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「飲み込みが良くなった」と思うとき

~医師・看護師にどのように伝えるか~

杏林大学医学部付属病院

摂食・嚥下障害看護認定看護師

本山みゆき

摂食・嚥下機能支援推進事業研修事業  2012.2.12(日)

1.摂食・嚥下機能について

嚥下とは ?

水分や食べ物を口の中に取り込んで、咽頭から

食道・胃へと送り込むこと。

これらの過程のどこかがうまくいかなくなることを

『嚥下障害』と言う。

普段、当たり前にやっている嚥下が

いったんできなくなると・・・

低栄養・脱水や、肺炎になってしまう

ことがある。

摂食・嚥下に関わる器官(食べ物の通り道)

 のどは、飲食物の通り道で

あると同時に、空気の通り道

(気道)でもあり、両者が

交わっているところである。

 そのために嚥下と呼吸の

仕組みの間には高度な協調が

必要である。

 嚥下障害とは 基礎編 http://www.ai-hosp.or.jp/sinryouka/center_riha/enge2/page1.htm, (2012.1.27現在)から引用

1.認知期(先行期)

2.準備期(咀嚼期)

3.口腔期 随意運動→不随意運動

4.咽頭期 反射運動

5.食道期 蠕動運動

口腔期から食道期までの所要時間 1秒以内

摂食・嚥下運動

・先行期(認知期):何をどのくらい、どのように

            食べるかを無意識に判断する

            時期。

・準備期(咀嚼期):食物を口の中に取り込み、

            咀嚼し、唾液と混ぜて飲み込み

            やすいように食塊をつくる時期。

嚥下障害支援サイト スワロー http://www.swallow-web.com/engesyogai/index.html(2012.1.27現在)引用して一部改編

•  口腔期:

  食塊を舌によってくちから喉へ

  送り込む時期

•  咽頭期:   食物を喉から食道へ   送り込む時期

•  食道期:   食塊を食道内から胃へ   と送り込む時期

どこが障害されているのかを見極める 嚥下障害支援サイト スワロー http://www.swallow-web.com/engesyogai/index.html(2012.1.27現在)引用して一部改編

食べ物の通り道

 嚥下障害とは 基礎編 http://www.ai-hosp.or.jp/sinryouka/center_riha/enge2/page1.htm, (2012.1.27現在)から引用

摂食・嚥下障害の原因と分類

1.器質的機能障害

食物の通路の構造に問題があり、通過を妨げている。

(口内炎・咽頭炎・口の中や喉の腫瘍・食道炎・食道の狭窄など)

2.機能的機能障害

食物の通路の動きに問題があり、上手く送り込むことができない。

(脳卒中・パーキンソン病など。加齢も機能的原因の一つ。)

3.心理的原因 

摂食の異常や嚥下困難を訴える患者のうち、医学的所見や検査上明

らかな異常が認められない場合。(うつ病 ・拒食症・異食症など)

 その他、薬剤の副作用(向精神薬、抗コリン剤、鎮静剤など)や、

 義歯の問題(合っていない、持っていない)等も摂食・嚥下障害の原因となる      

 嚥下障害とは 基礎編 http://www.ai-hosp.or.jp/sinryouka/center_riha/enge2/page1.htm, (2012.2.6現在)引用して一部改編

•  Wet hoarseness(湿性嗄声)

•  よくむせるようになる(特に水分)

•  夜間の咳、痰の増量

•  繰り返す発熱・肺炎

•  食事時間の延長、食が細い、こぼす

•  食物の好みの変化、食欲の低下

•  食事中・食後に咳き込む

•  体重減少・痩せてきた

•  咽に違和感・残留感がある

2.摂食・嚥下障害患者の

食事介助時の観察ポイント

グループワーク 方法:3~4名ほどの組を作って下さい。

    司会と書記を決め、用紙に記載し    

    て下さい

内容:次の2点について話して下さい。

①食事介助をしているときに自分が観察・確認している事

②「いつもと違う(善し悪しに関わらず)」

 と感じた時に誰にどのタイミングで伝え

 ているか。   10分程度でお願いします。

食事に関する観察ポイント

摂食・嚥下障害を、正常なメカニズム

から、何らかの逸脱した状態と捉え

た上で、健常な状態と何が異なって

いるか考えてみると・・・

ここがちょっと違う?という視点が出てくる。

ここがちょっと違う?という視点が出てくる

食事に関する観察ポイント 5期モデルから観察ポイントを知る

 摂食・嚥下の生理的過程を説明

 する理論モデルはいくつか提唱

 されている。

 例)5期モデル、4期モデル、プロセスモデル

今回は5期モデルで観察項目を考えていきます

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)引用

先行期

何を、どのようなペースで食べるか

を判断する時期。

【観察ポイント】

・スプーンなど道具を使用して食べているか

・食べ物を次から次へと口に入れていないか

・食べ物以外のものを口に入れる、もしくは入れ

 ようとしていないか

準備期

口へ取り込んだ食物を咀嚼して唾液

と混ぜ、飲み込みやすいように塊を

作る(食塊形成)段階。

【観察ポイント】

・口を開けたり閉めたりできるか

・どちらかの口の端から食事や飲み物がこぼれ

 ていないか

口腔期

食塊を舌を使って喉(咽頭)へ

送り込む時期

【観察ポイント】

・飲み込んでいない時にムセていないか

・飲み込んだ後なのに口の中に食べ物が残って

 いないか

咽頭期

食塊を喉から食道へ送り込む時期

【観察ポイント】

・口の中のものをなかなか飲み込めない

・鼻から口の中のものが出てくる

・ガラガラした声が聞こえる

・飲み込んだ時、飲み込んだ後に時間をおいて

 からムセる

食道期

食塊を食道から胃へと 送り込む時期

【観察ポイント】

・胸やけがする

・酸っぱい液や食物が胃からのどに戻ってきた

 感じがする

・胸がつかえる

食事に関する観察ポイント

生活の様子から変化を見つける

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)

①ひどく痩せていないか やせている人は基本的に筋肉が少なく、のど

 の収縮力が低下していたり、疲れやすい。筋

 力が低下すると喉の空間を縮めて食べ物や飲

 み物を食道に押し込むことがうまくできない可

 能性が高い。

 食事の時間は?自分で食べようとしないのは

 疲れるから?ガラガラ声?のどに食べ物が

 残っている? 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

②目が覚めているか

 いつも寝ていて、呼びかけたり、刺激をしても

 起きない人は、飲み込む反射や咳の反射が起

 こりにくくなっていることが考えられる。

 食べ物が口やのどに残っているかも?

 反射が起こりにくいとのどの蓋が上手く閉まら

 ないと間違って気管に入ってしまうかも…? 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

③声はでるか? 声は声門を閉じ、そこにできたわずかな隙間を

 空気で振動させることで出てくる。

 声が出にくい人は気道を守る機能が十分に働

 いておらず、また、声門が閉じないと咳も上手 

 くできない

声の大きさは?声色は?咳払いはできる?

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

④痰はたくさん出ているか? 痰を常に吸引しないといけないような場合には、

 誤嚥の危険性がとても高い。よって少なくとも

 現段階で安全に食べられない場合が考えられ

 る。

痰の量はどう?減っている?増えている?

 自分で痰を出せる?出せない?

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑤口の中の衛生状態は? 口から食事をしている人の場合

 ⇒食事後に食物が異常に口の中に残っている。

 口から食事をしていない場合

 ⇒乾燥した痰が口の中に張り付いてるなど

このような方は口をうまく使えていない可能性

 がある。口の中のどこが汚れているか確認す

 ることが大事 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑥口の中が異常に乾燥していないか?

 口が異常に乾燥している場合、そのまま口か

 ら食べようとすると食物が口の中で上手くまと

 まらず食物が張り付いてうまく飲み込めない。

 薬剤の副作用、口呼吸もしくは脱水などが原

 因と考えられる。原因を一つずつ探ることが必

 要である。

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑦のど仏が下がっていないか のどの筋肉の弱った高齢者はのど仏を支える

 筋肉が重力に負けてしまい、指が3~4本も入

 るほどのど仏が下がっている場合がある。

 「ゴックン」と飲み込むときにのど仏を持ち上げ

 るのに、非常に時間がかかる。それにより蓋が

 上手く閉まらない可能性があり、誤嚥のリスク

 が高い!! 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑧呼吸の状態は? 健康な人は、飲み込む前に息を吸い、軽く吐き

 かけた状態で息を止め(嚥下性無呼吸)、飲み

 込んだ後、息を吐くという動作を無意識に行っ

 ている。

 ひどく呼吸が浅い人や、不安定な人は、嚥下

 性無呼吸の状態が作れないためにうまく飲み

 込めていない可能性がある。 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑨首の筋肉の状態は? 横隔膜など呼吸に必要な筋肉が弱まり、それ

 を補うために首や肩で呼吸をしている、あるい

 は車イスが体に合わず、姿勢を保持しようと常

 に首に力を入れているといった人は、首の筋

 肉だけがムキムキしてくる。

 首に力が入った状態は飲み込みに不利。安定

 した姿勢、首や肩の緊張を和らげる事が大事。 株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑩首が動くか? 飲み込みに使う筋肉は首の内部にあるので、

 外部、つまり首を動かす筋肉が硬くなると、内

 部が動きづらくなる。よって寝たきりなどのため

 に首が固まってしまうと飲み込みに障害がでる。

 摂食・嚥下にはある程度の首の動きが必要。

 日常的に首や肩のリラクゼーションを行うこと

 が大切。   株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

⑪猫背か? 重力に負けて猫背の姿勢になっていく段階で、

 バランスを取るために顔を上に向けるようにな

 る。するとのどの空間が広くなり、更にのど仏

 を持ち上げる筋肉が突っ張った状態となり、飲

 み込みにくくなる。

 顎を引く姿勢を取ること、円背がある場合は

 クッションを入れて安定させる。

株式会社大塚製薬工場http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/se/sp01/p02.html(2012.1.27現在)一部改編

3.医師・看護師への報告の仕方

ほう・れん・そう   5期モデルから見た観察ポイント

生活の様子から変化を見つけることによる観察ポイント

これを使用してほう・れん・そうをして下さい

(報告・連絡・相談)

報告の実際① 【報告例】

右側の歯周囲に食べ物が残ることが多かったが最近は舌で取ろうとする

5期モデルの準備期の段階が良くなってきてい

るかも知れない

担当の医師や看護師へは、この行動をそのまま伝えてみてください。

右側の感覚障害が改善してきている、舌や頬の麻痺が

改善してきていることが考えられる。

報告の実際② 【報告例】 主食はお粥、副食は煮込んで舌と上顎でつぶせる位のものから

多少煮て、入れ歯で噛んでつぶせるくらいの固さのものを摂取するようになった。

5期モデルの準備期、口腔期の段階が良くなってきてい

るかも知れない

担当の医師や看護師へは摂取する食事形態が変わってきていること、摂取出来ていることを伝えて下さい。

食事形態を少しずつ咀嚼してもよいものへ今後徐々に変更でき

る可能性がある。摂取量や本人の嗜好を見ながら、検討してい

くため摂取量の報告も重要となる。

報告の実際③ 【報告例】

頬骨が目立ってきた

「生活の様子から変化を見つける」の項目①から痩せてきていると考える

担当の医師や看護師へはこの状況を伝えて下さい。

食事摂取量の確認や食事内容の確認を行う必要がある。また

必要栄養量を満たしているかどうか確認し、必要栄養量を満た

していない場合、満たす方法の検討や嚥下の状態を確認する

などの対処が必要となる。

報告の実際④ 【報告例】

姿勢が前のめり、小刻み歩行

「生活の様子から変化を見つける」の項目⑨、⑩、⑪の項目を中心に見る

担当の医師や看護師へはこの状況を伝えて下さい。

何か別の疾患の可能性も考える必要がある。また、誤嚥しやす

い姿勢で摂食している可能性も考え、家での摂取状況も確認し

ていった方が良い。

今回の内容を今後の参考にして 頂ければと思います!

参加いただきありがとうございました。

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