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多文化共生都市トロントでの研究と生活 第2期 フェロー 筑波大学システム情報系・准教授 藤井さやか 日本財団国際フェローシップ報告会

多文化共生都市トロントでの研究と生活 藤井さやか

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Page 1: 多文化共生都市トロントでの研究と生活 藤井さやか

多文化共生都市トロントでの研究と生活

第2期 フェロー

筑波大学システム情報系・准教授 藤井さやか

日本財団国際フェローシップ報告会

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はじめに

• 自己紹介– 所属:筑波大学システム情報系・准教授

– 専門分野:都市計画・まちづくり・住環境整備

• フェローシップ概要– 第2期フェロー

– 滞在先:トロント大学人文地理学科・客員教授

– 滞在期間:2013年8月-2014年9月

– 研究テーマ:

トロント市の公的住宅団地再生の実態と課題に関する研究

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カナダ・トロント市の概要

– カナダ東部、五大湖の一つオンタリオ湖の北西に位置

– 北米第4の都市(都市圏人口590万人)

– オンタリオ州の州都で経済・産業の中心

– 市民の50%以上が移民もしくは移民系のバックグラウンドを持つ

※「トロント留学バイブル」トロント紹介サイトより引用 http://www2.bitslounge.com/toronto/a01_toronto/a1_1.html

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研究の概要

• 戦後の北米の公共住宅団地建設– スラムクリアランスとしての公共住宅団地開発

– 当時の最先端理論にもとづく工夫・実践→完成後間もなく社会問題の温床に

• 再スラム化した公共住宅団地の再々開発が課題– 「守りやすい空間」と「ソーシャル・ミックス」

• カナダ・トロント市リージェント・パーク団地– カナダ初のスラムクリアランスによる公共住宅団地の再々開発

– 北米で最大規模のPPPプロジェクト、アメリカの反省活かす

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研究の概要所有:トロント公共住宅公社(Toronto Community Housing Co.)地区面積:28ha住戸数:2083戸居住者数:約7500人出身国数:約60ヶ国使用言語:約70言語

Regent Park

商業エリア

官公庁

金融街

オールドタウン

John Gladki, FCIP RPP, “Inclusive Planning: a case study of Regent Park”, 2014より引用・加筆

1950年代「ガーデンシティ」として再開発→ しかし、周辺から孤立、環境が悪化

1970年代 移民政策の受け皿となる→ 多様な移民間の衝突が発生

1980年代 薬物犯罪や暴力犯罪の増加1995年 暴動の発生

→ 危険なエリアとして孤立・嫌煙される

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研究の概要• 再々開発の基本方針

1. 低密で死角が多かった住棟配置を守りやすい空間に転換

2. 建物の用途・形態、住戸タイプ(所得対応家賃補助住戸、アフォーダブル住戸、

市場家賃住戸、分譲住戸)等によるソーシャル・ミックス

3. 建物用途・容積率・建物高さ制限を大幅に緩和し、超高層棟を含む大規模な

再々開発を実施

4. 公園や街路を増やし、地区内外のアクセスを改善

5. 民間企業Daniels社とのPPPプロジェクトとして実施

6. 従前居住者の住み続ける権利を保障 → ジェントリフィケーション対策

7. 丁寧な居住者説明・参加プロセス

8. → 多言語での資料提供、説明会での多言語通訳派遣、コミュニケーション・

アニメーター活用(居住者をアウトリーチ要員として育成)

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• 計画変更の概要– 住戸数が大幅に増加、公共住宅と分譲住宅の割合も変化

研究の概要

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9000

従前 第1案 第2案 第3案 第4案 第5案

分譲住戸

アフォーダブル住戸

RGI(公共住宅)住戸

地区外RGI住戸

ソーシャル・ミックス住宅の多様性確保移転への影響配慮

文化施設・屋内プール建設を追加フェーズの変更高層棟の増加

地区外のRGI住戸

スポーツ広場追加空地と採算性確保のため高層棟増加

第5案第4案第3案第2案第1案

2002 2003 2005 2009 2014

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物理的アクセス

地区内外をつなぐ街路

地区外から地区内へのアクセス

大規模公園と市民向け施設

他用途・地域活動へのアクセス

店舗やオフィス、コミュニティ施設

就労機会や社会へのアクセス

生涯学習・職業訓練と店舗・飲食店

• 改善点①:地区外との連続性(アクセス)の確保

研究の概要

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• 改善点②:市民活動・交流の場の創出文化施設(Daniels Spectrum) 生涯学習施設(Daniels Center of

Learning)

屋内プール(Aquatic Center) スポーツ広場(Athletic Grounds)

研究の概要

http://www.torontohousing.ca/regentparkより引用

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研究の概要• リージェント・パーク団地再々開発の中間評価と課題

– 北米で最大の再々開発を居住者参加で実現しつつある

– PPPプロジェクトの成果 → 多額の投資や寄付を獲得

– 分譲住戸数の大幅増加 → 従前居住者の孤立化が懸念される

– コミュニティ拠点整備 → 居住者同士の活動・交流が生まれており、

従前居住者の教育・雇用・社会進出の機会も増加

– 居住者活動 → ソーシャルミックスによる再々開発の成否を握る重要な鍵

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フェローシップで学んだこと・得たこと

• 専門性の再構築– 日本の都市計画の成果を世界に発信していくという役割

– 世界の潮流の中で考えることの重要性

• 英語で研究する頭への切り替え– 日本語を訳せばいいわけではない

– 英語のロジックと日本語のロジックの違い

• ライフ・ワークバランス、女性の活躍– 生活の「豊かさ」の意味を考え直す

– 家族の時間の大切さを実感

– 重要なポストに就く女性との出会いと

女性の活躍を可能とする社会やシステムのあり方を再考

– 「自分にとって」の目標の明確化の重要性