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TROUBLE SPOT LOW POINT HIGH POINT Adaptive Path エクスペリエンス・ マッピング・ガイド

Adaptive Path's Guide To Experience Mapping (Japanese Edition)

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Japanese translation of "Experience Mapping Guide" under license from Adaptive Path. Original available here: http://mappingexperiences.com/

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TROUBLE SPOT

LOW POINT

HIGH POINT

Adaptive Path の

エクスペリエンス・マッピング・ガイド

Page 2: Adaptive Path's Guide To Experience Mapping (Japanese Edition)

First Edition Published August 2013

Adaptive PathPier One, Bay 2San Francisco, CA 94111 adaptivepath.com

Written and designed in San Francisco and Austin

We love our ideas to spread. This license allows you to remix, tweak, and build upon our work non-commercially. When doing so, you must acknowledge Adaptive Path. When in doubt, just ask us. We wonʼt bite.

For more information on what you can do with the content and ideas contained in this guide, go here: http://creativecommons.org/licenses/by-nc/3.0/ or send a letter to Creative Commons, 444 Castro Street, Suite 900, Mountain View, California, 94041, USA.

Translated to JapaneseAugust 2013 by Mario K. Sakata

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ブランドン・シャウアー CEO

未来をマッピングする

これまでの企業の多くは、1年に何億円もの資金を顧客獲得に費やしてきました。新しくお店を出したり、ウェブサイトを開いたり、コールセンターで何千もの質問に答えたり、広告を様々なチャネルで販売・購入したり、トレンディーなモバイル向けアプリを開発したり、新規サービスを開発したり。随分短い間に多くの企業はカスタマー・エクスペリエンスの差別化と称して無数ものタッチポイントを築き上げてきました。

もちろん、顧客はそのような背景にある努力などには無関心です。彼らが関心があるのは唯一つ。様々なコンテキストにおいても、チャネルを超えてでもニーズを満たしてくれるかどうかです。

上手くいけば、体験のマッピングは顧客とあなたのプロダクトやサービスとの接点における感情的なフィードバックを可能にし、カスタマー・エクスペリエンス全体を俯瞰することができます。このマッピングを進めることでこれまで明かされて来なかった瞬間にスポットをあてることで、火が灯されたように全体の体験を司る周囲の価値ある瞬間に目が行くようになります。私たちはこのエクスペリエンス・マッピングを普段の業務に取り入れています。従来のメソッドと異なるのはより多くのインサイトを得ることができると共に、共に仕事をしているパートナーとより正確かつ現実的な未来をつくりだすことができます。

我々 Adaptive Path のミッションは、優れたヒューマン・エクスペリエンスの実現に向けてクライアントを導くことです。このガイドは彼らと同じく日々挑戦しづつける読者のみなさんのためにつくりました。

このエクスペリエンス・マップを通じたコラボレーションを得て発見したことをぜひ我々にも教えてください!

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体験の質によってプロダクトやサービスを選ぶ顧客が増えてきています。これらの体験は複数ものチャネルを横断すると破綻してしまうことが多いと言われています。結果、企業は自身の提供価値を全体を俯瞰した人間中心的観点から評価する必要があります。

技術の著しい発展と目まぐるしく変化する顧客の期待値によって、目的やニーズを満たすために施されるサポート要員としてのチャネルとタッチポイントの相関性がより強調されるようになりました。優れた実績をあげている企業は既にこの相関の重要性に気がついています。幾つか事例をご紹介します:

→ 小売店は顧客の新しいビヘイビアに常に細心の注意を払って  います。彼らは日々、店内におけるエクスペリエンスがどう  あるべきかを常に考えながら創意工夫を繰り返しています。

エクスペリエンス・マッピングの価値

エクスペリエンス・マップは複雑化するプロダクトやサービス、またはエコシステムにおける顧客とのインタラクションを捉え、可視化するための戦略的なツールです。エクスペリエンス・マップの中核価値はゴールの達成に向けてA地点からB地点に進むに連れてにニーズが満たされる顧客の行動をモデル化した、カスタマー・ジャーニー・モデルです。

マッピングするというそのものの作業は、チームまたはステークホルダー間の集合の知恵とコンセンサスを引き出すことができ、結果としてより良いカスタマー・エクスペリエンスの実現をサポートしてくれます。つまり、エクスペリエンス・マッピングは組織全体を巻き込み、インパクトの与えることができるもう1つの旅(ジャーニー)でもあります。

→ 医療関係者はコストを最小限に抑えつつも品質を維持し、患  者さんを中心とした継続的なケアの新しい提供方法を常に考  えています。

→ 金融機関は規定が定まらない状況下で自身のブランドとプロ  ダクトの差別化要因として新しいクロス・チャネル提供を日  々試みています。

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新しいチャレンジには新しいアプローチが必要です。多くの企業はこれまでの内容の重要性は理解していると思いますが、同時に戸惑っていることと思います。通常のプロジェクトは特定のタッチポイント、技術、そして機能にフォーカスをあてているため、全体のカスタマー・エクスペリエンスを理解していない場合が多く、かつタッチポイントやプロダクトごとにオーナーが存在するため、カスタマージャーニーを描くことが正解ではないと感じています。この機能別ないしはプロダクト別の縦割りな組織構造は個人間のコラボレーションを妨げる大きな要因です。加えて、それぞれがカスタマー・エクスペリエンスにどのように結びついているのかさえわかりません。

カスタマー・エクスペリエンスを十分に理解しなければ顧客のニーズを満たすことに失敗してしまいます。より的確な意思決定及び投資には顧客ニーズやそれに関連するビヘイビア、そして背景にあるモチベーションを十分に理解している必要があります。エクスペリエンス・マッピングは正にこの複雑化する問題を直接解決するために用いることができます。

カスタマー・エクスペリエンスの周りに共通するフレームを築きあげる。

チャネル間のニーズや顧客の行動に対する知恵を組織的に展開する。

アイディエーションやイノベーションの可能性が見られる箇所を特定する。

カギとなる顧客からのインサイトを誰もが使いやすくかつ理解しやすい形式にする。

顧客中心思考における組織の中長期的な成長を可能にする。

バリュー・プロポジション(提供価値)

用語の定義

より詳しく: http://adaptivepath.com/ideas/there-is-no-spoon-the-construct-of-channels

タッチポイント:ヒトと組織内のアーティファクトとの接点を表します。これらのインタラクションは様々な時間軸、コンテキスト、モチベーションによって発生します。

チャネル:顧客やユーザとのインタラクションが発生している手段のことを言います。紙、ウェブ、モバイル、音声電話、小売店など顧客との接点を構築するすべての機関的要素を表します。すなわち、チャネルはタッチポイントが発生しうる可能性を示してくれます。

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アクティビティエクスペリエンス・マッピングはカスタマー・エクスペリエンスを統合かつ可視化するために繰り返し行われるコレボレーションを可能にするプロセスです。エクスペリエンス・マッピングのアクティビティは結果としてエクスペリエンス・マップというアーティファクトに反映されます。

アーティファクトエクスペリエンス・マップはその表現の豊かさと深さによってカギとなる顧客とのインサイトを基に完全な利用体験を表現しています。また、次のアクションにつなげるための有益なツールでもあります。

事実を明かす

チャネルやタッチポイントを横断して顧客のビヘイビアやインタラクションを理解する。

コースを描く ストーリーを話す

チーム内の共感や理解を促すストーリーを作り上げ、可視化する。

マップを使う

エクスペリエンス・マッピングクロスチャネル・カスタマー・ジャーニーを実現する4つのステップ

それぞれのインタラクションでカギとなる顧客からのインサイトを他者とコラボレーションしながら調和させ、ジャーニーモデルを形成する。

マップ(地図)に従い、新しいアイディアやより良いカスタマー・エクスペリエンスを実現するための種を見つける。

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STEP 01事実を明かす

先ず、マッピングしたいエクスペリエンスに関連する既存のデータを組織横断で抽出することを推奨します。そこから、その他必要なリサーチや明確にしなければならない様々なクエスチョンに必然的に近づいていきます。

新たにリサーチをするとなと追加の時間や予算が必要です。ただ、エクスペリエンス・マッピングのプロセスにおいては関係者全員がアーティファクトを先に共有していなければ、以降のリサーチ含め、次のステップへと戦略的にコトを進めることが出来ません。

エクスペリエンス・マップの価値はそこから得られるインサイトの質そのものに直結しています。

あなたはストーリーを語りたいかもしれない、でもそれは事実でなければならない。

顧客がどのように、そしてなぜ様々なチャネルやタッチポイント、プロダクトやサービスとインタラクションしているのかをピースを集めるかのようにひとつの一枚目を書くことがエクスペリエンス・マッピングの始まりです。大げさでも結構です。顧客とコミュニケーションする機会を設け、単一のデータ・ソースに頼らず、かつ何度も何度も繰り返して行きましょう。

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苦難から発見する

リサーチやディスカバリー(発見)に主眼を置いたプロセスは、エクスペリエンス・マップが顧客のストーリー全体を確実に捉えるために必要な、重要なデザイン活動です。もちろん、リサーチを通じて得られた発見すべてがエクスペリエンス・マップに反映されるわけではありませんが、このステージにおけるリサーチの重要性は、カスタマー・エクスペリエンスとそれを取り巻くコンテキストを十分に理解することにあります。

理解を得るためにはなるべくバラエイティに富んだデータ・ソースに目を通すようにしましょう。早期の、かつ発見が得られるステージにおいてはコールセンターのログや顧客満足度調査の結果、既存のペルソナなどが良い情報源になると思います。あなたが実施するリサーチは、ひとつづつ解明されていく事実に新たな息を吹き込み、深さのあるインサイトを集め続けなければなりません。顧客とのコミュニケーションも、必須です。

例えエキスパートが実施した調査であろうと、影響力のある調査結果であろうと、絶対に、ひとつのデータ・ソースに頼らないようにしてください。それぞれの点をつなげて全体像を把握すつつ、知識上のギャップがないか再確認する癖をつけてください。第三者にあなたがこれから創るエクスペリエンス・マップが語るストーリーにのめりこんでもらうためには、描かれているストーリーそのものが事実であるということと実際のデータ・ソースが基になっていることを理解していただく必要があります。

リサーチを進めている最中に、収集したデータがはじめから整理されていることは期待しないてください。リサーチやディスカバリーはあくまでもエクスペリエンス・マップの種となる散らばったパーツを集めることなのですから。もちろん、これは決して簡単なことはありません。ただ、発見したインサイトの質が、その後のエクスペリエンス・マップの価値を決めるのです。

トイ・バレンタインExperience Designer

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Doing(振る舞い)ニーズを満たすためにカスタマーはどのような行動をしていますか?カギとなるビヘイビアは見られましたか?

Thinking(思考)ヒトはどのようにサービス体験を評価していますか?何を期待していますか?

Feeling(感情)時間が経過するに連れ、どのような感情があらわれますか?最も上がる瞬間は?その逆は?

積み

リサーチエクスペリエンス・マッピングの積み木 ヒューマン・エクスペリエンスはとても複雑で多くが無形です。ただ、エクスペリエンス・マッピングの挑戦は、それを明かすことにあります。少しづつ、カスタマー・エクスペリエンスの重要要素を拾っていきます。トライ・アンド・エラーを何度も繰り返し、エクスペリエンス・マッピングのプロセスに必要なリサーチとディスカバリーをガイドしてくれる簡単なフレームワークを開発してみました。我々はそれを「積み木」と呼んでいます。主となるブロックは Doing(振る舞い)、Thiking(思考)、Feeling(感情)に加えてカスタマー・エクスペリエンス全体のコンテキストを理解するために Place(場所)、Time(時間)、 Devices(デバイス)、 Relationships(関係性)を加えています。チャネルとタッチポイントも忘れないように!

リサーチで得られた結果の整理を進めていく際に、右の図のように各質問に回答しながら積み木を重ねていくことを推奨します。参考までに、振る舞い・思考・感情別に整理した例をご紹介します。

ディスカバリー

定量調査 定量調査定性調査 定性調査

振る舞い

デバイス

タッチポイント場所 時間

思考

関係性

感情

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定量調査

ウェブ解析データをはじめとするデータ・ソースを深くまで解析すると既存の顧客がどのように組織とインタラクションしているのかが解明され、数々のインサイトをもたらしてくれます。顧客満足度調査とセットで扱うことによって問題が発生している特定のチャネルやタッチポイントを明確にすることができます。例えそれが致命的であろうがなかろうが、定量調査は課題の特定に一役買ってくれます。

既存の定量調査を進めていく上で、特定の顧客セグメントにアンケートを実施する必要性があるかもしれません。アンケートは基本的な設問に対する回答を得ることができるとともに、定量調査を通じて得たインサイトを検証することができます。定量調査のベネフィットは、十分な量の顧客データに基づいてエクスペリエンス・マップが設計されていることを理解することで、ステークホルダーに安心を与えることができます。

我々もエクスペリエンス・マップに至っては定量調査に相当の時間を費やします。ただ、忘れてはならないのは顧客とのコミュニケーションや観察が全体のサービス体験を学習、パターンを把握するための最優先のツールであることです。

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定性調査顧客とのコミュニケーションは今ではあたりまえのように行われ、最も信頼性のある情報としてエクスペリエンス・マップに役立てられています。顧客とのインタビューは対象のプロダクトやサービス、または検証したい課題について深堀りしたいときに有効だと言われてます。顧客とのインタビューまたはオブザベーションを実施するときにはなるべく自然体に近い状態で実施することで有益なデータを抽出することができます。

顧客とのインタビュー時には自由回答方式を用い入り、ストーリーテリングを促すようなテクニックを参考にすることを推奨します。あなたのゴールは、参加者にそれぞれのストーリーを共有してもらうことです。特定の質問を投げかけるのではなく、会話が自然と発生するように心掛けることでエクスペリエンス・マッピングの積み木に従ったインサイトが得られるように工夫しましょう。忘れないでください、エクスペリエンス・マッピングの積み木における最も重要なブロックは、振る舞い、思考、そして感情の3つです。

なるべく直近の体験とそれに纏わる印象を聞き出すようにしてください。そして取りこぼしがないよう、ドキュメント形式に落とすようにしてください。定量調査などディスカバリー・プロセスと平行して得られた発見を組み合わせることで顧客との会話やオブザベーションがエクスペリエンス・マップを通じて語りかけるストーリーの主役になります。

スケッチ・ノーティング単にインタビューの出来事をテキストに起こすのではなく、顧客のストーリーをスケッチノート形式にまとめることによってステークホルダーの理解をより促すことができます。

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考える(思考形成)

聞く

関係性 場所時間

デバイス

感情(モチベーション)

振る舞い(ビヘイビア)

見る

コンテキスト1 2

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STEP 02コースを描く

私達はエクスペリエンス・マップを創ることが大好きです。なぜなら、それは共創であるからです。エクスペリエンス・マッピングのプロセスは実際のアーティファクトよりも重要です。顧客が体験するであろうサービス体験に直接関与する各ステークホルダーの参加によって共感を生むことができます。

エクスペリエンス・マッピングがここまで進んでくれば組織横断のステークホルダーがあなたのリサーチやディスカバリー活動に参加していることでしょう。もしかしたらもう既に一緒に手を動かしているかもしれません。エクスペリエンス・マッピングを通じたステークホルダーとのディスカッションは、チーム内のコンセンサスを得るためだけではなく、組織そのものを前進させるための目新しいインサイトや行動に移すきっかけが生まれることにあります。

これは一人の冒険ではない

これは活動であり、アーティファクトではない。

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クリス・リズドン Design Director

エクスペリエンス・マップを解剖する

数年前のことです。既に公開されているエクスペリエンス・マップと我々が試験的に取り入れたエクスペリエンス・マップを比較するためのアンケートを実施しました。特定の型におさまるわけではなく、様々なパターンを把握することができ、除々にエクスペリエンス・マップを創る上で基本となるフレームワークを定義することにしました。このフレームワークの構成要素は、レンズ、カスタマー・ジャーニー・モデル、そして学習です。

1 レンズは提供価値や指針、ペルソナやカスタマージャーニーなど  の主要な要素をフィルターを通して考察するための要素です。

2 カスタマー・ジャーニー・モデルはチャネルやタッチポイント、時間や空  間を横断した顧客とのインタラクションを通じてニーズの満足度合いのを   可視化しています。

3 最後の学習はエクスペリエンス・マッピングを通じて得られた気づきの  サマリーをまとめたものです。

エクスペリエンス・マップに記載するひとつひとつの瞬間には次のアクションにつながるコースを描くことが重要です。学習、はその中でも組織全体を次のステップに導くための視座を与えてくれる最も重要な要素でなければなりません。

学習には以下が含まれています:→ 組織の戦略面における気づき → レコメンデーション→ デザインの指針

学習はプロセスの最終段階で追記される要素です。エクスペリエンス・マップを通じていまいる状況を理解した後にあるべきカスタマー・ジャーニーへのヒントを与えてくれます。決まった記載内容があるわけではありませんが、学習はこれらの質問に答えなければなりません。「だから何?」「どうすればいいの?」

より詳しく: http://adaptivepath.com/ideas/the-anatomy-of-an-experience-map

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レイルヨーロッパのエクスペリエンス・マップエクスペリエンス・マップはカスタマー・ジャーニを可視化したアーティファクトです。あなたのゴールは、既存のデータを理解可能にするためにビジュアルなインフォグラフィックにまとめて活かしてあげることです。前述しましたが、エクスペリエンス・マップの積み木で重要なブロックは振る舞い、思考、そして感情と説明しました。ただ、それ以上に忘れてはならないのはカスタマー・ジャーニーの長さや広がり、そして深さです。これはステージ間の遷移やチャネル間の移行、そしてインタラクションが発生する箇所の横断が考えられます。

積み木はジャーニーモデルの基本構造を定義してくれます。

一目で理解できるように、それぞれのステージで何が顧客との間で起こっているのか表現します。

作業を進めるごとに改善の余地がある箇所を学習内容と共に定義してます。

カスタマー・ジャーニー・モデルの指針(レンズ)はジャーニーそのものの理解を深めてくれます。

カスタマー・ジャーニーをステージごとに時間軸で分類しています。

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エクスペリエンス・マッピング・ワークショップ役職・領域横断的に主要なステークホルダーを集めてグループをつくりましょう。これからはすべてを集約して学習に時間を割くようにしましょう。

エクスペリエンス・マッピング・ワークショップはとてもハードワークですが、生産的で何よりも楽しく行えます。ファシリテーターとしてのあなたの役割は、明確なコンテキストを明示すること、ゴールに導くこと、アクティビティ中に参加者を助けてあげること、そして参加者にやる気と元気を与えてください。このワークショップの目的はリサーチ結果から積み木の基盤となるブロックを作成し、積み重ねてカスタマー・ジャーニー・モデルをつくることです。そのためには十分な空間と参加者、備品や時間を確保することを忘れないようにしてください。

ワークショップを成功させるためのファシリテーション

当然ながら、組織ごとに文化は異なります。ワークショップを成功させるためには当日の詳細スケジュールを事前に準備し、プロフェッショナリズムでファシリテーションに挑んでください。我々が推奨するワークショップの段取りをご紹介します:

1 コンテキストの設定:これまでのリサーチやディスカバ  リーフェーズで実施した内容について簡単なプレゼン  テーションをします。

2 メンバーの整理:参加者を1グループ4~6名に別け、  役職が重複しないようにします。

3 解体:各チームはこれまでのリサーチ調査内容に目を  通し、積み木をつくる準備を進めます。

4 ステージ:付箋やノートが増えてくるにつれ、各チーム  から一人、振る舞いの行動モデルを模造紙に描きます。

5 形成:ここからはチームが一丸となって付箋やメモの  整理を始め、それぞれの関係性を学びます。

6 構築:セッションの終わりにはジャーニー・モデルの  形成が終わり、ストーリーから得られるインサイトに  ついて議論します。

ワークショップに必要な備品→ 模造紙→ テープ→ マーカー(黒)→ 付箋(5色以上)→ カメラ

ファシリテーション・ティップス→ 1グループ6名以内に抑える

→ マニュアルや指示書を用意する

→ リサーチノートを用意する→ 休憩を必ずとる→ グループ間で共有する→ たくさん写真をとる

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プログラマー

マーケティング

IT

エグゼクティブ

パートナー

ユーザ・エクスペリエンス

カスタマー・サービス

メンバーシップ

出店者

多様性のあるメンバーを収集し、多角的な視点を取り入れる

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ラフマップ

慌ただしい作業を終えたら、今頃カスタマー・ジャーニー・モデルの全体像がうっすらと見え始めてきていると思います。次のステップではセッションの成果物を綺麗に整理することです。共有することを疎かにして時間だけが経過しないように気をつけましょう。

エクスペリエンス・マップのドラフトをつくるには時間が要されます。アウトラインを固めつつ、全体のストーリーを見失わないようにしなければいけないためです。ラフマップを作成したら他者と共有するようにしてください。その際には上から下、端から端まで説明するようにしましょう。ラフマップを説明することで何が重要で何が無関係なのかを見極めることができます。

基本のカスタマー・ジャーニーが見えてくると付箋をなるべく取り除きたいと思うもしれませんが、スケッチが進むに連れて修正や追加、加筆などが発生する可能性があるためまだ完璧に仕上げようとしないでください。

試しにステージ分類をはじめてみてください。ストーリーが明確になるにつれて追加したり剥がしたりしてください。

ラフマップ上でもクラスタ分類や整理を進めましょう。補足が必要であれば線を描いたり文字を加えたりしましょう。

ティップス:顧客の発話記録を重要と思われる瞬間と照らし合わせるように付箋で追加していきましょう。

積み木に従って基本構造を整理し、グループごとに付箋の色を使い分けるようにすると効率が上がります。

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STEP 03ストーリーを話す

あなたはこれまでデータを収集し、カスタマー・ジャーニーをモデル化し、インサイトを与える発話までもが手元に揃いました。ストーリーを可視化する前に、何がストーリーに含まれて何が含まれないのかを決定する必要があります。これはつまり、あったらいいな、から必要要素のみを抽出するということです。抽出したストーリーを評価し、目の前にあるマップのストーリーが何を語っているのかを再確認しながら元に戻り、これを繰り返します。

他で聞くストーリーのように、はじまりがあり、起承転結があり、おわりがあります。

デザインで影響を与える

これまでのワークショップを通じてエクスペリエンス・マップのアウトラインが見えてきたと思います。ストーリーには盛り上がりがあり、終わりがあるように、ストーリー形成と可視化に時間を費やすようにしましょう。

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イラン・ナーグス&アンバー・リードVisual Interaction Designers

現実にする

良いエクスペリエンス・マップは良いポスターととても良く似ています。何が良いポスターとして位置づけられているのか?ヒエラルキーです。

あなたのマップには、ステージごとに強いメッセージが含まれている必要があります。 正しいヒエラルキーとは、多角的に見た時に何が浮かんで見えるかがわかることです。一目見た時に浮かんでくるメッセージは何ですか?一分後は?十分後は?

部屋の橋から見た時には?近づいて見た時に何が発見されることを目的としていますか?

単なるマップをビジュルなストーリーに変換することは何をしてきたか、に加えて何を強調したいのか、を同時に考える必要があります。ジャーニーを華やかに終わらせるためにいくつかティップスをご紹介します:

1 視点を設ける:マップを見た時に持ち帰ってもらえたいポ  イントをまとめることができますか? 見た人が周りに話し  てほしいストーリーは何ですか?

2 オーディエンスを考慮する: オーディエンスがストーリー  をより理解するために何が必要ですか?戦略的な意思決定  を促すためにはどんなインサイトが求められていますか?

3 デザインで影響を与える:次のステップに進むヒントを与  えてくれますか?中長期的に、このマップはどんな場面で  活躍すると思いますか?

あなたの目的は、中長期的に利用されるデザインツールとして、コミュニケーションのパズルを組み合わせることによって新しいアイディアの創出を促すことです。最後に、どのマップもユニークでなければなりません。

より詳しく: http://adaptivepath.com/ideas/exploratorium-mapping-the-experience-of-experiments

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振る

舞い

思考

感情

リサーチ 購入 利用

• このプロセス通りに上手くいくの?

• どのような決済手段があるの?

• そもそもどうやって始めればいいの?

• Eワクワクする!けど少し不安。

• よくわからない

• 準備が整った!

• お金についてやや不安。

• 友人や家族のアドバイスが聞きたい。

• インターネットを利用する。

• 友人や家族と意見交換する。

• 裏で色々調査をする。

• オンラインのレビューに目を通す。

• コマーシャルを見る。

• 広告を見る。

• 試験的に利用できる期間はあるの?

• 友人は好むかな?

• もう一つ買えばお得になるのかな?

• オンラインでしか買えないのかな?

• お金を払う気でいる。

• 意識が硬い。

• 新しいものを手に入れることにワクワクしている。

• セールス・スタッフとの対話。

• 購入についてソーシャル・ネットワーク上で共有する。

• 小売専門店に出向いて購入する。

• 返品についてはどう扱われているんだろう?

• ウェブサイトには返品について何も記載されていないな。

• とりあえず無事に購入できて満足!早速友人に教えなきゃ。

• 楽しい。

• 開放された。

• 尊敬。

• 満足。

• 紹介したい。

• リラックスしている。

• 評価をオンラインで登録する。

• 新しい商品を日常的に使う。

• 友人や家族に伝える。

"やった!"

"なんでこうなるの!"

マップをサポートするこれらの情報が健在であることを確かめてください。

伝えたいストーリーのポイントをスケールやコントラスト、色を変えるなどして工夫します。

大きな可能性が感じられるエリアに目印を置きます。

"誰か助けて!"

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ストーリーをスケッチするスケッチはアイディアの創出とマップの可視化につながる非常に有効なツールです。あなたの最後のビジュアルはストーリーのエッセンスがまだ含まれていないかもしれません。スケッチできなければ、まだストーリーは完成していません。

スケッチする際に、様々なブロッグがどのようにストーリーに影響を与えているのかを考えてみましょう。いくつかの例をご紹介します。

1 思考を元に顧客の感情ジャーニーを描いてみてくださ  い。

2 顧客の振る舞いを参考にストーリーを組み合わせてみ  てください。

3 場所を選んで物理的なコンテキストが意思決定に  ような影響を与えているのか、考えてみてください。

次に他のブロックを次々と積み重ねていきましょう。ポイントは、アイディアの創出にすぐに繋げられることです。ナレーションがあてはめられるまでストーリーの作成と可視化を繰り返しましょう。

良いストーリーを話すためには集中し、ヒエラルキーを大事しに、怖がらずにスケッチから始めてみること、そして出来る限りシンプルにしましょう。これらがすべて繋がれば次がいよいよラストです。エクスペリエンス・マップを活用する。

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STEP 04マップを使う

マップを深く、そして広く廻すことを推奨します。そうすれば組織横断の意思決定に大きな影響を与えることができます。ミーティングで発表してみてください。大きなサイズの紙に出力して皆が注意して見てくれるような場所に貼ってみてください。データ化してエグセグティブが自席で眺められるように工夫してみてください。ペルソナやデータ分析資料など既存の資料とセットで提供してみてください。ただ、最も大切なことは、エクスペリエンス・マップは答えではなく、ツールであるということです。

あなたのジャーニーは始まったばかりです

これはストーリーです。答えではありません。

エクスペリエンス・マップは顧客のニーズを満たすために、次のアクションに繋げてくれる新しい方向性を示唆してくれます。また、全体のカスタマー・エクスペリエンスにフォーカスをあてるために組織横断で人々をまとめてくれるシンボル的な活動でもあります。

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複雑さを受け入れる

我々は、チャネルやタッチポイント、時間や場所を超えて複雑に発生する顧客とのインタラクションを理解し、デザインすることに悩んでいる多くのクライアントと仕事をしてきました。これらの挑戦にアプローチするために我々はいくつものメソッドを開発してきました。例えば、エコシステム・マッピング、サービス・ブループリント、クロス・チャネル・アーキテクチャ、そしてもちろん、エクスペリエンス・マッピングも。

エクスペリエンス・マッピングは決して新しいコンセプトではありません。クロス・チャネルで発生する顧客とのインタラクションが組織と共に除々に大きくなるにつれ、エクスペリエンス・マッピングはより、その効果を発揮します。ハンズオンの成果物を取り囲むそれぞれのステークホルダーが自身の役職や担当するチャネルやタッチポイントを超えて、全体のカスタマー・エクスペリエンスをサポートする組織的な活動にこれまで以上に力を入れていくことでしょう。

ただ、顧客はチャネルやタッチポイントに無関心です。彼らは自身のニーズを満たすために目的を達成することしか頭にありません。エクスペリエンス・マッピングはレンズを通して顧客の行動を組織にインプットしてくれると共に、ステークホルダーもまるで自身が顧客かのように世界を見渡すことができます。

顧客の複雑化するニーズを理解することは大きな挑戦でもあります。更にその複雑さ故に受け入れるためには新しいツールや新し考え方を取り入れていく必要があります。自身のプロダクトやサービスの未来を見据えて開発やサポートを進めていくためにマップを活用する際に、忘れてはならないのはマップそのものは大きなジャーニーのほんの一部分であることです。顧客に対する組織的アプローチは部分的モデルから全体へ、タッチポイントからエコシステムへ、そしてインタラクションから関係性にまで視野を広げていく必要があります。

より詳しく: http://adaptivepath.com/ideas/value-isnt-a-subtractive-process-designing-from-the-outside-in

パトリック・クアッテルバウムDesign Director

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インサイトからアクションへ我々はシステム思考を導入し、新しいアイディアやコンセプトをクライアントと共に創出するためにエクスペリエンス・マップを活用しています。結果として得られるアイディアは顧客と組織全体のエコシステムとしてのチャネルやタッチポイント、場所、そして関係する人々をも巻き込む大きなムーブメントをもたらしてくれます。ステークホルダーもエクスペリエンス・マップは顧客と組織双方にとって有益であることに確信を持つことでしょう。

エクスペリエンス・マップが2つあっても似ることは先ずありません。つまり、エクスペリエンス・マップは新しいアイディアを創出するために決められたアプローチがあるというわけではありません。我々も状況に応じて都度新しいアプローチを考え、クライアントとユニーク性を追求するようにしています。しかしながら、時間及び金銭的制約があることから、最後にエクスペリエンス・マップをより効果的に導入するための3つのアドバイスをご紹介します。共通して言えることは、エクスペリエンス・マッピングはステークホルダーとの共創であること、そして一人のジャーニーでは決してないということです。

課題/可能性、特定、そして優先順位付けあなたが作成したマップにて定められている構造に従って、ジャーニー・モデルの各ステージに点在する致命的な課題や可能性にアプローチする手段が導き出されます。そしてビジネスや顧客価値に従って優先順位付けします。このメソッドはステークホルダーが早急に対処しなければいけない価値の高い課題または可能性を促してくれます。

エクスペリエンス・ストーリーボードペルソナやその他ユーザエクスペリエンス・デザインの代表されるツールと平行してマップや簡単なストーリーボード、将来実現したいエクスペリエンスを語るためのストーリーやアイディアも取り入れていきましょう。このアプローチによってカスタマージャーニーに内在するインサイトからアイディアを創出するためのヒントをステークホルダーに与えてくれます。

未来のエクスペリエンス・マッピング理想とする未来のカスタマー・ジャーニーをマッピングし、ニーズを満たすためにインタラクションするタッチポイントごとに顧客本来の振る舞いや思考、感情を定義しましょう。そうすることでクロス・チャネル・エクスペリエンスを実現するための機能横断のコラボレーションが可能になります。

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未知の領域

エクスペリエンス・マップの作成に要したリサーチや可視化するためのクリエイティビティは、マップそのものをより戦略的なツールとして活かすことができます。ただ、静的なアーティファクトだけでは周囲の世界を変えることはできません。想定内です。マーケットプレイスや顧客ニーズ、企業戦略などの立場から顧客とのジャーニーを捉えてみましょう。そうすれば、あなたのエクスペリエンス・マップはこれらの変化を可能にしてくれるかもしれません。

我々がこのガイドをまとめた目的は簡単です:これまで以上に、組織がチャネル、タッチポイント横断で発生しているカスタマー・ジャーニーに関心を持ってもらいたいからです。なぜか?カスタマー・エクスペリエンスを考慮する際に、検討範囲がとても限定されていること、小さな仕事で大きな絵を描こうとしていること、顧客のニーズをサポートするために役職や領域横断でコラボレーションをするときに必要以上の時間が要されていること。

未来を描く

ここまで辿り着いたあなたならエクスペリエンス・マッピングはかなりの時間と労力が要されることがわかったと思います。このガイドで提示されているティップスや情報は、あなたがこれからチャレンジしようとしているエクスペリエンス・マッピングのバイブルになればと願っています。もし、あなたの組織が苦労されているのであれば、気軽にコンタクトしてください。一緒に働けることを楽しみにしています!

既にエクスペリエンス・マッピングを取り入れて自身のものにしている方がいればぜひその様子を教えて下さい!また、Twitter ハッシュタグ #xmapping でマップをみんなに紹介してください。マップのサクセス「ストーリー」も [email protected] までぜひ送ってください。お待ちしてます!

それでは、マッピングを楽しんで!

aDaptiVE path について

我々は経験豊富なガイドであると同時に戦略的な思考家です。

我々は特定の業界や事業に限定することなく優れたエクスペリエンスを実現します。

Page 27: Adaptive Path's Guide To Experience Mapping (Japanese Edition)

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Thanks to Adaptive Path staff for their work in creating this guide: Brandon Schauer, Patrick Quattlebaum, Chris Risdon, Bryn Bowman, Pam Daghlian, Rae Brune, Amber Reed, Iran Narges, Toi Valentine, Gabrielle Parsons and Evi Hui. A special thanks to our summer interns for all their help: Shahrzad Samadzadeh and Jason Ham.