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NGV用オイルトラップフィルタの開発

*1 開発本部 第0開発部  *2 Keihin Automotive Systems India Pvt. Ltd.  *3 生産本部 品質技術部

*4 購買本部 グローバル購買室  *5 Keihin Auto Parts (Thailand) Co., Ltd.  *6 知財・法務部

*7 事業統括本部 事業企画部

NGV用オイルトラップフィルタの開発※

1.はじめに

近年,環境志向の高まりや石油代替の観点から,世界的に NGV(天然ガス自動車)の普及が拡大している.世界的な普及に伴い,それぞれの国や地域において様々な性状の天然ガスが供給されており,供給ステーションにおける設備の状態も多岐にわたっている.このような背景からエンジンに組み込まれるインジェクタ(燃料噴射装置)は,様々な性状の燃料において安定した燃料噴射が必要とされる.

弊社では,燃料に含まれる不純物がインジェクタの噴射量へ及ぼす影響を追究した結果として,不純物を除去するオイルトラップフィルタを製品化したので紹介する.

2.オイル混入の影響

インジェクタの安定した噴射量制御を阻害する混入物で,最も特徴的なものがオイルである.

天然ガスは輸送コストを低減するため,コンプレッサで昇圧され移送される.移送や充填の過程で利用されるコンプレッサは,一般的に潤滑の為にオイルが供給されている.このオイルが充填の工程で天然ガスに溶解し,供給ステーションにおいて NGV の燃料タンクに充填される.オイルは天然ガスに溶解しているため,昇圧された状態でオイルを除去

製品技術紹介

※ 2012 年 8 月 31 日受付

するのは困難である.充填された天然ガスは,レギュレータ(減圧弁)により噴射圧力まで減圧されインジェクタへ供給される.

実車走行試験の結果から,減圧により溶解していたオイルが析出し,インジェクタに侵入することを確認した.侵入したオイルは,燃料通路に設けられた噴射量を制御する弁体に付着し,その結果,噴射量を制御する弁体の動作が妨げられ,燃料噴射が定格外となることを確認した.

3.オイルトラップフィルタの開発

前述の結果を踏まえて,レギュレータ下流に設置するオイル捕集システムを考案した.天然ガスより析出するオイルを効率的に捕集し,インジェクタにオイルが侵入することを防止する構造とした.オイルの捕集は高効率でなければならない一方で,インジェクタにおける所定の噴射圧力を確保するために,フィルタの圧力損失は出来る限り抑制する必要がある.フィルタの選定において一般的なプリーツ型フィルタ(紙等が折りたたまれたもの)やデプスフィルタ(繊維等が樹脂等で固められたもの)が候補として挙げられた.これらの種類において圧力損失は定格内であるが,オイル捕集率は定格外であった.そこで,特殊な繊維層を持つデプス凝集フィルタを検討し,圧力損失は定格内で,オイル捕集率も高いこ

齋 藤   崇*1 吉 田   崇*1 中 島 要 治*2 小 野   潤*1 田 邉   零*3

Takashi SAITO Takashi YOSHIDA Youji NAKAJIMA Jun ONO Rei TANABE

木 村 英 樹*4 檜波田    勝*5 石 毛   健*6 加 川 光 徳*7

Hideki KIMURA Masaru HIWADA Takeshi ISHIGE Mitsunori KAGAWA

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ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

争力を高めるため,同一構造で幅広い使用環境に対応可能とした.オイル捕集のイメージを図2に示す.適切な長さの燃料導管によりデプス凝集フィルタに誘導された気液混合流体は,気液の粘性の違いからフィルタ通過速度に差が生まれる.通過の遅いオイル成分をフィルタ外周のドレンレイヤにより効率的に捕集し気液を分離する.製品の適応範囲を表2に示す.使用燃料は気体状態における LPG とCNG に対応し,オイル捕集能力は世界最高水準の捕集率を確保した.インジェクタへの燃料供給圧力は,50 kPa から 325 kPa に対応している.本製品は 2008 年より量産を開始した.

とから本開発では当該フィルタを採用した.フィルタの捕集性能を確認するため,オ

イル捕集能力試験を行った.試験に供試したフィルタの燃料流路を表1に示し,試験結果を図1に示す.試験終了後のオイルトラップフィルタを分解したところ,Pipe length A は燃料流路の入出口を最短で結んだ経路付近のみでオイルが捕集されておりフィルタ全体が利用されていない.一方 Pipe length B 及びPipe length C は Pipe length A よりも広い領域でオイルが捕集されていることから,フィルタ全体を有効に利用するためには燃料導管を最適な長さに設定することが重要である知見を得た.

著 者

齋 藤  崇

オイルトラップフィルタの開発完了により,NGV の燃料供給に関する部品の自前化が完了した.今後も環境性能の向上に貢献できる部品を開発していく.(齋藤・吉田)

Fig. 1 Comparison between Performance of Oil Trap Filters

85

90

95

100

0 10 20 30 40 50 60

Filtr

atio

n E

ffic

ienc

y [%

]

Equivalent Distance [×103 km]

Pipe length BPipe length A

Pipe length C

Fig. 2 Oil Trap Mechanism

Drain Layer

Filter Element

Gas out (Dry)

CompressorOil

ForInjector

気液分離

Oil Drain

Gas in

CNG+

Compressor Oil Oil Drain容積:35cc

FilterElement

Gas outfor injector(CNG)

Gas in(CNG+液体成分)

Oil TrapMechanism

Table 1 Specifications of Oil Trap Filters

Pipe Length

A 0 mm

B 35 mm

C 45 mm

Filter

Pipe

Len

gth

Gas FlowIN

OUT

Table 2 Range of use of Oil Trap Filters

Fluid to Filtered CNG LPG (Gas only)Fuel Pressure 50 kPa ~ 325 kPaOil Drain Capacity 35 cc

4.オイルトラップフィルタの製品化

製品化したオイルトラップフィルタの特徴を以下に示す.様々な天然ガス性状を考慮すると同時に,内燃機関の排気量や燃料供給圧力の違いを考慮する必要がある.製品の競

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