第8回 安全保障貿易管理説明会レポート · ③...

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SEAJジャーナル151号

SEAJ Journal 2015. 11 No. 151104

去る2015年10月16日(金)、SEAJ 貿易専門委員会は日本真空工業会(JVIA)と合同にて『安全保障貿易管理説明会』を安全保障貿易情報センターより井上輸出管理アドバイザー兼該非判定アドバイザーを講師にお迎えして「TKP 麹町駅前会議室 ホール8A」にて開催しました。

説明会は冒頭貿易専門委員会の委員長挨拶に引き続き、井上講師より「安全保障輸出管理」のご説明を戴きました。

この安全保障貿易管理に関する説明会は昨年に引き続き8回目となり、68名の受講者が参加されました。

・我が国の安全保障輸出管理の仕組み我が国の安全保障輸出管理制度は「外国為替及び外国貿

易法」(外為法)で規制されており、外為法と該非判定関連法令の体系としては、「法律」、「政令」、「省令」、「告示・通達等」からとなっております。

貨物に関しては外為法第48条に、技術に関しては同第25条に規定され、貨物・技術ともに政令により具体的な品目が、また省令により具体的な仕様が定められています。

・リスト規制リスト規制とは、輸出しようとする物が輸出令別表第1

の1〜15項に該当する場合又は提供しようとする技術が外為令別表の1〜15項に該当する場合には、経済産業大臣の許可が必要となる制度です。

提供方法については貨物に関しては、日本から船積みし外国へ実際に貨物が輸出される場合に規制の対象となりますが、技術に関しては海外より研修生を受け入れて技術指導(提供)、商品のサンプルの海外送付に伴う技術資料の提供など、提供方法は様々ですが、「日本にいる外国人」や「外国にいる日本人」に対する技術の提供に関しても規制の対

象となる場合がありますので貨物同様、的確な管理を行うことが重要です。

・キャッチオール規制キャッチオール規制は、前記のように機能・仕様などを

定めたリスト規制には該当しなくても輸出令別表第1の16の項もしくは外為令別表の第16の項に該当する場合で、需要者や大量破壊兵器・通常破壊兵器の開発等に用いられるおそれがないかの用途に着目した規制です。「外国ユーザーリスト」に掲載の企業か、インフォーム要

件に当たるか、否かなどのチェック等も必須となっています。

・最近の違反原因分析最近の違反原因分析では、違反原因の74%が該非判定の

未実施および該当項番の適用の誤りであり、該非判定の手順などを定め慎重に実施することが重要です。

・貨物・技術の該非判定該非判定とは、輸出や技術提供をしようとする前にそれ

が法令で規制されているものかどうかを判定することです。該非判定の基本的な作業手順と留意点は以下に示します。

・作業手順① 判定対象を整理・確認する   (→対象は、本体の貨物だけではなく、部分品、附属

品、外付けユニットも含まれる)。② 判定項番を探す。   (→判定対象物の名称をもとに、項番を特定するため

の参考ツールで確認する)。

第8回

安全保障貿易管理説明会レポート

1.日本の安全保障輸出管理

外国為替及び外国貿易法

貨物

第48条

技術

第25条

外 国 為 替 令

第17条

輸出貿易管理令

別表第一

第 1 条

第1条~第14条

第15条~第28条

貨 物 等 省 令

輸出注意事項

告 示

お知らせ

政 令(内閣) 省令(経済産業大臣) 通達等(貿易経済協力局)

規制条文 規制品目,地域の指定 規制品目の特性を規定,等 包括,用語の解釈,等

別表

外為法と該非判定関連法令の体系及び輸出令別表第1・外為令別表について

輸出者等遵守基準第55条の10

法 律(国会)

3

輸出貿易管理規則,等

輸出者等遵守基準を定める省令

貿易外省令 , 等

図1 日本の安全保障輸出管理

1���の����輸出��

外国為替及び外国貿易法

貨物

第48条

技術

第25条

外 国 為 替 令

第17条

輸出貿易��令

別表第一

第 1 条

第1条~第14条

第15条~第28条

貨 物 等 省 令

輸出注意事項

告 示

お知らせ

政 令(内閣) 省令(経済産業大臣) ��等(貿易経済���)

規制条文 規制品目,地域の指定 規制品目の特性を規定,等 包括,用語の解釈,等

別表

外為法と該非判定関連法令の体系及び輸出令別表第1・外為令別表について

輸出者等遵守基準第��条の1�

法 律(国会)

3

14 図2 最近の違反原因分析

SEAJジャーナル151号

第8回 安全保障貿易管理説明会レポート

SEAJ Journal 2015. 11 No. 151 105

③  貨物の該非判定を行う-貨物等省令の仕様に該当?④  部分品や附属品、外付けユニットの該非判定を行う。⑤ 技術の該非判定を行う。 ・留意点① 該非判定の対象は多岐にわたる。

・自社製品だけでなく、外部の購入品等も含めてすべて。

・装置全体、附属品、部分品等–分解出荷の場合は、分解品の判定も

・内蔵プログラムデータの判定も必要。②  通称と規制品目の名称が一致するとは限らない(例:

軸受けとベアリング)。③  複数の項番で規制される場合がある(「○○は除く。」

の文言で安心しない)。 ④  規制内容は、毎年、国際レジーム合意によって変わ

る可能性がある。

・半導体製造装置の規制についてエピタキシャル装置、イオン注入装置、エッチング装置、

マルチチャンバー装置、リソグラフィ装置のメーカー仕様をもとにリスト規制で規制されている項目をスライドで示しましたが、リスト規制内容につきましては、経済産業省安全保障貿易管理の HP で、輸出令別表第1・外為替令別表の項番(1〜15項)ごとに、政省令、通達(用語解釈等)を一覧にした「貨物・技術のマトリクス表」というものが公開されておりますので活用して下さい。

また、装置を使用するために設計したプログラムも、装置に内蔵されて提供される場合であっても役務取引許可が必要となるので注意して下さい。但し、貿易関係貿易外省令第9条第2項第十四号ハが適用できる場合には役務取引許可は不要です。

・専用部分品半導体製造装置に関する専用部分品の該非の考え方は、

以下のように設計意図で判定が異なるので注意が必要です。(1) 該当の半導体製造装置・試験装置に使用することを意

図して設計したものは、たとえそれが非該当の半導体製造装置・試験装置使用できるものであっても該当(ただし、該当となる機能・性能に必要不可欠なものに限定)

(2) 非該当の半導体製造装置・試験装置に使用することを意図して設計したものは、たとえそれが該当の半導体製造装置・試験装置使用できるものであっても非該当

(ただし、該当となる機能・性能に必要不可欠ではないものに限定)

(3) 該当と非該当に両方の半導体製造装置・試験装置に使用することを意図して設計したものは、非該当。ただし、該当の半導体製造装置・試験装置が該当となるために必要不可欠なものは該当

・部分品の必要不可欠性判断半導体製造装置に関する「該当となる機能・性能に必要

不可欠である」ことについての判断は次の3点がポイントとなります。①当該装置の該非、②専用設計性の意図、③当該装置に必要不可欠か否か、これらは装置メーカーでしか判断できないため、経済産業省では「専用部分品及び必要不可欠の判断は取り纏め装置メーカーの判断による」旨、指導しています。

・組み込み品、混合物の判定組み込み品、混合物の判定については「輸出貿易管理令

の運用について(運用通達)」を確認すること、適用にあたっては十分な注意が必要です。

運用通達1-1(7)(イ)輸出令別表第1の解釈・ただし、輸出令別表第1の1から15までの項の中欄に掲げる貨物であっても、他の貨物の部分をなしているもの(ただし、輸出令別表第1の8の項に掲げる貨物であって、貨物等省令第7条において「他の装置に内蔵されたもの」とされている場合を除く。)であって、当該他の貨物の主要な要素となっていない又は当該他の貨物と分離しがたいと判断されるものは、以下の場合を除き、輸出令別表第1の1から15までの項の中欄に掲げる貨物のいずれにも該当しないものとして扱う

・米国輸出管理規則(EAR)による再輸出規制米国から輸入した貨物又は技術を日本から輸出する場合、米

国の輸出管理規則 EAR (Export Administration Regulations)の適用を受け、米国商務省産業安全保障局(BIS)から再輸出許可を得なければならない場合があります。

・再輸出規制の対象範囲① 米国原産品目② 米国原産の部品を組み込んだ製品③ 米国原産のソフト/技術を混合したソフト/技術④  米国原産のソフト/技術を使用して作られた直

接製品

違反した場合には、重度の違反者に対しては DPL(Denied Persons List)に掲載し公表され、米国品目の取扱い制限(禁止)、罰金が科せられます。米国の法規であっても日本企業は、米国の法令に違反しないよう、必要最小限の対応策を考える必要があります。

講義終了後も活発な質疑応答が行われ、その後も井上講師のご協力によりホームページへのテキストのカラー PDF掲載、メールによる質問の受付けを行いました。

貿易専門委員会では引き続き定期的に講習会を予定しており、12月にも「中国貿易説明会(中級編)」を開催致します。是非ご参加下さい。

(貿易専門委員会 関せき

口ぐち

 晃あきら

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