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非服薬群(血圧・血糖・脂質薬)における月当たりの平均労働時間と健康指標との関係を
みると、労働時間が長くなると、BMI、ALT、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪が基準値以上とな
るオッズ比が高くなる傾向がみられた(第 3-1-2 図)。
第3-1-2図 非服薬群における月当たりの平均労働時間と健康指標との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期から健康診断までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.健康指標として、BMI、ALT、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪の5つを例示した。 3.グラフ中の垂直方向の直線は 95%信頼区間を示している。 4.統計的に有意なオッズ比には点の模様を付している。
(1)職域コホート研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、過労死等の発生の実態解明を進めるため、どの
ような要因が過労死等のリスク要因として影響が強いのかを調査することを目的に、共同研
究機関である従業員支援プログラム提供機関の顧客企業のうち、本研究に参加同意の得られ
た企業で働く労働者の同意を得た上で、勤怠記録、ストレスチェック結果、健康診断結果、
JNIOSH 式労働時間・睡眠調査票の回答を長期間(5~10 年)にわたって収集する。令和2
(2020)年 11 月までに「建設業」、「運輸業,郵便業」、「卸売業,小売業」、「不動産業,物品
賃貸業」、「生活関連サービス業,娯楽業」の企業(6社)の参加を得ることができた。
入手できたデータが限られている企業等を除いた4社(「建設業」、「運輸業,郵便業」、「不
動産業,物品賃貸業」、「生活関連サービス業,娯楽業」)について集計を行ったところ、平均
年齢(標準偏差)は、男性(8,273 人)では 40.1 (±11.5) 歳、女性(3,040 人)では 36.3(±11.2)歳であった。また、男女とも月当たりの平均労働時間は 180-205 時間未満群が最も多かった。
(第 3-1-1 表)。
第3-1-1表 月当たりの平均労働時間別の属性
月当たり平均労働時間(週当たり平均労働時間) (35h未満)
n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)性別 男性 295 (37.4) 2321 (70.5) 3041 (74.3) 1553 (81.4) 784 (83.2) 279 (96.5) 8273 (73.1)p<0.01 女性 494 (62.6) 971 (29.5) 1052 (25.7) 355 (18.6) 158 (16.8) 10 (3.5) 3040 (26.9)年令 ~29歳 197 (25.0) 695 (21.1) 1114 (27.2) 553 (29) 199 (21.1) 11 (3.8) 2769 (24.5)p<0.01 30~39歳 231 (29.3) 800 (24.3) 1263 (30.9) 743 (38.9) 428 (45.4) 165 (57.1) 3630 (32.1)平均39.2 (± 11.7)歳 40~49歳 150 (19.0) 682 (20.7) 981 (24.0) 396 (20.8) 239 (25.4) 95 (32.9) 2543 (22.5)男性平均40.1(±11.5)歳 50~59歳 73 (9.3) 756 (23.0) 572 (14.0) 180 (9.4) 71 (7.5) 17 (5.9) 1669 (14.8)女性平均36.3(±11.2)歳 60歳~ 138 (17.5) 359 (10.9) 163 (4.0) 36 (1.9) 5 (0.5) 1 (0.3) 702 (6.2)雇用形態 正社員 342 (43.3) 2794 (84.9) 3730 (91.1) 1834 (96.1) 931 (98.8) 289 (100) 9920 (87.7)p<0.01 契約社員 23 (2.9) 131 (4.0) 188 (4.6) 36 (1.9) 5 (0.5) - - 383 (3.4)
嘱託社員 13 (1.6) 57 (1.7) 52 (1.3) 11 (0.6) 1 (0.1) - - 134 (1.2)派遣社員 2 (0.3) 1 (0.0) 1 (0.0) 3 (0.2) - - - - 7 (0.1)
臨時・アルバイト 320 (40.6) 230 (7.0) 74 (1.8) 14 (0.7) 2 (0.2) - - 640 (5.7)その他 89 (11.3) 79 (2.4) 48 (1.2) 10 (0.5) 3 (0.3) - - 229 (2.0)
勤務形態 固定時間制 488 (61.9) 1071 (32.5) 2385 (58.3) 1326 (69.5) 675 (71.7) 211 (73.0) 6156 (54.4)p<0.01 変形労働時間制 148 (18.8) 484 (14.7) 575 (14.0) 207 (10.8) 89 (9.4) 40 (13.8) 1543 (13.6)
フレックスタイム制 71 (9.0) 1582 (48.1) 892 (21.8) 320 (16.8) 151 (16) 33 (11.4) 3049 (27.0)裁量労働制 5 (0.6) 12 (0.4) 20 (0.5) 7 (0.4) 9 (1.0) 4 (1.4) 57 (0.5)
二交替制(夜勤あり) 20 (2.5) 66 (2.0) 85 (2.1) 11 (0.6) 8 (0.8) - - 190 (1.7)二交替制(夜勤なし) 8 (1.0) 28 (0.9) 28 (0.7) 5 (0.3) 1 (0.1) - - 70 (0.6)
三交替制 1 (1.0) 10 (0.3) 51 (1.2) 9 (0.5) 2 (0.2) - - 73 (0.6)夕勤のみ 10 (1.3) 8 (0.2) 1 (0.0) 1 (0.1) - - - - 20 (0.2)夜勤のみ 7 (0.9) 10 (0.3) 10 (0.2) 2 (0.1) 1 (0.1) - - 30 (0.3)
その他 31 (3.9) 21 (0.6) 46 (1.1) 20 (1.0) 6 (0.6) 1 (0.3) 125 (1.1)職種 管理職 33 (4.2) 638 (19.4) 773 (18.9) 353 (18.5) 261 (27.7) 197 (68.2) 2255 (19.9)p<0.01 専門・技術・研究職 90 (11.4) 500 (15.2) 707 (17.3) 203 (10.6) 82 (8.7) 13 (4.5) 1595 (14.1)
事務職 158 (20.0) 871 (26.5) 770 (18.8) 147 (7.7) 30 (3.2) 4 (1.4) 1980 (17.5)商品販売職 - - 4 (0.1) 1 (0.0) 3 (0.2) 1 (0.1) - - 9 (0.1)
営業・セールス職 87 (11.0) 282 (8.6) 760 (18.6) 761 (39.9) 369 (39.2) 34 (11.8) 2293 (20.3)サービス職 239 (30.3) 399 (12.1) 373 (9.1) 102 (5.3) 40 (4.2) 3 (1.0) 1156 (10.2)
運輸職 17 (2.2) 15 (0.5) 6 (0.1) 3 (0.2) - - - - 41 (0.4)建設職 34 (4.3) 433 (13.2) 442 (10.8) 245 (12.8) 133 (14.1) 35 (12.1) 1322 (11.7)
生産・技能職 3 (0.4) 16 (0.5) 20 (0.5) 7 (0.4) 2 (0.2) - - 48 (0.4)その他 128 (16.2) 134 (4.1) 241 (5.9) 84 (4.4) 24 (2.5) 3 (1.0) 614 (5.4)
合計 789 (100) 3292 (100) 4093 (100) 1908 (100) 942 (100) 289 (100) 11313 (100)
合計(35h-45h未満)(45h-51.25h未満)(51.25h-55h未満) (55-60未満) (60h以上)
240h以上140h未満 140-180h未満 180-205h未満 205-220h未満 220-240h未満
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な 労働安全衛生研究」をもとに作成
疫学研究等の分析3
第
44章
過労死等をめぐる調査・分析結果
180180
非服薬群(血圧・血糖・脂質薬)における月当たりの平均労働時間と健康指標との関係を
みると、労働時間が長くなると、BMI、ALT、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪が基準値以上とな
るオッズ比が高くなる傾向がみられた(第 3-1-2 図)。
第3-1-2図 非服薬群における月当たりの平均労働時間と健康指標との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期から健康診断までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.健康指標として、BMI、ALT、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪の5つを例示した。 3.グラフ中の垂直方向の直線は 95%信頼区間を示している。 4.統計的に有意なオッズ比には点の模様を付している。
(1)職域コホート研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、過労死等の発生の実態解明を進めるため、どの
ような要因が過労死等のリスク要因として影響が強いのかを調査することを目的に、共同研
究機関である従業員支援プログラム提供機関の顧客企業のうち、本研究に参加同意の得られ
た企業で働く労働者の同意を得た上で、勤怠記録、ストレスチェック結果、健康診断結果、
JNIOSH 式労働時間・睡眠調査票の回答を長期間(5~10 年)にわたって収集する。令和2
(2020)年 11 月までに「建設業」、「運輸業,郵便業」、「卸売業,小売業」、「不動産業,物品
賃貸業」、「生活関連サービス業,娯楽業」の企業(6社)の参加を得ることができた。
入手できたデータが限られている企業等を除いた4社(「建設業」、「運輸業,郵便業」、「不
動産業,物品賃貸業」、「生活関連サービス業,娯楽業」)について集計を行ったところ、平均
年齢(標準偏差)は、男性(8,273 人)では 40.1 (±11.5) 歳、女性(3,040 人)では 36.3(±11.2)歳であった。また、男女とも月当たりの平均労働時間は 180-205 時間未満群が最も多かった。
(第 3-1-1 表)。
第3-1-1表 月当たりの平均労働時間別の属性
月当たり平均労働時間(週当たり平均労働時間) (35h未満)
n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%)性別 男性 295 (37.4) 2321 (70.5) 3041 (74.3) 1553 (81.4) 784 (83.2) 279 (96.5) 8273 (73.1)p<0.01 女性 494 (62.6) 971 (29.5) 1052 (25.7) 355 (18.6) 158 (16.8) 10 (3.5) 3040 (26.9)年令 ~29歳 197 (25.0) 695 (21.1) 1114 (27.2) 553 (29) 199 (21.1) 11 (3.8) 2769 (24.5)p<0.01 30~39歳 231 (29.3) 800 (24.3) 1263 (30.9) 743 (38.9) 428 (45.4) 165 (57.1) 3630 (32.1)平均39.2 (± 11.7)歳 40~49歳 150 (19.0) 682 (20.7) 981 (24.0) 396 (20.8) 239 (25.4) 95 (32.9) 2543 (22.5)男性平均40.1(±11.5)歳 50~59歳 73 (9.3) 756 (23.0) 572 (14.0) 180 (9.4) 71 (7.5) 17 (5.9) 1669 (14.8)女性平均36.3(±11.2)歳 60歳~ 138 (17.5) 359 (10.9) 163 (4.0) 36 (1.9) 5 (0.5) 1 (0.3) 702 (6.2)雇用形態 正社員 342 (43.3) 2794 (84.9) 3730 (91.1) 1834 (96.1) 931 (98.8) 289 (100) 9920 (87.7)p<0.01 契約社員 23 (2.9) 131 (4.0) 188 (4.6) 36 (1.9) 5 (0.5) - - 383 (3.4)
嘱託社員 13 (1.6) 57 (1.7) 52 (1.3) 11 (0.6) 1 (0.1) - - 134 (1.2)派遣社員 2 (0.3) 1 (0.0) 1 (0.0) 3 (0.2) - - - - 7 (0.1)
臨時・アルバイト 320 (40.6) 230 (7.0) 74 (1.8) 14 (0.7) 2 (0.2) - - 640 (5.7)その他 89 (11.3) 79 (2.4) 48 (1.2) 10 (0.5) 3 (0.3) - - 229 (2.0)
勤務形態 固定時間制 488 (61.9) 1071 (32.5) 2385 (58.3) 1326 (69.5) 675 (71.7) 211 (73.0) 6156 (54.4)p<0.01 変形労働時間制 148 (18.8) 484 (14.7) 575 (14.0) 207 (10.8) 89 (9.4) 40 (13.8) 1543 (13.6)
フレックスタイム制 71 (9.0) 1582 (48.1) 892 (21.8) 320 (16.8) 151 (16) 33 (11.4) 3049 (27.0)裁量労働制 5 (0.6) 12 (0.4) 20 (0.5) 7 (0.4) 9 (1.0) 4 (1.4) 57 (0.5)
二交替制(夜勤あり) 20 (2.5) 66 (2.0) 85 (2.1) 11 (0.6) 8 (0.8) - - 190 (1.7)二交替制(夜勤なし) 8 (1.0) 28 (0.9) 28 (0.7) 5 (0.3) 1 (0.1) - - 70 (0.6)
三交替制 1 (1.0) 10 (0.3) 51 (1.2) 9 (0.5) 2 (0.2) - - 73 (0.6)夕勤のみ 10 (1.3) 8 (0.2) 1 (0.0) 1 (0.1) - - - - 20 (0.2)夜勤のみ 7 (0.9) 10 (0.3) 10 (0.2) 2 (0.1) 1 (0.1) - - 30 (0.3)
その他 31 (3.9) 21 (0.6) 46 (1.1) 20 (1.0) 6 (0.6) 1 (0.3) 125 (1.1)職種 管理職 33 (4.2) 638 (19.4) 773 (18.9) 353 (18.5) 261 (27.7) 197 (68.2) 2255 (19.9)p<0.01 専門・技術・研究職 90 (11.4) 500 (15.2) 707 (17.3) 203 (10.6) 82 (8.7) 13 (4.5) 1595 (14.1)
事務職 158 (20.0) 871 (26.5) 770 (18.8) 147 (7.7) 30 (3.2) 4 (1.4) 1980 (17.5)商品販売職 - - 4 (0.1) 1 (0.0) 3 (0.2) 1 (0.1) - - 9 (0.1)
営業・セールス職 87 (11.0) 282 (8.6) 760 (18.6) 761 (39.9) 369 (39.2) 34 (11.8) 2293 (20.3)サービス職 239 (30.3) 399 (12.1) 373 (9.1) 102 (5.3) 40 (4.2) 3 (1.0) 1156 (10.2)
運輸職 17 (2.2) 15 (0.5) 6 (0.1) 3 (0.2) - - - - 41 (0.4)建設職 34 (4.3) 433 (13.2) 442 (10.8) 245 (12.8) 133 (14.1) 35 (12.1) 1322 (11.7)
生産・技能職 3 (0.4) 16 (0.5) 20 (0.5) 7 (0.4) 2 (0.2) - - 48 (0.4)その他 128 (16.2) 134 (4.1) 241 (5.9) 84 (4.4) 24 (2.5) 3 (1.0) 614 (5.4)
合計 789 (100) 3292 (100) 4093 (100) 1908 (100) 942 (100) 289 (100) 11313 (100)
合計(35h-45h未満)(45h-51.25h未満)(51.25h-55h未満) (55-60未満) (60h以上)
240h以上140h未満 140-180h未満 180-205h未満 205-220h未満 220-240h未満
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な 労働安全衛生研究」をもとに作成
181
第
44章
過労死等をめぐる調査・分析結果
181
月当たりの平均労働時間とストレスチェック結果との関係をみると、労働時間が長くなる
と、不安感や疲労感に関する項目の平均点が高く、活気に関する項目の平均点が低くなる傾
向がみられた(第 3-1-4 図)。
第3-1-4図 月当たりの平均労働時間とストレスチェック結果との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期からストレスチェック実施までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.有意差があるデータ(p<0.05)には点の模様を付している。
月当たりの平均労働時間と睡眠指標の関係をみると、労働時間が長くなると、入眠困難が
発生するオッズ比が低く、短時間睡眠、起床時疲労感、仕事中の強い眠気が発生するオッズ
比が高くなる傾向がみられた(第 3-1-3 図)。
第3-1-3図 月当たりの平均労働時間と睡眠指標との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期から質問実施までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.「入眠困難」は、床についても 31分以上眠りにつけないこと、「短時間睡眠」は、睡眠時間が6時間未満であることとし、
オッズ比を算出した。また、「起床時疲労感」と「仕事中の強い眠気」は、週3回以上の発生についてオッズ比を算出した。 3.グラフ中の垂直方向の直線は 95%信頼区間を示している。 4.統計的に有意なオッズ比には点の模様を付している。
第
44章
過労死等をめぐる調査・分析結果
182182
月当たりの平均労働時間とストレスチェック結果との関係をみると、労働時間が長くなる
と、不安感や疲労感に関する項目の平均点が高く、活気に関する項目の平均点が低くなる傾
向がみられた(第 3-1-4 図)。
第3-1-4図 月当たりの平均労働時間とストレスチェック結果との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期からストレスチェック実施までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.有意差があるデータ(p<0.05)には点の模様を付している。
月当たりの平均労働時間と睡眠指標の関係をみると、労働時間が長くなると、入眠困難が
発生するオッズ比が低く、短時間睡眠、起床時疲労感、仕事中の強い眠気が発生するオッズ
比が高くなる傾向がみられた(第 3-1-3 図)。
第3-1-3図 月当たりの平均労働時間と睡眠指標との関係
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」をもとに作成
(注)1.年代、性別、平均労働時間算出時期から質問実施までの期間、雇用形態、勤務形態、職位を調整変数とした。 2.「入眠困難」は、床についても 31分以上眠りにつけないこと、「短時間睡眠」は、睡眠時間が6時間未満であることとし、
オッズ比を算出した。また、「起床時疲労感」と「仕事中の強い眠気」は、週3回以上の発生についてオッズ比を算出した。 3.グラフ中の垂直方向の直線は 95%信頼区間を示している。 4.統計的に有意なオッズ比には点の模様を付している。
183
第
44章
過労死等をめぐる調査・分析結果
183
(3)実験研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、過労死等防止のためのより有効な健康管理の在り
方の検討に資するため、長時間労働が血圧等の血行動態に及ぼす影響と、それらの影響が加齢
により、どのように変化するのかについて、長時間労働を模擬した実験の手法により検証した。
なお、本研究は、実験の手法により検証を行っており、実際の職場とは環境が異なることに留
意する必要がある。
日中の安静時収縮期血圧(最大血圧)<160mmHg かつ拡張期血圧(最小血圧)<100mmHg の
30 代から 60代(65 歳未満)の男性を対象とした。具体的には、30代 16 人(平均年齢と標準
偏差;33.9±2.7 歳)、40代 15 人(平均年齢と標準偏差;45.5±2.9 歳)、50 代 16 人(平均年
齢と標準偏差;54.1±2.7 歳)、60代 8人(平均年齢と標準偏差; 62.1±1.2歳)を対象とした。
9:00 から 22:00 の実験中に、実験参加者は座位姿勢で簡単なパソコン作業(以下「模擬
長時間労働」という。)を行った。血圧等の血行動態反応を作業前の安静時(B0)から計 12 回
の作業セッション(T1-T12)にかけて測定を行った。なお、昼間に60分(BN)及び夕方に50
分(BE)の長めの休憩時間と、各作業セッション後に10~15 分の小休止時間を設けた。
30 代、40 代、50 代、60代の模擬長時間労働時の血行動態反応を比較したところ、全ての年
齢群は作業時間の延長に伴い収縮期血圧(最大血圧)が上昇したが、30 代と比べ、50 代と 60
代の作業中の収縮期血圧が有意に高かった(第3-3-1 図)。
第3-3-1図 実験スケジュールと模擬長時間労働時の収縮期血圧(最大血圧)・拡張期血圧(最小血圧)
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働
安全衛生研究」をもとに作成 (注)グラフ中の垂直方向の直線は標準誤差。
(2)職場環境改善に向けた介入研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、600 床以上ある病院で交替制勤務に従事する看
護師 30 人(平均年齢±標準偏差;28.2±5.9 歳)を対象に、2グループに分け、勤務間インタ
ーバルの確保と夜間睡眠の取得を促す交替制勤務シフトへの現場介入調査を4か月間(介入期間
を2か月間、その後の2か月間を従来のシフト(統制期間)とする、又はその逆)実施した。
2か月間の中で「深-深-準-準」となっているシフトを「深-深-休-準-準」に変更する介入
内容である。調査前に行った看護師へのヒアリングの結果、最も負担の大きいシフトの組み
合わせが2連続の深夜勤と2連続の準夜勤が入る「深-深-準-準」であった。2連続の深夜勤
と2連続の準夜勤の間に勤務間インターバルを確保し、かつ疲労回復に重要な夜間睡眠を取
得できるような新シフトを協力病院の看護師長と共に考案した。
4か月のうち最初の1か月分のデータで比較すると、介入群の方が統制群より疲労度(Need
for recovery 尺度による)が低い傾向がみられた(第 3-2-1 図)。
今後、主観指標だけでなく、生化学的なストレスホルモン、客観的な睡眠や疲労評価のデ
ータも追加される予定であるので、それらのデータの解析を行い、新シフトの効果を多角的
に検証する。
第3-2-1図 介入群と統制群の疲労度の比較
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働
安全衛生研究」をもとに作成 (注)グラフ中の垂直方向の直線は標準誤差。
第
44章
過労死等をめぐる調査・分析結果
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(3)実験研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、過労死等防止のためのより有効な健康管理の在り
方の検討に資するため、長時間労働が血圧等の血行動態に及ぼす影響と、それらの影響が加齢
により、どのように変化するのかについて、長時間労働を模擬した実験の手法により検証した。
なお、本研究は、実験の手法により検証を行っており、実際の職場とは環境が異なることに留
意する必要がある。
日中の安静時収縮期血圧(最大血圧)<160mmHg かつ拡張期血圧(最小血圧)<100mmHg の
30 代から 60代(65 歳未満)の男性を対象とした。具体的には、30代 16 人(平均年齢と標準
偏差;33.9±2.7 歳)、40代 15 人(平均年齢と標準偏差;45.5±2.9 歳)、50 代 16 人(平均年
齢と標準偏差;54.1±2.7 歳)、60代 8人(平均年齢と標準偏差; 62.1±1.2歳)を対象とした。
9:00 から 22:00 の実験中に、実験参加者は座位姿勢で簡単なパソコン作業(以下「模擬
長時間労働」という。)を行った。血圧等の血行動態反応を作業前の安静時(B0)から計 12 回
の作業セッション(T1-T12)にかけて測定を行った。なお、昼間に60分(BN)及び夕方に50
分(BE)の長めの休憩時間と、各作業セッション後に10~15 分の小休止時間を設けた。
30 代、40 代、50 代、60代の模擬長時間労働時の血行動態反応を比較したところ、全ての年
齢群は作業時間の延長に伴い収縮期血圧(最大血圧)が上昇したが、30 代と比べ、50 代と 60
代の作業中の収縮期血圧が有意に高かった(第3-3-1 図)。
第3-3-1図 実験スケジュールと模擬長時間労働時の収縮期血圧(最大血圧)・拡張期血圧(最小血圧)
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働
安全衛生研究」をもとに作成 (注)グラフ中の垂直方向の直線は標準誤差。
(2)職場環境改善に向けた介入研究
過労死等防止調査研究センターにおいて、600 床以上ある病院で交替制勤務に従事する看
護師 30 人(平均年齢±標準偏差;28.2±5.9 歳)を対象に、2グループに分け、勤務間インタ
ーバルの確保と夜間睡眠の取得を促す交替制勤務シフトへの現場介入調査を4か月間(介入期間
を2か月間、その後の2か月間を従来のシフト(統制期間)とする、又はその逆)実施した。
2か月間の中で「深-深-準-準」となっているシフトを「深-深-休-準-準」に変更する介入
内容である。調査前に行った看護師へのヒアリングの結果、最も負担の大きいシフトの組み
合わせが2連続の深夜勤と2連続の準夜勤が入る「深-深-準-準」であった。2連続の深夜勤
と2連続の準夜勤の間に勤務間インターバルを確保し、かつ疲労回復に重要な夜間睡眠を取
得できるような新シフトを協力病院の看護師長と共に考案した。
4か月のうち最初の1か月分のデータで比較すると、介入群の方が統制群より疲労度(Need
for recovery 尺度による)が低い傾向がみられた(第 3-2-1 図)。
今後、主観指標だけでなく、生化学的なストレスホルモン、客観的な睡眠や疲労評価のデ
ータも追加される予定であるので、それらのデータの解析を行い、新シフトの効果を多角的
に検証する。
第3-2-1図 介入群と統制群の疲労度の比較
(資料出所)労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター「令和2年度過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働
安全衛生研究」をもとに作成 (注)グラフ中の垂直方向の直線は標準誤差。
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