているのと変わらない

•本当に「三すくみ」になっているかは、初期の仕様作成段階での確認やプロトタイプを作って確かめる

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C. 「積み重ね(過程)」と「結果」プレイヤーキャラの成長のコントラスト

A.経験値に比例してキャラパラメータが強くなる B.レベルアップでキャラパラメーターが強くなる

インパクト

インパクト

インパクト

インパクト

インパクトインパクト

インパクトインパクト

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「戦術」「戦略」を作り出すコントラストの作り方

「運」(“Luck” and Contrast)

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サイコロゲームを考えてみる

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二人で遊ぶサイコロゲーム

•ルールA 「6」以外がでたら勝ち

•ルールB 「1」〜「3」までがでたら勝ち

•ルールC 「1」がでたら勝ち

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二人で遊ぶサイコロゲーム

•ルールA 「6」以外がでたら勝ち→確率 5/6 = 83.333 %

•ルールB 「1」〜「3」までがでたら勝ち→確率 1/2 = 50%

•ルールC 「1」がでたら勝ち→確率 1/6 = 16.666%

先行有利!

早く決着つき過ぎ

運ゲーだけど、なぜか面白い

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なぜ、運ゲーなのに、ルールBとルールCで、おもしろさが変わるのか?

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ゲームのおもしろさの基本

「行動(アクション)」と「結果(フィードバック)」をループさせる「コアメカニクス」と「ゲームサイクル」

「3Dゲームをおもしろくする技術」 より

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4種類のフィードバック• ポジティブ・フィードバック(メリット)→「成功」「褒める」「獲得」「目標達成」

• ネガティブ・フィードバック(デメリット)→「失敗」「注意」「損失」「目標達成の失敗」

• ポジティブでもないネガティブでもないフィードバック→引き分け・効果なし

• ノンフィードバック→反応なし・無視

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「達成感」が得られるとは?

•アクションとフィードバックを何回も繰り返して、最終的にポジティブフィードバックすることで、得られるもの。

「自己効力感(Self Efficacy)」

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サイコロゲームは「運ゲー」なのに!?

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「認知バイアス」のマジック

•人間には、過去の事象を、全て予測可能に思うことがある。

「俺に運があったんだ!」「ぬるりと引いてきたぜ!」

「後知恵バイアス(Hindsight bias)」

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運ゲーで「達成感」を演出するコントラスト

ポジティブフィードバックを適度に目立たせるコントラストのバランスが必要

それ以外のフィードバック

ポジティブフィードバック

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つまり「成功」を輝かせるための「失敗」のコントラスト

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これは、本物の「達成感なのか?」→「ゲーム的に演出された達成感」

おやつ(お菓子・デザート)

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「プレイヤー(スキル)が成長する」これが「本物の達成感」

主食(ごはん・おかず)

Page 81: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

S:40min

Page 82: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ゲーム進行をおもしろくするコントラスト= Game Play Process =

20分

Page 83: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

レベルデザインにおける

“難易度”と“緊張感”(Difficulty and Tension, Contrast)

Page 84: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

チャレンジのコントラスト

どちらが緊張感・達成感ある?

プレイヤースキルの成長「できた!」を感じさせるには?

A B

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チャレンジのコントラスト

ちょうどよい、難易度のコントラストがあるほうが、緊張感・達成感を感じられる

A B

「手ごたえ」を感じさせたいなら「B」!

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敵のウェーブ

難易度は、上げるだけでは、おもしろくならない

あえて、一度下げて、「難易度のコントラスト」を作ることも重要

難易度の変化量 難易度の変化量

「3Dゲームをおもしろくする技術」 より

Page 87: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

実際の例(プラチナゲームズさん)

High-Level Design

・Stage “Strength”

[難易度] [エモーション]

ST1: 6 7ST2: 4 4ST3: 6 5ST4: 7 8

6+4+6+7=23 7+4+5+8=24

・Stage “Strength”

[難易度] [エモーション] [最終的に残る印象]

ST1: 5 6 → 4ST2: 6 5 → 5ST3: 7 5 → 5ST4: 8 6 → 4

5+6+7+8=26 4+5+5+4=18

(example failed build-up)

おもしろいと感じる設計 疲れる かつ コストのかかる設計

緩和(タメ)

緊張

緊張

緊張

緊張

緊張

緊張

緊張(最大) 疲れて評価が下がる

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「緊張感」とは?

•失敗することで、それまで積み上げた労力(時間など)が失われる

•成功確率が低い

•後知恵バイアスが働かない状況に追い込まれる(責任がプレイヤーにあるということを自覚させる)

•勝敗が、次の行動によって決定する

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緊張と緩和

エンターテイメントにおける「緊張」と「緩和」

http://www.slideshare.net/KoujiOhno/02-39096248

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レベルデザインにおける

“盛り上がりのコントラスト”(Tension and Contrast)

10分

Page 91: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ナラティブとは?ナラティブとは日本語で「物語」ゲームにおける自分の定義は……

”プレイヤーの主体的な行動や思考によって、「共感」を誘発する物語体験“

http://www.slideshare.net/KoujiOhno/o-planning-narrative1b

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物語におけるポイント

Page 93: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

「風ノ旅ビト」における事例

「地形の高低さ」 とイベント 「物語曲線」と「ステージの色」

Game Watch 【GDC 2013】「Journey(風ノ旅ビト)」のゲームデザイン解説http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/593897.html

Page 94: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

「風ノ旅ビト」における事例

物語の盛り上がり方の変化

遊びのテンポ

地形の

高さの変化

地形の色の変化

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「天空の城 ラピュタ」

• 飛行船から落下• 鉱山でパズーキャッチ• 鉱山の街• 飛行石の穴・廃坑道へ落下• 地上に出てとらわれる• ティディスの要塞の牢獄• ドーラ一家との出会い• ティディス要塞でシータを助ける• ラピュタへ空へ• 天空の城ラピュタの頂上• ラピュタの下層・心臓部へ• ラピュタ崩壊• 地上へ・宇宙へ

「風ノ旅ビト」

「天空の城 ラピュタ」

たぶん、こんな感じ

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「カリオストロの城」

• 銀行から降下• 橋• カリオストロ皇国• クラリス救出・落下• カリオストロの城へ・湖からの侵入• クラリスの塔へ上り詰める• 落下• とっつぁんとの共闘・地上へ• クラリス救出・塔のてっぺんへ• 時計塔へ登る• クラリスを守る為落下• 地上へ

「風ノ旅ビト」

「天空の城 ラピュタ」

たぶん、こんな感じ

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物語におけるポイント

物語の基本「三幕構成」

でも、これよりも重要なことがある!

Wikipedia 三幕構成https://ja.wikipedia.org/wiki/三幕構成

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物語におけるポイント

•ショック•ギャップ•ツイスト•クライマックス

Page 99: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

物語におけるポイント

盛り上がりは、感情の高低さのコントラストに影響される

ショック ツイスト

ツイスト

クライマックス

ギャップギャップ

ギャップ

ギャップ

ギャップ

エンドクレジット

ギャップ

コントラストの差が最大

Page 100: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

物語におけるポイント

話を盛り上げるなら、一度下げる

表現したいことがあるなら、一度下げる

コントラストの拡大

テトを見つける

噛まれた!`

仲良くなった!

テトを見つける

仲良くなった!

例:風の谷のナウシカによる「テト」の例

Page 101: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

物語におけるポイント

さらに、「物語展開速度のコントラスト」が重要!

噛まれた

テトを見つける`

仲良くなった!

噛まれた

仲良くなった!

テトを見つける

Page 102: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ゲームのボス前における「静かな部屋」とか「セーブポイント」も同じ

Page 103: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

物語におけるポイント

さらに、物語の展開速度にあわせた、

主人公の「アクション速度」や「高さの変動」のコンラストでも演出できる

例:クライマックス「カリオストロの城」のクライマックスにおけるルパンとクラリスの塔からの落下

例:クライマックス前「天空の城 ラピュタ」におけるシータ救出シーン

「カリオストロの城」における屋根越えジャンプ

Page 104: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ただし、これらの方法は、絶対ではありません。最近では、あえて外した作り方をしているものもあります。

コントラストの作り方には、「時代にあった流行」があります。

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ナラティブにおける

“ドラマのコントラスト”(Drama and Contrast)

Page 106: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ゲームの目的

•倒したくなる敵や目的の重要性•それを語るのは「ナラティブ」•ナラティブを盛り上げるのは「ドラマ」

Page 107: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

「映画的手法」と「演劇的手法」

•映画 場面転換が多い(アセット数が多い)

•演劇 場面転換が少ない(アセット数が少ない)

平田オリザ「演劇入門」

Page 108: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

ドラマにおける「状況」を説明するための「プライベート」と「パブリック」

•プライベート ユーザーに伝わりにくい

•パブリック ドラマが起こりにくい

•セミパブリック バランスが取れている

平田オリザ「演劇入門」

Page 109: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

その他のドラマを作る要素

•「会話」と「対話」の対比•「日常」と「非日常」の対比•キャラクター(強い・弱いとか)の「明」と「暗」の対比•状況(幸せ・不幸とか)の「明」と「暗」の対比

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キャラクター対比

•主人公を表現するなら、その対比として、悪役を作る

•さらに、主人公の部分的な要素を表現するために、脇役を作る

•さらに、主人公をアクションさせるために環境(ゲームならレベルデザイン)を作る

Page 111: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

キャラクター対比

写真撮影における「3灯照明」の基本

キーライト キーライト フィルライト キーライト フィルライト

バックライト

Page 112: CEDEC2016 「コントラスト」で考えるゲームデザイン・レベルデザイン

キャラクター対比

物語におけるキャラクターの考え方

敵 敵 仲間 敵 仲間(脇役)

状況

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キャラクター対比の失敗による説明が多くなる理由

• 情報がないキャラ A: 情報がないキャラB(情報交換が発生しない……不自然な説明ゼリフやナレーターが必要になる……)

• 情報があるキャラ A: 情報があるキャラB(情報交換が発生しない……不自然な説明ゼリフがナレーターが必要になる…… )

• 情報がないキャラA :情報があるキャラB(情報交換が発生する!)

シナリオだけでなく、ソーシャルのフォロワーで情報交換を多くするのにも応用可能

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キャラクター対比

似た個性の馴れ合いが「会話」

違う個性のぶつかり合いが「対話」

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最後に

ゲームクリエイターとプレイヤーとの

ゲームを通じた個性のぶつかりあいも

「対話」

ゲームクリエイターとプレイヤーの

個性の差もゲームのコントラスト

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S:55min

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ご静聴ありがとうございました。

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