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平成 26 年度医学部 4 救急・災害医学 試験問題 2014.7.14 8 : 451015 ! 学籍番号は左詰めで記入・マークせよ ! 各設問には①から⑤までの 5 つの選択肢があるので、そのうち質問 に適した選択肢を選び答案用紙に記入すること。 ! 特に指示の無い設問に 2 つ以上解答した場合は誤りとする。 ! 複数の選択肢を選ぶ質問では、各設問に指示された数の解答のみ を選択すること。それ以上でもそれ以下でも誤りとする。

平成 26 年度医学部 4年 救急・災害医学 試験問題 · ② トリアージは医師でなくても行うことができる。 ③ 災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。

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平成 26 年度医学部 4 年 救急・災害医学 試験問題

2014.7.14

8 : 45~10:15

! 学籍番号は左詰めで記入・マークせよ

! 各設問には①から⑤までの 5 つの選択肢があるので、そのうち質問

に適した選択肢を選び答案用紙に記入すること。

! 特に指示の無い設問に 2 つ以上解答した場合は誤りとする。

! 複数の選択肢を選ぶ質問では、各設問に指示された数の解答のみ

を選択すること。それ以上でもそれ以下でも誤りとする。

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1.一次救命処置の胸骨圧迫の回数で適切なのはどれか。

① 10 回/分

② 20 回/分

③ 60 回/分

④ 80 回/分

⑤ 110 回/分

2. 心肺停止となった成人に対して、研修医 2 人が胸骨圧迫とバッグバルブマスク人工呼吸によ

り効果的な心肺蘇生法を行っている。2 分間の人工呼吸の回数に最も近いのはどれか。

① 10 回

② 20 回

③ 30 回

④ 40 回

⑤ 50 回

3. 中年の男性。駅の構内で研修医の目の前で突然倒れた。研修医は周囲の安全を確認後に

男性に呼びかけたが、反応がないため大声で駅員を呼び、救急車を要請し、自動体外式除細動

器 AED をすぐに持ってくるように指示した。呼吸を確認したが自発呼吸は認められない。日本蘇

生協議会ガイドライン 2010 に基づいて、この研修医がまず行うべきなのはどれか。

① 胸骨を叩打する。

② 胸骨を圧迫する。

③ 回復体位にする。

④ 両下肢を挙上する。

⑤ 対光反射を観察する。

4. 日本蘇生協議会ガイドライン 2010 に基づいて、自動体外式除細動器〈AED〉によるショック

実施後に直ちに行うべきことはどれか。

① 胸骨圧迫を行う。

② 頸動脈を触知する。

③ 呼びかけて意識の確認を行う。

④ 安全のために AED の電源を切る。

⑤ 呼気吹き込みによる人工呼吸を行う。

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5・ 以下の中で心停止の波形でないものはどれか 2 つ選べ。

① 心室細動

② 無脈性心室頻拍

③ 無脈性電気活動

④ 発作性上室性頻拍

⑤ Ⅲ度房室ブロック

6. 路上で倒れている心肺機能停止成人患者において、蘇生率を向上させるために 「一次救命

処置」より 「119 番通報」 を優先する理由はどれか。

① 除細動

② 酸素投与

③ 気道確保

④ 静脈路確保

⑤ 心電図伝送

7. 心肺停止患者へのアドレナリン投与経路で適切なのはどれか。2 つ選べ

① 皮 下

② 筋肉内

③ 静脈内

④ 心腔内

⑤ 骨髄内

8.災害医療について正しいのはどれか。

① 災害拠点病院は市町村が指定する。

② トリアージは医師でなくても行うことができる。

③ 災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る。

④ 防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ。

⑤ 災害医療とは災害派遣医療チーム HDMATL の医療活動のことである。

9. 高度救命救急センターで受け入れるべきなのはどれか。

① 下肢の骨折

② 肩関節脱臼

③ 急性虫垂炎

④ 重症広範囲熱傷

⑤ 十二指腸潰瘍穿孔

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10. 救急医療について正しいのはどれか。

① 救急救命士は知事が認定する資格である。

② 救命救急センターは総務省消防庁が指定する。

③ 救急指定病院数は最近 10 年間で増加している。

④ 休日夜間急患センターの多くは地域医師会が協力している。

⑤ ドクターヘリを運用する都道府県数は最近年間で減少している。

11.心臓機能停止の傷病者に対する救急救命士の特定行為はどれか。 3 つ選べ。

① 気管挿管

② アトロピン投与

③ 中心静脈路確保

④ アドレナリン投与

⑤ 乳酸リンゲル液輸液

12. 平成 22 年改正後の臓器の移植に関する法律で、脳死時の臓器提供の意思が法律的に

有効でないのはどれか。

① 運転免許証に記載しておく。

② 医療保険の被保険者証に記載しておく。

③ 書面にせずにかかりつけ医に話しておく。

④ 日本臓器移植ネットワークに登録しておく。

⑤ 本人の意思が不明な場合に臓器提供の承諾書を家族から得る。

13. 重症外傷の Primary Survey の時に行うこととして誤っているのはどれか。2つ選べ。

① 気道確保

② FAST

③ CT 検査

④ 背面の観察

⑤ 胸部・骨盤単純X線ポータブル撮影

14. 医師の対応として正しいのはどれか。

① ナイフで刺された患者について警察に通報した。

② 患者を診ずに家族と話しただけで処方箋を交付した。

③ 輸血を拒否している成人患者に予定手術で輸血した。

④ 患者の意識がなかったので、病状を患者の上司に説明した。

⑤ 患者の家族に依頼され、死亡診断書に虚偽の死因を記載した。

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15. 出血性ショックの症候でないものはどれか。

① 徐脈

② 意識混濁

③ 皮膚湿潤

④ 四肢冷感

⑤ 血圧低下

16. ショックを呈する病態で早期から中心静脈圧が上昇するのはどれか。 2 つ選べ。

① 敗血症

② 緊張性気胸

③ 食道静脈瘤破裂

④ 心タンポナーデ

⑤ アナフィラキシー

17. 圧挫〈挫滅〉症候群でみられるのはどれか。

① 多尿

② 発疹

③ ミオグロビン尿

④ 高ナトリウム血症

⑤ 溶血性尿毒症症候群〈HUS〉

18.災害時のトリアージについての文章で誤っているのはどれか。

① タグは基本的には右手につけられる。

② トリアージタグには個人情報は記載しない

③ 気道閉塞があるものは赤(Ⅰ 緊急)に区分される。

④ START式トリアージは一次トリアージの際に用いる。

⑤ トリアージにおける爪床圧迫再循環時間は2秒以内が正常である。

19. 乗用車とトラックとが衝突し 5 人が受傷した。搬送にはドクターヘリ 1 機、救急車 1 台、警

察車両 1 台しか使えず、それぞれ現場で待機している。近くの救急医療機関は陸路で 40 分の

距離にある。 ドクターヘリで搬送すべき患者はどれか。

① 10 歳の男児。前額部から出血があり大声で泣いている。

② 20 歳の女性。骨盤骨折がありショック状態で顔面蒼白である。

③ 30 歳の男性。開放創はなく泥酔状態で暴れ抑え切れない。

④ 40 歳の女性。右大腿骨骨折で痛がり手術が必要である。

⑤ 50 歳の男性。頸部轢断で頭部が体幹から分離している。

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20. 脳死または心停止後の腎移植の提供者(ドナー)候補として適切でないのはどれか。

① 70 歳男性

② HBs 抗原陽性

③ 原発性脳腫瘍

④ 血液型 AB 型 Rh(-)

⑤ 血清クレアチニン 0.8 mg/dl

21. SIRS について正しいのはどれか

① SIRS 診断項目の多寡と重症度は比例しない。

② 敗血症では起炎菌が同定されている必要がある。

③ 呼吸回数 20 回以上は診断項目の基準にあてはまる。

④ SIRS は診断項目が3つ以上満たされている必要がある。

⑤ 敗血症の診断では SIRS 項目が一つ入っていることが必要である

22.環境による障害について正しいのはどれか。

① 深部体温 44 ℃の熱中症は予後が悪い。

② 減圧症は旅客機に搭乗することで改善する。

③ 凍傷では壊死部分のマッサージが有効である。

④ 高地脳浮腫では酸素吸入で登山続行が可能となる。

⑤ 全身被ばく後に下血を伴う急性放射線障害は予後が良い

23. 脱水を示唆する所見はどれか。

① 徐脈

② 腋窩の湿潤

③ 頸静脈の怒張

④ 両下腿の浮腫

⑤ 起立時の血圧低下

24. 水様下痢が持続し乏尿となった若年男性の検査結果を示す。血圧 86/52 mmHg。

血液所見:Ht 54 %。血液生化学所見:尿素窒素 64 mg/dl、クレアチニン 2.8mg/dl、尿酸 8.4

mg/dl、Na138mEq/l、K4.1mEq/l、Cl101mEq/l。尿所見として予想されるのはどれか。

① 尿比重 1.006

② 尿蛋白 3+

③ 尿潜血 2+

④ 尿 Na 6 mEq/l

⑤ 尿 K 0 mEq/l

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25. 72 歳の男性。散歩中に転倒し前頭部を打ったため心配になって来院した。10 年前から高

血圧症にて自宅近くの診療所に通院している。

転倒の原因を推論するための質問として有用性が低いのはどれか。

① 「最近、食欲が増加しましたか」

② 「最近、内服薬が変わりましたか」

③ 「転倒直前に動悸や胸痛はありましたか」

④ 「転倒直前に目の前が真っ暗になりましたか」

⑤ 「転倒直前に片側の手足の力が弱い感じはありましたか」

26. 高血圧と糖尿病で通院中の 75 歳男性に対する熱中症の説明として適切なのはどれか。

① 「外出時に注意すれば大丈夫です」

② 「ひどく汗をかくのが典型的です」

③ 「頭痛や悪心は自覚症状としてはまれです」

④ 「口渇感がなくても水分の補給が必要です」

⑤ 「スポーツドリンクを大量に補給すれば予防できます」

27 . 72 歳 の 男 性 。 今 朝 、 起 床 時 か ら 全 身 倦 怠 感 が 出 現 し て い る た め 来 院 し た 。

心電図で認められる所見はどれか。

① 洞停止

② 心房粗動

③ I度房室ブロック

④ Ⅱ度房室ブロック

⑤ 心室固有調律

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28. 48 歳の男性。意識障害と右片麻痺のため搬入された。自発開眼はなく、呼びかけでも開眼

しないが、痛み刺激で開眼する。痛み刺激でうなり声をあげるが、意味のある発語はみられない。

また、痛み刺激で右上下肢は全く動きがみられないが、左上下肢は払いのける動作を示す。

Glasgow coma scale による評価の合計点として正しいのはどれか。

① 3 点

② 6 点

③ 9 点

④ 12 点

⑤ 15 点

29. 21 歳の男性。手指の震えを主訴に来院した。週に 3 日午前中、派遣先の大型塗料店で

在庫管理の仕事をしている。 4 日前、離島でダイビングをしている時、水深 21 m まで潜ってから

浮上する途中に、潜水の履歴から浮上の必要性や手順を計算するダイビングコンピュータから浮

上を停止するよう指示を受けた。その際、一旦浮上を停止した後インストラクターの指示に従い浮

上した。 2 日前もダイビングをした後、夕方ジェット旅客機に搭乗し帰宅した。帰路、天候が悪く

機体の揺れのため席から離れることができなかった。就寝時、右中指の近位指節間関節が少し

痛いのに気付いた。昨日も指先の感覚に違和感を覚えた。本日、字を書く時に指先が震えるため

受診した。

最も考えられるのはどれか。

① 減圧症

② 動揺病

③ 頸肩腕障害

④ 有機溶剤中毒

⑤ VDT 作業による障害

30. 20 歳の男性。意識障害のため搬入された。約 1 時間前に自殺目的で有機リン系殺虫剤

を約 500 ml 飲んだことが判明している。救急隊からの連絡によると、救急車内での意識レベル

は JCS Ⅲ -300。体温 36.0 ℃。脈拍 80 /分、整。血圧 110/72 mmHg 。呼吸数 10/分。

SpO2100 %(リザーバー付マスク 10 l/分 酸素投与下)。救急外来への搬入時に嘔吐し、尿失禁

と便失禁とがあり、有機溶媒臭が漂っている。

まず行うべき対応はどれか。

① 除 染

② 血圧測定

③ 拮抗薬投与

④ 制吐薬投与

⑤ 緊急血液透析

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31. 32 歳の男性。建築現場で作業中に約 10 m 転落し、搬入された。来院時、ネックカラーを

装着されバックボード上に全脊椎固定されており、意識レベルは JCSⅠ- 3 で右殿部の痛みがあ

るという。身長 178 cm、体重 70 kg。体温 36.4 ℃。脈拍 112 /分、整。血圧 90/50 mmHg。呼吸

数 24/分。SpO2 100 %(リザーバー付マスク 10 l/分 酸素投与下)。

気道は開通しており呼吸困難はない。皮膚は蒼白で冷汗を伴い、橈骨動脈の拍動は弱い。明ら

かな外出血はなく、右下肢の変形は明らかでないが左と比較すると短縮がある。顔面、頸部およ

び胸部に異常を認めない。超音波検査で心囊、両側の胸腔および腹腔に液体貯留を認めない。

胸部エックス線写真に異常を認めない。

次に行うべき単純エックス線撮影の部位はどれか。

① 頭 部

② 頸 椎

③ 腹 部

④ 骨 盤

⑤ 右足趾

32. 62 歳の女性。交通事故で頭部を強く打って搬入された。搬入後、頭痛を訴え嘔吐を繰り返

しているうちに意識レベルが低下し、JCSⅢ-100 となった。右瞳孔が散大し、対光反射が消失して

いる。心拍数 62/分、整。血圧 180/90 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 99 %(マスク 6 l/分 酸素投

与下)。

診断のためにまず行うべきなのはどれか。

① 頭部 CT

② 脳波検査

③ 腰椎穿刺

④ 脳血管造影

⑤ 脳血流 SPECT

33. 血中ヘモグロビン濃度が 18g/dlの COPD 患者が呼吸困難で搬送された、チアノーゼをきた

し始める動脈血酸素飽和度として最も近いものはどれか。

① 95%

② 90%

③ 85%

④ 70%

⑤ 50%

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34. 68 歳の男性。狭心症の定期受診のため来院した。待合室で冷汗と気分不快が出現し横に

なったところを、通りかかった研修医が発見した。胸痛と呼吸困難はない。

半年前に経皮的冠動脈形成術(ステント留置術)を受け、抗血小板薬を内服している。最近食欲

がなく, 7 日前から大量の黒色軟便に気付いていたという。

診察時、意識レベルは JCSⅠ- 1 。脈拍 128/分(微弱)、整。血圧 82/50 mmHg。

呼吸数 24/分。SpO2 94 %(room air)。顔面蒼白で多量の冷汗を認める。眼瞼結膜は貧血様であ

る。心音と呼吸音とに異常を認めない。

初期対応として適切でないのはどれか。

① 人を集める。

② 酸素投与を行う。

③ 血液型を確認する。

④ ベラパミルを静脈内投与する。

⑤ 乳酸リンゲル液の点滴を開始する。

35. 70 歳の女性。左上腹部痛を主訴に来院した。昨夜、久しぶりに孫たちと遊んだり歌ったりし

て騒いだ。その 3 時間後から左上腹部に痛みを感じるようになった。診察室には前かがみの姿

勢で入ってきた。食事摂取は良好であり、悪心や嘔吐はなく便通も正常である。3 年前に脳梗塞

を発症し、その後アスピリンを内服している。

体温 36.5 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 140/90 mmHg。左上腹部に限局した圧痛を認めるが、反跳

痛はない。腹筋を緊張させると疼痛と圧痛とは増強する。腸雑音は正常である。

最も考えられるのはどれか。

① 急性膵炎

② 腹壁血腫

③ 腸腰筋膿瘍

④ 虚血性大腸炎

⑤ 穿孔性胃潰瘍

36. 自殺を図り意識のない患者に医学的侵襲を伴う処置が緊急に必要となった。患者の家族に

はまだ連絡がとれていない。医学的侵襲を拒絶するような患者の事前の確固たる意思表示は確

認できていない。

リスボン宣言に基づく対応として正しいのはどれか。

① 患者家族の到着を待つ。

② 直ちに処置を開始する。

③ 倫理委員会の判断を待つ。

④ 自殺企図の患者は処置しない。

⑤ 患者の事前の意思表示を確認するまで待つ。

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次の文を読み、37、38 の問いに答えよ。

73 歳の男性。意識障害のため搬入された。

現病歴 : 今朝起きてこないので、妻が様子を見に行ったところ反応がなかったため救急車を要

請した。昨晩までは特に普段と変わらなかったという。

既往歴 : 20 年来の糖尿病と高血圧症でスルホニル尿素薬とアンジオテンシン変換酵素〈ACE〉

阻害薬を服用中。

生活歴 : 71 歳の妻と 2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

家族歴 : 父親が脳梗塞。

現 症 : 呼びかけに反応なく、痛み刺激に対して開眼や払いのけるような動作はなく、わずかに

顔をしかめる。身長 165 cm、体重 62 kg。体温 37.0 ℃。心拍数 98/分、整。血圧 102/70

mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 100 %(マスク 3 l/分 酸素投与下)。

37. この患者の意識レベルは JCS でどれか。

① Ⅱ-20

② Ⅱ-30

③ Ⅲ-100

④ Ⅲ-200

⑤ Ⅲ-300

38. まず行うべき検査として適切なのはどれか。

① 血糖測定

② 頭部 MRI

③ 12 誘導心電図

④ 尿ケトン体測定

⑤ 動脈血ガス分析

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39. 5 名の患者の血液検査所見を示す。 意識が清明である可能性が最も高いのはどれか。

ただし、他に血液検査所見の異常はないものとする。

Na 尿素窒素 血糖血 漿浸透圧(基準 275~288)

(mEq/l) (mg/dl) (mg/dl) (mOsm/l)

① 121 8 90 250

② 123 22 540 284

③ 137 14 36 281

④ 149 28 486 335

⑤ 169 22 108 352

40. 42 歳の男性。呼吸困難のため搬入された。庭で木の伐採をしていたところ、蜂に刺された。

大丈夫と思い様子をみていたが、数分後に呼吸困難が出現し、救急車で搬送された。

意識レベルは JCSⅠ- 2 。脈拍 84/分、整。血圧 80/58 mmHg。

呼吸数 32/分。SpO2 93 %(リザーバー付マスク 10 l/分 酸素投与下)。

顔面は蒼白で口唇に浮腫を認める。頸静脈の怒張を認めない。心音に異常を認めない。吸気時

に喘鳴を聴取する。胸腹部、背部および四肢の皮膚に膨疹が多発している。

急速輸液とともにまず投与すべきなのはどれか。

① リドカイン

② アトロピン

③ アドレナリン

④ ヒドロコルチゾン

⑤ プロプラノロール

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次の文を読み、41~43 の問いに答えよ。

60 歳の男性。オートバイで転倒したため搬入された。

現病歴 : 2 時間前、オートバイで走行中に転倒し大腿部を挟まれた。

既往歴 : 特記すべきことはない。

現 症 : 意識レベルは JCSⅠ- 3 。身長 160 cm、体重 60 kg。

体温 35.5 ℃。脈拍 120/分、整。血圧 80/50 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98 %(リザーバー付

マスク 10 l/分 酸素投与下)。

表情は苦悶様で左大腿部の痛みを訴えている。顔面は蒼白で、皮膚は冷たく湿潤している。心音

と呼吸音とに異常を認めない。左大腿部に挫滅創と活動性外出血とを認め、骨が露出している。

濃い尿を少量認める。

検査所見 : 尿所見:比重 1.030、蛋白(-)、糖(-)。

血液所見:赤血球 250 万、Hb 7.0 g/dl、Ht 21 %、白血球 13,000 (桿状核好中球 6 %、分葉核

好中球 70 %、単球 4 %、リンパ球 20 %)、血小板 4.5 万、PT 20 秒(基準 10~14)、APTT

50 秒(基準対照 32.2)。

血液生化学所見:総蛋白 5.0 g/dl、アルブミン 3.0 g/dl、尿素窒素 20 mg/dl、ク レ ア チ ニ ン

0.9 mg/dl、血 糖 120 mg/dl、Na 145 mEq/l、K 5.0 mEq/l、Cl 109 mEq/l。

下肢エックス線写真で左大腿骨骨折と左脛骨骨折とを認める。胸部エックス線写真と全身 CT で

下肢を除いて異常を認めない。

左大腿骨開放骨折に対し、赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿および濃厚血小板を準備し、止血、デ

ブリドマン及び骨整復固定術が予定された。急速輸液を行った。

41. 輸液の組成として適切なのはどれか。

Na+ K+ Cl- Lactate- 糖質

(mEq/l) (mEq/l) (mEq/l) (mEq/l) (%)

① 130 4 109 28 0

② 84 20 66 20 1.5

③ 40 35 40 20 10

④ 35 25 35 20 4.3

⑤ 0 0 0 0 5

42. 最も適切な麻酔法はどれか。

① 伝達麻酔

② 全身麻酔

③ 硬膜外麻酔

④ 脊髄くも膜下麻酔

⑤ 全身麻酔と硬膜外麻酔の併用

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術後 2 日目、呼吸困難を訴えた。意識レベルは JCSⅡ-10。体温 38.0 ℃。脈拍 120/

分、整。血圧 120/80 mmHg。呼吸数 30/分。SpO2 85 %(room air)。眼瞼結膜と体幹皮膚に点状

出血を認める。両側の胸部で coarse crackles と wheezes とを聴取する。

心エコー検査で壁運動異常はなく、下大静脈の拡張もない。胸部エックス線写真を示す。

43. 病態として考えられるのはどれか。

① 気 胸

② 心不全

③ 気管支喘息

④ 脂肪塞栓症

⑤ 肺血栓塞栓症

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次の文を読み、44~45 の問いに答えよ。

65 歳の男性。頭部挫創を主訴に来院した。

現病歴 : 飲酒後、家の階段の下で倒れているところを帰宅した家族に発見された。

頭部に挫創を認めたため家族に付き添われて受診した。

既往歴 : 心房細動のためワルファリン内服中。

生活歴 : 定年退職後無職。

家族歴 : 特記すべきことはない。

現 症 : アルコール臭があるが意識は清明。ただし、本人は受傷時のことは覚えていない。脈拍

80/分、不整。血圧 150/90 mmHg。呼吸数 24/分。頭頂部やや後方に 3 cm の挫創があり出血を

認めた。身体の他の部位に創傷は認められなかった。

検査所見 : 頭部 CT では頭蓋骨骨折は認められず、後頭蓋窩にごくわずかな硬膜下血腫が認

められた。

44. この患者における頭蓋内病変の重症化を予測する上で、最も注意すべきなのはどれか。

① 健 忘

② 飲 酒

③ 年 齢

④ 創傷部位

⑤ ワルファリン内服

45. 挫創からの出血に対する止血や縫合に難渋していたところ、患者が突然嘔吐した。

その後、呼びかけにも痛み刺激にも反応しなくなった。急いで再度頭部 CT を撮影しようと CT

室に搬送し、撮影台に移乗し頭部を固定したところ呼吸が止まった。頸動脈は触知できた。 急変

後、 2 回目の CT の撮影に行く前にすべきであった処置はどれか。 2 つ選べ。

① 吐物を吸引する。

② 大量輸液を行う。

③ 制吐薬を投与する。

④ 経口気管挿管を行う。

⑤ リザーバー付マスクで酸素を投与する。

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次の文を読み、46~48 の問いに答えよ。

34 歳の男性。熱傷のため搬入された。

現病歴 : 自宅で就寝中に火災が発生して熱傷を負い、救急車で搬送された。

既往歴 : 生来健康で、特記すべきことはない。

生活歴 : 喫煙は 20 本/日を 14 年間。飲酒は日本酒 3 合/日を 14 年間。

家族歴 : 特記すべきことはない。一人暮らし。

現 症 : 意識レベルは JCSⅡ-20。身長 173 cm、体重 60 kg。

体温 37.4 ℃。脈拍 136/分、整。血圧 84/62 mmHg。呼吸数 36/分。

SpO2 88 %(リザーバー付マスク 10 l/分 酸素投与下)。

頭髪は焦げ、両上肢と体幹の皮膚に熱傷を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。

口唇と鼻孔周囲とに煤の付着を認める。口腔と咽頭の粘膜は煤が付着し浮腫状である。両側の

胸部に coarse crackles を聴取し、吸気時に喘鳴を聴取する。四肢末 の脈拍は触知可能である。

熱傷深度と熱傷範囲を表した図を下に示す。

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検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血 2 +。血液所見:赤血球 561 万、Hb 17.7 g/dl、Ht

50 %、白血球 21,400、血小板 36 万。

血液生化学所見:Na 136 mEq/l、K 3.9 mEq/l、Cl 101 mEq/l。血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度

20 %(基準 1 以下)。

胸腹部の簡易超音波検査では、心囊液貯留を認めず、胸腔や腹腔に液体貯留を認めない。

46. 9 の法則で評価したこの患者の Burn Index はどれか。

① 54

② 45

③ 36

④ 27

⑤ 18

47. まず行う対応として適切なのはどれか。

① 経管栄養

② 気管挿管

③ 抗菌薬投与

④ 昇圧薬投与

⑤ 上肢の減張切開

48. Baxter の公式を用いた場合、この患者の受傷後 24 時間の乳酸リンゲル液の輸液量

の目安はどれか。

ただし、Baxter の公式では最初の 24 時間の輸液量を 4 (ml)×体重(kg)×熱傷面積

(%)とする。

① 12,960 ml

② 10,800 ml

③ 8,040 ml

④ 6,480 ml

⑤ 4,320 ml

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次の文を読み、49、50 の問いに答えよ。

17 歳の男子。呼吸困難を主訴に来院した。

現病歴 : 6 か月前に左胸痛と労作時息切れを自覚したことがあったが数日間で自然に軽快して

いた。本日 1 時間目の体育の授業中に、突然左胸痛を自覚したが、以前と同様に軽快すると思

いそのまま授業を受けていた。しかし、しばらくして息苦しさが強くなったため教師に付き添われて

受診した。

既往歴 : 15 歳時に虫垂炎で手術。

家族歴 : 特記すべきことはない。

現 症 : 意識は清明。身長 173 cm、体重 60 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 122/分、整。

血圧 96/58 mmHg。呼吸数 30/分。SpO296 %(マスク 6 l/分 酸素投与下)。心音に異

常を認めないが、左胸部で呼吸音の減弱を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 胸

部エックス線写真を示す。

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49. この患者に起こりうるのはどれか。

① 胸壁動揺

② 心拍出量増加

③ 静脈還流障害

④ 縦隔の患側移動

⑤ 患側の胸腔内圧低下

50. 直ちに行うべき処置はどれか。

① ジギタリス静注

② 胸腔ドレナージ

③ カテコラミン静注

④ 気管支拡張薬吸入

⑤ 気管挿管陽圧換気