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- 1 - CONTENT CLOSE-UP (Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏 清水計宏 清水計宏 清水計宏) デジタル世界ではインタラクション設計が否を決める デジタル世界ではインタラクション設計が否を決める デジタル世界ではインタラクション設計が否を決める デジタル世界ではインタラクション設計が否を決める ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする なぜライブ演奏は CD 視聴よりワクワクするのか? マルチタッチインタフェースで電子空間は「環境」になった! 最も上質なインタラクションは人間同士や自然との一体感 顧客の元に届いてからライブであり続けられるサービスを 電子雑誌は発刊後にも広告の出稿ができるようなる TREND COLUM (D4DR 株式会社 株式会社 株式会社 株式会社 代表取締役社長 代表取締役社長 代表取締役社長 代表取締役社長 藤元健太 藤元健太 藤元健太 藤元健太) エンジニア新時代 エンジニア新時代 エンジニア新時代 エンジニア新時代 -新 3K 3K 3K 3K から から から から wkwk wkwk wkwk wkwk する する する する IT IT IT IT 業界へようこそ 業界へようこそ 業界へようこそ 業界へようこそ ※今月号の「サローネ対談」は休載です。 2011 International CES Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏) 清水計宏) 清水計宏) 清水計宏) 1.米ラスベガスで 2011 International CES が開催 百花繚乱のタブレット端末と韓国企業が先導するスマート TV *世界 130 カ国から当初予想を上回る 14 万人が来場 *電気自動車も大きくクローズアップ 2.CES の主役はタブレット/スレート端末とスマート TV 3D TV は画質を落とさないでパッシブグラスへ移行、将来は裸眼へ *まさに百花繚乱のタブレット/スレート端末 3.米 Motorola Mobility/最も注目されたタブレット「XOOM(ズーム)」を発表 NO.34 (2011 (2011 (2011 (2011 年 1 月 31 31 31 31 日)

コミュニティビジネスレポート1月号 by コミュニティデザイン研究所

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《《《《 CONTENT 》》》》

●CLOSE-UP (Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏清水計宏清水計宏清水計宏)

デジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決める

ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする

●なぜライブ演奏は CD 視聴よりワクワクするのか?

●マルチタッチインタフェースで電子空間は「環境」になった!

●最も上質なインタラクションは人間同士や自然との一体感

●顧客の手元に届いてからライブであり続けられるサービスを

●電子雑誌は発刊後にも広告の出稿ができるようなる

●TREND COLUM (D4DR 株式会社株式会社株式会社株式会社 代表取締役社長代表取締役社長代表取締役社長代表取締役社長 藤元健太郎藤元健太郎藤元健太郎藤元健太郎)

エンジニア新時代エンジニア新時代エンジニア新時代エンジニア新時代 ----新新新新 3K3K3K3K からからからから wkwkwkwkwkwkwkwk するするするする ITITITIT 業界へようこそ業界へようこそ業界へようこそ業界へようこそ

※今月号の「サローネ対談」は休載です。

●2011 International CES ((((Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏)清水計宏)清水計宏)清水計宏) 1.米ラスベガスで 2011 International CESが開催

百花繚乱のタブレット端末と韓国企業が先導するスマート TV

*世界 130カ国から当初予想を上回る 14万人が来場

*電気自動車も大きくクローズアップ

2.CESの主役はタブレット/スレート端末とスマート TV 3D TV は画質を落とさないでパッシブグラスへ移行、将来は裸眼へ

*まさに百花繚乱のタブレット/スレート端末

3.米 Motorola Mobility/最も注目されたタブレット「XOOM(ズーム)」を発表

NO.34 (2011(2011(2011(2011 年年年年 1111 月月月月 31313131 日日日日))))

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タブレットに最適化された Android 3.0採用しマルチタスクに対応 4.カナダの RIM もタブレット端末「PlayBook」を発表 パナソニックはテレビのリモコンにもなる「ビエラ・タブレット」 5.韓国のサムスン電子と LG 電子は国策で進めるスマート TV で勝負 家庭のデジタル化の中心に据え、世界市場に先鞭をつける

*韓国で「スマート TV フォーラム」が成立 *LG はネットワークで連携できる白物家電「Smart Appliance」も

6.LG、東芝からも Android 3.0搭載タブレット 「G-SLATE」は HSPA+に対応し最初から 4G対応タブレット 7.NECは 2 画面型の Android端末を出展 最初は B2B2Cで販売し、2011年後半にコンシューマー市場に投入

8.米 Hillcrest Labs/ソニー、LG、任天堂などがライセンシー 次世代 TV、ゲーム機向けモーションコントロール技術を開発 9.2010年の家電市場は対前年比 13%増の 8730億ドル/米 CEA 2011年は同 10%増の 9640億ドルと堅調、スマートフォンが牽引 10.ソニー/3D 立体視対応製品のオンパレード

裸眼 3D TV も 3 方式を出展、普及型「BRAVIA」も 3D 対応 11.米 Yahoo!/「Yahoo! Connected TV」の次のバージョンを発表 放送番組と連携できる情報・広告を表示するアプリを提供へ 12.仏 Vision Objects/高度な手書き認識技術を出展・デモ LG、Audi、Nokia、ワコム、日立 Anoto(アノト)、Mimio などが採用 13.独 WeTab/インテルブースでタブレット端末を出展

モバイル向けオープンプラットフォーム「MeeGo」ベースのタブレット 14.東芝/裸眼立体視が可能な 65V 型グラスレス 3D レグザを初出展 2011年度に日米で 40型以上投入へ

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【【【【CLOSE-UP】】】】(Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏清水計宏清水計宏清水計宏)

デジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決めるデジタル世界ではインタラクション設計が成否を決める

ライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くするライブ感、生きている感が他とのつながりも強くする

●なぜライブ演奏は CD 視聴よりワクワクするのか?

スマートフォンの普及が世界的に進み、2010年統計で米国では携帯電話機全体の 14%、日本

では 8%程度にまでなっており、さらに急増している。数年後には 2 人に 1 人がスマートフォ

ンに移行するという予測もある。韓国では、過激ともいえる伸びを示しており、2011年にも 50%を超えるのではないかという予想さえある。

スマートフォンの個人ユースを開拓した iPhoneは、iPod Touch、iPadとともに、表面の膜の電気容量

の変化を感知して反応する静電容量方式(アナログ

容量結合方式)タッチパネルを採用した。デバイス

の普及は、モバイル端末のインタフェースを一新し

てしまった。 従来の携帯電話機のプッシュ式のボタンの操作で

は、ボタンの数以上の機能が増えていくと、画面上

にアイコンを一つずつたどって指示したり、ボタン

の組み合わせで機能を選択したりすることになり、操作性が悪くなる。 特に、アプリのダウンロードとインストールによって、ケータイのカスタマイズやパーソナ

ライズができるようになってからは、固定電話のインタフェースを継承したプッシュ式のボタ

ンの役割は不都合になった。

モバイル端末で通話する頻度が高ければ、プッシュボタン式の方が便利かもしれない。だが、

iPhoneであれば、平均約 80 本のアプリをインストールし、そのなかから定常的に 17本を使う

ようになったことを考慮すれば、マルチタッチインタフェースの方がはるかに自然といえる。

その反応性のよさが価値を高めている。 いま以上に、アプリの数が増えていけば、2 次元表示ではなく、一画面でより多くの表示が

できる 3 次元構造になっていくことが予想され、インタフェースそのものも 2 次元ディスプレ

イの中で 3D 空間に表示できるものになるだろう。

モバイル端末のインタフェースがマルチタッチになったことで、人間の手・指の操作、手の

動きがそのまま端末に反映され、ディスプレイ上の空間とシームレスにつながるようになった。

身体の動きがそのままデバイスに反映され、電子空間は利用者である個人の環境の一部になっ

たとも言える。

環境というのは、持続性のあるインタラクションにより、その微妙なニュアンスまでも受け

て、じかに反応する周囲の一体感のある状況である。ボタンを押す回数が多かったり、ツリー

形式で何度も選んでいくのでは、環境としては機械的で中途半端なものになる。ピンポン(卓球)

のラリーのようにつながっていかないと、身体性と直結した環境にはならない。

環境になれば、個人とのインタラクションがスムースになり、それが存在感を認識につなが

り、ライブ感や生きている感にもつながっていく。もちろん、リアルな環境の方が豊かである

が、現実世界で無為孤独でいるよりは、仮想上であってもインタラクションができれば、私た

ちはそれなりに自らの存在感を確認することができる。

そのインタラクションの量と質が、私たち自身の在り方まで変えていくことらになる。

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●最も上質なインタラクションは人間同士や自然との一体感

インタラクションを豊かにできればできるほど、私たちの身体も脳も意識も活性化し、虚無

や無為から脱することができる。

最も贅沢で上質なインタラクションは自然と人間関係、現実の行動・行為、森羅万象との遭

遇・邂逅によってもたらされる。

たとえば、ライブのジャズ演奏では観客の反応を見ながら、ミュージシャンが即興でアドリ

ブを入れたり、メロディーをフェイクしたり、コード進行に変化を持たせたりして、音楽をつ

くり上げていく。このインタラクションがミュージシャンにとっても、観客にとっても上質で

一期一会のことになる。それはクラシック音楽でも、舞台芸術でも遜色があるものではない。

ただ客席で観ているだけのように見えても、その臨場感のうちに、無意識にも身体全体が反応

するほどインタラクションをしている。没入していると

き、脳の働きはそのことに奪われているため、同時に他

のことができなくなるのが、その証拠である。

ただし、その上質感はいつも得られるわけでもなけれ

ば、単に疑似的な世界、シミュラクルな世界を消極的に

受け入れるよりは、インタラクションできる世界として

参加した方がいいということである。

私たちは「仮想」という言葉が示されるように、現実

そのものではないが実質上は現実と同じように作用する

ものに囲まれるようになっている。それらの多くは生命

感のない物質だったりもする。

私たちが食するものは、さまざまな命であり、収穫さ

れた野菜・果実にしても、食用にされた魚介・精肉であ

っても、生命感のあるものである。それと同じように、

私たちが相互にかかわったり、使用したり、関係したりするものに、ライブ感と存在感があれ

ば、それを感覚的にも自然に受け入れることができるだろう。

もし、音楽 CD を聴いていて、私たちの素振りや反応によって、それが反応したりしたらど

うだろうか。ロボット型プレイヤーで再生してもかまわないし、PCで再生してもいい。

テレビで講義を受けていて、相手側にこちらの様子が伝わり、相互に対話ができる状況であ

れば、学習効果も上がることだろう。

テレビにセンサーがついていて、観ている子どもの表情や態度に合わせて、絵本の読み聞か

せの声の音量、表情、質感がかわったり、読んでいるアナウンサーが態度を変えたりすれば、

生身の母親にはかなわなくても、子どもにとっては少しうれしいことになるだろう。

言葉の習得するにしても、インタラクションがなく、単に聞いているだけでは、多くの時間

が浪費されることになる。海外に行けばだれもが外国語をいやおうなく覚えられるというのは、

そこに不断のインタラクションがあるからである。生身の人間同士のインタラクションが言語

の習得を促す。

ちょっとしたことに反応できること--このことが私たち人間にとっては、生きていくうえ

で、とっても大切なことだったりする。Facebookの「いいね」は、それをごく自然に取り入れ

ている事例である。

●顧客の手元に届いてからライブであり続けられるサービスを

もちろん何でもインタラクションがあればいいというわけでもない。スマートフォンをタッ

チすると使えなかったり、フリーズしたり、通話できなかったりしたら、それは意味をなさな

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い。

人間同士の対話、コミュニケーションにおいても、互いの会話がかみ合わなかったり、食い

違ったり、その場の状況や雰囲気と関係ない対応をすれば、「空気を読めない」(KY)と一掃さ

れてしまいかねない。

だが、インタラクションがうまくとれるようになれば、相手にもいい思いをさせ、自らの存

在感と生きている感を味わうことができる。

楽器演奏では楽器とのインタラクションで音楽が生まれるが、その演奏が思うようにいかな

ければじれったいが、練習によって少しずつ上達し、思うように弾けるようになれば、楽しむ

ことができるし、ワクワクするときが増える。

iPhone/iPod Touch/iPadと対応するアプリは、インタラクションの設計・デザインにおいて他

をしのいだともいえる。

電子書籍のコンテンツや 3D 立体視アプリケーションについて、企画・検討するときにも、

このインタラクションが人間にとって楽しく、上質で、人とつながった環境になっていること

が求められる。インタラクションはライブ感でもあるため、ちょっとしたことに反応したり、

利用者・使用者とのスムースなやりとりが可能になれば、その製品・サービスの評価にもつな

がる。 これまでなら、コンテンツはパッケージに記録・梱包され、顧客の手元に届いた時点が最終

形だった。いまでは、コンテンツはアプリケーションになり、顧客に届いたときに目を覚まし

て、ライブであり続けなければならない。

●電子雑誌は発刊後にも広告の出稿ができるようなる

電子書籍であれば、コンテンツそのものばかりでなく、広告についてもインタラクションを

取り入れ、ライブ入稿などにも対応すべきだろう。

これまでなら、広告は事前に出稿してもらい、入稿後は決まったもの同士の入れ替えはあっ

ても、出稿後に様変わりすることはなかった。広告はリンクが貼られていたり、ポップアップ

が出たりして変化したが、まだ広告そのものは固定していた。

広告出稿者が、そのページのユニークビジター数や読者数を見て、広告の出稿が気軽にでき

るようになっていくだろう。電子雑誌や電子新聞において、割り付けやデザインは流動的にな

るだろうから、広告量が増えても決して困ることはないだろう。第 3 種郵便の規定も考慮しな

くていいことになる。 広告の種類も定形スタイルだけでなく、自由にデザインし、さまざまのサイズ、行数のもの

があってもいい。その認証は人手であったり、自動であったりするだろうが、重要なことは、

電子雑誌の中身が生き続けることである。

3D 立体視テレビや電子楽器に見られるように、デジタル世界が広がっていけば、ある種ギミ

ックな世界、錯覚・倒錯の世界が増えることにもなる。それが人間環境になっていく。 かつてなら生身の人間による絆が関係の大半を占めていた。それが、しだいに電子空間上、

コミュニケーションメディアを介してのつながりが増えている。

大自然ではなく、人間がつくりだした人工的な環境のなかで、死もしくは仮死の成分が上が

ってきているともいえる。そのため、現代人は自らの存在感の確認や生きている感覚までが徐

々に薄らいできている弊害も出ている。

こうしたなかで、インタラクションの設計と、インタラクション・ネットワークのデザイン

はデジタル世界でビジネスをする上でも、成否を決定づけることにもなる。

インタラクションは生きていることの証であり、生きているということは他とつながり合え

るということでもある。それが、また持続的なインタラクションにつながっていく。

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【筆者】清水計宏(しみず【筆者】清水計宏(しみず【筆者】清水計宏(しみず【筆者】清水計宏(しみず かずひろ)かずひろ)かずひろ)かずひろ)

1953年(昭和 28年)静岡県生まれ。大阪外国語 大学卒業後、77年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株

式会社)入社。82年同社退職後、テレコミュニケーション、コンピューター関係の専門紙、雑誌の編集 者・記者を経て、89年映像新聞社入社。 90年に映像新聞編集長、92年取締役・編集長。2001年 10月映像新聞社を退職し、独立。同 年 12月に

新会社設立予定。主な著書として「マルチメディアへの挑戦」(ソフ トバンク刊)、「世界のコンピュ

ータマッ プ'93/'94'95」がある。約 13年間にわたり、海外の国際見本市と先端企業を視察するツアーを

実施し、1000人以上のアドバイサーのコーディネーターを務める。IT産業、デジタルコンテンツ、海

外の先端企業の動向に詳しい。

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【【【【TREND COLUM 】】】】(D4DR 株式会社株式会社株式会社株式会社 代表取締役社長代表取締役社長代表取締役社長代表取締役社長 藤元健太郎藤元健太郎藤元健太郎藤元健太郎)

エンジニア新時代 -新 3K から wkwk する IT 業界へようこそ

ソーシャルアプリ業界の競争が激しい。この激しい

競争の恩恵を受けているのは,長期低迷が見込まれて

いたテレビ業界である。これらソーシャルアプリ業界

を中心としたネット系企業の大量の CM のおかげで現

在ほっと一安心である。年末の日経新聞の報道では CM

の放送回数では上位のグリーやディー・エヌ・エーは

あのトヨタを抜いているというから驚きである。ある

意味テレビの影響力を落としている一因であるソーシ

ャルアプリ企業に救われているというのもなんとも皮

肉な話である。 こうしたソーシャルアプリ企業の競争はもうひとつ大きなインパクトを与えている。それが

転職市場である。中でもエンジニアの争奪戦は激しい。ある一社が入社一時金として 200 万円

を支払うという制度を作ったところ,すぐに他社も追随した。失業率が高く,新卒の就職戦線

が厳寒期と言われる中でのこの景況振りはなかなか熱い話である。 先日,もともと広告代理店ビジネスに力を入れて,現在はソーシャルゲームに力を注いでい

るネット系企業の社長と話をしていた時に出た「私が IT 担当で,自らエンジニア採用のトップ

をやっている!」という言葉に筆者は大きな構造変化を感じた。

2000 年ぐらいからのベンチャーブームの中で成功した IT ベンチャーは営業中心の会社が多

く,広告や EC などの IT 商材を月次目標必達で売りさばくことで成長してきたところも多かっ

た。しかし,今や彼らの成長のための中心となる人材はエンジニアだと断言しているのである。

筆者は,これはようやく IT 業界が健全化したとてもいい話だと感じている。元々日本の IT

企業はシステムエンジニア(SE)という職業がもてはやされ,プログラマーは格下でドキュメン

トとプロジェクトマネジメントしかできないような人材を大量に生み出した。中にはひたすら

テストしている人までもが SE という名前で待遇された。SI 企業は大規模な社内システムをス

クラッチで構築し,人月で高い見積を請求することが売上規模の拡大に繋がったため大量の SE

を必要としたのである。

しかし結果として品質が悪く,納期は遅れ,トラブルは多発し,残業は多く,「きつい,厳

しい,帰れない」新 3K 職場として学生達からも評判が悪くなっていくという悪循環を生み出し

た。しかし,そもそも IT ビジネスは知識情報をデジタル化して新しいサービスを生み出すわけ

で,人海戦術である方がおかしい。欧米では元々パッケージソフト志向が強く,パッケージソ

フトの会社では優秀なプログラマーこそが性能と品質を左右するため高く評価される土壌があ

る。日本ではある意味デジタル時代でも土木事業と同じ労働集約の構造が一番単純に売上をあ

げることができるからその構造が生まれてしまったもとも言えるだろう。

しかし,現在のように企業のエンタープライズシステムですら,パッケージ志向でクラウド

の普及で構造が変わりつつある中では SI ビジネスも当然転換点を迎えている。

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そうした中でソーシャルゲームを中心とするソー

シャルアプリが生み出している新しい市場はエンド

ユーザーを「楽しませ,感動させることができる」と

いう大きな喜びを開発者に与えることができる。数人

のエンジニアを中心に短期間で開発し,どんどん市場

に出してその反応を見ながら改良改善していく行程

は自分の手でサービスを生み出すという実感を持つ

こともできる。サービスから直接売上があがる仕組み

であるため,成功すれば評価もわかりやすい。この市

場ではエンジニアという職業は間違いなくビジネスの中心であり,ワクワクする仕事になろう

としている。そのため開発を外部の企業にまかせるのではなく,社内でエンジニアを雇用する

流れが今や主流になろうとしている。

もちろん激しい競争やスマートフォン化が進む中で,アプリケーションの肥大化やグラフィ

ックのリッチ化などにより,制作体制が現在のゲームのように映画制作のように大きくなって

いく可能性もある。またソーシャルゲームそのものがリアルな経済への波及効果が少なく,地

方衰退化に拍車をかけるなどの課題も指摘されている。だがこうした課題がたくさんあるとい

うのも,業界が固まっているわけではないということを意味するわけであり,ある意味挑戦し,

新しいビジネスモデルやイノベーションを生み出す余地は多数にあるとも言える。そしてこの

ような中で生まれた新しいスターエンジニアがアントレプレナーとして起業する可能性も高ま

るだろう。この流れがエンジニアを若者達の憧れの職業に押し上げ,優秀なエンジニア人材の

流動化を促し,日本の IT サービス市場の活性化につながることを是非期待したい。

【筆者】藤元【筆者】藤元【筆者】藤元【筆者】藤元 健太郎健太郎健太郎健太郎 (ふじもと(ふじもと(ふじもと(ふじもと けんたろう)けんたろう)けんたろう)けんたろう)

D4DR株式会社(http://www.d4dr.jp/ ) 代表取締役社長。

野村総合研究所フロントラインドットジェーピーを経て現職。 1993年から IT による社会システム革新,経営戦略の調査研究,コンサルティングに従事し,現在成功し

ているソフマップ, JTB,JCB,NTT DoCoMo,HONDA などのインターネットビジネス参入の支援コ

ンサルティングを実施。

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【特集~【特集~【特集~【特集~2011 International CES】】】】 ((((Shimizu Media Strategy Labo, Inc. 清水計宏)清水計宏)清水計宏)清水計宏)

1.米ラスベガスで 2011 International CESが開催

百花繚乱のタブレット端末と韓国企業が先導するスマート TV

●世界 130カ国から当初予想を上回る 14万人が来場

年明け早々の 2011年 1 月 6 日~9 日までの 4 日間、米ネバダ州ラスベガスで家庭向け電子機

器・サービスの国際見本市「2011 International CES」(http://www.cesweb.org/)が開催された。

会期中は晴天が続き、一週間ぐらい前に寒波に見

舞われたラスベガスだったが、季節の平均気温とな

り、日中は過ごしやすかった。ラスベガス市内は混

み合い、朝夕はクルマの渋滞に見舞われ、ホテルと

コンベンションセンター間は必要以上に時間がか

かった。平日であればクルマで 10分程度の距離も、

1 時間以上かかる時間帯もあった。

それでも 2000年代半ばのピーク時に比べれば混

雑は少ない方で、各ホテルで夕刻に催されているシ

ョウのチケットは当日券でも取れるほどだった。

コンベンションの主催者は全米の家電業界の団

体である米家電協会(CEA:Consumer Electronics Association)。第 1 回が 1967年に開催されたこ

とから、今回で 44年目。かつては、ラスベガスとシカゴで夏季と冬季に年 2 回実施されていた

が、ゲーム関係が E3 に移ったりしたことから、冬季だけになった。その年のデジタル家電の

方向性が見えるコンベンションとして、毎年高い関心を集めている。メーカーにとっては、デ

ィーラー、販売店、顧客企業と商談を交わし、彼らを接待するいい機会となる。 今年のテーマは"Build Global Networks and Business." 世界経済が奮わないなかにあって、出展

企業は最盛期と比べる 100社程度少ない。だが、家電製品がデジタル化されたり、インターネ

ットに接続されたり、モバイル化するなかで、毎年、数万点に上る、さまざまな新商品が開発

・発表された。 CEAのPresident & CEOのGary Shapiro氏は、2011 International CESの開幕の挨拶や

1月 7日午前 9時から Las Vegas Hilton Theater(ヒル

トン劇場)で実施された"Innovation Power Panel(イノベーションパワー討論)"の場で、イノベーション

の重要性が改めて訴えられた。 「世界経済は厳しい状況が続いているが、イノベー

ションが鍵になる。イノベーションが起これば市場

は回復し、生活を豊かにする。2011 International CESにおいては、多数の企業がイノベーションを中核に

した製品が出展されている」とし、イノベーション

を体感できるコンベンションをアピールした。ただし、イノベーションと人材は市場がないと

発達しないとし、国内市場にとどまらず、世界に目を向けないといけないとも語った。これは、

業界の代表的な経営トップの認識でもあった。

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米国の人口は約 3 億人(2010年 4 月 3 億 914万人)だが、世界は約 70億人(69億 2110万人)であり、米企業は外にある 70億人の市場を目指さなければ、イノベーションも発達しないとい

う見識である。

主催者が発表したデータによれば、メイン会場となるラスベガス・コンベンションセンター

(LVCC)、ザ・ベネチアン、ラスベガス・ヒルトンの約 140 万平方フィート。2007年の史上最

大規模だった時には、史上最大の展示面積 180万平方フィートを使用していた。今回の出展企

業は事前に 2500社とアナウンスされたが、隣接するルネッサッンス・ホテルやザ・ベネチアン

などのスイートでの出展などを含めると 2700社にふくらんだ。サンズ・エクスポ&コンベンシ

ョン・センター(SECC)は使用しなかった。 ザ・ベネチアンの出展は会議室ベースの商談を中心とした出展が主体で、高級オーディオや

半導体関係が集まっており、一般来場者は少なかった。今年からベネチアンからホテルに帰る

シャトルバスはなくなり、その代わりマッカラン国際空港(McCarran International Airport)へ

向かう無料バスが出た。ベネチアンのスイートでは、招待者ベースの多数のミーティングが多

数行われた。 出展企業約 2700社のうち、米国外からの出展企業数は約 1200社。総来場者数は世界 130カ国から昨年並みの 12万人を超える予測されていたが、実際には 14万 1000人と上回った。2010年は 12万 5000人、2009年は 11万人だった。 米国外からの来訪者は約 3 万人にのぼった。CESは、米商務省がスポンサーとなっている国

際バイヤープログラム(International Buyer Program)に参加していることから、このプログラムの

一環として 25カ国以上から機器調達代表団が CESの会場を訪れ、次のビジネスパートナーと

の出会いを求めた。メディア関係者はブロガーを含めて約 5000人。 ●電気自動車も大きくクローズアップ

2011 International CESでは、「タブレ

ット/スレート端末」「スマート TV」

「次世代 3D」「電気自動車(EV)」がキ

ートレンドになった。

展示会場は、20 の特定市場別テーマ

展示スペースとして、「テックゾーン

(TechZone)」が開設された。

具体的には、3D の世界を創出するコ

ンテンツクリエーター、サービスプロ

バイダー、TV メーカーなどの関心を集める「3D@Home」や、eBooks、Notebooks、Smartbooksおよびタブレット端末などの最新デバイスが並べられる「Access on the Go」のほか、ブロード

バンド・インフラに焦点を絞った「Broadband Communications」、双方向性でエネルギー効率に

優れた最新のスマートグリッド(SmartGrid)対応機器を中心とした「コネクテッド・ホーム・ア

プライアンス(Connected Home Appliances)」、デジタル・リビングルームを自動車や携帯型デ

バイスに持ちこむ民生デバイスを紹介する「モバイル

DTV(Mobile DTV)」、電気自動車、エネルギー・スト

レージ・デバイス、充電装置などを扱う「電気自動車

テックゾーン (Electric Vehicle TechZone)」、スポーツ

愛好者向けツールやスポーツ、フィットネス、アウト

ドア市場向けツールを集めた「スポーツおよびフィッ

トネス・テックゾーン(Sports and Fitness TechZone)」な

どがある。

なかでも、米 GM は、二輪駆動の 2 人乗りの電気自

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動車「EN-V」をデビューさせ、米 Ford(フォード)は、現行車種である「FORCUS」の電気自動

車として、「FOCUS Electric」を発表した。

CESの新たなプログラムとして、CESに参加するエンターテイメント業界の専門家向けに「エ

ンターテイメント・マターズ(Entertainment Matters)」も実施され、コンファレンス・プログラ

ムと特別展示のほか、ハリウッド・コミュニティのイベントなども開催された。

今年も、コンファレンス・プログラムでは約 900人の講演者による 300のコンファレンスセ

ッションが行われた。

2011 International CESでは、展示会とともに、家電業界の全分野を網羅する 300を超えるカ

ンファレンス・セッションも組まれるが、最も多数の来場者を集めて人気なのが、基調講演者

である。

今回は、米 Microsoftの CEOの Steve Ballmer氏、米 Verizon社の会長兼 CEOの Ivan Seidenberg氏、独 Audi 会長の Rupert Stadler氏、韓国 Samsungの Visual Display Business部門社長

の Boo-Keun Yoon氏、Ford社の Alan Mulally 氏らがステージ

に立った。

Bill Gates氏の後を継いで 2 回目になる Steve Ballmer氏は、 次期 Windowsが ARM アーキテクチャーを含む SoCをサポー

トすることを発表した。ARM アーキテクチャーは、iPhone、iPad、Android 端末、ニンテンドーDS、ソニーPSPなどが採

用しており、同システムのパートナーとしては、NVIDIA 、

Qualcomm、Texas Instrumentsがあり、そうした企業製品によ

るデモを行われ、実際に Windowsが ARM ベースのシステム

で動くことを実証した。ただし、ユーザーインタフェースは Windows 7のままで、まだ開発半

ばであることも伺わせた。 今回の International CESで明らかになったことは、もはや製品・ハードウェアだけの競争は

終わり、家電製品においてもプラットフォームが成否を分かつということである。 アナログ時代には技術・経験を蓄え、組み立て生産ラインの稼働率を高めることが企業競争

力となったが、いまや要求される機能・性能は回路を集積した SoC(System-on-a-chip)に搭載さ

れており、それを調達すればだれでもが製品を大量に製造できるようになった。成熟した市場

においては、デザイン力、マーケティング力、意思・実行のスピード力が企業力の差別化の要

にもなる。 タブレット端末、スマート TV も 3D TV もハードウェア技術だけがすぐれていても、市場で

覇者になることはできず、製品がサービスと結びつき、コンシューマーにいかに豊かでパーソ

ナライズできる体験を与えられるかが焦点となっている。昨年、多数出展されていた電子書籍

リーダー(閲覧端末)は今年も台湾・中国メーカーを中心に多数出展されたが、それは製造を請

け負う企業からであったりして、Amazon.comや Apple に対抗する勢力の台頭はあまりなかっ

た。 特に、電子ペーパーを使用した電子書籍リーダーは、米国においては Amazonの Kindle(Wi-Fi

版 139ドル、3G版 189ドル)がデファクトスタンダードになろうとしている。これは iPodがデ

ジタル音楽プレイヤーとしてデファクトになったのと同じ理由である。米国のテレビでは、連

日、139ドルの Kindle の CM を見かけた。 百花繚乱の様相を見せているタブレット端末についても、性能・機能で iPadを超えるのは、

比較的難しいことではない。そのスペックはさほど高くないからだ。だが、ユーザーインタフ

ェースとデザインの重視およびユーザー志向とたぐいまれなプラットフォームで、iPadはユー

ザーの満足度で勝ち取り、他をしのいでいる。

このプラットフォーム競争時代がついにテレビにも到来したのが、まさに 2011年ということ

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になる。日本メーカーではソニーが最もプラットフォームに力が入っている。だが、すでにサ

ムスン電子、LG 電子は世界中でスマート TV のプラットフォーム戦略を進めており、全家庭が

すぐに欲しいとも思わない 3D を切り札にするのであれば、日本勢は足をすくわれかねない。

これに関連して、ソニーは、PlayStationアプリをプレインストールした携帯電話として、

PlayStation Phoneを出展する可能性があると事前報道されたが、発表されなかった。また、PSP2も同様だった。

PlayStation Network(PSNのユーザーアカウント数が6000万に達した。昨年のCESででは3800万だったことから、約倍に成長している。3D 立体視への対応や有料サービス PlayStation Plusの導入が話題となった。 ソニーは、日本企業のブースでは最も見どころがあり、多くの来場者を集めた。2011 International CESにおいて、最も自然な裸眼立体視ができる 3D TV を参考出展して、注目を集

めた。ちなみに裸眼 3D TV として、 56型 4K×2K の液晶テレビ、46型 1080p液晶テレビ、24.5型有機 EL テレビの 3 モデルを展示した。 2.CESの主役はタブレット/スレート端末とスマート TV

3D TV は画質を落とさないでパッシブグラスへ移行、次世代は裸眼へ ●まさに百花繚乱のタブレット/スレート端末

2011 International CESで話題になったのは、タブレ

ット/スレート端末、スマート TV(Connected TV/Net-Connected TV)のほか、裸眼立体視 3D TV、パッシ

ブ型 3D TV、3D 撮影機器、Android搭載家電、スマー

トフォン、ネット接続 TV、OTT-V(Over the Top Video)サービスと端末、TV 向けアプリケーションストア、

TV Widget、ソーシャルメディアとの連動デバイス&サービスなど。

特に、スマートフォン、タブレット端末/メディアイ

ブレット市場だけでなく、テレビがコンピューターに

なることで、テレビ向けのアプリケーション市場が生

まれることになり、コンテンツおよびビジネス分野の

アプリケーションが一つの焦点となった。

最もクローズアップされたのは、タブレット/スレート端末とスマート TV であり、タブレッ

ト/スレート端末は軽く 100を軽く超えており、数え切れないものの、製造請負関係を含めると

数百ぐらいになると見られる。数量的には台湾・中国企業の製品が大半を占める。 Motorola、Research In Motion (RIM)、サムスン電子、LG 電子、Viliv( 韓国)、東芝、パナソニ

ック、シャープ、Lenovo、Acer、MSI、Freescale Semiconductorをはじめ、多数の企業が発表・

出展した。 ただ、タブレット/スレート端末には、iPadを追

随するコンテンツ閲覧、アプリ使用に重点を置いた

機種だけでなく、Windows7を搭載した PC のモバ

イル版のようなタブレット PCタイプ、また電子書

籍リーダーに重心をおいた Kindle追随型とともに、

それらの混合型があったりする。今回、特に話題と

なったのは、言うまでもなく、ネット PCタイプよ

りは、iPadに競合できるタイプのものである。なか

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でも、タブレット向けの Android 3.0/Honeycombを採用したモデルは人気を集めた。

Windows 7モデルは、不人気ではあったが、ユーザーが使い慣れた環境で操作できたり、こ

れまで開発・蓄積されたソフトウェアをそのまま利用できるなどの利点もある。

タブレット端末のなかで、来場者の最も高い関心を集めたのは、米 Motorolaが発表したタブ

レット端末「Xoom(ズーム)」だった。これは、YouTube なども使って事前プロモーション

したのも奏功した。

この機種は、Android OSの最新版「Android 3.0」(開発コード名:Honeycomb)を採用し、

米 NVIDIA のデュアルコアプロセッサーを搭載する。Honeycombは、タブレット端末など、大

型画面の端末向けの OSでインタフェースの使い勝手も向上している。 米 Verizonから発売されるが、Verizon会長兼 CEOの Ivan Seidenberg氏が基調講演のなかで、

Googleが説明し Verizonsと Google、Motorolaとの連携で開発されたことを明らかにした。 このほか、DELL から「Streak 7」、Creative Labsから「Ziio」、サムスン電子から「Gloria」、

ViewSonicから「ViewPad」、独 WeTabから「WeTab」、台湾 ASUSTeK Computerから「Eee Pad」シリーズといったように、主要メーカーはほとんどタブレットを発表・出展した。

DELL は 7 インチのタブレット端末というより、タブレット PCを発表した。CPUはデュア

ルコアの NVIDIA Tegra 2 プロセッサー。Honeycombへのアップグレードにも対応する予定。

液晶ディスプレイの解像度が WVGA(Wide-VGA: 800×480, 15:9)と、同じ 7 インチディスプ

レイの Galaxy TABの解像度(1024×600)より低くなっている。 台湾 ASUSTeK Computerは、Android 3.0を搭載する「Eee Pad」シリーズを発表。Eee Padシ

リーズは 7インチの「Eee Pad MeMO」、10インチでキーボードドック付の「Eee Pad Transformer」、10インチでチルト&スライド機構を持つキーボードを搭載した「Eee Pad Slider」の 3 機種が発

表された。 3.米 Motorola Mobility/最も注目されたタブレット「XOOM(ズーム)」を発表

タブレットに最適化された Android 3.0採用しマルチタスクに対応

2011 International CESで発表されたタブレット端末のなかでも

最も関心が高かったのは、米 Motorola Mobilityが製造した「Droid XOOM(ドロイド・ズーム)」だった。

これは、米大手通信事業者の Verizon Communicationsで CEOに就く Ivan Seidenberg氏の基調講演のなかで、Motorola、Googleとのパートナーシップの中で開発されたことを説明し、Google担当者によって実演された。

XOOM は、Android OS をタブレットに最適化された Android 3.0(開発コード:Honeycomb)採用する。マルチタスクにストレ

スなく対応し、ユーザーが高い頻繁で使うアプリケーションにつ

いては、簡単にアクセスできるようになっている。ホーム画面に

電子メールやカレンダーのアプリを小さな画面やウィジェットで表示し、動画タイトルや電子

書籍も選択しやすくしている。電子メールであれば、画面左側でフォルダを一覧でき、中央に

連絡先、右側に最新メッセージが表示される。

iPadは初期に、複数のアプリケーションを同時に動作さ

せるマルチタスクには対応していなかった。だが、XOOMは最初からマルチタスクをサポートしている。起動中の他

のアプリケーションについてはサムネイルで一覧表示さ

れる。

会場でのデモでは、Google がタブレット向けのディス

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プレイ用にウィジェットのデザインを作り直し、表示に 3D(3 次元)効果を導入した。

動画、電子書籍がタッチするだけで簡単にスクロールされて選択できることや、「Google Maps5.0」の画面では、2 本指を下向けにドラッグしたり、回転したりすると、建物が立体表示

された、回転・方向転換するといった操作をした。

ディスプレイは 16:9 の 10.1型ワイドスクリーン(1280×800ピクセル)。1GHzコアを 2基搭載したデュアルコアプロセッサーを基盤にし、3D 表示対応の Google Maps 5.0、Google eBooksの電子書籍も検索・閲覧でき、アプリストア Android Marketも利用できる。ビデチャッ

トに使える 200万画素カメラのほか、背面に HD(720p)のビデオ撮影ができる 500万画素カメ

ラも搭載する。そのほか、ジャイロスコープや加速度計も内蔵する。重さは iPad(680g)より少

し重たい 730g。 ジャイロスコープ、電子コンパスなども搭載している。Wi-Fi 機能も持ち、2011年第 1 四半

期に 3G/Wi-Fi 対応モデル(4Gにアップグレード可能)が、2011年第 2 四半期に 4G LTE/Wi-Fiモデルが登場する予定だ。

Wi-Fi 経由で最大 5 台のデバイスをインターネットに接続するモバイルホットスポット機能

も搭載し、3Gネットワークにも対応する。4Gの LTE へのアップグレードもできる。

米国の発売は Verizon Wireless。販売時期は、3Gおよび Wi-Fi の対応モデルは 2011年第 1 四

半期、4G LTEおよび Wi-Fi 対応モデル同第 2 四半期になる。3Gモデルは第 2 四半期には LTEにアップグレードができる。XOOM は本体背面の上蓋が取り外しできるようになっており、ア

ンテナと無線通信部品を着脱でき、これを 4G/LTE 用に交換してソフトウェアを更新すれば、

LTE にも対応する。 4.カナダの RIM もタブレット端末「PlayBook」を発表 パナソニックはテレビのリモコンにもなる「ビエラ・タブレット」

ほとんどの主要企業がタブレット/スレート端

末を発表したといっても過言ではない。ただ、パ

ナソニックだけは 3D TVに重点を置いた出展をし

て、話題のスマート TV や裸眼 3D TV については

展示しなかった。

タブレット端末については、テレビ視聴時のリ

モートコントローラとして使えるタブレット型端

末「ビエラ・タブレット」を出展した。ブースで

は薄型テレビ「ビエラ」と一緒にデモされた。

ビエラ・タブレットは、Android OSを採用し、

タッチパネル、Wi-Fi に対応し、ディスプレイサイズは、試作機では 4 インチ、7 インチ、10インチがある。

CESに出展された製品は、テレビの「ビエラ」と連携するリモコ機能を中心に、SNSと連動

するコミュニケーション機能や、視聴コンテンツと連動して関連商品を購入できる eコマース

機能などがコンセプトとしている。2011年内に発売する予定。

Apple にスマートフォンのショアを奪われた、カナ

ダの Research In Motion (RIM)は、iPad対抗機として、

初のタブレット端末「BlackBerry PlayBook」を発表・

出展した。

PlayBook は、マルチタスクをサポートする独自の

BlackBerry Tablet OSを採用。HTML と Javaによる開

発のほか、Adobe AIRベースのアプリを動かすことが

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できる。すでに 2009年末から RIM のアプリストア「App World」で PlayBookアプリの登録受

付を開始し、SDK の配布をしていた。

ディスプレイは、7 インチの 1024×600ピクセル(WSVGA サイズ)の液晶パネルタッチスク

リーン。本体サイズは W130×H194×D10mm。重量は 400g。

ARM アーキテクチャーで最新世代の ARM Cortex-A9 デュアルコア 1GHz プロセッサーを

搭載し、その処理能力を生かして、エンタープライズ対応やセキュリティ機能に力点を置く。 前面 3 メガピクセル、背面 5 メガピクセルのデュアル HD カメラを装備し、1080pの動画撮影が

できる。

スマートフォンの BlackBerryと Bluetoothで接続して、データを同期させて、大画面でアプ

リがつかえる連携機能「amplified view」もある。

Wi-Fi(802.11a/b/g/n)ネットワークに対応した製品は、2011年第 1 四半期中に、4Gネットワ

ークに対応した製品は米 Sprintと共同で 2011年夏にはリリースする予定。グローバル市場 2011年第 2 四半期を予定している。価格は未定。 5.韓国のサムスン電子と LG 電子は国策で進めるスマート TV で勝負 家庭のデジタル化の中心に据え、世界市場に先鞭をつける

2011 International CESにおいて、韓国のサム

スン電子と LG 電子は、国策で推し進めている

スマート TV(SMART TV)を前面に押し出した

出展を行い、昨年と同様アクティブグラスによ

る 3D TV に力点を置いている日本とは異なっ

たブース設計をした。 2009年は LED TV、2010年は 3D TV、2010年はスマート TV と、韓国メーカーは攻勢をか

けてきた。 なんといっても米国の薄型テレビ市場にお

いて、サムスン電子と LG 電子で合わせて 40%以上のシェアを占め、北米市場では圧倒的強

みを発揮している。 携帯電話がインターネットおよびコンピューターと融合してスマートフォンとなったが、こ

の市場は世界的に米 Appleに先を越されてしまい、携帯電話メーカーでもある韓国の家電メー

カーは、後塵を拝さざるを得なかった。この苦い経験を教訓にしたのがスマート TV 戦略であ

る。 スマート TV とは、スマートフォンと同様、

OS 搭載し、インターネット接続機能を強化

し、さまざまな OTT-V サービスとともに、ア

プリケーションストアからさまざまなアプリ

をダウンロードして、PCを経由しないで、さ

まざまなコンテンツが楽しめるだけでなく、

それらを友人・知人とコミュニケーションを

したりしながら共有できるソーシャル機能も

装備したデジタルテレビのこと。インターネ

ットを経由することで、テレビ番組を好きな

タイミングで見られたり、ゲームしたり、音楽を聴いたり、ラジオを聴いたり、オンラインで

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動画配信、VOD、レンタルビデオなどのサービスを受けたり、ときには電子書籍も読める。ス

マート TV は、各ユーザーによってカスタマイズされ、ユーザーの志向・趣味を学習する機能

もあったりする。もちろん、ソニーが投入した Google TVもスマート TV に含められる。いわ

ばテレビがコンピューターに内蔵され、コンピューター化したテレビということになる。 サムスンおよび LG は、すべての世帯が購入する可能性が低い 3D TV をスマート TV の一つ

の機能のなかに含め、3D TV をスマート TV の差別化要素の一つにすることで、3D TV の唐突

感とユーザーとの温度差の回避を始めた。この点では、日本勢は市場のマーケティング感覚で

遅れをとっている。すでに、アクティブシャッター方式の 3D TV は、2010年ですでに市場が

拒否反応を示しているにもかかわらず、そのあたりの事情が生かされていない。 2011 International CESにおいて、サムスンは LED バックライトの 75インチの 3D 液晶テレビ

を発表したものの、インターネット接続とアプリの実行環境をうたったスマート TV として大

々的にプロモートし、アピールした。 サムスンは、2010年 3 月に最初のスマート TV を発売しており、すでに同サービスを 107カ国で提供し、独自のアプリストア「Samsung Apps(サムスン・アップス)」を設けて、国別に 250~300 を超すアプリが提供。このなかで、テレビ向けのアプリやウィジェット、ゲームなどの

コンテンツの配信を行っている。 Samsung Appsは、スマートフォン向けに提供してきたアプリストアと同じシステムをスマー

ト TV に拡張した。Appleの App Storeが対象領域を広げているのを追っている。 スマート TV は、スマートフォンやタブレット端末とも連携して、画面を共有したり、一度

購入した動画・ゲーム・音楽などのコンテンツについて、どのデバイスでも再生できるように

なっている。また、スマートフォンのタッチスクリーンをリモコン代わりに使うと、テレビリ

モコンでは操作しづらい機能もアイコンで簡単に操作できるようになっている。 サムスンは、Verizon の 4G LTE のプロモーションと連動して、LTE 対応スマートフォン

「Samsung 4G LTE Smartophone」を発表したが、これもスマート TV との連携ができるように

なっている。 ●韓国で「スマート TV フォーラム」が成立 韓国においては、政府主導で 2010年 9 月に、サムスン、LG のほか、KBS、EBS、KTSK ブ

ロードバンド、NHN など、放送局、通信会社、コンテンツ企業、関連研究所などが参加する「ス

マート TV フォーラム」を設立し、早期立ち上げと、研究・開発の推進、関連制度の改革・改

善を進めながら、世界進出に先手を打つ施策をとっている。 このなかで、3D TV との統合も視野に入れており、放送・通信・コンテンツ業界が連携して、

スマート TV 市場も成長させるため、ソフトウェア開発者の育成、クラウドコンピューティン

グの促進などを進める方針。 同フォーラムの会長を務めるのが、サムスン電子映像

ディスプレイ事業部の部門社長の尹富根(ユン・ブグン)

氏である。尹富根氏は、2011 International CESで会期 2日目(1月 6日)午後 4時半から Las Vegas Hilton Centerで基調講演の臨み、その多くの時間をスマートTV に割き、

「テレビは家電製品のリーダーであり、家庭に欠かせな

い存在である。このテレビを軸にして、生活を楽しく豊

かにする『ヒューマン・デジタリズム』を実現していく

べきだ」語り、スマート TV を中心に家庭内のデジタル

機器をネットワーク化していく方向性を示した。 ●LG はネットワークで連携できる白物家電「Smart Appliance」も

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スマート TV は、アプリやオンライン上のコンテンツや情報を視聴できるだけにとどまらず、

家庭内の電化製品とのネットワーク化も視野に入れている。 この分野に関連して、LG が「THINQ」という家電制御のための新技術を発表し、「Smart Appliance(スマートアプライアンス)」という言葉を使いながら、冷蔵庫、調理機器、洗濯機、

ロボット掃除機など、インターネット接続できる白物家電のネットワーク化コンセプトを示し

た。 どの白物家電も Wi-Fi や赤外線、Bluetoothなどの無線通信機能を備え、Wi-Fi 対応スマート

フォン使って白物家電の操作ができることもデモした。この家電のスマート化は、省エネ対策

やスマートグリッドとの連携も視野に入れている。 LG が出展したスマート TV の専用リモコンは、手の動きを認識できるため、空中で 3D マウ

スを使う感じで操作できる。このリモコンは、米ベンチャー企業の HillCrest Labsが開発したユ

ーザーインタフェース技術が導入されており、EMS (Micro-Electrical-Mechanical Systems)、DSP (Digital Signal Processing)、RF(Radio Frequency:高周波数電気信号)を組み合わせて実現してい

る。 日本企業のなかでは、最もスマート TV の分野にコミットしたのは、すでに Google TVを市

場投入しているソニーだった。2011 International CESでは、27機種のデジタルテレビ「BRAVIA」

の新製品を発表し、そのうち 22機種がインターネットに接続可能なモデルとなっている。すで

に、40種類のアプリケーションやサービスを提供可能となっている。 開幕前夜にソニーのブースで実施されたプレスブリーフィングで、CEO に就く Howard Stringer 氏は、「Television Redefined(テレビの再定義)」が必要とし、GoogleTV、スマート

TV に力を入れていることを強調した。

6.LG、東芝からも Android 3.0搭載タブレット 「G-SLATE」は HSPA+に対応し最初から 4G対応タブレット 米 Motorola Mobility が Android 3.0(開発コード:

Honeycomb)を搭載した「Droid XOOM」を発表した

ことで、タブレット OSの流れは Honeycombへ移っ

た。現時点で、Android 2.2を採用していても、Android 3.0/Honeycombへの対応を表明しているところがほ

とんど。 Honeycombを搭載したタブレットについては、LG電子も 8.9インチディスプレイの「G-SLATE(ジース

レート)」発表した。 G-Slateも Motorola Xoomと同様に Honeycombが搭載するため、インタフェースはほぼ同じ。最初から T-Mobile の HSPA+に対応し、最初から

4G対応タブレットとして販売する予定。T-Mobile USAから 2011年下半期にも米国で販売する予定。大きさとしては、iPadとサム

スン電子の GALAXY Tab(ギャラクシータブ)の中間。 東芝は、2 タイプのタブレット端末を発表した。1 タイプは

Android搭載モデルで、もう 1 タイプは Windows 7導入モデル。

回転する透明プラスティックケースに縦置きで入れられて展示

され、最終スペックは決まっていない。もちろん、来場者の関心

は Android搭載モデルで、Windows 7モデルにはほとんど人だか

りはしていなかった。

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Androidモデルでは、やはり Android 3.0を導入予定。ディスプレイは 10.1型ワイドディスプ

レイで、マルチタッチに対応。解像度は 1280×800ドット。東芝ならではの特徴として、独自

開発の「Adaptive Display Technology」によって、SD画質を HD 画質にアップコンバートでき

る。 NVIDIA Tegra 2を備え、Adobe Flash Player 10.1に対応しており、オンライン上の高解像度動

画再生ができるほか、HDMI 出力により外付けディスプレイでフル HD による再生ができる。

本体にはMini USBとSDメモリーカードリーダーも装着。バッテリー駆動時間を長くするため、

ディスプレイのバックライトを消灯したモードもサポートする電力管理をする。 ショウケースの下部にボディカラージャケットの見本が置かれてあったが、本体カラーが変

えられるジャケットを用意する予定。米国では 2011年春に出荷する予定。 また、Windows 7を採用したタブレット PCは、11.6型ワイド液晶ディスプレイで、解像度

は 1366×768ドット。マルチタッチに対応する。DLNA に対応して LAN 経由でホームサーバ

ーから配信されるコンテンツを利用できる。 7.NECは 2 画面型の Android端末を出展 最初は B2B2Cで販売し、2011年後半にコンシューマー市場に投入

NECは、2011 International CESにおいて、2 画面の折りた

たみ型の Android端末「LT-W」を発表した。LVCC サウスホー

ルに専用ブースを構え、この端末だけをプロモートした、

7 インチのタッチパネル式液晶ディスプレイが見開きで使

えるようになっており、実際の本のような形で電子書籍を読

めることを意識したという。

Android 2.1 を搭載し、Android Market が使えるものの、

Android 2.1はデュアル画面をサポートしていないため、片面

だけの表示になる。2 画面型のコンテンツが開発できるよう

NECとして SDK をリリースすることも検討している。

まずは B2B2C で企業・団体・公共機関向けに発売し、今

週にはコンシューマー向けに販売をしたい意向。

専用の手書きの文字認識に最適化しているため、画面の拡大・縮小のマルチタッチには対応

していない。

用途として、たとえば左側の画面に授業の様子を撮影した動画を映し、右側の画面にその授

業で使う教科書を電子書籍として表示するなど教育現場での利用シーンなどを想定している。

8.米 Hillcrest Labs/ソニー、LG、任天堂などがライセンシー 次世代 TV、ゲーム機向けモーションコントロール技術を開発 2011 International CESにおいて、米 HillCrest Labs(ヒルクレスト

・ラボラトリーズ) は、ラスベガス・コンベンションセンター

(LVCC)に隣接するルネッサンス・ホテル(Renaissance Las Vegas Hotel)のスイートに出展し、次世代 TV、DVR、ゲーム機など向け

のポインターデバイス用のモーションコントロール技術

「Freespace」および画面ナビゲーションシステム開発用プラットフ

ォーム「HoME」についてアピールした。 Freespaceは、手の動きを認識して、それを動作に換えるユーザ

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ーインタフェース技術。MEMS (Micro-Electrical-Mechanical Systems)」と DSP (Digital Signal Processing)、RF(Radio Frequency:高周波数電気信号)技術を組み合わせて、ポインティングデ

バイスのモーションコントロールをする。空中で操作する 3D マウスといった感じ。 技術的には、Wii コントローラーに似ていて、コント

ローラーとなるデバイスの動ききを 5 つの側面でとら

え、人間の手による動きを手ぶれや遅延なく正確にスク

リーンのカーソルに反映させることができる。 すでにソニーなどがライセンシーになっており、今

回、LG 電子、任天堂がライセンシーになったことを新

たに明かした。今後、ゲーム、スマート TV、Connected TV などのインタフェース技術として、一般化しようと

している。 Freespace技術をマウスやゲームコントローラなどの

手に持つ入力機器に組み込むことで、テレビ、PC、ゲー

ム機、STB(Set-top box) セット・トップ・ボックス)など、さまざまなデジタルメディア・デバ

イスに適用できる。 ユーザーがコントローラーを空中で動かしてポインティングし、クリックするだけでアプリ

ケーションを操作できる。 従来の任天堂の Wii コントローラーは手ぶれ・振動を防止する機能はないが、Freespaceは手

ぶれ・振動を防止することができ、画面上のポインターがぶれない。この技術を任天堂は評価

した。 HoME は、グラフィカルで直感的操作を可能にするユーザーインタフェースを作成するため

の開発用プラットフォーム。この技術は、テレビ画面をユーザーインタフェースとして、ポイ

ンターを利用する包括基礎技術で、同社が特許を取得している。任天堂の Wii もこの特許を使

っている。 これにより、多くのコンテンツのメタデータ管理、テンプレート化、キャッシング技術と圧

縮技術を活用することが可能となり、現状のリソースに制限のあるシンクライアント機器上で

も、快適なユーザー体験を実現できる。HoME 技術を利用することで、プラットフォーム・ソ

フトウェアの開発に投資することなく、その企業独自の GUI(Graphical User Interface)を作成す

ることができる。 Hillcrest Labsの営業担当副社長の Chad Lucien氏は、次のように説明する。 「Freespace技術を使えば、テレビやケーブルテレビのリモコン、ゲームコントローラを直感

で操作できるようにすることができる。画質が向上し、画面サイズが大型化しているディスプ

レイの操作性が時代に合わせてものになれば、さらに商品力を高めることができる。2010年の

1 年間でだいぶ低価格化するための技術も開発した。2011年は、さまざまな業界企業と折衝し

て、ライセンシーを一気に増やしたい」 Hillcrest Labs は、2001年に Dan Simpkins氏により設立され、米国メリーランド州ロックビ

ル市に本社がある。現在、従業員数は約 60人。米国および世界で、140件を超える特許を出願

している、その多くが認可されつつある。主な投資企業として、NEA、Alliance Bernstein、Columbia Capital、Grotech Capitalなどがある。 1995年からインターネット関連会社として設立したが、2000年代半ばから本格的に現在の事

業に焦点を絞るようになった。 9.2010年の家電市場は対前年比 13%増の 8730億ドル/米 CEA 2011年は同 10%増の 9640億ドルと堅調、スマートフォンが牽引

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2011 International CESに先立って、主催者である全米家電協会(CEA:Consumer Electronics Association)は 1 月 4 日に、恒例となった 2010年の世界の家電(民生用電子機器)市場の推計と

2011年の同市場の予測を発表した。 それによると、2010年は対前年比 13%増の 8730億ドル。2010年 1 月の予測では対前年比で

横ばいと発表していたが、テレビや携帯電話などの販売が新興国を中心に伸びたことや、欧米

でスマートフォンの販売が増大したことが好影響した。ただし、日本では伸びはなかった。 2011年の世界の家電市場については、対前年 10%増の 9640億ドルとなり、1 兆ドルに迫る

と予測している。これは、中国、ブラジルをはじめとする新興国市場で薄型テレビ需要が引き

続き拡大するほか、欧米においてもスマートフォンやタブレット端末の販売が好調に推移する

と見ている。 地域別では 2010年に中国での売り上げが 24%増と高い成長し、全家電売上のうち 13%を占

めた。2011年においても、引き続き中国での売り上げは 15%増の伸びとなの、世界市場全体で

も 15%を占めるとしている。 2011年は、日本と中国を除くアジアとともに、ブラジルなど南米の新興国で好調が続くと見

ている。北米、西欧、日本など先進国市場においても、スマートフォンなどが販売伸長に寄与

すると予測している。 家電市場においては、テレビ、PC、携帯電話機/スマートフォンの「three screens(3 種類のス

クリーン)」が引き続き高い割合を占という。 10.ソニー/3D 立体視対応製品のオンパレード

裸眼 3D TV も 3 方式を出展、普及型「BRAVIA」も 3D 対応

日本企業のブースで、最も見どころがあり、多

くの来場者を集めたのは、LVCC のセントラルホ

ール(中央館)の奥にブースに設営したソニーだっ

た。この数年間、ほぼ同じ位置に構えているが、

今年はいつもより巨大だった。

ソニーは、3D TV に力を入れた設営を行ったが、

2011 International CESのなかでは、最も自然な裸

眼立体視ができる 3D TV を参考出展した。ブース

設計は、パソナニックと大きく異なるものの、3Dディスプレイに力が入っていたことは共通してい

る。

メインの出展ではないが、参考出展として大きな関心を集めた裸眼 3D ディスプレイについ

ては、 56型 4K×2K の液晶テレビ、46型 1080p液晶テレビ、24.5型有機 EL テレビの 3 モデ

ルを展示した。

このほか、10.1型裸眼 3D ディスプレイを備えた携帯型 Blu-ray 3Dプレイヤーの試作機も出

品した。

テレビタイプのものは、3 モデルとも異なる方式で裸眼 3D 立体視を実現しており、研究・開

発段階で検証中ということ。方式については明言を避けていた。

24.5型は 1920×1080のフル HD 有機 EL パネルを使用している。パララックスバリア方式(視

差バリア方式)と推定。というのも、3D 表示時の解像度が低下していたため。

結像位置は、左右の画像を同一面に重ねて表示することになる。バリア開口部を通過する視

線角度が両眼で異なる、この視差による視線分離現象を利用して立体感を出す。この方式は遮

光バリアによって画像が暗くなり、バックライトを必要としたりする。この暗くなる難点を、

いわゆるかまぼこ形レンズで解消した物がレンチキュラーレンズ(lenticular lens)方式。

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46V 型は、2K パネルを採用し、3D 表示を HD でできる。レンチキュラー方式が採用されて

いると推定。

レンチキュラーレンズと呼ばれる板状の

レンズや視差バリアと呼ばれる縦縞のフィ

ルター(アパーチャーグリル)をディスプ

レイに重ねることによって, 一つの画面で

右目と左目に異なる映像を見せるようする

方式。画面上に左目用の映像と右目用の映

像を交互に表示し、レンチキュラーレンズ

や視差バリアを通して見ることによって、 左目には左目用の画像だけが、 右目には右

目用の画像だけが見えるようになる。 56V 型は、4K2K(3840×2160ピクセル)パネルを使用し、HD 画質で 3D 表示をした。3D 表

示時に 4K2K から HD(1280×720ピクセル)と約 9 分の 1 に解像度が落ちる。

携帯型 3D BD プレイヤーのディスプレイの解像度は 1366×768で、この裸眼 3D の方式は不

明。少しぎこちなく、全体的に暗い感じがした。

3D 関連では、両眼部分に有機 EL ディスプレイを使った 3D ヘッドマウントディスプレイ

(HMD)のプロトタイプを出展した。

映画に出てきそうな未来感覚のデザインをしている。

左眼用と右眼用に各独立した有機 EL パネルを使用し

て、交互に映像を映し出して立体視をする。応答速度

の速い有機 EL パネルのメリットを生かし、ほぼクロ

ストークフリーの 3D 映像が再現されていた。

各有機 EL パネルの解像度は 1280×720(720p)、RGBは 24ビット。HMD のテンプルにあたるところにヘッ

ドホンが装着され、バーチャル 5.1chサラウンドの音

響に対応する。カラーはホワイトでその上を青色 LEDのラインが光り、近未来感覚を醸し出す。プロトタイプはその重量のため、視聴時に両手で支

えなければならず、製品化時には軽量化・薄型化が求められることは必須。

液晶テレビ「BRAVIA」の北米向けの新製品として、華美な装飾を極力排し、素材の持つ美

しさを際立たせた「モノリシックデザイン」を採用した 22V型から 60V 型まで 27機種を発表。

このうち、16機種がフレームシーケンシャル方式の 3D 対応モデルとなった。2010年は上位モ

デルだけが 3D 対応していたが、2011年は普

及機にまで 3D 機能を拡大した。

27 機種のうち 22 機種が無線 LAN(IEEE802.11n)または有線 LAN を内蔵し、

インターネット接続を装備。ソニーのビデオ

・音楽配信の「Qriocity」のほか、Netflix、Pandora、Hulu Plus、YouTubeといった OTT-Vに対応する。

別売の Web カメラ「CMU-BR100」を接続

することで、Skype により、テレビ画面を使

ったビデオチャットができる。テレビを視聴

しながらの音声通話も可能。併せて、Gracenoteの楽曲データベースを使って、テレビ番組や

ビデオを視聴しているときに流れた音楽のアーティストやアルバム、曲情報を表示することも

Page 22: コミュニティビジネスレポート1月号 by コミュニティデザイン研究所

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できる。

新製品の BRAVIA では、「X-Reality PRO」もしくは「X-Reality」と呼ばれる画像処理エンジ

ンが採用され、ノイズの低減、色再現性や精細感の向上が図られ、画質がいちだんと上がった。

3D TV においても、画質は明らかに向上した。アクティブシャッター・グラスの偏光板を外

して改良したほか、サイドエッジ方式の LED バックライトで、バックライトの明るさを場所ご

とに変えらるローカル・ディミング(局所減光)を取り入れるなどして、クロストークが少な

くし、ダイナミックレンジが広くした。

ソニーは、再生・視聴の 3D 対応だけでなく、3D 撮影についても、ビデオカメラ「ハンディ

カム」、モバイルビデオカメラ「bloggie」を発表し、2011年 2 月から順次、米国で発売するこ

とを発表した。

ハンディカム「HDR-TD10」は、レンズ、イメージセンサー、画像処理エンジンを 2 つずつ

搭載し、右目・左目用各画像ともフルハイビジョン(解像度 1920×1080)で撮影できる。背面に

は、裸眼で立体視できる 3D タッチパネルディスプレイも備えている。ハンディカムには、世

界で初めてプロジェクターを内蔵し、最大 60 インチの大きさに画面を投影できるモデル

(HDR-PJ50V, HDR-PJ40V, HDR-PJ20)もラインアップした。

bloggieは、YouTubeやソーシャルメディアに気軽に動画をアップロードするのに最適なモデ

ル。3D 撮影に対応した「Bloggie 3D」では、やはりレンズ、イメージセンサー、画像処理エン

ジンが 2 つずつ装備して、立体撮影に対応している。

デジタルカメラ「サイバーショット」シリーズに

も 3D 撮影機能が搭載されている。3D 撮影に対応

し た の は 、 「 DSC-TX100V」 「 DSC-TX10」「DSC-HX7V」「DSC-WX10」「DSC-WX9」の 5機種。ただし、動画ではなく 3D 静止画の撮影のみ

で、「3D still image」「3D Sweep Panorama」「Sweep Multi Angle」の 3 種類のモードを選択することがで

きる。

このうち、3D still imageは、1 回の撮影でフォー

カス位置が異なる両眼の画像を作り、D 画像を生

成。1 回の撮影で 3D 画像が得られるのが特徴。

3D Sweep Panoramaは、高速連写と高度な合成機

能により、シャッターボタンを押しながらカメラを

横方向に振るだけで両眼の画像を記録。それらを合成して 3D パノラマを生成する。

Sweep Multi Angleは、3D Sweep Panoramaと同様にシャッターボタンを押しながらカメラを

横に振って撮影。このとき、フォーカス位置を変えながら 15コマ撮影して合成することで 3D化する。このモードでは、実際に異なるフォーカスの画像を撮影するため、再生時に画像を連

続表示することで、一般の液晶ディスプレイでも 3D のように見えるのが特徴。

ソニー・ブースのメインステージには、CEATEC JAPAN 2010にも用いられた巨大な 3D LEDディスプレイウェールが設置され、常時 3D で迫力あるプロモーション映像を映し出した。

このディスプレイは、2010年 6 月に開催されたワールドカップ日本対オランダ戦において、

埼玉スーパーアリーナで実施されたパブリックビューイングに使用されたものとほぼ同様のも

の。パブリックビューイングでは、幅19.2m×高さ10.8mだったが、CEATEC 2010からは幅21.7m×高さ 4.8mとなり、今回も同じ大きさだった。

この巨大なディスプレイウォールは、28 インチ型 3D LED ディスプレイモジュールを縦 10枚×横 34枚重ね合わせて構築。LED の配置間隔(ピッチ)は 4.44mmと狭いため、違和感なく

3D 映像を楽しむことができる。一見、巨大なスクリーンにプロジェクターで映し出しているよ

うにも見える。

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3D 映像の収録方式は、右目用、左目用の映像信号を上下に 1 ラインおきに交互に配置するラ

インバイライン方式を採用。1 ラインごとに偏光フィルムの特性が異なり、専用の円偏光メガ

ネをかける必要がある。円偏光メガネは、アクティブシャッター内蔵のメガネよりも低価格で、

多人数での視聴に見合っている。この方式は、PCから偏光方式の 3D LCD への映像出力として

広く使われている。

3D LED ディスプレイモジュールの輝度は 2000cd/m2と低めのため、室内・屋内用途向けが

適している。コントラスト比は 1000対 1、視野角は上下 90度、左右 120度。1 モジュール当た

りの画素数は 144×108で、3D を表示する場合は上下方向に 2 分の 1 となるため、144×54と

なる。

各モジュールのサイズ 640mm×480mm×148mm。重量は 19kg。200V の 3 相交流を使い、1モジュール当たりの消費電流は約 0.8A。

2011 International CESの会場では、係員が Real Dの専用メガネをふんだんに配布し、持ち帰

ることができた。

この巨大ディスプレイに、ステージでのプレゼンテーションが映し出されたり、

PlayStation3(PS3)向けの 3D ゲームをプレイしたりした。

11.米 Yahoo!/「Yahoo! Connected TV」の次のバージョンを発表 放送番組と連携できる情報・広告を表示するアプリを提供へ

米 Yahoo!は、2011 International CESにおいて、ブ

ロードバンド・インターネットに接続してテレビを

双方向化するインターネット TV(Connected TV)のプラットフォーム「Yahoo! Connected TV」の新たな

バージョンを発表した。 Yahoo! Connected TVは、2008年 8 月に、Intel とのパートナーシップを交わし、「Yahoo! Widget Channel」として発表され、2010年の International CESでは、TV Widgetが作成する「Widget Development Kit」(WDK)を提供。Web コンテンツとアプリケー

ションを統合し、テレビの双方向性を実現するアに

する Widgetを多くの開発者が登録するよう呼びかけた。ただ、あまり芳しい成果は上がらなっ

た。 今回の Yahoo! Connected TVでは、放送コン

テンツと連携できるソフトウエア・アプリケー

ション(アプリ)を提供し、放送と連携する方針

を全面的に押し出した。 米国の ABC、CBS、HSN、Showtimeの各放

送局は、Yahoo! Connected TVの新バージョンを

採用する試験アプリを 2011 年前半にリリース

する予定。 また、米国の Ford、Mattel、Microsoftの 3 社

は、Yahoo!と共同で、Yahoo! Connected TV向け

に見ている番組に関連する広告を表示するア

プリをリリースする。 LVCC のサウスホール(南館)に、Yahoo!は出展し、Yahoo! Connected TVの新機能につて説明

・デモした。新サービスでは、 米 Yahoo!は、2011 International CESにおいて、ブロードバン

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ド・インターネットに接続してテレビを双方向化するインターネット TV(Connected TV)のプラ

ットフォーム「Yahoo! Connected TV」の新たなバージョンを発表した。 テレビショッピング

の番組であれば、アプリを使って、そこで紹介した製品をインターネットで直接購入できるよ

うになる。放送の番組・コンテンツに関係する情報は、テレビ上だけでなく、スマートフォン

やタブレット端末にも表示させることかでる。 Yahoo!ブースでは、台湾 D-Link が製造した Connected TVの新バージョンに対応した STB(セット・トップ・ボックス)の試作機が出展されていた。このほか、中国 Haier Electronics、米

Broadcom、台湾 MediaTek、ソニー、東芝から発売されるテレビや AV 機器、半導体製品などが Yahoo! Connected TVの新バージョンに対応する予定。 12.仏 Vision Objects/高度な手書き認識技術を出展・デモ LG、Audi、Nokia、ワコム、日立 Anoto(アノト)、Mimio などが採用

仏ナントに本拠を置く Vision Objects(Stefan Knerr創設者兼 CEO=写真=)は 2011 International CESでLVCC のサウスホール(南館)のアッパーレベル(上階)に出展し、手書き認識技術「MyScript」を出展・

デモした。 MyScriptは、世界 80カ国以上の異なる言語で利

用可能で、すでに日本語もサポートしており、ワコ

ム、ペンテル、MV Pen、日立製作所、オーダーメ

ード創薬などが採用している。 単独文字、手書き・筆記体文書を認識することが

でき、タブレット/スレート端末、スマートフォン

のほか、デジタルペンやタッチスクリーンが組み込まれている PC、デジタルサイネージ、携帯

電話上で使用できる。 これらのデバイス上において、一般的なテキスト入力のほか、メモ取りや文献処理アプリケ

ーションのソフト開発にも用いられる。 グラフィック・タブレット、インタラクティブ・ホワイトボード(電子黒板)、ゲーム機、デ

ジタルカメラ、電子辞書、カーナビなどへのテキスト入力の際にも使用できる。MyScriptは、

個人別に煩わしい設定をする必要がなく、高精度な認識技術をすぐ応用でき、使えば使うほど

認識率が上がる学習機能も備えている。 専門分野向けには、保健、医療、ロジスティクス、教育など特定の産業にカスタマイズでき

る用語集もオプションで提供している。 実際に、デモ機を利用して、英語、日本語で少し乱雑に書いて

試して見ても、認識率は高く、判断に迷うときは候補が表示され

るため、それを選ぶだけでいい。 手書きの書体のクセやさまざまな書き方、バリエーションに対

応するために、各言語について、何千人分もの手書きサンプルを

収集し、これをもとに手書き認識エンジンの調整をしている。手

書き認識のアプリケーションに対してもっとも効率よく認識がで

きるように、「MyScript Lingo」および「MyScript Letra」の 2 種類の言語リソースを提供している。 MyScript Lingoは、30 言語を集めた言語パック。自然な手書き

と続け書きの認識を可能にしている。フリーテキストを認識する

ために、言語モデルや DataFormatsと統合でき、フォーム処理やメ

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モなど、テキストの入力を必要とするあらゆるアプリケーションに対応できるという。 MyScript Letraは、80 以上の言語リソースを提供し、孤立文字、ブロック体の認識を可能に

する。特に埋め込みデバイスに適している。 各言語パックには、ユニークなリソースセットが含まれおり、ソフトウェア開発キットであ

る MyScript Builderとともに利用できる。 Vision Objects 社は、1998年に仏ナント市に設立。社員数は 40人のベンチャー企業。だが、

この技術のユーザー数は 300万人を超えている。国外では、LG、Nokia、Anoto、PaperIQ、LeapFrog、Mimio、Prometheanなどがライセンシーになっている。最近、Audi が採用を決めたほか、国内

企業のさらなる採用も近日に発表されるという。 MyScriptの認識技術は、日本企業の厳しいベンチマーク・テストにおいて、高い認識率を持

っていることが確認されている。人工知能に基づいた技術で、実際の文章例を使用し学習でき

る。 日本語のカタカナ/ひらがな/漢字/ローマ字だけでなく、筆記の癖・大きさ・形や句読点など

を認識できる。左から右への動き、書き順、時間軸および空間的な文字分割などのダイナミッ

クな情報を取り込んで分析できる。 現在、MyScriptの製品群として、下記の 4 種類がリリースされている。 (1) PCアプリケーション用ソフトウェア開発キット (2) Windows CE、Linux、Android、Symbian上で走る携帯電話やゲーム機などのデバイス向け

のタッチスクリーンやスタイラス入力ソフトウェア開発キット。組込みオペレーティングシス

テムにも移植可能。 (3)PC用書式例の作成・処理ツール (4) 一般市販されている PC用デジタルペンやタブレットなどをベースに、利用を可能にする

PC用パッケージソフト *Vision Objects CP80104 2, Allee Vieux Tilleuls 44301 - Nantes Cedex 3 T: +33 (0)2 28 01 49 50 F: +33 (0)2 40 25 89 20 13.独 WeTab/インテルブースでタブレット端末を出展

モバイル向けオープンプラットフォーム「MeeGo」ベースのタブレット

2011 International CESにおいて、米 Intel のブー

スには、サムスン電子製「Gloria」や ViewSonic製「ViewPad」をはじめ各種タブレット端末が展

示・デモされたが、独 WeTab製の MeeGoベース

のタブレットとして、その名も「WeTab」が展示

された。

MeeGoは、フィンランド Nokiaと米 Intel が中

心となり、Linux Foundationでプロジェクトが進

められてきた、Linux ベースのモバイル向けオー

プンプラットフォーム。

具体的には、2008年からインテルが主導してきた組込端末向け Linux である Moblin と、ノ

キアがスマートフォンのプラットフォームとして開発したMameoという 2社の Linuxを統合し

て、2010年 5 月に Ver1.0をリリースされた。

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MeeGo は、Moblin をベースとするが、アプリケーション開発用のライブラリーは、Mameoが採用していたノキアのオープンソース GUI ライブラリーである Qt が標準になる。

MeeGoのアプリケーションは、インテルアーキテクチャーの製品だけでなく、ARM アーキ

テクチャーによるスマートフォンもサポートされる予定。ターゲットにしているデバイスは、

ネットブック、ネット TV、スマートフォン、車載情報端末、タブレット端末、メディアフォ

ン(IP 電話端末)などである。インタラクティブ操作ができ、インターネットに接続され、高度

なマルチメディアに対応した汎用や特定の用途デバイスに最適な OSである。

タブレットとしての WeTabは、2010年 9 月に発表されているが、2011 International CESにお

いて、実機が世界的に広くお披露目された。11.6インチの 1366×768画素のマルチタッチ対応

ディスプレイを備え、インテルの Atomプロセッサーを搭載する。

短距離無線規格の Bluetooth 2.1 + EDR(Enhanced Data Rate)と無線 LAN 規格の IEEE 802.11b/g/nに対応。オプションで 3G携帯電話や GPSにも対応できる。Adobe Flashを基本サポ

ートしている。

インテルは、2011年に MeeGoベースのネットブックやタブレット端末(PC)が増えることを

期待している。 14.東芝/裸眼立体視が可能な 65V 型グラスレス 3D レグザを初出展 2011年度に日米で 40型以上投入へ

東芝も 2011 International CESにおいて意欲的

なブース設計をした。昨年は、CELL を使った

超解像技術や 2D-3D 変換、4K パネルへの超解

像処理、LED バックライト技術など、CELL TV一色といってもいいデモンストレーションを

したが、今年は裸眼で立体 3D 映像が視聴でき

る「グラスレス 3D レグザ」を前面に押し出し

た。裸眼立体視できる 3D TV は、東芝だけでな

く、ソニー、LG 電子も出展した。 東芝(東芝ビジュアルプロダクツ)は、2011年

度に日米で 40型以上の「グラスレス 3D レグザ」を投入すると発表し、いち早い製品化意思を

示し、ブースでは 56V 型、65V 型の製品を参考出品した。12V 型、20V 型については、2010年末に国内で発売されている。 2010年 10月に日本で開催された CEATEC JAPAN 2010において、56V 型の試作機と裸眼立

体 3D 対応ノート PCが参考出品されたが、今回初となったのは 65V 型グラスレス 3D レグザ。 グラスレス 3D レグザは、新映像エンジン「CEVO ENGINE(シーボ・エンジン)」を搭載し、

レンチキュラーレンズを使うインテグラルイメージング方式で裸眼 3D を実現した。 3D の視差数/解像度も公開されていないが、レンチキュラーの指向性(屈折)を電気的にコント

ロールし、2D 表示時にも解像度を落とさずに、そのパネルの精細さを出せるようにしており、

2D モードでも 3860×2160ドットの 4K/2K の表示ができるのが特徴。この措置をしなければ、

約 9 分の 1 の HD 解像度になる。 CEVO エンジンで、2D モードの時に 4K/2K 超解像を適用して高画質化を図り、超解像方式

も複数フレームを参照する新方式を採用している。現時点において、4K/2K の放送番組やパッ

ケージソフトがないため、フル HD 映像を 4K2K にアップコンバートして表示することになる。 コンシューマー市場にとどまらず、デジタルサイネージ用途などの市場も積極的に開拓す

る。価格は未定。

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東芝は、このほか裸眼立体視が可能な「グラスレス 3D ノート PC」、Androidおよび Windowsの搭載モデルのタブレット PC とともに、各種アプリケーションが利用できるネット TV につ

いても出展した。

ネット TV については、2011年に Google TVを開発・市場投入する意思は示していても、こ

れまでのインターネット TV の延長線上のもので、Yahoo! Connected TVとほぼ同等のもの。

実際、PC のデスクトップ上で動作する小さなソフトウェアツールである Yahoo! Widgetsのほか、YouTubeを大画面表示してマウスなしで操作ができる You Tube Leanback(リーンバッ

ク)とともに、P2P技術を使ったネット電話の Skypeのデモを実施した。