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第11章 農業災害と施設 1 平成27年(2015年)の天候について 1 概況 平成27 年(2015 年)の年平均気温は、韮崎で平年並、勝沼、切石で平年より高くなったほ かは、平年よりかなり高くなりました。年降水量は、全ての観測所で平年並となりました。年 日照時間は、全ての観測所で平年並となりました。 春(3月~5月)は、3月は、上旬を中心に低気圧や上空の寒気の影響で雨や雪が降りましたが、 下旬は高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。4月は、下旬は高気圧に覆われて晴れた 日が多くなりましたが、上旬や中旬は低気圧や前線の影響で雨や曇りの日が多くなりました。 5月は、上旬と下旬を中心に高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。 夏(6月~8月)は、7月上旬は梅雨前線の影響で雨となり平年より気温が低い日が続きまし たが、7月下旬から8月上旬にかけて高気圧に覆われて晴れて暑い日が続きました。8月中旬以 降は前線や低気圧の影響で雨の日が多くなりました。梅雨入りは平年より5日早い6月3日ごろ、 梅雨明けは平年より11日早い7月10日ごろになりました。また、7月の15日から17日にかけて台 風第11号の影響で大雨となりました。 秋(9月~11月)は、9 月は、高気圧に覆われて晴れた日があった一方、前線や低気圧の影響 で雨の日が多くなり、9 日は台風第18 号の影響で大雨となりました。10 月は、前線や湿った 気流の影響で曇りや雨の日もありましたが、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。11 月は、低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多くなりました。 (平成27年12月~平成28年2月) は、日本付近は冬型の気圧配置が長続きせず、数日の周期 で気圧の谷の影響を受けました。1 月の前半までは寒気の南下が弱かったため、気温の高い日 が多く、特に12月は気温がかなり高くなりました。その後は低気圧の通過後に一時的に冬型の 気圧配置が強まり、強い寒気が流れ込む時期もありました。 (山梨県気象・地震年報(平成 27 年)、四季の天候(平成 28 年) 甲府地方気象台資料より) 2 農業災害 (1)6月豪雨災害 ・平成27年6月23日 ・農地の被害状況 被害の内容・状況 面積等 被害金額 (千円) 該当市町村 農地 田(畦畔の崩壊) 0.12ha 1,000 北杜市 - 132 -

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第11章 農業災害と施設

1 平成27年(2015年)の天候について

1 概況

平成27 年(2015 年)の年平均気温は、韮崎で平年並、勝沼、切石で平年より高くなったほ

かは、平年よりかなり高くなりました。年降水量は、全ての観測所で平年並となりました。年

日照時間は、全ての観測所で平年並となりました。

春(3月~5月)は、3月は、上旬を中心に低気圧や上空の寒気の影響で雨や雪が降りましたが、

下旬は高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。4月は、下旬は高気圧に覆われて晴れた

日が多くなりましたが、上旬や中旬は低気圧や前線の影響で雨や曇りの日が多くなりました。

5月は、上旬と下旬を中心に高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。

夏(6月~8月)は、7月上旬は梅雨前線の影響で雨となり平年より気温が低い日が続きまし

たが、7月下旬から8月上旬にかけて高気圧に覆われて晴れて暑い日が続きました。8月中旬以

降は前線や低気圧の影響で雨の日が多くなりました。梅雨入りは平年より5日早い6月3日ごろ、

梅雨明けは平年より11日早い7月10日ごろになりました。また、7月の15日から17日にかけて台

風第11号の影響で大雨となりました。

秋(9月~11月)は、9 月は、高気圧に覆われて晴れた日があった一方、前線や低気圧の影響

で雨の日が多くなり、9 日は台風第18 号の影響で大雨となりました。10 月は、前線や湿った

気流の影響で曇りや雨の日もありましたが、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。11

月は、低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多くなりました。

(平成27年12月~平成28年2月) は、日本付近は冬型の気圧配置が長続きせず、数日の周期

で気圧の谷の影響を受けました。1 月の前半までは寒気の南下が弱かったため、気温の高い日

が多く、特に12月は気温がかなり高くなりました。その後は低気圧の通過後に一時的に冬型の

気圧配置が強まり、強い寒気が流れ込む時期もありました。

(山梨県気象・地震年報(平成 27 年)、四季の天候(平成 28 年) 甲府地方気象台資料より)

2 農業災害

(1)6月豪雨災害

・平成27年6月23日

・農地の被害状況

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農地 田(畦畔の崩壊) 0.12ha 1,000 北杜市

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(2)台風11号

・平成27年7月16日~17日

・農業用施設の被害状況

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農業用施設 水路の崩壊、

道路法面等の崩落 3 箇所 60,000

大月市、

道志村

(3)台風18号

・平成27年9月9日

・農地・農業用施設の被害状況

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農地 田(畦畔の崩壊) 0.14ha 12,000 北杜市

農業用施設 水路法面の崩落 2 箇所 17,000 北杜市

合 計 29,000

(4) 降雹

・平成27年6月23日

・農産被害の状況

・平成27年8月2日

・農産被害の状況

(5)異常天候

・平成27年4月~9月

主要果樹の生育期間となる4~8月に「高温・乾燥」「日照不足」のなどの影響に

より、モモでは生理落果や着色不良、ブドウではデラウエアでの有核果の混入と着色

不良、巨峰系品種の着色不良が発生

・農産被害の状況

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農作物 ブドウ果実の打撲被害 12.0ha 6,154 韮崎市

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農作物 リンゴ果実の打撲被害 1.7ha 1,750 北杜市

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・平成27年11月~12月

11月以降の高温により、加工柿(ころ柿、あんぽ柿)の乾燥不良やカビ等の発生

が見られた。

・農産被害の状況

(6)降雪

・平成28年1月18日

・農産被害の状況

3 技術対策

気象災害による被害の防止や軽減を図るための事前対策や、発生時の事後対策を徹底した。

(1)技術対策

ア 凍霜害対策(警戒期間 平成27年3月15日~5月20日)

山梨県凍霜害予防対策要領に基づく連絡指導体制を整備し、「凍霜害予防対策資料」

を作成するとともに、関係機関に配布し注意喚起を図った。

期間中、「降霜、低温に対する農作物の技術対策」を作成し、関係機関に周知して被

害防止の徹底を図った(4月6、10日)。

イ 年間を通じた技術対策

「農作物の気象災害に対する技術対策資料」による対策の徹底を図るとともに、異常

天候等による果樹の減収被害を受けて、「果樹の気象災害対策マニュアル(27年12

月)」を策定し、関係機関に配布した。

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農作物 モモ、ブドウの減収 869ha 1,247,520

甲府市、山梨市、韮崎市、

南アルプス市、北杜市、

甲斐市、笛吹市、甲州市、

中央市

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農作物 ころ柿の減収 79.5ha 250,419 山梨市、笛吹市、甲州市

区 分 被害の内容・状況 面積等 被害金額

(千円) 該当市町村

農作物

パイプハウス、

ブドウ棚の倒壊、

樹体被害

88.3ha 117,537

富士吉田市、都留市、韮

崎市、北杜市、上野原市、

甲州市、忍野村、山中湖

村、鳴沢村

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ウ 大雪に対する技術対策

平成26年9月に作成した「農業用ハウスと果樹棚の雪害防止対策指針(大雪に対す

る技術対策資料)」により、被害防止に向けた講習会等を開催するとともに、大雪に関

する山梨県気象情報を受けて、「大雪に対する農作物の技術対策」を作成し、関係機関

に周知して被害防止の徹底を図った(1月17日)。

エ 台風に対する技術対策

台風第6号、第11号、第18号にの接近にともない「台風に対する農作物の事前・

事後対策」を作成するとともに、関係機関に配布し、対策の徹底を図った(平成27年

5月12日、7月15日、9月8日)。

オ 気象状況に対応した技術対策

(ア)気象情報に基づく技術対策

「天候不順(低温、高温・少雨等、曇雨天、少雨等)に対する技術資料」を作成する

とともに、関係機関に配布し、対策の徹底を図った(平成27年4月28日、5月8、

25日、7月7、28日、8月12、31日、1月17日)

(イ)気象災害の発生(台風を除く)に基づく技術対策

「気象災害(凍霜害、降雪等)に対する対策資料」を作成するとともに、関係機関に

配布し、事後対策の徹底を図った(降雹被害:6月25日、降雪被害1月17、19日)。

カ その他

平成27年4~9月の異常天候による果樹の減収被害、11~12月の異常天候によ

る加工柿の減収被害に対応するため、農業災害対策資金を発動した。

4 被災農業者向け経営体育成支援事業(平成 26~27 年度)

平成26年2月の豪雪で被害を受けた農業者の経営再開と安定化を図るため、国の被災農業者

向け経営体育成支援事業を活用し、農業用施設の撤去及び再建・修繕を支援した。

全市町村において事業を実施したが、平成26年度末までに事業が完了しなかった17市町村は

国の繰越承認を受け、平成27年度末までに事業を完了した。

・実施主体 全市町村(県・市町村を通じて助成対象者=被災農業者に補助)

・補助率 撤去費:国1/2、県1/4、市町村1/4

再建・修繕費:国1/2、県2/10、市町村2/10、農業者1/10

被災農業者向け経営体育成支援事業の実績 (単位:円)

事業費 国費 県費 市町村費 その他

撤去費 780,084,118 387,981,614 193,990,524 193,991,359 4,120,621

再建・修繕費 10,488,861,956 5,114,413,003 2,075,622,419 2,075,622,419 1,223,204,115

計 11,268,946,074 5,502,394,617 2,269,612,943 2,269,613,778 1,227,324,736

※市町村附帯事務費4,483,000円(うち国費1/2、市町村費1/2)を除く。

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5 農業災害補償事業

(1)農業災害補償法に基づく、農業共済事業の実績は次のとおりである。

農 作 物 共 済

作 物 名

年 度

作付面積

引 受 被 害

面 積 引受率 戸 数 共済契約金

総 額

農家負担

共済掛金 戸 数 面 積

支 払

共済金

a a % 戸 千円 千円 戸 a 千円

25 526,000 472,041 89.7 15,590 4,149,078 23,974 297 3,565 11,687

26 509,000 463,695 91.1 15,104 4,036,436 23,389 220 2,514 7,013

27 503,000 454,664 90.4 14,562 3,953,871 6,557 254 2,758 7,315

25 9,400 8,257 87.8 82 10,441 96 25 762 484

26 10,700 9,812 91.7 70 7,460 66 20 674 639

27 12,300 8,607 70.0 47 5,840 50 13 764 175

注:水稲の引受及び被害は当該年産、麦の引受は翌年産、被害は当該年産

畑 作 物 共 済

大 豆

産 作付面積

引 受 被 害

面 積 引受率 戸 数 共済契約金

総 額

農家負担

共済掛金 戸 数 面 積

支 払

共済金

a a % 戸 千円 千円 戸 a 千円

25 23,500 5,393 22.9 23 6,695 133 1 10 21

26 22,400 6,702 29.9 18 7,953 157 1 73 35

27 22,300 4,873 21.9 15 4,782 95 0 0 0

蚕 繭

産 掃立箱数

引 受 被 害

箱 数 引受率 実戸数 共済契約金

総 額

農家負担

共済掛金 戸 数 箱 数

支 払

共済金

箱 箱 % 戸 千円 千円 戸 箱 千円

25 174.75 41.47 23.7 11 2,151 16 3 6.38 113

26 - - - - - - - - -

27 - - - - - - - - -

家 畜 共 済

引 受 被 害

頭 数 共済契約金

総 額

頭 数 支 払 共 済 金

死 廃 病 傷 死 廃 病 傷

頭 千円 頭 頭 千円 千円

25 25,216 1,056,194 761 5,649 53,097 58,143

26 25,782 1,226,267 601 4,958 44,009 56,428

27 19,511 1,217,490 725 4,916 51,027 58,080

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果 樹 共 済

結果樹

面 積

引 受 被 害

面 積 引受率 戸 数 共済契約金

総 額

農家負担

共済掛金 戸 数 面 積

支 払

共済金

ha a % 戸 千円 千円 戸 a 千円

25 3,983 81,213 20.4 2,709 3,012,894 24,036 328 8,698 68,254

26 3,974 80,560 20.3 2,659 3,183,485 26,416 333 8,709 101,173

27 3,925 78,787 20.1 2,596 3,143,840 25,004 372 9,510 101,408

25 3,265 65,371 20.0 1,922 2,147,928 15,035 240 6,808 75,182

26 3,256 63,611 19.5 1,864 2,271,746 16,097 88 1,704 14,468

27 3,247 61,606 19.0 1,797 2,284,488 17,652 146 3,854 38,481

25 857 16,761 19.6 832 303,350 9,318 183 2,921 21,175

26 847 15,880 18.7 785 341,401 10,492 117 1,755 9,652

27 842 15,402 18.3 757 314,428 11,604 137 2,732 25,736

25 31 1,083 34.9 55 19,324 355 54 947 7,635

26 31 1,041 33.6 52 23,519 434 5 102 273

27 31 914 29.5 47 18,580 340 6 151 821

25 60 1,098 18.3 52 28,220 621 19 463 2,830

26 60 1,069 17.8 52 26,930 592 8 209 1,612

27 60 1,096 18.3 52 28,810 634 1 30 221

25 3,983 1,080 0.3 40 53,930 253 - - -

26 3,974 1,077 0.3 41 60,680 286 2 48 313

27 3,925 956 0.2 34 155,370 713 2 52 415

25 3,265 - - - - - - - -

26 3,256 - - - - - - - -

27 3,247 - - - - - - - -

注:収穫共済の引受は翌年産、被害は当該年産、樹体共済の被害は前年度引受

園 芸 施 設 共 済

度 設置棟数

引 受 被 害

棟 数 引受率 戸 数 共済契約金

総 額

農家負担

共済掛金 戸 数 棟 数

支 払

共済金

棟 棟 % 戸 千円 千円 戸 棟 千円

25 5,119 2,677 52.3 910 1,441,920 4,542 663 1,167 384,137

26 5,521 2,700 48.9 714 2,065,101 5,066 31 40 2,765

27 5,675 2,413 42.5 795 2,463,746 14,880 40 54 6,110

(平成27年度農業共済組合の概況)

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第12章 試 験 研 究

1 試験研究連絡調整事業

本県農業を取り巻く環境は、新規就農者の減少、就農者の高齢化、女性農業者の増加、さらには産

地間競争の激化など厳しいものがある。

このような情勢に対処して、より農業経営に役立つ効率的な技術開発を進めるため、試験研究、行

政、普及、農業者等の相互の連携強化を図りながら、研究課題の設定、研究課題の調整、研究成果の

普及等に努め、本県農業振興を図ってきた。

・農業技術会議の開催

・試験研究推進会議の開催

・研究員の長期・短期派遣研修

・研究成果の発表会の開催

・部門別農業代表者会議の開催

・各試験研究機関の施設、備品の整備

・客員研究員制度の実施

(1)試験場の人容

区 分

吏 員 技能労 職 員 非常勤嘱託 22条職員

事務 技術

総合農業技術センター 4 39 2 5 22

果樹試験場 3 31 7 0 10

畜産試験場 1 9 2 1 13

酪農試験場 1 7 5 1 13

計 9 86 16 7 58

(2)試験場予算額 (千円)

区 分 指定委託試験 単独試験 委託試験 経営管理費 場運営費

総合農業技術センター 0 34,649 1,210 0 103,063

果樹試験場 0 35,090 2,481 0 45,014

畜産試験場 0 12,189 4,600 0 36,915

酪農試験場 0 9,864 3,667 9,596 53,783

計 0 91,792 11,958 9,596 238,775

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2 総合農業技術センターの試験研究概要

研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

1 普通作物の

優良品種選定

と 原 種 生 産

(M33~)

1 水稲品種の

比較試験 (1)本調査

粳種「西海 IL4号」「西海 IL5号」「五百川」、多収米「ふくおこし」、

酒造好適米「ちほのまい」の栽培特性を把握した。「五百川」、「ふく

おこし」は継続検討。他は供試中止。

(2)予備調査

晩生粳種として北陸 251号、中系 3058、中国 214号、南海 182号、

羽 704、早生粳種として奥羽 416号、東北 215号、多収米品種として

関東 268 号、ふくおこしが栽培性や収量性、品質の面から有望と考

えられた。

2 麦類品種の

比較試験

硬質小麦として「東山 53 号」「東山 54 号」、「農研小麦 2 号」が、

軟質小麦として「さとのそら」「ゆきはるか」が有望と考えられた。

3 大豆品種の

比較試験 1)平坦地

黄大豆は「ナカセンナリ」対照で3品種を供試した結果、子実品質

は「東山 232 号」が優れていた。子実収量はいずれの品種もやや少

なかった。青大豆は「あやみどり」対照で「東山青 235 号」を所内

と現地で供試した結果、収量は所内でやや少なく、現地はやや多か

った。子実品質は優れタンパク含量は高かった。

2)高冷地

「ナカセンナリ」対照とし、3系統を供試した結果、すべての系統

でタンパク質含量は高く、開花期は期待どおりであったが、子実収

量が少ないことから有望と言える品種はなかった。

3)小豆

栽植密度が高まるほど成熟期等は早期化したが、収量は変わらず、

倒伏が多く、百粒重が低下することから、密植栽培は栽植密度 40株

/㎡程度が上限と考えられた。

4 原々種及び

原種生産事業

水稲は原々種、原種それぞれ「コシヒカリ」4㎏、850㎏、「ヒノヒ

カリ」2㎏、350㎏「夢山水」1㎏、40㎏、大豆は原種について「あ

やこがね」を 120㎏生産した。

2 野菜・花きの

オリジナル品

種育成と栽培

技 術 の 確 立

(S60~)

1 夏秋どりイ

チゴの新品種

育成と良品・安

定生産

(1)良食味な夏秋どり品種の育成

1)現地適応性試験

鳴沢村における現地適応性試験では、「06-2-3」は1果重が重く、硬

度は高かった。また、株あたりの可販収量は「かいサマー」と同等

であったが、9g以上の果実の収量が多く、その割合も高かった。ま

た、果実の糖度、酸度に関しては調査期間を通じて「かいサマー」

と同等であった。「06-2-3」の食味の総合評価は「かいサマー」と同

等であった。以上より、「06-2-3」は「かいサマー」の課題である果実の

小ささや、柔らかさを解決しうる系統であり、現地での評価も高い。

2)所内試験

所内では、「06-2-3」は「かいサマー」と比べて1果重が重く、硬度

は高かった。さらに、株あたりの可販収量は「かいサマー」と同等

であったが、9g以上の果実の収量が多く、その割合も高かった。ま

た、果実の糖度、酸度に関しては調査期間を通じて「かいサマー」

と同等であった。

2 ピラミッド

アジサイの新

品種育成

(1)鉢花

鉢花栽培において系統「22-1」は早生矮性の特性が、「24-1」は

早期に秋色に着色する特性が認められた。

(2) 切り花

切り花栽培においても「22-1」は早生矮性の特性を、「24-1」は、

早期に秋色に着色する特性が認められた。花持ち性は両系統とも

対照の「ライムライト」と同等であった。

- 139 -

Page 9: 山 梨 県 農 業 年 鑑¬¬1 1 章 農業災害と施設 1 平成 2 7 年 (201 5 年) の天候について 1 概況 平成 27 年( 2015 年)の年平均気温は、韮崎で平年並、勝沼、切石で平年より高くなったほ

研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

(3)現地適応性試験

現地栽培においても「22-1」、「24-1」ともに所内試験と同様の特

性が確認された。秋色については標高が低い方がやや薄くなる傾

向がみられた。

(4)新品種審査基準に準じた特性調査

用土の種類がピラミッドアジサイの形質に及ぼす影響はほとん

どみられなかった。種苗登録申請時の審査基準に基づき、「24-1」

について、装飾花の開花終期の花色は 64B、開花期の開始時期は

「晩」と分類された。「22-1」について、装飾花の開花終期の花色は

63C、開花期の開始時期は「中」と分類された。

3 育成品種と

在来品種の遺

伝的特性調査

と維持・保存

(1)育成品種の維持、保存

コチョウラン(山梨1~3号)、夏秋どりイチゴ(かいサマー)、

キャットミント(かいミントコマ、かいミントヤツ、かいミント

フジ)等の保存を行った。

(2) コチョウラン山梨2号の増殖能力改善

母株の維持中に増殖能力が低下(継代培養で 1.8 倍)したコチ

ョウラン「山梨2号(ひめか)」は、培養により維持していた株を

新母株として更新し、再培養したところ、増殖量は 2.7 倍と高く、

他の品種と同等であった(H26 成績)。しかし、継代培養を繰り返

す(3 回)ことで増殖量は低下し、1.5 倍となった。このことによ

り、シュート分割による「山梨 2 号」の増殖は現状では難しいこ

とが明らかとなった。

3 普通作物管

理技術の改良

(S45~)

1 生育調節剤

の効果査定

(1)-1)水稲除草剤(初期・初中期一発剤)

初中期一発剤6剤を供試した。すべての剤で除草効果は高かった。

水稲への影響は一部で軽微な生育抑制が認められたが実用上問題な

い範囲と判定とした。

(1)-2)水稲除草剤(シズイ)

供試した7薬剤で除草効果は高く、薬害はないか軽微であったた

め、シズイ防除薬剤として効果のある前処理剤または後処理剤との

体系処理で実用性が高いと判定した。

(2)畑作除草剤(アズキ)

供試した NP-55 は除草効果が高く、薬害は認められないため、小

豆における一年生イネ科防除薬剤として、他草種に効果のある前処

理剤との体系処理で実用性が高いと判定した。

(3)難防除雑草の発生実態解明と防除技術の確立

1) 大豆作雑草

播種時の土壌処理剤とバスタ液剤の混用処理によりメヒシバの残

草量は無処理区比で 40%程度減少したがマルバルコウはほとんど減

少しなかった。大豆生育期の大豆バサグラン処理はマルバルコウに

対して 3 葉期まで高い除草効果を示したが、エノキグサに対しては

葉齢に低くても除草効果は弱かった。タッチダウン iQ塗布処理によ

るコヒルガオの除草効果は小さかった。

2 水稲におけ

る高温登熟障

害軽減化技術

の確立

(1)新配合全量基肥肥料がコシヒカリの生育、収量、玄米外観品質に及

ぼす影響

新配合全量基肥肥料は、コシヒカリの生育、玄米収量、食味は慣行

と同程度のまま、胴割粒の発生を低減できた。窒素施用量は 6kg/10a

は耐倒伏性、5.1kg/10a 区は胴割粒の低減程度が劣るため、5.5kg/10a

が優れていると考えられた。

(2)新配合全量基肥肥料があさひの夢の生育、収量、玄米外観品質に

及ぼす影響

開発中の新配合全量基肥肥料の施用で「あさひの夢」の玄米収量お

よび品質が安定し、施用量は 9kg/10a が適していることが明らかに

なった。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

(3)地力の違いが玄米外観品質などに及ぼす影響

牛ふんもみがら堆肥の連年施用は増収とともに、葉色を高く維持し

て高温登熟障害(胴割粒や基部未熟粒)の発生を低減できることが明

らかになった。また地力窒素が多くなれば、コシヒカリ栽培の基肥

窒素は無施用または減肥でも同等以上の収量、品質を得ることがで

きることを確認した。

(4)収穫時期の違いが玄米外観品質などに及ぼす影響

高温条件で登熟したコシヒカリやヒノヒカリは胴割粒や基部未熟

粒の発生によって品質が低下しやすいため、収穫は平年並みの気温で

登熟した場合よりやや早く行う必要があると推察された。

(5)登熟初期の高温が水稲品種・系統の品質に及ぼす影響

普通期移植および高温登熟下における整粒比率がともに高いのは、

晩生種では「関東 270号」「羽 704」、早生・中生種では「ふくおこし」

「山形 133号」「東北 221号」「北陸 264号」、多収米では「「中系 3094」

中系 3087」「越南 255号」であった。

3 大豆の低収

要因の実態把

握と安定生産

技術の確立

県内5箇所で実態調査を行い、低収圃場は良好圃場より 15~45%減

収した。低収圃場では過去 10 年の大豆作付回数が多く数種の雑草が

多発していた。近年、労働時間が増えている作業として土づくり、雑

草防除が挙げられ、堆肥や緑肥の利用や難防除雑草の防除体系の確立

が安定生産につながると考えられた。

4 野菜の作期

拡大技術の確

(H26~28)

1 平坦地にお

けるキャベツ、

ニンジンの冬

季および早春

期どり技術

【冬期どりキャベツ】

・冬期どり寒玉系キャベツの基肥施用(追肥なし)に適した肥料は普通化

成8号であった。

【早春期どりキャベツ】

・春期どり春系キャベツの適品種は「来陽」で、播種適期は 10月 1日であっ

た。11 月 7 日(定植期)から 3 月 20 日までのべたがけ栽培で、4 月 8

日~13日に 2.6t/10aの可販収量を得ることができた。

【冬期どりニンジン】

・冬期どりニンジンの苗立ち率向上のための畦の処理方法は、牛ふんオガ

クズ堆肥の床面への薄い散布であった。

2 高冷地にお

ける冬季のア

スパラガス伏

せ込み栽培技

術の確立

(1) 冬季播種におけるセルトレイサイズの違いによる品質・収量へ

の影響

冬季にセルトレイに播種・育苗した場合、慣行のポリポットを

用いた育苗方法に比べ減収することが明らかとなった。セルトレ

イサイズが小さくなるにしたがって、その減収量は大きくなった。

(2) 前年夏季播種における定植期とセルトレイサイズによる品質・

収量への影響

夏季の播種では、定植期によらず 50穴セルトレイを用いて育苗

することで、慣行に比べ増収した。128 穴セルトレイでの育苗では

同程度、200 穴セルトレイでは減収した。また、50 穴セルトレイ

での育苗は、単価の高い出荷規格 L・LL 級の収量が多く、有利販

売が期待できる。

(3) 苗の越冬方法

苗で越冬するためには、苗を土中に伏せ込み育苗容器の隙間にま

でしっかりと土を密着させ根圏温度を確保する必要がある。とくに

育苗用土量が少ないほど土との密着が重要である。

また、育苗用土量が多いほど根量は多い。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

5 環境保全型

農 業 の 確 立

(H25~27)

1 果菜・葉菜類

の有機栽培に

おけるマメ科

緑肥の利用技

(1)秋まきマメ科緑肥の利用効果(高冷地)

1)播種法と播種適期

播種日を 10/17、10/31としたところ、生育量や鋤き込み量(乾物

重)が同程度であり、10月中旬~11月上旬が適期と思われた。後

作コマツナにでは裸地より緑肥を鋤込んだ区で生育量が大きかっ

た。10/17 の緑肥からの 10a当たり窒素供給量は、混播単播条件と

もに約 15kg で、後作コマツナの緑肥からの窒素吸収量は 2作合計

で 10.3~12.8kg、利用率は約 7~23.7%だった。

2)鋤込みによる後作夏秋トマトへの影響

緑肥鋤込み後の夏秋トマトでは、花房高さや平均節間長、茎径に

おいて播種法の違いは判然としなかったものの、緑肥なし条件より

も緑肥や施肥条件で生育が良い傾向だった。トマトの総重量は、緑

肥なし施肥条件が約 8.8t/10a と最大であった。緑肥からの窒素利

用率は、ヘアリーベッチ単播条件が約 18~26%となった。

(2) 夏まき緑肥の利用効果とヘアリーベッチの施肥試験

クロタラリアのハクサイへの窒素供給量は3kgN/10aであった。

ソルゴーは窒素鋤き込み量が少なく、後作ハクサイには窒素飢餓と

考えられる生育抑制が認められた。また、ヘアリーベッチの適正な

施用量は 3kg/10a程度であった。

(3) 窒素溶脱量と溶脱水量(ライシメータ試験)

緑肥を作付けることで窒素成分の溶脱を抑制することが明らかと

なった。しかし作付けを継続し、緑肥鋤き込み後作物を栽培しない

と、窒素成分の溶脱量が増えることがあるので注意が必要である。

(4) 塩基の溶脱量(ライシメータ試験)

緑肥を作付けることで塩基の溶脱量が減少した。溶脱量はカルシ

ウムが最も多く、次いでマグネシウム、ナトリウム、カリウムの順

であった。溶脱窒素と関係の高い塩基類はカルシウムとマグネシウ

ムであった。

(5) 緑肥利用ほ場における土着昆虫類等の発生と動向の解明

DNA解析によるセアカヒラタゴミムシのアオムシ幼虫補食性

について、モンシロチョウ pierisin 遺伝子をもとに、アオムシ特

異的プライマーを設計した。PCRによってゴミムシがアオムシを捕

食したことを確認できるのは、捕食後 5分で約 60%、1時間後以降

では 0%であった。セアカヒラタゴミムシ成虫の行動は、概ね午前

11時に停止し、午後6時頃から再び始まり、午前5時頃まで活発

となることが判明した。

2 野菜の有機栽

培に適した耕種

的管理技術の確

(1)作型別適品種の選定

1)キャベツ

キャベツの有機栽培では、品種は在圃期間の短い早生系の品種を

用い、アブラムシの防除が重要となることが明らかとなった。アブ

ラムシは、JAS農薬のみでの防除が困難なため、薬剤防除と合わ

せシルバー素材の利用など、耕種的な防除法を確立する必要がある。

2)ハクサイ

アブラムシが原因と思われるモザイク症状の被害が多大で、品種

比較を行うに至らなかった。ハクサイの有機栽培では、品種は在圃

期間の短い早生系の品種を用い、アブラムシの防除が重要となるこ

とが明らかとなった。アブラムシは、JAS農薬のみでの防除が困

難なため、薬剤防除と合わせシルバー素材の利用など、耕種的な防

除法を確立する必要がある。

3)ダイコン

キスジノミハムシ・カブラハバチ・ネキリムシ・アブラムシ等の

被害が多大で、品種比較を行うに至らなかった。ダイコンの有機栽

培は適品種を選定するよりも、適切な播種期と害虫の防除が重要と

なることが明らかとなった。問題となった害虫は、JAS農薬での

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

防除が困難なため、エンバクのすき込みなど、耕種的な防除法を確

立する必要がある。

(2)耕種的手法による生産性の向上

2)夏秋キュウリの有機栽培に適した仕立て法(平坦地)

4/24播種の夏秋キュウリ栽培で、整枝法の違いが上物収量や病害虫

発生に及ぼす影響を調べたところ、6/15~8/21の収穫期間で、上物

収量は「孫づる放任+摘葉あり」8.0t/10a、「孫づる放任+摘葉なし」

7.6t/10a、「孫づる 2節摘心+摘葉なし(対照)」6.8t/10aとなった。

病害虫の発生は、病害、虫害とも「孫づる放任ル放任+摘要あり」

が少なかった。

3)露地抑制ナス「かいてき仕立て」の有機栽培適性評価(平坦地)

6/29定植の露地抑制ナスの有機栽培で、仕立て方法の違いが上物

収量や病害虫発生に及ぼす影響を調べたところ、7/22~10/31の収穫

期間で、上物収量は「かいてき仕立て(摘葉あり)」6.0t/10a、「か

いてき仕立て(摘葉なし)」5.4t/10a、「慣行仕立て(対照)」4.7t/10a

となった。病害虫は「かいてき仕立て(摘葉あり)」のうどんこ病発

生が少なかった。

4)有機質資材の追肥効果の確認

秋どりハクサイにおける有機質肥料の追肥窒素利用率は、固形肥料

より液肥で高かったが、化成区と同等の生育は得られなかった。有

機質肥料を全量基肥として施用すると、化成区と同等の生育が得ら

れたため、初期生育を確保することが収量を確保するためには重要

と考えられた。

6 耕地の地力変

動に関する調査

1 県内主要土壌

の地力の推移と

変化要因の把握

(1)モニタリング調査 平成 26年度;峡南・富士東部地域

平成 26年度に調査を実施した峡南・富士東部地域 33地点について取

りまとめを行った。果樹園と普通畑では、交換性塩基類と可給態リン

酸が過剰傾向であった。一方、水田では交換性加里、転作水田では交

換性苦土と交換性加里が不足しており、地目によって土壌養分の過不

足に大きな違いが見られた。全炭素および全窒素は、果樹園では増加

傾向、水田と普通畑では横ばい、転作水田では減少傾向であった。

(2) 農業活動等に伴う炭素・窒素収支の評価

1)県内農耕地土壌の蓄積炭素・窒素量の実態調査

深さ 30cm あたりの土壌中の炭素及び窒素量は概ね黒ボク土、褐色

森林土、褐色低地土、灰色低地土の順に多く、有機物施用が各成分

の含有量に与える影響については明確な傾向は見られなかった。

2)温室効果ガス発生量調査

マルチ被覆による地温の向上と土壌水分率の安定化が再確認され

た。新施肥体系で栽培を行った場合、スイートコーンの収量は慣行

を上回ったが、キャベツの収量は慣行を下回った。温室効果ガスフ

ラックスは現在計算中。

(3)リン酸過剰圃場における適正リン酸施肥量と減肥可能期間の把握

褐色低地土でエダマメ、黒ボク土で小麦とダイコンを対象にリン

酸減肥試験を実施した。エダマメとダイコンでは、土壌の可給態リ

ン酸含量およびリン酸施肥の有無による収量の差は見られなかった

が、小麦では土壌の可給態リン酸含量が高い方が増収した。リン酸

無施用で栽培を行った場合でも土壌の可給態リン酸は減少しなかっ

た。

2 有機物連用

土壌における

地力窒素の評

作物跡地土壌の化学性は、いずれの区もリン酸が蓄積傾向にあっ

た。無窒素区以外では、稲わら堆肥 3.0t 区で交換性石灰が、牛ふん

堆肥区で交換性加里が蓄積していた。三要素区と比べて有機物施用

区は作物生産性が高く、有機物施用により地力が向上している事が

示唆された。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

7 肥飼料関係

の法規に基づ

く検査等

1 肥料 平成27年度は、現在まで肥料製造業者および販売業者への立入検査の実績

なし。

2 飼料 平成27年度中に立入検査を実施。

3 依頼分析 依頼分析は、依頼件数が7件、分析点数は11点、分析成分数は71成分

であった。減免措置による依頼分析は、依頼件数が1件、分析点数は1

点、分析成分数は9成分であった。

8 作物・野菜・

花き病害虫の

防除技術の改

(S54~)

1 野菜・花きに

発生する未解

決症状の実態

調査

(1)未解決症状の実態調査と依頼診断

H27年度は18件(作物3件、野菜11件、花き4件)の病害虫・生理障害

の診断依頼があった。

(2)アッサムニオイザクラ異常葉等の原因究明と対策

1)マンガンを含まない肥料

肥料をプロミックからロングトータル花き1号に切り替えることで、褐色

斑点症状が大幅に軽減された。また葉色が濃く重厚な葉となり品質も同等以

上となった。

2)ケイ酸処理

ケイ酸資材(シリカリュウ)の施用により褐色斑点症状が軽減され、特に

追肥として使用した場合に高い効果が得られた。品質面でも慣行と同等以上

となった。

3)鉢用土の改善

用土改善とケイ酸処理の組み合わせにより褐色斑点症状の軽減効果が得ら

れ、ピートモスをクラスマンへ置き換えた上でケイ酸処理を行った場合の効

果が最も大きかった。

4)鉢用土の見直し

赤玉土を主体に生籾殻とクラスマンを配合した新用土は褐色斑点症状が軽

減され、生育や品質も慣行と遜色なかった。籾殻くん炭を主体とした用土も

有望であった。

5)症状発生時の対策と用土の最適pH

症状発生時にケイ酸カルシウム資材を施用することで、それ以後の症状の

発生を抑制できた。用土の pH 矯正は症状の軽減に有効であり、6.5~7.0 が

最適と判断された。

2 新農薬の効

果査定

(1)新農薬の登録に向けた効果・薬害の検討

キュウリのうどんこ病及び斑点細菌病に対する殺菌剤各1剤、未成熟とう

もろこしのアワノメイガに対する殺虫剤1剤について委託試験を行い、農

薬登録のための基礎データとした。

3 薬剤に対す

る耐性菌及び

感受性低下害

虫のリスク管

(1)主要病害虫の薬剤感受性検定

1)コナガの薬剤感受性検定

鳴沢ほ場から採取したコナガは、フルベンジアミド水和剤に対し感

受性の低下が見られた。さらに、クロラントラニリプロール水和剤

に対し、塩山ほ場のコナガは感受性の低下が見られた。一方、スピ

ノサド水和剤コナガに対し高い殺虫効果を示した。

9 環境保全型

農業における病

害虫防除技術の

確立

1 施設トマト・キ

ュウリにおける

微小害虫の耕種

的・物理的防除

技術の確立

(1)施設トマトにおける微小害虫の生息分布及びハウス内温度の把握

冬期の施設トマト栽培におけるハウス内のコナジラミ類は、抑制作

終了後に減少した。夏期におけるハウス内のコナジラミ類、アザミウ

マ類は、半促成作終了後、株の片付け、蒸し込みより減少した。

(2)施設キュウリにおける微小害虫の生息分布及びハウス内温度の把

冬期の施設キュウリ栽培におけるハウス内外のコナジラミ類、アザ

ミウマ類の発生は少なかった。夏期におけるコナジラミ類、アザミウ

マ類は、半促成作終了後、株の片付け、蒸し込みにより減少した。

2 施設トマト・キ

ュウリにおける

主要病害の物理

的防除技術の確

(1)亜リン酸肥料による発病抑制効果

亜リン酸肥料 1,000倍液の潅注処理は、キュウリうどん粉病に対し

発病抑制効果は無く、トマトうどん粉病に対しては、発病抑制効果

は判然としなかった。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

10 鳥獣害防止

策の検証

1 既存技術の改

善による獣害防

止効果の向上

新型柵を開発するとともに、道路からの侵入防止技術の基礎を確立し

た。

11 野菜・花きの

栽培改良

1 ヤマトイモの

効率的種いも生

産技術の確立

(1)効率的な種いも大量

増殖技術の確立

2)簡易定植機利用体系での播種時期と施肥量、機械収穫の利用性

ア.7月播種体系での緩効性肥料の効果

小切片 2g で7月播種体系で施肥利用では、CDU よりも緩効性であ

るロング 70 日タイプを用いると CDU 区よりもイモ長やイモ重など生育は

大きくなったが、20~80g の適イモ割合は 30%程度と低かった。

イ.浅植条件による機械収穫の利用性

浅植えの機械収穫利用性では、イモ重は 20g 程度と小さく、萌芽率

は 90%未満となり、適イモ割合は 55%以下に留まった。イモが切断さ

れたり、コンベア部での損傷割合は低かった。1a の収穫時間は、手

収穫の約 80 分に対して約 40 分と 50%程度削減された。

(2)丸種いもにおける栽培技術の確立

1)栽植密度・減肥による形状改善

施肥量 N10~30kgと栽植密度 5,000~7,214 による収量、形状等の品

質を比較したところ、いずれの条件でも1株約 300~500g で、切いも

は 300g以上割合が低かった。丸種いもでは、N=20kgで 7,214株/10a、

N=30kgで6,250株/10a条件が種イモ使用量を差し引いた収量が多かっ

た。形状については、丸種いもと切イモでの乱形割合やくびれ程度の

違いは判然としなかった。丸種いも条件では、有意差がないものの、

くびれ発生本数は栽植密度より施肥量が少ないほど多くなってしまう

傾向であった。

2)かん水による形状改善

丸種いも・切いも両方でかん水条件の方が1株重、最大イモ重、収

量が多い傾向で、丸種いもでは、かん水条件であれば N30kg よりも少

ない N20kg でも栽培が可能と考えられた。形状は、1株重、収量の多

い条件ではくびれが連動して多くなる傾向なのでかん水条件の方が形

状が乱れる割合が高かった。

(3)丸種いもにおける貯蔵技術の確立

1)伏せ込み方法・被覆資材と種いも消毒剤の検討

ア.被覆・伏せ込み条件等の把握

切断面のない丸種いもは切いもに比べて減少率、生存率ともに優れ

ていた。伏せ込み方法では、切いもにおいて不織布+盛土 25cm条件が

最も生存率が高い傾向であったが、腐敗度や各カビ被害度との関連に

ついて判然としなかった。資材では、切いもで無処理<消石灰<ベル

クート Fの順に生存率が高い傾向だった。

2 早だしスイー

トコーンの低温

障害を軽減する

ための栽培管理

技術

(1)分げつ発生のためのトンネル管理技術

1)無加温ハウス栽培での栽培実証

1月 26日播種、2月 5日播種の無加温ハウス栽培で、いずれも本葉 5枚以

降トンネルを終日全開または日中全開とすることで、分げつ発生数が1.6~

2.0 本/株となり、収穫時の穂重や先端不稔はほぼ同程度となった。トンネ

ルを閉めきった場合、穂重、先端不稔とも不良となった。

2)一重トンネル栽培での実証試験

2月 23日播種、3月 5日播種の一重トンネル栽培で、いずれも本葉

5枚以降トンネルのすそを千鳥開放した場合と、すそを千鳥で朝開け

夕方閉めた場合では、処理直後の草丈や茎径に若干差がみられたが、

分げつ発生数に大差はなく、剥きみ重や先端不稔は 2月 23日播種が

やや劣った。

(2)初期生育を促進するための施肥管理技術

1)スイートコーンの耐凍性向上

リン酸カリウム液肥の局所施肥(マルチ穴施肥、セル苗浸漬)によ

る、作物への悪影響は認められなかった。レハロース資材の凍霜害軽

減効果は本試験では認められなかった。

2)スイートコーン凍霜害事後対策

- 145 -

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

スイートコーン凍霜害の事後対策として、尿素など窒素系の施用が有効で

ある可能性が示唆された。その要因は主幹の葉面積の拡大ではなく、

分げつが大きくなることであると考えられた。また、分げつは凍霜害

などで主幹の葉が損傷を受けたときに、雌穂の充実に重要である。

3 富士北麓地域

における夏秋ど

りスイートコー

ンの倒伏軽減技

術の確立

(1)短稈栽培技術の検討

スイートコーンの短稈栽培技術を行う場合、5葉期定植は草丈を低く

することはできるが品質の低下を招く恐れがあるため来年度再検討

する必要性がある。

(2)短稈栽培における施肥量の検討

1)移植栽培

3.5~4.0葉期の苗を移植すると、草丈・重心が低くなったが、実の

品質を確保するには基肥+追肥(kgN/10a)が 15+10(慣行)必要だ

った。マルチ下に LP30 を 20kgN/10a 施用することで、慣行区と同等

の生育が確保できた。

2)直播栽培

基肥量を慣行より半減しても 400g以上の実は取れたが、分げつの発

生等の樹勢は弱かった。基肥 2.5割減区では最も生育が優れていたが、

理由としては LP50 を使用することで生育期間を通して肥料の供給が

続き、降雨による急激な流亡が抑えられたためと考えられた。

(3)倒伏後の品質低下抑制技術の確立

強制倒伏試験において出穂期までの皮付き重に対する葉面散布効

果は1回処理で効果が見られた、一方受粉期においてはC剤の効果

が高かった。

4 富士北麓地域

における据え置

き株を活用した

切り花の新作型

開発

新テッポウユリの高冷地露地栽培において、1 年目に彼岸需要時期

に出荷が、さらに 2年目に盆出荷が可能な品種は、雷山 1号、オーガ

スタ、雷山 2号セレクト、セプタの5品種であった。

トルコギキョウでも 1年目の株を据え置き栽培

することで 2 年栽培が可能で、さらに需要期に採花が可能な品種が

明らかとなった。

スターチスの据え置き栽培にはビニールハウ

ス無加温栽培、冬期トンネル栽培が適する。ハイブリット系、シネ

ンシス系で越冬が可能でシニュアタ系はビニールハウスの無加温栽

培のみ越冬が可能であった。

ラナンキュラスの据え置き栽培ではビニールハウス無加温栽培お

よび露地トンネル栽培で越冬可能な品種が明らかとなった。

5 変温管理によ

る低コスト鉢花

栽培技術の確立

(1)変温管理に適する品目・品種の選定

1)シンビジウム

ア. 日没時短時間昇温が栄養生長に及ぼす影響

シンビジウム 1 年生苗は、2 月上旬より日没後昇温 22℃ 3 時間後

12℃加温管理を行っても、慣行である 18℃加温とほぼ同じ生育をする

ことが明らかになった。暖房稼働時間は 全期間を通して 14%の削

減となった。

イ.高温処理開始時期が花茎発生に及ぼす影響

冬期の加温温度を 5℃管理から 22℃への高温処理開始時期について

検討した結果最も遅い 4月 2日開始でも年内出荷が可能であることが

明らかになった。暖房稼働時間は 4月 2日から高温処理を開始するこ

とで 3月 2日開始を対照とした場合と比較して約 4割の削減となった。

2)木本性鉢花類

変温管理によりクリスマスエリカは開花始期が遅れたが、草姿に有

意な影響はなかった。ピラミッドアジサイおよびアッサムニオイザク

ラに関しては変温管理による負の影響はみられなかったため、変温管

理による省エネ効果が期待された。

3)草本性鉢花類

変温管理に対する反応には、鉢花の品目、品種間で差がみられた。

シクラメン「プルマージュオレンジ」およびトコナツナデシコではい

ずれの調査項目においても変温区と対照区で有意な差はみられなか

ったため、変温管理による省エネ効果が期待された。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

12 県産小麦「ゆめ

かおり」の栽培

技術の確立と利

用に関する研究

1 「ゆめかおり」

の安定的な栽培

技術の確立

(1)施肥試験

倒伏させずに収量を確保するための施肥窒素量は、本所(平坦地・

灰色低地土)ではトータル 12kg/10a 程度、八ヶ岳試験地(高冷地・

黒ボク土)では基肥 4kg/10a、追肥 4~8kg程度が妥当と考えられた。

(2)追肥施用時期試験および生育指標値の作成

茎立期約 2 週間後の追肥では穂数の減少や遅穂の多発により、収

量・品質が低下した。茎立期の茎数および葉色を用いることで収量や

倒伏程度が、出穂期の葉色を用いることで子実タンパク質含有率が推

定できるものと考えられた。

(3)播種期・刈取時期試験

播種期が早いほど、播種量が多いほど出穂期、成熟期は早まり、稈

長は長く、穂数は多くなった。収量や品質については穂発芽の影響か

ら年次の確認が必要である。追肥量の違いによる生育・収量・品質へ

の明確な影響は認められなかった。

13 豚用飼料の栄

養調整による環

境負荷低減に関

する研究

1 栄養調整飼料

の給与から得ら

れた堆肥の施用

効果

山梨大学で選抜された乳酸菌給与した豚の糞尿から作成された堆肥

は、乳酸菌無添加堆肥、市販乳酸菌添加堆肥と比較して、成分には大

きな相模止められなかったが、作物の反応が異なることが明らかとな

った。

3 果樹試験場の試験研究概要

研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

1 生食用ブドウ

新品種の育成

(H16~ )

1 早生系オリジ

ナル品種の育成

2組合せの交雑を行い、132粒の種子を獲得した。実生の選抜では結

実した 44 個体について果実調査を行い、9個体を継続、果実品質の劣

る 35個体を淘汰した。

一次選抜系統「生食ブドウ山梨4号」ついては、複製樹(5年生、101-14)

における収穫始めは 7/27 日、果粒重は 8.8g 程度、糖度は 20%程度で

食味も良好であった。また、試食検討会での評価も高く、約9割が登録

の可能性があるとの回答であった。

2 大粒で外観の

優れるオリジナ

ル品種の育成

2組合せの交雑を行い、193粒の種子を獲得した。実生の選抜では結

実した 39 個体について果実調査を行い、3個体を一次選抜、2個体を

継続、1個体を母本、果実品質の劣る 33個体を淘汰した。

一次選抜した3個体については、「7-1×22-22(シャインマスカット

×オリエンタルスター)」は赤色で、収穫始めは 8 月上旬、マスカット

香があり、果粒重は 12g 程度であった。「7-21×1-17(サニードルチェ

×シャインマスカット)」は赤色で、収穫始めは 8 月中旬、マスカット

香があり、果粒重は 17g程度であった。「10-50×48-3(4-11×1-11×生

食ブドウ山梨5号)」は赤色で、収穫始めは9月上旬、果粒重は 24g 程

度であった。場内試食検討会での結果、いずれも半数以上が品種の可能

性があると回答したので、「7-1×22-22」は「生食ブドウ山梨6号」、

「7-21×1-17」は「生食ブドウ山梨7号」、「10-50×48-3」は「生食ブ

ドウ山梨8号」の系統番号を付与し一次選抜を行った。

二次選抜系統「生食ブドウ山梨3号」については、本年は果粒肥大が

良好で果粒重は 22.7gと大粒で食味も良好であった。場内の試食検討会

では玉張りと着色が良好であったことから、9割以上のパネラーが品種

としての可能性があると回答した。一部の果房に粗着で果粒の大きさに

ばらつきが見られたが、オリジナル品種ブランド化推進会議の意向を受

けて品種登録申請を行った。

一次選抜系統「生食ブドウ山梨5号」については、原木において果粒

肥大及び果皮色の深色化に問題は無かったが、原木及び複製樹ともに渋

味が強かった。また、複製樹においても果皮色の深色化及び渋味が確認

されたため、今後品種登録申請は進めず育成母本とする。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

3 べと病抵抗性

品種の育成

抵抗性品種の育成では、2組合せの交雑を行い、585粒の種子を獲得

した。H26年度交雑実生については、直接噴霧接種法(発病度 60以下)

により、「シャインマスカット」×「オリエンタルスター」では6個体、

「シャインマスカット」×「7-21×1-27」では2個体を予備選抜した。

H25年度交雑実生については、5個体を緑枝接ぎした。

病抵抗性育種母本の育成では、H26年度交雑実生について直接噴霧接

種法(発病度 50以下)により、「シャインマスカット」×「キャンベル・

アーリー」では5個体、「生食ブドウ山梨 5 号」×「キャンベル・アー

リー」では5個体を予備選抜した。H25 年度交雑実生については、12

個体を緑枝接ぎした。

4 系統適応性検

定試験

(生食用)

ブドウ第 13 回系統適応性検定試験(生食用)に供試されている3系

統について栽培特性、果実特性を調査した。

「安芸津 28号」(赤色系四倍体):収穫始めが 8/24日、果粒重が 18g

程度であり、糖度 21%以上で食味は良好であった。しかし、昨年に引

き続き、果皮の着色は不良であった。また、場内試食検討会における官

能評価の結果、食味は良好だが見た目のインパクトがないことから、品

種の可能性があるという意見は少なかった。

「安芸津 29号」(黄緑色系四倍体):収穫始めが 8/5日、果粒重が 13g

程度で、マスカット香があり食味は優れるが、本年は花ぶるいにより着

粒数が少なかったため、商品性のある房は少なかった。また、場内試食

検討会の結果、「「シャインマスカット」があれば必要ない」などの意

見が多く、品種の可能性があるという意見は少なかった。

「安芸津 30号(紫黒色系四倍体)」:収穫始めが 8/19日、果粒重が 24g

程度であった。本年は、着粒は良好で密着した果房生産ができた。一方、

1房当たり 1粒程度の果頂部裂果がみられ腐敗果が発生した。場内試食

検討会の結果、裂果等の問題があるが、果粒肥大、着色は良好といった

意見が多く有望系統であると思われた。

「安芸津 28号」および「安芸津 29号」は継続、「安芸津 30号」は有

望として報告し、平成 27年度果樹系統適応性検定試験成績検討会(落葉

果樹)において3系統とも「継続調査」となった。

2 醸造用ブドウ

新品種の育成

(S25~ )

1 ワイン品質に

優れた醸造用品

種の育成

1組合せの交雑を行い、478粒の種子を獲得した。平成 25年度交雑実

生は、1 組合せ計 35 本を圃場に定植した。平成 26 年度交雑種子は播種

し、ガラス室に 63本の幼苗を仮植した。

一次選抜対象 131 個体の生育状況を観察し、結実した 69 個体の果実

特性を調査した。その結果、新たな一次選抜個体はなく、未決実個体も

含めて 97個体を継続、栽培特性、果実特性から 34個体を淘汰とした。

二次選抜対象2個体の栽培特性、果実特性を調査し、試験醸造を行って

ワイン品質を調査した。その結果、両個体とも継続とした。

前年までに二次選抜した赤ワイン向けの 4 個体(W-411)、(W-1010)、

(W-1054)、(W-1852)については、栽培特性、果実特性を調査し、試験醸

造を行いワイン品質を調査した。その結果、4個体とも栽培特性、果実

特性が安定し、ワイン品質にそれぞれ特徴があることから、次期ブドウ

系統適応性検定試験に供試する候補として、「ブドウ山梨 55号(W-411)」、

「ブドウ山梨 56号(W-1010)」、「ブドウ山梨 57号(W-1054)」、「ブドウ山梨 58

号(W-1852)」の系統番号を付与した。

2 耐病性を有す

る醸造用品種の

育成

3組合せの交雑を行い、合計 2308粒の種子を獲得した。平成 25年度

交雑実生は、2組合せ計 85本を圃場に定植した。平成 26年度の4組み

合わせの交雑種子は、播種後得られた幼苗に、直接噴霧法によるベと病

耐病性の予備選抜を行い、ガラス室に合計 127本の幼苗を仮植した。一

次選抜対象 111 個体の生育状況を観察し、結実した 44 個体の果実特性

を調査した。その結果、新たな一次選抜個体として 1個体(W-2829)を

選抜し、未決実個体も含めて 61 個体を継続、栽培特性、果実特性から

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

47個体を淘汰とした。

二次選抜対象5個体の栽培特性、果実特性を調査し、果実量が確保で

きた 1 個体は試験醸造を行ってワイン品質を調査した。その結果、3個

体を継続とし、病害発生や裂果の発生等から2個体を淘汰とした。前年

までに二次選抜した 1個体については、継続して調査を行った。育種母

本等の 5個体について、リーフディスク法によるべと病耐病性を評価し、

「W-2137」の耐病性が比較的高く、赤ワイン向けの交雑親として有望だと

考えられた。

3 導入主要品種

系統の特性調査

導入した「シャルドネ」、「メルロ」、「カベルネ・フラン」、「カベルネ・

ソーヴィニヨン」、「プティ・ヴェルド」の主要5品種 12系統の特性調査

を行った。「メルロ」では、昨年までと異なり、3系統全ての着色が同

程度であった。「カベルネ・フラン」では果実抽出液による比較で、

「CF-327」の方が着色性に優れる傾向が見られた。「カベルネ・ソーヴィ

ニヨン」では、昨年までと同様に「CS-337」の酸抜けがやや早い傾向が

観察された。果実抽出液による比較では「CS-191」が着色性に優れる傾向

が見られた。

4 系統適応性検

定試験(醸造用ブ

ドウ)

ブドウ第 12 回系統適応性検定試験(醸造ブドウ)に供試しているブド

ウ山梨 48号(以下 48号)とブドウ山梨 49号(以下 49号)の白ワイン向け

2系統について、栽培特性、果実特性、ワイン品質を調査した。果樹試

験場主催のワイン品質検討会における評価は 48 号、49 号共に対照品種

の「シャルドネ」よりやや低く、「甲斐ブラン」と同程度であった。ただし、

48 号は8月下旬に収穫できる早生品種であることと、農食事業 26087

コンソーシアムでワインの品質評価を依頼している一般社団法人葡萄

酒技術研究会の評価で、「新品種候補としての可能性あり」との回答が

77.4%あったことから、48 号を「命名希望」とし、49 号は裂果性等が

認められるため、「継続調査」として要望した。平成 27年度果樹系統適

応性検定試験成績検討会(落葉果樹)において 48 号が新品種候補として

選抜され、49号は「試験中止」となった。以上をもってブドウ第 12回系

統適応性検定試験(醸造ブドウ)は本年度で終了となった。

3 核果類新品種

の育成

(S63~ )

1 モモ新品種の

育成

(1)果実品質に優れる品種の育成

4組合せの交雑を実施し、451 個の核を獲得した。平成 26 年度交雑

実生は緑枝接ぎした後、53個体を定植した。

実生の選抜では 97個体について果実調査を行い、2個体を二次選抜、

16 個体を継続、花粉の無い個体や枯死を含む 116 個体を淘汰した。新

たに二次選抜系統としたのは「モモ山梨 15号」と「モモ山梨 17号」で

ある。

「モモ山梨 15 号」は「川中島白桃」の前に成熟する中生個体で、花

粉を有し、食味に優れていた。「モモ山梨 17 号」は「日川白鳳」とほ

ぼ同時期に成熟する硬肉モモで玉張りよく、食味は「日川白鳳」より

優れていた。

(2)省力栽培可能な品種の育成

7組合せの交雑を実施し、578個の核を獲得した。平成 26年度交雑実

生は緑枝接ぎした後、55個体を定植した。

実生の選抜では結実した 84 個体について果実調査を実施し 18 個体

を継続とし、花粉の無い個体や枯死を含む 80個体を淘汰した。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

2 スモモ新品種

の育成

早生品種の育成と高品質な品種の育成を目標とした6組合せの交雑

を行い、557 個の核を獲得した。平成 26 年度交雑実生は緑枝接ぎした

後、15個体を定植した。

実生の選抜では結実した 73 個体について果実調査を行い、1個体を

一次選抜、12個体を継続、枯死を含む 64個体を淘汰とした。一次選抜

とした「20-10(12-41×レッドエース)」は「貴陽」と「太陽」の間に

収穫となる中生系統で、果皮全面が紅色に着色した。果実重は 140g程

度とやや小さいが食味がよかった。本個体を「スモモ山梨 32 号」とす

る。

3 オウトウ新品

種の育成 4組合せの交雑を行い、457個の核を獲得した。平成 26年度の交雑実

生は、緑枝接ぎ後 52個体を 12月に定植した。

本年度結実した 27 個体について果実調査を行った。1 個体を品種登

録申請、6 個体を継続、奇形を含む 25 個体を淘汰した。二次選抜系統

「オウトウ山梨 7号」は、開花期が既存品種や「甲斐オウ果6」より早

く、なおかつ交配親和性があること、花粉量が「ナポレオン」や「紅秀

峰」より多いことなどから、受粉樹としての活用を図る目的で品種登録

申請した。

4 系統適応性検

定試験

(1)モモ

農研機構果樹研で育成されたモモ第9回系統適応性検定試験供試樹

7系統について、系適試験調査方法に基づき調査した。本年で結実4年

目となり、本来の果実特性が確認できはじめている。

「モモ筑波 128号」は「日川白鳳」よりやや遅く収穫始めとなった。

果実は 200g程度と小玉で縞状に着色した。また、食感もよくなかった。

「モモ筑波 130号」は無着色、半不溶質の中生系統である。生理落果や

変形果が連年多発し栽培性に劣った。これらのことからこの2系統を

「試験中止」、その他の5系統については「継続調査」として要望した。平

成 27年度果樹系統適応性検定試験成績検討会(落葉果樹)において、「モ

モ筑波 127 号」が早生、大玉、高糖度であることから新品種候補として

選抜され、「モモ筑波 128号」が「試験中止」となり、他の5系統について

は「継続調査」となった。

(2)スモモ

農研機構果樹研で育成されたスモモ第2回系適試験の2系統につい

て、系適試験調査方法に基づき調査を行った。「スモモ筑波6号」は「ソ

ルダム」より 5日早く収穫始めとなった。花芽の着生がやや少なかった。

糖度は「ソルダム」より高かったが、裂果が多発し、好ましくない香り

を有していた。「スモモ筑波7号」は「サマーエンジェル」と同時期に

成熟した。収穫後の果皮の褐変がやや目立った。果実重は 128gと「サ

マーエンジェル」よりも小さかったが、肉質は緻密で食味がよかった。

また日焼けの発生が「サマーエンジェル」より少なかった。両系統とも

「継続調査」として要望した。平成 27 年度果樹系統適応性検定試験成績

検討会(落葉果樹)において、両系統とも「継続調査」となった。

4 バイテク利用

による新品種の

育成

(S55~ )

1 ブドウ主要品

種の茎頂組織培

養によるウイル

スフリー個体の

作出

それぞれ茎頂培養した1個体から、「ピオーネ(塩山系)」は4本、「ゴ

ルビー(一宮系)」は3本、「BKシードレス」は4本の苗木を養成した。

また、ウイルス検定を行い、ウイルスフリー個体であることを確認した。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

5 ブドウ優良品

種選抜と栽培技

術の確立

(S59~ )

1 ブドウ優良品

種の特性調査(第

4次)

(1)優良品種の特性調査

検討8品種について、果実品質調査および生育特性調査を行った。開

花期の天候に恵まれ、果粒肥大は概ね良好であった。梅雨明け以降乾燥

が続いたが、8月下旬に急激な降雨があり、裂果の発生を助長した。そ

の後9月上旬まで曇雨天が続いたため、糖蓄積が停滞した。検討品種の

今年の目立った特性は以下のとおりである。

「黒いバラード」:成熟期が8月上旬、GA 処理時のフルメット加用に

よる果粒肥大促進効果は認められなかった。

「ブラックビート」:成熟期は8月中旬、果粒肥大促進を目的とした環

状剥皮を行ったが、効果は判然としなかった。

「ベニバラオー」:短梢剪定樹において花穂の着生数が非常に少ないた

め、短梢栽培の適応性は低い。

「シャインマスカット VF」:成熟期は9月上旬、環状剥皮により、果

粒肥大が促進された。

「サニードルチェ」:成熟期は9月上旬、満開時と満開2週間後の GA

処理時フルメットを加用すると果粒肥大が促進され、しぼみ果および裂

果の発生は軽減された。

「天山」:成熟期は9月中旬、果粒重は 33.9gと非常に優れたが、果

梗部裂果及びかすり症の発生が多かった。

「サンヴェルデ」:成熟期は8月中旬、2回目の GA 処理時にフルメッ

トを加用すると糖度は若干低下するが果粒肥大促進効果が認められた。

「クイーンニーナ」:成熟期は9月上旬、果梗部裂果の発生が見られ

た。

(2) 「サニードルチェ」のジベレリン処理方法の検討

ジベレリン処理を1回処理法で行うと、2回処理法よりも糖度が高く、

着色は向上し、房形も良好であった。1 回処理法で果梗部裂果の発生が

やや多かったが、有意な差は認められなかった。

(3)「シャインマスカット」の果粒肥大促進方法の検討

簡易雨よけ施設を設置することで、若干の果粒肥大促進効果が認めら

れた。

展葉 6~8枚時に低濃度フルメットもしくは尿素を花穂に処理すると、

1g程度の果粒肥大促進効果が認められた。複合処理を行うとさらに効

果は大きくなった。

(4)「シャインマスカット」における「かすり症」発生抑制技術の検討

10、11 月の県産果実の競争力を上げるため、成熟期の抑制的調節を目

指し検討を行った。慣行栽培において収穫時期を遅らせた場合、果粒の

黄化および軟化、香気成分の減衰、晩腐病等の病害の発生が問題となる。

袋かけにおいて青竹袋を使用すること、第 2回目 GA処理にフルメット液

剤を加用すること、雨よけ施設を利用することにより大幅な生育抑制、

棚持ち性の向上効果が認められた。

次年度からは、新規課題として長期貯蔵技術と合わせた試験を行う。

(5)「シャインマスカット」における抑制栽培方法の検討

「シャインマスカット」のハウス栽培を中心に、低糖度が問題とな

っているため、反射マルチを利用した高糖度生産技術を検討した。果

粒軟化期~収穫時にマルチを行うことで、0.5~1.0%程度の糖度上昇効

果が認められた。反射マルチの効果を高めるためには、棚下の採光を

高める新梢管理と、新梢の二次伸長を抑制する管理(施肥、灌水)が

重要になると考えられる。

(6)ブドウ新品種におけるハウス栽培適応性の検討

9月 2日の適期に収穫(収穫直前に灰色かび病防除)し-1℃で貯蔵し

た。貯蔵 2 ヶ月(11 月 2 日)で、灰色かび病の発生により品質は低下

- 151 -

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

し、商品性はなかった。ただし、モミガラ区は灰色かび病や腐敗果の

発生は比較的少なかった。MA 包装資材は、異臭の発生や食味の低下が

あり、今後、酸素の透過量などの検討が必要と考えられた。本年度、

灰色かび病が多発した原因として、収穫時の天候が考えられるため、

今後の検討課題となる。また、貯蔵前に果房を次亜塩素ナトリウム溶

液に浸漬処理することで、灰色かび病の発生を抑制する効果がみられ

た。灰色かび病や腐敗果は高湿度条件下で多発する傾向があり、庫内

の湿度を検討する必要があると考えられた。

5℃貯蔵では、貯蔵 2ヶ月(11月 2日)で、灰色かび病の発生により

品質は低下し、商品性はなかった。モミガラ区は灰色かび病や腐敗果

の発生は少なく、3ヶ月後まで貯蔵が可能であった。

10月 16日の遅い時期に収穫(収穫直前に灰色かび病防除)し-1℃で

貯蔵した。貯蔵 2ヶ月(12月 16日)では、腐敗果や裂果の発生は少な

く、果実品質に優れ、商品性があった。

しかし、フレッシュホルダーを装着しない慣行区は穂軸が褐変化し、

商品性が低下した。貯蔵 2 ヶ月以降の品質については現在調査中であ

る。

6 環境変動に対

応したブドウの

着色向上技術の

開発

(H24~28)

1 着色しにくい

ブドウ品種の着

色向上技術の開

(1) 着色しにくい品種における技術の体系化

「ピオーネ」において、着色不良が多発する状況での試験となった。

環状剥皮と GA1 回処理を組み合わせた区において十分な着色向上効果

が認められた。赤色品種では、反射マルチと摘葉処理を組み合わせた

区で効果が認められた。

(2)現地優良系統の比較試験

導入系統はウイルス感染が認められていたが、茎頂培養により本年

度フリー系統が得られた。今後、既存系統との着色性の比較を行う予

定である。なお、現地で栽培されている「ピオーネ」導入系統につい

て果実品質を調査したところ、本年も着色は優れていたが、大房生産

を避ける管理が徹底されていたことも良着色の一因と考えられた。

(3)着色向上資材の利用

着色向上が期待される植調剤の処理による着色向上を検討した。「ピ

オーネ」ではフラスター液剤において顕著な新梢伸長抑制効果が認め

られ、着色もやや向上した。「赤嶺」において、サンキャッチ液剤散布

により着色が向上し、アントシアニン含量が増加した。年次反復試験

を行う必要がある。

(4) 土壌マルチング処理が着色及ぼす影響の把握

「ピオーネ」において前年度まで効果が高かったタイベックマルチ処

理については、異常な高昼温状況となった本年では、高温障害の発生

を助長する傾向が認められた。一方、赤色品種では着色向上効果が高

く、タイベックマルチと比較してシルバーマルチでやや効果が高い傾

向があった。

7 一文字整枝短

梢剪定栽培によ

るブドウの省力

栽培技術の開発

(H26~30)

1 台木種類の検

討 (1) 各種台木の特性調査

8種類(1202,101-14,3309,St.G,Gloire,5BB,188-08,SO4)の台木を

供試し、発芽率、発根率、向地角、根量を調査した。

発芽率、発根率は 80~100%で、5BBにおいてやや低い傾向が見られた。

また 3309では、花穂のみ先行して発芽した株が見られ、生育が遅延し

た。

(2) 台木品種の違いと穂木品種の生育特性

「シャインマスカット」においては、101-14台が他の台木に比べ2

日程度発芽時期が早かった。また「ピオーネ」においては、Gloire台

が他の台木に比べ3日程度発芽時期が早かった。果実品質については、

「シャインマスカット」においては、101-14台と SO4台で玉張りが劣

- 152 -

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

る傾向が見られ、「ピオーネ」においては、188-08台で玉張りが優れ、

Gloire台で玉張りが劣る傾向が見られた。次年度以降も継続して、生

育特性を確認していく。

2 新梢管理・果房

管理技術の検討 (1) 新梢管理の省力化技術の検討

各試験区の副梢長、果実品質、一部の試験区の展葉数および葉面積を

調査した。詳細は解析中であるが、ピオーネでは房先5枚摘心+フラスター

処理区が玉張りも良く着色が良い傾向であった。次年度は、省力化程度

の評価として、摘心回数および誘引回数、作業時間について調査する。

(2) 房型改善方法の検討

試験区の果実品質、房横長、支梗長を測定した。「巨峰」においては、

処理区間で大きな差は見られなかったが、「ピオーネ」においてフラス

ター処理(展葉9枚時)を施した処理区では房の横張りが小さい傾向で

あった。

8 ブドウウイル

スフリー苗育成

供給事業

(S56~ )

1 原母樹の育成

と母樹供給

(1)原母樹の育成と母樹供給

各原母樹園の維持、管理を行った。

(2)ウイルスフリー化した「甲州」の特性調査

「甲州」9系統が結実したので果実調査を実施し、うち 7系統につい

て、メルシャン株式会社に試験醸造を依頼した。「つるひけ」の発生に

一部系統間で違いが見られたので、引き続き、調査を継続する。

2 育成個体のウ

イルス病検定 平成 26年度に接木した台木 26個体、供給品種 18個体、平成 27年度

に接木ぎした母樹園の台木 26個体、供給品種 16個体について指標植物

の病徴を観察したが、ウイルス症状は認められず、無毒を確認した。

9 醸造用ブドウ

の高品質化に向

けた栽培技術の

確立

(H20~29)

1 台木の種類の

検討 (1)台木品種の種類が樹体生育および果実品質に与える影響

「甲州」について、グロワール台は果房重が大きいが、酸含量が高く、

熟期が遅れる傾向がみられた。101-14 台は糖度が高いが、剪定量が多

く、収量が少なかった。3309 台は収量が多かった。その他の品種につ

いては、昨年同様、グロワール台や 3309台の果房重が 101-14台より大

きい傾向がみられた。「甲州」「アルモノワール」「カベルネ・ソーヴィ

ニヨン」は「つるひけ」の発生が多かった。

(2)除葉の有無が果実品質に与える影響

「メルロ」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」について、除葉の効果を

確認した。除葉無し区の酸含量がやや多い傾向がみられた。また、ベレ

ゾーン前に実施しても、日焼け等の果粒への影響はみられなかった。

(3)白色シートの敷設幅が赤ワイン用ブドウの果実品質に与える影響

白色シートのマルチ処理により、昨年同様、「メルロ」「カベルネ・ソ

ーヴィニヨン」で糖度の上昇および酸含量の低下が早まり、熟期が早く

なる傾向がみられた。その効果は 100cm幅の方が 50cm幅より高かった。

(4)現地における甲州種の多収園の調査

現地における甲州種の多収穫園の実態を把握するため、甲府市、甲州

市で3園の調査を行った。園によっては 10a 当たり4tの収穫量であっ

た。結実向上には開花前の摘心やフラスターにより樹勢を落ち着かせること

が重要と思われたが調査初年度であり、引き続き調査を実施していく。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

2 整枝・剪定方法

の検討

(1) 整枝・剪定方法が樹体生育および果実品質に与える影響

「甲州」について、ベレゾーン期は棚仕立ての方が早かった。棚仕

立ては果房重が大きく、収量が多かった。棚短梢は熟期がやや遅れる傾

向がみられた。垣根仕立ては夏季剪定量が多く、樹勢が強い傾向がみら

れ、特にギヨは粗着で果房重が小さく、低収量であった。「カベルネ・

ソーヴィニヨン」、「シャルドネ」についても、昨年同様、棚の方が密着

果房で果房重が大きい傾向がみられ、「シャルドネ」では裂果の発生も

棚で多かった。

(2) 白色シートの種類が赤ワイン用ブドウの果実品質に与える影響

「カベルネ・ソーヴィニヨン」において、タイベックシート透水タイ

プ・不透水タイプ、およびパールライト S の3種の白色シートを敷設

した結果、いずれのシートにおいても、糖度の上昇および酸含量の低

下が早まり、熟期が早くなる傾向がみられた。

(3)棚仕立て短梢一文字整枝における簡易雨よけ施設が果実品質に与え

る影響

「カベルネ・ソーヴィニヨン」においては、簡易雨よけ施設により、

花ぶるいの発生が軽減され、果房重が大きくなり、収量が増加する傾向

が見られた。

「シャルドネ」では灰色カビ病の発生が少なくなる傾向がみられた。

3 作柄データベ

ースを構築する

ための調査・分析

方法の策定

(1) 実用的な調査・分析方法の確立

200粒法と 10房 20粒法について、繰り返しサンプリングして果実品

質を比較した結果、200粒法はバラツキが少なかった。今後、ワインセ

ンターの果汁分析値と 200粒法および 10房 20粒法と比較する。

(2)現地実証試験

ワインメーカー3 社の現地圃場(シャルドネ 12a、メルロ 21a、甲州

87a)において、6 種類のサンプリング方法の作業性や果実品質データ

を比較した。メルロについては、それぞれのサンプリング方法を 3 回

繰り返し、バラツキを調査した。今後、果汁と各サンプリング方法に

よる分析値を比較し、有効性を確認する。

(3)作柄データの収集

昨年に引き続き、「カベルネ・ソーヴィニヨン(垣根ギヨ)」、「甲州

(棚長梢)」、「シャルドネ(垣根ギヨ)」について、200 粒法及び 10 房法

により収穫2週間前~収穫後2週間の果実品質データを収集した。

10 モモ優良品種

選抜と栽培技術

の確立

(S56~ )

1 モモ優良品種

の特性調査と栽

培技術の確立

(第4次)

(1)モモ優良品種の特性調査

検討6品種について生育特性と果実品質を調査した。本年の開花始め

は平年に比べて 1 日遅く、収穫期は 3~5 日早かった。7 月上中旬に収

穫となる品種では品質の低下がみられたが、全体的に果実肥大は良好で

あった。「平成小町」は 7 月上旬に成熟し、果肉が粉質化した果実もみ

られ食味が劣った。「まなつ」は7月上旬に成熟し、小玉で果肉障害の

発生が多かった。「赤宝」の成熟期は7月上旬で、酸味が強い特徴があ

った。「あまとう2号」は7月中旬に収穫となり、着色や食味は良好で

あったが、果肉障害の発生が多かった。「まどか」は7月下旬に成熟し、

食味は「浅間白桃」に劣った。「千種白鳳」は7月下旬に収穫となり、

玉張り良く糖度も高かったが、落蕾症や変形果の発生が認められた。

第 4 次検討では既存の主要品種に比べて優れた特性を示す品種は認

められなかった。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

11 スモモ及びオ

ウトウの優良品

種選抜と栽培技

術の確立

(S56~ )

1 スモモ、オウト

ウの優良品種の

特性調査

(第5次)

(1)スモモ優良品種の特性調査

スモモ3品種について生育特性と果実品質を調査した。「ヴィーナ

ス」は6月下旬に成熟し、果実は中玉で糖度は低く、食味は不良であっ

た。「ニューハニーあやか」は7月上旬に成熟し、酸味が少なく食味は

良好であったが、果実品質のバラツキが大きかった。「恋花火」は「太陽」

より4日早く収穫となり、果実の大きさや糖度は「太陽」とほぼ同等

であったが、やや酸味が強かった。

(2)オウトウ優良品種の特性調査

オウトウ2品種について検討した。「紅ゆたか」は6月上旬に収穫と

なり、着色は中程度で酸味が少なく食味は良好であった。本年は全体

的に裂果の発生が少なく、カルシウム剤等が裂果性に及ぼす影響は判

然としなかった。「紅香」は6月上旬に成熟し、大玉で酸が極めて少な

かった。果肉が柔らかく、肉質はやや粗い特徴があった。

12 スモモの結実安

定技術の確立

1 花粉活性や受

精率が向上する

各種要因の解明

(1)受粉樹における枝の種類や日照条件が花粉活性に及ぼす影響

花を採取する枝の種類ごとや、外周部と樹冠内部で花粉の発芽率や量

を比較した。発芽率と花粉粒数から発芽可能な花粉数を推定したとこ

ろ、徒長枝では減少する傾向がみられたが、他の枝ではほぼ同等であっ

た。

(2) 開花後日数が結実率に及ぼす影響

「貴陽」では開花してから9日後まで受精能力を維持していたが、前

年と同様に開花してから3~4日後に結実率が最も高まる傾向がみら

れた。

(3) 受粉後の降雨が結実率に及ぼす影響

数回に別けて受粉後の降雨処理を行ったが、処理区間の結実率に一

定の傾向がみられず、結実に及ぼす影響については判然としなかった。

2 結実安定技術

の開発

(1)石松子による適正な花粉の希釈倍率の検討

「サマーエンジェル」では 3~10倍希釈、「貴陽」では 2~5倍希釈を

検討したが、花粉の希釈倍率により結実率に大きな差はみられなかっ

た。同様な結果が 3年続いたことから、「サマーエンジェル」では 10倍、

「貴陽」では5倍に希釈しても必要な結実が得られると思われた。

(2)花粉交配機の特性把握

一部改良した花粉交配機を使用して受粉すると、慣行法に比べて結実

率はほぼ同等であった。慣行法に比べて作業時間が 3割短縮し、花粉使

用量も 2割程度削減された。

(3)貴陽におけるジベレリン処理方法の検討

H25年の GA処理により翌年に花芽が減少する薬害が発生したため、薬

害の影響について検討した。H26年の GA処理区では薬害の発生は無く、

結実率や果実品質への影響も認められなかった。

(4)雨除け施設による結実安定効果の確認

雨除け施設では気温の上昇効果が認められたが、結実率は雨除け区が

5.6%、対照区が 5.3%となり、ほぼ同等な結実率であった。果実品質

や裂果の発生程度は大きな差が無く、カサかけ作業の省略が可能である

と考えられた。

13 植物調節剤利

用試験

(S62~)

1 生育調節剤利

用試験

(1)ジベレリンの花穂伸長効果の確認

展葉 3~5 枚時にジベレリン低濃度散布を行うと「瀬戸ジャイアン

ツ」、「サニードルチェ」、「ジュエルマスカット」では、花穂の伸長を

促進する効果が認められた。「オリエンタルスター」については、効果

が判然としなかった。

「シャインマスカット」についてはさらなる省力化を図るため、花穂

伸長と組み合わせて花穂上部支梗の利用について検討した。花穂伸長

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

区については房づくりおよび摘粒時間が削減され 5ppm 区では 6 割、

3ppm区では 4割の果房で摘粒を必要としなかった。

(2) フルメットの着粒安定効果の確認

開花始め~満開前にフルメット 5ppm 処理をすると、「シャインマス

カット」において着粒安定効果が認められた。また「シャインマスカ

ット」の 2ppm 処理、「巨峰」の 2ppm および 5ppm 処理においては、着

粒安定が安定する傾向が見られたが、効果が判然としなかった。

「クイーンニーナ」では、2ppmおよび 5ppm のどちらの処理区におい

ても効果が判然としなかったが、本年度は開花前の落蕾が見られたた

め効果が小さかったものと考える。

(3)アブシジン酸の着色促進および熟期促進効果の確認

「ピオーネ」、「巨峰」において、着色始め~着色始め2週後にアブシ

ジン酸液剤処理を行うと、着色促進効果が認められた。熟期促進効果

は認められず、処理による糖度、裂果率に影響は認められなかった。

また、赤色品種の「ゴルビー」においても同様の結果が得られた。処

理による果粉の溶脱は認められないが、高濃度処理区では一部薬剤の

汚染が確認された。

(4)摘花剤によるモモの着果調節効果

50~75 倍の濃度で効果が高く、摘花剤の処理によって結実率は無処

理区の半分ほどに減った。100倍では、いずれの品種も摘花効果は低か

った。また、処理による着果の方向や位置に偏りはなかった。

(5)エスレル 10によるモモの熟期促進

本年は「なつっこ」において試験したがエスレル 10 による明確な熟

期促進効果はみなれなかった。

(6)ジベレリン水溶剤によるモモの肥大促進

処理区、無処理区間で一定の傾向が認められず、果実の肥大促進効果

は認められなかった。

(7)ジベレリンペースト塗布によるスモモの新梢伸長促進

「サマーエンジェル」を供試し、開花 2週間前~開花期にジベレリン

塗布剤を処理すると、1年枝および花束状短果枝の新梢伸長が無処理

に比べて促進された。しかし、前年の処理区において芽枯れ症状が発

生したため、翌年の薬害発生を確認する必要がある。

(8)1-MCPによるスモモの日持ち性向上

「サマーエンジェル」「貴陽」とも日持ち性向上の効果が認められた。

アンケートでは「外観」や「硬さ」で処理による効果が明確となった。

(9) アミノエトキシビニルグリシン塩酸塩(AVG)がオウトウの結実と果

実品質に及ぼす影響

AVG処理による有意な結実向上効果は認められなかった。500ppm処理

区には、葉が波打つ薬害の症状がみられた。

(10)ホウ素がオウトウの結実率に及ぼす影響

結実向上の効果は、秋処理の方が春処理より高かった。胚珠の正常率

は、ホウ素処理によって高く維持された。秋処理の方が春処理より処

理効果が高かった。

高温処理した鉢植え樹を供試した試験で、ホウ素処理によって結実が

無処理より高くなることを確認した。

14 モモ・ブドウの

肥大促進技術の

確立とブランデ

ィングに関する

研究

1 モモ・ブドウの

肥大促進技術の

確立

モモでは、結果部位や結果枝の種類が果実肥大に及ぼす影響を検討す

るため、結果枝の種類・発生部位・直径・新梢長・果実品質などを調査

した。また、着色抑制方法について検討し、基盤技術を開発した。病害

や果面障害の発生は無く、果実品質への影響も認められなかった。今後、

年次反復試験や再現可能な文字・模様等の検討を行う必要がある。ブド

ウでは、これまでに効果があるとされている果粒肥大促進技術と果粒数

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

の制限を組合せ、さらなる果粒肥大促進効果があるか検討した。摘粒

時の極端な果粒制限は、果粒肥大効果が小さかった。花穂発育促進処理

や環状剥皮と果粒制限を組み合わせると、果粒肥大促進効果が認められ

た。「サニードルチェ」と「クイーンニーナ」で着色抑制方法を検討し

た。シールによる着色抑制は可能であったが、貼付位置や地色をきれい

に発色させる方法について検討が必要である。病害や障害の発生は認め

られなかった。

15 省力・環境負荷

低減型防除技術

の開発

1 省力的な薬剤

処理技術の確立

(1)殺菌剤の果房浸漬による病害防除

満開時(第 1 回目ジベレリン処理)、5 日後、10 日後(第 2 回目ジベ

レリン処理)、15日後にスクレアフロアブル 1,000倍の果房浸漬を実施

し、晩腐病、苦腐病に対する防除効果を検討した。晩腐病については、

満開10日後、15日後処理で無処理区と比較し防除効果が認められたが、

その程度はやや低かった。苦腐病については、5 日後、10 日後、15 日

後処理で無処理区と比較し高い防除効果が認められた。

(2)殺虫剤の果房浸漬による害虫防除

ディアナSCの袋かけ前果房浸漬は、収穫期のチャノキイロアザミウ

マの被害において、袋かけ前日数3,7,10,15日の区間で比較

した。袋かけ前15日区では被害が見られたが軽微であった。袋かけ

3、7、10日前区では高い防除効果が認められた。3,7日前袋か

け区では果粒が肥大しており溶脱がみられた。

(3)スタークル顆粒水溶剤の樹幹塗布によるクワコナカイガラムシに対

する防除

試験樹1樹において、南北に主枝単位で処理を行い、収穫期にクワコ

ナカイガラムシによる被害果房数により効果を調査した。処理した主

枝では、無処理の主枝に比較し本虫の被害果房が少なく、防除効果が

認められた。赤嶺の試験では、樹ごとに処理区と無処理区を設置し収

穫期に被害果房の調査を行った。処理区では、無処理区に比べ被害果

房数が少なく、防除効果が認められた。

2 果実への被害を

生じない省防除体

系の確立

(1)ブドウべと病省防除体系の検討

本年の試験圃場におけるべと病の初発は7月中旬であった。袋かけ直

前まで定期的な調査を実施したが、花穂、果房、葉におけるべと病の

発生はみられず、省防除体系の防除効果は判然としなかった。6 月 10

日から 10日おきに葉を採取し、多湿処理することで感染状況を調査し

た結果、7 月 10 日採取の葉で発病がみられたことから、本年は7月上

旬が感染時期であると推察された。

(2)ブドウさび病に関する試験

袋かけ後のべと病およびさび病の同時防除効果を調査した。無散布区

では甚発生条件下の試験となった。本年度は、べと病、さび病ともに

省防除体系(45日間隔)で、慣行防除(30日間隔)とほぼ同等の効果

が認められ、実用上問題はなかった。さび病では、省防除体系展着剤

加用区で慣行区よりも防除効果がやや高くなる傾向がみられた。べと

病と同様の方法で感染時期を調査した結果、6 月 30 日採取の葉で発病

がみられたことから、本年は 6月下旬が感染時期であると推察された。

(3)オウトウショウジョウバエに対する新規薬剤の効果と残効

本年は、収穫盛期~後期においてもオウトウショウジョバエの発生は

少なかった。このため供試虫が得られず殺幼虫・成虫試験は出来なか

った。残効の試験についても、6月26日に各薬剤を散布したが、無

処理区での発生も少なく薬剤の評価は出来なかった。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

16 ブドウ及び核

果類等の病害虫

薬剤防除法の改

(S54~ )

1 農薬の効力検

定及び残留分析

試料の調製

(1)新農薬の効果査定

1)殺菌剤

ブドウ白腐病に対するオンリーワンフロアブル(2000倍)の効果は D

判定、フルーツセイバー(1500 倍)は C 判定であった。ブドウつる割

病(休眠期)に対するスクレアフロアブル(500倍)の効果は B判定、

デランフロアブル(200倍)は A判定であった。モモうどんこ病に対す

るフルーツセイバー(2000倍)の効果は A判定であった。

2)殺虫剤

モモのミカンキイロアザミウマに対するディアナ WDG(5000 倍)の

効果は B 判定、トランスフォームフロアブルは A 判定であった。ハダ

ニに対するモベントフロアブル(2000 倍)の効果は C 判定であった。

スモモのシンクイムシ類に対する AKD-1193SC(5000倍)の効果は B判

定であった。オウトウのオウトウショウジョウバエに対する

AKD-1193SC(5000 倍)とコルト顆粒水和剤(10000 倍)の効果はとも

に A 判定であった。ブドウのクビアカスカシバに対するフェニックス

フロアブル(500倍)の効果は C判定であった。コガネムシ類に対する

IKI-3106 液剤 50(2000 倍)、クワコナカイガラムシに対するモベント

フロアブル(2000倍)とトランスフォームフロアブル(2000倍)は全

て A判定であった。

(2) マイナー作物等農薬登録に向けた効力検定および残留分析試料の調整

1)オウトウショウジョウバエに対するスプラサイド乳剤

オウトウショウジョウバエに対しスプラサイド乳剤は高い防除効果

を示した。また、残留分析の試料調整、倍量薬害試験を実施した。

2)ラズベリーのオウトウショウジョウバエに対するスカウトフロアブル

ラズベリーのオウトウショウジョウバエに対し、スカウトフロアブ

ルは防除効果が認められた。また、残留分析の試料調整、倍量薬害試

験を実施した。

2 ブドウ果実腐

敗病防除対策の

確立

(1)発生実態調査

巨峰2圃場、ピオーネ3圃場、シャインマスカット3圃場、甲斐路4

圃場について果実腐敗病害の発生実態を調査した。シャインマスカッ

トは全般的に病害の発生は少ない傾向であったが、いずれの品種も最

も多く発生していた病害は晩腐病で、発生程度も高かった。

(2)防除体系の検討

1) 薬剤添加培地を用いた有効薬剤の検索(室内試験)

15 薬剤を供試し、苦腐病および白腐病に対する菌糸伸長抑制効果を

検討した。また、圃場における接種試験を実施した。苦腐病について

はオンリーワンフロアブル>ジマンダイセン水和剤>アミスター10

フロアブル、セイビアーフロアブル20の順で防除効果が高かった。

フルーツセイバーは防除効果が認められなかった。白腐病については、

セイビアーフロアブル20>フルーツセイバーの順で防除効果が高

く、オンリーワンフロアブルは防除効果が低かった。

2) 各種果実腐敗病の感染時期の把握

5月 18日より試験を実施した。5月下旬曝露区では、晩腐病および苦

腐病の発病は認められなかったが、6月上旬~中旬曝露区、6月中旬~

下旬曝露区、5月下旬~6月下旬曝露区では発病が認められたことから、

6月には両病害に感染していると考えられた。白腐病は発病が認められ

なかった。

3) 早期カサかけ補助器具の実用性評価

晩腐病が多発している 3 圃場について、カサかけ補助器具を用いて

第 1 回ジベレリン処理後に通常サイズのカサかけを行い、園主慣行区

の発病状況と比較した。3圃場ともに早期カサかけ区で晩腐病の発病程

- 158 -

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

度が低く、防除効果が認められた。

巨峰、ピオーネ、藤稔、シャインマスカットの現地栽培圃場

において、実際に第1回目ジベレリン処理後から通常サイズのカサをか

けたが、一部の圃場では設置直後に吹いた強風の影響で果房にカサの

こすれ傷がみられ実用上問題となった。穂軸の傷や作業のしやすさ、

薬剤散布時のカサ飛び等、その他については大きな問題はなかった。

3 有効薬剤の検

索及び防除法の

改善

(1) チャノキイロアザミウマに対する有効薬剤の検索

リーフディスクを用いた簡易検定により調査を行った。新規薬剤「コ

ルト顆粒水和剤」のチャノキイロアザミウマに対する死亡率を、防除

暦の「カサ・袋かけ前」の薬剤と比較したところ、コテツフロアブル

とは有意に低かったが、アドマイヤーフロアブルとは同等であった。

新規系統のチャノキイロアザミウマ防除剤として期待が持てることが

明らかとなった。

(2) クビアカスカシバに対するフェロモンの活用

牧丘町西保では、市販のコスカシバ用交信かく乱剤「スカシバコンL」

を、勝沼町菱山では、クビアカスカシバ専用に試作用した交信かく乱

剤を、ともに約 4ha ずつ設置した。処理区におけるフェロモントラッ

プへの雄成虫の誘殺数は認められず、交信かく乱効果は高かった。し

かし、被害防止効果は認められたが卓効ではなかった。

(3)ブドウ白色綿雪症に関する試験

果房を用いた薬剤防除試験(接種試験)では、セイビアーフロアブル

20>オンリーワンフロアブル>スイッチ顆粒水和剤、アミスター10 フ

ロアブルの順で防除効果が高かった。オーソサイド水和剤は効果が認

められるが低く、ジマンダイセン水和剤は無散布と同程度であった。

現地圃場における防除試験では、白色綿雪症の発生がほとんどみられ

ず、供試薬剤の防除効果は判然としなかった。

(4)モモのアブラムシに対する新規薬剤の実用性

モモのモモアカアブラムシ、カワリコブアブラムシに対して、新規薬

剤およびネオニコチノイド系薬剤の効果を調査した。トランスフォー

ムフロアブルは高い効果が認められた。

ウララ DF、コルト果粒水和剤は遅効的であった。アドマイヤーフロ

アブル、モスピラン水溶剤は十分な効果が認められた

(5)輸出向けモモ果実におけるモモシンクイガ対策

人工的な空隙を果皮および果肉に作成し、検出能力を調査した。そ

の結果、X線の照射方向に幅 2mm、長さ 5mm 以上の空隙は安定的に検出

されが、それ以下では検出のフレが発生し安定した精度にならなかっ

た。検査機で見つけ出した被害果 200 果を供試し、モモシンクイガの

被害の分布を調査した。今後データを解析する予定。

(6)ブドウ大粒種における幼果期の散布薬剤による汚染・溶脱

巨峰を供試し、新規薬剤「コルト顆粒水和剤」(3000倍)を幼果期に

散布したところ、果粒横径が平均 7.2mm 程度の時期ならば、果実汚染

および果粉溶脱は問題にならなかった。供試房数が少ないが、参考と

して処理したアドマイヤーフロアブルと、両害虫ともほぼ同等の効果

であった。

(7)ブドウのチャノキイロアザミウマに対する紫外線カット素材を利用

した果実袋の効果

紫外線の透過率が低いとされる「UV カット障子紙」を果実袋の素材

に利用し、チャノキイロアザミウマの被害状況を調査した。実際の紫

外線透過率は、UV カット障子紙が他の資材と比較して全般的に低かっ

たが、商品説明にあるような「95%カット」には及ばなかった。チャノ

キイロアザミウマの被害状況には果実袋の資材による有意な差は認め

られなかった。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

4 携帯情報端末

を利用した病害

虫診断サポート

システムの開発

病害虫科圃場や現地圃場において発生した病害虫の資料収集を行っ

た。モモ、スモモ、オウトウのシステム作成に向け資料の整理を行っ

た。モモの診断サポートシステム試作版の作成を行っている。農政部、

JAの指導者に試作版を使用してもらい、アンケートにより要望・意見を収集

した結果、現場での診断に活用できるという評価が得られた。

17 モモにおける

ウメシロカイガ

ラムシ防除の効

率化

(H26~)

1 幼虫の行動様

式の解明

(1)ふ化幼虫の発生時期の把握と予測

1) 毛糸トラップによるふ化幼虫発生時期の調査

場内のモモ、スモモにおいて毛糸トラップを用いて、ふ化幼虫の発生

消長を調査したところ、モモとスモモで消長に差は認められなかった。

2) 発生状況データと気温の関係の再検証

スモモにおける毛糸トラップデータより、第 1世代幼虫において、50%

の個体が誘殺された時点における有効積算温度(発育零点 10℃)は、

平均気温法では 151.9日度、三角法では 203.6 日度と推定された。

3) 施設モモにおける幼虫発生時期の把握

現地と場内のモモ栽培施設に、カイガラムシの寄生枝を入

れたところ、満開~落花時(日川白鳳、白鳳)に、ふ化幼虫の発生ピ

ークが観察された。モモの生育ステージとふ化幼虫の発生時期の関係

が、露地栽培とは異なることが示唆された。

(2) クワシロカイガラムシの県内における分布と生態の差異

鉢植えのモモにウメシロカイガラムシとクワシロカイガラムシを接

種し、場内、塩山、西保の 3 地域で第 1 世代幼虫の発生消長を調査し

たところ、クワシロカイガラムシの幼虫発生期は 11~12日間程度遅く、

生態的な差が観察された。しかし、県内のモモ園における分布を調査

したところ、圧倒的にウメシロカイガラムシが優占種であることが確

認され、ウメシロカイガラムシ多発の原因が、優占種の交代でないこ

とが明らかとなった。

2 有効な防除法

の確立 (1)防除薬剤の効果の検証

1) 生育期防除における有望な防除薬剤の検索

ウメシロカイガラムシ多発園(現地 5ヶ所と場内)より卵を採集して、

カボチャに接種し、主要な防除薬剤を処理したところ、現地園で採集

した個体では、アプロードフロアブルの防除効果が著しく低下してい

ることが観察された。トランスフォームフロアブルとスプラサイド水

和剤の効果は非常に高かった。

2) 休眠期時期におけるマシン油乳剤の効果と薬害

休眠期時期におけるマシン油乳剤の効果と薬害について調査したと

ころ、散布時期によるマシン油の防除効果は、大きな差はなく、薬害

については、30倍希釈ならびに倍量の 15倍でも認められなかった。室

内試験で、濃度(50・40・30 倍)ごとの防除効果を調査したところ、

高濃度による防除効果の向上が明らかに認められた。

(2) 防除薬剤の使用法の検討

場内個体群を用いて、アプロードフロアブルを様々な時期に散布した

が、遅め(発生盛期後)に散布しても、効果に有意な差は認められず、

一様に高い防除効果を示した。散布時期の多少の前後が、近年の多発の

要因とは考えづらいことが明らかとなった。

18 果樹病害虫発

生予察事業

(S40~ )

1 指定・重要病害虫

に関する発生予察 (1)主要病害虫の発生消長調査

モモの花腐れは1%以下の低率であったが、発生が認められた。モモ黒

星病については、6月末から発生が認められ、7月上中旬には急増した。

ブドウのチャノキイロアザミウマの初誘殺は6月1半旬に確認され、10月

まで連続して発生した。誘殺虫数は7月中旬になると急激に増加した。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

(2) フェロモントラップによる調査

チャバネアオカメムシの誘殺数は、7月中下旬と9月下旬~10月中旬に

かけて、小さなピークが認められたが、前年と比較して少なかった。

場内のモモにおけるチョウ目害虫では、近年、少発生が続いたモモハ

モグリガの発生量が多く、特に6~7月の世代で多数の誘殺が認められ

た。ブドウにおいて、クワコナカイガラムシの性フェロモンルアー(試

作品)を用いて、6月下旬より雄成虫の発生消長を調査した。調査開始

時には、すでに1回目のピークは終わっていたが、その後2回のピーク

を観察することができた。10月中旬まで雄成虫の発生は途切れること

なく続き、各世代の発生期間は長く、緩やかに連続していることが明

らかとなった。

(3) カイガラムシ類の幼虫発生時期調査

場内のモモとスモモを供試し、毛糸トラップで幼虫の発生消長を調査

したところ、両種とも年間 3回のピークが認められた。

19 果樹園におけ

る有機物資材を

主体とした施肥

法の開発

1 無化学肥料栽

培に向けた有機

質資材施用方法

の確立

(1)有機物資材の最適な施用方法の検討

モモは、有機物資材のみを施用した試験区で樹体生育量が少なく、果

実品質は糖度が高い傾向を示した。ブドウは、魚かすを施用した試験区

において、新梢伸長が落ち着きやすく、着色がやや良好な傾向を示した。

糖度、酸度は試験区間に差はみられなかった。土壌理化学特性は、全試

験区ともに土壌表層(0~10㎝)に窒素が多く存在する傾向を示した。

有機物資材のみの施用を継続し、樹体や土壌に及ぼす影響を精査する必

要がある。

(2) 牛ふん堆肥長期連年施用による土壌、樹体への影響解析

牛ふん堆肥を 18 年間連年施用した牛ふん堆肥区は、配合肥料区と比

較し、収量は 50 ㎏/樹程度多く、樹齢を経ても適正樹勢が維持される

傾向を示した。牛ふん堆肥区の土壌物理性は、固相率がやや低く、化

学性は表層を中心に各種土壌養分の蓄積が認められた。土壌からの窒

素発現量は、牛ふん堆肥区で多い傾向を示した。

(3)有機物由来窒素等が樹体、土壌及び浸透水に及ぼす影響の検討

モモ「白鳳」の 2年生樹をライシメーター試験区に定植し、試験樹の

養成を行った。施肥前の土壌分析において、三相組成は、固相率 60~

65%、気相率+液相率 35~40%であり、化学性は全窒素約 0.02%、全

炭素約 0.24%であった。園地における有機物資材由来養分の動態解析

等を行うための基礎資料が得られた。

2 土壌 pH 調整に

よる樹体への養

分吸収適正化方

法の確立

(1)有機物施用による土壌 pHへの影響把握

牛ふん堆肥と発酵鶏ふんをコンクリート枠試験区に施用し土壌 pH の

変化を調査した。牛ふん堆肥区および発酵鶏ふん区は、有機物資材の

無施用区と比較し、土壌 pHが若干上昇する傾向を示した。樹体生育は

試験区間で差は生じなかった。

(2)モモ園土壌における pH 低下法の検討(1)ブドウ園における窒素動態

解析

1) 高 pH土壌が生育に及ぼす影響(ポット試験)

適正 pH区(pH6.0)の新梢伸長は、高 pH区(pH7.0)より良好であっ

た。葉色に差は生じなかった。葉中成分は、現在解析中である。

2) 土壌 pH低下資材の効果検討(室内試験)

土壌 pH 低下資材を施用した土壌をポリエチレン製容器に入れて一定

温度で静置し、土壌 pHの変化を解析した。土壌 pHは、ガッテン pH(硫

黄)<硫黄華(硫黄)<畑のカルシウム(硫酸カルシウム)の順に低下

程度が大きくなった。また、資材施用量が多いほど土壌 pHは大きく低

下する傾向を示した。

3) pH低下処理が生育に及ぼす影響(ポット試験)

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

高 pH 土壌に土壌 pH 低下資材を施用し、土壌 pH を低下させた試験区

において、新梢伸長は良好な傾向を示した。5 月に pH 低下資材を処理

した結果、土壌 pHは 7~8月にかけて低下したが、9月以降は処理前と

同程度の水準を示した。葉中成分等は現在調査中である。

4) pH低下処理が生育に及ぼす影響(現地試験)

樹体生育は、試験区により差はみられなかった。土壌 pH は7~8 月

にかけて低下するが、9 月以降は若干上昇した。土壌 pH 低下資材を継

続処理し、樹体や土壌化学性に及ぼす影響を解析する。葉中成分等は

現在調査中である。

20 県産モモの輸

出促進に向けた

輸送過程におけ

る鮮度保持技術

の改善

(H26~28)

1 鮮度保持技術

の改善

(1)輸送過程の温度管理及び品種特性の検討

出荷からシンガポール到着までの輸送温度を場内の冷蔵庫を使用し

て再現し、改善方法について検討した。併せて主要品種における輸送

後(想定)の果実品質について調査した。

改善方法として国内輸送時の温度を慣行区 30℃と改善区 5℃で試験

した。「日川白鳳」は両区とも到着時(出荷から 15 日後)にはすでに

軟化し、商品性はなかった。「なつっこ」では、慣行区は到着時まで商

品性はあったがその後は低下した。改善区は到着 1 日後まで商品性は

あった。「浅間白桃」は両区とも到着時は商品性があったが、その後は

果肉の粉質化などにより商品性はなかった。

「嶺鳳」は両区とも到着 2日後まで商品性があり、硬度の低下が少な

く日持ち性に優れる傾向があった。改善区で到着後の硬度が高い傾向

があったが、各品種とも到着後に商品性が低下し、今後の検討が必要

であった。

(2)鮮度保持資材の検討

エチレン作用阻害剤(1-MCP)の登録に向けた処理効果について検討

した。供試品種は、「白鳳」、「なつっこ」、「川中島白桃」とした。処理

濃度は 1000ppb 区、無処理区とし、各区ごとに貯蔵温度を 5℃、15℃、

25℃に設定し、果実品質について調査した。その結果、各品種や各貯

蔵温度において 1-MCP 処理により、果実硬度や食味の低下を抑制する

効果が確認できた。「川中島白桃」は、果肉の粉質が多くみられたが、

25℃貯蔵では硬度の低下抑制効果があった。

(3)収穫時期の検討

収穫硬度が輸送後の果実品質に及ぼす影響について検討した。試験

は、「白鳳」を供試し、シンガポールまでの海上輸送経路の輸送温度を

場内冷蔵庫で再現して行った。国内輸送を 5℃とした場合、果実硬度

2.0~2.5 ㎏の果実は到着時には軟化により商品性は低下していたが、

硬度 2.8 ㎏程度で収穫した果実は到着後 1 日後まで品質を保持した。

輸送期間が長期になる場合は、糖度などの品質を考慮しながら、やや

早めで収穫することが望ましいと考えられる。

2 輸出実証試験 (1)海上輸送経路におけるモモ輸出実証試験(シンガポール)

シンガポールまでのモモ海上輸送経路における輸送実態や到着後の果実品質について調査した。現地到着までの輸送日数は 18日を要した。輸送中の箱内温度は日本国内輸送時に高く推移した。また、果実への衝撃は、国内市場でのコンテナ積み込み時に発生していた。現地到着後の「幸茜」の果実品質は、到着1~2日後まで商品性を有したが、その後は果肉の粉質化などにより品質が低下し、今後の課題となった。1-MCP処理は硬度の低下が抑制し日持ちが向上した。また、輸出用ダンボールは、輸送中の箱内温度が高く、品質に影響すると考えられた。

(2)ブドウの輸出実証試験(シンガポール)

「シャインマスカット」、「藤稔」、「ピオーネ」を、海上輸送及び航空輸

送でシンガポールまで輸出した。現地到着までの輸送日数は、海上輸送

で 18日、航空輸送では、3日を要した。海上輸送、航空輸送ともフレッ

シュホルダー、三角袋、フルーツキャップなどの資材を利用することで、

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

輸送中の脱粒や穂軸の褐変が低減し、到着時の果房は商品性が高く、輸

出への活用が期待できた。

21 育成オリジナ

ル品種の栽培技

術の確立

1 県育成ブドウ品

種の栽培技術の確

(1)露地栽培での高品質安定生産に向けた技術の検討

1)「甲斐のくろまる」の高品質安定生産方法の検討

a 着粒安定効果の検討:

処理区①(展葉 6~8 枚時 F2ppm+開花始め F5ppm 処理)と処理区②(開花始め F5ppm 処理)を比較したところ、着粒密度に差はみられなかった。開花始めに F5ppm を処理することで着粒安定することから、栽培の手引きから展葉 6~8枚時の F2ppm処理を削除した。

本年はいずれの処理区も果粒重が 16g以上で果房重も 500gを超えた。房づくり時の花穂長 4cm、果粒数 35粒程度にすると、果房重 500gの果房生産が可能であると思われた。

b 着粒安定のための 1回目 GA処理時期の検討:

収穫前の良果房率(コンテナ出荷可能割合)は 5~8 分咲き処理が29%、10 分咲き処理が 85%、満開 3 日後処理が 65%であり、10 分咲き時に処理することが重要であると思われた。なお、いずれの処理区も果粒重は 14gを超え、概ね果房重 500gの果房生産が可能であった。

c 密着果房生産方法の検討:

1 回目 GA12.5ppm 処理区、GA1 回処理区、慣行区を比較したところ、1回目 GA12.5ppm 処理区と GA1 回処理区が支梗や小果梗が短くなる傾向がみられた。一方、果粒重をみると GA1 回処理区は他の区に比べ 1g程度少なくなった。このことから、1 回目 GA 処理濃度を 12.5ppm にすることで、商品性が高い密着果房が生産できるものと思われた。

d 昨年度優良事例の再現試験:

昨年度優良事例(開花前 F5ppm+1回目 GAに F5ppm加用)を再現した結果、慣行処理に比べ良果房率が高かった。なお、この処理方法は登録適用外であるため、現在のところ現場での使用は出来ない。

e 落蕾の発生要因の把握(現地調査):

101-14台木と 5BB台木での比較では、甲府3園(A,B,C)では 101-14台が、御坂1園では 5BB 台が落蕾の発生は少なかった。甲府 C 園での観察では、開花始めの F5ppm 処理が遅れると落蕾の発生が顕著になった。

現地 6圃場について、土壌分析及び葉・花穂の成分分析を実施した。土壌分析の結果、カルシウム、マグネシウム、カリウムが基準値より多い圃場がみられたが、落雷症の発生との関連は不明であった。

葉及び花穂を分析した結果、窒素量は各圃場で大きな差はみられなかった。また、一部の圃場ではマンガンの含有量が多かったが、発生との関連は不明であった。

f 現地実証試験:

処理区①(展葉 6~8 枚時 F2ppm+開花始め F5ppm 処理)と処理区②(開花始め F5ppm 処理)の着粒安定効果を慣行(1 回目 GA に F5ppm 加用)と比較した。慣行に比べ両区とも着粒安定効果が認められた。処理区①の良果房率は処理区②と同等かそれ以下であった。

g ホウ素含有肥料が着粒に及ぼす影響:

笛吹市一宮の 2園(両園ともに 101-14台:2本、5BB台:2本)において、展葉 5~6 枚時および展葉 9~10 枚時にヨーヒ B5 500 倍を処理したところ、着粒密度および着穂数に明確な差は見られなかった。果実品質については、両園とも台木にかかわらず、処理区において着色が向上し糖度が上がる傾向が見られた。また支梗が伸び、軸横長が長くなる傾向も見られた。

2)「ジュエルマスカット」の果粒肥大効果の検討

F5ppmを1回目 GA処理時と2回 GA処理時に加用した区、2回目のみ加用した区、展葉 6~8枚時に F2ppmと尿素 100倍で処理した区、慣行区(1回目 F5ppm 加用)の4試験区で検討した結果、果粒重はそれぞれ 21.8g、21.6g、19.7g、19.3gであり、1回目と2回目に F5ppmを加

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

用した区および2回目のみ加用した区は慣行区と比べ 2g程度の果粒肥大効果がみられた。なお、本年、果粒肥大は良好であり、慣行区を含むいずれの試験区においても 18gを超える果粒重であった。

3)「生食ブドウ山梨 3号」の房形改善効果の検討

房形改善のため、①F5ppmを1回目 GA処理時と2回 GA処理時に加用した区、②GA1回処理区、③フラスター散布区について果梗伸長抑制効果を検討した。いずれの処理区も慣行(1回目 GA処理時に F5ppm加用)に比べ第 1 次支梗または小果梗が短くなる傾向がみられたが、果粒重をみると①区が 24.3g、②区が 18.4g、③区が 22.7g、慣行区が 22.7gであった。次年度も継続して検討を行う予定である。

(2)短梢栽培での適応性の確認

H 型短梢剪定樹における「ジュエルマスカット」の花穂着生数及び花穂長は 1 新梢当たり 1.0 以上で 18cm 程度、「生食ブドウ山梨3号」の花穂着生数及び花穂長は 1新梢当たり 0.7~0.9で 11cm程度であった。次年度、「甲斐のくろまる」を含めて、花穂着生、果実品質等の確認を行う予定である。

(3)施設栽培適応性の検討

(H26年 12月加温開始、H27年 4~5月収穫)

超早期作型(「ピオーネ」の温度体系)において、「ジュエルマスカット」、「甲斐のくろまる」、「山梨 3 号」、「シャインマスカット」の栽培適応性を確認した。「ジュエルマスカット」については、「シャインマスカット」より果粒肥大が優れたものの、かすり症および裂果が多発した。「甲斐のくろまる」、「山梨 3号」については、着穂数がかなり少なく着粒も安定しないため、収量性に大きな問題があった。

(4)長期貯蔵適性の確認

「ジュエルマスカット」の長期貯蔵性の検討

収穫直前に薬剤処理し-1℃で貯蔵したが、貯蔵 2 ヶ月で腐敗果が多発した。また、出庫直後に裂果が発生し、商品性が低下した。モミガラ区で腐敗が少い傾向がみられたが、裂果の発生は同様にみられた。「ジュエルマスカット」は裂果しやすく、長期貯蔵には適さない品種と考えられた。

2 県育成モモ品種

の栽培技術の確立

(1)無袋栽培の可否の検討

「夢みずき」について検討している。無袋栽培の可否の検討では、無袋区では有袋区に比べ果点の発生が多く、微裂果や裂果も発生した。また、有袋(二重袋)では、除袋を遅らせても収穫時には十分な着色を確保できた。次年度も年次変動を含め着色特性等を検討する。

(2)いびつ果発生状況の確認と軽減のための管理方法の検討

いびつ果の判断は仕上げ摘果の頃には概ね可能であった。樹ごとの発生率は 8~30%であり、樹齢や結果枝種別による差はあまりなかった。また、仕上げ摘果時の果形と収穫期の果形を比較したところ、仕上げ摘果時に正常果と判断した果実は概ね正常果となった。次年度も継続して検討していく。

(3)施設栽培適応性の検討

慣行加温体系(H27年 1月加温開始、5月収穫)において「夢みずき」の適応性を検討した。開花は「白鳳」に比べて 3 日程度早く、収穫始めも 4~6日早かった。果実品質については、果実肥大や食味は良好で、着色は「白鳳」より良好であった。ただし、本年は袋かけ後の生理落果が認められたため、今後注意して観察する必要がある。次年度も継続して検討する。

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4 畜産試験場の試験研究概要

研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

1 豚の改良増殖

(S38~ ) 1 品種の改良と

増殖

種豚の改良と増殖を行い、県内農家に供給した。平成27年度の農家へ

の売却実績は、優良種豚70頭、精液18回分であった。

2 系統豚「フジザ

クラDB」の維持

と増殖

系統豚「フジザクラDB」の維持と増殖を実施した。維持群(雄15頭、

雌47頭)の平均血縁係数は23.44、平均近交係数は7.90、遺伝的寄与率

変動係数は0.72であった。農家へは種雄11頭、精液10回分を売却した。

また育成期の制限給餌の効果等についてはデータを蓄積中。

3 系統豚「フジザ

クラDB」の組合

せ検定

止め雄にフジザクラDB種を用いた三元肉豚の組合せ検定を実施した。

試験豚の肉質調査が約半分終わった段階であり、次年度にかけて引き続

き実施していく。

4 ランドレース

種「フジザクラ」

の開放型育種に

よる改良

外部導入ランドレース種をフジザクラ系種雌群に系統間交配し、掛け

戻し等によりフジザクラの血を引く優良種雌豚の能力向上と維持を行

った。また米国製凍結精液を導入した。

2 鶏の改良増殖

(H5~ )

1 高品質肉用鶏

の維持と増殖 RC、WR、YWRの適切な更新を行うとともに甲州頬落鶏の種卵お

よびヒナの売却を行った。(12月31日現在、種卵20,000個、ヒナ30羽)

2 シャモの維持

と増殖

第15世代のシャモの選抜(雄ヒナ100%、雌ヒナ87%)を行うとともに

維持を行った。

3 畜産物の品質改

1 機能性を有す

る美味しい鶏肉

生産技術の開発

美味しい鶏肉を生産するために、トレハロースおよび各種オリゴ糖の

効果を確認したところ、生産性には大きな差は認められなかった。腸管

免疫および加熱臭については現在調査中である。

2 養鶏用飼料原

料(飼料用米等)

の有する機能性

成分の鶏卵生産

への効果

米の有する成分が鶏卵品質に及ぼす影響として、米油あるいは米ぬか

を添加した結果、米油を5%飼料添加することで、鶏卵中のビタミンE関

連物質量が増加するとともに20℃保存における経日的なハウユニット

の低下が抑制された。

4 鶏の飼養管理

技術の改善

1 LED単波長を利

用した効率的鶏

肉生産技術の開

ブロイラーを用い青色光および緑色光をえ付け時から照射した結果、

若日齢の発育性は緑色光で優れた成績を示した。詳細については現在分

析中である。

5 温暖化の進行

に適応する畜産

の生産安定技術

の開発

1 採卵鶏における

暑熱時の酸塩基

平衡の調節によ

る産卵成績改善

技術の開発

暑熱による血中の酸塩基の不均衡を矯正し、卵質の維持を図るため

に、飼料中の食塩含量を減少させるとともに重曹および炭酸水素カリウ

ムを添加した結果、食塩含量を減少させることで産卵性を落とすことな

く卵殻強度の低下を抑制することができた。

6 家畜ふん尿の

有効利用と環境

保全対策技術の

開発

1 豚ふん尿由来の

環境負荷低減技

術の確立

C/N比の高低が豚ふん堆肥化時のガス発生に及ぼす影響を調べたとこ

ろ、高C/N区は低C/N区に比べてアンモニアおよび臭気濃度が低く抑えら

れたが、一方で冬季における温室効果ガス増加が確認された。

乳酸菌給与が豚ふん堆肥化時のガス発生に及ぼす影響調査について

は現在実施中。

7 環境負荷を低

減するための豚

の飼料調製に関

する研究

1 乳酸菌製剤等を

活用した豚ふん

臭気および環境

負荷低減に関す

る研究

山梨大がブドウ粕から分離した候補株を豚に給与した際の悪臭低減

効果を検証した。乾燥粉末製剤を使用した小規模試験では、市販乳酸菌

と遜色ない成績を示した。

また菌液混合飼料を使用した肥育試験では、低タンパク飼料との組合

せで肉の保水性が優れた。新鮮ふん臭気は乳酸菌添加区で低級脂肪酸発

生が増加する傾向が見られた。ふんの有機酸や菌叢については現在分析

中である。

- 165 -

Page 35: 山 梨 県 農 業 年 鑑¬¬1 1 章 農業災害と施設 1 平成 2 7 年 (201 5 年) の天候について 1 概況 平成 27 年( 2015 年)の年平均気温は、韮崎で平年並、勝沼、切石で平年より高くなったほ

5 酪農試験場の試験研究概要

研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

1 牧草(ペレニア

ルライグラス)の

新品種の開発

1 ペレニアルラ

イグラスの系統

適応性検定試験

年間合計乾物収量では、「PC11L-2」は「ヤツユメ」(標準品種)と同

程度で、「フレンド」より優れていた。病害は、冠さび病、葉枯性病害

、葉腐病が発生したが、いずれも軽微であった。

2 乳肉用牛の能

力検定(H5~ ) 1 優良乳用供卵

牛選抜事業

受精卵移植用乳用供卵牛確保のためスーパーカウおよび輸入受精卵

産子の娘牛等を増頭し、能力検定等により選抜された供卵牛を活用して

農家牛群の改良を促進する。今年度は11頭の検定対象牛について牛群検

定と体型審査を実施し、総合指数NTP、産乳性成分、耐久性成分のいず

れかが全国上位25%以内にランキングされた7頭が優良乳用供卵牛とし

て選抜された。

3 畜産物の新規

需要創出技術の

確立

(H23~ )

1 耕作放棄地等

を活用した放牧

による乳用種牛

肉の機能性成分

向上技術

試験牛の供給元であるジャージー種飼養牧場でヨーネ病が発生した

ため、今年度は耕種農家が放牧を行っている現地でデータを採取した。

ジャージー種去勢牛を豆腐粕・米ぬか混合サイレージやくず米、野菜くず

等を給与しながら、野草等で99日間放牧を行った結果、平均DGは0.67

となった。豆腐粕・米ぬか混合サイレージの発酵品質は使用に問題な

いレベルであり、低コスト補助飼料として活用できる可能性がある。

2 ペレニアルラ

イグラス新品種

を活用した放牧

牛乳生産技術の

確立

放牧地面積が20a/搾乳牛1頭でも、5月~8月までの放牧生乳、乳

製品とも、舎飼と比べてβ-カロテン含量、CLA含量が増加した、また

、放牧乳製品のアンケート調査の結果、総合評価で「良い」以上は80

%を示し、消費者に対し受容性が高いと判断された。

3 「やまなしのお

いしい牛乳」生産

のための飼養管

理技術の確立

泌乳中後期の乳牛6頭に米ぬか6.7%(乾物比)を含む飼料を給与した

試験を実施したところ、乳量は増加傾向に有り、飼料費の低減が図ら

れた。乳中脂肪酸、血液成分の変化について現在、採取データを解析

中。

4 牛の人工妊娠

技 術 の 実 用 化

(S59~ )

1 受 精 卵 供 給

促進事業

県有乳肉用牛のべ55頭から採卵を行い、受精卵を計181個(ホルスタイン種

30個、黒毛和種151個)売却した。また県内農家で実施された採卵に対

し、検卵や卵凍結保存など現地へ出張を含めた技術協力をおこなった。

また、性選別精液を用いた受精卵生産技術について検討を行い、雌受

精卵の生産効率が向上した。

2 体外受精卵を

活用した乳用牛

の繁殖成績向上

技術の確立

ASAH処理を施した体外受精卵は、耐凍剤濃度を下げて希釈作業を1回

に変更しても、従来の超急速ガラス化保存法と同等以上の生存率や孵

化率を得ることができた。また、ASAH処理を施さない場合は孵化率が

有意に低くなることから、超急速ガラス化保存法においてもASAH処理

の有用性が確認された。

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研 究 課 題 研 究 項 目 事 業 の 概 要

5 飼料作物の栽

培と利用技術の

改善

(S57~ )

1 飼料作物優良

品種選定普及促

進事業

(1)飼料用トウモロコシの優良品種選定試験

茎葉、雌穂、全体の乾物収量は「NS745」が最も多かった。すす紋

病、紋枯病、黒穂病が発生したが、いずれも軽微であった。

(2)牧草(オーチャードグラス)の優良品種選定試験

採草区では、合計乾物収量では「アキミドリⅡ」が最も多く、「ナ

ツミドリ」(県奨励品種)比101だった。出穂始は、「アキミドリⅡ」

が標準品種より5日程度早く、「まきばたろう」が最も遅かった。葉枯

性病害抵抗性は、「ナツミドリ」が最も弱かった。多回刈区では、合

計収量では「アキミドリⅡ」が最も多く、標準品種比103だった。葉枯

性病害抵抗性では、差は見られなかった。「アキミドリⅡ」を奨励品

種候補とし、県飼料作物奨励品種選定協議会に提案する。

(3)牧草(アルファルファ)の優良品種選定試験

単播区では、乾物収量は各番草とも「ネオタチワカバ」が多かった。

病害では、1番草と4番草で害虫による食害を受けたが、品種間で差

はみられなかった。

混播区では、年間合計収量は「ネオタチワカバ」が多かった。葉枯

病が発生したが程度は軽微だった。マメ科率では、一番草にマメ科牧

草が40%以上になり、3番草ではいずれの品種も90%以上になった。

(4)牧草(シロクローバ)の優良品種選定試験

乾物収量は、年間合計乾物収量では「ルナメイ」が最も多く、「フィ

ア」(県奨励品種)比は109であった。乾物収量とマメ科率から現奨励

品種の「フィア」が優れていた。

6 乳肉用牛の飼

養管理技術の開

(S63~ )

1 飼料利用高度

化促進事業

飼料分析の依頼受付点数は74点で、サンプル内訳はグラスサイレージ

49点、コーンサイレージ2点、大麦サイレージ9点、イネホールクロッ

プサイレージ6点、その他8点、地域別では北杜市68点、富士河口湖町

6点であった。

2 効率的な乳房炎

治療技術の確立

泌乳期治療試験では、サイトカイン(GM-CSF)の投与により体細胞数が一過

性に増加する傾向が見られたが、抗生物質単回投与に比べ減少の割合は

高く、治療効果が高い傾向にあった。

乾乳期治療試験では、GM-CSFの投与による治療効果は、抗生物質投与

に比べ高い傾向が見られると共に、分娩後の乳汁中体細胞数の増加も少

ない。また、健常乾乳牛へのGM-CSF投与では分娩後の新規乳房炎罹患は

見られなかった。

7 乳肉用牛の放牧

管理技術の開発 1 公共牧場の機

能強化のための

効率的管理技術

の実証

(1)ゾーニングに応じた効率的施肥技術および草地管理技術の実証

ゾーニングに応じた施肥により生産性や栄養価に問題なく減肥が可

能で、緩効性肥料の利用で施肥回数の減少も図られた。傾斜地では無

線傾斜地トラクタ利用により作業範囲が拡大し、牧草の追播により植

生と家畜増体が改善された。

(2)獣害による牧草被害率の簡易推定法と防護柵導入の決定支援シー

トの実証

簡易測定した牧草被害率法により、刈取り法よりも高精度でシカ柵

導入による被害軽減効果を検出できた。シカ柵設置の実費からその費

用対効果を検討すると、2.4年で導入経費が回収可能と推定された。牧

草被害率の測定は冬〜春に実施することが望ましい判断された。傾斜

度による施肥効果試験では、傾斜度の低い区で施肥による増収効果が

少なく、傾斜度に基づくゾーニングにより減肥が可能であると考えら

れた。また、実際に放牧地で、ゾーニングにより肥料を年間で10%削減

しても前年とほぼ同等の放牧が可能であった。また、牧草被害率簡易

測定法により、山梨県下の2牧場でシカによる牧草被害の定量評価を実

証した。

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第13章 食の安全・安心

1 地産地消 (1)食のやまなし地産地消推進事業

県民の「食の安全・安心」に対する関心が高まる中、地元住民が生産した新鮮で信頼できる

農産物を安心して消費する「地産地消県民運動」の普及・定着に取り組んだ。

① 地産地消の推進

学校給食で県産農産物の利用を促進するため、県産農産物の市場入荷情報を県下の学校給

食関係者に提供するとともに、農産物直売所の実態調査を実施した。

② 食のやまなし地産地消優良事例表彰

平成28年1月26日に「食のやまなし地産地消推進大会」を開催し、地域の優良事例を

表彰するとともに、講演会、パネルディスカッションを行った。

部 門 団 体 所在地

農産物直売所部門 JA全農やまなし農産物直売所

たべるJAんやまなし 甲府市

優良活動部門

農事組合法人ゆうのう敷島 甲斐市

株式会社エープレイス 甲州市 日出づる里活性化組合 富士川町

鳴沢村ブルーベリー生産組合 鳴沢村

③ 農産物直売所魅力アップ支援事業

農産物直売所の売上の向上を図るため、県内直売所関係者が先進的な取り組みを行ってい

る直売所を視察し、専門家からアドバイスを受ける「農産物直売所魅力アップ支援講座」を

実施した。

・加工品の開発・販売をテーマに、群馬県の「道の駅 川場田園プラザ」を視察(H27.11.24)

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2 適正な食品表示 〔企画県民部(消費生活安全課)所管〕 (1)国との定期的な合同調査および買い上げ調査

① 食品表示法、食品衛生法、景品表示法を所管する関係課等及び関東農政局山梨支局との合

同調査を実施した。

広域食品表示合同調査 年4回(延べ 8 日)実施 92 店舗実施

地域食品表示合同調査 農務事務所、保健所が随時実施 396 店舗実施

② 県内で製造等された食品について、表示との整合性を確認する化学的分析を実施した。

米穀 2 アイテム、食肉 2 アイテム、大豆加工品 3 アイテム

(2)講習会の実施

食品表示法について、事業者・消費者向け講演会や県政出張講座などで法施行に伴う改正点

等の周知や適正な表示に向けた指導を行った。(随時)

(3) 巡回指導

表示に係る巡回指導、各種研修会等へ講師の派遣等を実施した。(年間を通じて随時)

3 食育の推進

(1) 学校・保育所等での食育の推進

① 学校教育における農業体験学習の促進 〔農業技術課所管〕

・高校生対象に「高校生あぐり体験授業」を 2 回開催 参加者 延べ 40 人

・小学校と連携し、学校農園を利用した児童の農業体験学習を支援 4 校

② 学校における食育活動との連携と情報交換 〔教育委員会(スポーツ健康課)所管〕

食育推進事業に取り組む学校を中心に、食育事業の一環として、地域の農協や生産者団体

等と連携し学校給食への地域食材の利用促進を図った。また、農業体験活動等において農業

生産法人や農家の指導を受けるなど、地域の産物への理解を深める取り組みを促進した。

(2) 食育推進体制の整備と県民運動の展開 〔企画県民部(消費生活安全課)所管〕

① 食育ボランティア研修会等の開催

・食育推進ボランティア養成研修会開催 2 回

・食育推進ボランティアによる食育活動(保育所、幼稚園等) 47 ヶ所

② 食育推進シンポジウム等の開催

食育に対する県民意識の高揚と関係者の連携を促進し、県民運動として食育を推進するた

め次のとおり開催した。

・山梨県食育推進協議会総会の開催(H28.1)

・食育推進シンポジウムの開催 (H27.6)

・やまなし食の安全・食育推進大会の開催及び優良活動団体の表彰(H27.9)

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第14章 農業・水産団体

1 農業委員会及び農業会議

(1)農業委員会

ア 委員及び職員(H28.3.31現在)

委 員 会 数 委 員

職 員 総 数 選 挙 委 員 選 任 委 員

27委員会 617人 461人 156人 69人

イ 事業実施状況

(ア)農業委員会交付金 27委員会

(イ)農地中間管理機構集積支援事業費補助金 21委員会

(2)農業会議

ア 会議員及び職員(H28.3.31現在)

会 議 員 職 員

総 数 常 任 会 議 員 その他の会議員

39人 24人 15人 5人

イ 会議開催状況

総 会 2回

常任会議員会議 12回

ウ 法令所掌業務実施状況

(ア)農地法等関係事務

区 分 処理件数 処理面積

転 用 の 制 限 366 件 28.2 ha

転 用 の た め の 権 利 移 動 制 限 1,200 件 86.0 ha

土 地 区 画 整 理 事 業 0 件 0 ha

計 1,566 件 114.2 ha

(イ)農地調整関係等調査事業

現地調査 2回 4件 調査人員 25人

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エ 主な事業実施状況

(ア)農地情報利用効率化対策事業

a 企画検討会 1回 参加人員 50人

b 農地地図情報システム活用・普及推進検討会 1回 参加人員 30人

c 農地地図情報システムの活用状況の調査・分析 1回 27農業委員会

d 農地地図情報システム濃密指導 12回 27農業委員会

e 農用地情報利活用検討会 2回

(イ)農業委員会活動強化対策事業

a 基礎研修会 7回 参加人員 601人

b 特別研修会 2回 参加人員 336人

c 専門研修会 1回 参加人員 28人

d 巡回指導 12回 12農業委員会

e 活動事例集作成 1回 発行部数 40部

f 広域連携指導会 1回 参加人員 43人

g 活動評価検討会 1回 参加人員 48人

h 農業委員会組織業務効率化検討会 2回 参加人員 48人

i 農業委員会組織業務効率化実態調査会議 1回 参加人員 43人

(ウ)機構集積支援事業

a 農地の有効利用を図るための活動等

b 農業委員等の研修(6科目) 全64回 参加人員 延べ2,194人

c 中央研修会 6回 参加人員 10人

d 普及推進・巡回指導活動 10回 10農業委員会

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2 農業協同組合

(1)農業協同組合現在数

業 種 別 農 業 協 同 組 合

種別

地域

総 合 養 蚕 畜産酪農 園 芸 農村工業 そ の 他 合 計

甲 府 1 1 1 1 4

中 巨 摩 2 8 2 1 1 1 15

東 山 梨 1 11 3 1 16

東 八 代 1 2 8 1 12

西 八 代 1 2 1 4

南 巨 摩 1 2 3

北 巨 摩 1 3 2 2 4 12

郡 内 3 4 2 9

合 計 11 29 8 14 4 9 75

(平成28年3月31日現在 農政総務課調)

業 種 別 農 業 協 同 組 合 連 合 会 数

種別

区域

信 用 経 済 共 済 厚 生 養 蚕 酪 農 農村工業 その他 合 計

県 区 域 1 1 2

県区域未満 1 1 2

合 計 1 1 1 1 4

(平成28年3月31日現在 農政総務課調)

(2)総合農業協同組合概況

正 組 合 員 数 別 組 合 の 地 区 別 組 合 数

組合員数

区域

499人

以 下

500人~

999人

1,000人~

1,999人

2,000人~

2,999人

3,000人

以 上 合 計 構成比(%)

県 区 域 未 満 2 6 8 72.7%

市 町 村 区 域 1 1 2 18.2%

市町村区域未満 1 1 9.1%

計 1 1 2 7 11 100%

構成比(%) 9.1% 9.1% 18.2% 63.6% 100%

(平成28年3月31日現在 農政総務課調)

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一 組 合 平 均 経 営 規 模 (単位:人、百万円)

区 分 正組合員 役 員 職 員 余 裕 金 貸 出 金 固定資産 外部出資

本 県 5,568

(5,640)

26.6

(26.6)

211

(192)

46,158

(44,461)

14,847

(15,619)

2,307

(2,354)

2,420

(2,435)

全 国 6,496 26.6 299 103,289 32,519 4,161 5,305

対 比 85.7

(88.0)

100.0

(100.9)

70.6

(65.2)

44.7

(45.9)

45.7

(48.7)

55.4

(57.9)

45.6

(47.9)

貯 金 借 入 金 出 資 金 購 買 高 販 売 高

61,004

(60,080)

28

(37)

1,528

(1,530)

2,945

(2,949)

3,378

(3,413)

135,808 460 2,316 3,976 6,252

44.9

(46.6)

6.1

(7.6)

66.0

(68.0)

74.1

(68.9)

54.0

(55.0)

(本県:平成27年度末 ( )内は平成26年度末 農政総務課調、全国:26事業年度総合農協統計表)

職 員 別 組 合 数

職員

区分 10人未満 10~19人 20~49人 50~99人 100人以上 計

組 合 数 2 9 11

構成比(%) 18% 82% 100%

組 合 数 7 43 116 526 692

構成比(%) 1% 6% 17% 76% 100%

(本県:平成28年3月31日現在 農政総務課調、全国:26事業年度総合農協統計表)

(3)総合農業協同組合の合併推進

昭和36年農協合併助成法が施行され、平成28年3月末までの本県農協合併は次のとおりの実績

となっている。

合 併 農 業 協 同 組 合 一 覧 表

合併年度

新組合名 参加組合名(数) 設 立

年 月 日

組合

員数

出資 金額

県補助金

合 併 補助金

施設整備 補助金

2

若 草 町

山梨三恵、鏡中条、若草藤田(3)

3. 2. 1

1,414

千円

253,104

千円

千円

1,500

山梨甲西 落合、甲西大井、五明、南湖(4) 3. 2. 1 1,956 271,268 - 2,000

山梨ふたば 登美、塩崎 (2) 3. 2. 1 852 75,702 - 1,500

3 八 代 町 八代町、山梨御所 (2) 4. 2. 1 1,496 2,291 - 1,500

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合併年度

新組合名 参加組合名(数) 設 立

年 月 日

組合

員数

出資 金額

県補助金

合 併 補助金

施設整備 補助金

5 梨 北

山梨ふたば、明野、須玉町、高

根町、山梨秋田、八ヶ岳、白州

町、韮崎市、穂坂 (9)

5. 7. 1 13,926 1,690,397 1,000 5,000

6 塩 山 市 塩山、玉宮、大藤、神金、奧野

田、松里果実 (6) 6.10. 1 2,497 868,746 - -

7

巨 摩 野 山梨八田、白根、百田、西野、櫛

形、甲斐豊、若草、山梨甲西 (8) 7. 5. 1 10,175 2,296,002 1,000 5,000

クレイン 北都留郡、小菅村、大月市、

猿橋、富浜 (5) 8. 2. 1 7,381 895,545 1,000 5,000

8 甲 府 市 甲府池田、甲府南、甲府北、

貢川 (4) 9. 2. 1 4,995 836,049 - -

10 笛 吹 石和、山梨岡部、八代町、境

川村、中道町、豊富村 (6) 11. 2. 1 5,036 899,790 - 35,000

11 ふじかわ 南巨摩郡、中富町、早川町、

身延町、山梨南部、富沢町 (6) 11.10. 1 10,582 1,121,370 - 35,000

12

フルーツ山梨

東山梨、笛川、勝沼町、菱山、

山梨市八幡、岩手、日下部、

山梨日川、塩山市、松里 (10)

13. 2. 1 10,960 3,151,157 - 35,000

クレイン クレイン、丹波山村 (2) 13. 2. 1 7,569 1,040,997 - -

美 富 士 忍野村、大嵐、都留市、道志

村、富士吉田市 (5) 13. 4. 1 7,383 646,527 - 35,000

14 笛 吹 笛吹、富士見、御坂町、山梨

一宮 (4) 15. 2. 1 10,198 2,367,129 - -

16 クレイン クレイン、上野原 (2) 16. 6. 1 8,922 1,281,567 - -

21 クレイン クレイン、美富士、富士豊茂 (3) 21. 4. 1 16,713 2,406,059 - -

(平成28年3月31日現在 農政総務課調)

3 農業共済団体

農業共済組合の現状は次のとおりである。

農 業 共 済 組 合 等 の 現 況

組合員等数 総代数 役員数

損 害 評 価

委 員 数

損害評価

員 数 共済部長数 職 員 数

山 梨 中 央 7,752 128 10 39 314 1,056 22

峡中・南部 10,420 165 12 53 1,374 1,352 18

北 巨 摩 10,074 210 11 47 717 653 16

山 梨 富 士 8,961 42 8 18 396 549 10

合 計 37,207 545 41 157 2,801 3,610 66

(組合員等数:平成27年度農業共済組合の概況)

- 174 -

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4 漁業協同組合

(1)河川関係組合

組合名 組合員数(人) 総代数(人) 役員数(人) 職員数(人) 出資金額(千円)

峡北 833 109 20 1 8,890

山梨中央 408

103 26 1 非出資組合

峡東 767 100 30 1 10,515

富士川 568 91 18 2 11,227

早川 128 - 12 - 367

丹波川 66 - 11 - 非出資組合

小菅村 95 - 13 - 45

桂川 3,211 106 21 5 642

都留 1,396 115 21 1 279

秋山 138 - 18 - 144

忍草 139 - 10 - 42

道志村 431 - 23 3 非出資組合

計(12組合) 8,180 624 223 14 32,151

(2)湖沼関係組合

組合名 組合員数(人) 総代数(人) 役員数(人) 職員数(人) 出資金額(千円)

山中湖 191 - 18 1 96

河口湖 191 - 13 2 955

西湖 72 - 7 1 175

精進湖 77 - 8 - 116

本栖湖 54 - 8 - 540

計(5組合) 585

- 54 4 1,882

(1)と(2)合計(17組合) 8,765 624 277 18 34,033

(3)養殖関係組合

組合名 組合員数(人) 総代数(人) 役員数(人) 職員数(人) 出資金額(千円)

山 梨 県 養 殖

漁業協同組合 35 - 11 - 900

(4)連合会

組合名 会員数(組合) 総代数(人) 役員数(人) 職員数(人) 出資金額(千円)

山梨県漁業協同

組 合 連 合 会 18 - 11 2 17,650

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5 土地改良区等 土地改良区は、土地改良事業を行うため、土地改良法の適用を受けて有資格者が組織する法人

であり、県知事の認可により有資格者に係る地域を地区として設立する。

県下には現在63の土地改良区があり、地区面積は11,961ha、組合員数は30,065

人で、地区の土地改良事業の施工を始め、土地改良施設の維持管理、もしくは国営・県営事業の

負担金等の業務を行っている。なお土地改良区は、事業を共同して行うために土地改良区連合を

設立することができる。土地改良区連合は現在県下に2地区設立されており、面積は2,425

ha、組合員数は6,520人である。県はこれらの土地改良区等の業務や会計の状況を検査し、

円滑な運営が行われるよう指導を行っている。

これとは別に、土地改良事業の適切かつ効率的な運営を確保し、共同の利益を増進することを

目的に、山梨県土地改良事業団体連合会が設立(認可昭和33年10月9日、登記昭和33年11

月18日)されており、会員の行う土地改良事業に関する技術的な指導援助、土地改良事業に関

する教育や情報提供、調査及び研究、国または県の行う土地改良事業に対する協力等を行ってい

る。現在会員として、土地改良区55、土地改良区連合2、市町村27、農協2が加入している。

平成17年度から同連合会では、山梨県換地等促進事業推進委員会、山梨県管理指導事業推進

委員会を設置し業務を行ってきた。

平成23年度に水土総合強化推進事業に改正され、山梨県換地等強化事業推進委員会(委員は、

関東農政局職員1人、甲府地方法務局職員1人、県職員1人、土地連役職員2人、換地士1人)

を設置し、換地事務の適正かつ円滑な推進を図るため、換地技術者等及び換地事務量の把握、換

地技術者に対する講習及び研修の開催、換地事務に関する指導、農地利用集積に関する指導等の

業務を行っている。同じく、山梨県管理円滑化事業推進委員会(委員は、関東農政局職員2人、

県職員1人、土地連役職員2人)を設置し、土地改良施設の円滑かつ適切な管理を図るため、管

理専門指導員12人により土地改良施設の診断・管理指導の業務実施計画、土地改良事業に関す

る苦情・紛争等の対策、その他必要な業務を行っている。

また、平成18年度より山梨県農業農村整備推進協議会(会長1人、副会長1人、理事5人、

監事2人)が設立され、市町村、土地改良区、農業協同組合等が実施する農村総合整備事業、農

業集落排水事業、農地集団化事業等の事業の推進を図るために、事業に関する要望及び要請、事

業に関する情報の提供、調査の研究、その他必要な事項について業務を行っている。

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第15章 農業従事者に対する社会保障

1 農業者年金

(1)加入者の状況

28.3.31

区 分 加 入 者 数

通 常 加 入 者 118人

政 策 支 援 加 入 者 74人

未 分 類 者 0人

計 192人

(農業者年金基金)

(2)受給権者の状況

ア 新制度

老齢年金のみ 老齢年金と特例付加年金の併給 計

127 人 7 人 134 人

イ 旧制度

老齢年金のみ 経営移譲年金のみ

65才以上

老齢年金と経営

移譲年金の併用 計

経営移譲年金のみ 特例老齢年金

880 人 877 人 210 人 1,397 人 3,364 人

(農業者年金基金)

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第16章 農 業 啓 発 事 業

1 農業の日等啓発事業

(1) 第62回山梨県農業まつり

ア 第62回山梨県農業まつり式典

期日(会場) 運営主体 事業概要

10月13日(火)

AM10:00~11:00

(JA会館)

農業まつり実行委員会

第62回農業まつりの開催を記念して、農水産業功績者表

彰及び農業を育てるナイスカップル表彰等を行った。

イ 第62回山梨県農業まつり農水産業功績者表彰

部 門 氏 名(名 称) 住 所 部 門 氏 名(名 称) 住 所

農 産 中村 恭治・君江 北 杜 市 花 き 山本 一幸・貴美江 笛 吹 市

諸角 清造・寿恵子 富 士 川 町 水 産

天野 克行・勝代 忍 野 村

生原 洋征・聚子

果 樹

竹山 美雄・はる美 山 梨 市 笛 吹 市

田村 仁 ・妙子 笛 吹 市 畜 産

鮎沢 幸雄・澄江 甲 府 市

内藤 武寛・壽子 笛 吹 市 角田 元昭・京子 富士河口湖町

中山 宜保・和子 甲 府 市 土地改良

加藤 敏郎・徳子 南アルプス市

広瀬 常晴・康子 山 梨 市 櫻本 安善・とも子 南アルプス市

武藤 雅美・志乃ぶ 甲 州 市 むらづくり 特定非営利活動法人 おおつきエコビレッジ

大 月 市

野 菜 西八代郡農業協同組合 野菜部会ナス部

市川三郷町 農村生活 内田 直子・久善 甲 州 市

特 産 青山 勝彦・久美子 南 部 町 流通・加工 一般社団法人南アルプスふるさと活性化財団

早 川 町

ウ 平成27年度農業を育てるナイスカップル表彰

住 所 氏 名 経 営

韮 崎 市 大河原勝彦 ・ 美穂子 水 稲

南アルプス市 長峰 功昌 ・ 玉 江 果 樹

北 杜 市 湯本 高士 ・ 暁 子 野 菜

笛 吹 市 雨宮 政揮 ・ 佳 江 果 樹

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エ 農業者のつどい

期日(会場) 運営主体 事業概要

10月17日(土)

(小瀬スポーツ公園)

JA女性部協議会 農村女性相互の親睦と連携を図るため、郷土の民謡・芸

能のつどいを実施した。

10月18日(日)

(小瀬スポーツ公園)

JA中央会 小学生を対象に、県産野菜や果物を知ってもらうための

ゲーム等を実施した。

10月25日(日)

(県JA会館)

JA共済連山梨

小中学生を対象とした、書道・交通安全ポスターコンク

ールを実施し、書道19,036点、ポスター3,103点の応募が

あった。

6月22日(月)

~12月16日(水)

(表彰式 12月16日)

JA全農やまなし

高品質果実の生産と果樹経営の近代化、生産意欲高揚を

図るため、第35回果樹共進会を実施した。

3月2日(月)

~12月17日(木)

(表彰式 12月16日)

JA全農やまなし 高品質野菜の生産と農業経営の促進、生産意欲高揚を図

るため、第7回野菜共進会を実施した。

8月6日(木)、

9月30日(水)

(食肉流通センター)

JA全農やまなし

高品質肉畜鶏卵の生産振興と消費拡大、生産意欲高揚を

図るため、第42回肉畜鶏卵共進会を実施し、肉牛63頭

、肉豚100頭、鶏卵15点が出品された。

10月16日(金)

(小瀬スポーツ

公園球技場)

JA厚生連

農村在住高齢者の健康保持と生きがいを高めるため「第

27回山梨県JAグループすこやかゲートボール大会」を

実施し、約500人が参加した。

11月19日(木)

~21日(土)

(ラザウォーク甲斐双葉)

花き連 花き栽培技術の向上と生産意欲の向上を図るため、花き

品評会を開催し、106点が出品された。

11月14日(土)

~15日(日)

(小瀬スポーツ公園)

県漁連 錦鯉生産者の養殖技術の改善と品質向上を図り、養殖経

営の向上と発展に資するため第44回錦鯉品評会を開催

し、399匹が出品された。

オ まつりの広場

期日(会場) 運営主体

(実施主体) 事業概要

JA全農やまなし

県内で生産される品質の高い農畜水産物

に対する県民の関心を高めるため、農畜水産

物の展示即売を実施し、消費拡大を図った。

(JA中央会) 農業・食料関係のパネル展示やチラシ等の

配布を行い、農業関係事業のPRを行った。

(農業会議) 農業関係諸相談と、経営相談を実施した。

(県土連) 耕作放棄地解消事業のPR及び農産物等

販売を行った。

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期日(会場) 運営主体

(実施主体) 事業概要

10月17日

~18日

(小瀬スポーツ公園)

(農業振興公社)

本県の農業・農村の理解促進と担い手の確

保育成についての啓発及び、就農支援のため

就農相談等を行った。

(食肉流通センター) 県内で生産されている食肉の消費拡大の

ため、展示即売、試食等を実施した。

(県農畜協) 県産農産物の消費拡大のため、果樹、ピー

チジュース等の展示販売を行った。

(NOSAI) 農業共済事業の理解促進を図るため、パン

フレット等の配布を行いPRを行った。

(植物防疫協会) 農薬の適正使用や安全性を啓発するため、

パネル等の展示と相談会を実施した。

(県漁連) 県内で生産される水産物の普及、消費拡大

に向けて、展示即売、試食等を実施した。

(花き連) 県産花きの消費拡大に向けて、展示即売を

実施した。

(県酪農協) 県産牛乳、乳製品等の消費拡大に向けたP

Rをした。

(茶振協) 県産茶の消費拡大に向けて、展示即売を実

施した。

関連事業

フェスタ

まきば

10月4日(日)

(まきば公園)

フェスタまきば実行

委員会 県産畜産物のブランドPRを実施した。

(2)第54回全国農林水産祭

行事名 期日(会場) 運営主体 事業概要

農林水産大臣賞

受賞者招待行事

11月23日

(明治神宮)

農林水産省

(県農業まつり実行委員会)

平成27年度農林水産大臣賞受賞

者が表彰式典に参加

地域農林水産展

(実りのフェステ

ィバル)

11月13日(金)

~11月14日(土)

(サンシャイン)

県農業まつり実行委員会、

JA全農やまなし、

県農畜協

各都道府県が参加する地域農林水

産展(実りのフェスティバル)で、

本県の農畜産物や特産品の展示・即

売とPRを行った。

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2 表彰関係

(1)叙 位 ・ 死 亡 叙 勲

年度 氏 名 住 所 種 別

27 故 野中 文雄 甲府市 従六位

27 故 雨宮 二郎 甲府市 従六位

(2)叙 勲

年度・時期 受 章 者 住 所 種 別

27 春 中山 仁 甲州市 旭日単光章

27 秋 該 当 な し

(3)褒 章

年度・時期 受 章 者 住 所 種 別

27 春 該 当 な し

27 秋 該 当 な し

(4)県 政 功 績 者

年 度 受 賞 者

分 野 氏 名 住 所

27

産 業

小澤 郷夫 韮 崎 市

小澤 博 甲 府 市

小林 輝男 甲 斐 市

三枝 攻 笛 吹 市

村松 初枝 市川三郷町

(5)大日本農会農事功労者

年 度 賞 章 部 門 受 賞 者

氏 名 住 所

27 緑白綬有功章 果樹部門 久保田義彦 甲 州 市

(6)大日本水産会

年 度 部 門 受 賞 者

氏 名 住 所

27 該当なし

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(7)第47回山日YBS農業賞

年 度 賞 受 賞 者 作 目 住 所 備 考

27

山日YBS農業賞 有限会社 マルサフルーツ古屋農園 果樹 笛吹市

同 奨 励 賞 小澤 豊 畜産 韮崎市

チ ャ レ ン ジ 賞 農事組合法人 エナジー津金 作物 北杜市

チ ャ レ ン ジ 賞 農事組合法人 SUN・ラズベリー明野 果樹 北杜市

(8)第45回日本農業賞山梨県審査会

年度別 部 門 賞 個人及び集団名 作 目 住 所 備 考

27

個別経営の部 最優秀賞 松村洋蘭 株式会社 花き 中央市 中央審査会へ推進

全国で大賞受賞

集団組織の部 最優秀賞 JA西八代

果樹部会キウイ部 果樹 市川三郷町 中央審査会へ推進

(9)農林水産大臣表彰(全国農林水産祭参加)

部 門 受賞者

受賞内容 備 考 氏名(団体名) 住所(所在地)

園 芸 山本 一幸 笛吹市 平成26年度山梨県花き品評会

(バラ)

平成27年8月1

日~平成28年

7月31日の間

に表彰決定さ

れたもの

園 芸 中村 忠雄 甲州市 平成26年度山梨県果樹共進会

(すもも)

園 芸 小笠原 政宏 山梨市 平成26年度山梨県果樹共進会

(ぶどう)

畜 産 櫻本 武 南アルプス市 第42回山梨県肉畜鶏卵共進会

(肉豚〈食肉〉)

水 産 酒井 敏男 笛吹市 第44回山梨県錦鯉品評会

(錦鯉)

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第17章 東日本大震災関係

1 東日本大震災の被害等の概要 復興庁の集計によると、2013 年(平成 25 年)12 月 10 日時点で、震災による死者・行方不明者

は約 18,500 人、建築物の全壊・半壊は合わせて約 40 万戸、ピーク時の避難者等の数は約 35 万人、

2016 年 11 月 10 日時点の避難者等の数は 13 万 4,191 人となっている。

2 震災被害への本県農業関係の対応 (1)農産物等の放射性物質検査等に対する対策

(ア)基本的な考え方、方法

県産農畜水産物は、平成25年度まで放射性物質は不検出または基準値以下となっており

平成25年3月19日付けで原子力災害対策本部が指定する検査対象品目から除外された。

しかし、消費者の不安感を払拭し、風評被害による販売不振などの影響を防止する観点から、

引き続き、以下の考え方に基づき、出荷する県産農産物の放射性物質検査を実施した。

1)出荷される主要な農産物等を対象とし、生産量等を踏まえて検査品目を選定する。

2)農産物は、平成26年度まで全ての品目で不検出であったことから、生産状況、地域性

を考慮しながら、原則として各品目ごとに主要な1~2産地からサンプルを採取する

3)米については、各JA単位で収穫時期の早い地域を対象に検査を行う。

4)牛肉については、肥育農家の全戸検査が終了しているので、食肉市場の自主検査に委ね

る。原乳については、生産団体と地理的条件を考慮した合乳等を検査する。

5)水産物については、これまでの検査成績を考慮して、過去の検査で検出限界値を超えた

湖の漁場において解禁状況等を勘案し、天然魚の検査を行う。

7)検査の結果は、県ホームページ等で随時公表する。

8)検査の結果、厚生労働省が定める基準値を超えた場合、県は出荷団体等に対し、当該品

目の出荷の自粛を要請する。

(イ)検査体制

検査に係わる担当者は、農政部の試験研究機関等の職員(総合農業技術センター、果樹試

験場、畜産試験場、酪農試験場)とし、衛生環境研究所の兼務職員として発令し、検査を実

施した。

(ウ)検査品目、検査点数

果樹、野菜、米、原乳、牛肉、飲用茶、天然魚など41品目、79点の検査を実施した。

(エ)検査結果

検査の結果、すべのサンプルで不検出であった。

厚生労働省が定める基準値を超えた場合、県は出荷団体等に対し、当該品目の出荷の自粛

を要請することとしていたが、全てが基準値以下であったため該当事案は発生しなかった。

また、検査結果は、県ホームページ等で随時公表した。

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検査結果

検出限界値

検査結果

検出限界値

1 5/8 飲用茶 南部町 不検出 0.983 不検出 0.887 1.9

2 5/13 ウメ 甲斐市 不検出 1.19 不検出 1.41 2.6

3 オウトウ 南アルプス市 不検出 0.82 不検出 0,945 1.8

4 オウトウ 山梨市 不検出 0.787 不検出 0.881 1.7

5 レタス 富士河口湖町 不検出 1.1 不検出 1.27 2.4

6 スイートコーン 市川三郷町 不検出 1.03 不検出 0.633 1.7

7 スイートコーン 甲府市 不検出 0.937 不検出 0.941 1.9

8 原乳 北杜市 不検出 0.643 不検出 0.862 1.5

9 原乳 北杜市 不検出 0.643 不検出 0.847 1.5

10 原乳 北杜市 不検出 0.752 不検出 0.804 1.6

11 原乳 富士河口湖町、鳴沢村 不検出 0.912 不検出 0.979 1.9

12 原乳 富士河口湖町 不検出 0.749 不検出 0.851 1.6

13 原乳 北杜市、甲斐市、中央市、山梨市 不検出 0.708 不検出 0.846 1.6

14 ナス 中央市 不検出 0.601 不検出 1.22 1.8

15 ナス 甲府市 不検出 0.902 不検出 1.24 2.1

16 モモ 南アルプス市 不検出 0.908 不検出 1.03 1.9

17 モモ 笛吹市 不検出 0.85 不検出 0.848 1.7

18 モモ 山梨市 不検出 0.737 不検出 0.74 1.5

19 スモモ 南アルプス市 不検出 0.526 不検出 0.674 1.2

20 スモモ 甲州市 不検出 0.776 不検出 0.94 1.7

21 ブドウ(デラウエア) 笛吹市 不検出 0.843 不検出 0.847 1.7

22 ブドウ(デラウエア) 甲府市 不検出 1.07 不検出 0.832 1.9

23 小麦 韮崎市 不検出 0.882 不検出 1.05 1.9

24 大麦 韮崎市 不検出 1.21 不検出 1.05 2.3

25 キュウリ 都留市 不検出 1.04 不検出 1.12 2.2

26 キャベツ 鳴沢村 不検出 1.68 不検出 1.49 3.2

27 トマト 北杜市 不検出 0.915 不検出 0.894 1.8

28 リンゴ 韮崎市 不検出 1.41 不検出 1.32 2.7

29 ブドウ(巨峰) 甲府市 不検出 0.86 不検出 0.979 1.8

30 スイートコーン 鳴沢村 不検出 0.972 不検出 1.18 2.2

31 スイートコーン 富士河口湖町 不検出 1.09 不検出 0.972 2.1

32 スイートコーン 都留市 不検出 0.855 不検出 0.957 1.8

33 8/26 ブドウ(ピオーネ) 甲州市 不検出 0.957 不検出 0.769 1.7

34 キュウリ 南アルプス市 不検出 0.852 不検出 0.936 1.8

35 キュウリ 笛吹市 不検出 0.711 不検出 0.95 1.7

36 ブドウ(ベーリーA) 韮崎市 不検出 1.05 不検出 0.933 2

37 ブドウ(甲州) 韮崎市 不検出 0.815 不検出 0.796 1.6

38 ブドウ(ベーリーA) 南アルプス市 不検出 0.809 不検出 0.629 1.4

39 ブドウ(甲州) 南アルプス市 不検出 0.669 不検出 0.676 1.3

40 ブドウ(ベーリーA) 笛吹市 不検出 0.926 不検出 0.84 1.8

41 ブドウ(甲州) 甲州市 不検出 0.807 不検出 0.821 1.6

42 9/16 ブドウ(シャインマスカット) 山梨市 不検出 1.05 不検出 0.861 1.9

平成27年度 放射性物質検査結果

8/5

7/1

7/9

7/29

8/26

9/2

7/21

7/15

6/25

6/10

6/17

6/3

6/5

No検査

予定日農産物名

産地採取地

核種別放射能濃度〔Bq (ベクレル)/kg〕

セシウム134 セシウム137

合計

- 184 -

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検査結果

検出限界値

検査結果

検出限界値

43 富士川町 不検出 1.29 不検出 1.80 3.1

44 市川三郷町 不検出 1.35 不検出 1.66 3.0

45 昭和町 不検出 1.43 不検出 1.54 3.0

46 南アルプス市 不検出 1.40 不検出 1.59 3.0

47 甲府市 不検出 1.05 不検出 1.24 2.3

48 韮崎市 不検出 1.68 不検出 1.62 3.3

49 北杜市長坂町 不検出 1.88 不検出 1.75 3.6

50 北杜市高根町 不検出 1.60 不検出 1.76 3.4

51 北杜市白州町 不検出 1.35 不検出 1.25 2.6

52 北杜市武川町 不検出 1.57 不検出 1.44 3.0

53 北杜市須玉町 不検出 0.942 不検出 1.22 2.2

54 北杜市明野町 不検出 1.49 不検出 1.52 3.0

55 都留市 不検出 1.32 不検出 1.47 2.8

56 10/2 ヒメマス(天然魚) 富士河口湖 不検出 3.87 不検出 3.59 7.5

57 富士河口湖町 不検出 1.04 不検出 0.942 2.0

58 甲斐市 不検出 1.48 不検出 1.76 3.2

59 北杜市小淵沢町 不検出 1.35 不検出 1.16 2.5

60 北杜市大泉町 不検出 1.50 不検出 1.14 2.6

61 サトイモ 甲斐市 不検出 1.07 不検出 1.15 2.2

62 10/16 ヒメマス(天然魚) 本栖湖 不検出 4.37 不検出 3.92 8.3

63 カキ(生食用) 笛吹市 不検出 0.80 不検出 0.925 1.7

64 カキ(加工用) 甲州市 不検出 1.33 不検出 1.33 2.7

65 カキ(加工用) 南アルプス市 不検出 1.06 不検出 1.04 2.1

66 ダイコン 富士河口湖町 不検出 0.61 不検出 0.54 1.2

67 サツマイモ 鳴沢村 不検出 1.13 不検出 1.27 2.4

68 鳴沢菜 鳴沢村 不検出 0.821 不検出 0.929 1.8

69 米 山梨市 不検出 1.38 不検出 1.14 2.5

70 11/6 キウイフルーツ 市川三郷町 不検出 1.17 不検出 1.04 2.2

71 11/11 米 笛吹市 不検出 0.867 不検出 0.953 1.8

72 長芋 北杜市 不検出 0.816 不検出 0.93 1.7

73 ホウレンソウ 都留市 不検出 0.951 不検出 1.24 2.2

74 ソバ 北杜市 不検出 1.13 不検出 0.911 2.0

75 大豆 北杜市 不検出 1.11 不検出 1.28 2.4

76 ユズ 富士川町 不検出 1.10 不検出 0.957 2.1

77 大豆 身延町 不検出 1.35 不検出 1.24 2.6

78 ニンジン 市川三郷町 不検出 1.17 不検出 1.30 2.5

79 3/10 野沢菜 市川三郷町 不検出 1.57 不検出 1.74 3.3

No検査

予定日農産物名

産地採取地

核種別放射能濃度〔Bq (ベクレル)/kg〕

セシウム134 セシウム137

合計

12/16

10/28

9/30

11/25

10/7

10/21

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Page 55: 山 梨 県 農 業 年 鑑¬¬1 1 章 農業災害と施設 1 平成 2 7 年 (201 5 年) の天候について 1 概況 平成 27 年( 2015 年)の年平均気温は、韮崎で平年並、勝沼、切石で平年より高くなったほ

(2) 牛肉の全頭簡易検査の実施((株)山梨食肉流通センター)

(株)山梨食肉流通センターでは、平成 27 年度は、計 4,063 頭について実施した結果、放射性

セシウムは全て不検出(検出限界値未満)だった。結果については(株)山梨食肉流通センター

のホームページで公表している。

3 被災地等への支援 被災地への職員派遣

東日本大震災の復旧対策のため、被災地である東北3県からの要請により部内の職員を派遣した。

・農業土木職

東北 3 県からの要請を農林水産省において調整している。

平成 27 年度の本県の派遣状況は次のとおり。

期 間 人数 派遣先 派遣元所属 派遣形態

宮城県 1年間 2 人 仙台地方振興事務所 耕地課

峡東農務事務所 地方自治法派遣

支援内容

農地、農業用施設及び農地海岸の復旧事業に係る工事発注事務、工事監督等

参考:(株)山梨食肉流通センターにおける牛肉の全頭検査実施状況

単位:頭

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

月 合計

H26 年度 345 343 368 296 291 419 394 460 381 333 329 351 4,310

H27 年度 403 265 350 368 308 352 311 482 316 273 324 311 4,063

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