情報現象の数理モデル 競技 ログラミン チャレンジ 抽象数学 で … ·...

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TopCoder社が毎週オンラインで開催する、個人競技のコンテスト。3問の問題をいくつ正答できるかを競う。勝ち進むと、米国で開催される年に一度の世界大会に出られる。トップクラスのプレイヤーに与えられる「Red Coder」は、参戦者至高の勲章だ。

ACM/ICPC世界2000大学から2万人以上が参加する、大学対抗のプログラミングコンテスト。3人1チームで、制限時間内により多くの問題を、より短時間で解く。国内オンライン予選、アジア地区予選を勝ち抜けると、世界大会へ(ちなみに、東大チームは、世界大会の常連だ)。

TopCoder

●2002年〈ホノルル〉青い海の綺麗なワイキキビーチで、海――ではなくアルゴリズムの世界を力泳。制限時間内に最も多くの問題を、より短時間で正答したチームが勝者となる。時間配分を誤ってしまったものの、上位チームと日本のレベルに大きな開きがないことを体感。チームXXX-TOKYO/世界大会18位

世界大会には、強豪チームがたっぷり練習を積んでやってくる。課題や実験で練習時間が少なく、英語での出題というハンディは、作戦の工夫でカバー。2003年のチームlighthouseはあと1問で銀メダルまでこぎつけ、銅メダルを獲得した。

先輩の命を受けて、強豪ロシアの強化合宿に送り込まれたISer 2人。飛行機と夜行列車を乗り継いだ合宿地は、言葉は通じなくても、誰よりも速く問題を解けば認められる世界だった。その後、修行の甲斐あって手にしたタイトルがずしりと重い。

チームlighthouse/世界大会11位

●2006年〈サン・アントニオ〉テキサスはアラモ砦の近くにやってきたチームGNC。まずは京大チームと小手調べの練習会。そこで仕入れた解法が本戦でそっくり使え、ラッキー! そのとき出会った両大学のメンバーが、その後会社を起業。チームGNC/世界大会19位

●2008年〈バンフ〉2008年の世界大会会場は、ロッキーの城と呼ばれるホテル。世界大会が東京だった前年参加者から、羨望の眼差しを向けられる。コンテストのラスト3分、会場に希望と焦りと憔悴がうず巻くなかで1問正答。13位にすべり込んだ。チームUnknown/世界大会13位

ICPCの世界大会に出場できるのは、1大学1チーム。そこで例年、出場をめぐって学内チームが激しい競争を繰り広げる。ISerを中心にしたチームはたびたび世界大会に進出してきたが、2009年は駒場生のモンスターチームHITORI++がISerのチームを抑えて出場権獲得。そのHITORI++も、進振りではめでたくISerとなってさらに腕を磨き、2010年世界大会(ハルピン)へ!チームHITORI++/世界大会20位

地区予選や世界大会では、お楽しみイベントもいろいろ。2007年地区予選では、『Javaチャレンジ』が併催された。課題は「鮭をたくさん獲れるように熊の動きを制御するAI」。kitsune-は鮭を追わずに、「ライバルの熊を追いかけ、途中に鮭がいたらとる」という奇策で善戦。対戦では相手の熊にぴたり貼りつく熊の動きで会場を笑いの渦に巻きこみ、決勝に進んだ。チームkitsune-/世界大会26位

TopCoder Open:wata/2010年Marathon部門1位[[iwi]]/2011年Algorithm部門第7位ACM/ICFP Programming Contest:Unagi:The Gathering/2011年2位

●2005年〈上海〉ところ変われば品変わる。2005年のマニラ地区予選で出た問題は、なんと自分たちで制限を設定しないと解けなかった(適当に制限を加えて突破)。こんなのアリか? 世界大会の上海では、真紅のチャイナドレスの案内嬢がずらりと並んでお出迎え。かわいらしい制服のアテンダントにもとり囲まれて、至福のひととき。チームGokuri-Squeeze

PROGRAMMING COMPETITION REPORT

競技プログラミングにチャレンジスゴ腕プレイヤーが集まる国際的なプログラミング・コンテスト。

そのオンライン競技場で、ISerの魂が熱く燃え上がります。歴代の健闘はいかに?

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■ 研 究 室 紹 介 ■

蓮尾一郎講師 I c h i r o H a s u o

「抽象数学」で空を飛びつつ「インパクトある応用」を投下数学的視点のチカラ

情報現象の数理モデル

「数学的本質」を見究めるパラメータを変えて具体化

ると、理解が難しいと思われていた対象B

のモデルが自動的に得られるのです! (左下

図を見てくださいね)

 得られたモデルは、背後にある数学を知

らなくても利用できます。このように、数学

の一般性=「カッコよさ」を実世界に「役立

てる」ワザ、うまく決まると気持ちのいいも

のです。クセになります。

 いくつか応用を紹介しましょう。余代数

を用いた計算機システムのモデル、普遍代

数を用いた計算機システムの組み合わせ

のモデル、量子プログラミング言語の圏論

的モデル、ハイブリッドシステム(デジタル

データだけでなく物理的な連続データも扱

う)のモデルとその正しさの検証手法など

に、現在取り組んでいます。

 ふだん考えている数学的な理論が、予想

もしなかった情報科学的応用を内包してい

ることがしばしばあります。そのような応用

のタネを見逃さないよう、幅広くアンテナを

はりめぐらせることもかかせません。

●参考データ蓮尾研究室:http://www-mmm.is.s.u-tokyo.ac.jp

王様のように遊び、大統領のように働く

 ニュートンの運動方程式を知っているで

しょうか? この方程式は、物体の運動とい

う物理現象を、微分方程式という数学的な

道具を使って模型化=「モデル化」していま

す。実用では、空気抵抗を除いて単純化し

たり、あるいは特殊相対性理論のほうがよ

り正確なモデルになることがわかっていま

すが、ともかく物理現象を理解・予測すると

き、ニュートンの運動方程式のような「数理

モデル」は大きな武器になります。

 数理モデル化の対象̶̶つまり数学の

応用先は、物理現象だけにとどまりません。

金融工学におけるブラック-ショールズ方

程式や、車の渋滞のセルオートマトンによ

るモデルなど、日常の社会現象・生命現象

にも盛んに使われています。情報科学的現

象も、その例外ではありません。グラフ理論

のグラフや、コンピュータの基礎たるチュー

リングマシン、さらに「プログラムの意味

論」、これらはすべて数理モデルです。

 このような数学と情報科学のはざまが、

ぼくの研究のフィールドです。

 研究では2つのことを心がけています。

1つめは「カッコいい数学を使ってカッコい

い数理モデルを作る」こと。言い換えると

「抽象数学で優雅に遊ぶ」ことです。何が

「カッコいい」のかは難しい問題だけれど、

数学者のあいだでは不思議とある程度の

合意があるようです。それは、「一般的なも

のはカッコいい」という見方です。

 例として、圏論という「数学のコトバ」を挙

げましょう。数学には、代数、幾何、解析……

というようにたくさんの分野があ

りますが、「この分野のこの定理は

違う分野のあの定理になんだか似

ているなあ。式に書くと別物なん

だけど」ということがよくあります。

この2つの定理を「実際同じもの」

として書けるようにするのが、抽象

的で一般的な圏論のコトバです(矢印をた

くさん使います。右図参照)。圏論を使うこ

とで、見た目の違いのウラにある「数学的

本質」にぐっと迫ることができます。カッコ

いいと思いませんか?

 2つめの心がけは、「インパクトある応用

上の成果を追求する」こと。つまり「情報科

学でしっかり働く」ことです。たとえば、よく

研究されている情報科学的対象Aの数理

モデルを、より一般的で抽象的な数学のコ

トバで書き換えたとしましょう。できあがっ

た数理モデルは、より一般的なものになっ

ています(定数aがパラメータpに変わるな

ど)。ここで、パラメータpに定数bを代入す

研究テーマ

■計算機科学における数学的構造■システム検証■並行プロセス論■量子プログラミング言語

FF X F ZF (beheh(c) )

beheh(c)

c finanal

X Z

モデルの一般化と応用

ふつうの計算

非決定的システム

既存のモデル

Geometry of Interaction

Kleisli圏での余代数

圏論的なモデル

量子計算

確率的システム

新たなモデル

さまざまなシステムとその「ふるまい」の、圏論的特徴付け

数理モデルとは?

応用いろいろ

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