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1 ©2012 MEIJI UNIVERSITY. ALL RIGHTS RESERVED. 1 ©2012 MEIJI UNIVERSITY. ALL RIGHTS RESERVED. 1
音声雑音除去のための 非線形ディジタルフィルタ
明治大学 理工学部 情報科学科
教授 荒川 薫
2 ©2012 MEIJI UNIVERSITY. ALL RIGHTS RESERVED. 2
はじめに 音声に混入した雑音を除去するには主に以下の方法がある。
A)複数のマイクロフォンと,複数の入力情報を用いることにより雑音を除去する。
B)単一のマイクロフォンを用い,音声と雑音の統計的性質の違いを利用して雑音を除去する。
単一マイクで雑音を除去する方式を提案
A)は性能は良いが,実装システムが大規模・複雑になる。
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単一マイクロフォンによる従来の 音声雑音除去
• 音声と雑音の統計的モデルの違いに基づいた信号分離。 – 非定常的な音声は統計的モデルで効果的に表わされにくい。
– 理論的に最適でも,聴覚上違和感が感じられる。 – 実際の音声と雑音の統計的モデルを得るのが困難
今回 非線形ディジタルフィルタを新たに提案。
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提案する非線形ディジタルフィルタの特徴
• 音声の非定常性に容易に対応。 • 回路規模が比較的小さく,計算量が比較的少ない。 • 音声と雑音のモデルを推定する必要が無い。 • 聴覚上,良好な音声出力が得られる。
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提案する非線形ディジタルフィルタ (CSフィルタ)の原理
• CSフィルタ(成分分離フィルタ) – 二つのε‐フィルタ(HとE)から構成 – Hで,信号の構造成分を除去し,その残差成分をEで処理。 – 最後に両者を統合。
CSフィルタ構成図
H
Nonlinear
ε-Filter:E
x(n) s(n)
- + +
+
v(n)
y(n)
H
E
入力信号
出力 信号
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ε-フィルタとは • ε-フィルタの入出力関係式
x(n):n時点における入力信号,y(n):n時点における出力信号,窓サイズ :2N+1,ai:低域フィルタ係数
∑−=
−++=N
Nii nxinxFanxny ))()(()()(
ε
ε
-ε
-ε p
F(p)
0
図1 非線形関数Fの例
入力信号の突発的変化を維持しながら 小振幅高周波雑音を除去
ε/2>
図2 ε-フィルタの処理特性
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ε-フィルタの処理例
– 小振幅相加性雑音の除去 – 急峻な変化を伴う高周波成分の保存
-500
50100150
200250
0 50 100 150 200 -500
50100150
200250
0 50 100 150 200
-50
0
50100
150
200
250
0 50 100 150 200-500
50100
150200
250
0 50 100 150 200
(a) 原信号 (b) 原信号+雑音
(c) 平均値フィルタ(タップ数9) (d) ε-filter (タップ数9)
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ε-フィルタのハードウェア構成 ∑ −−+=k
k nxknxFanxny ))()(()()(
DFF
減算 回路
PE PE PE PE
DFF DFF DFF
減算 回路
減算 回路
減算 回路
加算 回路
入力信号
出力信号
PE
F
F
F
F
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ε-フィルタの問題点 傾斜部での雑音の残留
エッジの強調
信号の尖端部の平坦化
>ε <ε
>ε
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ε-フィルタの問題点を解決する 成分分離型フィルタ(CSフィルタ)
CSフィルタ構成図
H
Nonlinear
ε-Filter:E
x(n) s(n)
- + +
+
v(n)
y(n)
H
E
入力信号
出力 信号
• 入力信号中の大まかな構造成分を予めHにより 差し引いておく。
• Hはεが十分大きなε-フィルタ。
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音声雑音除去のための CSフィルタの平滑力適応操作
• 母音と摩擦音では,信号の統計的性質が大きく異なる。
各時点の高周波成分の比重rを求めて, CSフィルタの非線形関数を制御する。
入力信号において母音部(低周波成分が顕著な 箇所)とそうでない箇所で,平滑力を変える。
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音声雑音除去のための 二段適応CSフィルタ
+
v1(n)
- +
s1(n)
+
H
E
x(n)
+
v2(n)
-
s2(n) H
E +
+ y(n)
一段目:小振幅高周波雑音除去
(入力) (出力)
二段目:小振幅低周波雑音除去
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スペクトルサブトラクション(SS)法 - 雑音の周波数スペクトルを推定し,入力信号から減算する手法 しかし,SS法では雑音スペクトルの引き残しが発生する。
そこで,SS法で処理を行った後に,CSフィルタ処理を行う
スペクトルサブトラクション法との組み合わせ
SS法 CSフィルタ (二段適応)
入力音声 出力音声
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実際の音声に対する処理結果
• 音声データ – サンプリング周波数22.05kHz,16ビット 「これは音声実験用のデータです」
• 付加雑音 – 白色ガウス性雑音 SNR: 8,11,14dB の3通りについて実験 – 自然雑音 屋外での交通騒音
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白色雑音付加音声に対する処理結果
(a)原音声信号 (b)入力信号((a)+雑音) (c)線形低域通過フィルタの処理結果
(d)二段適応CSフィルタ (e)SS法(1回)処理結果 (f)(e) を入力として二段適応 CSフィルタ処理
(g)SS法で二回処理後 (h)(g)を入力として二段適応 CSフィルタ処理
入力SNRが10.7dBの場合。 (f)(h)のCSフィルタパラメタは, 1段目 H:窓サイズ7,ε=2.0 E:窓サイズ11,ε=0.07 2段目 H:窓サイズ61,ε=0.04 E:窓サイズ21,ε=0.07
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白色雑音付加音声に対する処理結果(拡大図)
(a)原音声信号 (b)入力信号((a)+雑音) (c)線形低域通過フィルタの処理結果
(d)二段適応CSフィルタ (e)SS法で二回処理 (f)(e) を入力として二段適応 CSフィルタ処理
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入力SNRに対する出力SNR
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自然雑音に対して
(a) 入力音声信号 (b)提案方式による処理結果
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まとめ • 音声に混入した雑音を低減することを目的とした, 非線形ディジタルフィルタシステムを提案した。
• 本方式は,単一のマイク入力により,簡単な回路と少ない演算量で実現可能である。
• また,音声信号の統計的モデルなどの予備知識も 必要としない。
• 実際に白色ガウス雑音及び自然雑音が付加された音声に対して,効果的に,背景雑音を低減できることを示した。
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実用化に向けた課題
• 本フィルタシステムのパラメータはある程度 入力のSNに依存する。
• このパラメータ設定をSNに応じて調整できる 機能をさらに検討する必要がある。
• また,本システムは,コンピュータ上のシミュレーションで実現されているが,ハードウェア化なども今後の検討事項である。
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企業への期待
• 未解決のハードウェア化については,ディジタル回路,信号処理の技術により克服できると考えている。
• ディジタル信号処理技術を持つ,企業との共同研究を希望。
• 音声のみでなく,筋電図,心電図などの生体信号や,各種計測信号の雑音除去にも適用できる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :雑音除去装置 • 特許番号 :特許4694706号 • 出願人 :学校法人明治大学 • 発明者 :荒川薫,渡部宏明,荒川泰彦
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産学連携可能な他の研究テーマ
以下のテーマについても,ご相談下さい! • 乳幼児の啼泣理由推定 • 知的デザイン支援システム • 顔画像美観化処理 • 電子透かし • 脳波解析 など
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お問い合わせ先
明治大学
研究推進部 生田研究知財事務室
コーディネーター 下崎光明
TEL:044-934-7606
FAX:044-934-7917
e-mail:mb12007@meiji.ac.jp
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