【はじめに】OCT コンパウンド法 (Tissue-Tek) コロジオン法 寒天法...

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【はじめに】

近年、組織診における免疫染色などの有効性から、細胞診検体でも臨床科からセルブロックの依頼が増加している。

しかしセルブロックは工程が煩雑で、細胞数が少ない場合では回収率が低く効率が悪いため、敬遠されて来た。

そこで我々は従来ある方法に一工夫加え、セルブロック作製を、簡単に効率よく出来ないかと考え、これを検討した。

また少量検体でも上手く作製する方法も合わせて紹介する。

【方法】

セルブロック作製を6種の従来法で行い、各々の細胞回収率を以下の方法で測定した。

1)RBCを用い1200×104個/mlの溶液を作製

2)上記の溶液を用いて各種セルブロック法を実施3)セルブロック作製時に用いた、器材(スピッツなど)を洗浄4)洗浄溶液の中に含まれている細胞数を測定5)計算により各種方法の回収率(%)を算出

【セルブロック作製法】

グルコマンナン法(アジア器材 HOLD-GEL110)

コロジオン法(和光純薬 5%溶液)

アガロース法(BM Bio 1%溶液)

寒天法(和光純薬 5%溶液)

アルギン酸ナトリウム法(和光純薬 1%溶液)

OCTコンパウンド法(Tissue-Tek)

コロジオン法 寒天法 アガロース法

アルギン酸ナトリウム法

OCTコンパウンド法 グルコマンナン法

【各種方法による細胞回収率】

99.2

5248

82

99.4 97.8

0

20

40

60

80

100

120

コロジオン 寒天 アガロース アルギン酸Na OCT グルコマンナン

回収率(%)

寒天法・アガロース法

アルギン酸ナトリウム法

グルコマンナン法

管壁に取り残し多数認められる

【損失理由】

細胞が周囲に流れ出している

キットの濾紙に細胞が取り残されている

【損失の原因に対する改良①】

検体を取り出し易い容器を使う

綿棒チューブ(アジア器材株式会社)

【綿棒チューブ】

1)先が鋭角である。2)材質が柔らかく、圧力が掛かると変形する。

綿棒チューブを用いて、寒天法、アガロース法を行った。

1)先が鋭角な為、丸底に比べ、高い密度で細胞が集まっている。

2)細胞密度が高いのでアガロースを加えても細胞が浮遊しない。

遠心後の沈査の状態 アガロースを加えた状態

材質が柔らかいために、底の部分を軽く摘まむと、

簡単に剥がれ取り出しが簡単にできた。

両側から押してはがした状態 取り出した状態

細胞量が多過ぎると寒天・アガロースが浸透しせず、沈査の底辺が凝固せずに取り残されることがある。

寒天・アガロースが固まらないような細胞量でも、グルコマンナンを用いた場合に底まで凝固する事が往々にして見られた。

細胞量多 グルコマンナン アガロース 寒天

【損失の原因に対する改良②】

オートスメア使って検討した

寒天などに比べて、粘度が低いので沈査に混ぜてから、オートスメアに掛けることができる。

サンドイッチ法

オートスメア法

オートスメア法では、

1)平面上に細胞が集まる。2)細胞が広がらず、ゲル状の中に全ての細胞が内包されている。

【アルギン酸ナトリウム法】

【グルコマンナン法】

グルコマンナンは粘度が高いので、検体に混ぜることは出来ないそのためオートスメア後、直接滴下。

通常、キットだと6時間以上かかる凝固が、

1時間余りで完了した。細胞もほとんどがグルコマンナンの凝塊中に取り込まれていた。

メタノール液浸 凝固滴下

【少量検体での工夫】

1)綿棒チューブにパラフィンを加え穴をあける

2)この穴に検体およびグルコマンナンを滴下する

3)固まったら周りのパラフィンを除去 4)VIPへ掛けて包埋

アガロース法アルギン酸ナトリウム法 グルコマンナン法

【染色態度】

HE HEHE

Vimentin VimentinVimentin

【改良法との回収率の比較】

52 48

82

97.897.9 97.2 96.7 99.7

0

20

40

60

80

100

120

寒天 アガロース アルギン酸Na グルコマンナン

従来法(%) 改良法(%)

まとめ

1)綿棒チューブおよびオートスメアを使う事で、回収率が上がりさらに細胞密度も高くなり、薄切時に余計な深切りや細胞を探すための連続切片を作製する必要がなくなった。

2)オートスメアを使用したグルコマンナン法では、通常6時間以上かかる凝固時間が1時間程度に短縮した。これによりグルコマンナンを使ってもその日のうちにVIPに掛けることができるようになった。

3)手間はかかるが、パラフィンを用いたセルブロックは、検体の損失をほとんど無くすことができた。

【結語】

綿棒チューブとオートスメアを使用した改良法は、

手間を省き回収率を上昇させる事が出来た。

また少量検体時のパラフィン使用法は、作業工程での細胞損失をほとんど無くす事が出来た。

以上の結果から

今回のセルブロック法の改良は有用であった

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