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改 定 現 行 備 考
参 考 資 料
1. 貯留効果の計算例 ·························································································· 152
2. ブランケット計算例 ························································································ 164
3. 堤体と地山高の関係について ············································································· 166
4. 表面遮水壁型工法 ·························································································· 168
5. 池内堆積泥土の固化処理 ·················································································· 184
6. ラビリンス堰の水理設計手法 ············································································· 194
7. 洪水吐の安定計算例 ························································································ 200
8. 緊急放流施設の設計例 ····················································································· 219
9. コスト縮減に向けた取組み及び新技術 ··································································· 223
10. 環境との調和に配慮した施工事例 ········································································ 232 11. ため池防災データベースと防災面への応用 ····························································· 235
12.ため池盛土斜面の簡易な強度調査方法(原位置せん断試験) ········································· 239
13.耐震対策工の事例 ··························································································· 244
14.ため池の簡易な耐震照査手法について ··································································· 247
参 考 資 料
1. 貯留効果の計算例 ·························································································· 133
2. ブランケット計算例 ······················································································· 144
3. 堤体と地山高の関係について ············································································ 146
4. 表面遮水壁型工法 ·························································································· 148
5. 池内堆積泥土の固化処理 ·················································································· 164
6. ラビリンス堰の水理設計手法 ············································································ 174
7. 洪水吐の安定計算例 ······················································································· 180
8. 緊急放流施設の設計例 ···················································································· 199
9. コスト縮減に向けた取組み及び新技術 ·································································· 203
10. 環境との調和に配慮した施工事例 ······································································· 212 11. ため池防災データベースと防災面への応用 ····························································· 214 12. ため池堤体土のせん断強度定数調査結果 ······························································· 218
151
改 定 現 行 備 考
1. 貯留効果の計算例 1.1. 諸条件
貯留効果算出の例として、下記のようなため池を想定する。
ため池貯水量 60,000 m3
ため池満水面積 1.67 ha ため池流域面積 林地 48.94 ha 耕地 0.24 ha 造成地 0.05 ha
降雨量データについては、日降雨量と 1 時間降雨量が得られているものとする。
1.2. 降雨強度式の作成
降雨強度式を作成するに当たっては、その地域に合う降雨強度式を選択する必要がある。
長期降雨強度式としてタルボットの式を用いるものとすると、日降雨量と 1 時間降雨量から降雨強度式を推
定する式は、下記のようになる。
なお、下記の計算式は「応用水文統計学 p.175」(1970,森北出版) を参照している。
IN24
= RN24・N N =
bT'a
+
a′= b +24 1-
・-24= t
N
tN tb
24=N
tNt
N II IN
t = RN
t・(24/t)
ここで、IN24 : N 年確率 24 時間降雨強度 (mm/24 h)
RN24 : N 年確率 24 時間降雨量 (mm)
N : N 年確率特性係数値
Nt : N 年確率 t 時間特性係数値
INt : N 年確率 t 時間降雨強度 (mm/24 h)
RNt : N 年確率 t 時間降雨量 (mm)
t : 任意の時間、ここでは 1 (h) T : 降雨継続時間 (h) a′、b : 求めるべき定数
ここでは、降雨強度データは下記のとおり決まっているものとする。
200 年確率日降雨量(= R20024
= I20024) 325 mm/24 h 200 年確率 1 時間降雨量(R200
1) 77 mm/h I
2001 = 77×( 24/1 )
=1848 mm/24 h
1. 貯留効果の計算例 1.1. 諸条件
貯留効果算出の例として、下記のようなため池を想定する。
ため池貯水量 60,000 m3
ため池満水面積 1.67 ha ため池流域面積 林地 48.94 ha 耕地 0.24 ha 造成地 0.05 ha
降雨量データについては、日降雨量と 1 時間降雨量が得られているものとする。
1.2. 降雨強度式の作成
降雨強度式を作成するに当たっては、その地域に合う降雨強度式を選択する必要がある。
長期降雨強度式としてタルボットの式を用いるものとすると、日降雨量と 1 時間降雨量から降雨強度式を推
定する式は、下記のようになる。
なお、下記の計算式は「応用水文統計学 p.175」(1970,森北出版) を参照している。
IN24 = RN24・N N =
bT'a
+
a′= b +24 1-
・-24= t
N
tN tb
24=N
tNt
N II IN
t = RN
t・(24/t)
ここで、IN24 : N 年確率 24 時間降雨強度 (mm/24 h) RN24 : N 年確率 24 時間降雨量 (mm)
N : N 年確率特性係数値
Nt : N 年確率 t 時間特性係数値
INt : N 年確率 t 時間降雨強度 (mm/24 h) RNt : N 年確率 t 時間降雨量 (mm)
t : 任意の時間、ここでは 1 (h) T : 降雨継続時間 (h) a′、b : 求めるべき定数
ここでは、降雨強度データは下記のとおり決まっているものとする。
200 年確率日降雨量(= R20024
= I20024) 325 mm/24 h 200 年確率 1 時間降雨量(R200
1) 77 mm/h I
2001 = 77×( 24/1 )
=1848 mm/24 h
参考資料参考資料
152
改 定 現 行 備 考 2001=1848/325
=5.686
b =(24-5.686×1)/(5.686-1)
=3.908
a′ =3.908 + 24
=27.908
3.908+
27.908=200 T
3.908+
27.908325=
24200 T
I
3.908+
9070.100=
T (mm/24 h)
3.908+
377.921=
T ( mm/h ) ··················································· 参式(1.2.1)
洪水到達時間は、角屋・福島式及び降雨強度式との同時満足解として 57 min が得られる。本計算例では洪水
到達時間を単位止めに丸め、解析のための計算間隔とし、便宜上長期降雨強度式とした(ただし、短期降雨
データが容易に入手できる場合は、洪水到達時間により適切な計算間隔や短期降雨強度式を検討する必要が
ある)。
よって、ここでの計算間隔は 1.0 h とし、長期降雨強度式により計算することとする。
1.3. 流入ハイドログラフの作成
1.3.1 各時間における降雨強度の計算
タルボット式の場合の、各時間における降雨強度の計算を示す。
なお、降雨波形は後方集中とする。
ただし、地区により適正な降雨波形が得られる場合にはこの
限りではない。
)/(+
= hmmbT
aI
参式(1.2.1)から、 a = 377.921
b = 3.908
時間 t1 から t2 までの降雨強度を算出するには、まず上記のタルボット式に t1 を代入して降雨強度を算出し、
その値に t1 時間を掛けると t1 時間までの降雨量が算出される。
2001=1848/325
=5.686
b =(24-5.686×1)/(5.686-1)
=3.908
a′ =3.908 + 24
=27.908
3.908+
27.908=200 T
3.908+
27.908325=
24200 T
I
3.908+
9070.100=
T (mm/24 h)
3.908+
377.921=
T ( mm/h ) ·················································· 参式(1.2.1)
洪水到達時間は、角屋・福島式及び降雨強度式との同時満足解として 57 min が得られる。本計算例では洪
水到達時間を単位止めに丸め、解析のための計算間隔とし、便宜上長期降雨強度式とした(ただし、短期降
雨データが容易に入手できる場合は、洪水到達時間により適切な計算間隔や短期降雨強度式を検討する必要
がある)。
よって、ここでの計算間隔は 1.0 h とし、長期降雨強度式により計算することとする。
1.3. 流入ハイドログラフの作成
1.3.1 各時間における降雨強度の計算
タルボット式の場合の、各時間における降雨強度の計算を示す。
なお、降雨波形は後方集中とする。
ただし、地区により適正な降雨波形が得られる場合にはこの
限りではない。
)/(+
= hmmbT
aI
参式(1.2.1)から、 a = 377.921
b = 3.908
時間 t1 から t2 までの降雨強度を算出するには、まず上記のタルボット式に t1 を代入して降雨強度を算出し、
その値に t1 時間を掛けると t1 時間までの降雨量が算出される。
ピーク時までの時間(tp) 全降雨時間(T )
t1
t2
t
I
ピーク時までの時間(tp) 全降雨時間(T )
t1
t2
t
I
153
改 定 現 行 備 考
1
1
1
+=
tbt
aR t (mm) ······························································ 参式(1.3.1)
同様に、t2 時間までの降雨量も算出する。
2
2
2
+= t
btaR t (mm) ··························································· 参式(1.3.2)
参式(1.3.2)から参式(1.3.1)を引けば、時間 t1 から t2 までの降雨量が得られる。この降雨量を、t1 ~ t2 まで
の時間で割れば、時間 t1 から t2 までの平均降雨量、すなわち降雨強度となる。
)-(
1・
+
・-
+
・=
121
1
2
221
ttbtta
bttaI t
t
btbtttba
+
1-
+
1・
-
・=
2112
(mm/h) ··································· 参式(1.3.3)
参式(1.2.1)で得られた係数を参式(1.3.3)に代入する。また、 t2 - t1 は計算間隔の 1.0 である。
よって、
3.908+
1-
3.908+
11476.915=
21
21
ttI t
t ··································· 参式(1.3.4)
となる。
参式(1.3.4)を用いて、1.0 h おきの降雨強度を算出する。
t1 = 0.0 h、t2 = 1.0 h の場合
3.908+1.0
1-
3.908+0.0
11476.915=01
00..I
hmm/77.001=
t1 = 1.0 h、t2 = 2.0 h の場合
3.908+2.0
1-
3.908+1.0
11476.915=2
100..I
hmm/50.934=
t1 = 2.0 h、t2 = 3.0 h の場合
3.908+3.0
1-
3.908+2.0
11476.915=3
200
.
.I
hmm/36.188= 以下、逐次計算していく。
1
1
1
+=
tbt
aR t (mm) ······························································ 参式(1.3.1)
同様に、t2 時間までの降雨量も算出する。
2
2
2
+= t
btaR t (mm) ··························································· 参式(1.3.2)
参式(1.3.2)から参式(1.3.1)を引けば、時間 t1 から t2 までの降雨量が得られる。この降雨量を、t1 ~ t2 まで
の時間で割れば、時間 t1 から t2 までの平均降雨量、すなわち降雨強度となる。
)-(
1・
+
・-
+
・=
121
1
2
221
ttbtta
bttaI t
t
btbtttba
+
1-
+
1・
-
・=
2112
(mm/h) ··································· 参式(1.3.3)
参式(1.2.1)で得られた係数を参式(1.3.3)に代入する。また、 t2 - t1 は計算間隔の 1.0 である。
よって、
3.908+
1-
3.908+
11476.915=
21
21
ttI t
t ··································· 参式(1.3.4)
となる。
参式(1.3.4)を用いて、1.0 h おきの降雨強度を算出する。
t1 = 0.0 h、t2 = 1.0 hの場合
3.908+1.0
1-
3.908+0.0
11476.915=01
00..I
hmm/77.001=
t1 = 1.0 h、t2 = 2.0 hの場合
3.908+2.0
1-
3.908+1.0
11476.915=2
100..I
hmm/50.934=
t1 = 2.0 h、t2 = 3.0 hの場合
3.908+3.0
1-
3.908+2.0
11476.915=3
200
.
.I
hmm/36.188= 以下、逐次計算していく。
154
改 定 現 行 備 考 計算の結果を、後方集中波形に並べると以下の表のようになる。
番号 時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h) 使用降雨強度
(後方集中)(mm/h) 番号 時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h) 使用降雨強度
(後方集中)(mm/h)
1 1:00 77.001 1.967 13 13:00 5.491 6.228
2 2:00 50.934 2.119 14 14:00 4.878 7.123
3 3:00 36.188 2.289 15 15:00 4.362 8.227
4 4:00 27.036 2.480 16 16:00 3.924 9.609
5 5:00 20.966 2.697 17 17:00 3.548 11.370
6 6:00 16.734 2.943 18 18:00 3.224 13.665
7 7:00 13.665 3.224 19 19:00 2.943 16.734
8 8:00 11.370 3.548 20 20:00 2.697 20.966
9 9:00 9.609 3.924 21 21:00 2.480 27.036
10 10:00 8.227 4.362 22 22:00 2.289 36.188
11 11:00 7.123 4.878 23 23:00 2.119 50.934
12 12:00 6.228 5.491 24 24:00 1.967 77.001
1.3.2 流入ハイドログラフ
降雨強度から、ため池流入洪水のハイドログラフを算出する。
流入ハイドログラフは、降雨と同様の波形とする。
本来は、流出計算を行って算出するが、ため池では既往の水文資料が乏しい場合が多いと考えられるため、
ここでは簡易的に、時間遅れを考慮した合成合理式により算定した流入ハイドログラフ(計算結果)を、次
頁の表に示す。
なお、時間遅れを考慮した合成合理式の計算に当たっては、洪水到達時間が57min≒60min であることから、
時間区分を10min とし、1時間を6区分して計算を行い、各時間流出量は10min~60min の平均値とした。
[参考]
本来の流出計算は、土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 計画「排水」に示されている計算方法(貯
留関数法、タンクモデル、キネマティックウェーブ法)等を参考にするとよい。
計算の結果を、後方集中波形に並べると以下の表のようになる。
番号時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h)使用降雨強度
(後方集中)(mm/h) 番号時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h) 使用降雨強度
(後方集中)(mm/h) 1 1:00 77.001 1.967 13 13:00 5.491 6.228
2 2:00 50.934 2.119 14 14:00 4.878 7.123
3 3:00 36.188 2.289 15 15:00 4.362 8.227
4 4:00 27.036 2.480 16 16:00 3.924 9.609
5 5:00 20.966 2.697 17 17:00 3.548 11.370
6 6:00 16.734 2.943 18 18:00 3.224 13.665
7 7:00 13.665 3.224 19 19:00 2.943 16.734
8 8:00 11.370 3.548 20 20:00 2.697 20.966
9 9:00 9.609 3.924 21 21:00 2.480 27.036
10 10:00 8.227 4.362 22 22:00 2.289 36.188
11 11:00 7.123 4.878 23 23:00 2.119 50.934
12 12:00 6.228 5.491 24 24:00 1.967 77.001
1.3.2 流入ハイドログラフ
降雨強度から、ため池流入洪水のハイドログラフを算出する。
流入ハイドログラフは、降雨と同様の波形とする。
本来は、流出計算を行って算出するが、ここでは簡易的に、各時間の洪水流入量を各時間の降雨強度から、
降雨と同様の時間分布により算定する。
なお、ため池への流入量は、各時間の流量を20%割増した数値とする。
流入ハイドログラフ(計算結果)を、以下の表に示す。
番号時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h)設計流量
(m3/s) 流入量
(m3/s) 番号時間
(h:m)
降雨強度
(mm/h) 設計流量
(m3/s) 流入量
(m3/s) 1 1:00 1.967 0.2242 0.269 13 13:00 6.228 0.7097 0.852
2 2:00 2.119 0.2415 0.290 14 14:00 7.123 0.8117 0.974
3 3:00 2.289 0.2609 0.313 15 15:00 8.227 0.9375 1.125
4 4:00 2.480 0.2826 0.339 16 16:00 9.609 1.0950 1.314
5 5:00 2.697 0.3074 0.369 17 17:00 11.370 1.2957 1.555
6 6:00 2.943 0.3354 0.402 18 18:00 13.665 1.5573 1.869
7 7:00 3.224 0.3674 0.441 19 19:00 16.734 1.9070 2.288
8 8:00 3.548 0.4043 0.485 20 20:00 20.966 2.3893 2.867
9 9:00 3.924 0.4472 0.537 21 21:00 27.036 3.0810 3.697
10 10:00 4.362 0.4971 0.597 22 22:00 36.188 4.1240 4.949
11 11:00 4.878 0.5559 0.667 23 23:00 50.934 5.8044 6.965
12 12:00 5.491 0.6258 0.751 24 24:00 77.001 8.7750 10.530
155
改 定 現 行 備 考
156
改 定 現 行 備 考 1.4. 貯留効果の計算
1.4.1 諸条件
ため池が満水位である時、降雨が発生した場合の貯留効果について検討する。
流域からの流入 洪水吐からの放流 FWL
出発水深は FWL とし、定義上、その水深を 0 とする。
また、貯水量の変化に伴う水深の変化を算出するために、h–V 曲線を必要とするが、一般にそれらのデータ
は入手しにくいので、満水面積に FWL 以上の水深を掛けたものを貯留量とする。
よって、満水面積を 16,700 m2 とすると、下記のような h–V 曲線が描ける(直線近似)。
水深 h
16,700m3
1m
貯留量 V h–V 曲線
洪水吐は、越流堰式とする。
B
h
よって、このときの流量公式は下記のようになる。
Q = C・B・h
3/2
ここで、Q :放流量 (m3/s) C :越流係数、2.1とする。
B :堰の有効幅、4.4 m とする。
h :水深(越流総水頭)(m)
1.4. 貯留効果の計算
1.4.1 諸条件
ため池が満水位である時、降雨が発生した場合の貯留効果について検討する。
流域からの流入 洪水吐からの放流 FWL
出発水深は FWL とし、定義上、その水深を 0 とする。
また、貯水量の変化に伴う水深の変化を算出するために、h–V 曲線を必要とするが、一般にそれらのデー
タは入手しにくいので、満水面積に FWL 以上の水深を掛けたものを貯留量とする。
よって、満水面積を 16,700 m2 とすると、下記のような h–V 曲線が描ける(直線近似)。
水深 h
16,700m3
1m
貯留量 Vh–V 曲線
洪水吐は、越流堰式とする。
B
h
よって、このときの流量公式は下記のようになる。
Q = C・B・h
3/2
ここで、Q :放流量 (m3/s) C :越流係数、2.1とする。
B :堰の有効幅、4.4 m とする。
h :水深(越流総水頭)(m)
157
改 定 現 行 備 考 1.4.2 洪水調節計算
ため池への流入及び放流による水位変動を算出する計算式として、以下の式を用いる。
V(t + t)=V( t )+{ I (t + t/2)-O(t+ t/2)}・ t ···································· 参式(1.4.1)
2
)(+)+(=2)+(
tItΔtI/tΔtI
2
)(+)+(=2)+(
tOttO/tΔtO Δ
ここで、V :貯留量 (m3)
I、O :流入量及び放流量 (m3/s) t :計算時間のピッチ 1.0 h → 3600 s
計算手順としては、下記のようになる。
① ハイドログラフから、I( t + t/2)を算出
② 水深 h を仮定して、O( t + t/2)を算出
③ 参式(1.4.1)から V( t + t)を算出
④ V( t + t)を h –V 曲線にあてはめて h0 を算出
⑤ |h-h0|≦許容誤差(e = 0.0001 m とする)であれば、次の計算に移る。
そうでなければ②に戻り、|h-h0| ≦ e となるまで計算を繰返す。
計算例を、次に示す。
(1) t:0.0~1.0 時間の場合 V(t) = 0 m3
I(t) = 0 m3/s
I(t+ t) = 0.269 m3/s
I(t+ t/ 2)
=0.1345 m3/s O(t) = m3/s
a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.02000 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.020003/2
= 0.02613 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01307 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01307)×3600
= 437.148 m3
h0 = 0.02618 m
|h-h0| = 0.00618 m > e
1.4.2 洪水調節計算
ため池への流入及び放流による水位変動を算出する計算式として、以下の式を用いる。
V(t + t)=V( t )+{ I (t + t/2)-O(t+ t/2)}・ t ································· 参式(1.4.1)
2
)(+)+(=2)+(
tItΔtI/tΔtI
2
)(+)+(=2)+(
tOttO/tΔtO Δ
ここで、V :貯留量 (m3)
I、O :流入量及び放流量 (m3/s) t :計算時間のピッチ 1.0 h → 3600 s
計算手順としては、下記のようになる。
① ハイドログラフから、I( t + t/2)を算出
② 水深 h を仮定して、O( t + t/2)を算出
③ 参式(1.4.1)から V( t + t)を算出
④ V( t + t)を h –V 曲線にあてはめて h0 を算出
⑤ |h-h0|≦許容誤差(e = 0.0001 m とする)であれば、次の計算に移る。
そうでなければ②に戻り、|h-h0| ≦ e となるまで計算を繰返す。
計算例を、次に示す。
(1) t:0.0~1.0 時間の場合 V(t) = 0 m3
I(t) = 0 m3/s
I(t+ t) = 0.269 m3/s
I(t+ t/ 2)
=0.1345 m3/s O(t) = m3/s
a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.02000 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.020003/2
= 0.02613 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01307 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01307)×3600
= 437.148 m3
h0 = 0.02618 m
|h-h0| = 0.00618 m > e
2
0+0.02613 =
2
0+0.269=
2
0+0.02613 =
2
0+0.269=
158
改 定 現 行 備 考 b. 2 回目
t 後の水深 h を 0.02618 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.026183/2
= 0.03914 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01957 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01957)×3600
= 413.748m3
h0 = 0.02478 m
|h-h0| = 0.00140 m > e c. 3 回目
t 後の水深 h を 0.02478 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.024783/2
= 0.03604 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01802 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01802)×3600
= 419.328 m3
h0 = 0.02511 m
|h-h0| = 0.00033 m > e d. 4 回目
t 後の水深 h を 0.02511 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.025113/2
= 0.03677 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01839 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01839)×3600
= 417.996 m3
h0 = 0.02503 m
|h-h0| = 0.00008 m < e よって、水深 h は 0.025 m である。
b. 2 回目
t 後の水深 h を 0.02618 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.026183/2
= 0.03914 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01957 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01957)×3600
= 413.748m3
h0 = 0.02478 m
|h-h0| = 0.00140 m > e c. 3 回目
t 後の水深 h を 0.02478 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.024783/2
= 0.03604 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01802 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01802)×3600
= 419.328 m3
h0 = 0.02511 m
|h-h0| = 0.00033 m > e d. 4 回目
t 後の水深 h を 0.02511 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.025113/2
= 0.03677 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.01839 m3/s V(t+ t) = 0+(0.1345-0.01839)×3600
= 417.996 m3
h0 = 0.02503 m
|h-h0| = 0.00008 m < e よって、水深 h は 0.025 m である。
2
0+0.03914 =
2
0+0.03604 =
2
0+0.03677 =
2
0+0.03914 =
2
0+0.03604 =
2
0+0.03677 =
159
改 定 現 行 備 考 (2) t:1.0~2.0時間の場合
V(t) = 417.996 m3
I(t) = 0.269 m3/s
I(t+ t) = 0.290 m3/s
I(t+ t/ 2)
= 0.2795 m3/s O(t) = 0.03677 m3/s
a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.065 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.0653/2
= 0.15312 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.09495 m3/s V(t+ t) = 417.996+(0.2795-0.09495)×3600
= 1082.376 m3
h0 = 0.06481 m
|h-h0| = 0.00019 m > e b. 2 回目
t 後の水深 h を 0.06481 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.064813/2
= 0.15245 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.09461 m3/s V(t+ t) = 417.996+(0.2795-0.09461)×3600
= 1083.600 m3
h0 = 0.06489 m
|h-h0| = 0.00008 m <e よって、水深 h は 0.065 m である。
(3) t:2.0~3.0時間の場合
V(t) = 1083.600 m3
I(t) = 0.290 m3/s
I(t+ t) = 0.313 m3/s
I(t+ t/ 2)
= 0.3015 m3/s O(t) = 0.15245 m3/s
(2) t:1.0~2.0時間の場合
V(t) = 417.996 m3
I(t) = 0.269 m3/s
I(t+ t) = 0.290 m3/s
I(t+ t/ 2)
= 0.2795 m3/s O(t) = 0.03677 m3/s
a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.065 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.0653/2
= 0.15312 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.09495 m3/s V(t+ t) = 417.996+(0.2795-0.09495)×3600
= 1082.376 m3
h0 = 0.06481 m
|h-h0| = 0.00019 m > e b. 2 回目
t 後の水深hを 0.06481 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.064813/2
= 0.15245 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.09461 m3/s V(t+ t) = 417.996+(0.2795-0.09461)×3600
= 1083.600 m3
h0 = 0.06489 m
|h-h0| = 0.00008 m <e よって、水深 h は 0.065 m である。
(3) t:2.0~3.0時間の場合
V(t) = 1083.600 m3
I(t) = 0.290 m3/s
I(t+ t) = 0.313 m3/s
I(t+ t/ 2)
= 0.3015 m3/s O(t) = 0.15245 m3/s
2
0.290+0.269=
2
0.03677+0.15312=
2
0.03677+0.15245=
2
0.313+0.290=
2
0.290+0.269=
2
0.03677+0.15312=
2
0.03677+0.15245=
2
0.313+0.290=
160
2
0.15245+0.22898=
2
0.15245+0.22898=
改 定 現 行 備 考 a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.085 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.0853/2
= 0.22898 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19072 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19072)×3600
= 1482.408 m3
h0 = 0.08877 m
|h-h0| = 0.00377 m > e b. 2 回目
t 後の水深 h を 0.08877 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.088773/2
= 0.24438 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19842 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19842)×3600
= 1454.688 m3
h0 = 0.08711 m
|h-h0| = 0.00166 m >e c. 3 回目
t 後の水深 h を 0.08711 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087113/2
= 0.23756 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19501 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19501)×3600
= 1466.964 m3
h0 = 0.08784 m
|h-h0| = 0.00073 m >e
a. 1 回目
t 後の水深 h を 0.085 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.0853/2
= 0.22898 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19072 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19072)×3600
= 1482.408 m3
h0 = 0.08877 m
|h-h0| = 0.00377 m > e b. 2 回目
t 後の水深hを 0.08877 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.088773/2
= 0.24438 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19842 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19842)×3600
= 1454.688 m3
h0 = 0.08711 m
|h-h0| = 0.00166 m >e c. 3 回目
t 後の水深hを 0.08711 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087113/2
= 0.23756 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19501 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19501)×3600
= 1466.964 m3
h0 = 0.08784 m
|h-h0| = 0.00073 m >e
2
0.15245+0.24438=
2
0.15245+0.23756=
2
0.15245+0.24438=
2
0.15245+0.23756=
161
改 定 現 行 備 考 d. 4 回目
t 後の水深 h を 0.08784 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087843/2
= 0.24055 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19650 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19650)×3600
= 1461.600 m3
h0 = 0.08752 m
|h-h0| = 0.00032 m >e e. 5 回目
t 後の水深 h を 0.08752 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087523/2
= 0.23924 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19585 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19585)×3600
= 1463.940 m3
h0 = 0.08766 m
|h-h0| = 0.00014 m >e f. 6 回目
t 後の水深 h を 0.08766 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087663/2
= 0.23981 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19613 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19613)×3600
= 1462.932 m3
h0 = 0.08760 m
|h-h0| = 0.00006 m <e よって、水深 h は0.088 m である。
d. 4 回目
t 後の水深hを 0.08784 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087843/2
= 0.24055 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19650 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19650)×3600
= 1461.600 m3
h0 = 0.08752 m
|h-h0| = 0.00032 m >e e. 5 回目
t 後の水深hを 0.08752 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087523/2
= 0.23924 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19585 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19585)×3600
= 1463.940 m3
h0 = 0.08766 m
|h-h0| = 0.00014 m >e f. 6 回目
t 後の水深hを 0.08766 m と仮定すると、
O(t+ t) = 2.1×4.4×0.087663/2
= 0.23981 m3/s
O(t+ t/ 2)
= 0.19613 m3/s V(t+ t) = 1083.600+(0.3015-0.19613)×3600
= 1462.932 m3
h0 = 0.08760 m
|h-h0| = 0.00006 m <e よって、水深hは0.088 m である。
2
0.15245+0.24055=
2
0.15245+0.23924=
2
0.15245+0.23981=
2
0.15245+0.24055=
2
0.15245+0.23924=
2
0.15245+0.23981=
162
改 定 現 行 備 考 以下、逐次計算していく。計算結果として下記の表を得る。
時間
(h:m)
流入量
(m3/s) 放流量
(m3/s) 水位
(m) 備考
時間
(h:m)
流入量
(m3/s)放流量
(m3/s) 水位
(m) 備考
1:00 0.269 0.037 0.025 14:00 0.974 0.886 0.209
2:00 0.290 0.153 0.065 15:00 1.125 1.021 0.230
3:00 0.313 0.239 0.088 16:00 1.314 1.189 0.255
4:00 0.339 0.294 0.100 17:00 1.555 1.404 0.285
5:00 0.369 0.333 0.109 18:00 1.869 1.682 0.321
6:00 0.402 0.368 0.117 19:00 2.288 2.052 0.367
7:00 0.441 0.404 0.124 20:00 2.867 2.561 0.425
8:00 0.485 0.445 0.132 21:00 3.697 3.288 0.502
9:00 0.537 0.492 0.142 22:00 4.949 4.378 0.608
10:00 0.597 0.547 0.152 23:00 6.965 6.123 0.760
11:00 0.667 0.610 0.163 24:00 10.530 9.183 0.996 最大
12:00 0.751 0.686 0.177 25:00 0.000 4.687 0.636
13:00 0.852 0.776 0.192 26:00 0.000 0.290 0.100
1.4.3 計算結果
計算結果から、最大の水深(総越流水頭)は 0.996 m となる。
1.4.4 参 考
貯留効果を考慮しないとした場合、設計洪水流量は、QP×1.2=10.530m3となる。
以下、逐次計算していく。計算結果として下記の表を得る。
時間
(h:m)
流入量
(m3/s)放流量
(m3/s)水位
(m) 備考
時間
(h:m)
流入量
(m3/s)放流量
(m3/s) 水位
(m) 備考
1:00 0.269 0.037 0.025 14:00 0.974 0.886 0.209
2:00 0.290 0.153 0.065 15:00 1.125 1.021 0.230
3:00 0.313 0.239 0.088 16:00 1.314 1.189 0.255
4:00 0.339 0.294 0.100 17:00 1.555 1.404 0.285
5:00 0.369 0.333 0.109 18:00 1.869 1.682 0.321
6:00 0.402 0.368 0.117 19:00 2.288 2.052 0.367
7:00 0.441 0.404 0.124 20:00 2.867 2.561 0.425
8:00 0.485 0.445 0.132 21:00 3.697 3.288 0.502
9:00 0.537 0.492 0.142 22:00 4.949 4.378 0.608
10:00 0.597 0.547 0.152 23:00 6.965 6.123 0.760
11:00 0.667 0.610 0.163 24:00 10.530 9.183 0.996 最大
12:00 0.751 0.686 0.177 25:00 0.000 4.687 0.636
13:00 0.852 0.776 0.192 26:00 0.000 0.290 0.100
1.4.3 計算結果
計算結果から、最大の水深(総越流水頭)は 0.996 m となる。
1.4.4 参 考
貯留効果を考慮しないとした場合、設計洪水流量は、QP×1.2=10.530m3となる。
163
改 定 現 行 備 考
2. ブランケット計算例 人工ブランケットの必要長さについて計算例を示す。適用する条件は次のとおりとする。
透水性地盤中の動水勾配線 ブランケットによる全損失水頭
透水性地盤
難透水性地盤 Xr
X
h=5.0m
Z b=1.5
m
Z f=4.0m
Xd=31.5m
Kb=1.0×10-7 m/s
Kf=2.0×10-5 m/s
qf :基礎地盤の許容漏水量 60 ・min-1・(100 m)-1
=1.0×10-5 m3・s-1・m-1
Kf :透水性地盤の透水係数 2.0×10-3
cm/s=2.0×10-5 m/s
Kb :ブランケットの透水係数 1.0×10-5 cm/s=1.0×10-7
m/s Zf :透水性基礎の厚さ 4.0 m h :貯水位と下流側水位との差(全損失水頭) 5.0 m Zb :ブランケットの厚さ 1.5 m(仮定) X :ブランケットの必要長さ Xd :堤体の底幅 31.5 m Xr :有効浸透路長
(1) 有効浸透路長の計算
dr
fff XX
hZKq
+
・・= 5-
5-
10 1.0=31.5+
5.0 4.0 10 2.0=
rX
∴ rX =8.5 m (この段階で、Xr ≦ 0 となる場合は、ブランケットは不要となる)
(2) ブランケットの必要長さの計算
0.029=4.0102.01.5
101.0=
・・=
5-
7-
ffb
b
ZKZKa
1)+(
1-=
2
2
aX
aX
r eaeX
ここで、e2aX = Y とすると、
2. ブランケット計算例 人工ブランケットの必要長さについて計算例を示す。適用する条件は次のとおりとする。
透水性地盤中の動水勾配線 ブランケットによる全損失水頭
透水性地盤
難透水性地盤 Xr
X
h=5.0m
Z b=1.5
m
Z f=4.0m
Xd=31.5m
Kb=1.0×10-7 m/s
Kf=2.0×10-5 m/s
qf :基礎地盤の許容漏水量 60 ・min-1・(100 m)-1
=1.0×10-5 m3・s-1・m-1
Kf :透水性地盤の透水係数 2.0×10-3
cm/s=2.0×10-5 m/s
Kb :ブランケットの透水係数 1.0×10-5 cm/s=1.0×10-7
m/s Zf :透水性基礎の厚さ 4.0 m h :貯水位と下流側水位との差(全損失水頭) 5.0 m Zb :ブランケットの厚さ 1.5 m(仮定) X :ブランケットの必要長さ Xd :堤体の底幅 31.5 m Xr :有効浸透路長
(1) 有効浸透路長の計算
dr
fff XX
hZKq
+
・・= 5-
5-
10 1.0=31.5+
5.0 4.0 10 2.0=
rX
∴ rX =8.5 m (この段階で、Xr ≦ 0 となる場合は、ブランケットは不要となる)
(2) ブランケットの必要長さの計算
0.029=4.0102.01.5
101.0=
・・=
5-
7-
ffb
b
ZKZKa
1)+(
1-=
2
2
aX
aX
r eaeX
ここで、e2aX = Y とすると、
参考資料参考資料
164
改 定 現 行 備 考
r
r
aXaXY
-1
+1=
∴ 1.7=8.50.029-1
8.50.029+1=
Y
∴ e2aX = 1.7 より、loge 1.7 = 2 aX
∴ loge 1.7 = 0.53 = 2×0.029×X ∴ X = 9.1 m ただし、Y ≦ 0 となる場合は、条件を変えて再計算する。
r
r
aXaXY
-1
+1=
∴ 1.7=8.50.029-1
8.50.029+1=
Y
∴ e2aX = 1.7 より、loge 1.7 = 2 aX
∴ loge 1.7 = 0.53 = 2×0.029×X ∴ X = 9.1 m ただし、Y ≦ 0 となる場合は、条件を変えて再計算する。
165
改 定 現 行 備 考
3. 堤体と地山高の関係について 堤体の地山への取付け高は堤体計画高とすることが望ましいが、ため池周辺の地形状況がそれを許さない
場合も想定される。 地山に堤体を計画高で取付けることが地形条件等により困難な場合は、以下の例を参考に対処する。 (例 1) ため池周辺地山が堤体計画高より低い場合
堤体部起・終点の一部が、地形条件等により巻込み堤の形状を呈して、地山部にすり付くような場合、
すり付け部の地山の地形、地質、植生条件等を勘案しつつ、堤体への影響のない地点ですり付けるものと
する。 たとえば、参図-3.1 のように、地山傾斜が緩く、堤体盛土延長が過度に長くなる場合は、堤体への悪影
響のないことを見極めた上で、地山標高が堤頂標高より 1 m 低い地点までを本堤部とみなし、その外側に
おいて地山部にすり付ける。すり付け部の終点位置は、地山標高が波の打上げ高さ以上となる点とするの
がよい。なお、すり付け区間は地山の状況により、パラペットを施工する場合もある。
堤 長
1m
(HWL+波の打上げ高さ)以上
堤頂
すり付け区間
▽
参図-3.1 本堤起部・終点のすり付け(1)
3. 堤体と地山高の関係について 堤体の地山への取付け高は堤体計画高とすることが望ましいが、ため池周辺の地形状況がそれを許さない
場合も想定される。 地山に堤体を計画高で取付けることが地形条件等により困難な場合は、以下の例を参考に対処する。 (例 1) ため池周辺地山が堤体計画高より低い場合
堤体部起・終点の一部が、地形条件等により巻込み堤の形状を呈して、地山部にすり付くような場合、
すり付け部の地山の地形、地質、植生条件等を勘案しつつ、堤体への影響のない地点ですり付けるものと
する。 たとえば、参図-3.1 のように、地山傾斜が緩く、堤体盛土延長が過度に長くなる場合は、堤体への悪影
響のないことを見極めた上で、地山標高が堤頂標高より 1 m 低い地点までを本堤部とみなし、その外側に
おいて地山部にすり付ける。すり付け部の終点位置は、地山標高が波の打上げ高さ以上となる点とするの
がよい。なお、すり付け区間は地山の状況により、パラペットを施工する場合もある。
堤 長
1m
(HWL+波の打上げ高さ)以上
堤頂
すり付け区間
▽
参図-3.1 本堤起部・終点のすり付け(1)
参考資料参考資料
166
改 定 現 行 備 考 (例 2) 洪水吐周辺の地山が堤体計画標高より低い場合
参図-3.2 のように、洪水吐周辺の地山(同図は地山部分が道路の例)が堤体計画高より低い場合には、
道路との境にパラペットや副堤を設けることがある。 単純に道路にすり付ける場合は、地山高(路面高)が(HWL+波の打上げ高さ)以上あればよい。
(HWL+波の打上げ高さ)以上
道路 HWL
堤 体
参図-3.2 本堤起部・終点のすり付け(2)
(例 2) 洪水吐周辺の地山が堤体計画標高より低い場合
参図-3.2 のように、洪水吐周辺の地山(同図は地山部分が道路の例)が堤体計画高より低い場合には、
道路との境にパラペットや副堤を設けることがある。 単純に道路にすり付ける場合は、地山高(路面高)が(HWL+波の打上げ高さ)以上あればよい。
(HWL+波の打上げ高さ)以上
道路
HWL
堤 体
参図-3.2 本堤起部・終点のすり付け(2)
167
改 定 現 行 備 考
4. 表面遮水壁型工法 4.1. 表面遮水壁型工法(遮水シート工法の場合)
4.1.1 設計の基本事項
表面遮水壁型工法として遮水シート材料を設計する場合は、水密性、波圧、水圧、揚圧力、斜面勾配、不
同沈下、維持管理時の作業荷重及び植物等による遮水シート材料の損傷に対する安全性等を考慮しなければ
ならない。 遮水シート工法に用いる材料には、合成ゴム系シート、合成樹脂系シート、アスファルト系、ベントナイ
ト系、及びこれらの複合系等があり、その選定に当たっては、それぞれの特徴、特性等を十分考慮して、使
用する現場条件に応じた材料とする必要がある。 また、遮水シート背面の基礎、基層が受け持つ役割は大きく、遮水シートを外力から保護するための前面
の保護工とともに、使用材料の特性を考慮に入れながら検討する必要がある。 外力の中でも、揚圧力に対しては、遮水シート材料自体による抵抗力は望めないので、揚圧力に対抗でき
る押え盛土の施工、又は発生を抑制するための基礎、基層での処理(ドレーン、空気抜き等)が特に必要で
ある。 遮水シート材料の分類例を示すと、参図-4.1.1 のとおりである。
4. 表面遮水壁型工法 4.1. 表面遮水壁型工法(遮水シート工法の場合)
4.1.1 設計の基本事項
表面遮水壁型工法として遮水シート材料を設計する場合は、水密性、波圧、水圧、揚圧力、斜面勾配、不
同沈下、維持管理時の作業荷重及び植物等による遮水シート材料の損傷に対する安全性等を考慮しなければ
ならない。 遮水シート工法に用いる材料には、合成ゴム系シート、合成樹脂系シート、アスファルト系、ベントナイ
ト系、及びこれらの複合系等があり、その選定に当たっては、それぞれの特徴、特性等を十分考慮して、使
用する現場条件に応じた材料とする必要がある。 また、遮水シート背面の基礎、基層が受け持つ役割は大きく、遮水シートを外力から保護するための前面
の保護工とともに、使用材料の特性を考慮に入れながら検討する必要がある。 外力の中でも、揚圧力に対しては、遮水シート材料自体による抵抗力は望めないので、揚圧力に対抗でき
る押え盛土の施工、又は発生を抑制するための基礎、基層での処理(ドレーン、空気抜き等)が特に必要で
ある。 遮水シート材料の分類例を示すと、参図-4.1.1 のとおりである。
参考資料参考資料
168
改 定 現 行 備 考
※印の材料は、ため池に比較的使用が多い。
参図-4.1.1 遮水シート材料の分類例
※印の材料は、ため池に比較的使用が多い。
参図-4.1.1 遮水シート材料の分類例
遮
水
シ
ー
ト
材
料
合成ゴム・ 合成樹脂複合系
熱可塑性エラストマー
(TPE) ポリオレフィン系樹脂と エチレンプロピレンゴム(EPDM) ※
アスファルト系 アスファルトパネル
アスファルトシート(特殊アスファルト+不織布)
ベントナイト系 ベントナイト+ジオテキスタイル(織布+不織布)
高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)
エチレン酢ビ樹脂系
ポリエチレン樹脂系
合成樹脂系
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)
ポリエチレン樹脂(PE)
ポリ塩化ビニル樹脂系 ポリ塩化ビニル樹脂(PVC) ※
ベントナイト系・ 合成樹脂複合系
ベントナイト+高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)
加硫ゴム系
非加硫ゴム系
合成ゴム系 エチレンプロピレンゴム(EPDM)と ブチルゴム(IIR)の複合 ※
エチレンプロピレンゴム(EPDM)
ブチルゴム(IIR)とエチレンプロピレン ゴム(EPDM)の混合
クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM) 遮
水
シ
ー
ト
材
料
合成ゴム・ 合成樹脂複合系
熱可塑性エラストマー
(TPE) ポリオレフィン系樹脂と エチレンプロピレンゴム(EPDM) ※
アスファルト系 アスファルトパネル
アスファルトシート(特殊アスファルト+不織布)
ベントナイト系 ベントナイト+ジオテキスタイル(織布+不織布)
高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)
エチレン酢ビ樹脂系
ポリエチレン樹脂系
合成樹脂系
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)
ポリエチレン樹脂(PE)
ポリ塩化ビニル樹脂系 ポリ塩化ビニル樹脂(PVC) ※
ベントナイト系・ 合成樹脂複合系
ベントナイト+高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)
加硫ゴム系
非加硫ゴム系
合成ゴム系 エチレンプロピレンゴム(EPDM)と ブチルゴム(IIR)の複合 ※
エチレンプロピレンゴム(EPDM)
ブチルゴム(IIR)とエチレンプロピレン ゴム(EPDM)の混合
クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)
169
改 定 現 行 備 考 4.1.2 遮水シートに要求される特性
遮水シートは工場で製造されたシート成形品で、安定性、耐久性、水密性、経済性、施工法、及びその他の条
件を満足するものでなければならない。 (1) 遮水シートの性能に関する条件
安定性: 使用現場において想定される水圧・波圧に十分耐え、かつ自重による引張り力にも切断、ク
ラックが生じない強さを有さなければならない。また、使用環境において受ける最高、最低
温度時においても柔軟性を失うことなく、下部構造の変化(不同沈下等)にも十分順応する
ものでなければならない。 耐久性: 遮水シートは、老化現象(紫外線、オゾン等による劣化)に対して、耐久性のあるものでな
ければならない。 水密性: 遮水シートは、それ自体十分な不透水性を有するとともに、ジョイント部においても同等以
上の不透水性を有さなければならない。 経済性: 高度の不透水性が要求されるとはいえ、その工事費、及び効果は他の工法に比較して、同等
以上の経済性を有さなければならない。 施工法: 敷設面積の大小、及び施工場所のいかんにかかわらず、簡易かつ迅速に施工できるものでな
ければならない。 その他: 遮水シートは、貯水を変質(有害、有臭)させるものであってはならない。また、補修及び修
理についても容易でなければならない。 (2) 遮水シート厚の選定
遮水シート厚の選定は、下準備のできた基盤の表面状態、遮水シートにかかる静水圧、敷設後に受ける
損傷の程度等によって決める。厚さの程度は、各材料によって異なるが、合成ゴム系とアスファルト系シ
ートの堤高規模に対する最小厚選定の目安は、参表-4.1.1 のとおりである。合成樹脂系の場合、1.0、1.5、
2.0 mm の標準規格があり、アスファルトパネルは 10 mm 厚が一般的である。
参表-4.1.1 遮水シート厚さ選定の目安
堤高(H ) 遮水シートの厚さ( t ) 備 考
H < 10 m
合成ゴム系シート t = 1.5 mm
アスファルト系シート t = 3.0 mm
遮水シート敷設下地の状況、条件等も
併せて検討を行うこと。 ただし、アスファルト系シートの場合、
シートの表面をブロック、押え盛土等
で保護するものとする。 H ≧ 10 m
合成ゴム系シート t = 2.0 mm
アスファルト系シート t = 4.0 mm
(3) 品質
a. 合成ゴム系シート 加硫ゴム系シートは、エチレンプロピレンゴム(EPDM)とブチルゴム(I I R)をブレンド、共加硫し
たものである。 現在の加硫ゴム系シートの市販製品には、ポリマーとして 60% 以上の EPDM がブレンドされ、初期の
ころよりも耐候性が改善されている。必要なシート寸法は 1.2 m 幅で製造された原反シートを現場の
寸法に合わせて、工場で熱圧着加工を行って作成する。
4.1.2 遮水シートに要求される特性
遮水シートは工場で製造されたシート成形品で、安定性、耐久性、水密性、経済性、施工法、及びその他の条
件を満足するものでなければならない。 (1) 遮水シートの性能に関する条件
安定性: 使用現場において想定される水圧・波圧に十分耐え、かつ自重による引張り力にも切断、ク
ラックが生じない強さを有さなければならない。また、使用環境において受ける最高、最低
温度時においても柔軟性を失うことなく、下部構造の変化(不同沈下等)にも十分順応する
ものでなければならない。 耐久性: 遮水シートは、老化現象(紫外線、オゾン等による劣化)に対して、耐久性のあるものでな
ければならない。 水密性: 遮水シートは、それ自体十分な不透水性を有するとともに、ジョイント部においても同等以
上の不透水性を有さなければならない。 経済性: 高度の不透水性が要求されるとはいえ、その工事費、及び効果は他の工法に比較して、同等
以上の経済性を有さなければならない。 施工法: 敷設面積の大小、及び施工場所のいかんにかかわらず、簡易かつ迅速に施工できるものでな
ければならない。 その他: 遮水シートは、貯水を変質(有害、有臭)させるものであってはならない。また、補修及び修
理についても容易でなければならない。 (2) 遮水シート厚の選定
遮水シート厚の選定は、下準備のできた基盤の表面状態、遮水シートにかかる静水圧、敷設後に受ける
損傷の程度等によって決める。厚さの程度は、各材料によって異なるが、合成ゴム系とアスファルト系シ
ートの堤高規模に対する最小厚選定の目安は、参表-4.1.1 のとおりである。合成樹脂系の場合、1.0、1.5、
2.0 mm の標準規格があり、アスファルトパネルは 10 mm 厚が一般的である。
参表-4.1.1 遮水シート厚さ選定の目安
堤高(H ) 遮水シートの厚さ( t ) 備 考
H < 10 m
合成ゴム系シート t = 1.5 mm
アスファルト系シート t = 3.0 mm
遮水シート敷設下地の状況、条件等も
併せて検討を行うこと。 ただし、アスファルト系シートの場合、
シートの表面をブロック、押え盛土等
で保護するものとする。 H ≧ 10 m
合成ゴム系シート t = 2.0 mm
アスファルト系シート t = 4.0 mm
(3) 品質
a. 合成ゴム系シート 加硫ゴム系シートは、エチレンプロピレンゴム(EPDM)とブチルゴム(I I R)をブレンド、共加硫
したものである。 現在の加硫ゴム系シートの市販製品には、ポリマーとして 60% 以上の EPDM がブレンドされ、初期の
ころよりも耐候性が改善されている。必要なシート寸法は 1.2 m 幅で製造された原反シートを現場の
寸法に合わせて、工場で熱圧着加工を行って作成する。
170
改 定 現 行 備 考 参表-4.1.2 加硫ゴム系シートの主な物理的性質(JIS A 6008)
性 能 試験項目 試 験 基 準 値
引 張 性 能 引張強さ 750 N/cm2
以上
伸び率 450% 以上
引 裂 性 能 引裂強さ 250 N/cm 以上
温度依存性能(高温:60℃) 引張強さ 230 N/cm2 以上
温度依存性能(低温:-20℃) 伸び率 200% 以上
加熱伸縮性状 伸縮量 伸び 2 mm 以下、縮み 4 mm 以下
劣化処理後の引張性能
(加熱処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 70% 以上
劣化処理後の引張性能
(促進暴露処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 70% 以上
劣化処理後の引張性能
(アルカリ処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 80% 以上
b. 合成樹脂系シート ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)製のシートであり、物理的性質は参表-4.1.3 のとおりである。
参表-4.1.3 軟質 PVC 遮水シートの物理的性質
試 験 項 目 規格値 測 定 方 法
引張強さ (N/cm2) 1570 以上 JIS A 6008 準拠
伸 び (%) 300 以上 JIS A 6008 準拠
引裂強さ (N/cm) 440 以上 JIS A 6008 準拠
比 重 1.35 以下 JIS K 7112
耐寒性 (℃) -30° 以下 JIS K 6723
c. アスファルト系
(a) アスファルト系シート アスファルト系シートは、従来建築の防水シートとして発達してきており、数多くの実績を上げて
いる。その技術の蓄積に基づいて近年土木分野でも、ため池、調整池、修景池、一般廃棄物埋立処分
場、河川等に利用され、施工実績も増加している。アスファルト系シートの製品は、メーカーごとに
製法も異なっているが、大別すると、以下の 2 種類となる。
① アスファルト全層含浸シート ポリプロピレンの長繊維不織布に特殊アスファルト等を全層含浸したもの。 ② 改質アスファルトルーフィングシート 合成繊維不織布に改質アスファルトを含浸させたコア層を改質アスファルトによりルーフィン
グしたシート
(b) アスファルトパネル パネルの主成分は特殊加工されたアスファルトマスチックで、アスファルトの中に、ある種の繊維
及び鉱物質のフィラーを混合したものである。
参表-4.1.2 加硫ゴム系シートの主な物理的性質(JIS A 6008)
性 能 試験項目 試 験 基 準 値
引 張 性 能 引張強さ 750 N/cm2
以上
伸び率 450% 以上
引 裂 性 能 引裂強さ 250 N/cm 以上
温度依存性能(高温:60℃) 引張強さ 230 N/cm2 以上
温度依存性能(低温:-20℃) 伸び率 200% 以上
加熱伸縮性状 伸縮量 伸び 2 mm 以下、縮み 4 mm 以下
劣化処理後の引張性能
(加熱処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 70% 以上
劣化処理後の引張性能
(促進暴露処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 70% 以上
劣化処理後の引張性能
(アルカリ処理)
引張強さ比 80% 以上
伸び率比 80% 以上
b. 合成樹脂系シート ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)製のシートであり、物理的性質は参表-4.1.3 のとおりである。
参表-4.1.3 軟質 PVC 遮水シートの物理的性質
試 験 項 目 規格値 測 定 方 法
引張強さ (N/cm2) 1570 以上 JIS A 6008 準拠
伸 び (%) 300 以上 JIS A 6008 準拠
引裂強さ (N/cm) 440 以上 JIS A 6008 準拠
比 重 1.35 以下 JIS K 7112
耐寒性 (℃) -30° 以下 JIS K 6723
c. アスファルト系
(a) アスファルト系シート アスファルト系シートは、従来建築の防水シートとして発達してきており、数多くの実績を上げて
いる。その技術の蓄積に基づいて近年土木分野でも、ため池、調整池、修景池、一般廃棄物埋立処分
場、河川等に利用され、施工実績も増加している。アスファルト系シートの製品は、メーカーごとに
製法も異なっているが、大別すると、以下の 2 種類となる。
① アスファルト全層含浸シート ポリプロピレンの長繊維不織布に特殊アスファルト等を全層含浸したもの。 ② 改質アスファルトルーフィングシート 合成繊維不織布に改質アスファルトを含浸させたコア層を改質アスファルトによりルーフィン
グしたシート
(b) アスファルトパネル パネルの主成分は特殊加工されたアスファルトマスチックで、アスファルトの中に、ある種の繊維
及び鉱物質のフィラーを混合したものである。
171
改 定 現 行 備 考 d. ベントナイト系遮水マット
(a) マットの主成分はナトリウムベントナイトで、これと織布や不織布等のジオテキスタイルを複合
化したものである。 (b) マット厚の選定は、下準備ができた基盤の表面状態やマットにかかる静水圧によって決める。た
だし、マット厚は使用するベントナイト粒の大きさや織布等の厚さにより変動するので、遮水性の
点からマットに含まれるベントナイトの質量を、原則として 4 kg/m2 以上とする。
4.1.3 遮水シートの基盤及び基層
遮水シートの基盤は、必要な支持力と平滑性を有するものでなければならない。したがって、このような
支持力と平滑性を得るため、基盤整形及び転圧を行い、必要に応じて安定処理層や基層を設ける。 (1) 支持力
遮水シート自体による外圧に対する抵抗性は期待すべきではなく、基盤と一体となってはじめて遮水機
能が発揮できるものである。このため、基盤は外力によって大きく変形するものであってはならない。
斜面部については、法面の変形、法尻部の崩れ等が起きないよう、切土、盛土の土質条件に応じた法勾
配を設定し、締固めに十分配慮しなければならない。寒冷地では、法肩部下地が凍上作用を受けて変形す
ることに対する対策(透水コンクリート層の設置、浸透水の遮断等)の検討が必要である。
(2) 平滑性 遮水シートは、伸縮性を有することから、ある程度の不同沈下への追従性はあるが、基盤表面に石礫、
切株等の突起部や、凹凸部がある場合には局部的に伸ばされ破損するおそれがある。このため、基盤整
形、締固めのみで、適切な平滑性が得られない場合には、安定処理層や緩衝層を設置する。一般に安定処
理層や緩衝層には、敷き砂、良質山土、ソイルセメント、透水コンクリート、ジオテキスタイル(織布、
不織布)等が用いられる。基盤、基層の施工例を参図-4.1.2 に示す。
特にアスファルト系シート等では、法面部の上部は、植生等がある場合にはシートを貫通することが考
えられる。植生の処理は十分行う必要があるが、安全を考慮して、植生の侵入防止のための防草付シート
を使用する必要がある。
d. ベントナイト系遮水マット (a) マットの主成分はナトリウムベントナイトで、これと織布や不織布等のジオテキスタイルを複合
化したものである。 (b) マット厚の選定は、下準備ができた基盤の表面状態やマットにかかる静水圧によって決める。た
だし、マット厚は使用するベントナイト粒の大きさや織布等の厚さにより変動するので、遮水性の
点からマットに含まれるベントナイトの質量を、原則として 4 kg/m2 以上とする。
4.1.3 遮水シートの基盤及び基層
遮水シートの基盤は、必要な支持力と平滑性を有するものでなければならない。したがって、このような
支持力と平滑性を得るため、基盤整形及び転圧を行い、必要に応じて安定処理層や基層を設ける。 (1) 支持力
遮水シート自体による外圧に対する抵抗性は期待すべきではなく、基盤と一体となってはじめて遮水機
能が発揮できるものである。このため、基盤は外力によって大きく変形するものであってはならない。
斜面部については、法面の変形、法尻部の崩れ等が起きないよう、切土、盛土の土質条件に応じた法勾
配を設定し、締固めに十分配慮しなければならない。寒冷地では、法肩部下地が凍上作用を受けて変形す
ることに対する対策(透水コンクリート層の設置、浸透水の遮断等)の検討が必要である。
(2) 平滑性 遮水シートは、伸縮性を有することから、ある程度の不同沈下への追従性はあるが、基盤表面に石礫、
切株等の突起部や、凹凸部がある場合には局部的に伸ばされ破損するおそれがある。このため、基盤整
形、締固めのみで、適切な平滑性が得られない場合には、安定処理層や緩衝層を設置する。一般に安定処
理層や緩衝層には、敷き砂、良質山土、ソイルセメント、透水コンクリート、ジオテキスタイル(織布、
不織布)等が用いられる。基盤、基層の施工例を参図-4.1.2 に示す。
特にアスファルト系シート等では、法面部の上部は、植生等がある場合にはシートを貫通することが考
えられる。植生の処理は十分行う必要があるが、安全を考慮して、植生の侵入防止のための防草付シート
を使用する必要がある。
172
改 定 現 行 備 考
石礫を含まない土、土羽仕上げ
シート
イ)転圧締固め仕上げ(石礫を含まない下地)
敷き砂層
シート
ロ)敷き砂層 5~10 cm 厚の設置(底部礫質土、底部軟弱地盤)
ソイルセメント層
シート
ハ)ソイルセメント層 5~10 cm 厚の設置(法面部礫質土)
ジオテキスタイル モルタル平滑処理層
シート
ニ)モルタル平滑処理層 5~10 cm 厚の設置(軟岩角礫部)
(ジオテキスタイル) 溶接金網入張コンクリート
シート
ホ)溶接金網入張コンクリート 10 cm 厚の設置(石積部)
ジオテキスタイル 透水コンクリート層
シート
ヘ)透水コンクリート層 10 cm 厚の設置(凍上防止対応、湧出水法面、湧出水底部)
参図-4.1.2 遮水シート基盤、基層例
石礫を含まない土、土羽仕上げ
シート
イ)転圧締固め仕上げ(石礫を含まない下地)
敷き砂層
シート
ロ)敷き砂層 5~10 cm 厚の設置(底部礫質土、底部軟弱地盤)
ソイルセメント層
シート
ハ)ソイルセメント層 5~10 cm 厚の設置(法面部礫質土)
ジオテキスタイル モルタル平滑処理層
シート
ニ)モルタル平滑処理層 5~10 cm 厚の設置(軟岩角礫部)
(ジオテキスタイル) 溶接金網入張コンクリート
シート
ホ)溶接金網入張コンクリート 10 cm 厚の設置(石積部)
ジオテキスタイル 透水コンクリート層
シート
ヘ)透水コンクリート層 10 cm 厚の設置(凍上防止対応、湧出水法面、湧出水底部)
参図-4.1.2 遮水シート基盤、基層例
173
改 定 現 行 備 考 4.1.4 遮水シートの根入れ長さと深さ
遮水シートの根入れは、堤体基礎地盤を浸透する流水を抑制し、堤体裏法面の法尻や基礎地盤の浸透破壊
を防止するため、十分な長さと深さを確保しなければならない。
(1) 遮水シートの根入れ長さの考え方(浸透路長の考え方) 遮水シートの根入れ長さ Ls は、遮水ゾーン型工法における長さ Lc に対し、
Ls ≧ Lc とすることが、一つの目安といえる (参図-4.1.3)。
遮水ゾーン型工法 遮水シート工法
遮水性ゾーン シート
Lc Ls
h s
参図-4.1.3 遮水シートの根入れ長さの考え方
(2) 遮水シートの根入れ深さの考え方
基礎地盤の水平方向と鉛直方向の透水係数の相違が大きい場合、根入れ長さだけでなく、適切な根入れ深
さの確保も大切である。遮水シートの根入れ深さは、基礎地盤の地質、土質、層厚等の状況を確認し、適
切な深さを確保する。一般的には、遮水ゾーン型工法におけるカットオフ深さに準じた深さの確保が一
つの目安となる。根入れ深さの参考値を、参表-4.1.4 に示す。
参表-4.1.4 遮水シートの根入れ深さの参考値
堤高 H 根入れ深さ hs
5 m 以下 1.1~1.3 m
5~10 m 以下 1.3~2.1 m
10~15 m 2.1~3.2 m
4.1.5 遮水シートの斜面勾配と安定性
遮水シートの斜面における滑動、及び引張伸びについての安定性は、遮水シートと下地との摩擦係数、シ
ートの引張強度により決定される。斜面長が長い場合には、遮水シートを天端以外の斜面途中でも固定する。
また、クリープ作用等も併せて検討を行う。 (1) 下地土質と斜面勾配
シート自体で土圧を支えることはできない。したがって、斜面勾配は基盤土の自然安定勾配以下とする
必要がある。水深の浅い池(2 m 前後)では法面勾配が 1:1.5 程度でも安定する場合が多いが、水深が深く
斜面高が高くなる場合では、土が飽和状態になることを想定した斜面の安定性を検討し、1:2.0 より緩や
かな勾配とする必要がある。
また、ベントナイト系材料の場合は、せん断応力が働く場合の強度が期待できないことから、鉛直荷重
のみが作用する場所に使用する等、設計時に十分考慮する必要がある。
4.1.4 遮水シートの根入れ長さと深さ
遮水シートの根入れは、堤体基礎地盤を浸透する流水を抑制し、堤体裏法面の法尻や基礎地盤の浸透破壊
を防止するため、十分な長さと深さを確保しなければならない。
(1) 遮水シートの根入れ長さの考え方(浸透路長の考え方) 遮水シートの根入れ長さ Ls は、遮水ゾーン型工法における長さ Lc に対し、
Ls ≧ Lc とすることが、一つの目安といえる (参図-4.1.3)。
遮水ゾーン型工法 遮水シート工法
遮水性ゾーン シート
Lc Ls
h s
参図-4.1.3 遮水シートの根入れ長さの考え方
(2) 遮水シートの根入れ深さの考え方
基礎地盤の水平方向と鉛直方向の透水係数の相違が大きい場合、根入れ長さだけでなく、適切な根入れ深
さの確保も大切である。遮水シートの根入れ深さは、基礎地盤の地質、土質、層厚等の状況を確認し、適
切な深さを確保する。一般的には、遮水ゾーン型工法におけるカットオフ深さに準じた深さの確保が一
つの目安となる。根入れ深さの参考値を、参表-4.1.4 に示す。
参表-4.1.4 遮水シートの根入れ深さの参考値
堤高 H 根入れ深さ hs
5 m 以下 1.1~1.3 m
5~10 m 以下 1.3~2.1 m
10~15 m 2.1~3.2 m
4.1.5 遮水シートの斜面勾配と安定性
遮水シートの斜面における滑動、及び引張伸びについての安定性は、遮水シートと下地との摩擦係数、シ
ートの引張強度により決定される。斜面長が長い場合には、遮水シートを天端以外の斜面途中でも固定する。
また、クリープ作用等も併せて検討を行う。 (1) 下地土質と斜面勾配
シート自体で土圧を支えることはできない。したがって、斜面勾配は基盤土の自然安定勾配以下とする
必要がある。水深の浅い池(2 m 前後)では法面勾配が 1:1.5 程度でも安定する場合が多いが、水深が深く
斜面高が高くなる場合では、土が飽和状態になることを想定した斜面の安定性を検討し、1:2.0 より緩や
かな勾配とする必要がある。
また、ベントナイト系材料の場合は、せん断応力が働く場合の強度が期待できないことから、鉛直荷重
のみが作用する場所に使用する等、設計時に十分考慮する必要がある。
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改 定 現 行 備 考 遮水シートの斜面勾配例を、参表-4.1.5 に示す。
参表-4.1.5 遮水シートの一般的な斜面勾配例
堤高 H 一般的な盛土法面勾配 一般的な切土法面勾配
5 m 以下 1:2.0 1:1.5~1:2.0
5~10 m 以下 1:2.0~1:2.5 1:1.8~1:2.0
10~15 m 1:2.0~1:3.0 1:2.0
(2) 遮水シートの斜面上の安定性の検討
G2 G
G1
参図-4.1.4 斜面上の遮水シートの安定
参図-4.1.4 において、斜面上を遮水シートが滑動しない条件は、 をシートと基盤土との摩擦係数とす
ると、 G1 ≦ G2 ····················································································· 参式(4.1.1)
となる条件を満足することである。 上式を変形して、遮水シートが滑動しない最大傾斜角 を求めると、以下のようになる。
G1 -G2 = 0 ················································································· 参式(4.1.2) G sin-G cos = 0 ········································································ 参式(4.1.3)
上式で、= 0.5 とした時、 の値は 26 ゚ 34 となり、この角度は、ほぼ 2 割勾配に相当する。この角度
より急な場合では、斜面に沿って遮水シートは滑動することになる。しかし、実際には、法肩部での固定
を行うことから、遮水シートは滑動せず、シートに引張応力 F が 発生する。 F = G1-G2 ················································································ 参式(4.1.4)
上式で、=0、傾斜角を とした場合、 F = G1 = G sin ············································································ 参式(4.1.5)
となる。一般に、この引張応力 F により、遮水シートには施工後クリープ現象が生じることとなる。した
がって、斜面高が高く、すなわち法面長が長くなると、このクリープの大きさも無視できなくなることか
ら、法面長は最大でも 20 m 前後となるようにすることが望ましい。必要に応じて、斜面途中での固定、
小段設置等の検討が必要である。
遮水シートの斜面勾配例を、参表-4.1.5 に示す。
参表-4.1.5 遮水シートの一般的な斜面勾配例
堤高 H 一般的な盛土法面勾配 一般的な切土法面勾配
5 m 以下 1:2.0 1:1.5~1:2.0
5~10 m 以下 1:2.0~1:2.5 1:1.8~1:2.0
10~15 m 1:2.0~1:3.0 1:2.0
(2) 遮水シートの斜面上の安定性の検討
G2GG1
参図-4.1.4 斜面上の遮水シートの安定
参図-4.1.4 において、斜面上を遮水シートが滑動しない条件は、 をシートと基盤土との摩擦係数とす
ると、 G1 ≦ G2 ····················································································· 参式(4.1.1)
となる条件を満足することである。 上式を変形して、遮水シートが滑動しない最大傾斜角 を求めると、以下のようになる。
G1 -G2 = 0 ················································································· 参式(4.1.2) G sin-G cos = 0 ······································································· 参式(4.1.3)
上式で、= 0.5 とした時、 の値は 26 ゚ 34 となり、この角度は、ほぼ 2 割勾配に相当する。この角度
より急な場合では、斜面に沿って遮水シートは滑動することになる。しかし、実際には、法肩部での固定
を行うことから、遮水シートは滑動せず、シートに引張応力 Fが 発生する。 F = G1-G2 ················································································ 参式(4.1.4)
上式で、=0、傾斜角を とした場合、 F = G1 = G sin ··········································································· 参式(4.1.5)
となる。一般に、この引張応力 F により、遮水シートには施工後クリープ現象が生じることとなる。した
がって、斜面高が高く、すなわち法面長が長くなると、このクリープの大きさも無視できなくなることか
ら、法面長は最大でも 20 m 前後となるようにすることが望ましい。必要に応じて、斜面途中での固定、
小段設置等の検討が必要である。
175
改 定 現 行 備 考 4.1.6 端末処理
遮水シートの天端での固定、法先及び地山取付部での処理については、現地に応じた適切な設計がなされ
なければならない。 (1) 天端での固定
遮水シートが滑り落ちるのを防ぐ意味で天端で固定する。施工例を参図-4.1.5 に示す。
イ) 土羽仕上げの例
シート
埋戻し土 500
300
R≧300
300
ロ) 法肩コンクリートと埋込固定
400 300
300
400
200
300
300 500
参図-4.1.5 遮水シートの天端での固定施工例
(2) 遮水シートの法先及び地山取付部での処理(端末処理) ① 法先の地盤が良好な場合は、「4.1.4 遮水シートの根入れ長さと深さ」に基づいて土中に埋込む。 ② 地盤が不良な場合は、参図-4.1.6 のように、コンクリートを打設し、シート端部の接着取付を行う。
③ シート両端の地山取付部においても隔壁やもたれ擁壁等の構造物を設け、接着取付を行う。 ④ 堤高が高く水深が大きい場合は、法先固定コンクリートや両岸地山部の構造物は不透水層まで到達さ
せる。
シート 300~500
単位(mm)
参図-4.1.6 シートの法先固定コンクリートの例
4.1.6 端末処理
遮水シートの天端での固定、法先及び地山取付部での処理については、現地に応じた適切な設計がなされ
なければならない。 (1) 天端での固定
遮水シートが滑り落ちるのを防ぐ意味で天端で固定する。施工例を参図-4.1.5 に示す。
イ) 土羽仕上げの例
シート
埋戻し土 500
300
R≧300
300
ロ) 法肩コンクリートと埋込固定
400 300
300
400
200
300
300 500
参図-4.1.5 遮水シートの天端での固定施工例
(2) 遮水シートの法先及び地山取付部での処理(端末処理) ① 法先の地盤が良好な場合は、「4.1.4 遮水シートの根入れ長さと深さ」に基づいて土中に埋込む。 ② 地盤が不良な場合は、参図-4.1.6 のように、コンクリートを打設し、シート端部の接着取付を行う。
③ シート両端の地山取付部においても隔壁やもたれ擁壁等の構造物を設け、接着取付を行う。 ④ 堤高が高く水深が大きい場合は、法先固定コンクリートや両岸地山部の構造物は不透水層まで到達さ
せる。
シート300~500
単位(mm)
参図-4.1.6 シートの法先固定コンクリートの例
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