ヘモグロビンA1c測定における 新規 値の日常検査での取扱 …

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委員会報告 臨床化学 39:282- 290,2010

1.はじめに

ヘモグロビン A1c測定における報告値(JDS値および IFCC値)の取扱については,すでに報告されているとおりである 1-3).日本糖尿病学会(JDS)は,2009年 11月 1

日開催の「糖尿病の診断基準とヘモグロビンA1cの国際標準化に関するシンポジウム」において,ヘモグロビンA1c測定の報告値に関して,現状で国内の日常診療および臨床評価に用いている JDS値による臨床報告が,国際評価に直接結びつかないことへの対応を考慮し,当面の

国際的な臨床評価への整合性を図ることとなった.さらにこのシンポジウムを受けて,JDSの糖尿病関連検査の標準化に関する委員会が,2009年 11月 18日およびに 2010年 2月 21日に開催され,具体的な対応についての協議が行われた.その結果,新たな報告値についての技術的な内容については,日本臨床化学会糖尿病関連指標専門委員会の方でまとめることとなった.また,このヘモグロビン A1cの報告に関する新規 HbA1c値の導入を含めた新診断基準については,2010年 5月 26日に開催の日本糖尿病学会評議員会において承認された.

ヘモグロビンA1c測定における新規HbA1c値の日常検査での取扱

(Ver.2.0:2010-06-30)

日本臨床化学会 糖尿病関連指標専門委員会

武井 泉1,桑 克彦2,梅本雅夫3,岡橋美貴子4,石橋みどり5,宮下徹夫6,佐藤麻子7,戸塚 実8,雨宮 伸9,渥美義仁10,永峰康孝11,星野忠夫4

1東京歯科大学市川総合病院内科,2(独)産業技術総合研究所計測標準研究部門,3(社)検査医学標準物質機構,4病態解析研究所,5慶應義塾大学医学部中央臨床検査部,6日本大学医学部附属板橋病院臨床検査部,7東京女子医科大学臨床検査科・糖尿病センター内科,8東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科,9埼玉医科大学小児科,10東京都済生会中央病院内科,11徳島大学病院診療支援部

Instruction manual of new HbA1c number implemented by the Japan Diabetes Society for hemoglobin A1c measurement performed routinely in laboratoriesCommittee on Diabetes Mellitus Indices, Japan Society of Clinical Chemistry(Chair: Izumi Takei)Izumi Takei1, Katsuhiko Kuwa2,Masao Umemoto3, Mikiko Okahashi4, Midori Ishibashi5,Tetsuo Miyashita6, Asako Sato7, Minoru Tozuka8, Shin Amemiya9, Yoshihito Atsumi10,Yasunori Nagamine11, Tadao Hoshino4

Key words:ヘモグロビンA1c,IFCC値,JDS値,HbA1c値

283臨床化学 第39巻 第3号 2010年7月

本報告では,現行の JDS値から算出する新規 HbA1c値の内容と日常検査での取扱について示す.

2.略語

A1C : ヘモグロビン A1c(hemoglobin A1c)IFCC : 国際臨床化学連合 ( International Federation of Clinical

Chemistry and Laboratory Medicine)JDS : 日本糖尿病学会 (Japan Diabetes Society)ADA : アメリカ糖尿病協会 (American Diabetes Association)DCCT : 糖尿病における血糖管理と合併症の

発症・進行に関する研究 (Diabetes Control and Complications Trial)NGSP : 米国グリコヘモグロビン標準化プロ

グラム(National Glycohemoglobin Standardization Program)という名称のヘモグロビン A1cの標準化を推進する団体

3.用語の意味

1)IFCC値ヘモグロビン A1c測定において,IFCC法に

よって得られた測定値.単位はmmol/molで表す.2)換算JDS値ヘモグロビン A1c測定において,IFCC法ヘモグロビン A1c測定用常用参照標準物質のIFCC値から指定の換算式によって与えられたJDS値である.単位は%で表す.また,換算JDS値の変動範囲であって,実検体を用いて,換算 JDS値の実測 JDS値との差を± 0.04 %以内となるように確定した値を JDS値とする.3)新規HbA1c値わが国の標準化体系における JDS値をもとに,臨床報告値が,現状で主として国際的に用いられている値に近似するように補正項を加えた値.単位は%で表す.4)DCCT値

DCCT調査研究における測定値の基礎となっ

た測定法にトレーサブルな値.なお,DCCT値は,イオン交換カラム Bio-Rex 70を用いた HPLC法であり,NGSPにおける Central Primary Reference Laboratory (CPRL)において維持されている.5)NGSP値

NGSPでは,そのレファレンスシステムを維持するために NETCOREを組織している.この中の二次レファレンスラボラトリーネットワーク(SRLs)において,統一されたキャリブレーターをもとに,認証された日常検査法によって得られる測定値の平均値.なお,NETCOREとは,セントラル一次レファレンスラボラトリー(central primary reference laboratory : CPRL)の 1機関,一次レファレンスラボラトリー(primary reference laboratory : PRL)の 3機関,および二次レファレンスラボラトリー(secondary reference laboratory : SRL)の 8 機関(2009 年 10 月以降は 7 機関)によって構成されるネットワークである.CPRLおよび PRLは,DCCT値を維持管理している.注 1: ADA の 専 門 委 員 会 に お い て は,

Hemoglobin A1c を A1C と 表 記 し,この測定値を A1C値とし,DCCT/UKPDSにトレーサブルな値をもって表している.単位は%で表す.

 なお,ADAでは,Hemoglobin A1c,ヘモグロビン A1c,Glycohemoglobin(G H B),G l y c a t e d h e m o g l o b i n,Glycosylated hemoglobin は,同一の意味としている.2009年のWHO顧問団の報告では,ヘモグロビン A1cをHbA1cと表記している.

4.適用範囲

本文書は,日本糖尿病学会による新規HbA1c値を導入する時の取扱に適用する.この新規 HbA1c値は,アメリカ糖尿病学会のA1C測定の役割に関する国際専門委員会報告に記載されている糖尿病診断基準の 6.5 %をベースとしたものである.

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