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大分県学校体育研究推進校作成資料
器械運動(マット運動)指導者用資料
1.器械運動(マット運動)のアップについて・・・・・・・・・・・1
2.マット運動:前転のとらえ方とその指導方法・・・・・・・・・2
発展(伸膝前転・跳び前転)につながる前転とは?・・・・・・3
発展を目指した前転の段階的指導法①頭ごしの課題:伝動・・・4
発展を目指した前転の段階的指導法②頭越しの課題:順次接触・5
発展を目指した前転の段階的指導法③応用編・・・・・・・・・7
3.マット運動:開脚前転のとらえ方とその指導方法・・・・・・・9
4.マット運動:倒立のとらえ方とその指導方法・・・・・・・・・13
5.マット運動:側転(側方倒立回転)のとらえ方とその指導方法・・16
6.マット運動:後転のとらえ方とその指導方法・・・・・・・・・19
後転技術の指導法 順次接触と伝動(伝導)・・・・・・・・・19
発展(伸膝後転・後転倒立)につながる後転とは?・・・・・・21
7.技の組合せと発表会の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・23
平成 25 年度体力向上指導者研修実技のまとめ 大分県:鶴岡小学校:土谷賢治
1.器械運動(マット運動)のアップについて・器械運動は非日常的な運動(逆さまになる等)を行うので、体重を支える手首や首に負担がかかる。
一般的なスポーツと同じ内容ではウォーミングアップとしては不十分。
○ポイント
①体重をかけて行う。(後に転がり首のストレッチ・手をついて体重かけて手首のストレッチ)
②足首を体重をかけて伸ばす。(生活様式の変化から足首をあまり動かさず柔軟性が低くなっている)
③ストレッチになっているか確認する。
・伸脚深くで踵がつかない。アキレスで踵がつかない。前屈が腰から曲がってないなど
④ストレッチは段階的に指導
・柔軟性がついたら難度を段階的に上げていく指導・助言を
⑤体力テスト等では行い方によって別の柔軟性を測ることになる。
・背中を丸めるのか、腰から曲げるのか。
⑥柔軟性を高めるときには具体的な方法・目安を示すと意欲を高めやすい。
つま先をもって ひざを伸ばす できたら頭へ
足を揃え手を前に 徐々にひざを伸ばす まっすぐ伸びるまで 余裕があれば手を近くへ きつければ手を前に 伸ばせる場所を確認
できるだけ開脚 足を動かさず おしりを徐々に下ろしていく つま先は上へ
横へは肩をつけるように 段階的に反対の手を 前には肘や手を前へ 幼児:天狗の鼻 短い天狗の鼻
<三輪先生語録>
昔の子どもは準備運動の必要性があまりなかった。また怪我もしにくい。
・パフォーマンスがあまり高くない。
・日常の運動レベルが体育・スポーツと大きな差がなかった。
(大人はこの落差が大きいのでけがにつながりやすい)
・最近の子どもたちの中には足の裏をつけてしゃがむことのできない者もいる
・足首の硬い子どもの中にはサッカー経験者が多い?足首が固いとボールをけった時に力がなくても足の甲に
力が伝達し強くけれる。これを良いことと勘違いしがち。高いパフォーマンスを発揮するには柔軟性は重要。
→一つの種目が得意でも他の種目ができないものが出てくる。(水泳など)
・しゃがんで ・足をそろえて ・手を肩幅について ・ボールが転がるように etc…
前転の指導でこのような指導を行うこともある。しかし・・・
※立った状態からでも、足をそろえてなくても、手をつかなくても前転はできる。むしろより良い前転は上記
の方法では到達できない。方法と内容を混同しないことが大切。上記方法も前転が全くできない者への導入
方法としては効果がある。
○順次接触とは:前転時に体を背屈(背中を反らせる)することなく、後頭部から(頭頂部ではなく!)腰まで
順番につけていくこと。
○伝動(伝導)とは:体を動かす時に別の部位を動かし、その動きを目的の部位に伝えることで動きに勢いと
力強さを付加する技術。仰向けから起き上がる時に足をあげたり、ボールを投げるときの反
対の腕の使い方など。
山に登るとき、いろいろなルートがあるよ
うに、「前転」という技に到達する指導方
法も多数ある。決して「この方法でなけれ
ばダメ!」というわけではないが、頂上(指
導内容)を見失わないように留意しなけれ
ばならない。(土谷によるイメージ考察)
【前転の指導内容】
○順次接触:後頭部→首→背中→腰
○伝動(伝導):下体から上体へ
これは指導方法の一つであって、前転の指導内容ではない。
2.マット運動:前転のとらえ方とその指導方法
☆高く評価すべき前転は次の 2つのどちら?
2 つの前転:A
2 つの前転:B
○判断基準は「発展性」
・今回の学習指導要領の改訂で出された「大きな前転」(3学年
から登場)は前転の発展技につながる前転である。つまり、こ
れがBの前転である。Aの前転が悪いとかだめとかではない
が、開脚前転・跳び前転、さらに伸膝前転に発展させることを
念頭に置いて段階的にBの前転を目指すことが重要である。
発展(伸膝前転・跳び前転)につながる前転とは?
《指導のポイント》
幼児は腹筋の力がまだ弱いので、「大きな前転」をするための伝動(伝導)が使えない。子どもの発達段
階を把握して指導する必要がある。小学校高学年でも伸膝前転まで習得するのは難度が高いが、中学、高
校と成長していく中でその技ができる「芽」を育てておくことが重要である。
前転を習得し発展させていくための課題(教材づくり)
頭越しの課題 起き上がりの課題
①ゆりかご→お父さんころがり立ち:伝動を高める
<注意点>伝動がうまくできない子どもが手でマットを押して立ち上がることがある。そこで・・・
腕組みをすることで、伝動で立ち上がれるように。
②お父さんころがり立ち→片ひざころがり立ち:出す足はどちらでも
この指導展開でいくと幼児でもほぼ両足立ちまで行けるようになる。
③伝動をより強めるための背支持倒立(首倒立:1,2 年からの内容)
(例)
背支持倒立がまっすぐに
できるようになったら
支持する場所を減らして行う
発展を目指した前転の段階的指導法①頭ごしの課題:伝動
この姿勢から転が
り、マットに足がつ
く前に制動をかけ
ればより強い「伝
動」となるが、なか
なか真直ぐにでき
ない子どももいる。
《指導のポイント》
「同じこと(技)を教えながらも、レベルをかえる」
指導をしていると、上達の早い子どもや遅い子どもが出てきます。早い子にはできることを何度も
させるより別のレベル(難度の高い、発展につながる技のおこない方)に挑戦させましょう。
※できた(それが発展につながらないやり方でも)から別の技に取り組ませると、子どもが取り組
んでいる技が多様に(前転・後転・側転・倒立など)なり指導者が全体の状況を把握できなかった
り、指導がいきわたらなくなる可能性が出てきます。
④背支持倒立から両足をそろえて立ち上がる。
⑤背支持倒立から片足で立ちあがる(できたら中学校レベル)
○片足でスクワットのように筋力で立ち上がるのではなく、「勢いがあるので片足でも立てる。」状態に持って
いく。かなり難度の高いやり方である。
⑥体の「しめ」の体得:伝動をより強めるために。
「地蔵倒し」 エバーマットを使って
○ある部位の運動を伝動して他の部位を動かす時、体に緊張(しめて)がないと弱くなる。伝道の弱い子供に
は上記の方法で体を曲げることなくしめる感覚を体得させる。
☆前転の発生:でんぐり返しでもまっすぐに
①後頭部から順次接触をする
○長年の指導からか、「前転」となると左の姿勢をとるものが多い。しかし、この姿勢からでは後頭部からの
順次接触はできない。右のように腰の位置を高くする姿勢が必要。
○順次接触がうまくできない(頭頂部をつく等)子どもにはいろいろな状況から「でんぐり返し」を行うこと
でその感覚を体得させていく。しかし、近年多種多様のつまずきを抱える児童が増えたことから一つの方法
ではなくその児童にあった方法を模索する必要が出てきた。
《指導のポイント》
マットの段差有効利用
子どもにとって伝動を使った転がり立ちは初め難
しい。そこで、マットを横に使い足を床につけて
立ち上がることで段差をつくり、難度を下げるこ
とができる。
発展を目指した前転の段階的指導法②頭越しの課題:順次接触
○順次接触が苦手な子どものために「手押し車」のように足を持ち上げて回らせようとすると、手で支える(伸
筋群)ことに力が入り、後頭部をつけられなくなることもあるので注意が必要。
②台や補助運動を使って順次接触を身につける
・懐深く(腰の位置を高く)前転するために台を置いて高いところから前転に持っていく。緊張性頚反射(上
記)に注意しながら順次接触となるように指導。
・足うち(カエル)何回叩けたか→叩いて足の裏で着地→足の裏を見ながら同じ数を叩く
③「大きな前転」への段階的指導
○上の連続写真のように両足をそろえて順次接触しながら足を伸ばして大きく振るのはかなりレベルの高い
前転である。これを一気にさせようとすると下の写真のような動きをする子どもが出てくることがある。
○足は伸びているが、空間がなくなり伝動が弱くなる。また、腰の位置が低くなり後頭部が付けずに順次接触
ができなくなることも・・・そこで
《指導のポイント》
器械運動は人間の反射運動をコントロール(崩す)する。
反射どおりに体が動くと
できない技が器械運動に
は多くある。自然と力が
入ったり、弛んだりする
部位をコントロールする
ことこそ器械運動の特質
ともいえる。
(例)
倒立前転は体は伸筋群で伸ばし
頭は順次接触のため腹屈させな
いと、その場でつぶれてしまう
④足をそろえない前転で「大きな前転」
○片足を前に出すことで足を振り上げた時に多くの点で(両手、後頭部、片足)支えられる。
⑤つまずきの解消法(例)
○足を伸ばすという運動と顎を引く(腹屈)を同時にできない子どももいる。このつまづきを解消する指導法
は子どもによっても違うので、例を紹介する。
・腹屈すべきところ、背中が曲げられない → 後頭部をつけたところから始める
・手をつけるところをいつもより少し遠くにつける。
・後の人の顔を蹴るように片足を振り上げる etc
①手の甲を使って前転
○より大きな前転を目指すために手の甲をつく前転にチャレンジする。この前転は一気に勢いをつけて行わない
とできないので順次接触や伝動がしっかり身についていないと成功は難しい。
発展を目指した前転の段階的指導法③応用編
既成概念「足をそろえて」からはなれて、さらに発展させる!
既成概念「両手を肩幅について」からはなれて、さらに発展させる!
②手の甲前転・手の幅を徐々に狭く ①をさらに発展:①が簡単にできるようになった子どものために
③もっと高いレベルの前転へ
○立ち上がりの課題を追加する。「片足で立ちあがる」
④手を使わずに前転・その応用
○2 人で腕を組んで同時に前転、立ちあがりながらジャンプして空いた手でタッチ。
※初めは空いた両側の手を使ってもよい。
・手が使えないので一気に後頭部から順次接触をする必要がある。
・前転後ジャンプするには伝動を強く起こし前転の終末局面がジャンプの準備局面になる必要がある。
○発展:3 人以上で
・2 人が簡単にできるようになったらレベルを上げて 3 人以上に挑戦するのも良い。
《指導のポイント》
「同じこと(技)を教えながらも、レベルをかえる」
《指導のポイント》
「レベルをかえることによってさらに発展につなげる」
片足で立ちあがるということは、大きな前転が高いレベルでできているということです。授業の
流れで「連続技」に発展させていくときの技の捌き(運動の先取り:終末局面と準備局面の融合)
にもつながります。
既成概念「膝をかかえこむように」からはなれて、さらに発展させる!
《指導のポイント》
「多人数で行うときの注意点は?」
3 人で前転をする時にどこにどういう子どもを配置するのが良いのか?だれがどこで行ってもで
きることがが望ましいが、個人差があります。このような技の場合、まったく手をつかえない中の
子どもに高いレベルの前転が要求されます。「どの位置がどうして難しいか?」それを見抜く指導者
の力量が問われますね。
⑤「大きな前転」を一人で行う:応用編
○ボールを投げ上げ→前転→キャッチ
・子どもはボールを取ることに夢中になり前転がおろそかになることも。そこで得点を決めるなどの工夫を。
1 ボールが取れない 0 点
2 仰向けでとれる 1 点
3 しゃがんでとれる 2 点
4 立ってとれる 3 点
など
さて、どれでしょう? どの開脚前転を高く評価しますか?
ヒント
○開脚前転は前転の発展技です。
○なぜ脚を開くのですか?
○開脚前転はどんな技に発展していきますか?
○最高の(最も良い)開脚前転ってどんなものですか?
《指導のポイント》
「マット運動の時シューズはどうする?」
シューズをはいていると足の裏が固くなるので感覚がつかみにくい面があります。ただし、器具
の準備・片付けの時に裸足だとけがをする危険性もあるので配慮が必要。また、裸足で問題となる
のが足の爪。日頃注意していないので伸びている者がマットにひっかけてはいだり、割れたりする
ことも。帽子については室内でもあり、回転運動の妨げになるので着用しない方が望ましい。
《指導のポイント》
「安全管理にも系統性」
マット運動や跳び箱など、順番に行う運動で安全のため前に行った子どもが次の子どもに手を挙
げて合図するということはありませんか?
低学年では必要な合図でしょう。高学年までには自分で判断できるように系統性(学校で一貫性)
をもって指導していくことが本当の意味で安全に対する意識を育てることになるのではないでしょ
うか。
3.マット運動:開脚前転のとらえ方とその指導方法
開脚前転の脚の開きかたは?
3つの開脚前転のうちどれがいいか?
①ゆっくり回って両脚を大きくきれいに開いて立つ
②両脚をあまり開かずに勢いよく起き上がる
③勢いよく回って両脚を大きくきれいに開いて立つ
《答え》②
○開脚前転は前転の発展技です。(順次接触と伝動がポイントです。柔軟技ではありません)
○なぜ脚を開くのですか?(その方が伸膝状態で立ち上がりやすいからです)
○開脚前転はどんな技に発展していきますか?(伸膝前転です)
○最高の(最も良い)開脚前転ってどんなものですか?
(滑らかな順次接触と強い伝動ができればそもそも足を開く必要はないのです。)
○前転、開脚前転、伸膝前転は技の難度の差はあれど接触回転の技である。学習内容は共通して「順次接触」
と「伝動」でありこの学習内容がより深いレベルで身についていけば難度の高い技が可能となる。
①ゆっくり回って両脚を大きくきれいに開いて立つ
②両脚をあまり開かずに勢いよく起き上がる
③勢いよく回って両脚を大きくきれいに開いて立つ
開脚前転の指導体系的位置づけ~開脚前転とは何か?~
開脚前転は単独の「技」ではない。伸膝前転習得への移行形
態としてとらえる。(指導者の視点として)
大きく足が開けば小さな前転と同じ程度の伝動でも伸膝で 伝動を高め、次第に腰の位置を高くすることによって
開脚状態になれる。 前転が発展していく。
○もちろん子どもたちの立場として開脚前転を技として位置付けることに問題はなく、意欲向上のためにも
目標の一つとして挑戦させることに意味はある。しかし、この技は学習内容から離れて、「伝動」が充分
身についていないに子どもでも柔軟性が高いと①のやり方でできてしまうところに問題がある。
指導者として①、③のやり方の子どもを②のやり方へどうやって発展させていくかという視点が重要であ
る。
①練習法その1:段差を使う
※ だんだんと段差を低くしていき、最終的にはフラットな面で
○マットの中央にロールにしたマットを置いて段差をつくる。
○ロイターにマットをかぶせて坂道をつくる。(上右写真)ロイター手前に坂と同じ高さの足場がないと順次接触
が難しくなる。
②練習方法その2:だんだんと脚を開かずに立つ
○柔軟性のある者には開脚度を小さくする、柔軟性がない者には段差を、または両方を適時行って学習内容が
深まる「場」を指導者は模索していく。
《指導のポイント》
・広く開いた開脚前転は柔軟技としてみよう。
伸膝前転の習得課
程を子どもにとっ
ての「技」として位
置づけ意欲の向上
を目指すこともで
きる。
③「場」の例
○マットの上にマットを2まい重ねて段差を利用
《指導のポイント》
・場の使い方にも注意が必要。
子どもの技の習得に効果的な場を作っても、
実際子どもが効果的に使うかどうか注意が必要。
右の写真の様に坂の終わりに足をつくと勢い
がもらえるのに、回転の始まりが坂に近すぎて
効果がなくなることも。
《指導のポイント》
・背支持倒立からの練習。
フラットなマットで背支持倒立から始める。これはより伝動を意識することと、指導者が特に注意すべき
前転の始まりから開脚する子どもへの指導に効果的。
前転(後転)の指導内容は「順次接触」と「伝動」である。すべての技はこの 2 つをいかに
上手く使うかであるので、子どもが自分の能力に合わせて課題を選ぶことと指導者が内容
を絞ることが両立することができる。
※前転(後転)系の技に絞りその中で各自の課題解決
《指導のポイント》
・正しい台上前転とは?
①倒立前転のように台上で大きな動きで前転する。
②背中や腰を跳び箱にほとんど接触させずに回る。 さてどっち?
《答え》: この 2 つはまったく別の運動です。目的にあっているかが問題です。
①はマット運動の「とび前転」の練習「とび上がり前転」というとび方。
②は跳び箱運動の「はね跳び」の練習「前転跳び」への発展へつながるとび方。
☆同じ器具を使って、同じ様な技を行っても学習内容によって発展する方向が変わってくるのです。
ちなみに「跳び上がり前転」「跳び込み前転」(台上からマットに向かってとび下りながら前転)を習得する
と高いレベルでの「とび前転」の習得に効果的です。
○手はどのくらいの幅で着くか?
○どこを見るようにするとよいか?
↓
・どのような根拠があるか?
・「倒立」の何が難しいか?
○できない子どもに「手をこうつく」「目はここを見る」と指導しがち。(それでできますか?)
○壁倒立で脚(腰)が壁までいかない者はジャンプ力がない?(ジャンプ力はありますね)
○腕の力が弱い?
・倒立をどのような技と認識するべきか
(では)やさしい倒立とは?
○バランスをとりやすくすればいい
◎やさしい(バランスをとりやすい)倒立
○両手だけで立つよりはやさしい。 壁倒立、補助倒立
(支える場所を増やす)
○重心を低くする。 背支持倒立、3 点倒立
(低い方が安定する。)
○体勢変化を少なくする。・・・・大きいと恐怖を覚えることも「倒れたらどうしよう?」
(一気に逆さにならない)
①3 点倒立
《支える箇所が多く、重心が低いかつ体勢変化が少ない倒立》
○
○
体勢変化
4.マット運動:倒立のとらえ方とその指導方法
「緊張性頚反射」(6 ページ参照)
の背屈を起こす方法ではある。が、倒立は背屈
をすればできる技ではない。
子どもたちはひっくり返ったら危ないことを知
っているので無意識に力をセーブする。
《指導のポイント》
「バランスは次第に意識しなくてもできるように」
倒立は「バランスをとる技」バランスをとる能力があるからこそ倒立が
できる。中学校では「巧技系」の技と呼ばれている
②補助倒立
体勢変化が大きすぎるとバランスをとりにくいので立った状態からではなく腕立て姿勢から。
○逆さ感覚がわかってきたら立った姿勢からの補助倒立を
《指導のポイント》
「姿勢をまっすぐに保つには」
子どもに腕立て姿勢をとらせた時にだらーんとそってしまうことがありませんか?こいう子どもの脚をも
つととっても重たいですね。このまま倒立をすると自分でも体を両手で支えることが難しくなります。押
されてもまっすぐでいられるように体を「しめる」と倒立が楽になり姿勢も良くなります。また、倒立で
歩くためにも必要な技術です。
体をまっすぐに 軽く押したり、徐々に体重をかけるとしっかり力が入ります
《指導のポイント》
「補助(幇助)の仕方が重要です」
できない技にチャレンジする時に行う補助ですが、大変効果的な半面逆効果になることもあります。
失敗するだけでなく、恐怖心を持たせたり場合によっては大けがをさせることも。
子どもがチャレンジしている技の運動感覚をつかみやすく(補助者の力で無理やり行うのではなく)安
全なやり方を習得することが重要です。
☆後転の補助のやり方を間違うと体の大きな子は首を痛める危険性が!
〈補助倒立〉
×同じ補助倒立でも後に立って ×前に立つと補助者にも危険が ○体勢変化小→大
そのまま行うと・・・・
※足が上がる時に前転になる者もいる。腹屈しないように注意が必要。
③壁倒立
○壁倒立というと 2 つの方法がよく使われる。
(A)壁にお腹を向けて上がりながら近づく方法
(B)壁に背中を向けて壁際に手をついて倒立する方法
◎どちらが正解というわけではない。子どもの様子に合わせて指導することが望ましい。しかし、体勢変化が
少なく、ロクボクがあるという条件では(A)は幼児でも可能な方法である。
(A) (B)
(A)
○体勢変化が少なくバランスはとりやすい。
●体を「しめて」片手で体重を支えることができ
ないと歩いて壁に近づけない
☆ロクボクを使うと体重が軽減されて容易
(B)
○歩く必要はなく、脚の使い方の練習になる。
●体が腹屈すると崩れ落ち危険
☆壁際に手を着くと体をまっすぐにしやすい。
《指導のポイント》
「歩く」を考える。
○私たちは日常、なにも意識しなくても「歩く」ことができています。しかし、
この歩くという動作には成長の過程で手に入れたバランス能力と体を「しめる」
技術のたまものなのです。
○「歩く」ためには体に力を入れ「しめ」た状態で片方の足(手)に全体重を移
して前に出す足(手)にかかる体重をゼロにしなくてはいけません。(タコなど
の軟体動物は骨がなく「しめる」ことができないので歩けませんよね)
☆倒立のように日頃行っていない運動では片手に体重を乗せて歩くという動作は
意識しないとできないとても難しい動作です。そのため壁倒立も「歩く」
ことができないと壁に近づくことができずに「シャチホコ」のようになってし
まいます。器械運動には欠かせぬ「歩く」=「体重移動」をしっかり指導しましょう。
①側方倒立回転へ発展する壁倒立
○通常壁倒立をすると上図のように「振り上げ足(赤)」が先に上がり「踏み切り足(黄)」が最初に着地するよ
うになりやすい。しかし、この着地では側方倒立回転へつながらない。
そこで、あえて下図のように「振り上げ足」から着地できるように練習しておく。
5.マット運動:側転(側方倒立回転)のとらえ方とその指導方法
・側方倒立回転は横向きに回る?
○体を横に曲げ(側屈)て手がマットに届きますか?
○左のように完全に横を向くと手はマッ
トにつかない。無理につけようとすると
膝を曲げて足の伸びない側転に。
○無理なくつくには右のように前屈&側
湾する。
側転は純粋に横に回る技ではない。「倒立を経過して回る技」
この枠の中だけに体を通す側転を目指す。
○前記の足入れ替え壁倒立ができるようになったら次のステップ。
②方向変え着地
○足入れ替え倒立から着地の場所を変える。
「振り上げ足」が右なら右方向へ。(図では右振り上げなので赤○から黄色○へ)逆は左へ。
③着手方向をずらす
振り上げ足(下図では右)側の手を前にずらして倒立する。壁ではなく補助倒立から行うのが安全。
④着手方向を 90 度ずらす。
○③での練習を発展させ、次第に 90 度に近づけていく。
⑤側方倒立回転へ
○着手を 90 度ずらし、着地も 90 度ずらす。
mmm
《指導のポイント》
「振り上げ足」「踏み切り足」はどっち?
○倒立や側方回転(ハンドスプリングやロンダートも同じですが)を行うとき、どっちの脚を前に出す
のか悩む子どももいます。どちらでもかまわないので自分がやりやすい方を決めることが大切です。
ただし、技によって脚が変わることは避けないといけません。技の発展に障害となります。
※例として、マットをとび越えさせてみましょう。とび越えるときに踏み切った脚が踏み切り足であ
ることが多いですね。
《指導のポイント》
ロクボクを使った指導方法
○壁倒立でロクボクを使った場合はそのまま横方向に着地するのは難しいものです。そこで、下りる側
の手を前にずらし方法が有効です。
この方法は下りる脚を間違える場合がありますが、「下りたときに向いてる方向」で正しいかどうかわ
かります。
○正解:ロクボクを向いている ×間違い:ロクボクに背を向けている
◎この方法は片手で体重を支える必要があります。前述の「体重移動」「しめ」ができることが条件で
うが、この方法ができるようになるとマットでの倒立練習が一人でも安全にできるようになります。
「前に倒れそうな時、片手を前に出し側転の要領で安全に着地できる」のです。
《指導のポイント》
側転の補助方法
○マットで練習し始めると背中側に倒れる危険性もあります。よい補助をすることで危険性をへらし良
い感覚を身につける助けになります。②~④の練習をする時、下図のような補助が効果的です
・手の平以外をついたら出来ない?
・からだを丸くしたら勢いはつく
・手で自分のからだを持ち上げるということ?
○からだを丸くしたら勢い(伝動)がつかず、腕の力だけで頭を抜かなければならない。
☆この状態から腕の力で体を持ち上げ頭を抜くことができますか!?
できないのは子どもの腕力が足りないせいですか?
この状態から手の力だけで頭を抜くのは一流の体操選手でも難しいでしょう。
①幼児~低学年 お尻が上がる:順次接触
○後転になる前に、からだを前以外に転がす動きを考えてみる。
腰が上がると横方向へ自然
と体を転がすことができる。
○後転も同じく腰の位置を上げないと転がることができない。そこで、腰を上げる感覚とそこから転がる感覚
を養う運動を行うと後転につなげることができる。
◎後に転がり「膝を耳の横につける」→「両ひざを片方につきそのまま転がる」
これは準備運動の首のストレッチにも効果的。
後転技術の指導法 順次接触と伝動(伝導)
6.マット運動:後転のとらえ方とその指導方法
後転のポイントは?
・手のひらを上に向けて耳の横で構える。
・からだを丸くして回る。
・手でしっかり押して頭を抜く。
【後転の技術】
○前転と反対の技術
・順次接触:臀部→腰→背中→首→後頭部
・伝動:上体から下体へ
○後転の難しさ
・最後に頭を越えなければならない。→回れない子ども
○????????
後転の段階的指導
寝返り
○後転の難しさは最後の頭を越えるところにある。最初は頭をはずして転がる感覚を養うことも効果的。
②頭越しの方法:順次接触
○こぶしを頭に当て、こぶしから肘までを使って首を保護する。
○腕を後頭部で組んで回る。回るには高い伝動が必要。
大きな伝動を起こすには、腰角を開いて閉じる動きが必要になる。そこで・・・・
③足から遠い位置にお尻をつける。
からだを丸くすると必然的に
お尻は足の近くにつくことに
なる。これでは伝動が起こしに
くい。
既成概念「からだを丸くして回る」からはなれて、後転を考える
◎お尻を遠くにつくようにすると腰角が広がり大きな伝動を起こすことができる。
低学年・中学年ではここまでの後転ができれば十分ですが、高学年になればさらに発展を頭に置いた後転にチャ
レンジしていく。
④跳ね上がりの技術:頭越しの課題
○幼児や小学生は柔軟性が高く、首を痛めることは少ないが、発展を考えたり年齢が上がった時のことを考え
ると「跳ね上がり」の技術の習得が必要になってくる。
※首を痛めやすい状況は・・・
このような後転を 3 年生ができたら高評価するべき。高学年ではさらに
☆後頭部をつく時に腰角を開き「跳ね上がり」を行うことによってより難度の高い技に取り組むことができるよ
うに指導していく。(着地の時に頭がマットから離れている)
発展(伸膝後転・後転倒立)につながる後転とは?
《指導のポイント》
お尻を遠くにつくための指導法例
①のようにマットから離れたところから後転
を始める方法があります。ただし、②のよう
に怖がって「ドシン!」と尻もちをつくと回
転が止まってしまうので、この兼ね合いが難
しいところです。
ポイントは
「お尻がつく瞬間に怖がらず背中を倒すことができるか」です。
○段階的指導①
いきなり「跳ね上がり」を行うことは難しいので、段階的に指導していく。
後転の終わりが腕立て伏せの状態に(足がつく時は頭が離れている)
○段階的指導②
①ができる子どもには次の段階の課題へ。
○段階的指導③
②で手足がマットから離れた瞬間に手を叩く。
《指導のポイント》
後転の発展技は前転と同じポイント
○前述の前転の発展技は、最終局面の腰の高
さ(高い伝動による)がポイントでした。
後転も「跳ね上がり」が高まり、最終局面
(着地)の時の腰の高さで「開脚後転」「伸膝
後転」「後転倒立」という発展技が可能にな
ります。
《指導のポイント》
後転の技術が高まると・・・・?
○後転の技術が高まるとどんな後転になっていくのでしょう?
実は既成概念であった最初の 3つのポイントを全く
含まないものになっていきます。
上級者は伝動をしっかり使い、腕を伸ばしたまま後転倒立
をすることができます。
後転は最終的には手で押して回るものではないのです。
改めて、学習内容をきちんと押さえる大切さがわかりますね
後転のポイントは?
・手のひらを上に向けて耳の横で構
える。
・からだを丸くして回る。
・手でしっかり押して頭を抜く。
(1)技の組合せ
○機械運動の授業が進んでいくと、いくつかの技の組み合わせに挑戦していくことになる。(高学年)
①技をいくつか続けて行う。
②技をいくつか組み合わせる。
この二つにはどんな違いがあり、私たち指導者は何を評価しなくてはいけないのでしょうか?
側方倒立回転転跳び 1/4 ひねり後ろ向き(ロンダート) 後方宙返り(バク宙)
後方倒立回転跳び(バク転)
上記のように、ある技の終末局面とほかの技の準備局面が融合することにより滑らかにかつ高度な技が可能
になるのです。
(2)発表会の意味
○みんなの前で自分の技を発表するのはとても難しい。失敗による意欲の低下も考えられるが、「運動の
深みを味わう」ために行うことには意味がある。
○自分がどのくらいその技ができるようになっているかを確認することができる。
・できたと思ってもできたりできなかったり(粗協調)の段階であるのか、ほぼ失敗しない(精協調)
段階であるのか、どんな状況でもできる(自動化)の段階なのかがわかる。
7.技の組合せと発表会の意味
技の組み合わせは足
し算ではない。
前の技の終わりの部分と次の技の初めの部
分が融合する。
指導者としてはこの運動の融合ができているかどうかを評価することが重要です。
一見、ロンダート-バク転は難しそうに見えるかもしれませんがロンダートなしでは勢いのあ
るバク転をするのはとても難しいのです。
《指導のポイント》
指導者の評価の観点
○子どもが器械体操の技を行っているとき、どんな観点で評価するでしょうか?
難度の高い技を行えば高評価で簡単..
な技(前回りや後まわりなど)だけだと低い評価?
◎体育の授業は系統性をもって発展していきます。その技の学習内容が身に付いていないのに難度が
高い技にチャレンジするより基礎的な技であっても学習内容を踏まえた発展の見込める技を高く評
価すべきですね。
《指導のポイント》
できない子どもから学べ!
○いろいろな指導方法があり、この資料でも紹介していますが、「どんな子どもでもこの方法でできる」
などというオールマイティな指導方法はなかなかあるものではありません。子どもたちは皆違うか
らです。
☆できない子どもから学びましょう。できない子どものまねをしてみましょう。なぜできないかを考
察して、その子に合った指導方法を模索しましょう。
「なぜできないのか?」これは決して子どもに対して発する言葉ではなく、指導者が自らに問う言
葉だと考えます。
指導者も子どもたちによって成長させてもらっているのです。
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