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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号(2017 3 月) Iwate Industrial Technology Junior College No.17, March 2017 [36] 楽器演奏装置の製作 加藤 邦庸 (電子技術科) Development of a Musical Instrument Performance System Kuninobu Kato (Electronics Course) 要旨: 卒業研究において,筆者が担当した「楽器演奏装置の製作」についてのテーマのものを紹介する. これまで,今年度も含めて 5 テーマを扱っている.いずれもアコースティック楽器を選び,マイコン制御で ソレノイド等を介して演奏する仕様で製作した.製作目標は,聴衆を魅了するような音楽を奏でることであ るが,まだ達成できておらず,終わりの無い課題となりそうである.そして,筆者は,これらの製作指導を 通して,指導者側には,ファシリテーター(促進者)の姿勢・態度・役割が,ますます必要であることを再 認識した. 1. はじめに 2016(平成 28)年 11 6 日,当校が立地する矢 巾町は,「音楽のまち やはば」宣言 1) をした. 筆者は,2011(平成 23)年度から,卒業研究に おいて,筆者が担当した学生に対して,研究テーマ に音楽の要素を取り入れるようにアドバイスをし て取り組んできた. 期せずして,筆者の思いは,矢巾町のこの宣言と 共鳴するものであった.特に,この宣言の中にある 「音楽を通じ 人と人が織りなす心を紡ぎ次の世 代につなげます まちを歩けばどこからともなく 音楽が聞こえてくる 明るく 美しい こころ豊 かなまちづくり」の箇所に強く共感し賛同するもの である. このような背景もあり,今後もこの宣言にあやか って,聴衆を魅了するような作品を目指していきた い.筆者がこれまで担当した卒業研究テーマの中で, 楽器演奏装置の製作についてのものは,今年度も含 めて 5 テーマを扱っている.当稿では,これらを製 作事例として紹介するものである. 2. 概要 筆者は, 2010 (平成 22)年度から 2014 (平成 26年度までは産技短水沢校の電気技術科, 2015 (平成 27)年度から 2016(平成 28)年度までは産技短の 電子技術科に勤務している. 1 に「楽器演奏装置製作に係るテーマ一覧」を 示す.楽器は, 2015 年度までは打楽器を扱い, 2016 年度は吹奏楽器とした.アクチュエータは,ソレノ イドをほぼ毎回使っている.メインのマイコンは, 2015 年度まではルネサス・エレクトロニクス社製, 2016 年度はマイクロチップ社製のものを使った. 1.楽器演奏装置製作に係るテーマ一覧 年度 テーマ名 楽器 アクチュ エータ メインの マイコン 選曲 機構 スト レージ 2011 (H23) マイコン による MIDI 制御 鉄琴 (ヤマハ) ソレノイド CB- 0847- 1440 H8- 3048f- one (ルネサス) ボタン スイッチ 2014 (H26) 自動演奏 楽器 の製作 鉄琴 (ヤマハ) ソレノイド CBS- 1240- 1280 SH- 7144F (ルネサス) タッチ パネル LCD 2015 (H27) パイプシ ロフォン 演奏装置 の製作 パイプシ ロフォン (自作) ソレノイド CBS- 1240- 1280 SH- 7144F (ルネサス) ボタン スイッチ SD カード カリンバ 演奏装置 の製作 カリンバ (自作) ステッピン グモータ SH- 7144F (ルネサス) ボタン スイッチ SD カード 2016 (H28) フルート 演奏装置 の製作 フルート (NUVO) ソレノイド CBS- 1240- 1280 dsPIC 33FJ 256GP 710A (マイクロ チップ) タッチ パネル LCD SD カード

楽器演奏装置の製作 Development of a Musical Instrument · PDF file128×64 ドットrgb3 色 バックライト付glcd

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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号(2017 年 3 月)

Iwate Industrial Technology Junior College No.17, March 2017

[36]

楽器演奏装置の製作

加藤 邦庸

(電子技術科)

Development of a Musical Instrument Performance System Kuninobu Kato

(Electronics Course)

要旨: 卒業研究において,筆者が担当した「楽器演奏装置の製作」についてのテーマのものを紹介する.

これまで,今年度も含めて 5 テーマを扱っている.いずれもアコースティック楽器を選び,マイコン制御で

ソレノイド等を介して演奏する仕様で製作した.製作目標は,聴衆を魅了するような音楽を奏でることであ

るが,まだ達成できておらず,終わりの無い課題となりそうである.そして,筆者は,これらの製作指導を

通して,指導者側には,ファシリテーター(促進者)の姿勢・態度・役割が,ますます必要であることを再

認識した.

1. はじめに

2016(平成 28)年 11 月 6 日,当校が立地する矢

巾町は,「音楽のまち やはば」宣言 1)をした.

筆者は,2011(平成 23)年度から,卒業研究に

おいて,筆者が担当した学生に対して,研究テーマ

に音楽の要素を取り入れるようにアドバイスをし

て取り組んできた.

期せずして,筆者の思いは,矢巾町のこの宣言と

共鳴するものであった.特に,この宣言の中にある

「音楽を通じ 人と人が織りなす心を紡ぎ次の世

代につなげます まちを歩けばどこからともなく

音楽が聞こえてくる 明るく 美しい こころ豊

かなまちづくり」の箇所に強く共感し賛同するもの

である.

このような背景もあり,今後もこの宣言にあやか

って,聴衆を魅了するような作品を目指していきた

い.筆者がこれまで担当した卒業研究テーマの中で,

楽器演奏装置の製作についてのものは,今年度も含

めて 5 テーマを扱っている.当稿では,これらを製

作事例として紹介するものである.

2. 概要

筆者は,2010(平成 22)年度から 2014(平成 26)

年度までは産技短水沢校の電気技術科,2015(平成

27)年度から 2016(平成 28)年度までは産技短の

電子技術科に勤務している.

表 1 に「楽器演奏装置製作に係るテーマ一覧」を

示す.楽器は,2015 年度までは打楽器を扱い,2016

年度は吹奏楽器とした.アクチュエータは,ソレノ

イドをほぼ毎回使っている.メインのマイコンは,

2015 年度まではルネサス・エレクトロニクス社製,

2016 年度はマイクロチップ社製のものを使った.

表 1.楽器演奏装置製作に係るテーマ一覧

年度 テーマ名 楽器 アクチュ

エータ

メインの

マイコン

選曲

機構

スト

レージ

2011

(H23)

マイコン

による

MIDI

制御

鉄琴

(ヤマハ)

ソレノイド

CB-

0847-

1440

H8-

3048f-

one

(ルネサス)

ボタン

スイッチ

2014 (H26)

自動演奏

楽器

の製作

鉄琴

(ヤマハ)

ソレノイド

CBS- 1240-

1280

SH- 7144F

(ルネサス)

タッチ

パネル

LCD

2015 (H27)

パイプシ

ロフォン

演奏装置

の製作

パイプシ

ロフォン

(自作)

ソレノイド

CBS- 1240-

1280

SH- 7144F

(ルネサス)

ボタン

スイッチ

SD

カード

カリンバ

演奏装置

の製作

カリンバ

(自作)

ステッピン

グモータ

SH-

7144F

(ルネサス)

ボタン

スイッチ

SD

カード

2016

(H28)

フルート

演奏装置

の製作

フルート

(NUVO)

ソレノイド

CBS-

1240-

1280

dsPIC

33FJ

256GP

710A

(マイクロ

チップ)

タッチ

パネル

LCD

SD

カード

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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号

[37]

3. 製作事例

ここでは,前述の 5 テーマについて,1 つずつ順

番に紹介する.

3.1 「マイコンによるMIDI制御」(2011)

図 1 は「マイコンによるMIDI制御」2)(以下,

「2011 の鉄琴」という)のテーマ名で製作した装

置外観の写真,図 2 は鉄琴に対するソレノイド配置

状況の写真,図 3 は選曲・再生・停止ボタンの写真,

図 4 は回路基板の写真,図 5 はブロック図,表 2 は

主要部材の一覧表である.

押ボタンスイッチは 8 個であるが,2 つのボタン

の同時押し操作も合わせて 11 曲を選曲できるよう

にした.ボタンを押すと選曲・再生が同時に実行さ

れ,停止させるときは,どのボタンを押しても止ま

る仕様である.

プログラム開発は,ベストテクノロジー社のホー

ムページから,無償でダウンロードできる「GCC

Developer Lite(v2.4.0.13r4)」を使い,C 言語で記述

した.演奏曲のデータは,MIDI の仕様に準拠した

形式で,C 言語の定数配列で組み込んだ.そのよう

なことから,このマイコンの ROM(128kB)の容

量内で,比較的短い曲を厳選し 11 曲とした.曲目

は,人気キャラクタ「アンパンマン」の曲や童謡を

ピックアップした.水沢校の楽園祭の「おもちゃ病

院」3)で子ども達が興味深げに視聴していた.

図 1.「2011 の鉄琴」の装置外観

図 2.「2011 の鉄琴」のソレノイド配置状況

図 3.「2011 の鉄琴」の選曲・再生・停止ボタン

図 4.「2011 の鉄琴」の回路基板

図 5.「2011 の鉄琴」のブロック図

表 2.「2011 の鉄琴」の主要部材

製品名 型番 メーカー名

鉄琴 TG-60 ヤマハ

電子キーボード EZ-J210 ヤマハ

ソレノイド

(DC24V,連続通電) CB08471440 タカハ機工

メインのマイコン H8-3048F-one ルネサス エレクトロニクス

スイッチング電源

(出力 24V/max 5A) 形 S8VS-12024 オムロン

スイッチング電源

(出力 5V/max 2A) 形 S8VS-01505 オムロン

3.2 「自動演奏楽器の製作」(2014)

図 6 は「自動演奏楽器の製作」4)(以下,「2014

の鉄琴」という)のテーマ名で製作した装置の上面

から見た写真,図 7 は装置正面に取り付けたタッチ

画面の写真,図 8 はブロック図,表 3 は主要部材の

一覧表である.

前回との大きな違いは,選曲等をタッチ画面から

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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号

[38]

行えるようにした点である.なお,マイコンを,

H8 マイコンから SH マイコンにし,ソレノイドも,

マレットとの接続し易さの点から別のものに変え

た.そして,鉄琴の 32 鍵全てを叩くようにした.

プログラム開発環境は前回と同様である.SH マ

イコンに変えたので,前回の 2 倍の ROM(256kB)

となり,前回同様,定数配列で演奏データを保存す

ることから,比較的長い曲を厳選し 8 曲とした.

また,この作品は,「第 2 回ソレコン」5)というソ

レノイド・コンテストに応募した.応募要項により,

動画投稿サイト「YouTube」にアップロードするこ

とになっており,現在でも,検索サイトで,「鉄琴

で千本桜」で検索するとヒットするので,興味のあ

る方は御高覧くだされば幸いである.なお,コンテ

ストでは,残念ながら入賞には至らなかった.

図 6.「2014 の鉄琴」の装置上面

図 7.「2014 の鉄琴」のタッチ画面

図 8.「2014 の鉄琴」のブロック図

表 3.「2014 の鉄琴」の主要部材

製品名 型番 メーカー名

鉄琴 TG-60 ヤマハ

電子キーボード EZ-J210 ヤマハ

ソレノイド

(DC24V,連続通電) CBS12401280 タカハ機工

メインのマイコン SH-7144F ルネサス エレクトロニクス

スイッチング電源

(出力 24V/max 5A) 形 S8VS-12024 オムロン

スイッチング電源

(出力 5V/max 2A) 形 S8VS-01505 オムロン

DC-DC コンバータ

(出力 3.3V/max 7.5A) STMGFS30243R3 コーセル

128×64 ドット RGB3 色

バックライト付 GLCD 搭

載タッチパネルアプリケ

ーション開発ボード

TPSA-600CR マイクロテクニカ

3.3 「パイプシロフォン演奏装置の製作」(2015)

図 9 は「パイプシロフォン演奏装置の製作」6)(以

下,「2015 のシロフォン」という)のテーマ名で製

作した装置外観の写真,図 10 はコントローラの写

真,図 11 はブロック図,表 4 は主要部材の一覧表

である.

前回までとの大きな違いは,楽器を自作した点,

及び,演奏曲データの外部記憶装置として SD カー

ドを新たに SH マイコンに組み込んだ点である.

楽器の製作は,アルミパイプを切断して,チュー

ナーで調律することで行った.そして,MIDI ファ

イルを外部記憶装置である SD カードに保存し,そ

れをマイコンで読み取りながらソレノイドを駆動

するようにした.

また,選曲・再生・停止は,押ボタンスイッチで

操作し,7 セグメント LED2 桁に選曲番号を表示す

るコントローラを製作した.このコントローラの制

御のために,PIC マイコン(PIC16F876A)を使い,

SH マイコンに,選曲・再生・停止の各信号を伝え

るようにした.

SH マイコンのプログラム開発は,ルネサスエレ

クトロニクス社の HEW(v4.09.01)を使い,C 言語

で行った.また,PIC マイコンのプログラム開発は,

マイクロチップ社の MPLAB(v8.92),CCS 社のコ

ンパイラ,プログラム書込ツールはマイクロチップ

社の PICkit3 を使った.これらの PIC マイコン用の

ものは,電子技術科のマイコン実習でも使っている.

なお,この作品は,動作はしたが,「音楽的」と

はお世辞にも言えないものとなってしまった.それ

は,構造設計上の欠陥であった.パイプシロフォン

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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号

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の下にソレノイドを配置して,ビー玉を介して叩く

という構造で,ソレノイドとビー玉との衝突音のほ

うが,パイプシロフォンの音よりも大きくなってし

まった.時間内にこれを改善することが出来ないま

まになったのが心残りであった.

図 9.「2015 のシロフォン」の装置外観

図 10.「2015 のシロフォン」のコントローラ

図 11.「2015 のシロフォン」のブロック図

表 4.「2015 のシロフォン」の主要部材

製品名 型番 メーカー名

ステンレスパイプ 外 径 16mm , 内 径14mm

モリ工業

電子キーボード NP-12 ヤマハ

ソレノイド

(DC24V,連続通電) CBS12401280 タカハ機工

メインのマイコン SH-7144F ルネサス エレクトロニクス

スイッチング電源

(出力 24V/max 5A) 形 S8VS-12024 オムロン

スイッチング電源

(出力 5V/max 2A) 形 S8VS-01505 オムロン

DC-DC コンバータ

(出力3.3V/max 7.5A) STMGFS30243R3 コーセル

マイコン

(コントローラ用) PIC16F876A マイクロチップ

3.4 「カリンバ演奏装置の製作」(2015)

最初に,「カリンバ」という楽器を紹介する.図

12 は「カリンバ」の外観である.アフリカ発祥の

もので,別名「ハンドオルゴール」とも呼ばれる.

演奏の仕方は,キー(棒)を指で上から下へ弾くこ

とで行う.なお,この写真のものは,カリンバの一

例であり,他にも多種多様なものが存在している.

図 12.カリンバ

(出典:ウィキペディアのカリンバのページ)

図 13 は「カリンバ演奏装置の製作」7)(以下,「2015

のカリンバ」という)のテーマ名で製作した装置外

観の写真,図 14 はブロック図,表 5 は主要部材の

一覧表である.

「2015 のシロフォン」との大きな違いは,楽器

をカリンバとし,ピアノ線を切断して製作した点で

ある.そして,アクチュエータはステッピングモー

タを使って,キーを弾く仕組みとした.

プログラム開発環境は,「2015 のシロフォン」と

同様である.

製作したカリンバは,演奏しているうちに,だん

だん音が狂ってしまい,調整が難しい楽器だという

ことが分かった.改良の余地はあるように思うので,

よい考えが浮かんだら再挑戦したいと考えている.

図 13.「2015 のカリンバ」の装置外観

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岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号

[40]

図 14.「2015 のカリンバ」のブロック図

表 5.「2015 のカリンバ」の主要部材

製品名 型番 メーカー名

ピアノ線 直径 1mm テトラ

電子キーボード A-49 ローランド

ステッピングモータ 42SIM-24D-DJK (共立エレショップ)

メインのマイコン SH-7144F ルネサス エレクトロニクス

スイッチング電源

(出力 24V/max 5A) 形 S8VS-12024 オムロン

スイッチング電源

(出力 5V/max 2A) 形 S8VS-01505 オムロン

DC-DC コンバータ

(出力 3.3V/max 7.5A) STMGFS30243R3 コーセル

マイコン

(コントローラ用) PIC16F876A マイクロチップ

3.5 「フルート演奏装置の製作」(2016)

図 15 は「フルート演奏装置の製作」8)(以下,「2016

のフルート」という)のテーマ名で製作した装置外

観の写真,図 16 は装置正面に取り付けたタッチ画

面の写真,図 17 は回路基板の写真,図 18 はブロッ

ク図,表 6 は主要部材の一覧表である.

前回までとの大きな違いは,吹奏楽器にしたこと

と,制御のメインとなるマイコンをルネサス・エレ

クトロニクス社製品からマイクロチップ社製品の

PIC マイコンにした点である.そして,吹奏楽器で

あるフルートなので,空圧制御で比例電磁弁が加わ

っている.

プログラム開発は,MPLAB(v8.92),コンパイ

ラ C30(v3.31)である.いずれもマイクロチップ社

のホームページから無償でダウンロードできる.ま

た,プログラム書込ツールは PICkit3 を使った.

フルートは,エアリード楽器ということで,上手

く吹ければ幅広い表現力を発揮できるが,そこまで

到達するためには,多くの音楽的素養が必要である

ことを痛感させられた.

図 15.「2016 のフルート」の装置外観

図 16.「2016 のフルート」のタッチ画面

図 17.「2016 のフルート」の回路基板

図 18.「2016 のフルート」のブロック図

Page 6: 楽器演奏装置の製作 Development of a Musical Instrument  · PDF file128×64 ドットrgb3 色 バックライト付glcd

岩手県立産業技術短期大学校紀要 第 17 号

[41]

表 6.「2016 のフルート」の主要部材

製品名 型番 メーカー名

フルート スチューデントフルート(青) NUVO

電子キーボード NP-12 ヤマハ

ソレノイド

(DC24V,連続通電) CBS12401280 タカハ機工

メインのマイコン dsPIC33FJ256GP710A マイクロチップ

スイッチング電源

(出力 24V/max 5A) 形 S8VS-12024 オムロン

DC-DC コンバータ

(出力3.3V/max 7.5A) STMGFS30243R3 コーセル

比例電磁弁 PVQ33-5G-16-01 SMC

タ ッ チ パ ネ ル 付LCD

M028C9325TP アイテンドー

4. おわりに

国内での楽器演奏装置関係の先進製作事例では,

電動楽器「パチモク」9)(木魚を使用)で有名な「明

和電機」や,「楽器演奏ロボット」10)(トランペッ

ト等を使用)で有名な「トヨタ自動車株式会社」等

がある.いずれも,アコースティック楽器(生楽器)

を使っている.これらは,人間が手動で演奏できる

ものを電動式にしたものであり,コンピュータによ

る自動演奏が可能である.

ここで,筆者は次のように考える.「いかに技術

が進歩しても,生楽器は,人間が演奏するのが一番

である.」と.聴衆は何に感動するのか?ピアニス

トは,その場の雰囲気に合わせて弾き方を変えてい

ると聞いたことがある.間違えずに弾くことだけで

はなく,表現力と言われるものがあり,音楽は奥が

深い.そして,人が感動するのは,それが「当り前」

ではないと気付いたときであると思う.「有り難い」

からこそ,希少価値があると感じるからこそのもの

であると考える.ここで,誤解のないように補足す

るが,筆者は,この世の中には「当り前のものなど

存在しない」と考えるように心掛けている.有名な

元プロテニスプレーヤーの受け売りではないが,よ

り多くの「有り難う」という気持ちで過ごしていき

たい.

それでは,なぜ,このような楽器演奏装置を製作

するのか?その一番の理由として筆者が考えるの

は,筆者のように楽器を上手く演奏できない者の発

想から生まれたものである.楽器を難なく演奏でき

る人は,わざわざ製作するより,演奏したほうが簡

単だと思うだろう.また,演奏技術を定量的にマニ

ュアル化して,上手でない人が,いくらかでも短期

間に楽器を上手に演奏できるようにしたいという

目論見もある.

現時点では,指導者の音楽的な素養が足りず,「そ

の曲の音が順番に鳴っているだけ」という状態であ

るので,少しずつでも進歩していきたいと考えてい

るところである.そして,卒業研究での取り組みで

あるので,他の科目よりも,指導者にはファシリテ

ーター(促進者)の姿勢・態度・役割が,ますます

必要だということを再認識した.

最後に,2015・2016(平成 27・28)年度の製作

では,当校内で,建築科から装置の木製フレーム等

を製作していただいたり,産業デザイン科で加工機

を使わせていただいたりと,その他,多くの方々の

ご協力の上に製作できたものである.皆様に心から

御礼申し上げます.有り難うございました.

参考文献

1) 矢巾町:広報やはば 12 月号 p.16「『音楽のま

ち やはば』宣言」,矢巾町役場

2) 髙橋恭兵,髙橋優太:平成 23 年度卒業研究論

文「マイコンによるMIDI制御」,岩手県立

産業技術短期大学校水沢校

3) 日本おもちゃ病院協会:「おもちゃ病院」,

http://toyhospital.org/

4) 竹田達也,松田拳:平成 26 年度卒業研究論文

「自動演奏楽器の製作」,岩手県立産業技術短

期大学校水沢校

5) タカハ機工:「ソレコン」,

http://www.takaha.co.jp/

6) 佐々木望,佐藤圭史:平成 27 年度卒業研究論

文「パイプシロフォン演奏装置の製作」,岩手

県立産業技術短期大学校

7) 宮田楽,村上啓人:平成 27 年度卒業研究論文

「カリンバ演奏装置の製作」,岩手県立産業技

術短期大学校

8) 畠山聡史,古舘翔太:平成 28 年度卒業研究論

文「フルート演奏装置の製作」,岩手県立産業

技術短期大学校

9) 明和電機:電動楽器「パチモク」,

http://www.maywadenki.com/

10) トヨタ自動車株式会社:トヨタ・パートナー

ロボット「楽器演奏ロボット」,

http://www.toyota.co.jp/