アーカイブデータを用いた超新星の再調査　　　　　―精測位置と天体の真偽―

九州大学大学院理学府物理学専攻宇宙物理理論

坂根　悠介

指導教官　山岡　均　橋本　正章

話の流れ1 、超新星とは？　　　・爆発メカニズム　　

2 、超新星の性質　　　・超新星の位置情報を使った研究　　　・本研究のモチベーション

3 、超新星の位置測定　　　・位置情報が不正確な超新星　　　・赤道座標　　　・第一次パロマーサーベイと超新星　　　・位置測定結果

4 、超新星の真偽　　　・超新星の真偽　　　・ SN 1952C　　　・超新星の真偽結果

爆発後　SN 2006X

爆発前　（ SAO-DSS ）

超新星とは？

（ POSS2 red ） （隈元俊一さん撮像）

星が進化の最後に迎える大爆発

重力崩壊型

　　　 Ic 型 Ib 型 II 型

H

He

C+0O+Ne+Mg

超新星とは？～爆発メカニズム

核爆発型

Ia 型（ NASA ）

話の流れ1 、超新星とは？　　　・爆発メカニズム　　

2 、超新星の性質　　　・超新星の位置情報を使った研究　　　・本研究のモチベーション

3 、超新星の位置測定　　　・位置情報が不正確な超新星　　　・赤道座標　　　・第一次パロマーサーベイと超新星　　　・位置測定結果

4 、超新星の真偽　　　・小惑星チェック、相対位置測定　　　・結果

超新星の性質～位置情報から～

（ NGC 7647 DSS ） （ M100 DSS ）・・・過去出現した超新星の位置

→ 精確な位置情報をもった超新星サンプルが必要

超新星の出現位置・ II 型、 Ib/c 型超新星 → 若い大質量星の爆発・ Ia 型超新星 → 古い星の爆発

銀河環境の調査

超新星の性質

超新星を使った統計的研究

楕円銀河 渦巻銀河

本研究のモチベーション過去の超新星サンプルは・・・

× 位置情報が不正確× 明るさが不正確

データの信頼性が低い過去の超新星データ

→ 過去の超新星に再調査を行い信頼性の高いデータへ

本研究のモチベーション

17 個の超新星→正確な位置4 個の超新星→偽の超新星

19 個の超新星

超新星を用いた研究

SN 1950C 、 SN 1954E 、 SN 1955A 、 SN 1956B （ Navasardyan et al. 2001 ）

SN 1950C 、 SN 1955A （ Li & Li 1995 ）

話の流れ1 、超新星とは？　　　・爆発メカニズム　　

2 、超新星の性質　　　・超新星の位置情報を使った研究　　　・本研究のモチベーション

3 、超新星の位置測定　　　・位置情報が不正確な超新星　　　・赤道座標　　　・第一次パロマーサーベイと超新星　　　・位置測定結果

4 、超新星の真偽　　　・超新星の真偽　　　・ SN 1952C　　　・超新星の真偽結果

第一次パロマーサーベイ

① 位置の示し方・・・ Offset

1 秒

銀河中心と超新星の離角で表す× 銀河中心の位置× プレートでの長さから角度を出す

超新星の不正確な位置情報が　　　　　　　　　　　超新星カタログに多数収録　　　　例　 The Asiago Supernova catalog など 　　　　

② 過去画像利用の難しさ

赤道座標（基準星の増加）

過去画像が Web 上で公開DSS 　 第一次パロマーサーベイ（ 1950 ～ 1958 ） 第二次パロマーサーベイ（ 1987 ～ 1998 ）

Off set とは

・・・位置精度は信頼に欠ける (DSS red )

西

南

位置情報が不正確な超新星

超新星発見数

年

赤道座標

絶対位置測定

赤道座標

1 秒

基点：天の赤道と黄道との交点（春分点）

赤経（ α ）：東向きに測り、 360°=24 時として　　　　　　 時：分：秒で表す赤緯（ δ ）：南（－）北（＋）にそれぞれ 90 としてﾟ　　　　　 　度：分：秒で表す

基準星：位置が分かっている星

基準星 A　　 （ x1,y1 ） 　　　　　　

y

x

(α1,δ1)

x1

y1 基準星A (α1,δ1) 　　　　　　

画像上の座標 赤道座標

超新星　　 （ x,y ） 　　　　　　

超新星 (α,δ) 　　　　　　

第一次パロマーサーベイ (POSS-I)

観測期間： 1950 ～ 1958 年目的：パロマー写真星図

POSS-I で発見された超新星

1950 ～ 1958年

後の観測

第一次パロマーサーベイ（ POSS-I ）

第二次パロマーサーベイ（ POSS-II ）観測期間： 1987 ～ 1998 年

DSS で画像の一部を公開

POSS-I

1987 ～ 1998年

POSS-II

1959 ～ 1975年

論文から 73 個の超新星

DSS の画像で確認できた

17 個の超新星

赤経（ α ） 赤緯（ δ ） 誤差（赤経）

誤差（赤緯）

SN 1950C　

13h13m47s.405 +36°3 50 .454̒ ̋4̒� � ±0 .70 ̋ � ±0 .77 ̋ �

SN 1953E　

23h33m39s.251 +30° 0 03 .72 2̒ ̋2� � ±0 .71 ̋ � ±0 .71 ̋ �

SN 1953I　

22h08m09s.168 +4°4 37 .05 1̒ ̋1̒� � ±0 .49 ̋ � ±0 .70 ̋ �

SN 1954D 0h32m11s.133 +31°4 38 .71 0̒ ̋0� � ±0 .74 ̋ � ±0 .70 ̋ �

SN 1954E 1h57m38s.804 +35°5 31 .00 4̒ ̋4̒� � ±0 .56 ̋ � ±0 .82 ̋ �

SN 1954G 12h35m29s.724 -19°1 12 .01 5̒ ̋5̒� � ±0 .45 ̋ � ±0 .57 ̋ �

SN 1954H 13h10m30s.249 -7°3 15 .3 9̒ ̋9̒� � ±0 .38 ̋ � ±0 .36 ̋ �

SN 1954R　

0h40m40s.782 -13°5 37 .30 3̒ ̋3� � ±0 .75 ̋ � ±0 .63 ̋ �

SN 1954S　

0h35m48s.423 -8°3 01. 06 1̒ ̋1̒� � ±0 .52 ̋ � ±0 .51 ̋ �

SN 1954U　

23h58m51s.957 -5°3 26 .71 7̒ ̋7� � ±0 .30 ̋ � ±0 .72 ̋ �

SN 1954V 0h13m13s.467 -7°3 45 .66 6̒ ̋6� � ±0 .68 ̋ � ±0 .60 ̋ �

位置測定結果

SN 1954Z 9h45m13s.280 +9°0 17 .676̒ ̋6� � ±0 .47 ̋ � ±0 .81 ̋ �

SN 1955A 12h11m15s.857 +50°2 48 .409̒ ̋9̒� � ±0 .75 ̋ � ±1 .0 ̋ �

SN 1955E 12h22m59s.361 +58°2 25 .19 6̒ ̋ 6� � ±0 .90 ̋ � ±0 .58 ̋ �

SN 1955G 11h26m09s.931 +3°2 42 .609̒ ̋9̒� � ±0 .91 ̋ � ±0 .70 ̋ �

SN 1955H 11h10m51s.178 +2°5 32 .014̒ ̋4̒� � ±0 .63 ̋ � ±0 .30 ̋ �

SN 1956B 12h54m33s.905 -12°3 43 .493̒ ̋ 3� � ±0 .54 ̋ � ±0 .76 ̋ �

1 秒基準星：位置が分かる星

　位置測定に用いた基準星

基準星の赤道座標：　 2MASS カタログ基準星の選び方 : 　明るすぎる星を除く　　　　　　　　　　　　固有運動で位置が大きく　　　　　　　　　　　　ずれる星を除く

基準星の数： 各画像 40 個程度

17 個の超新星に関して測定誤差 ± 1 .0 � 以内の　　　　　　　　精度のよい出現位置を求めた

話の流れ1 、超新星とは？　　　・爆発メカニズム　　

2 、超新星の性質　　　・超新星の位置情報を使った研究　　　・本研究のモチベーション

3 、超新星の位置測定　　　・位置情報が不正確な超新星　　　・赤道座標　　　・第一次パロマーサーベイと超新星　　　・位置測定結果

4 、超新星の真偽　　　・超新星の真偽　　　・ SN 1952C　　　・超新星の真偽結果

超新星の真偽

POSS-I 後の観測

1950 ～ 1958 年 1959 ～ 1975 年

POSS-II 　

1987 ～ 1998 年

②POSS-I 、 POSS-II で超新星の真偽確認

4 個の疑わしい　　 超新星

① 小惑星・彗星による偽の超新星の可能性

19 個の超新星 該当する小惑星・彗星はなし

SN 1956C 小惑星 1988 XB5

SN 1̒9̒5̒2C

論文中の発見画像（ Kowal et al. 1970 ） POSS-I の画像（ DSS red ） POSS-II の画像（ DSS red ）

（ 0,0 ）（ 0.05±0.31,0.06±0.15 ） （ 0.27±0.48,0.08±0.78 ）画像中での天体の位置が一致

・ SN 1952C を観測データと比較

1952-2-1 1956-3-15 1985-2-28

1956 年 3月 16日（ USNO-A2.0 ）

　　 1985 年 2月 28日（ USNO-B1.0 ）

1976 年（ GSC2.3 ）

2004 年 3月 17日（ SDSS ）

相対位置測定の結果を支持

他の時期観測からも検出

超新星の真偽結果偽の可能性が高い超新星

SN 1950C ・ SN 1952C ・ SN 1952E ・ SN 1953I

1950 ～ 1958年

後の観測POSS-I

1959 ～ 1975年

誤認された理由

後の観測で検出できなかった × 大気の状況、月明かりといった観測条件 × 天体自身の明るさの変動 × 超新星が銀河の明るい部分に出現したこと　　 (SN 1953I)

SN 1950C 、 SN 1954E 、 SN 1955A 、 SN 1956B （ Navasardyan et al. 2001 ）SN 1950C 、 SN 1955A （ Li & Li 1995 ）

議論の信頼性の低下

超新星を用いた研究

まとめ・超新星の位置情報から　→超新星の性質の理解　→銀河の詳細な環境

・過去の超新星データは信頼性が低い　位置や、明るさが不正確

・過去の超新星の再調査を行える環境　赤道座標を求めるための基準星　アーカイブ画像が Web 上で公開

・過去の超新星を再調査 17 個の超新星の正確な位置、 4 個の偽の超新星　

過去の超新星をより精度のよいデータへ

超新星を用いた研究の基盤づくり