日比野 裕幸 - Miyagi University of Education日比野 裕幸 先生...

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  • 日比野 裕幸 先生13歳よりクラリネットを始め、京都市立堀川音楽高等学校、東京芸術大学に進学。卒業後

    ウィーン国立大学に留学し、帰国後フリーで活躍したのち1991年に仙台フィルに入団。2011年3月に

    退団し、4月から宮城教育大学教授に就任、宮城教育大学交響楽団を

    立ち上げる。大阪府出身。

     仙台フィルは市民のなかに溶け込んでいるオーケストラであることを重視しています。音楽についてレクチャーや情報共有をしながら、音楽の楽しさを伝えるスタンスになってきています。私も大学で学生たちに音楽の楽しさを伝え続けるという意味では、同じような活動をしているのではないかと思います。学生たちには教員になった時に子どもたちに伝えるという大切な役目がありますから、それを見据えて教えていきたいですね。

     

     本学の学生だけでなく、ほかの大学からもお互いに行き来して活動しています。弦楽器は大学に入ってから始める初心者が多いですが、本当に頑張って練習して上手く

    なっています。活動は年2回の定期演奏会のほかに、仙台市教育委員会と宮城教育大学の連携事業として、小学生対象の「ふれあいオーケストラ」というコンサートをやっています。会場のロビーに楽器を並べて子どもたちに実際に弾かせたり、コンサートでも楽器を紹介しながら、子どもたちと触れ合うようなコンサートです。 次の定期演奏会は3月10日です。私たちは2012年3月11日に演奏会をやったのですが、その時に本学の吉川和夫先生に震災にちなんだ曲を書いていただき、今回はそれを再演します。また先日イギリス人の指揮者を招いて指揮者講習会をやったので、その時に彼から学んだ同じイギリス人の作曲家エルガーの「エニグマ」もやります。小さなお子さん向けのコンサートではありませんが、中学生以下は無料です。

     ピアニストの小山実稚恵さん企画の「こどもの夢ひろばボレロ」というイベントにも毎年参加しています。今年も夏頃に開催予定です。音楽だけでなく、ものづくりのワークショップや様々な体験ができるイベントもありますので、ぜひお子さんとご一緒にいらしてください。学生たちも楽しみにしています。

     

     習い事はいろいろありますが、ピアノは頭も指も、心も使うという意味では一番必要な部分のある習い事だとおっしゃる脳科学の先生がいました。ピアノをある程度ベースに持っていると私のようにほかの楽器をやる時も後々有利ですし、歌手になる人たちもピアノをやっていた人はとても多いですね。 大人の方々にもぜひ音楽をやっていただきたいです。大人になってからやりたかった楽器をやるのも、ボケ防止になるかわかりませんがトレーニングになるのでお薦めします。仙台フィルなどの演奏会にもぜひ来てください。来てみると意外と楽しいですし、いろいろなイメージが花開いて収穫があると思いますよ。

     

     サンモール一番町にある楽器店で演奏した時ですね。3月26日に仙台市内のお寺を借りて仙台フィルハーモニー管弦楽団として復興コンサートを行い、4月3日から街のなかや避難所での演奏活動を始めました。最初は違和感がありました。「この時期に演奏して何になるんだ」と思いましたが、演奏中にふと見ると泣いていらっしゃる方がいて、音楽が必要とされていることを実感しました。食事などが足りてくるとその後は精神的な癒しが人間として必要な部分なのだと、演奏家としての使命を感じたりしました。何より自分自身が音楽とより深く繋がれたと思います。

     

     音楽科には7人の先生がおり、私はピアノ以外の器楽担当です。オーケストラで20年間やってきましたから、ヴァイオリンやトランペットなどの弦楽器や金管楽器も私の研究室の分野です。また小専音楽という小学校の先生になるためのピアノの弾き歌いの授業も見ています。 仙台フィルから大学に来たのは、私自身はそれまでも指揮活動は少しやっていたので、学生オーケストラと共に音楽を作ってみたかったのです。そしてクラリネットのパートだけでなくもっと音楽全般を学びたい気持ちがあったからです。

     

     10歳の時にピアノを始めました。母がピアノをやりたかったらしく、一軒家に引っ越した時にピアノを買って習い始め、私もついでにやらされました。中学では3年間吹奏楽部で打楽器をやりましたが、本当はサックスをやりたかったんです。ところが楽器屋で母がいきなり「あなた、身体が小さいからこっちがいいんじゃない?」とクラリネットを指差して、そのまま始めることになってしまいました。クラリネットのほうが安かったからかもしれません。それで個人レッスンを始めて、クラリネットを生かして京都の音楽高校に進みそのまま今に至ります。ピアノは嫌いだったから嫌々やっていましたが、管楽器は自分でやりたいと思った楽器なので一度も「練習しなさい」と言われたことはなかったですね。

     

     オーディションを受ける時に初めて仙台に来たのですが、緑があって、山や海があってすごく素敵な街だと一目で気に入りました。ここに来ることができたのはとてもラッキーだったと今でも思っています。 大切に思っていたのは毎回同じレベルの演奏ではなく、前よりもいいものを出さなければいけないということ。そういうプロの世界の厳しさを本当に味わいました。常に新鮮な気持ちで、気を引き締めていなければと思っていました。また管楽器はそのポジションをひとりで任されているので休むわけにはいきません。20年間無遅刻・無欠席だったのは自分でも奇跡だったと思います。

    2011年4月3日仙台市青葉区一番町「ヤマハ」にて

    2014年に開催されたふれあいコンサートの様子

    定期演奏会

    「こどもの夢ひろば ボレロ」に向けた練習

    http://orchestra.miyakyo-u.ac.jp/

    3月10日(日) 13:30開場/14:00開演日立システムズホール仙台 コンサートホール

    大人1,000円/高校生500円/中学生以下無料

    全席自由

    https://miyagikumamoto.wordpress.com/

    3月31日(日) 12:30開場/13:00開演 宮城野区文化センター パトナホール

    一般2,500円/学生1,500円(当日券500円UP)

    全席自由

    4月1日(月) 17:30開場/18:00開演南気仙沼小学校跡地 南郷コミュニティセンター

    入場無料

    研究室の床には重さの違う二つのダンベルがごろり。体力づくりかと思いきや指揮で伝える音の重さの違いを感じるためだとか。「練習も演奏も、受け身ではなく常に自分で考えてやることが大事」という先生にお話を伺ってきました。

    VOL.119

    32019年

    月号掲載

    2423

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