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モビリティ・マネジメントについて~「まちなか再生」「公共交通活性化」の新しい対策~
京都大学藤井 聡
1.MMの基本的な考え方
モビリティ・マネジメントとは?
様々な交通上の課題の解決に向けて(渋滞対策・中心市街地活性化・地域モビリティ確保と改善等)
一人一人の意識に働きかける,
コミュニケーション施策を中心として
多様な施策を実施していく
一連の持続的な取り組みを言う.
クルマ利用 と 環境
1年間あたりのCO2削減量(Kg)
実際,クルマを少し使うと...
排出するCO2の重さ(kg)
クルマを使わない一日
10
クルマを1時間使う一日
5
[出典:環境省]
(詳細はwww.plan.cv.titech.ac.jp/fujiilab/info/をご覧下さい。)
◇例えば1時間クルマを使うだけで、一人の排出CO2は2倍以上にもなってしまいます。
◇クルマは(例えば)電車の約10倍のCO2を排出しています。
0
CO2が
2倍以上!
クルマ利用 と 健康・ダイエット
同じ目的地に,クルマで行ってしまうと,カロリー消費量が半分以下に!
実際....
通勤手段と肥満率
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
バス
・鉄道
徒歩
・自転
車
クル
マ
( ※ 肥満= 25<BMI = [体重/身長2])
クルマ通勤者は,それ以外の通勤者に比べて,4~5割,肥満率が高い
(参考)日本人の死因の6割が生活習慣病関連(高血圧, 糖尿病,等).
あるべき都市交通戦略
「交通環境」の施策
ライフスタイル施策(=狭義のMM)
まちづくり 施策
クルマに過度に頼らない徒歩を中心とする方向への意識と行動の変革!
便利な公共交通環境の整備 土地利用規制,TOD
ここが弱いと,潜在需要が十分に掘り起こせない→ ポジティブスパイラル,が加速しない
2.MM施策 事例
「マスコミ」を活用した事例
• 京都の地域ウィークリー紙
「京都リビング」 (51万世帯購読)
の一面を買い取り,
「かしこいクルマの使い方」
を呼びかける記事を掲載.
• あわせて,ハガキ付きチラシを挿入し,
「クルマの使い方の見直しキット」
(公共交通チラシ+行動プラン票)
の希望者を募集.
3ヶ月後のサンプリング調査の結果...
よく記憶している人> 全体の約3% (約1万5千人)
> クルマ利用時間が約18.6分/日削減有る程度覚えている人
> 全体の約10% (約5万人)
> クルマ利用時間が約5.2分/日削減
→推計 CO2削減量 約4千 - 9千トン/年→推計 社会的便益 約10 - 13億円/年
※ B/Cなら40以上
(省エネ,混雑緩和,医療費削減,CO2削減等)
→推計 公共交通収益増 約2300万~1億2千万円/年
かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト宇治 概要
○目的:中心市街地に集中する通勤渋滞の解消
○実施体制:宇治地域通勤交通社会実験推進会議(国・府・宇治市・商工会議所・地元企業・交通事業者・NPO)
○実施内容:- ワンショットTFP(9/12配布~9/16期限)
宇治地域の事業所の全通勤者(約5000人)に,以下の3点セット を“one shot”で配布
①動機付け冊子②通勤マップ
③ アンケート (←「考えるきっかけ」を与えるもの)- かしこいクルマの使い方を考える講演会 (9/2開催)
行政向け研修(昼間)と企業向け講演会(夜)(参加150名)
動機付け冊子
クルマと健康や環境の一般的情報を提供.
クルマはとても便利で、快適な乗り物です。
しかし、クルマのある生活には、
困った事も少なくありません。
ここではこの事について、
少し冷静に考えてみましょう。
ククルルママ利利利用用用とと「「健健康康康」」」
クルマではずっと座っていられます。
だからこそ、便利なのですが、
だからこそ.....
、健康にはあまり良くありません。
「かかししここいいククルルママのの使使いい方方」」 をを考考ええるるププロロググララムム
[出典:第6次改訂日本人の栄養所要量]
移動に伴う消費カロリー(kcal)
◇ 例えば、1 時間クルマで移動する代わりにバス・電車を使
えば、それだけで消費カロリーは2倍以上になります。
クルマ 公共交通
0
200
100
(詳細は
www plan.cv titech.ac.jp/fuji lab/kawanishi/をご覧下さい。)
休休休日日ドドララライイイブブののの「「憂憂憂鬱鬱ゆゆ うう うう つつ
」」
休日のクルマでのお出かけは、渋滞が多くて、
あまり「楽しくない」ことも,あるかも知れません。
ククルルママ利利用用ととと「「環環環境境問問問題題」」
ちょっとクルマを使うだけで、 あなたが排出するCO2(二酸化炭素・地球温暖化ガス)は 何倍にもなってしまいます。
「また京都に来たいですか?」を5点満点で評価
◇ 京都市のアンケートでは、 クルマで来た人は,渋滞のために十分に観光できず, 電車・バスで来た人の方が,
「満足している、また来たい」 と考えていることが分かりました。
[出典:京都市休日交通調査報告書]
[出典:環境省]
排出する CO2の重さ(kg)
◇ 例えば1時間クルマを使えば、一人の排出 CO2
は2倍以上にもなってしまいます。
(詳細は
www plan.cv.titech.ac.jp/fu iilab/kawanishi/をご覧下さい。)
(詳細は
www plan.cv.t tech.ac.jp/fuj ilab/kawanishi/をご覧下さい。)
クルマで来た人 クルマ以外で 来た人
4.0
5.0
クルマ以外の 一日の日常生活
0
5.0
1時間の クルマ利用
2.5
p1 p2
p3 p4
コミュニケーション・アンケート
実証実験の結果
• ワンショットTFP:アンケート回収率約7割(3千通を超える回答)
• 鉄道利用者の増大
TFP後に利用者が約4割増.一年後においてもほぼ同水準
2200万円/年の事業収入増.※ 宇治市中心部の2駅の朝の7・8時台定期外利用
• 歩行者・自転車利用者も増大
定期券外降車人員の推移
280367 394
144
246 195
0
100
200
300
400
500
600
700
H17 9/8 H17 9/21 H18 9/6
(人)
JR宇治
京阪宇治
39%増加
(定期券のための)ワンショットTFP
•動機付け冊子 兼 申込書
• 2005年8月新学内交通システム運行開始大学構内~つくばセンターを循環する路線バス
区間乗り放題利用証(学生4,200円 教職員8,400円/年)
研究の背景~新学内交通システム導入
10.4%
16.1%
76.2%
67.6%
12.0%
5.3%
2.3%
11.6%
13.0%
75.5%
58.4%
6.6%
7.8%
17.9%
3.8%
3.4%
4.9%2.4%
0.2%
2.6%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
2004年
2006年
2004年
2006年教職員
学生
通勤通学の交通機関分担率徒歩 自転車 バス自動車
2輪・原付
自動車分担率が,2割弱 減少(教職員)
バス利用者が2 - 3倍に
2005年(ワンショットTFPなし)から2006年(ワンショットTFPあり )
にかけて,定期券購入者が
7割増加→コミュニケーションの重要性
を示唆
19
「中心市街地活性化」のためのワンショット
• 「環境・健康には,クルマよりも公共交通・徒歩が相望ましい」
• 「まちの賑わいには,クルマよりも公共交通・徒歩が相応しい」
• 「出来るだけ,クルマでなくて,公共交通・徒歩を利用することが望ましい」
<調査概要>
平成20年12月11日(木)~平成20年12月26(金) 第1回調査協力者及び第2回新規発送(約500人を無作為抽出)
ワンショットTFP(4Pもの):回収数 1,799件(回収率 70.7%)
↑「アンケート」の中に,説得情報を盛り込んだone shot TFPを実施
第2回新規発送者:回収数 185件(回収率 37.0%) 評価アンケート
<one shot TFPにおける説得メッセージ>
20
アンケートがきっかけで、ご自身の「クルマ利用」が少しでも減ったと思うか?(第1回調査協力者)
※「もともと、クルマを使っていない」の467件を除く
有効回答数:1,325件
大きく減った、と思う6%(78件)
全く、変わっていない、と思う
41%(539件)
不明・無回答7%(98件)
ほんの少しだけなら、減った、と思う27%(362件)
減った、と思う19%(248件)
クルマ利用者の25%~52%が
アンケートがきっかけで「クルマ利用」が減ったと回答
39.443.9
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
(分/日)
34.730.3
0
5
10
15
20
25
30
35
40
(分/日)
21
一日のクルマ、徒歩での移動時間
57.7
45.4
0
10
20
30
40
50
60
70
(分/日)
45.449.8
0
10
20
30
40
50
60
(分/日)
平日一日のクルマでの移動時間 平日一日の徒歩での移動時間
休日一日のクルマでの移動時間 休日一日の徒歩での移動時間
アンケートを通じてコミュニケーションを図った市民は クルマ での移動時間が 平日1割減少 休日2割減少 徒歩 での移動時間が 平日1割増加 休日1割増加
第1回調査協力者(1683件)第2回新規発送者(156件)
第1回調査協力者(1564件)第2回新規発送者(135件)
第1回調査協力者(1683件)第2回新規発送者(156件)
第1回調査協力者(1564件)第2回新規発送者(135件)
2.2
1.1
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
(回/月)
2.73.2
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
(回/月)
22
5.2 5.6
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
(回/月)
まちなかへの来訪回数と来訪手段
アンケートを通じてコミュニケーションを図った市民は まちなかへの来訪回数が約1割増加 手段別に見ると公共交通での来訪回数が約2割増加しクルマでの来訪回数が半減
公共交通でのまちなか来訪回数
クルマでのまちなか来訪回数
ここ一ヶ月のまちなか来訪回数
第1回調査協力者(1679件)第2回新規発送者(148件) 第1回調査協力者(1566件)第2回新規発送者(138件)
第1回調査協力者(1566件)第2回新規発送者(138件)
23
つまり....
「アンケート」を通じて,僅かなメッセージを発するだけで,
・実際に,クルマ利用を1~2割減らし,
・実際に,1割程度,より多く歩くように,
なり,そして,
・実際に「まちなか」にクルマで来る頻度が半分になった.
買い物TFP(@福岡県甘木・中心市街地周辺全世帯対象)
モビリティ・マネジメント等のコミュニケーションから得られた知見を援用
-情報提供○買い物行動の帰結に関する情報
-健康
- 環境
- 地域とのふれあい
- 地域経済
○ 地域の生産品と店舗
-行動プラン
○ -冊子に目を通すことを依頼
-実際に店舗に行く意思と,
店舗までの道順を尋ねることにより
実行意図を活性化
▼動機付け冊子
▼店舗紹介冊子
▲コミュニケーションアンケート
9000
10000
11000
12000
13000
14000
実験前(5月) 6月 7月 8月
実験効果-店舗売り上げ推移
• パンフレット掲載A店の売上推移
4.9%582千円
5.2%639千円
5.7%741千円
2007年度
(千円)
2008年度
季節変動を考慮した推測値
バス便利マーク
「串団子」居住地誘導TFP① 不動産情報で「公共交通利便マーク」を付けて,誘導する条件
②バス停の近くに住むことのメリット情報を提供して,誘導する条件
0% 20% 40% 60% 80% 100%
15.0% 85.0%15.0% 85.0%住宅情報群
31.4% 68.6%31.4% 68.6%バス
フォーカス群
40.0% 60.0%40.0% 60.0%動機付け冊子群
バス停まで徒歩3分圏内 バス停まで徒歩3分圏外
図-2 群別バス停まで徒歩3分圏内外の割合
「公共交通利便マーク」を付けたり「動機付け冊子」を配ると,バス停周辺に居住する確率が倍以上に!
MMにおけるいろいろなアイディア
• 沿線住民を対象にした(新規路線)徹底的な個別的プロモーション(つくば大学,宇治)
• 「マスコミ」を活用した,周到に用意した説得情報の配信(リビング京都,KBS京都等)
• 「買い物TFP」 (京都市,朝倉市あまぎ)
• 「引っ越しMM」(つくば市 → バス停周辺の居住選択が2倍程度の水準に)
• エコ通勤(国交省の枠組み活用.沿線企業をターゲットにすることも)
• MM教育(初等教育副読本にMMページを設ける)
• MM行動計画の策定(京都市,パース) 等
参考情報
・ 国土交通行政のための心理学
『社会的ジレンマの処方箋:
都市・交通・環境問題の心理学』(藤井 聡 著)
・態度・行動変容に関する実務的研究
『モビリティ・マネジメント入門』(藤井・谷口 編)
『モビリティ・マネジメントの手引き』(土木学会 編)
・日本モビリティ・マネジメント会議HP(各種の事例情報)
http://www.plan.cv.titech.ac.jp/fujiilab/jcomm/
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