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日機連 19 標準化―2 1 9 環境保全用バグフィルタ集じん設備及び 関係する課題の標準化報告書 2 0 3 社団法人 日本機械工業連合会 社団法人 日本粉体工業技術協会 この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 http://ringring-keirin.jp/

平 成 1 9 年 度 環境保全用バグフィルタ集じん設備及び 関係 ...日機連19 標準化―2 平 成1 9 年 度 環境保全用バグフィルタ集じん設備及び

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日機連 19 標準化―2

平 成 1 9 年 度

環境保全用バグフィルタ集じん設備及び

関係する課題の標準化報告書

平 成 2 0 年 3 月 社団法人 日本機械工業連合会 社団法人 日本粉体工業技術協会

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://ringring-keirin.jp/

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我が国では、標準化の重要性は以前から十分認識されており、特に機械工業

においてはきわめて精巧な規格が制定されてきています。また経済の国際化に

伴い、世界的規模で規格の国際共通化が進められております。 しかし、我が国の規格の中には独自で制定したものもあり、国際化の視点で

の見直しを行う必要性が高まっています。弊会ではこれに対応するため、従来

から機械工業に係わる国内規格の国際規格との整合化事業等に取り組んで参り

ました。 近年、国際標準化にも新しい動きが起こり、製品を中心とした規格に加え、

品質や環境などをはじめとするマネジメントに係わる規格などが制定されて きております。弊会においてもこの動きに対応し、機械安全、環境保全など機

械工業におけるマネジメントにかかわる規格や、機械工業の横断的な規格につ

いての取り組みを強化しているところです。 具体的には、国内規格と国際規格との整合を目指した諸活動、機械安全規格

整備とリスクアセスメントの普及活動、各専門分野の機関・団体の協力による

機種別・課題別標準化の推進などです。これらの事業成果は、日本発の国際規

格への提案や国際規格と整合した日本工業規格(JIS)、団体規格の早期制定な

どとなって実を結ぶものであります。 こうした背景に鑑み、弊会では機械工業の標準化推進のテーマの一つとして

社団法人日本粉体工業技術協会に「環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関

係する課題の標準化」を調査委託いたしました。本報告書は、この研究成果であ

り、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚です。

平成 20 年 3 月 社団法人 日本機械工業連合会 会長 金 井 務

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はじめに

近年の地球環境問題への関心の高まりと共に、集じん設備は産業界の固定発生源をはじ

め局所集じん分野においてもその重要度が強く認識されています。我が国においては、こ

れまで数度にわたり固定発生源からの汚染物質の放出防止対策として法規制を進め、機械

装置面からの改善を進めてきました。 集じん機のトレンドは、膨大な設備投資を伴う電

力分野では電気集じん機が多用されていますが、民間の自家発電をはじめセメントプラン

トや都市ごみ焼却施設等ではより安いコストで設置でき、しかも省スペースで集じん効率

に優れ、またダイオキシン削減に有効な装置としてバグフィルタが多用されています。

これらのバグフィルタ機内でろ過を担当するフィルタ材について、信頼性のある評価デ

ータと分りやすいろ布の性能表示方法が求められていることから、当協会は NEDO、経済

産業省から委託を受け、ろ過性能評価方法および耐久性能評価方法について研究開発を行

い、またその JIS 規格化を推進してまいりましたが、前者は平成 17 年度、後者は平成 18

年度1件、平成 19 年度に2件がそれぞれ JIS として制定されました。

一方でこれらの JIS は、広く現場に周知させ、使ってみて不都合があれば衆知を集めて

使いやすい JIS に改善する必要があります。当協会が、社団法人日本機械工業連合会より

委託を受けて実施している「環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準

化」は、JIS 制定後のこのようなニーズに応えるため、実際に試験評価機関で使用してみ

て、その問題点を洗い出し、より使いやすくするための改善点を摘出することを目的とし

たものです。また関連業界にアンケート調査をして、業界が要望する集じん設備に関する

標準化課題の抽出を行っています。これらの一連の調査活動は、今後の集じん機業界で必

要とされる改善項目を選び標準化を進める足がかりとなる事を期待するものであり、また

これらの調査結果が関係各位の御参考になれば幸甚であります。

おわりに、本調査研究を推進するにあたって、社団法人日本機械工業連合会のご指導、

ご支援に感謝し、調査研究にご協力いただいた関係各位に厚く御礼申し上げます。

平成20年3月

社団法人日本粉体工業技術協会

会 長 江 見 準

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委員会の経過

当該事業の委員会の経過及び測定調査の経過は、以下のとおりである。

(1) 第 1 回“環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準化”委員会

(平成 19 年 9 月 27 日)

1)事業内容・実施計画書の審議、承認

(2) 第2回“環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準化”委員会

(平成 19 年 11 月 15 日)

1)バグ比較測定による標準化案の信頼性確認-進捗状況の審議

2)集じん設備の標準化アンケート調査―アンケート案の検討

(3) 第3回“環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準化”委員会

(平成 20 年 1 月 17 日)

1)ランドロビンテスト実施内容の検討

(4) 第4回“環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準化”委員会

(平成 20 年 2 月 5 日)

1)バグ比較測定に夜標準化案の信頼性確認―進捗状況報告と検討

2)集じん設備の標準化アンケート調査―アンケート案の検討

3)加速試験法の進捗とその内容検討

(5) 第5回“環境保全用バグフィルタ集じん設備及び関係する課題の標準化”委員会

(平成 20 年 3 月 13 日)

1)バグ比較測定による標準化案の信頼性確認―㈱環境衛生研究所及び中外テクノス㈱

の試験結果の検討

2)集じん設備の標準化アンケート調査結果報告

3)粒子径分布測定法の標準化検討結果報告

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委員名簿 (敬称略、順不同)

委員長 井村俊明 アマノ株式会社 細江・都田事業所総括細江事業所長

副委員長 和田有文 東洋紡績株式会社 機能 NW 事業総括部アドバイザ

委員 池野栄宣 新東工業株式会社新東エコテックカンパニ開発部環境開発グループマネジャ

委員 今川真之 東洋紡績株式会社 機能材開発研究所機能・NW 開発グループ員

委員 植原盛樹 アンビック株式会社技術部環境システム事業部統括マネジャ

委員 辻井 澄生 日本スピンドル製造株式会社 集じん技術グループ部長

委員 中川和之 株式会社環境衛生研究所部長

委員 中村喜久男 中外テクノス株式会社 工業技術事業本部関西実験場所長

委員 和田匡司 石川工業高等専門学校 環境都市工学助教

事務局 野出 毅 社団法人日本粉体工業技術協会東京事務所事務局長代理

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目 次

第 1 章 調査研究の目的及び概要 ................................................................................... 1

1.1 調査研究の目的 .................................................................................................. 1

1.2 調査研究の概要 .................................................................................................. 1

第 2 章 バグ比較測定による JIS の信頼性確認 .............................................................. 2

2.1 JIS Z8909-1「集じん性能試験方法」に於ける信頼性確認試験 ............................ 2

2.1.1 背景 ............................................................................................................. 2

2.1.2 概要 .............................................................................................................. 4

2.1.3 信頼性確認試験結果 .................................................................................... 15

2.1.4 まとめ .......................................................................................................... 53

2.2 JIS Z 8909-2「耐久性試験方法における信頼性確認試験 ................................... 58

2.2.1 背景 .............................................................................................................. 58

2.2.2 概要 ............................................................................................................ 59

2.2.3 信頼性確認試験結果 ...................................................................................... 77

2.2.4 まとめ .......................................................................................................... 97

第 3 章 集じん設備の標準化アンケート調査 ................................................................ 98

3.1 概要 .................................................................................................................. 98

3.2 調査方法 ............................................................................................................. 98

3.3 調査結果 ............................................................................................................. 98

3.4 まとめ .............................................................................................................. 106

第 4 章 粒子径分布測定法の標準化法の検討 .............................................................. 107

4.1 粒子径分布測定法の標準化の意義 ................................................................... 107

4.1.1 健康影響を配慮した粒子径別環境基準への対応 ........................................ 107

4.1.2 ろ布の設計への粒子径分布情報の利用 ...................................................... 107

4.2 評価法の国際規格化の動向 .............................................................................. 108

4.3 粒子径分布測定法の標準化における検討項目 .................................................. 108

4.3.1 測定粒子 ................................................................................................... 109

4.3.2 粒子径の種類 ............................................................................................ 109

4.3.3 サンプリング方法 ..................................................................................... 109

4.3.5 データ解析 ............................................................................................... 113

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4.4 まとめ ......................................................................................................... 113

第 5 章 本調査研究のまとめ ...................................................................................... 114

5.1 本調査研究の位置づけ ....................................................................................... 114

5.2 本調査研究で明らかになった事項 ................................................................... 115

5.3 今後の課題 ........................................................................................................ 118

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第 1 章 調査研究の目的及び概要

1.1 調査研究の目的

環境保全技術の標準化が進む中で、大気中に粉塵排出を行う発電設備、セメント工

場、焼却施設などの多くの施設では、その排出粉塵量の更なる削減が重要な課題であ

る。バグフィルタ集じん設備は、高い集じん効率を持つ設備として広く使用されてい

るが、その集じん効率を更に向上させ、またバグ破損によるトラブルを減少させるこ

とが求められている。集じん性能向上のためには、集じん設備内に装着するバグの集

じん性能評価方法を標準化する必要があり、これまでにその試験方法の研究を行い標

準化し、JIS を制定してきた。同時に集じん設備内装着のバグ寿命を事前に予知する

ための寿命評価に係る評価方法の検討を進めて、その一部を JIS 化する段階にある。

この調査研究では、これまでに進めてきたこれらの標準化活動結果を、産業界でそ

の有用性を明らかにし、またその評価方法の問題点を調べて、さらに完成度を高めた

標準化案を提案することを目的とする。

1.2 調査研究の概要

本調査研究は、以下の調査項目について検討を行い、報告書に取りまとめたもので

ある。主な調査研究項目は、

(1)バグ比較測定による標準化案の信頼性確認

(2)集じん設備の標準化アンケート調査

(3)粒子径分布測定法の標準化案の検討

である。

本調査研究は、集じん機械の主要設備の中からバグフィルタ設備を取り上げ、

バグ比較測定による集じん性能と耐久性能に関する標準化案の信頼性確認を行う。

委員会で検討し承認した実験計画に基づき、外部委託機関に対して市場にある主

要なバグを供給し、これまでに作成した集じん性能評価法、耐久性能評価法を使

って集じん設備の代表的な操作条件に近似させた試験条件下で比較実験を行い、

標準化案の信頼性確認を行い、問題点に対する改善策をまとめる。

―フィルタ標準化小委員会は、集じん設備の標準化を更に推し進めるために、

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業界のアンケート調査を行い、取り組みテーマの優先順位を決める。

―前項結果を用いて、フィルタ標準化小委員会において集じん設備の性能評価

方法の JIS 素案作成に関する検討を行う。

―フィルタ標準化小委員会は、集じん性能に関係する粒子径分布について代表

的な測定方法に関する調査を行い、その測定方法の標準化案を検討する。

第 2 章 バグ比較測定による JIS の信頼性確認

2.1 JIS Z8909-1「集じん性能試験方法」に於ける信頼性確認試験

2.1.1 背景 パルスジェット型集じん機に使用するバグフィルタの設備の性能の良し悪し

を判断する基準は、①低圧損で運転できる、②吹き洩れが少ない、③耐久性が大であるこ

とが挙げられる。また集じん機を低圧損で運転できればラニングコストの低減が出来る。

吹き洩れが少なければ集じん機としての本来の機能を満足することができる。さらに耐久

性が良ければ、バグフィルタの交換年数が長くなりメンテナンス及びランニングコストに

も反映する。しかしこれらの 3 条件の中で、一般的に試験装置で評価を行うことができる

条件は、①及び②であり、バグフィルタ設備の耐久性に関しては、集じん機の使用条件及

び設置環境に左右され、さらに、試験期間として数ヶ月或いは数年の長期にわたる評価が

必要となる。

そこで、実験室レベルに於いて、耐久性以外の 2 条件に対する評価装置及び方法が考案

され、2005 年に JIS Z8909-1:2005「集じんろ布の試験方法-第 1 部:集じん性能」(以下

JIS Z8909-1 とする)が制定された。

制定前後に於いて、数箇所の機関によってラウンドロビン試験が行われてきた。これら

の試験結果をさらに信頼性を高めるために、金沢大学(後に装置及び測定を石川工業高等専

門学校に移管する)(以下石川高専とする)と株式会社環境衛生研究所(以下衛生研とする)で

測定環境条件及び装置の違いをみるための各種試験を行うこととした。

ここに、試験を行うまでの経緯と試験結果及び考察を報告する。

(1)JIS Z8909-1 の制定以前の状況

JIS Z8909-1 を制定する以前に、平成 12 年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構の研

究受託による、新規産業支援型国際標準開発事業「環境保全繊維フィルターの性能評価方

法の標準化」報告書があり、装置・試験条件・試験方法等の検討を行っている。

現在の JIS Z8909-1 の装置・試験条件・試験方法等の詳細は、これらの試験結果を基礎

にして作成されたものである。

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JIS Z8909-1 原案作成段階で、衛生研で JIS Z8909-1 案に基づく試験装置を製作し、JIS

Z8909-1 案に基づくランドロビン試験を石川高専と衛生研で行った。

それぞれの試験機関に於いて、使用する部品及び計測器等が異なるため、試験結果に差

が出るかどうかを検証する必要があり、以下の内容の試験が行われた。

両試験機関で試験に使用したフィルタ試料及びそれぞれの試験機関の試験装置の仕様を

表 2.1.1、表 2.12 に示す。

表 2.1.1 試験に使用したフィルター試料の仕様

項 目 仕 様

材 質 ポリエステル・ニードルパンチフェルト

目付量 500g/m2

表面処理 ミラー加工

製造メーカー アンビック株式会社

型 式 FT0530M

表 2.1.2 試験装置の仕様比較

石川高専 衛生研

ダスト供給機 日清エンジニアリング製

(ロスインウェイト式)

クマエンジ製

(アキュレート式)

ダスト分散器 エゼクター 分散器

パルス排気 拡散管(前ヌキ) 拡散管下部

ダスト供給部

パルス仕切板 有 無

パルスタンク容量 2.5 ℓ

(タンク 2.3ℓ+配管 0.2ℓ)

2.3 ℓ

(タンク 2 ℓ +ホース容量 0.3 ℓ)

ダイヤフラム弁 ドイツ製 国産製 (SMC)VXF2150

有効断面 170mm2

送風機 真空ポンプ 真空ポンプ

フィルターテンション なし 4 方向(1kg)

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4

ΔP測定は払落し後… 4 S 4 S

(2)JIS Z8909-1 の制定以後の状況

JIS Z8909-1 に準拠し、2 試験機関によるランドロビンテストが行われてきたが、両者

測定データに差があると思われたため、有意差の検討及びデータの信頼性を高めるために、

当試験「バグ比較測定による標準化の信頼性確認」を行い、本報告書をまとめた。

2.1.2 概要

JIS Z8909-1 の概要を説明するために、JIS Z8909-1 記載内容及びそれを説明するため

の追加のグラフを使い以下に記す。

(1)性能試験

JIS Z8909-1 では初期集じん性能・安定化処理・エージング処理及び最終集じん性能の

4 段階の試験を行い、その結果をグラフに表示し、評価する。

1)初期集じん性能試験

粉じんを吸引しない状態から、一定条件で粉じんを吸引付着させる初期段階の性能試

験である。この試験は、フィルタに空気だけを吸引したフィルタ初期圧力損失(差圧)及

び JIS Z8909-1 に規定する試験方法で粉じんを吸引付着させたフィルタ圧力損失(差圧)

の上昇程度を把握するために試験する。

この試験は粉じんを吸引付着後、フィルタ圧力損失(差圧)が 1000Pa となった時に圧

縮エアーで払落し、その操作を 30 回行う。(図 2.1.6、図 2.1.10、図 2.1.11 参照)

2)エージング処理試験

集じん機等ではフィルタの性能評価に長期間かかるため、当試験では短期に加速して

一定の負荷をかけた試験を行いながらろ過操作を繰り返す。

初期集じん性能試験終了後、粉じんを吸引しながら 5 秒間隔で 5000 回圧縮エアーに

よって払落しを行う。(図 2.1.7 参照)

3)安定化処理試験

エージング処理後、フィルタ表面の状態を均一化(安定化)するために試験する。

初期集じん性能試験と試験内容は変わらないが、払落し回数は 10 回となる。

(図 2.1.8 参照)

4)最終集じん性能試験

安定化処理を行った後、初期集じん性能試験と同じ試験方法で試験し、最終集じん性

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能を主な判断資料とする。

払落し回数は 30 回となる。(図 2.1.9、図 2.1.12、図 2.1.13 参照)

5)グラフ作成

a)グラフ内表記説明

グラフに表記する用語を次に示す。

①フィルター差圧(Pa):フィルターの粉じん側と清浄空気側との圧力差

②経過時間(s):吸引ポンプが稼動している時間

③サイクル時間(s):パルスエアによる払落し間隔、払落しまでの時間

④払落し回数(回):パルスエアによる払落し間隔回数

⑤残留圧力損失(Pa):払落し直後(4s 後とする)のフィルターの圧力差

b)評価に利用するグラフ

①初期集じん性能試験に於ける払落し回数に対するサイクル時間(図 2.1.10)

②初期集じん性能試験に於ける払落し回数に対する残留圧力損失(図 2.1.11)

③最終集じん性能試験に於ける払落し回数に対するサイクル時間(図 2.1.12)

④最終集じん性能試験における払落し回数に対する残留圧力損失(図 2.1.13)

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(2)試験条件

表 2.1.3 試験条件

項目 設定値

ろ過風速 2.0m/min

※ろ布の大きさ 450mm×450mm

0.2025m2

ろ布有効面積 0.09m2(300mm×300mm)

ろ布の張力 両端に 1kg のおもり

粉じん濃度 5.0g/m3

払落しエアー圧力 500kPa

払落し ON TIME 50ms

初期集じん性能 ΔP=1000Pa に達したら払落す:30 回

払落し条件 エージング 5 秒間隔で払落とす 5000 回

安定化処理 ΔP=1000Pa に達したら払落す:10 回

安定化後性能 ΔP=1000Pa に達したら払落す:30 回

試験粉体

JIS10 種フライアッシュ

平均粒径:3.8μm

粒径 10μm 以下:99.8%

(105~110℃の温度で 3時間以上乾燥後、

デシケータ内で 1 時間以上静置したも

の)

※:ろ布の大きさは、360mm×360mm のサンプルろ布ホルダより大きく、両端に 1kg

のおもりを吊るすツマミ代がある大きさとし、概ね 450mm×450mm とする。また

それ以上大きくても良い。

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(3)試験装置

ダスト供給・分散部、ガス拡散・サンプルろ布装着部、払落し機構部、制御・記録部

から構成する図 2.1.5 に示す試験装置によって試験する。

図 2.1.5 JIS フィルター試験装置

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8

(4)ろ布性能試験

1)準備

a)試験室の温度、湿度、大気圧を記録する。

b)試験粉体は 105℃~110℃で 3 時間以上乾燥後、デシケータ内で 1 時間以上放冷

する。

2)入口ダスト濃度の設定

a)ろ布を試料ろ布ホルダに装着し、秤量した後試験装置に組み込む。

b)入口ダスト濃度が 5g/m3 となるようにダスト供給器及び分散器の調整をする。

c)通気を停止し、試験装置から試料ろ布ホルダを取り外し秤量する。

d)入口ダスト濃度は次式による。

Cin :入口ダスト濃度(g/m3)

C' :試験前のろ布を含む試料ろ布ホルダの質量(g)

C :試験後のろ布を含む試料ろ布ホルダの質量(g)

B :試験機に供給されたガス量(m3)

3)初期集じん性能試験

a)ろ布を 450mm×450mm(有効面積 0.09m2)に切断し、ろ布両端に 1kg のおもりに

よって張力を与えながら試料ろ布ホルダに装着し、はみ出たろ布を切り取った後

秤量する。

b)JISZ8122 に規定する HEPA フィルタを秤量して、HEPA フィルターホルダに装

着する。

c)試験条件のガスだけを通気し、0 サイクル時の圧力損失(ΔPr)を記録する。

d)試験条件の粉じんを含むガスを通気し、1000Pa に到達したとき払落す。この操

作を 30 回繰り返す。吸引したガス体積(B)を記録する。

e)試験装置の送風機及びダスト供給器を同時に停止し、垂直管内にダストがなくな

ったことを確認した後、試験条件のガスだけを通気し残留圧力損失(ΔPr)を記録す

る。

Cin= ---------式 2.1.1 C-C'

B

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f)試験装置から試料ろ布ホルダを取出して秤量し、試験前後の質量差から残留ダス

ト量(mr)を求める。

g)試験装置から HEPA フィルターを取出して秤量し、次式から出口ダスト濃度

(Cout)を求める。

Cout :入口ダスト濃度(g/m3)

C' :試験前の HEPA フィルターの質量(g)

C :試験後の HEPA フィルターの質量(g)

B :試験機に供給されたガス量(m3)

h)サイクル時間(tc)及び試験時間(t)を記録する。

i)次式によって集じん率(η)を求める。

η :集じん率(%)

Cin :入口ダスト濃度

Cout :出口ダスト濃度

j)試験結果

初期集じん性能試験結果(図 2.1.6、図 2.1.10、図 2.1.11 参照)

4)エージング処理試験

a)初期集じん性能試験後のろ布を使用し、吸引側の HEPA フィルターを装着したま

まで払落しを 5 秒間隔で 5000 回繰り返す。

b)試験結果

エージング処理試験結果(図 2.1.7 参照)

5)安定化処理試験

a)安定化処理はエージング後のろ布の集じん性能を安定化させるために 1000Pa に

到達したときに払落しを行い、この操作を 10 回繰り返す。

η=

---------式 2.1.2 C-C'

B Cout=

(Cin-Cout)×10

Cin ---------式 2.1.3

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10

b)試験結果

安定化処理試験結果(図 2.1.8 参照)

6)最終集じん性能試験

a)安定化処理後のろ布を試験装置に装着する。

b)JISZ8122 に規定する HEPA フィルタを秤量して、HEPA フィルターホルダに装

着する。

c)試験条件のガスだけを通気し、0 サイクル時の圧力損失(ΔPr)を記録する。

d)試験条件の粉じんを含むガスを通気し、1000Pa に到達したとき払落す。この操

作を 30 回繰り返し、吸引したガス体積(B)を記録する。

e)試験装置の送風機及びダスト供給器を同時に停止し、垂直管内にダストがなくな

ったことを確認した後、試験条件のガスだけを通気し残留圧力損失(ΔPr)を記録す

る。

f)試験装置から試料ろ布ホルダを取出して秤量し、試験前後の質量差から残留ダス

ト量(mr)を求める。

g)試験装置から HEPA フィルターを取出して秤量し、次式から出口ダスト濃度(Cout)

を求める。

h)式 2.1.1~2.1.3 を用いて入口ダスト濃度、出口ダスト濃度、集じん率を求める。

i)試験終了時の試験室の温度、相対湿度、大気圧を記録する。

j)試験結果

最終集じん性能試験結果(図 2.1.9、図 2.1.12、図 2.1.13 参照)

7)グラフの表記

グラフに表記する用語を次に示す。

①フィルター差圧(Pa):フィルターの粉じん側と清浄空気側との圧力差

②経過時間(s):吸引ポンプが稼動している時間

③サイクル時間(s):パルスエアによる払落し間隔、払落しまでの時間

④払落し回数(回):パルスエアによる払落し間隔回数

⑤残留圧力損失(Pa):払落し直後(4s 後とする)のフィルターの圧力差

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11

(5)各種試験結果グラフの表示

制御・記録部の差圧計及び記録計で得られたフィルター圧力損失及び経過時間のデー

タは次のように表示される。

1)初期集じん性能試験

図 2.1.6 初期集じん性能試験グラフ

2)エージング処理試験

図 2.1.7 エージング処理試験グラフ

0

50

100

150

200

250

0 2500 5000 7500 10000 12500 15000 17500 20000 22500 25000 27500経過時間(s)

フィルター差圧(Pa)

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12

3)安定化処理試験

図 2.1.8 安定化処理試験グラフ

4)最終集じん性能試験

図 2.1.9 最終集じん性能試験グラフ

0

200

400

600

800

1000

1200

0 2000 4000 6000 8000

経過時間(s)

フィ

ルタ

ー差

圧(Pa)

0

200

400

600

800

1000

1200

0 5000 10000 15000 20000

経過時間(s)

フィルター差圧(Pa)

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13

(6)試験結果に対する解析グラフを用いた評価

初期集じん性能試験及び最終集じん性能試験、時には安定化処理試験によって得ら

れたデータから、パルスエアによる払落し後 4秒を経たフィルター差圧(残留圧力損失)

及びサイクル時間を読取り、払落し回数に対する残留圧力損失及びサイクル時間のグ

ラフを作成する。評価は最終集じん性能試験から得られるデータを用いるが、初期状

態を把握するため、初期集じん性能試験データも利用する場合がある。

このグラフによって、時間経過によるフィルタ材の集じん性能データの推移及び相

互のデータ比較を容易に推定することができる。

1)初期集じん性能試験評価グラフ

図 2.1.10 初期集じん性能試験解析グラフ(サイクル時間)

図 2.1.11 初期集じん性能試験解析グラフ(残留圧力損失)

0

200

400

600

800

1000

1200

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイクル時間(s)

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧

力損失

(Pa)

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14

2)最終集じん性能試験評価グラフ

図 2.1.12 最終集じん性能試験解析グラフ(サイクル時間)

図 2.1.13 最終集じん性能試験解析グラフ(残留圧力損失)

0

100

200

300

400

500

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

0

200

400

600

800

1000

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイ

クル

時間

(s)

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15

2.1.3 信頼性確認試験結果

2.1.3.1 JIS Z8909-1 によるフィルタ試験

JIS Z8909-1 の原案作成段階で、石川高専と衛生研とが所有する装置によって各種の

試験を行った。

JIS Z8909-1 案が規定する試験装置であっても、試験環境湿度及び試験機を構成して

いる部品等でそれぞれの試験結果(表 2.1.4 参照)に差異があるとみられたため、次の項目

に対し再度確認試験を行うこととした。

a)試験機関の試験環境の違い(湿度)の影響

b)試験期間の使用部品の違い(ダイアフラム弁)の影響

c)試験機関の使用部品の違い(ダイアフラム弁)によるパルスエア量

表 2.1.4 残留圧力損失の比較

試料 湿度(%)最終集じん性能試験

残留圧力損失(Pa)

バッフル板の有無

衛生研

M-16 43 222 無

M-18 40 222 無

M-17 65 206 無

M-19 40 218 有

石川高専

M-1 65 180 有

M-2 65 190 有

M-15 63 190 有

※JIS Z8909-1 制定後、フィルター後部空気清浄側のバッフル板の有無の影響確認を行

い、参考データとした。

バッフル板:図 2.1.14 参照

それぞれの試験機関及び試験項目に対する試験回数等を表 2.1.5 及び表 2.1.6 に示す。

なお、これらの表には今回の試験を含む全ての試験項目及び条件を表示する。

1)湿度が低い状態(湿度 40%前後)での試験

衛生研 :前記の試験結果と合わせて試験回数を 3 回とし、湿度の影響を再確認し

た。試料 No.M-①

石川高専:ドイツ製ダイアフラム弁を使用し、湿度 40%前後での試験回数を 2 回と

した。試料 No.(M-③、M-④)

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2)ダイアフラム弁の違いによる再現性試験

石川高専:ドイツ製及び国産製ダイアフラム弁を使用し、湿度 40%前後での試験回

数をそれぞれ 2 回および 3 回とした。試料 No.(M-②~M-⑥)

表記中の試料名及び記号●印及び○印は次を示す。

記号 :●---過去の試験 ○---今回の試験

試料名:M-1~M-19----JIS 制定前後に使用した同一ロット試料

M-①~M-⑥---今回の試験に使用した同一ロット試料

表 2.1.5 衛生研測定試料

試料名

項 目 弁の種

類 M-① M-16 M-17 M-18 M-19

低湿度・再現性 国産製 ○ ● ●

高湿度条件 国産製 ●

低湿度・バッフル板 国産製 ●

弁の種類:ダイアフラム弁の種類

表 2.1.5 中のバッフル板とは図 2.1.14 に示すものである。

表 2.1.6 石川高専測定試料

試料名

項 目 弁の種類 M-② M-③ M-④ M-⑤ M-⑥ M-1 M-2 M-15

低湿度・再現性 国産製 ○ ○ ○

ドイツ製 ○ ○

高湿度・再現性 ドイツ製 ● ● ●

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17

図 2.1.14 バッフル板取り付け

3)試験データの比較方法

最終集じん性能試験から得られた、サイクル時間及び残留圧力損失データを比較する。

比較対照を以下の表に示す。

なお、表中の弁及び試験データは次を表わす。

弁:ダイアフラム弁

試験データ:●---過去データ、○---今回試験データ

a)湿度の影響①(ラウンドロビン試験結果から判断)

最初のラウンドロビン試験データである。

この比較データから湿度の影響の可能性があると推定された。

表 2.1.7 湿度の影響①(ラウンドロビン試験結果から)

試験機関 試料名 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) 試験データ

衛生研 M-16 国産製 24 43 ●

M-18 国産製 20 40 ●

石川高専 M-1 ドイツ製 23 65 ●

M-2 ドイツ製 23 65 ●

M-15 ドイツ製 25 63 ●

バッフル板

真空ポンプ

ダ イ ア フ ラ ム

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18

b)湿度の影響②(湿度の影響①確認試験)

湿度の影響①試験の確認のため石川高専で同一試験装置による比較試験をした。

表 2.1.8 湿度の影響(石川高専の同一試験装置による)

試験機関 試料名 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) 試験データ

石川高専 M-1 ドイツ製 23 65 ●

M-2 ドイツ製 23 65 ●

M-15 ドイツ製 25 63 ●

M-④ ドイツ製 10~20 30~40 ○

M-⑤ ドイツ製 10~20 30~40 ○

c)ダイアフラム弁の影響

同一環境下(低湿度状態)で、国産製及びドイツ製のダイアフラム弁で試験した。

表 2.1.9 ダイアフラム弁の違いによる比較試験

試験機関 試料名 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) 試験データ

石川高専 M-② 国産製 10~20 30~40 ○

M-③ 国産製 10~20 30~40 ○

M-④ ドイツ製 10~20 30~40 ○

M-⑤ ドイツ製 10~20 30~40 ○

d)データの再現性

同一環境下(低湿度環境)でデータの再現性を衛生研で確認した。

表 2.1.10 低湿度環境での再現性試験

試験機関 試料名 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) 試験データ

衛生研 M-16 国産製 24 43 ●

M-18 国産製 20 40 ●

M-① 国産製 20 33 ○

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19

e)試験機関比較

2 試験機関で、同条件(ダイアフラム弁、温度、湿度)でのデータを比較した。

表 2.1.11 試験機関の同条件でのデータ比較

試験機関 試料名 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) 試験データ

衛生研

M-16 国産製 24 43 ●

M-18 国産製 20 40 ●

M-① 国産製 20 33 ○

石川高専 M-② 国産製 10~20 30~40 ○

M-③ 国産製 10~20 30~40 ○

4).試験結果及び解析結果

多くの分析項目に於いて JIS K 0102 では、繰返し分析精度は変動係数 10%以内であ

ることを要求している。従って、フィルタ試験装置に於いても繰返し分析精度として、

変動係数 10%以内であることが望ましい。

複数の試験条件に於ける平均値の差の検定では、±10%範囲内に含まれた場合、繰返

し分析による誤差範囲内とみなす事もできる。

また、本報告書に於いて試験条件に対する結果の違いの判断は、以下の条件を基に行

った。

①試験条件間に有意差無し:各試験条件における平均値の±10%範囲内に比較対照と

した試験条件の平均値が含まれた場合

②試験条件間に有意差有り:各試験条件における平均値の±10%範囲内に比較対照と

した試験条件の平均値が含まれない場合

なお、表中の記号の示す意味は、以下の通りである。

tc:サイクル時間(s)

⊿pr:残留圧力損失(Pa)

Ave:平均値

Std:標準偏差

CV:変動係数

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20

a)湿度の影響①(ラウンドロビン試験からの推定から)

表.2.1.12 湿度の影響①(ラウンドロビン試験結果)

試験機関 試料名. 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) tc(s) ⊿pr(Pa) データ

衛生研 M-16 国産製 24 43 596 222 ●

M-18 20 40 604 222 ●

石川高専 M-1 ドイツ製 23 65 570 180 ●

M-2 23 65 570 190 ●

M-15 25 63 618 190 ●

tc:サイクル時間(s)

⊿pr:残留圧力損失(Pa)

表.2.1.13湿度の影響①(サイクル時間(tc))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(s) Std(s) CV(%) 0.9~1.1Ave(s)

衛生研 国産製 40~43 600 5.66 0.94 540~660

石川高専 ドイツ製 63~65 586 27.7 4.73 527~645

Ave:平均値

Std:標準偏差

CV:変動係数

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲内であり、試験条件間に有

意差無し。

表.2.1.14湿度の影響①(残留圧力損失(⊿pr))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(Pa) Std(Pa) CV(%) 0.9~1.1Ave(Pa)

衛生研 国産製 40~43 222 0.00 0.00 200~244

石川高専 ドイツ製 63~65 187 5.77 3.09 168~205

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲外であり、試験条件間に有

意差有り。

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21

b)湿度の影響②(湿度の影響①の確認試験)

表.2.1.15湿度の影響②(湿度の影響①の確認試験)試験結果

試験機関 試料名. 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) tc(s) ⊿pr(Pa) データ

石川高専 M-1 ドイツ製 23 65 570 180 ●

M-2 23 65 570 190 ●

M-15 25 63 618 190 ●

M-④ 10~20 30~40 898 191 ○

M-⑤ 10~20 30~40 809 184 ○

表.2.1.16湿度の影響②(サイクル時間(tc))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(s) Std(s) CV(%) 0.9~1.1Ave(s)

石川高専 ドイツ製 63~65 586 27.7 4.73 527~645

30~40 854 62.9 7.37 768~939

(図2.1.15参照) 各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲外であり、

試験条件間に有意差有り

表2.1.17湿度の影響②(残留圧力損失(⊿pr))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(Pa) Std(Pa) CV(%) 0.9~1.1Ave(Pa)

石川高専 ドイツ製 63~65 187 5.77 3.09 168~205

30~40 188 4.95 2.64 169~206

(図2.1.16参照)

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲内であり、試験条件間に有

意差無し

c)ダイアフラム弁の影響(同一装置、同一温度・湿度による)結果

表.2.1.18ダイアフラム弁の違いによる影響結果

試験機関 試料名. 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) tc(s) ⊿pr(Pa) データ

石川高専 M-② 国産製 10~20 30~40 753 206 ○

M-③ 10~20 30~40 702 205 ○

M-④ ドイツ製 10~20 30~40 898 191 ○

M-⑤ 10~20 30~40 809 184 ○

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22

表.2.1.19ダイアフラム弁の違いによる影響(サイクル時間(tc))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(s) Std(s) CV(%) 0.9~1.1Ave(s)

石川高専 国産製 10~20 728 36.1 4.96 655~800

ドイツ製 854 62.8 7.35 768~939

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲外であり、試験条件間に有

意差有り

表.2.1.20ダイアフラム弁の違いによる影響(残留圧力損失(⊿pr))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(Pa) Std(Pa) CV(%) 0.9~1.1Ave(Pa)

石川高専 国産製 10~20 187 5.77 3.09 168~205

ドイツ製 188 4.95 2.64 169~206

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲内であり、試験条件間に有

意差無し

d)データの再現性(同一機関、同一条件での再現性)

表.2.1.21データの再現性試験結果

試験機関 試料名. 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) tc(s) ⊿pr(Pa) データ

衛生研 M-16 国産製 24 43 596 222 ●

M-18 20 40 604 222 ●

M-① 20 33 592 214 ○

AVE 597 219

STD 6.11 4.62

CV(%) 1.02 2.11

CV 1.02%より、非常にばらつきが少なく、再現性が良い。

e)試験機関比較(同一温度・湿度条件による 2 試験機関の比較)

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23

表.2.1.22試験機関比較結果

試験機関 試料名. 弁の種類 温度(℃) 湿度(%) tc(s) ⊿pr(Pa) データ

衛生研 M-16 国産製 24 43 596 222 ●

M-18 20 40 604 222 ●

M-① 20 33 592 214 ○

石川高専 M-② 国産製 10~20 30~40 753 206 ○

M-③ 10~20 30~40 702 205 ○

表.2.1.23試験機関比較(サイクル時間(tc))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(s) Std(s) CV(%) 0.9~1.1Ave(s)

衛生研 国産製 33~43 597 6.11 1.02 528~657

石川高専 国産製 30~40 728 36.1 4.96 655~800

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲外であり、試験条件間に有

意差有り

.2.1.24試験機関比較(残留圧力損失(⊿pr))の解析

試験機関 弁の種類 湿度(%) Ave(Pa) Std(Pa) CV(%) 0.9~1.1Ave(Pa)

衛生研 国産製 33~43 219 4.62 2.1 197~241

石川高専 国産製 30~40 206 0.71 0.3 185~226

各条件の平均値は、相対する条件による平均値の±10%範囲内であり、試験条件間に有意

差無し

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24

5)解析グラフ(以下に示した解析グラフ中に連続したデータの提供がないものは、払落し回数30

回目に表示した)

a)湿度の影響①

400

500

600

700

800

900

1000

1100

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイ

クル

時間

(s)

衛生研(M-16) 国産製 43%

衛生研(M-18) 国産製 40%

石川高専(M-1) ドイツ製 65%

石川高専(M-2) ドイツ製 65%

石川高専(M-15) ドイツ製 63%

図 2.1.15 ラウンドロビン試験による湿度の影響評価グラフ(サイクル時間)

170

180

190

200

210

220

230

240

250

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

衛生研(M-16) 国産製 43%

衛生研(M-18) 国産製 40%

石川高専(M-1) ドイツ製 65%石川高専(M-2) ドイツ製 65%

石川高専(M-15) ドイツ製 63%

図 2.1.16 ラウンドロビン試験による湿度の影響評価グラフ(残留圧力損失)

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25

b)湿度の影響②

400

500

600

700

800

900

1000

1100

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイクル時間(s)

石川高専(M-1) ドイツ製 65%

石川高専(M-2) ドイツ製 65%

石川高専(M-15) ドイツ製 63%

石川高専(M-④) ドイツ製 30~40%

石川高専(M-⑤) ドイツ製 30~40%

図 2.1.17 同一試験機関及び湿度条件の違いによる評価グラフ(サイクル時間)

160

170

180

190

200

210

220

230

240

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

石川高専(M-1) ドイツ製 65%

石川高専(M-2) ドイツ製 65%

石川高専(M-15) ドイツ製 63%

石川高専(M-④) ドイツ製 30~40%

石川高専(M-⑤) ドイツ製 30~40%

図2.1.18同一試験機関及び湿度条件の違いによる評価グラフ(残留圧力損失)

c)ダイアフラム弁の影響

同一湿度条件でのダイアフラム弁(国産製及びドイツ製)の相違による試験データの

比較

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26

600

700

800

900

1000

1100

1200

1300

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイクル時間(s)

石川高専(M-②) 国産製 30~40%

石川高専(M-③) 国産製 30~40%

石川高専(M-④) ドイツ製 30~40%

石川高専(M-⑤) ドイツ製 30~40%

図 2.1.19 ダイアフラム弁の相違による試験データの評価グラフ(サイクル時間)

170

180

190

200

210

220

230

240

250

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

石川高専(M-②) 国産製 30~40%

石川高専(M-③) 国産製 30~40%

石川高専(M-④) ドイツ製 30~40%

石川高専(M-⑤) ドイツ製 30~40%

図 2.1.20 ダイアフラム弁の相違による試験データの評価グラフ(残留圧力損失)

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27

d)データの再現性 試験機関:衛生研

300

400

500

600

700

800

900

1000

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイク

ル時

間(s)

衛生研(M-16) 国産製 43%

衛生研(M-18) 国産製 40%

衛生研(M-①) 国産製 33%

図 2.1.21 低湿度(40%前後)条件の試験の再現性評価グラフ(サイクル時間比較)

200

210

220

230

240

250

260

270

280

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

衛生研(M-16) 国産製 43%

衛生研(M-18) 国産製 40%

衛生研(M-①) 国産製 33%

図 2.1.22 低湿度(40%前後)条件の試験の再現性評価グラフ(残留圧力損失比較)

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28

e)試験機関比較

500

600

700

800

900

1000

1100

1200

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

サイク

ル時

間(s)

衛生研(M-16) 国産製 43%

衛生研(M-18) 国産製 40%

衛生研(M-①) 国産製 33%

石川高専(M-②) 国産製 30~40%

石川高専(M-③) 国産製 30~40%

図 2.1.23 同一条件(湿度 40%前後)による試験機関データの評価(サイクル時間)

190

200

210

220

230

240

250

260

270

0 5 10 15 20 25 30

払落し回数(回)

残留圧力損失(Pa)

衛生研(M-16) 国産製 43%衛生研(M-18) 国産製 40%衛生研(M-①) 国産製 33%石川高専(M-②) 国産製 30~40%石川高専(M-③) 国産製 30~40%

図 2.1.24 同一条件(湿度 40%前後)による試験機関データの評価(残留圧力損失)

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29

2.1.3.2 ダイアフラム弁の違いによるパルスエア量測定

フィルターの表面に付着している粉じんの払落しは、払落しに使用するエア圧力及びパ

ルスエア量に影響すると考えられる。そこで、石川高専及び衛生研で使用するダイアフラ

ム弁に対してパルスエア量の比較をした。

エア量の測定は圧力タンクに接続するストップバルブ(図 2.1.17 参照)が開放状態(実際

の稼動状態)と閉じている状態で比較した。

また、石川高専で使用するダイアフラム弁と衛生研のそれとは構造が異なるため、構造

の違いによるパルスエア量を測定した。

(1)ダイアフラム弁の構造の違い

図 2.1.25 ドイツ製ダイアフラム弁構造

図 2.1.26 国産製ダイアフラム弁構造

ソレノイド部

ダイアフラム部

圧力タンク

エア入り口

エア出口

圧力タンク

エア入り口

ソレノイド部

ダイアフラム部

エア出口

エア接続管又はホース

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30

(2) エア量測定(衛生研)

ダイアフラム弁の構造は図 2.1.26 に示す国産製で、ダイアフラム弁と圧力タンクは別

接続となっている。

1)試験装置

a)計測器

動歪みセンサ :共和電業(株)PE-30KF

動歪み計 :NMB(株)DSA-606

オシロスコープ :横河電機(株)DL-1540

デジタル圧力表示計 :日本電産コパル電子(株)PG-200

b)使用部品及びタンク容量

ダイアフラム弁 :SMC(株)VXF2150

圧力タンク容積 :2 リットル

接続ホース容積 :0.284 リットル

合計容積 :2.284 リットル

c)供給エア圧力条件等

コンプレッサエア圧力:550~600kPa

レギュレータ後の圧力:500kPa

図 2.1.27 パルスエア量測定システム(衛生研)

コンプレッサエア

接続ホース(内径φ19mm)

圧力タンク

ストップバルブ

オシロスコープ

デジタル圧力表示

動歪みセンサ

動 歪 み

ダイアフラム弁 シーケンサ

ス タ ー ト

SW

圧力抜きバルブ

ノズルボックス

リレー

レギュレータ

接続ホース(内径φ10mm)

エアフィルタ

接続ホース(内径φ19mm)

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31

2)ダイアフラム弁について

一般的にダイアフラム弁は次の段階を経て作動しエア等の流体を供給する。

・ソレノイド(電磁コイル)に通電し、アクチュエータ(可動鉄心)が作動するまでの時

間はエアーは供給されない。(図 2.1.28 の①~②)

・さらに通電するとアクチュエータが作動し、それに接続するダイアフラム弁が開放

してエアーを供給する。(図 2.1.28 の②~③)

・設定時間通電後、通電を停止するとアクチュエータはバネによって押し戻され、そ

れに伴いダイアフラム弁が閉じる。(図 2.1.28 の③~④)

(ソレノイド及びダイアフラム弁の位置は図 2.1.25、図 2.1.26 参照)

図中①~③:ソレノイドに通電している時間

図中②~④:ダイアフラム弁が開放している時間(パルスエアが流れている時間)

図 2.1.28 ダイアフラム弁作動状態

一般的に、ソレノイドを利用したダイアフラム弁は、ソレノイドのアクチュエータに

伝達する応答速度及びダイアフラム弁の弁を押えているバネの性能に左右される。

従って、ソレノイドに対して通電した時間(図 2.1.28 中①~③)とダイアフラム弁が開

放しているとみなされる時間(図 2.1.34 中②~④)を考慮して測定した。

①②

タンク

内圧力

(kPa)

経過時間(s)

④通電時間

ダイアフラム弁開放時間

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32

3)測定手順

a)圧力タンク入口のバルブを開放しコンプレッサエアをレギュレータを通して

500kPa に設定して圧力タンク内に入れる。

b)バルブ閉の条件ではバルブを閉じ、バルブ開の条件ではバルブを開放状態とする。

c)動歪み計の出力及びシーケンサのリレータイミング出力をオシロスコープに接続

する。

d)シーケンサのスタートスイッチを押し、ダイアフラム弁を作動する。

e)リレーのタイミング波形と圧力変動波形を保存する。

4)パルスエア量の測定

a)ストップバルブ閉

・ダイアフラム弁の開閉

圧力が下がり始めたポイントをダイアフラム弁の開放開始とし、最低圧力到達時を閉

鎖とする。

・エア量計算

下式から求める。

エア量=(A-B)×(d+e)×(273+T2)÷(273+T1)----------式 2.1.4

エア量:ダイアフラム弁開放直前の圧力と最低圧力との圧力差から計算した量(L)

A:ダイアフラム弁開放直前の圧力(kPa)

B:最低圧力(kPa)

T1:ノズルボックス内温度(℃)

T2:圧力タンク内温度(測定箇所:圧力抜きバルブ)(℃)

d:圧力タンク内容積(L)

e:接続ホース内容積(L)

b)ストップバルブ開

・ダイアフラム弁の開閉

バルブ閉で得られた開放時間とする。

・エア量計算(SMC カタログを参考とした)

亜音速領域(最低圧力 500kPa から 217kPa まで)(エア噴射時間 40~100ms)

P1+0.1013=(1~1.8941)(P2+0.1013)の場合

Qn=226.3×S×{(ΔP)×(P2+0.1013)}×1/2 ×t (リットル /min(at20℃、1atm))

---------式 2.1.5

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33

Q=ΣQ(n1~nn) (リットル) ---------式 2.1.6

t=1÷f÷60 (min) ---------式 2.1.7

Qn:オシロスコープデータの任意の 2 ポイント間の時間差に於ける量 (リットル)

Q :ダイアフラム弁の開放開始時の 2 ポイント間の時間差に於ける量からダイア

フラム弁が閉鎖するまでの量を加算した量 (リットル)

P1:1 次側圧力(Mpa)

P2:2 次側圧力(Mpa)

ΔP:圧力差(P1-P2)

S :有効断面積(mm2) SMC(株) VXF2150 は 170mm2

t :オシロスコープデータの任意の 2 ポイント間の時間差を min に換算した時間

f :オシロスコープのサンプリング周波数(Hz)

・音速領域(最低圧力 216kPa 以下)(設定時間 150ms)

パルス噴射時間 150ms では最低圧力付近で音速領域の範囲に入るため、その部分

を下式で計算し 、217kPa 以上の領域では亜音速領域の式で計算しそれらを合計

する。

P1+0.1013≧1.8941×(P2+0.1013)の場合

(P1=0.5MPa とした場合 P2=0.216MPa となる)

Qn=109.6×S×(P1+0.1013)×t (リットル/min(at20℃、1atm))-------式 2.1.8

Q=ΣQ(n1~nn) (リットル)

t=1÷f÷60 (min)

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34

5)測定結果(衛生研)

ストップバルブが開放状態及び閉じた状態の 2 条件で測定した。

a)ダイアフラム弁通電時間に対するパルスエア量測定結果

表中のエア量及びバルブの開閉状態は次を意味する。

バルブ閉:タンク入口のストップバルブを閉じた時(ダイアフラム弁開放直前の圧力

と最低圧力との圧力差から計算した量(リットル))(式 2.1.4 参照)

バルブ開:タンク入口のストップバルブを開放した時 (式 2.1.5~式 2.1.7 から

計算した量(リットル))

なお、エア量は 20℃に換算したデータを表示する。

b)パルスエア測定データ

オシロスコープの波形観測からパルスエア量を導き出す。

ストップバルブ開放及び閉じた状態での測定波形を波形データに示す。

(図 2.1.31~図 2.1.48 参照)

表 2.1.25 パルスエア量測定結果(通電時間による)(衛生研)

エア量(リットル)

通電時間(ms) バルブ閉 バルブ開

40 4.9 7.0

50 5.7 8.3

60 6.5 10.0

70 6.8 11.7

80 7.5 13.9

90 7.8 15.4

100 8.1 17.3

※音速補

150 9.6 27.0 26.8

200 10.5

300 10.9

※バルブ開の時だけ

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35

図 2.1.29 ダイアフラム弁通電時間とパルスエア量の関係(衛生研)

6)パルスエア量データ解析(衛生研)

a)バルブ開及び閉時のパルスエア量について

・バルブ開ではパルスエア量はダイアフラム弁作動時間に比例する。

・バルブ閉ではダイアフラム弁作動時間 200ms 以上でタンク内及び接続ホース内の

エアが全て放出する。

b)ダイアフラム弁作動時間 50ms の時

・バルブ開でダイアフラム弁作動時間 50ms の時、バルブ閉では 90ms でエア量が同

等となる。

c)パルスエア量計算について(バルブ閉の時)

・バルブ閉ではダイアフラム弁解放開始直前圧力からタンク内圧力が最小となる圧力

との差を計算した。

・圧力タンク内及び接続ホース内の 500kPa の圧縮エアが全て放出すると、エア量は

11.1 リットルとなる。

d)パルスエア量計算についての解析(バルブ開の時)

・SMC 株式会社のカタログを参考に一次圧力とタンク内圧力から計算した。

・ダイアフラム弁作動時間が 150ms 以上では最低圧力付近で音速領域となる。

・バルブ閉の場合と異なり、エア量計算領域はダイアフラム弁が作動している間とな

る。

・ダイアフラム弁解放開始時はタンク内圧力が急激に減少するためオシロスコープで

容易に確認できるが、ダイアフラム弁の閉鎖の確認は圧力変動だけでは確認が難し

い。

8.3リットル

5.7リットル0

10

20

30

40

50

60

0 50 100 150 200 250 300 350

通電時間(ms)

パルス

エア

量(リ

ット

ル) ストップバルブ開

ストップバルブ閉

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36

e)リレーとダイアフラム弁について

・リレーの開始時間とダイアフラム弁の解放開始時間との差は 23~25ms であった。

・この差はバルブの開・閉に関わらずダイアフラム弁作動時間 40~300ms まで変

わらない。(表 2.1.26、図 2.1.30 参照)

なお、これらの図及び表は図 2.1.31~図 2.1.48 を基に作成した。

表 2.1.26 通電時間とダイアフラム弁開放時間

条 件

設定時間 バルブ閉 バルブ開

40 47.6 38.5

50 55.5 52.5

60 63.6 63.2

70 73.6 72.6

80 85.3 85.7

90 92.5 95.7

100 101.5 101.8

150 148.3 148.1

図 2.1.30 ダイアフラム弁通電時間と最低圧力到達時間の関係

0

25

50

75

100

125

150

0 25 50 75 100 125 150 175

通電時間(ms)

最低圧力

到達時間

(ms)

バルブ閉

バルブ開

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37

(3)パルスエア量測定(石川高専)

ドイツ製(VDI)ダイアフラム弁及び国産製(SMC)のパルスエア量測定

1)測定手順 パルスエア量測定(衛生研)測定手順と同じ

2)試験装置

動歪みセンサ :共和電業(株)PE-30KF

動歪み計 :NMB(株)DSA-606

オシロスコープ :テクトロニクス社 DPO4032

デジタル圧力表示計 :日本電産コパル電子(株)PG-200

ダイアフラム弁 :Hosokawa MikuroPul 及び SMC(株)VXF2150

コンプレッサエア圧力:550~600kPa

レギュレータ後の圧力:500kPa

圧力タンク容積 :2.5 リットル

図 2.1.49 石川高専パルスエア測定システム

コンプレッサエア

圧力タンク ストップバルブ

オシロスコープ

デジタル圧力表示計

動歪みセンサ

動歪み計

ダイアフラム弁(パソコンで制御) 圧力抜きバルブ

ノズルボックス

レギュレータ

接続ホース②(内径φ19mm)

エアフィルタ

接続ホース①(内径φ19mm)

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38

図 2.1.50 ドイツ製ダイアフラム弁接続状態

図 2.1.51 国産製ダイアフラム弁接続状態

圧力タンク

ダ イ ア フ ラ ム

ノ ズ ル ボ ッ ク

パルスエア供給

タ ンク 内 圧 力 表

圧力センサー

圧力センサー

ダ イ ア フ ラ ム圧力タンク

パルスエア供給

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39

3)パルスエア量の測定(石川高専)

a)ストップバルブ閉 パルスエア量測定(衛生研)測定手順と同じ

b)ストップバルブ開 パルスエア量測定(衛生研)測定手順と同じ

4)パルスエア量測定結果(石川高専)

ドイツ製及び国産製ストップバルブが開放状態及び閉じた状態の 2 条件で測定した。

a)ダイアフラム弁通電時間に対するパルスエア量測定結果

表中のエア量及びバルブの開閉状態は次を意味する。

バルブ閉:タンク入口のストップバルブを閉じた時(ダイアフラム弁開放直前の圧力

と最低圧力との圧力差から計算した量(リットル))(式 2.1.4 参照)

バルブ開:タンク入口のストップバルブを開放した時 (式 2.1.5~式 2.1.7 から

計算した量(リットル))

なお、エア量は 20℃に換算したデータを表示する。

b)パルスエア測定データ

オシロスコープの波形観測からパルスエア量を導き出す。

ストップバルブ開放及び閉じた状態での測定波形を波形データに示す。

(図 2.1.54~図 2.1.60 参照)

表 2.1.27 パルスエア量測定結果(通電時間による)(石川高専)

エア量(リットル)

ドイツ製 国産製

通電時間(ms) バルブ閉 バルブ開 バルブ閉 バルブ開

60 7.1 12.4 4.4 10.1

70 5.1

80 8.0

110 8.7 22.2 5.9 19.1

160 9.8 32.3 27.5

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40

図 2.1.52 ダイアフラム弁通電時間によるエア量グラフ(石川高専)

5)パルスエア量データ解析(石川高専)

a)バルブ開及び閉時のパルスエア量について

・バルブ開ではパルスエア量はダイアフラム弁作動時間に比例する。

b)パルスエア量計算について(バルブ閉の時)

・バルブ閉ではダイアフラム弁解放開始直前圧力からタンク内圧力が最小となる圧力

との差を計算した。

・圧力タンク内及び接続ホース内の 500kPa の圧縮エアが全て放出すると、エア量は

12.5 リットルとなる。

d)パルスエア量計算についての解析(バルブ開の時)

・SMC 株式会社のカタログを参考に一次圧力とタンク内圧力から計算した。

衛生研で測定した方法と同じとした。

なお、これらの図及び表は図 2.1.31~図 2.1.48 を基に作成した。

0

5

10

15

20

25

30

35

0 50 100 150 200

ダイアフラム弁通電時間(ms)

エア量(リ

ット

ル)

石川高専 ドイツ製(閉)

石川高専 ドイツ製(開)

石川高専 国産製(閉)

石川高専 国産製(開)

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41

(4)エア量に対する考察(衛生研、石川高専データから)

1)衛生研・石川高専ドイツ製及び国産製ダイアフラム弁比較(ストップバルブ閉)

ストップバルブが閉じている状態での測定では、衛生研の国産製と石川高専のドイツ

製とでは 50ms と設定した場合、ドイツ製のパルスエア量が大きい。しかし設定時間が

長くなるに従って、パルスエア量が衛生研のエア量より少なくなっている。

JIS Z8909-1 既定するパルスエア制御時間は 50ms となっているため、ストップバル

ブを閉じた状態では、1 リットルほどの差がある。

石川高専の国産製のデータは初期ダンク内圧力が低かったため参考データとして記

載した。

図 2.1.61 ダイアフラム弁の通電に対するエア量比較グラフ(閉)

衛生研(国産製)y = 4E-07x3 - 0.0003x2 + 0.0926x + 2.1848

石川高専(ドイツ製)y = -2E-07x3 - 3E-05x2 + 0.0398x + 4.9518

石川高専(国産製)y = 2.5599Ln(x) - 6.027

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 50 100 150 200 250 300 350

ダイアフラム弁通電時間(ms)

パルス

エア

量(リッ

トル

)

石川高専(ドイツ製)

衛生研(国産製)

石川高専(国産製)

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42

2)石川高専ドイツ製及び衛生研国産製ダイアフラム弁比較(ストップバルブ開)

衛生研の国産製と石川高専の国産製ではストップバルブが開放状態ではエア量は一

致している。これは同一環境(低湿度 40%前後)のデータ比較に於いて、2 測定機関の差

が無いことの要因の一つと推定する。

国産製とドイツ製との比較では、同一通電時間とした場合ドイツ製がエア量が多い。

例えば、57ms で比較した場合、衛生研とのエア量の差は 2 リットル以上となり、粉

じんの払落しに対し影響が大きい可能性がある。

また、ダイアフラム弁通電時間にばらつきが大きい場合には 5 リットル以上の差が

発生する可能性がありダイアフラム弁の仕様を検討する必要がある

さらに、エア量を正確に把握するためには計算ではなく、実測できる方法の検討が必

要と思われる。

図 2.1.62 ダイアフラム弁の通電に対するエア量比較グラフ(開)

石川高専(ドイツ製) y = 0.1908x + 1.4419

石川高専(国産製)y = 0.1672x + 0.6178

衛生研(国産製)y = 0.1838x - 0.87980

5

10

15

20

25

30

35

0 50 100 150 200ダイアフラム弁通電時間(ms)

パル

スエ

ア量

(リッ

トル

)

石川高専(ドイツ製)石川高専(国産製)衛生研(国産製)

12.4L

10.1L

9.6L

57

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43

(5)ダイアフラム弁開放時間波形(衛生研測定データ)

パルス設定圧力を 500kPa とし、ダイアフラム弁に通電する制御時間設定に対し、弁

が開放している時間を圧力タンク内圧力によって表示したグラフである。

a)ストップバルブ閉の時

図 2.1.31 ダイアフラム弁開放時間 40ms(閉)

図 2.1.32 ダイアフラム弁開放時間 50ms(閉)

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44

図 2.1.33 ダイアフラム弁開放時間 60ms(閉)

図 2.1.34 ダイアフラム弁開放時間 70ms(閉)

図 2.1.35 ダイアフラム弁開放時間 80ms(閉)

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45

図 2.1.40 ダイアフラム弁開放時間 90ms(閉)

図 2.1.36 ダイアフラム弁開放時間 90ms(閉)

図 2.1.37 ダイアフラム弁開放時間 100ms(閉)

図 2.1.38 ダイアフラム弁開放時間 150ms(閉)

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46

図 2.1.39 ダイアフラム弁開放時間 200ms(閉)

図 2.1.40 ダイアフラム弁開放時間 300ms(閉)

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47

b)ストップバルブ開の時

図 2.1.41 ダイアフラム弁開放時間 40ms(開)

図 2.1.42 ダイアフラム弁開放時間 50ms(開)

図 2.1.43 ダイアフラム弁開放時間 60ms(開)

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48

図 2.1.44 ダイアフラム弁開放時間 70ms(開)

図 2.1.45 ダイアフラム弁開放時間 80ms(開)

図 2.1.46 ダイアフラム弁開放時間 90ms(開)

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49

図 2.1.47 ダイアフラム弁開放時間 100ms(開)

図 2.1.48 ダイアフラム弁開放時間 150ms(開)

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50

(5)ダイアフラム弁開放時間波形(石川高専測定データ)

パルス設定圧力を 500kPa とし、ダイアフラム弁に通電する制御時間設定に対し、弁

が開放している時間を圧力タンク内圧力によって表示したグラフである。

a)石川高専(ドイツ製)(ストップバルブ閉)グラフ

図 2.1.54 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 50ms(閉)

図 2.1.55 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 80ms(閉)

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51

図 2.1.56 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 100ms(閉)

図 2.1.57 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 160ms(閉)

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52

b)石川高専(ドイツ製)(ストップバルブ開)

図 2.1.58 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 60ms(開)

図 2.1.59 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 110ms(開)

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53

図 2.1.60 ドイツ製ダイアフラム弁通電時間 150ms(開)

2.1.4 まとめ

(1) JIS Z8909-1:2005「集じん性能」に於ける信頼性確認試験について

1)試験項目の検討

JIS Z8909-1 の原案作成期間中に、石川高専と衛生研とが所有する装置を用いて JIS

Z8909-1 案によるランドロビン試験し、2 種の試験機関のデータ(表 2.1.12 参照)を解析

し試験機関相互の差異を検討した。

評価に用いた測定データは、最終集じん性能試験結果を採用し、30 回目のサイクル時

間及び残留圧力損失である。

その評価基準は次の通りとし、最終判定は残留圧力損失値を使用した。(サイクル時間

による評価は参考値とした)

①試験条件間に差無し:各試験条件における平均値の差の検定結果、比較対照とした

試験条件の平均値差が±10%範囲内に含まれた場合

②試験条件間に差有り:各試験条件における平均値の差の検定結果、比較対照とした

試験条件の平均値差が±10%範囲を超える場合

a)サイクル時間について(表 2.1.13 参照) 試験機関相互間データの差は無いと判断した

b)残留圧力損失について(表 2.1.14 参照) 試験機関相互間データの差は有ると判断した

最終判定は、残留圧力損失の解析結果から試験機関相互データに有意差が有ると判断した。

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54

【解説】これらの試験結果から、その原因としてそれぞれの試験機関の試験室内環境に着

目し、湿度の差が大きいことから湿度の影響について検討し、更に検討項目にダイアフ

ラム弁の違いによる影響を加えた。

2)湿度の影響

低湿度条件(40%前後)、高湿度条件(65%前後)で比較した結果、

①両試験室内環境湿度の違い:石川高専と衛生研比較(表 2.1.12~表 2.1.14 参照)

石川高専(高湿度)及び衛生研(低湿度)のデータ比較(ランドロビン試験データ)

サイクル時間 差無し、残留圧力損失 差有り

判定 有意差有り

②試験室内環境の差 (湿度 )による試験 石川高専今回試験データ (低湿度 )と過去デー

タ(高湿度)の比較(表 2.1.15~表 2.1.17 参照)

サイクル時間 有意差有り、残留圧力損失 有意差無し

判定 有意差無し

③異なる試験機関同士の同一湿度条件(低湿度)による比較(表 2.1.22~表 2.1.22 参照)

サイクル時間 有意差有り、残留圧力損失 有意差無し

判定 有意差無し

【解説】上記①の試験結果だけが残留圧力損失に差が有るとの判定となり、当初試験室内

の湿度の差が大きな要因と考えられていたが、②及び③の結果から、湿度以外の要因が

あると推定された。

衛生研では試験装置をクリーンルームに設置し除湿装置によって湿度を管理している。

また、石川高専では室内の湿度管理は困難としても、粉じん分散に使用するコンプレッ

サエアが低湿度であり、且つ吸引するエア量の殆どがコンプレッサエアの空気量と考え

れば、装置内を流れる空気は低湿度となり、周囲環境の影響を受け難いと考えられる。

また、データ数が少ないため参考データ(表 2.1.28)とするが、衛生研に於いても低湿度

と高湿度のデータの比較をすると、石川高専の結果より差はあるものの判定は有意差な

しとなる。

従って、データの相違は湿度の影響は少なく、他の要因である粉じんの供給量、パルス

エア量等の要因が高いと推定された。

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55

表 2.1.28 衛生研での湿度の影響

試験機

試料名 弁の種

温度

(℃)

湿度

(%)

サイクル時間

(s)

残留圧力損失

(Pa)

試験データ

衛生研

M-16 国産製 24 43 596 222 ●

M-18 国産製 20 40 604 222 ●

M-① 国産製 20 33 592 214 ○

衛生研 M-17 国産製 30 65 720 206 ●

3)ダイアフラム弁の相違による影響

今回比較したダイアフラム弁はドイツ製及び国産製の 2 種類である。

石川高専ではドイツ製を、衛生研では国産製を使用していた。今回ダイアフラム弁の

比較をするに当り、石川高専ではドイツ製と国産製の両方について、また、双方の機関

で国産製について比較した。

①ダイアフラム弁の影響-1 石川高専でドイツ製及び国産製を用いて同一湿度条件

(低湿度)で比較した結果(表 2.1.18~表 2.1.20 参照)

サイクル時間 有意差有り、残留圧力損失 有意差無し

判定 有意差無し

②ダイアフラム弁の影響-2 ダイアフラム弁を国産製とした石川高専及び衛生研で

の比較した結果(表 2.1.22~表 2.1.24 参照)

サイクル時間 有意差有り、残留圧力損失 有意差無し

判定 有意差無し

【解説】残留圧力損失で評価すると全ての条件で差が無いと判定される。この結果によっ

てラウンドロビン試験結果での推定以外に要因があると考えられる。

(2)パルスエア量測定について

ドイツ製及び国産製では、通電時間を同じに設定しても実際に流れるパルスエア量の

差が確認された。また、国産製では 2 試験機関で同じ通電時間であっても弁が開放して

いる時間の差があったが、ストップバルブが開放の時(フィルター試験の状態)では計算

上パルスエア量は一致した。

国産製とドイツ製で比較すると、ドイツ製の方がパルスエア量が多い。

【解説】フィルターに付着している粉体の払落し作用力には、①パルス圧力、②パルスエ

ア量、③パルスエア噴射時間が影響すると考えられる。①~③でどの項目が一番影響す

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56

るかは定かではないが、今回の試験結果から石川高専のデータは、サイクル時間が衛生

研のそれより長い。また今回の有意差判定基準は、データの差を 10%としているが、全

体の傾向から衛生研は残留圧力損失が高く、それに比べ石川高専は若干低い。このよう

な傾向はエア量、吸引空気量、粉じん供給量に影響している可能性があると推定する。

(3)今後の課題

今回の試験結果から湿度の影響は無いと判断された。

湿度の影響以外に考えられる要因としては、吸引空気量、パルスエア量或いはパルス

エア供給時間、粉じん供給量(粉じん濃度)などのエア関連の指標が考えられる。この中

で吸引空気量は初期集じん性能試験から最終集じん性能試験の間は、真空度が高く排出

容量が大きな真空ポンプを利用することによって容易にコントロールできると思われる。

しかし、パルスエア量、粉じん供給量の変動又は差がある場合はエージング処理試験で

は長時間その条件で暴露されるため、影響を無視できない可能性がある。

要因の一つとしてパルスエア量を考えると、JIS Z8909-1 ではパルスエア量としての

規定はしていなくてダイアフラム弁の制御時間(50ms)で規定している。しかし今回の試

験結果では、ドイツ製及び国産製ダイアフラム弁では、その通電時間と開放時間が大き

くかけ離れていることが判明した。

そこで、パルスエア量について次に掲げる項目について検討する必要がある。

①パルスエア量

1)ダイアフラム弁の構造(今回はドイツ製と国産製では大きく異なっていた)

ドイツ製はダイアフラム弁と圧力タンクが一体となった構造であった。

2)エア噴射速度(タンク内圧力の下降速度)(ダイアフラム弁の Cv値に依存)

フィルターに対する衝撃力は、エア量だけでなく噴射速度(フィルター通過速度)が

影響すると考えられる。Cv 値:電磁弁流量特性の容量係数を表わす。

3)ダイアフラム弁を制御するリレーの作動精度

リレーの作動は、ダイアフラム弁と同様にソレノイドに通電と同時にアクチュエー

タを作動して接点を作動させる。このとき、アクチュエータの作動時間がダイアフ

ラム弁作動時間に大きく影響する。

4)エア供給側のエア供給速度(エアレギュレータの精度・大きさ等)

レギュレータは、供給エア圧力を一定に保つ役割がある。また、レギュレータの大

きさ(配管径も含む)によって圧力タンクにエアを供給する速度が決定する。さらに

コンプレッサのタンク容量も影響する。

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57

5)圧力タンク容量

圧力タンクの容量だけでなく圧力タンクに接続する配管の長さに注意をする。

6)ダイアフラム弁の管理

エージング処理試験では 1 回の試験で 5000 回の作動が繰り返されるため、応答速

度に影響を及ぼす使用している弁、バネの状態を管理する。

②フィルターのフィルター枠への取付け方法

フィルター枠に取付ける際、4 方向に一定の引っ張り強さで張っていなければなら

ない。フィルターのたるみは払落しに大きく影響する。

③湿度の管理

試験室内をできる限り一定条件に保つ。また、粉体の分散にコンプレッサエアを使

用する場合は、吸引空気は低湿度になる可能性があるが、粉体供給器側の湿度は管

理する必要がある。

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58

2.2 JIS Z 8909-2「耐久性試験方法における信頼性確認試験

2.2.1 背景

都市ごみ焼却施設等で使用される乾式ろ過集じん装置のろ布(通称「バグフィルター」)

については、処理ガスの性状に応じて各種製品が市販されており、その選定において、

集じん性能、耐久性の評価は、重要な判断要素である。従来、これらの性能評価は、製

造者または使用者によって、独自の試験が実施されてきた。しかし、製品間の相対的比

較が困難等の理由から、関連団体※1を通じ工業標準原案を具して日本工業規格を制定す

べきとの申出がされるに至った。

その後、標準化に向けての様々な検討を踏まえ、集じん性能の評価方法については平成

17 年 3 月に日本工業規格(JIS Z 8909-1)が制定された。一方の耐久性試験においては、

平成 15 年度より標準化に向けて、試験方法及び試験装置の検討を重ねた結果、平成 18

年度に JIS 原案作成を終え、平成 20 年 2 月に JIS Z 8909-2「集じん用ろ布の試験方法-

第 2 部:耐久性試験方法※2」(以下、JIS Z 8909-2)がまとめられた。

この規格は、冒頭に記述されているとおり、試験の実施者が通常の試験室業務に習熟し

ていることを要求している。これは、試験ガス※3の取り扱いをはじめ、ろ布の暴露試験

における精度が、試験結果の再現性に影響するからである。そこで、本調査は試験方法

の再現性を確認することを目的として、試験室業務の習熟者が同じ条件の暴露試験を繰

り返し行い、それらの試験結果について統計的評価を行った。

※1 社団法人日本粉体工業技術協会及び財団法人日本規格協会

※2 末尾に添付資料として示す。

※3 パターン1:SO2 と NO の混合ガス、パターン2:HCl ガス

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59

2.2.2 概要

(1)準備

試験室業務に習熟した実施者が、JIS Z 8909-2 に準拠し、2パターンの試験ガスにおい

て、暴露試験を各々3 回繰り返したのち、暴露試料の物性測定を行った。再現性の評価は、

暴露試験後の測定値(引張強さ)の変動係数から(n=1~3)試料間のバラツキを比較にお

いて行う。試験をするにあたり以下の準備を行う。

・暴露試験容器の確認

製作した暴露試験容器の事前確認として、暴露試験容器への試験ガス吸着の有無、また、

シール性の確認を行う。

暴露試験中の暴露試験容器内試験ガスの濃度の推移を確認するため、試験ガス交換時に

暴露試験容器内の各試験ガス濃度確認をする。

・質量及び長さの測定

暴露試験前後の試験試料寸法(縦、横)及び重量を測定し、暴露試験前後での変化率を

算出する。

・引張強さ保持率の測定

暴露試験前の引張試験試料を、暴露試験試料と同ロットかつ近い位置から採取したろ布

試料とし、暴露試験前後の試験試料の引張強さを測定した。得られた引張強さから、暴

露試験前後の保持率を算出する。

また、3 回の試験の引張強さから、変動係数を計算し、バラツキを確認する。

(2)試験内容

JIS Z 8909-2 に基づき、試験試料の準備、暴露試験容器の確認、暴露試験の実施、暴露

試料の物性測定の手順で行った。

評価方法としては、ろ布試料を、特定の条件に設定した試験ガスに暴露し、ろ布の特定

条件下での耐久性を、暴露試験前後における試験試料の引張強さ及び保持率によって評

価した。

①試験装置

JIS Z 8909-2 に準拠した試験装置を用いた。しかし、精度の確認が目的であり、試験中

に気づいた点については改善を行い実施した。改善点については、章末にまとめる。

・暴露試験容器

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60

暴露試験容器は、シール性を確保し、試験ガスを吸収しない耐食性に優れた材料を用

いた。暴露試験容器内部に試料ホルダを設け、試料ホルダも同様に耐食性に優れた材料

を用いた。暴露試験容器内部の高さは、340 mm 以上とし、ろ布試料を架ける上下のロ

ッドは、360 mm の長さをもつ耐食性の金属の丸棒を用いた。荷重のための分銅は、長

さ 360 mm、取付用のフック部を含めて質量 2.4 kg のものを用いた。ろ布試料は、上下

のホルダに架けた状態で長さ 280 mm、幅は 320 mm とした。

本調査試験において、測定実績を増やすと共に、測定値の再現性に関するデータを取

得することを目的としており、一度の試験期間に複数の試験を行うため、暴露試験容器

を JIS Z 8909-2 の寸法規定以内で小型化し、2 台の暴露試験容器を用い試験を行った。

以下にその詳細を示す。

容器素材として、試験ガスを吸収しない耐腐食性に優れた SUS 316L を用い、容器内

の減圧に対応するため、容器周囲に補強を行った。また、試料ホルダも同様に、SUS316L

を用いた。開口部のシールとしては、耐腐食性、耐熱性を考慮し、バイトンゴムのパッ

キンを用いた。暴露試験容器内容積は、縦 350mm×横 200mm×奥行 400mm=36L と

した。図 2.2.1~2.2.4 に暴露試験容器図面を示す。また、写真 No.1~No.6 に暴露試験

容器写真を示す。

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61

図 2.2.1 暴露試験容器

図 2.2.2 暴露試験容器(蓋) 図 2.2.3 暴露試験容器(パッキン)

図 2.2.4 試料ホルダ

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62

・加熱装置

暴露試験容器を収容でき、温度制御が±1℃の加熱装置として、(株)東洋製作所製 「送

風定温乾燥機 FV-630」を用いた。装置写真を写真 No.7 に示す。

・試験ガス供給袋

暴露試験容器に試験ガスを導入するための袋で、近江オドエアーサービス(株)製の

耐薬品性に優れたポリフッ化ビニル製 テドラーバック(50L)を用いた。

・水分注入容器

水分を注入する容器として、翼工業(株)製 VAN ガラス注射筒を用いた。写真を写

真 No.10、11 に示す。

・ガス分析器

暴露試験容器内の試験ガス濃度及び、暴露試験容器内への導入試験ガス濃度の確認に

使用する装置であるが、暴露試験容器内が密閉系であり、分析計による分析に必要なガ

ス量の採取が困難であるため、簡易法としてガス採取器を用いたガス検知管による分析

を行った。写真を写真 No.9、10 に示す。

・ガス処理装置

暴露試験容器から排出する試験ガスに含まれる腐食性ガスを処理するもので、本調査

試験では、SO2、NOx、HCl を試験ガスとして使用したため、環境測定 JIS の大気関係

より、JIS K 0103(SO2 分析法)、JIS K 0104(NOx 分析法)、JIS K 0107(HCl 分析

法)に基づき吸収液を充填した吸収瓶を通すことで排出される試験ガスの処理を行った。

・真空ポンプ

暴露試験容器内の試験ガスを吸引するためのポンプであり、アルバック工機(株)製

GLS-050 を用いた。

・連成計

暴露試験容器内の試験ガス排出時の排出状況の確認、暴露試験時の暴露試験容器内圧

力(加圧)の確認のために取り付ける計測器であり、本調査試験では、暴露試験時に加

圧状態にならないことを確認したため、減圧計を用いた。

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63

・温度計

暴露試験容器内及び、加熱装置の温度を測定するものであり、K 熱電対(JIS C 1602)

を用いた。

・試験ガス調整装置

試験ガスボンベ、ガス流量計、ガス混合管、ガス採取器、ガス検知管及びガス処理装

置からなり、試験ガスボンベからのガスを流量計に通し流量調製を行い、混合管により

混合し規定濃度の混合ガスを調整できる仕様とした。また、試験ガスの調製時は、ガス

処理装置側へ調整ガスを流し、濃度を検知管で確認した後、試験ガス供給袋に試験ガス

を採取した。図 2.2.5 及び写真 No.12 に試験ガス調整装置を示す。

図 2.2.5 試験ガス調整装置

NO+SO2

HCl Air

試験ガスボンベ

ガス処理装置

試験ガス供給袋

流量計

調製時

調整後

検知管

ガス採取器

ガス混合管

NO+SO2

HCl Air

試験ガスボンベ

ガス処理装置

試験ガス供給袋

流量計

調製時

調整後

検知管

ガス採取器

ガス混合管

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No.1

表題:暴露試験容器

説明:内部

No.2

表題:暴露試験容器

説明:蓋

No.3

表題:暴露試験容器

説明:パッキン

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No.4

表題:暴露試験容器

説明:試料ホルダ

No.5

表題:暴露試験容器

説明:試験試料装着の様子

No.6

表題:暴露試験容器

説明:組立正面

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No.7

表題:加熱装置

説明:(株)東洋製作所製

風定温乾燥機 FV-630

No.8

表題:水分注入容器

説明:翼工業(株)製 VAN

ガラス注射筒 [5ml]

No.9

表題:水分注入の様子

説明:水分投入口先端は、セプ

タムになっており、注射針をセプ

タムに差込み水分を注入した。

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No.10

表題:ガス検知管

説明:ガステック社製

SO2 No.5M

補正係数 0.8(40℃)

NOx No.11HA

温度影響無し

HCl No.14R

温度影響無し

No.11

表題:ガス濃度測定

説明:ガス採取ノズル(加温)

と検知管をアダプターにより接

続し、ガス採取器により吸引する

ことで、ガス濃度を測定した。

No.12

表題:試験ガス調整装置

説明:右より試験ガスボン

ベ、ガス流量計、ガス混合管

ガス採取ノズル (加温)

ガス採取器 検知管

アダプター (シリコンチューブ)

SO2

NOx

HCl

試験ガスボンベガス流量計

ガス混合管

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68

(3)試験条件

・試験試料

試験試料として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)不織布を用いた。PPS の通常

使用温度は、180℃であるが、本調査試験の目的である再現性の確認において、暴露後

に強度変化が見られない場合に再現性の評価が難しいため、あえて使用温度範囲外のろ

布を用いた。

・試験ガスの組成

JIS Z 8909-2 7.1.1 b) , c) に基づき、2 条件の試験ガス組成で試験を行った。

1) SO2 1000ppm、NO 1000ppm、酸素 10%、水分 20%を混合

(JIS Z 8909-2 7.1.1 c) 特定の混合ガスを暴露する場合)

2) HCl 2000ppm、酸素 10%、水分 20%

(JIS Z 8909-2 7.1.1 b) 特定の試験ガスに対する影響を個別に試験する場合)

・試験温度

JIS Z 8909-2 7.1.2 の原則に基づき、200℃とした。設定根拠として、「廃棄物焼却に

係るダイオキシン削減のための規制措置」の構造・維持管理基準として、「集じん機に

流入する燃焼ガスをおおむね 200℃以下に冷却すること」とあるため、最高温度である

200℃と設定した。

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69

・試験中にろ布に加える力

JIS Z 8909-2 7.1.3 の代表例に基づき、33.3 N とした。代表例は、実際の集塵機内ろ

布に載荷されるろ布の自重とダスト重量から算出された値である。

・試験時間

JIS Z 8909-2 7.1.4 の最短時間である 200 時間とした。

・試験試料枚数

暴露試験容器内に 3 枚の試験試料を装着し、試験を行った。

・試験回数

本調査試験の目的である再現性の確認のため、同条件において 3 回の試験を行った。

(4)試験方法

・試験試料の準備

暴露試験装置に装着する試験試料は、上下の 2 本のロッドを通すように、図 2.2.6 に

示すような寸法に耐食性のあるふっ素繊維ミシン糸縫製したものを準備した。縫製した

試験試料の縦、横の長さ、厚み及び質量を測定した。

図 2.2.6 試験試料寸法

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70

・暴露試験容器の確認

暴露試験容器からの発生ガス確認として、暴露試験容器内に窒素ガスを充填し、試験

温度まで昇温させ 20 時間放置後にガス分析を行った。

・試験試料の装着

試験試料に上下のロッドを通し、分銅をつり下げ、試料への載荷が均等になるように

して暴露試験容器のロッド受けに取り付けた。

・試験ガスの調整

本調査試験では、暴露試験容器内に水分注入後、試験ガスを導入する操作手順をとっ

ているため、水分の注入量及び試験ガス調整装置で調製するガス濃度を、以下の計算

によって求めた。

1) 暴露試験容器容量(36L)及び試験温度(200℃)より水分注入量の計算

200℃における暴露試験容器容量 36L の 20%容積を占める水分量を求める。

理想気体の状態方程式より

(理想気体の状態方程式)

ここに、P は大気圧(1atm)、V は水分の容積(7.2L)、R は気体定数(8.20×10-2atm・

L・K-1・mol-1)、T は温度(473K)である。

[mol]

よって、0.186 mol(3.34ml)の純水を真空減圧した暴露試験容器内に注入するこ

とで 20%容積の水分を調整した。また、注入後の水分容積は、減圧計の真空レベル

が 20%低下することで確認した。

2) 暴露試験容器内水分 20%における試験ガス濃度の計算

暴露試験容器容量(36L)の 20%容積が水分であるため、残りの 80%容積で暴露試

験容器容量(36L)内が試験ガスの組成条件になるよう調整した。

nRTPV =

( )( )( )( ) 186.0

4731020.82.71

112 =⋅⋅⋅×

== −−− KmolKLatmLatm

RTPVn

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71

①SO2 1000ppm、NO 1000ppm、酸素 10%の混合ガス調製

SO2 ガス濃度:2500ppm、NO ガス濃度:2500ppm の混合ガスボンベからのガス

と純空気を流量計で調整しながら 2 倍量に希釈することで、SO2 ・NO :1250ppm、

酸素 10.5%の混合ガスを試験ガス供給袋に調製し、20%容積の水分が注入され、

80%減圧された暴露試験容器内に導入することで、SO2 1000ppm、NO 1000ppm、

酸素 10%を調製した。

②HCl 2000ppm 酸素 10%の混合ガス調製

HCl ガス濃度:5000ppm の標準ガスボンベからのガスを、①と同様の操作により

調製した。

・暴露試験容器の加熱

暴露試験容器を密閉し、容器内の空気を真空ポンプによって絶対圧 5 kPa 以下にな

るまで排気した後、窒素ガスを充てんして大気圧にした。その後、加熱装置を起動

して試験温度にまで 3 時間以内に昇温した。

・試験開始

暴露試験容器内温度が試験温度に到達後、暴露試験容器内を真空ポンプで排気し、内

部の圧力を絶対圧 5 kPa 以下にした。真空ポンプ停止後に暴露試験容器前面の水分投

入口から注射器により純水を注入した。暴露試験容器内減圧の指示値が 20%正圧側に

移動したのを確認後、ガス供給袋から試験ガスを導入し、大気圧にした。以上の操作

が終了した時点を試験開始時刻とした。

・暴露試験容器内ガスの調整

暴露試験容器内ガス濃度を一定に維持するため、定期的に暴露試験容器内の試験ガス

の交換を行った。ガス交換は、暴露試験容器内ガスをガス処理装置に通しながら真空

ポンプで絶対圧 5 kPa 以下に排出した後、新しい試験ガスを導入した。12 時間暴露

までは 3 時間ごとに行い、次の 100 時間暴露までは 12 時間ごとに行い、以降は 24

時間ごとに行った。

このとき、暴露試験容器内ガス濃度の経時変化を確認するために、ガス検知管を用い

て暴露試験容器内ガス濃度を測定した。

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72

・試験終了後の冷却

所定時間に達した時点で、暴露試験容器内ガスをガス処理装置に通しながら真空ポン

プで絶対圧 5 kPa 以下に排出した後、窒素ガスを充填した。加熱装置を室温まで冷却

したのち、試験試料を取り出し、乾燥デシケータ内で保管後、寸法、重量、引張強さ

の測定を行った。

(2)暴露試料の物性測定

・質量及び長さの測定

JIS L 1096 に準じた方法で、暴露試験前後の試験試料の質量、縫い目の間隔及び厚み

を測定した。試料の長さ及び厚みの測定位置を図 2.2.7 に示す。長さは、試験試料縦方

向(縦①、縦②、縦③)、横方向(横①、横②、横③)に 3 箇所ずつ、それぞれ試料端

より 30mm の位置を測定した。また、厚みは横方向中心の試料端より 30mm の位置を

測定した。

図 2.2.7 試験試料長さ及び厚みの測定位置

中心

30mm

30mm

30mm

30mm

縦① 縦② 縦③

横①

横②

横③

厚み① 厚み②中心

30mm

30mm

30mm

30mm

縦① 縦② 縦③

横①

横②

横③

厚み① 厚み②

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73

(3)引張強さ保持率の測定

暴露試験前後の試料を図 2.2.8 に示すように、試験試料縦方向(縦①、縦②、縦③)、

横方向(横①、横②、横③)に 3 本ずつ切り出し、引張強さ保持率の測定試料とした。

また、引張強さ保持率の測定試料寸法は、試験試料の大きさの都合により、長方向

200mm、幅方向 30mm とした。(改善点として別章に示す。)

図 2.2.8 試験試料長さ及び厚みの測定位置

引張強さの測定は、(株)島津製作所製 オートグラフ AGB-1000B(写真 No.13~15)

を用い、測定方法は JIS L 1096 付属書 7 に従い行った。

得られた結果から、以下に示す計算式より引張強さ、保持率、最大引張荷重伸び率を

算出した。

1) 引張強さ

得られた最大引張荷重 Pmax から引張強さ T は、次の式で算出した。

[N・mm-1]

ここに、h は引張試験片の幅である。

hPT max=

縦① 縦② 縦③

横③

横②

横①

試験

片長

さ20

0mm

つかみ具

つかみ具

試験片幅30mm

つか

み間

隔10

0mm

縦① 縦② 縦③

横③

横②

横①

縦① 縦② 縦③

横③

横②

横①

試験

片長

さ20

0mm

つかみ具

つかみ具

試験片幅30mm

つか

み間

隔10

0mm

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74

2) 保持率

暴露前後の引張強さの比で与えられる保持率は、次の式で求めた。

[%]

ここに、T0 は暴露されていないろ布材の引張強さである。また、T0 は測定結果の平

均値を用いた。

3) 最大引張荷重伸び率

得られた最大引張荷重伸びδmax から、最大引張荷重伸び率εmax は次の式で算出し

た。

[%]

ここに、L は引張試験前のつかみ間隔である。

1000

×=TT

保持率

100maxmax ×=

Lδε

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75

3.4.3 結果の評価方法

1) 再現性の評価

3 回の耐久性試験の測定値(引張強さ、伸び率)を用いて、以下の計算式によりバ

ラツキ(変動係数)を算出し、10%以内である時バラツキが少ないと評価した。

(標準偏差)

ここに、 ix は各測定値、 x は平均値、n は測定数である。

(変動係数)

また、参考として以下の式を用い正規分布図を作成した。

(正規分布)

( )

n

xxn

ii∑

=

−= 1

2

σ

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛ −−= 2

2

2)(

exp21)(

σπσxx

xf i

100×=x

CV σ

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76

No.13

表題:引張試験装置

説明:(株)島津製作所製

オートグラフ AGB-1000B

No.14

表題:引張試験装置

説明:(株)島津製作所製

オートグラフ AGB-1000B

No.15

表題:引張試験装置

説明:掴み部

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77

2.2.3 信頼性確認試験結果

暴露試験容器の確認

暴露試験容器からの発生ガス確認として、容器内に窒素ガスを充填し 200℃、20 時間

放置後、SO2、NOx、HCl について測定を行った結果、SO2、NOx、HCl の発生は確認

されなかった。

(1)暴露試験中の暴露試験容器内ガス濃度変化の調査

・SO2 +NO (各 1000ppm)、酸素 10%、水分 20%での暴露試験

暴露試験中に導入する試験ガス濃度及び、試験ガス交換時の暴露試験容器内ガス濃度

を SO2、NOx について測定した一例を図 2.2.9、2.2.10 に示す。また、その時の単位時

間当りの減少量を図 2.2.11、2.2.12 に示す。

図 2.2.9 SO2 経時変化

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200経過時間 [hr]

容器

内ガ

ス濃

度 [p

pm]

SO2

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78

図 2.2.10 NOx 経時変化

図 2.2.11 SO2 単位時間当りの減少量

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200経過時間 [hr]

容器

内ガ

ス濃度

[ppm

]

NOx

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

経過時間 [hr]

時間

当り

の減

少量

 [p

pm/hr]

SO2

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79

図 2.2.12 NOx 単位時間当りの減少量

SO2 は、試験開始後 24 時間までガス濃度は急激に減衰し、以降 90 時間まで単位時間

当り約 30ppm/hr の速度で減衰した。80 時間以降は、10ppm/hr 以下の減衰であった。

(図 4.1、4.3)

NOx についても、開始後 24 時間までガス濃度は急激に減衰し、以降 60 時間まで約

30ppm/hr の速度で減衰した。60 時間以降は、約 15ppm/hr の減衰であった。(図 4.2、

4.4)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

経過時間 [hr]

時間

当り

の減

少量

 [p

pm/hr] NOx

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80

・ HCl 2000ppm、酸素 10%、水分 20%での暴露試験

暴露試験中に導入する試験ガス濃度及び、試験ガス交換時の暴露試験容器内ガス濃度

を HCl について測定した一例を図 2.2.13 に示す。また、単位時間当りの減少量を図

2.2.14 に示す。

図 2.2.13 HCl 経時変化

図 2.2.14 NOx 単位時間当りの減少量

0

500

1000

1500

2000

2500

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200経過時間 [hr]

容器

内ガ

ス濃

度 [p

pm]

HCl

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

経過時間 [hr]

時間

当り

の減

少量

 [p

pm/hr] HCl

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81

HCl は、試験開始後 3 時間でガス濃度減衰は終了し、以降 200 時間まで導入したガス

濃度と同じ濃度であった。

本調査試験操作における暴露試験容器内試験ガス濃度は、試験開始直後急激な減衰を

示すが、以降は 30~10ppm/hr の速度での減衰が確認された。以上のことより、試験試

料への一定濃度での腐食ガス暴露において、ガス交換のタイミングは、12 時間暴露ま

では 3 時間ごと、次の 100 時間暴露までは 12 時間ごと、以降は 24 時間ごとが適当で

あることが示された。但し、本試験調査では、ガス濃度測定として簡易法のガス検知管

による測定を行っているため、試験容器内の物質収支を厳密に行う場合は、ガス濃度測

定方法の検討が必要である。

(2)試料の質量及び長さの測定

・重量測定

表 2.2.1 に重量測定結果を示す。また、表 2.2.2 に暴露試験前後の変化率を示し、減少

を赤文字で示した。また、暴露試験前後の試験試料状態の参考として、写真 No.16~27

に試験試料写真を示す。

表 2.2.1 1 回目 重量測定結果

1回目 2回目 3回目No.1 69.690 70.341 70.783No.2 70.739 66.643 67.469No.3 68.880 69.889 66.691No.4 67.741 68.261 67.860No.5 67.955 67.732 69.338No.6 69.566 68.033 67.114No.1 69.566 70.215 70.587No.2 70.643 66.546 67.275No.3 67.770 69.753 66.478No.4 67.863 69.725 70.014No.5 68.244 67.740 71.867No.6 70.098 69.145 67.652

暴露前

SO2+NO

HCl

暴露後

SO2+NO

HCl

重量[g]ガス条件 試料No.

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82

表 2.2.2 重量変化率

SO2+NO の試験ガス条件での重量変化は全ての試験試料において増加傾向がみられ

た。また、1 回目の No.3 を除いて、0.1%~0.3%の増加が確認された。

HCl の試験ガス条件での重量変化は、2 回目の No.2 を除いて減少傾向が見られた。ま

た、-0.2%~-3.6%の減少が確認された。

・長さ及び厚みの測定

長さ及び厚みの測定は、図 2.2.7 に示す位置を測定した。表 2.2.3~2.2.5 に 1~3

回目試験の長さ及び厚みの測定結果を示す。また、表 2.2.6 に暴露試験前後の変化率

を示し、減少(縮み)を赤文字で示した。

表 2.2.3 1 回目 長さ及び厚み測定結果

縦① 縦② 縦③ 横① 横② 横③ 厚み① 厚み②No.1 203 203 203 323 323 322 1.47 1.39No.2 203 204 206 322 323 322 1.37 1.45No.3 202 200 200 321 323 321 1.41 1.46No.4 203 202 201 321 321 321 1.42 1.43No.5 203 202 205 321 322 321 1.44 1.44No.6 204 204 203 323 324 324 1.46 1.36No.1 204 204 203 320 320 320 1.57 1.57No.2 203 204 205 323 323 323 1.50 1.51No.3 203 201 201 321 322 321 1.55 1.61No.4 202 201 202 319 318 319 1.51 1.57No.5 203 201 204 320 320 320 1.65 1.61No.6 203 203 203 323 323 322 1.50 1.63

HCl

SO2+NO

HCl

厚み[mm]試料No. ガス条件

暴露前

暴露後

長さ [mm]

SO2+NO

1回目 2回目 3回目No.1 0.2% 0.2% 0.3%No.2 0.1% 0.1% 0.3%No.3 1.6% 0.2% 0.3%No.4 -0.2% -2.1% -3.2%No.5 -0.4% 0.0% -3.6%No.6 -0.8% -1.6% -0.8%

変化率[%]試料No.ガス条件

SO2+NO

HCl

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83

表 2.2.4 2 回目長さ及び厚み測定結果

表 2.2.5 3 回目長さ及び厚み測定結果

表 2.2.6 長さ及び厚みの変化率

縦① 縦② 縦③ 横① 横② 横③ 厚み① 厚み②No.1 206 204 204 320 321 320 1.44 1.42No.2 206 204 200 320 321 320 1.37 1.30No.3 202 202 204 321 321 321 1.39 1.43No.4 201 201 201 322 322 322 1.42 1.45No.5 203 203 201 322 321 320 1.39 1.39No.6 203 203 203 321 322 321 1.33 1.43No.1 206 204 204 320 320 320 1.56 1.57No.2 205 203 201 318 317 317 1.54 1.53No.3 203 201 203 320 320 320 1.59 1.59No.4 200 200 200 318 318 318 1.62 1.60No.5 201 201 200 316 316 317 1.63 1.61No.6 202 201 201 317 317 318 1.54 1.59

HCl

SO2+NO

HCl

SO2+NO

厚み[mm]長さ [mm]

暴露後

暴露前

試料No. ガス条件

縦① 縦② 縦③ 横① 横② 横③ 厚み① 厚み②No.1 202 202 200 322 322 322 1.50 1.53No.2 201 201 200 321 322 322 1.49 1.45No.3 200 200 200 320 322 322 1.37 1.41No.4 199 201 201 322 323 322 1.44 1.49No.5 200 200 199 321 320 320 1.57 1.56No.6 199 200 200 321 322 322 1.41 1.44No.1 201 202 203 320 319 318 1.66 1.66No.2 200 201 201 318 317 317 1.54 1.61No.3 200 201 201 319 318 317 1.55 1.51No.4 200 202 203 318 318 318 1.63 1.57No.5 200 202 202 316 316 316 1.74 1.74No.6 200 201 200 317 316 317 1.57 1.54

HCl

SO2+NO

HCl

SO2+NO

ガス条件厚み[mm]

暴露前

暴露後

試料No.長さ [mm]

縦① 縦② 縦③ 横① 横② 横③ 厚み① 厚み②No.1 -0.5% -0.5% 0.0% 0.9% 0.9% 0.6% 6.4% 11.5%No.2 0.0% 0.0% 0.5% -0.3% 0.0% -0.3% 8.7% 4.0%No.3 -0.5% -0.5% -0.5% 0.0% 0.3% 0.0% 9.0% 9.3%No.4 0.5% 0.5% -0.5% 0.6% 0.9% 0.6% 6.0% 8.9%No.5 0.0% 0.5% 0.5% 0.3% 0.6% 0.3% 12.7% 10.6%No.6 0.5% 0.5% 0.0% 0.0% 0.3% 0.6% 2.7% 16.6%No.1 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.3% 0.0% 7.7% 9.6%No.2 0.5% 0.5% -0.5% 0.6% 1.2% 0.9% 11.0% 15.0%No.3 -0.5% 0.5% 0.5% 0.3% 0.3% 0.3% 12.6% 10.1%No.4 0.5% 0.5% 0.5% 1.2% 1.2% 1.2% 12.3% 9.4%No.5 1.0% 1.0% 0.5% 1.9% 1.6% 0.9% 14.7% 13.7%No.6 0.5% 1.0% 1.0% 1.2% 1.6% 0.9% 13.6% 10.1%No.1 0.5% 0.0% -1.5% 0.6% 0.9% 1.2% 9.6% 7.8%No.2 0.5% 0.0% -0.5% 0.9% 1.6% 1.6% 3.2% 9.9%No.3 0.0% -0.5% -0.5% 0.3% 1.2% 1.6% 11.6% 6.6%No.4 -0.5% -0.5% -1.0% 1.2% 1.5% 1.2% 11.7% 5.1%No.5 0.0% -1.0% -1.5% 1.6% 1.3% 1.3% 9.8% 10.3%No.6 -0.5% -0.5% 0.0% 1.2% 1.9% 1.6% 10.2% 6.5%

2回目

3回目

ガス条件

SO2+NO

HCl

SO2+NO

HCl

HCl

SO2+NO

試料No.

1回目

長さ [mm] 厚み[mm]

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84

SO2+NO 及び HCl の試験ガス条件共に、長さについて、縦方向は荷重がかかってい

るにも関らず縮む傾向が多く見受けられた。また、横方向は、伸びる傾向が見られた。

参考値としての厚みは、膨張する傾向が見られた。

(3)試料の引張強さ保持率の測定

・引張強さ保持率の測定

表 2.2.7 及び表 2.2.8 に暴露試験前引張強さ測定結果を、縦方向及び横方向に分けて示

す。表 2.2.9 及び表 2.2.10 に暴露試験後引張強さ測定結果を、縦方向及び横方向に分け

て示す。また、表 2.2.11 及び表 2.2.12 に暴露試験前後の保持率を、縦方向及び横方向に

分けて示し、暴露試験後に強さ及び伸び率が増した(100%以上)測定結果は赤文字で示

した。参考として、写真 No.28~33 に引張試験前後の試験試料写真を示す。

表 2.2.7 暴露試験前引張強さ(縦方向)

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

縦① 14.6 33.5 16.4 35.4 13.9 25.3縦② 15.2 33.0 12.7 37.7 14.4 26.1縦③ 14.9 35.9 15.7 36.5 15.2 24.5縦① 13.9 32.2 16.3 38.1 13.1 26.1縦② 15.5 34.0 15.1 36.5 13.4 24.8縦③ 13.9 33.2 15.5 36.3 13.1 27.0縦① 15.9 33.9 16.3 36.4 11.1 23.9縦② 14.8 36.1 16.6 34.1 12.0 29.5縦③ 15.0 32.2 15.9 33.2 12.7 24.0縦① 14.3 40.1 16.3 34.6 11.4 24.6縦② 13.2 34.2 16.3 34.8 9.9 23.4縦③ 14.7 40.7 15.4 37.2 11.8 25.9縦① 14.6 33.6 17.2 35.7 11.2 25.2縦② 15.7 37.1 16.3 37.4 11.1 24.6縦③ 15.5 34.5 16.5 31.9 11.0 24.3縦① 15.9 35.7 14.6 35.9 15.1 26.9縦② 15.9 37.3 14.8 30.7 12.7 25.2縦③ 15.4 33.6 16.3 35.8 13.8 27.4

1回目 2回目 3回目

SO2+NO

HCl

試料No.ガス条件

No.5

No.6

No.1

No.2

No.3

No.4

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85

表 2.2.8 暴露試験前引張強さ(横方向)

表 2.2.9 暴露試験後引張強さ(縦方向)

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

横① 35.8 46.6 44.9 53.6 40.0 43.0横② 38.5 51.8 49.0 67.8 39.9 42.2横③ 40.7 58.6 44.5 67.2 37.7 41.7横① 40.1 58.4 40.1 48.2 38.9 41.0横② 44.9 60.4 37.7 44.0 37.9 38.4横③ 44.1 52.5 43.6 56.3 39.6 44.4横① 42.7 58.5 42.6 60.6 38.4 42.4横② 43.5 60.9 35.6 45.0 38.1 41.3横③ 43.4 59.6 39.4 59.5 38.4 42.8横① 45.5 60.3 37.2 53.1 38.8 43.0横② 37.8 46.2 36.9 54.0 33.6 42.6横③ 41.5 47.0 37.1 60.8 39.9 44.5横① 38.3 61.7 37.9 48.7 33.3 42.2横② 40.7 55.4 41.8 66.2 38.0 44.7横③ 41.9 61.1 43.6 59.4 38.5 44.1横① 40.1 54.7 42.0 55.7 38.3 53.0横② 41.0 53.8 42.7 54.9 35.4 43.9横③ 39.2 48.5 41.5 43.6 37.9 53.5

3回目

No.1

No.2

No.3

試料No.1回目 2回目

ガス条件

SO2+NO

HCl

No.4

No.5

No.6

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

縦① 12.8 21.3 13.6 20.5 11.4 17.3縦② 12.4 21.4 12.8 22.1 11.5 17.3縦③ 12.1 20.0 12.2 19.6 11.2 17.1縦① 11.4 21.2 12.8 19.7 13.4 20.6縦② 12.0 20.0 12.4 19.8 13.8 19.5縦③ 12.6 21.1 12.7 19.8 13.9 21.2縦① 12.4 22.5 13.0 20.7 13.9 21.3縦② 12.1 21.5 13.4 20.6 13.4 19.1縦③ 12.2 21.8 13.4 19.8 13.6 18.7縦① 15.0 27.3 16.7 33.0 15.9 29.2縦② 15.4 27.9 16.9 31.2 16.1 30.9縦③ 15.3 27.3 16.6 29.2 17.0 26.2縦① 16.0 28.7 16.6 28.4 13.6 24.0縦② 14.8 27.1 16.6 30.5 13.6 24.6縦③ 15.7 28.7 16.5 29.2 14.3 23.6縦① 15.9 29.3 16.6 29.8 16.9 23.3縦② 14.8 32.0 16.5 28.3 17.3 24.0縦③ 16.3 30.0 16.5 29.2 17.8 26.7

ガス条件 試料No.

SO2+NO

No.1

No.2

No.3

HCl

No.4

3回目1回目 2回目

No.5

No.6

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86

表 2.2.10 暴露試験後引張強さ(横方向)

表 2.2.11 保持率(縦方向)

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

横① 29.2 22.3 30.5 22.4 26.5 23.1横② 27.9 23.6 28.1 24.4 27.4 25.7横③ 29.5 24.1 27.2 21.9 26.1 23.9横① 25.1 23.7 26.5 24.6 28.6 24.2横② 27.0 25.3 28.5 22.2 28.2 22.0横③ 27.5 25.5 27.4 25.7 27.7 25.1横① 27.3 25.9 29.2 25.5 29.8 24.2横② 26.8 26.3 28.1 26.5 30.2 28.8横③ 28.4 24.7 28.1 26.4 27.2 22.2横① 39.3 32.5 43.9 47.5 42.5 37.4横② 38.6 39.0 42.8 44.6 42.0 39.7横③ 41.1 44.1 43.7 49.9 43.7 41.1横① 37.7 41.8 44.4 41.1 40.7 41.9横② 37.6 40.1 45.3 48.2 40.0 36.0横③ 36.3 43.4 45.2 44.0 42.5 41.1横① 31.8 41.0 38.1 39.5 42.7 37.0横② 35.0 38.2 40.0 45.3 42.0 35.0横③ 35.2 40.0 36.8 37.2 40.7 35.2

1回目 2回目 3回目ガス条件 試料No.

SO2+NO

No.1

No.2

No.3

HCl

No.4

No.5

No.6

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

縦① 88.4% 66.7% 94.4% 64.1% 78.7% 54.2%縦② 85.6% 66.9% 88.9% 69.1% 79.6% 54.2%縦③ 83.8% 62.7% 84.2% 61.4% 77.8% 53.4%縦① 79.1% 66.4% 88.9% 61.6% 92.6% 64.4%縦② 82.8% 62.4% 86.1% 61.9% 95.3% 60.9%縦③ 87.5% 66.0% 87.9% 61.9% 96.3% 66.2%縦① 85.6% 70.3% 89.8% 64.7% 96.3% 66.6%縦② 83.8% 67.2% 92.6% 64.4% 92.6% 59.6%縦③ 84.7% 68.2% 92.6% 61.8% 94.4% 58.5%縦① 103.7% 85.5% 115.7% 103.3% 110.2% 91.4%縦② 106.9% 87.4% 116.6% 97.5% 111.1% 96.6%縦③ 106.0% 85.4% 114.8% 91.3% 117.6% 81.9%縦① 110.6% 89.8% 114.8% 88.9% 94.4% 74.9%縦② 102.3% 84.7% 114.8% 95.5% 94.4% 76.8%縦③ 108.3% 89.8% 113.9% 91.1% 99.0% 73.8%縦① 110.2% 91.5% 114.8% 93.2% 116.6% 72.8%縦② 102.7% 99.9% 113.9% 88.6% 119.4% 75.0%縦③ 112.9% 93.7% 113.9% 91.4% 123.1% 83.5%

HCl

No.4

No.5

No.6

SO2+NO

No.1

No.2

No.3

3回目ガス条件 試料No.

1回目 2回目

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87

表 2.2.12 保持率(横方向)

ガス条件 SO2+NO については、縦方向及び横方向共に引張強さは減少(弱くなる)し、

伸び率も減少するという結果が得られ、劣化の進行が確認された。

ガス条件 HCl については、縦方向について引張強さが増し(強くなる)、伸び率に関

しても 70%以上を保持するという結果が得られた。横方向についても引張強さが増す傾

向が見られ、減少しても 80%以上の保持率を示した。伸び率についてもほぼ 70%以上

の保持率であった。

引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率 引張強さ 伸び率(N/mm) (%) (N/mm) (%) (N/mm) (%)

縦① 73.0% 43.4% 76.2% 43.4% 66.2% 44.9%縦② 69.7% 45.7% 70.2% 47.4% 68.5% 49.9%縦③ 73.7% 46.9% 67.9% 42.5% 65.2% 46.4%縦① 62.7% 45.9% 66.2% 47.7% 71.5% 47.0%縦② 67.4% 49.1% 71.2% 43.1% 70.5% 42.7%縦③ 68.7% 49.6% 68.5% 49.8% 69.2% 48.6%縦① 68.2% 50.3% 72.9% 49.5% 74.6% 46.9%縦② 67.0% 51.0% 70.2% 51.4% 75.6% 55.8%縦③ 70.9% 47.9% 70.2% 51.2% 67.9% 43.1%縦① 98.1% 63.0% 109.7% 92.2% 106.3% 72.6%縦② 96.5% 75.7% 107.0% 86.6% 105.0% 76.9%縦③ 102.8% 85.5% 109.3% 96.9% 109.3% 79.7%縦① 94.1% 81.0% 111.0% 79.7% 101.6% 81.3%縦② 93.9% 77.9% 113.3% 93.6% 100.0% 69.9%縦③ 90.8% 84.1% 113.0% 85.3% 106.3% 79.7%縦① 79.6% 79.6% 95.3% 76.6% 106.6% 71.8%縦② 87.4% 74.1% 100.0% 87.9% 105.0% 67.9%縦③ 87.9% 77.6% 91.9% 72.1% 101.6% 68.3%

HCl

No.4

No.5

No.6

2回目 3回目

SO2+NO

No.1

No.2

No.3

ガス条件 試料No.1回目

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88

・バラツキの確認

表 2.2.13 に引張強さ、表 2.2.14 に伸び率における変動係数を示す。また、参考として、

図 2.2.15 に引張強さ、図 2.2.16 に伸び率における正規分布図を示す。

表 2.2.13 引張強さにおける変動係数

表 2.2.14 伸び率における変動係数

引張強さにおいては、全ての条件(試験ガス条件、方向)で評価の指標である変動係

数 CV 値 10%を下回る結果が確認された。このことより、本調査試験操作の影響によ

る引張強さのバラツキは小さいと考えられる。

伸び率においては、全ての条件で 10%を下回るまたはおよそ 10%の結果が得られた。

このことより、伸び率についても本調査試験操作の影響によるバラツキは小さいと考え

られる。

また、参考として、図 2.2.15、図 2.2.16 に正規分布図を示したが、この図より、バラ

ツキの範囲及び、暴露試験前後の劣化の状態を読み取る事ができる。

ガス条件方向 縦方向 横方向 縦方向 横方向

標準偏差 σ 1.41 1.68 2.59 4.20平均 μ 20.21 24.45 28.14 40.80

分散 σ2 2.00 2.84 6.70 17.61変動係数 CV 7.00 6.89 9.20 10.29

SO2+NO HCl

試験ガス条件方向 縦方向 横方向 縦方向 横方向

標準偏差 σ 0.80 1.28 1.05 3.45平均 μ 12.68 27.92 15.96 40.35

分散 σ2 0.65 1.64 1.10 11.90変動係数 CV 6.33 4.58 6.56 8.55

SO2+NO HCl

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89

図 2.2.15 引張強さにおける正規分布

図 2.2.16 引張強さにおける正規分布

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0

引張強さ [N/mm]

頻度

 [-

]

SO2+NO (縦方向)SO2+NO (横方向)

HCl (縦方向)HCl (横方向)

暴露前 横方向平均値 [40.0N/mm]

暴露前 縦方向平均値 [14.4N/mm]

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

伸び率 [%]

頻度

 [-

]

SO2+NO 縦方向

SO2+NO 横方向

HCl 縦方向

HCl 横方向

暴露前 縦方向平均値 [30.2 %]

暴露前 横方向平均値 [51.5 %]

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No.16

表題:暴露試験前試験試料

説明:表面(起毛有り)

No.17

表題:暴露試験前試験試料

説明:表面(起毛有り)

拡大

No.18

表題:暴露試験前試験試料

説明:裏面(起毛無し)

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91

No.19

表題:暴露試験前試験試料

説明:裏面(起毛無し)

拡大

No.20

表題:暴露試験後試験試料

説明:表面(起毛有り)

ガス条件 SO2+NO

No.21

表題:暴露試験後試験試料

説明:表面(起毛有り)

ガス条件 SO2+NO

拡大

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92

No.22

表題:暴露試験後試験試料

説明:裏面(起毛無し)

ガス条件 SO2+NO

No.23

表題:暴露試験後試験試料

説明:裏面(起毛無し)

ガス条件 SO2+NO

拡大

No.24

表題:暴露試験後試験試料

説明:表面(起毛有り)

ガス条件 HCl

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93

No.25

表題:暴露試験後試験試料

説明:表面(起毛有り)

ガス条件 HCl

拡大

No.26

表題:暴露試験後試験試料

説明:裏面(起毛無し)

ガス条件 HCl

No.27

表題:暴露試験後試験試料

説明:裏面(起毛無し)

ガス条件 HCl

拡大

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94

No.28

表題:暴露試験前試験試料

説明:引張試験前試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

No.29

表題:暴露試験前試験試料

説明:引張試験後試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

No.30

表題:暴露試験後試験試料

説明:引張試験前試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

ガス条件 SO2+NO

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95

No.31

表題:暴露試験前試験試料

説明:引張試験後試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

ガス条件 SO2+NO

No.32

表題:暴露試験後試験試料

説明:引張試験前試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

ガス条件 HCl

No.33

表題:暴露試験後試験試料

説明:引張試験後試料

縦方向 3 枚

横方向 3 枚

ガス条件 HCl

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(4)改善点の提案

JIS Z 8909-2 に準拠して行った本調査試験において、試験結果のバラツキが少ないこと

から、再現性が確認された。しかし、より精度を向上させるために、試験を行う中で気付

いた点(操作の改善、装置の改良など)を以下に提案する。

①ガス分析

JIS Z 8909-2 6.6「ガス分析計」とあるが、JIS Z 8909-2 6.2 の暴露試験容器は密閉系

であり、ガス分析計による分析に必要なガス量を採取するのは困難である。そこで、本

試験調査では、ガス分析に必要なガス量の少ないガス検知管による分析を行った。しか

し、ガス検知管による分析方法は簡易の方法であり、暴露試験容器内の物質収支を明ら

かにしたい場合は、ガス分析法を検討する必要がある。

②水分混合方法

JIS Z 8909-2 7.2 c) 4)に「水分を混合する場合は、試験ガス導入時に水分注入容器か

ら必要量を注入する」とあるが、試験ガスには水分に吸収され易い種類(塩化水素など)

もあり、試験ガス導入と同時に注入することは、試験ガス濃度に影響を与える可能性が

ある。この影響を避ける方法として、水分投入口を別に設けることなどが考えられる。

水分を含む試験ガスの調製手順としては、ガス交換時の減圧後まず水分投入口から水

分を必要量注入し、残りの減圧分で試験ガスを導入する順序がやり易いと判断された。

③試験装置配管

水分を混合したガスの暴露試験を行う場合、試験装置配管内が水分の露点以下である

と水分が結露し試験ガスが吸収される可能性がある。また、試験ガスを吸収した水分に

よる配管内の腐食も引き起こされる。そこで、JIS Z 8909-2 6「試験装置」図 1 の配管

について、加熱装置外の部分を水分の露点以上に加温する必要がある。

④試験試料寸法

JIS Z 8909-2 7.2 d) 2)に「暴露試験前後の試験試料を JIS Z 8908 5.2 f)(引張強さ及び

伸び率)に指定されている大きさに切り分け、JIS L 1096 に従って引張強さを測定し、

たて(MD)方向及びよこ(CD)方向それぞれ 3 個以上の引張強さ及び引張強さ保持率を求

める。試験試料の幅は JIS Z 8908 の 5.2 f)及び JIS R 3420 により、織布の場合 30mm、

不織布の場合 50mm、ガラス繊維織布の場合 25mm とする」とある。本調査試験で用

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97

いた試験試料は不織布(PPS)であり、暴露試験試料は図 2.2.6 に示した寸法で縫製し

た。図 2.2.6 の寸法の試験試料から引張強さの試験片として縦方向及び横方向に 3 本以

上ずつ試験片を採取した場合、試験片 1 本当りの幅 30mm を採取するのが限界であっ

た。そこで、JIS Z 8909-2 7.2 a) 試験試料の準備に「試験試料の種類から引張強さ測

定用試験片を考慮し、暴露試験試料の寸法を決定する」などの追記が必要である。また、

試験試料の寸法を変更した場合、必然的に試験容器の寸法も変更しなくてはならないた

め、JIS 文書内の早い段階での明記を提案する。

2.2.4 まとめ

JIS Z 8909-2「集じん用ろ布の試験方法-第 2 部:耐久性試験方法」に準拠して行った

本調査試験において、引張強さ及び伸び率の変動係数の結果より、変動係数が 10%以下

ということが確認され、試験結果のバラツキが小さく再現性が示された。

しかし、JIS Z 8909-2 は制定されて間もないため、標準規格として広く利用するため

には、今後多数の試験データの蓄積が必要となる。

そこで、今後の検討例として「暴露時間(500 時間、1000 時間)を延長した試験」「試

験ガスの種類(ガスの組合せ、濃度など)を変えた試験」「試験試料(ろ布試料)の種

類を変えた試験」などが挙げられる。

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98

第 3 章 集じん設備の標準化アンケート調査

3.1 概要

バグフィルタ集じん設備(以下、バグフィルタ設備と呼ぶ)は、高い集じん効率を持つ

設備として、環境保全用に広く使用されています。その集じん効率を更に向上させ、又

フィルタ破損等によるトラブルを減少させることが、強く求められてきました。

そこで集じん効率向上の一手段として、バグフィルタ設備内に装着する、ろ布の集じ

ん性能評価方法の標準化が進められ、JISZ8909-1「集じん用ろ布の試験方法-第1部:

集じん性能」が平成17年に公布され、またろ布の耐久性測定用のサンプリング方法及

び試験法に関する標準化は、平成19年に JISZ8910「集じん用ろ布の試験方法―ろ布耐

久性測定用のサンプリング方法および試験法」として公布された。

前記2件の JIS に引続き、ろ布寿命を事前に予知するための評価方法が検討され、

JISZ8909-2「集じん用ろ布の試験法第 2 部:耐久性試験法」と JISZ8909-3「集じん用ろ

布の試験法第 3 部:耐熱試験方法」が平成20年3月に公布される予定である。

次の段階では、バグフィルタが適正に運転されているかどうかを評価・判定する方法

の標準化や、集じん条件に対して適正な設備要件を備えているか等、バグフィルタ設備

の適正表示方法に関する標準化の必要性が考えられ、ユーザーニーズの実態を把握する

事を目的にしてこのアンケート調査を実施する事になった。

3.2 調査方法

アンケート調査は平成20年1月下旬から3月初旬にかけて、(社)日本粉体工業技術

協会の会員各社に別紙のアンケート用紙を配布し、依頼すると共に、同じく(社)日本

粉体工業技術協会の集じん分科会の会員である集塵機メーカーとろ布メーカー各社に対

してその顧客への調査をお願いした。

3.3 調査結果

アンケートに対する回答結果は 111 件であり、その回答率は、略 10%であった。

業種別内訳は、多い順にゴム・窯業:14.4%、機械:13.5%、化学:10.0%、鉄鋼金

属:12.6%、輸送機器:7.2%、繊維:3.6%、食品:2.7%、建設:2.7%、鉱業、廃棄

物処理、サービス業が夫々1.8%、電気機器、電子、パルプ・紙が夫々0.9%その他が不

明も含めて 22.5%で、幅広い業界の意見が反映されたと考えられる。

次にアンケート結果は、次の 5 項目に分けて記述する。

①「JIS の周知度」 ②「バグフィルタ設備の標準化」 ③「バグフィルタ設備の使用

実態」 ④「バグフィルタ設備の運転状況」 ⑤「バグフィルタ設備のメンテナンス」

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① JIS の周知度

集じんに関係するについて、公布済みの JIS、6 件及び今後公布予定の JIS、2 件の周

知度を聞いた結果は、JISZ8908 が 23.9%、JISZ8808 が 23.2%程度で周知度は低く、あ

まり活用されていない事が推測される。現場の技術者が活用しやすい様に、普及-意見

聴取‐改善のサイクルを回して内容の改正を進める事が強く望まれる。

表 3.3.1 JIS の周知度

JIS 内容 割合(%)

1) JISZ8908:1998 集塵用ろ布 23.9

2) JISZ8808:1995 排ガス中のダスト濃度の測定方法 23.2

3) JISZ8909-1:2005 集じんろ布の試験方-第 1 部:集じん性能 9.9

4) JISZ8909-2:2008 集じん用ろ布の試験法第 2 部:耐久性試験方法 1.4

5) JISZ8909-3:2008 集じん用ろ布の試験法第 3 部:耐熱試験方法 1.4

6) JISZ8910:2007 集じん用ろ布の試験方法-ろ布耐久性測定用のサンプ

リング方法及び試験方法 9.9

7) JISB9909:1994 集じん装置の仕様の表し方 13.4

8) JISB9910:1994 集じん装置の性能測定方法 16.9

② バグフィルター設備の標準化 バグフィルタ設備の性能表示適正化や運転の状態とか

メンテナンスの標準化の必要性に付いて表 3.3.2 に示す。表から標準化が必要無いと

いう意見はほぼ零に対して、必要性を認める意見が圧倒的に多い結果であった。必要

だとする意見の内、「設備性能の評価方法の標準化」と「メンテナンスの標準化」が 30%

台でほぼ同じ割合で「設備性能表示法の標準化」は 20%台後半であった。此れは性能

の評価方法とかメンテナンス等、実用的な標準化が望まれている事を示す。

表 3.3.3 からはバグフィルター設備の仕様決定にユーザーが積極的に関与していこう

意思が読み取れ、バグフィルタ設備性能表示標準化の必要性を感じる。

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表 3.3.2 バグフィルタ設備の標準化が必要と思われる内容

標準化の内容 回答数割合(%)

設備性能の評価方法標準化 36.0

設備性能表示法の標準化 27.4

メンテナンスの標準化 34.1

その他 1.8

標準化は必要ではない 0.6

表 3.3.3 バグフィルタ設備計画を行う場合の仕様決定方法

仕様の決め方の内容 仕様決定割合(%)

官公庁の指導による 5.9

バグフィルタメーカー任せ 17.6

自社で仕様を決める 20.2

自社・メーカー協働検討 56.3

③バグフィルタ設備の使用実態

使用されている集塵機の規模、形式と払落し方式を表 3.3.4, 表 3.3.5, 表 3.3.6

に示す。この表から集じん設備の規模は 75%近くが 100m3/min 以下で圧倒的に小型集塵

機の使用台数が多い事が解る、集じん設備の形式はバグフィルタ方式が殆どで集塵機と

いえばバグフィルタと言っても良い状況である、又払落し方式はパルスジェットが 90%以

上を占める事も解った。

バグフィルター設備を使用する目的を表 3.3.7 に示す。この表から作業環境対策が約

48.3%で約半分、次が製品回収で 22.7%、品質改善が 8.4%で、製品回収や品質改善等

の製造設備としての役割が、この2項目を合算すると 31.1%になる。残りの 20.7%が炉

の集塵など地球環境対策用と言う事になる。

集塵機に使用されるろ布の種類を表 3.3.8 に、ろ布の形状を表 3.3.9 に示す。ろ布の

材質は 90%近くが不織布という結果である、又払落し方式ではパルスジェットが 90%だ

が此れはパルスジェットに使用されるろ布は不織布という結果と符合する。フィルタ形

状は円筒が 40%強、封筒式星型等単位容積当りのろ過面積が多く取る工夫をした方式が

60%弱を占める。

以上の使用実態を纏めると、バグフィルタは集塵機の代名詞と言われるくらい普及して

いる、又払落しはパルスジェット、ろ布材質は不織布で作業環境対策と製造設備として

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の位置付けで 100m3/min 以下の小型の集塵機が 7 割を越す結果である。

表 3.3.4 現在使用している集じん設備能力

能力 台数割合(%)

0~100 ㎥/min 74.4

100~500 ㎥/min 21.5

500 ㎥/min 以上 4.1

表 3.3.5 使用中の集じん設備の種類

種類 台数割合(%)

バグフィルター 95.9

電気集塵機 1.7

湿式集塵機 1.3

その他 1.1

表 3.3.6 払落し方式別使用割合

払落し方式 台数割合(%)

機械振動式 3.9

逆洗式 4.1

パルスジェット式 92.0

表 3.3.7 バグフィルタ設備を使用する目的

使用目的 回答割合(%)

作業環境対策 48.3

地球環境対策(炉の集じん等) 20.7

製品回収 22.7

品質改善 8.4

表 3.3.8 ろ材の種類別使用台数・比率

ろ材の種類 台数 台数割合(%)

織布 392 12.3

不織布 2784 87.7

合計 3176 100.0

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102

表 3.3.9 フィルタ形状の使用台数・比率

フィルタの形状 台数 台数割合(%)

円筒

封筒

星型

1197

1641

85

41.0

56.1

2.9

合計 2923 100.0

④バグフィルタ設備の運転状態

バグフィルタ設備のろ布の圧力損失と排気に含まれる粉塵濃度を表 3.3.10 と表 3.11

に示す。アンケート調査結果で、ろ布の圧力損失はバグフィルタ設備で適正とされる

1.5KPa以下の回答が 89.9%で大多数の設備が適正に使用されている事が分かった。排

気含塵濃度は 50mg/Nm3 以下が 98%で、規制値以下に抑えられている事も分かった。但

しバグフィルターにおいて 50 mg/Nm3 以上で使用されている設備が 2%ありバグフィル

タ設備では異常値といえる。 バグフィルタ設備の運転状態の点検及び記録の実態調査

の結果を表 3.3.12 に示す。局所排気装置の運転状態の記録と記録の保管義務は「局所排

気装置定期自主検査指針」に定められているが実行率は 50%前後で設備の運転状態は充

分管理されているとは云えない。

以上を纏めるとバグフィルター設備のろ布の圧力損失や排気含塵濃度等の運転状態は

大多数の設備では適正に運転されているという調査結果だったが半面運転記録の実行率

は 50%前後の結果であった。

表 3.3.10 バグフィルタ設備の運転圧力損失割合

運転圧力 台数 台数割合(%)

1kPa 以下(100mmH20 以下) 2423 74.5

1~1.5kPa(100~150mmH20) 500 15.4

1.5~2kPa(150~200mmH20) 242 7.4

2kPa 以上(200mmH20 以上) 87 2.7

合計 3252 100.0

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表 3.3.11 バグフィルタ設備の排気含塵濃度

排気含塵濃度 台数 台数割合(%)

10mg/Nm3 以下 2357 83.0

10~30mg/Nm3 125 4.4

30~50mg/Nm3 301 10.6

50mg/Nm3 以上 56 2.0

合計 2839 100.0

表 3.3.12 運転状態の記録

運転状況 毎日記録(%) 毎月記録(%) 年 1回以上記録(%)

フィルタ圧力損失 46.2 38.5 15.4

排気含塵濃度 22.6 11.3 66.0

ファン電流値 48.4 29.7 21.9

吸引ガス量 33.3 13.3 53.3

その他 25.0 50.0 25.0

⑤バグフィルタ設備のメンテナンス

メンテナンスが必要と成るバグフィルタ設備のトラブルの調査結果を表 3.3.13 示す。

調査結果ではトラブル発生の上位は、「フィルタの破損等」と「排気粉塵漏れ」で 35.7%

次に「フィルタの目詰まり」が 28.6%その次に払落し装置やダスト排出装置等機器の故

障等があり次いで設備の腐食・磨耗関係と続く。

メンテナンスで最も重要と思われるろ布の交換に付いて、表 3.3.14 に、ろ布の交換理

由を、表 3.3.15 に、ろ布寿命の妥当性に付いて示し、表 3.3.16 には、ろ布の交換方法

の調査結果を掲載する。ろ布の交換理由(寿命の原因)は、目詰まり、粉じん漏れ、破

損の順でトラブルの調査結果と一致する、ろ布の寿命の妥当性は、1年以上と答えた割

合は約 14.4%、2年以上が約 23.7%、3年以上が約 40.2%で多くの人が3年以上を希

望している。ろ布の交換方法は 70%を越える人が集塵機1台分を同時に交換すると答え

ていて、分割交換すると交換したろ布を著しく傷める(目詰まりさせる)事が理解され

ている事がわかる。

次にメンテナンス期間の調査結果を表 3.3.17 に、メンテナンス担当部署の調査結果を

表 3.3.18 にメンテナンスの費用に対する考え方を表 3.3.19 に示す。メンテナンス期間

の調査では定期メンテナンスという考え方は未定着のようである、メンテナンスの実施

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部署は、社内が 50%を越えていて、費用的な面ではイニシャルコストよりもランニング

やメンテナンス費用を重視する意見が大多数で 69.5%の結果であった。

しかしバグフィルタ設備に希望する項目を纏めた表 3.3.20 では「吸引性能の安定性」

「排気濃度の清浄度」が上位にランクされ次が「イニシャルコスト」その次に「ランニング

コスト」で表 3.3.19 の結果と逆転している。メンテナンスを重視したいが現実的にはイ

ニシャルコストを優先せざるをを得ないと言う事のようである。

表 3.3.13 バグフィルタ設備のトラブル

トラブル よく起きる割合(%) たまに起きる割合(%)

フィルターの破損等 21.4 21.2

払落し装置の故障 9.5 13.6

ダスト排出装置関係 14.3 10.4

フィルターの目詰まり 28.6 19.6

排気粉塵漏れ 14.3 12.0

ファンに関するもの 2.4 4.8

腐食・磨耗関係 9.5 8.0

火災 0.0 2.4

雨洩れ・結露関係 0 6.0

付属装置 0 2.0

表 3.3.14 フィルタ交換理由

交換理由 順位

目詰まり 1

粉じん漏れ 2

破損(磨耗) 3

破損(温度、化学変化で強度劣化) 4

一定期間毎に交換している 5

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表 3.3.15 フィルタ 寿命の妥当性

寿命 回答数割合(%)

1 年以上 14.4

2 年以上 23.7

3 年以上 40.2

5 年以上 21.6

表 3.3.16 ろ布の交換方法

交換方法 割合(%)

集じん機 1 台につき一度に交換 70.6

集じん機 1台を何回かにわけて交換 14.7

破損したフィルターだけ交換 14.7

表 3.3.17 メンテナンスの期間

メンテナンス期間 割合(%)

定期的に実施 42.5

必要に応じて実施 57.5

表 3.3.18 メンテナンス部署

メンテナンス部署 割合(%)

社内でメンテナンスを実施 53.6

メンテナンス会社に委託 33.6

特に決めてない 12.7

表 3.3.19 バグフィルタ設備のメンテナンス費用

メンテナンス費用 割合(%)

イニシャルが大きくてもメンテナンス費用が少ない 69.5

メンテナンス費用よりもイニシャルコストが少ない 30.5

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表 3.3.20 バグフィルタ設備に希望する項目

希望する項目 順位

吸引性能の安定性 1

排気濃度の清浄度 2

イニシャルコスト 3

ランニングコスト 4

大きさ(省スペース) 5

3.4 まとめ

アンケート調査結果を纏めると、バグフィルタは集じん設備として広く普及している。

その規模は 100m3/min以下の小型集塵機が多く、不織布のろ材を使い、払落しは高性能

と言われているパルスジェット式が主流でろ材の圧力損失や排気含塵濃度に関心を持っ

ているが、保守点検等に手が廻らないのが実態のようある。

設備運用上はランニングコストやメンテナンスコストを重視したいがイニシャルコス

トの重圧が強く合理的な視点での設備計画が難しいようである。ユーザーとしては設備計

画初期から設備設置後の維持管理まで幅広い分野の知識やノウハウの標準化を望んでい

るように感じる。以上のような理由で「設備性能表示法の標準化」「設備性能の評価方法の

標準化」「メンテナンスの標準化」等が必要という事のようだ。

しかし既存の集塵機や、ろ布に関するJISに対する関心は低く、今後JISを企画す

る場合、実用性を重視し、ハンドブック的な活用し易い構成が強く望まれるという事と実

際に広く使用されている小型の集塵機等に対象を絞り、現実に即した標準化を企画する必

要性を感じる。

おわりに、アンケートにご回答を頂いた集塵機を御使用頂いている皆様と、調査にご協

力頂いた集塵機並びにフィルタメーカーの皆様に、この場をお借りして感謝申し上げると

ともに、引続き今後の集じん設備標準化活動に対するご支援をお願いいたします。

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107

第 4 章 粒子径分布測定法の標準化法の検討

4.1 粒子径分布測定法の標準化の意義

粒子径分布測定法を標準化することは多くの分野に有用であるがここでは以下の 2 点に注

目して検討する。

(1) 健康影響を配慮した粒子径別環境基準への対応

(2) ろ布の設計への粒子径分布情報の利用

以下、それぞれについて説明する。

4.1.1 健康影響を配慮した粒子径別環境基準への対応

微粒子物質のうち、粒子径の小さいものは大気中に長期にわたり滞留して遠方まで拡散

し、人体の気管支、肺胞部まで侵入することが知られている。またそれらの粒子は重金属

等の有害物質の含有率が高く、呼吸器系疾患の原因物質になる可能性が指摘されている 1)。

粒子径と健康影響の関係についての研究が精力的に進められており、特に粒子径 2.5μm 以

下の粒子(PM2.5)及び 10μm 以下の粒子(PM10)の健康影響に関する知見が多く得られて

いる。その結果 1995 年に PM10 及び PM2.5 の定義に関する ISO7708 2)が制定された。

ただ、粒子径分布と健康影響の関係の根拠はいまだ明確になっておらず、更に小さな粒子

径、例えば粒子径 1μm 以下の粒子(PM1)やナノオーダーの粒子径の物質の健康影響も

報告されている。2008 年 2 月には厚生労働省労働基準局長から「ナノマテリアル製造・

取扱い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について」というナノオー

ダーの粒子径の粒子の健康影響に対する注意を喚起する文書が発行されている 3)。今後も

粒子径分布と健康影響に関する調査が進むことが期待されており、その結果、将来的に工

場等の固定発生源からの粉塵について、粒子径を考慮した排出基準が制定される可能性も

あり、動向に注目する必要がある。

4.1.2 ろ布の設計への粒子径分布情報の利用

捕集対象となる粒子の粒子径分布に関する情報は、より高性能なろ布を設計する際に有用

である。高性能なろ布とは、粒子を捕集する能力が高いもの、低い圧力損失で運転できる

もの、洗浄再生する頻度がより少なくて済むもの、粒子が目詰まりしにくいもの、機械的

強度が高いものなどが挙げられ、それぞれ捕集対象となる粒子径の違いを含む種々の条件

に応じたろ布設計によって実現される。ろ布の濾過機構は深層濾過、表面濾過、ケーク濾

過に大別され、ろ布の構造や粉塵が堆積した程度によってそれらが単独、或いは複合的に

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108

作用する。また例えば深層濾過は単一繊維による捕集モデルで説明されることが多く、拡

散、さえぎり、慣性衝突、重力沈降、静電気力というそれぞれ異なる機構があり、それぞ

れ粒子径に応じて寄与する程度が異なることが知られている。更に粒子径が大きくなると

繊維表面での粒子、或いは粒子間の反発が発生し粒子が再放出されるというケースも加わ

り、非常に複雑な現象が起こっていると考えられる。

それらの現象を考慮して、圧力損失や粒子の捕集効率については数多くの研究がなされ、

理論及び実験測定値に基づく種々のモデル及び性能推定式が報告されており 4) 、その多く

が粒子径をパラメーターに含んでいるため利用する際には粒子径の情報が必要となること

が多い。その他、粒子径の違いによって粒子とろ布に使用される材料表面との間の摩擦の

程度が異なることが予想され、耐久力を調査した報告においても実使用時の粒子径を想定

した粒子径の粒子を実験に用いている例 5)がある。

4.2 評価法の国際規格化の動向

ディーゼル車などの移動発生源と共に、工場、発電所、廃棄物焼却場などの固定発生源に

おける PM10 や PM2.5 の分離及び測定法に関する ISO 策定の動きがある 1)。測定に用い

る測定装置としてはカスケードインパクタ、サイクロン、バーチャルインパクタが検討の

対象となっている。それらの測定装置については4.3.4章の測定機器の項目で詳細を

述べる。

また、ろ布の集じん性能の評価法として日本では JIS Z 8909-1 「集じん用ろ布の試験方

法-第1部:集じん性能」を制定している 6)が、他国においても同様の規格としてドイツ

では VDI 3926 7)、米国では ASTM D6380-02 8)、中国では GB 12625 9)がそれぞれ制定さ

れている。その中で ASTM 規格以外では出口ダスト濃度は粒子径に関係なく、単位風量あ

たりの重量の測定値になっているが、ASTM のみは PM2.5 を測定することが規格中に含

まれている。現在、ISO TC 146/SC 1/WG 23 では、日本が Secretariat として参加してろ

布の集じん性能の評価法に関する ISO の策定を進めているが、ASTM 規格の様に粒径に関

する測定項目が含まれるかどうかが注目される。

4.3 粒子径分布測定法の標準化における検討項目

粒子径分布測定法の標準化の際には、少なくとも以下の5つの項目について検討を行う

必要があると考えられる。

① 測定粒子

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109

② 粒子径の種類

③ サンプリング方法

④ 測定機器及び測定法

⑤ データ解析

以下、それぞれについて説明する。

4.3.1 測定粒子

粒子径分布を測定する対象となる粒子は、以下の 3 種の発生源からサンプリングするもの

である。

(1) 運転中の集じん機器の流通空気中からサンプリングした粒子

(2) 粉塵発生源から直接サンプリングした粒子

(3) 使用済みのバグフィルタから払い落とすことによりサンプリングした粒子

それぞれ入手することが出来るか否か、また必要な情報は何かということなどに応じて選

定される。環境基準及びろ布の設計に関する直接的な情報が得られるのは(1)であるが、他

の(2)、(3)からも間接的な情報を得ることが出来る。

4.3.2 粒子径の種類

固体の粒子は一般的に複雑な形状をしており、そのサイズを表す粒子径は定義及び測定方

法によって異なる。例えば光学顕微鏡等で直接粒子を観察し算出する幾何学的粒子径、粒

子の沈降等の力学的性質に基づく相当粒子径、光などの散乱に基づく相対粒子径などがあ

る。 PM10 や PM2.5 の定義に用いられているのは力学的性質に基づく相当粒子径の一種

である空気力学径である。測定機器に応じて得られる粒子径の種類は異なり、それについ

ては4.3.4章の測定機器の項目で詳細を述べる。

4.3.3 サンプリング方法

粒子のサンプリングを行う際に最も重要なことは、測定対象である粒子を吸引してから測

定機器の計測箇所まで輸送するまでの間の粒子のロスを最小限に抑制し、実際の粒子径分

布に近い値を測定するということである。

(1)吸引

4.3.1章の測定粒子の項目で述べている、運転中の集じん機器の流通空気中から粒子

のサンプリングを行う際には等速サンプリングを行うことが必要である。等速サンプリン

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110

グは吸引口を流れに平行な方向に配置し、その吸引口のサイズと吸引流量を調整すること

によりサンプリングの対象となる流体の速度と等しい速度で吸引することで実現する。等

速サンプリングを行わないと、余計な粒子を吸引したり、粒子が慣性衝突により失われた

りして実際の対象流体の粒子径分布を反映しない結果となる。また、吸引口の先端に鋭利

なテーパーを付けるなどして吸引口付近に流路の乱れが発生することを抑制するなど、測

定誤差を低減する努力が必要となる。

(2)輸送

吸引した後、測定機器の測定箇所まで粒子を輸送する際にも粒子をロスしないことが重要

である。粒子径がサブミクロンの範囲では拡散による粒子の管壁への付着、10μm 以上で

は管底への粒子の沈降によるロスの可能性が大きくなるのでそれらを抑制するには配管長

をなるべく小さくし、不要な屈曲部を使用しないことが重要になる。特に拡散によるロス

を低減するためにはより帯電しにくい材質の配管を選ぶことも効果がある。

(3)その他

粒子径分布の誤差を低減し、精度が高い値を得るために十分な量の粒子を得るためには適

切なサンプリング時間を設定する必要がある。また、使用済みのろ布から払い落とすこと

によりサンプリングした粒子を測定する場合は、ロスを少なくなるべく多くの量の粒子を

サンプリングする適切な方法(振動付与、水等による洗浄など)を設定する必要がある。

4.3.4 測定機器

全ての範囲の粒子径を精度良く測定可能な絶対的な測定機器はなく、状況に応じた最適な

ものを選定する必要がある。測定機器の選定のポイントとしては粒子径の種類、粒子径の

範囲、測定する粒子の濃度、期待出来る測定値の精度、オンラインで測定可能かどうか、

得られる粒子径分布の情報が個数か重量か、測定に要する時間、機器の費用、測定が簡便

かどうかなどが挙げられる。次ページの表4.3.4.1 10)に種々の粒子径分布測定法を

示す。表中にはそれぞれの測定法について測定可能な粒径の範囲、備考(測定原理)、代表

径(粒子径の種類)、分布基準(粒子径分布の情報が個数か質量か)、試料の状態(乾燥状

態か湿潤状態か)が示されている。以下、この表に記載されている測定機器についてそれ

ぞれ特徴を述べる。

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111

表 4.3.1 種々の粒子径分布測定法 10)

(1)顕微鏡

光学顕微鏡、電子顕微鏡の使い分けを行うことにより、広い範囲の粒子径を測定すること

が出来る。ただ数多くの粒子の映像から粒子径分布を知るためには画像処理を実施する必

要がある。オフラインでの測定となる。

(2)ふるい

標準ふるいについては 20μm まで、特殊ふるいで有れば 3μm まで測定可能である。オフ

ラインでの測定となる。

(3)沈降法

重力沈降法によって測定可能な範囲は約 1~100μm であり、それ以下の粒径ではブラウン

拡散による影響があるので遠心沈降法を用いることで約 0.02~10μm の範囲での測定が可

能になる。しかしある程度の熟練を要す操作であり、方法によっては長時間の測定時間を

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112

要する。

(4)カスケードインパクタ 11)

空気中に浮遊する粒子を捕集する最もポピュラーな方法である。粒子の慣性による気流流

線からのずれを利用して粒子を分級する手段で加速ノズルと捕集板を順次カット径が小さ

くなるように多段に組み合わせている。空気力学径が得られる。減圧下で用いれば下限

0.02μm 程度まで測定が可能である。 捕集板を用いないで分離後の粒子をフィルタに捕

集するものがバーチャルインパクタである。オンラインでの測定となる。

(5)サイクロン 11)

カスケードインパクタと同様に空気力学径を測定することが出来る。カット径の理論が体

系立てられておらず設計が難しいが、正しく設計すればインパクタより多量のサンプルを

採取することが出来る。オンラインでの測定となる。

(6)光散乱 12), 13)

OPC(Optical Particle Counter)とも呼ばれる。散乱光の強度の測定値から粒子径を逆算

する。測定下限は通常は 0.3μm 程度までだが、光源として高出力のレーザー光を用いるこ

とによって 0.1μm 以下になる。オンラインの測定となる。従来からクリーンルームの粒子

の計数に用いられている 14)など装置が普及している。装置価格は比較的安価である。

(7)レーザー光回折

普及している日機装株式会社の商品の商標名から、国内では「マイクロトラック法」とも

呼ばれる。粒子に光を照射した時、各粒子径により散乱される散乱光量とパターンが異な

ることを利用している。通常オフラインで測定される。短時間で簡便に測定出来るため普

及している。

(8)遮光法

微小な測定空間に入ってきた 1 個の粒子による透過光量の減少から投影断面積を求めよう

とするもの。高濃度だと複数の小粒子を同時にカウントし、1 個の大粒子と判断してしま

うという問題が生じる場合がある。

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(9)コールターカウンタ

電気的検知帯法とも呼ばれ、1%食塩水などの電解液に懸濁・分散させた粒子を小孔に通し

て吸引し、その際生じる小孔両端間の電気抵抗の変化から粒子径を算出する。

(10)モビリティアナライザ 15)

気体中の粒子を電気移動度の差によって静電分級する。積分型(EAA: Electrical Aerosol

Analyzer)、微分型(DMA: Differential Mobility Analyser)とがあるが、測定精度がよ

り高いのは微分型である。精度を向上する工夫を行うことにより、ナノオーダーの粒子径

を分級することが可能になっている。通常、前段に設置した荷電中和器で粒子の電荷を中

和し、後段に設置した核凝縮粒子計(CPC:Condensation Particle Counter)と呼ばれる装

置などによって個数をカウントする。一連の装置をシステム化したものが SMPS:

Scanning Mobility Particle Analyser などの商品名で販売されている。オンラインでの

測定となる。

(11)拡散法(光子相関法、拡散バッテリー、FFF: Field Flow Fractionation、HDC:

Hydrodynamic Chromatography )

拡散バッテリー法のみオンラインで測定が可能。比較的高い精度で気体中の粒子を測定す

ることが可能である。

(12)その他

粒子の飛行時間を測定する APS(Aerodynamic Particle Sizer)を用いて空気力学径の粒

子径別の粒子数を測定することが出来る。

4.3.5 データ解析

粒子径分布は、平均径と大きさのばらつきの度合いを示す種々の統計値で表される。その

定義には粒子の個数を基準とした CMD(個数中央径)、重量を基準とした MMD(質量中

央径)が用いられ、とくに空気力学径についての重量中央径には MMAD(空気力学的質

量中央径)が用いられる。

4.4 まとめ

粒子径の情報を得ることは今後制定される可能性がある粒子径別の環境基準への対応及び

高性能なろ布設計の実施のために非常に重要である。ただ、標準化に際して検討、制定す

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べき点は非常に多く、また環境影響の大きい粒子の粒子径や測定機器等に関して ISO 化や

JIS 化等の規格制定が進行中であるので、それらの動向を注視する必要がある。

第 5 章 本調査研究のまとめ

5.1 本調査研究の位置づけ

固定発生源からの粉じん対策に集じん機の効用は広くみとめられており、バグフィルタ

集じん設備は多くの産業分野で使われている。しかしその構成要素であるフィルタ材の標

準的な性能評価方法がなく不都合があったので、1999 年を初年度として NEDO の開発事

業としてフィルタ性能評価方法の開発をはじめた。

2002 年度から (社)日本粉体工業技術協会内に委員会を設置し、2004 年度まで3年間継

続した。この委員会には国内の集じん関係の会社や団体 35 社が集まり、ワーキンググル

ープ活動を行った。その成果であるフィルタ材の集じん性能評価法は、2005 年に JIS 制

定を果たした。並行して進めていた ISO 作成活動も推進された。次いで 2005 年度から開

始した第2次委員会には 30 社が参画して、フィルタ材の寿命評価に関係する耐久性能評

価法の標準化活動を始めた。委員会活動では活発な活動が展開された。金沢大学、(独)産

業技術総合研究所、(社)全国都市清掃会議を始め関係する研究機関の協働が行われた。そ

の成果は次の4種の JIS が制定された。

①JISZ8908-1:2005 集じん用ろ布の試験方法-集じん性能

②JISZ8908-2:2008 集じん用ろ布の試験方法-耐久性試験方法

③JISZ8908-3:2008 集じん用ろ布の試験方法-耐熱性試験方法

④JISZ8910:2007 集じん用ろ布の試験方法‐ろ布耐久性測定用のサンプリング及び試験

方法

バグフィルタ設備などについての標準化は、過去の一時期に進捗したあと滞っていたが、

再度フィルタ材料面から、その性能評価方法の標準化を進めた事になる。

JIS は活用されてこそ値打ちが出るものである。そのためには業界関係者に周知し、現

場で使ってもらい、もし不都合があれば見直しをして改善を進める必要がある。平成19

年度は、上記の JIS に対するアフタフォローとして複数の試験機関でランドロビンテスト

をし、試験方法の信頼性やデータの再現性試験を行った。また関連業界にアンケート調査

を行い、フィルタ材に続いて業界が要望する集じん設備に関する標準化課題の抽出を行っ

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ている。同時に集じん設備の集じん性能評価には欠かせないのが粒度分布測定結果の情報

である。粒度分布測定法の標準化に関する検討も行ってみた。これらの一連の調査活動に

より今後の集じん機業界で必要とされる改善項目を絞り込みその標準化を進める足がかり

となれば幸いである。

一方では、前記の JIS を国際標準化する活動を進めており、①については、日本が作業

チームを編成し、ISO/TC146 に新規作業項目を提案して採択されたので関係国と共に ISO

原案つくりを詰めている。現在は軌道に乗り 2011.10 の ISO 発行に向けて努力している。

また他の②から④の3件の新規 JIS に関する ISO 提案の準備を始めている。

協会における活動で、会員に共通する関心事のひとつに標準化活動がある。新しい工業

標準を作るためには、先立つものとして活動予算や人材の確保が重要であることは論を待

たない。業界のニーズを的確に把握して、それにあわせた標準化を進め、成果を残すため

には相当なる準備と覚悟が必要である。今後の協会の活動に期待したい。

5.2 本調査研究で明らかになった事項

今回の試験結果から、次の 4 項目に関する調査研究を行ったので順次、その結果をま

とめる。

(1)集じん性試験方法の JIS、(2)フィルタ耐久性能試験方法の JIS、(3)アンケート調査、

(4)粒子径分布測定法

(1)JIS Z8909-1:2005「集じん性能」に於ける信頼性確認試験

パルスジェット型集じん機の性能の良し悪しを判断は、①低圧損で運転できる、②吹き

洩れが少ない、③耐久性が大である 以上の 3 項目に集約される。集じん機を低圧損で

運転できればラニングコストの低減が出来、また吹き洩れが少なければ集じん機として

の本来の機能を満足することができる。さらに耐久性が良ければ、バグフィルタの交換

年数が長くなりメンテナンス及びランニングコストにも良い影響がでる。しかしこの 3

項目の中で、試験装置で評価を行うことができるのは、①及び②である。

そこで、実験室レベルの試験用に JIS Z8909-1:2005「集じんろ布の試験方法-第 1 部:

集じん性能」が制定された。この試験法には、測定結果に大きな影響を及ぼす測定条件

や測定器を構成する部品や計測器等を多く含む。試験機台間の有意差、測定データのば

らつきの要因を絞り込むことが難しい。

しかし、技術者にとり JIS の信頼性を確認することは非常に重要であるため、以下の試

験を行った結果を報告する。

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116

①ランドロビン試験: 石川工業高等専門学校と㈱衛生研究所に設置してい JISZ8909-1

に準拠した試験設備を使い両者のランドロビン試験をした。

その結果は、最終集じん性能試験結果を用いて判定し、30 回目のサイクル時間及び残

留圧力損失値から評価した結果、両試験機間の測定データに差が有ると判断された。

(サイクル時間について両試験機間の測定データに有意差は無かったがこれは参考

情報とした)

②試験室内環境の差の影響: 3 種の試験を行った結果、そのうちの 2 種の試験結果か

ら異なる試験機間で残留圧力損失値に有意差がなく、他の 1 種の試験結果では残留

圧力損失値に有意差ありの判定結果が得られた。 当初試験室内の湿度の差が大きな

要因と考えられていたが、これらの結果から、湿度以外の要因があると推定された。

③ダイアフラム弁の相違による影響:今回の使用した 2 種の試験機のダイアフラム弁

はドイツ製及び国内製であった。同一湿度条件(低湿度)による比較結果は、残留圧力

損失に有意差が無い。残留圧力損失で評価すると全ての条件で優位差が無いと判定さ

れる。この結果によってラウンドロビン試験結果を考慮すると、それ以外に要因があ

ると考えられる。

④)パルスエア量測定の影響:ドイツ製及び国内製では、通電時間を同一に設定しても

実際に流れるパルスエア量に差が確認された。また、国内製では 2 試験機関で同じ

通電時間であっても弁が開放している時間に差があったが、ストップバルブが開放の

時(フィルター試験の状態)では、計算上パルスエア量は一致した。両者を比較すると、

ドイツ製のパルスエア量は国内製に比べて多い。

【注】フィルターに付着している粉体の払落し作用力は、①パルス圧力、②パルスエア量、③パル

スエア噴射時間が影響すると考えられる。①~③でどの項目が一番影響するかは定かではないが、

今回の試験結果から石川高専のデータはサイクル時間が衛生研のそれより長い。また今回の判定

基準はデータの有意差判定の CV 値は 10%としているが、平均値から見ると衛生研の残留圧力損

失が高く、石川高専は若干低い。このような傾向はエア量、吸引空気量、粉じん供給量に影響し

ている可能性があると推定する。

(2) JIS Z 8909-2「耐久性試験方法における信頼性確認試験

都市ごみ焼却施設等で使用される乾式ろ過集じん機のフィルタは、処理ガスの性状

に対応する各種製品が市販されており、その選定において、集じん性能及び耐久性

の評価は重要な判断要素である。従来、これらの性能評価は、製造者または使用者

によって独自の試験が実施されてきた。しかし、製品間の相対的比較が困難等の理

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117

由から、平成 20 年3月に JIS Z 8909-2「集じん用ろ布の試験方法-第 2 部:耐久性

試験方法」が制定された。

①当 JIS の操作における暴露試験容器内試験ガス濃度は、試験開始直後急激な減衰

を示すが、以降は 30~10ppm/hr の速度で減衰することが確認された。以上のこ

とより、試験試料への一定濃度での腐食ガス暴露において、ガス交換のタイミン

グは、12 時間暴露までは 3 時間ごと、次の 100 時間暴露までは 12 時間ごと、以

降は 24 時間ごととする JIS の内容が妥当であることを確認した。但し、本試験

調査では、ガス濃度測定として簡易法のガス検知管による測定を行っているため、

試験容器内の物質収支を厳密に行う場合は、ガス濃度測定方法による検討が必要

である。

②暴露試料の引張強さ測定結果に関するデータのばらつき程度を調べるた結果、全

ての条件(試験ガス条件、方向)で測定データの変動係数 CV 値は 10%を下回る

ことが確認された。このことより、繰り返し試験操作をした場合の測定データ、

引張強さ値のバラツキは小さいと考えられる。

同じく伸び率についても、全ての条件で 10%を下回るか、およそ 10%の結果が得

られた。このことより、伸び率についても当 JIS による繰り返し試験操作した場

合のバラツキは小さいと考えられる。

(3) 集じん設備の標準化アンケート調査

バグフィルタ設備が適正に運転されているかどうかを評価・判定する方法の標

準化や、集じん条件に対して適正な設備要件を備えているか等、バグフィルタ設

備の適正表示方法に関する標準化の必要性が考えられ、ユーザーニーズの実態を

把握する事を目的にしてこのアンケート調査を実施した。

アンケート調査結果を纏めると、①バグフィルタは集じん設備として広く普及し

ている。②その規模は 100m3/min以下の小型集塵機が多く、③不織布のろ材を

使い、④払落しは高性能と言われているパルスジェット式が主流で、⑤ろ材の圧

力損失や排気含塵濃度に関心を持っている、⑥保守点検等に手が廻らない―以上

が実態のようある。

設備運用上はランニングコストやメンテナンスコストを重視したいが、イニシ

ャルコストの重圧が強く合理的な視点での設備計画が難しい。ユーザーとしては

設備計画初期から設備設置後の維持管理まで幅広い分野の知識やノウハウの標準

化を望んでいる。以上のような理由で「設備性能表示法の標準化」「設備性能の評価

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118

方法の標準化」「メンテナンスの標準化」等が必要という事のようだ。

しかし既存の集じん機や、ろ布に関するJISに対する関心は低く、今後JIS

を企画する場合、より実用性を重視し、ハンドブック的な活用し易い構成が強く

望まれるという事、実際に広く使用されている小型の集塵機等に対象を絞り現実

に即した標準化を企画する必要性を感じた。

(4) 粒子径分布測定法の標準化法の検討

健康影響を配慮した粒子径別環境基準への対応、ろ布の設計への粒子径分布情報の

利用などの観点から、主として文献調査を通じて粒子径分布測定を標準化を検討し

た。 粒子径分布測定法の標準化に当たり検討すべき項目を、測定粒子のサンプリ

ング方法、測定機器などから調査した結果、粒子径の情報を得ることは今後制定さ

れる可能性がある粒子径別の環境基準への対応及び高性能なろ布設計の実施のため

に非常に重要である。ただ、標準化に際して検討、制定すべき点は非常に多く、ま

た環境影響の大きい粒子の粒子径や測定機器等に関して ISO 化や JIS 化等の規格制

定が進行中であるので、それらの動向を注視する必要があるとの見解を得た。

5.3 今後の課題

(1) JISZ8909-1 に関して

1)ダイアフラム弁の構造(今回はドイツ製と国産製では大きく異なっていた)

2)エア噴射速度(タンク内圧力の下降速度)(ダイアフラム弁の Cv値に依存)

フィルターに対しての衝撃はエア量だけでなく噴射速度(フィルター通過速度)に影

響すると考えられる。

3)ダイアフラム弁を制御するリレーの作動精度

リレーの作動はダイアフラム弁と同様にソレノイドに通電と同時にアクチュエー

タを作動して接点を作動させる。このとき、アクチュエータの作動時間がダイアフ

ラム弁作動時間に大きく影響する。

4)エア供給側のエア供給速度(エアレギュレータの精度・大きさ等)

レギュレータは供給エア圧力を一定に保つ役割がある。また、レギュレータの大き

さ(配管径も含む)によって圧力タンクにエアを供給する速度が決定する。さらにコ

ンプレッサのタンク容量も影響する。

5)圧力タンク容量

圧力タンクの容量だけでなく圧力タンクに接続する配管にも注意する。

6)ダイアフラム弁の管理

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119

エージング処理試験では 1 回の試験で 5000 回の作動が繰り返されるため、使用し

ている弁、バネの状態を管理する必要がある。(応答速度に影響する)

②湿度の管理

試験室内をできる限り一定条件に保つ。また、粉体の分散にコンプレッサエアを使

用する場合は吸引空気の湿度は低湿度になる可能性があるが、粉体供給器側の湿度

も管理する必要がある。

(2) JISZ8909-2 に関して

JIS Z 8909-2 に準拠して行った本調査試験において、試験結果のバラツキが少ない

ことから、再現性が確認された。しかし、より精度を向上させるために、試験を行う

中で気付いた点(操作の改善、装置の改良など)を以下に提案する。

①ガス分析

JIS Z 8909-2 6.6「ガス分析計」とあるが、JIS Z 8909-2 6.2 の暴露試験容器は密閉

系であり、ガス分析計による分析に必要なガス量を採取するのは困難である。そこ

で、本試験調査では、ガス分析に必要なガス量の少ないガス検知管による分析を行

った。しかし、ガス検知管による分析方法は簡易の方法であり、暴露試験容器内の

物質収支を明らかにしたい場合は、ガス分析法を検討する必要がある。

②水分混合方法

JIS Z 8909-2 7.2 c) 4)に「水分を混合する場合は、試験ガス導入時に水分注入容器

から必要量を注入する」とあるが、試験ガスには水分に吸収され易い種類(塩化水

素など)もあり、試験ガス導入と同時に注入することは、試験ガス濃度に影響を与

える可能性がある。この影響を避ける方法として、水分投入口を別に設けることな

どが考えられる。

水分を含む試験ガスの調製手順としては、ガス交換時の減圧後まず水分投入口から

水分を必要量注入し、残りの減圧分で試験ガスを導入する順序がやり易いと判断さ

れた。

③試験装置配管

水分を混合したガスの暴露試験を行う場合、試験装置配管内が水分の露点以下であ

ると水分が結露し試験ガスが吸収される可能性がある。また、試験ガスを吸収した

水分による配管内の腐食も引き起こされる。そこで、JIS Z 8909-2 6「試験装置」

図 1 の配管について、加熱装置外の部分を水分の露点以上に加温する必要がある。

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120

④試験試料寸法

JIS Z 8909-2 7.2 d) 2)に「暴露試験前後の試験試料を JIS Z 8908 5.2 f)(引張強さ及

び伸び率)に指定されている大きさに切り分け、JIS L 1096 に従って引張強さを測定

し、たて(MD)方向及びよこ(CD)方向それぞれ 3 個以上の引張強さ及び引張強さ保持

率を求める。試験試料の幅は JIS Z 8908 の 5.2 f)及び JIS R 3420 により、織布の場

合 30mm、不織布の場合 50mm、ガラス繊維織布の場合 25mm とする」とある。本

調査試験で用いた試験試料は不織布(PPS)であり、暴露試験試料は図 2.2.6 に示し

た寸法で縫製した。図 2.2.6 の寸法の試験試料から引張強さの試験片として縦方向及

び横方向に 3 本以上ずつ試験片を採取した場合、試験片 1 本当りの幅 30mm を採取

するのが限界であった。そこで、JIS Z 8909-2 7.2 a) 試験試料の準備に「試験試料

の種類から引張強さ測定用試験片を考慮し、暴露試験試料の寸法を決定する」などの

追記が必要である。また、試験試料の寸法を変更した場合、必然的に試験容器の寸法

も変更しなくてはならないため、JIS 文書内の早い段階での明記を提案する。

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における当面のばく露防止のための予防的対応について」

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グフィルタの寿命予知”, 計測自動制御学会産業論文集, Vol. 5, No. 6, pp.35-42 (2006)

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evaluation of cleanable filter media

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121

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9) GB 12625: 1990, “Technical requirements of fabric and bag for bag filter”

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12) A. ; Umhauer, H. ; Kasper, G., Schiel, W.“Online Particle Size An

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(US) (2002)

13) Calibration on an optical particle counter to provide PM2.5 mass for well-defined

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325-332 (2007)

14) ISO 14464-1, “Cleanrooms and associated controlled environments-Part 1:

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15) 桜井 博 , 佐藤 佳宏 , 榎原 研正 : 凝縮式粒子計数器 (CPC) の検出効率の校正と微

分型移動度分級器 (DMA) の分級特性の評価 , エアロゾル研究, 22, 310-316 (2007)

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非 売 品

禁無断転載

平 成 19 年 度

環境保全用バグフィルタ集じん設備及び

関係する課題の標準化報告書

発 行 平成 20 年 3 月

発行者 社団法人 日本機械工業連合会

〒105-0011

東京都港区芝公園三丁目 5 番 8 号

電話 03-3434-5384

社団法人日本粉体工業技術協会

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東京都文京区本郷 2-26-11 種苗会館 5 階

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