View
2
Download
0
Category
Preview:
Citation preview
雷鳴頭痛を考える
富永病院 神経内科・頭痛センター
菊井祥二
2014年7月20日,ヒルトンプラザ・ウエスト(吉本第2ビル8F)
座長:東海大学付属八王子病院
神経内科 教授
北川泰久 先生
第1回 Headache Master School Japan (HMSJ) - Osaka~すべての国民が頭痛医療の恩恵をうけるために~
Sudden onset headache:
a prospective study of features, incidence and causes.Landtblom AM et al. Cephalalgia 2002: 22, 354-60
病名 人数(人) 割合(%)
二次性
くも膜下出血 23 16.7
脳梗塞 5
10.2
脳出血 3
無菌性髄膜炎 4
脳浮腫 1
静脈糖血栓症 1
一次性
性行為に伴う雷鳴頭痛
9 6.6
原因不明 89 65.0
合計 137
雷鳴頭痛137人に対して,脳CT,CSFで検討
症例:61歳,女性主 訴:連日の激しい頭痛
既往歴:41歳;重症筋無力症で胸腺摘出術.その後,筋無力症状
はないが,抗AchR抗体価が高値であるため,他院神経内科で
MTX(7.5mg/週)を内服中.片頭痛の既往はない.
家族歴,嗜好歴:特記事項なし.
現病歴:
某年X月(Y-4)日,温水でのシャワー浴直後に頭を叩かれたよう
な激しい頭痛が突然出現し,近医に救急搬送.頭痛発作中に
脳MRI,MRAを施行されたが,異常なく,頭痛は約3時間後に
消失. Loxoprofenを処方され,帰宅.翌日もシャワー浴直後に
同様の頭痛が出現.(Y-2,Y-1)両日は,睡眠約2時間後に同様の
頭痛発作が出現.Loxoprofenを服用したが効果なく,Y日に当院
頭痛センターに入院した.
慢性頭痛の診療ガイドライン2013
Ⅰ- 3CQ
推奨
くも膜下出血が疑われた場合には,迅速・的確な診断と専門医による治療が必要である.
典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」である.
くも膜下出血では,少量の出血による警告症状を呈することがあり,突然の頭痛に悪心・嘔吐,めまい,複視・視力障害,せん妄を伴う場合には注意を要する.
画像診断では発症早期のCTあるいはMRIのfluid-attenuated inversion
recovery (FLAIR)の診断率が高い.
画像診断が陰性でも,くも膜下出血が強く疑われる場合には腰椎穿刺を考慮する.
頭痛発症後数日以降では,脳血管攣縮による脳虚血症状を呈することもある.
グレード A
くも膜下出血はどう診断するか
61歳女性,突然発症の激しい頭痛
→→
MRA 3D-CTA
内科所見身長 158.0 cm,体重41.0 kg,体温 36.4 ℃血圧 140/61mmHg,脈拍 83回/分・整,下腿浮腫なし
神経所見 意識清明,項部硬直なし 脳神経:眼瞼下垂,複視なし
頭痛発作時に眼充血,流涙,鼻汁などの自律神経症状はない.
腱反射正常,運動麻痺なし,失調なし,歩行正常.
血液一般,生化学,血沈異常なし.甲状腺機能正常.カテコラミン3分画異常なし, 抗AchR; 300nM/l↑
髄液検査:無色透明,一般検査異常なし
心電図,心エコー,胸部Xp:異常なし
入院時身体・検査所見
T2T1 FLAIR
T2*
DW
R L
脳MRI(発症7日目)
MRA MRV
A.BおよびCを満たす重度の頭痛
B.突然発症で,1分未満で痛みの強さがピークに達する
C.5分以上持続する
D.他に最適なICHD-3の診断がない
4.4 一次性雷鳴頭痛診断基準
他疾患にコード化する
4.1「一次性咳嗽性頭痛」,4.2「一次性運動時頭痛」,および4.3「性行為に伴
う一次性頭痛」はいずれも雷鳴頭痛として出現することがある.このような雷鳴頭痛が一種類の引き金によってのみ起こるときには,これらの頭痛型としてコード化すべきである.
国際頭痛分類第3版β日本頭痛学会翻訳委員会暫定版(案)
6.1.1虚血性脳卒中(脳梗塞)による頭痛6.2 非外傷性頭蓋内出血による頭痛
6.2.1 非外傷性脳内出血による頭痛6.2.2 非外傷性くも膜下出血による頭痛6.2.3 非外傷性急性硬膜下出血による頭痛
6.3.1 未破裂嚢状動脈瘤による頭痛6.5.1 頸部頸動脈または椎骨動脈の解離による頭痛,
顔面痛または頸部痛6.6 脳静脈血栓症による頭痛6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛6.9 下垂体卒中による頭痛
7.2.3 特発性低頭蓋内圧性頭痛7.4.1.1 第3脳室コロイド嚢胞による頭痛9.1 頭蓋内感染症による頭痛11.5.1 急性鼻副鼻腔炎による頭痛
4.1 一次性咳嗽性頭痛4.2 一次性運動時頭痛4.3 性行為に伴う一次性頭痛4.4 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛(ICHD-3にはない)
雷鳴頭痛をきたす疾患一次性
二次性血管性
二次性非血管性
典型的には1〜2週間にわたって雷鳴頭痛を繰り返すRCVSによって引き起こされる頭痛.頭痛はRCVSの唯一の症状のことがある.
A. 新規の頭痛で,Cを満たす
B. 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と診断されている
C. 原因となる証拠として,以下のうち少なくとも1項目が示されている:1.頭痛は局在神経学的欠損または痙攣発作(あるいはその両方)を伴うことも伴わないこともあり,血管造影で「数珠(Strings and beads)」状外観を呈し,RCVSの診断の契機となった
2. 頭痛は以下の項目のどちらかまたは両方の特徴をもつ:a)雷鳴頭痛として発症し,1ヵ月以内は繰り返し起こる
b)性行為,労作,Valsalva手技,感情,入浴やシャワーなどが引き金となる
3. 発症から1ヵ月を超えると著明な頭痛は起こらない
D. 他に最適なICHD-3の診断がなく,動脈瘤性くも膜下出血が適切な検査で除外されている
6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛
診断基準
解説
国際頭痛分類第3版β日本頭痛学会翻訳委員会暫定版(案)
4.1 一次性咳嗽性頭痛4.2 一次性運動時頭痛4.3 性行為に伴う一次性頭痛4.4 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛
一次性
6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛
二次性血管性
4.1 一次性咳嗽性頭痛4.2 一次性運動時頭痛4.3 性行為に伴う一次性頭痛4.4 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛
6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛
血管攣縮
頭痛
脳内出血
皮質性くも膜下出血
PRES
脳梗塞,TIA
1週間
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11(週)
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の一般的な経過
合併頻度 発症時期
脳内出血 0~6% 1週間以内
皮質性くも膜下出血 0~22% 1週間以内
PRES 約10% 1週間以内
脳梗塞・TIA 10~20% 発症後1~2週間後
(山本文夫ら.RCVSの画像診断.Headache Clinical & Science 4:32-4,2013より引用改変)
一次性 二次性血管性
4.4「一次性雷鳴頭痛」は,すべての器質的原因が明確に否定された場合にのみたどり着く最終的な診断であるべきである.
脳血管を含めた脳画像または脳脊髄液検査(あるいはその両方)が正常であることを意味している.
特に,血管攣縮はRCVSの初期にはみとめられないことがある.「一次性雷鳴頭痛の疑い」という病名は仮にでもつけられるべきものではない.
4.1 一次性咳嗽性頭痛4.2 一次性運動時頭痛4.3 性行為に伴う一次性頭痛4.4 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛
6.7.3 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛
国際頭痛分類第3版β日本頭痛学会翻訳委員会暫定版(案)
6.7.3.1 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛の疑い
A. 新規の頭痛で,Cを満たすB. 可逆性脳血管攣縮症候群が疑われるが,脳血管造影が正常であるC. 以下の全ての項目が証明されている:
1. 以下の3項目の特徴を全て満たす頭痛が1ヵ月以内に2回出現するa) 1分未満にピークがくる雷鳴様発症 b) 重度の頭痛c) 5分以上続く頭痛
2.以下の1項目が引き金となり,雷鳴頭痛が1回以上起こったa)性行為(オルガスムス時あるいはその後) b) 労作c) Valsalva様手技 d) 感情 e) 入浴またはシャワー(あるいはその両方)f) 身体を屈める
3. 発症から1ヵ月を超えて新規の雷鳴頭痛または他の有意な頭痛がないD. ICHD-3診断基準を満たす他のいかなる頭痛もないE. 他に最適なICHD-3の診断がなく,動脈瘤性くも膜下出血が適切な検査で除外されている
診断基準
国際頭痛分類第3版β日本頭痛学会翻訳委員会暫定版(案)
薬剤 著者 出典
nimodipine
(本邦未発売)
Liao et al.W Mak et al.Wang Sj et al.
Cephalalgia 2003 ;23:854-859. Cephalalgia 2005 ;25:191-198. Cephalalgia 2008 ;28: 524-530.
バルプロ酸 W Mak et al. Cephalalgia 2005 ;25:191-198.
トピラメート J Lee et al. Cephalalgia 2007 ;27:465-467.
ガバペンチン W Mak et al. Cephalalgia 2005 ;25:191-198.
アミトリプチリン W Mak et al. Cephalalgia 2005 ;25:191-198.
プロプラノロール Rossi P et al. Cephalalgia 2006 ;26:1485-1486.
報告されている入浴関連頭痛の予防療法
入院後経過
6.7.3.1 RCVS疑い 4.4 一次性雷鳴頭痛(入浴関連頭痛)
→
RCVSの誘発因子①分娩後:産褥,子癇,前子癇
②薬物不法薬物(大麻,コカイン,アンフェタミン,LSD)大量飲酒SSRI
鼻充血除去薬(フェニルプロパノールアミン,エフェドリン)頭痛治療薬(エルゴタミン,スマトリプタン)麦角アルカロイド(ブロモクリプチン,リスリド)免疫抑制剤(タクロリムス,シクロスポリン)血液製剤輸血,エリスロポエチン,免疫グロブリン,IFNα
ニコチンパッチ
③カテコラミン産生腫瘍
④その他:高Ca血症,ポルフィリン症,頭部外傷,脳外科手術後など
⑤特発性:片頭痛などの頭痛性疾患,原因不明
(Ducros A et al:Pract Neurol 2009; 9: 256-267より改変)
4.2 一次性咳嗽性頭痛4.3 一次性労作性頭痛4.4 性行為に伴う一次性頭痛4.6 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛(ICHD-2にはない)
一次性
二次性血管性雷鳴頭痛
非血管性雷鳴頭痛
雷鳴頭痛二次性
6.7.3 中枢神経系の良性(または可逆性)アンギオパチーによる頭痛
4.2 一次性咳嗽性頭痛4.3 一次性労作性頭痛4.4 性行為に伴う一次性頭痛4.6 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛(ICHD-2にはない)
一次性
二次性血管性雷鳴頭痛
非血管性雷鳴頭痛
雷鳴頭痛二次性
6.7.3 中枢神経系の良性(または可逆性)アンギオパチーによる頭痛
4.1 一次性咳嗽性頭痛4.2 一次性運動時頭痛4.3 性行為に伴う一次性頭痛4.4 一次性雷鳴頭痛入浴関連頭痛(ICHD-3にはない)
二次性血管性雷鳴頭痛
非血管性雷鳴頭痛
6.7.3 RCVSによる頭痛
Sudden onset headache:
a prospective study of features, incidence and causes.Landtblom AM et al. Cephalalgia 2002: 22, 354-60
病名 人数(人) 割合(%)
二次性
くも膜下出血 23 16.7
脳梗塞 5
10.2
脳出血 3
無菌性髄膜炎 4
脳浮腫 1
静脈糖血栓症 1
一次性
性行為に伴う雷鳴頭痛
9 6.6
原因不明 89 65.0
合計 137
雷鳴頭痛137人に対して,脳CT,CSFで検討
6.7.3 RCVS
による頭痛
1) 雷鳴頭痛が一次性障害として存在するエビデンスは乏しく,原因疾患を迅速かつ徹底して行う必要がある.
2) 6.7.3「RCVSによる頭痛」の初期には血管攣縮はみとめられないことがあるので,初期に「一次性雷鳴頭痛の疑い」ではなく,6.7.3.1「RCVSによる頭痛の疑い」とし,4.4「一次性雷鳴性頭痛」は,すべての器質的原因が明確に否定された場合に診断するべきである.
Take Home Massage
Recommended