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Meiji University Title �-FASB�96�- Author(s) �,Citation �, 70: 159-174 URL http://hdl.handle.net/10291/4649 Rights Issue Date 1991-06-30 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

税効果会計-FASB基準書第96号の意義- URL DOI

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Meiji University

 

Title 税効果会計-FASB基準書第96号の意義-

Author(s) 佐藤,渉

Citation 経理知識, 70: 159-174

URL http://hdl.handle.net/10291/4649

Rights

Issue Date 1991-06-30

Text version publisher

Type Departmental Bulletin Paper

DOI

                           https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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一一税効果会計一 159

税効果会計

一一・-FASB基 準書 第96号 の意 義-

ACCOUNTINGFORINCOMETAXES

佐 藤 渉

1.税 効果会計の変遷

1)

米 国 におけ る 「税効果 会計 」 の発展 の歴史 は,1930年 代以 降 の度 重 な る法人

税率 の引 き上 げ と税制独 自の各種 の規定 の成立 に伴 う企業利益 と課税 所得 の差

異 の拡 大 に起 因 して きた。 これ らに対 し,会 計 原則 審議 会(AccountingPrin-

ciplesBeard,以 下APBと す る)意 見 書 第11号 が,1967年12月 に発表 され,

以後30年 間に わ た り財務 会計領 域 の指針 と して使 われて きた。

一方,税 効 果会 計 に関 わ る研 究 は,法 人税法 の研究 か ら始 まる。 それ は,税

効果 会計 が,財 務 会計 の領域 で あ りなが ら,密 接 不可分 に法 人税法が 関 わ って

くるか らであ る。 と りもなお さず 法人税 額 は,課 税所得 に一定税 率 を乗 じて算

定す るのであ るが,そ の法 人税 額 の基 となる課 税所得 は,必 ず しも税 引前企業

利益 と一 致 す る もので は ない。 しか しなが ら,わ が 国 の法 人税 法 が い わ ゆ る2)3)

「確定 決算 主義」 「損金経 理 方式」 を採 用 して いる ところか ら,現 実 に は企業

会 計 の会計処 理 が法人税 法 に依 存 して い る場合 も多 い。 したが って,わ が国 に4)

おいては企業会計 と税務会計がほぼ同心円上にあると言える。

言い換えれば,そ の限 りにおいては税効果会計の導入の余地は極めて少ない

と言わざるを得 ない。 しか しながら,近 年各種の租税政策の成立によって,ま

た経営管理上の必要性によって企業利益 と課税所得の差異が拡大 してきた。ま

さに税効果会計の意義がそこに見いだされるのである。すなわち税効果会計の

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160一 経 理 知 識一

目的 は,税 効果 つ ま り税 の 当期 以 後 の影響 額 を認 識 しそ の会 計処 理 お よ び表示

を行 お うとす るこ とにあ るか らで あ る。

上 述 した ことを踏 まえて,わ が 国 にお い て も昭和51年 に 「連結 財 務 諸 表 の用

語,様 式 及 び作 成 方 法 に関 す る規 則(以 下 連 結 財 務 諸表 規 則 とす る)」 が発 表

され た。 その 第11条 にお いて は,法 人税 等 の期 間 配 分 につ いて,税 効 果 会 計 が

任 意 規定 なが ら容認 され現在 に至 ってい る。

しか しなが ら,そ の後 米 国 に お け る税効 果 会計 は,APB意 見書 籍11号 の 欠

陥 が 顕 在 化 した と こ ろ か ら,財 務 会 計 審 議 会(FinancialAccountingStan-5)

dardsBoard,以 下FASBと す る)基 準 書 第96号 が 発 表 され,一 つ の 転 換 期 を

迎 え た の で あ っ た。

皿.法 人税の費用性 と税効果会計の前提

税効 果 会計 の前提 は,・APB意 見書 第11号 に よる ど次 の 四つ に要 約 され る。6)

a.法 人税 が 課 され る一 企 業 の業務 活動 は,継 続 企 業 の前提 に したが って持 続

し,ま た法 人税 も将 来 にわ た って 課税 され る。

b.法 人税 は,税 を課 され る所 得 を稼得 す る企 業 の 費用 で あ る。

c.法 人税 の会 計処 理 にあ た って,他 の費 用 と同様 にそ の適切 な測 定 と期 間 配

分 の ため発 生 主義 を採 用 し,見 越 し,繰 延 べ,見 積 りな どの手 続 き を適 用す

る。7)

d.対 応原則は,利 益決定の基本的手続 きの一つである。

この中でわが国の会計慣行のうち,特 に問題 となるのが上記のbの 法人税の

費用性である。

まず法人税の費用性 を論 じる前に,法 人税法における法人税の基礎 となる課

税所得 を求めることから始め,わ が国における法人税法上の法人税の取扱 に関

して述べる。

課税所得 は,「確定 した決算」 に基づ いた企業利益(当 期利益)に 法人税法8)

等に規定する 「別段の定め」による一定の金額を加算 もしくは減算 して求める。

この場合,課 税所得の計算の基礎にす る収益の額及び損費の額は,'企 業会計の

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一 税効果会計一161

「一般 に公 正 妥当 と認 め られ る会計処理 の基準 」 に したが って処 理す る。

「一般 に公 正妥 当 と認 め られ る会計処理 の基 準(以 下公正 処理 基準 とす る)」

とは,客 観 的 な規範性 を もつ公正 かつ妥 当 と認 め られ る会計 処理 の基準 とい う

意 味 であ り,明 文の基準 があ る こ とを予定 してい るわけで はな い。 したが って

「企業 会計原 則』 のみ を意 味す る もので もな く,む しろ法人税 法 の規定 は,企

業 が会計処 理 に使用 して い る基準 の うち,公 正処理基 準 に該 当 しない もの を排

除 し,原 則 的 には企業 の会計処 理 を認 め る とい う基本 方針 を示 した もの で あ る。

つ ま り公正 処理 基準 の定 めは,課 税 所得計 算 にお ける会計慣行 の尊重 を明 か に

す る とと もに,企 業 利益 と課税所 得 とは,「 別段 の定 め」 の あ る もの を除 い て

は,原 則 と して一致すべ きことを明 かに した ものであ る。

法 人税 法 第38条 で は,法 人税 の額 は一定 の もの を除 き損 金 の額 に算入 され な

い。 その損 金 の額 に算 入 され ない租 税が,法 人税 や道府 県民税 及 び市 町村 民税

等(以 下 法 人税 等 とす る)で あ る。 これ らの法 人税等 は,租 税理 論 の固有 の要の

請か ら企業会計 とは特に異なる規定を設けているものである。よって法人税法

では1企 業会計の会計慣行 にそぐわないものだけ,す なわち法人税法の課税 目

的に合わない ものだけを別段の定めを設けて規制 しているのであるから,こ の

点から考察 して も法人税等が本来的に損金性 を持っていることが理解される。 ラ

さ らに また昭和15年 まで はわが 国にお いて も法 人税 額 の損 金算入 を認 め て きた

 ので あ る。 また法 人が納 付 す る租税公 課 は,い ず れ も資本等 取引 以外 の取 引 に

かか る項 目で あ り,純 資 産 減少 の原 因 とな る もの であ るか ら,別 段 の定 め が なユ ラ

い限 り,課 税所得 の計算 上,損 金の額 に算入 され る こ とにな る。 したが って わ

が国 の 法 人税 法 で は,「 法 人税等 」 を企業 会計 上 の費用 また は損失 と して考 え

てい る。

次 にわが 国の法 人税 に対 す る会計 上 の見解 と して は,費 用 説,利 益 処分 説共

に,枚 挙 にい とまが ない。 したが つて法 人税が,会 計 上 の費用 なの かそ れ とも

利益 処分 の性格 を有 す るのか とい う問題 は,い まだその解決 をみてい な い。 し

か しなが ら,法 人税 を考察 す るにあ た って は,利 益 を誰の ため の利 益 と考 え るゆかという主体規定に基づ くことがまず肝要である。このような観点から企業会

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162-一 経 理 知 識一

計 上 いかな る会 計主 体 論 を とるか とい うこ とが企業 会計 上 の基 本的概 念 の性格

規 定 に 重 大 な 影 響 を 与 え る の で あ る。 た と え ば,ス プ ロ ー ズRobertT.

Sprouseの 見解 に よれ ば,資 本主理論 お よび企 業主体 理 論 に立脚 した法 人税 の

取扱 は次 の よ うにな る。 す なわ ち ス プローズ は,利 益 概念 は,各 受 益者 に対 す

る配 当可能利益 を意 味す るか ら,受 益 者 であ る普通株 主 に とって は,法 人所得14)

税 は普通株主 へ の分 配可 能利益 の決定 まで に控 除 され るべ き費 用 ど考 え る。 し

たが って,法 人税 は会計 的 に も,費 用 で あ る。 また わが国 の商 法立法 当局 の意

見 にお いて も,租 税 は,企 業の 当期 の債 務で あ るか ら損 費 と して取 り扱 うべ き15)

で あ る とい う見解 も存 在 す る。

しか しなが ら,資 本主 理論 に立脚 す る と,究 極 的 に利益 は資 本主 の利 益 であ

るか ら,資 本 主 はその持 分 に応 じた 企業 利益 をそれ ぞ れ 自分 自信 の所得 に合算

した ところで税 額 を計算 す れ ば よい ので,そ の点 に関 して は,企 業 それ 自体 の

税 金 は存在 しな い こ とにな る。 したが って企 業 につ いて課 される法 人税等 は,

資本 主個 人の税 金の前払 い とい うことに なる。す なわち法 人税等 は,単 に徴収

義務 者 であ る企業 が資 本主 の源 泉税 を預 か ったに過 ぎな い こ とにな り,当 然 に

その費 用性 は,否 定 され るこ とに なる。

企業 主体理 論 に立脚 す れ ば,企 業 は資本 主 か ら独 立 した企 業体 で あ るか ら企

業 の利 益 と資 本 主 の所 得 とは分 離 してい る。す なわ ち この企 業 は,多 様 な 目的

観 の 中か ら第一 義 的 に利益 追求 を選択 し,私 的資本 企業 と して継 続 的 に行動 す

る。 この こ とか ら,企 業 主 体 理 論 にお い て は,会 計 上 の利 益 を 「企業 そ れ 自

体 」 の利益 と して とらえ,利 益 処分 に よって株 主 に配 当 され る まで は,エ ンテハぽ

イテ ィに帰 属 す る利益 と見 る こ とがで き よう。す なわ ち法 人税 は,株 主 へ の分

配可 能利益 の決定 まで に控除 され るべ き費用 と考 え られ るの で あ る。 また,政

府 や地 方 自治 体 は,株 式 会社 の投 資者 で ない こ と。 したが って,持 分 所有者 の

累積 的投 資 を減 じるこ とな く株 式 会社 の持 分所 有 者 に配分 され るべ き金額 は, の

明かに法人税の賦課によって影響 を受けるのである。さらにその観点からする

と,法 人税は一定収益活動期間中の一般的な営業活動の不可避の原価 として独18)

立 した別個の企業実体の収益に関連する間接的な費用である。以上の観点から,

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一 税効果会計一163

法 人税 は費用 と解 され るの であ る。

一方,米 国に おけ る法 人税 の取扱 は次 の よ うにな る。

法 人税 が,費 用 であ るの か利 益処 分項 目であ るの とい う問題 に関 して,会 計

研 究叢書(AccountingResearchStudy)第9号 の序文 で は,「 法 人税が概 念 上,

費用 であ るのか,あ るい は利益 の分 配 であ るのか とい う ことは会計担 当者 の間

で 実際 には解決 されて い ない。(中 略)し か しア メ リカ にお け る法 人税 の期 間19)

配 分の実 務 の発 展 は この基 本的 な問題 に優 先 して しまって いる。」 とい う見解

が あ る。 まさに実 利優 先 の プ ラグマ テ ィズ ムで あ る。

しか しなが ら,米 国 におい て は,法 人税 は利益処 分項 目で はな く費用項 目で

あ る こ とは一般 に認知 され てお り,議 論 の対 象 で はない。す な わ ちAPB意 見

書 第11号 の公 式 見解で は,最 初 に述べ た通 り,法 人税 は税 を課 され る所得 を稼

得す る企業 の費用 であ る。 この理由 と して,納 税額 方式す なわち一期 間の法 人

税 は,当 該期 間 に支払 われ るべ き法人 税額 に等 しい とい う考 え方 であ るが,こ

れ は,実 務 上広 く用 い られ るに至 って い ない し,現 在 の ところ強力 な支持 を得20)

てい ない とい う見解 を一つ だ け取 りあ げ る こ とに とどめ る。

皿.APB意 見 警策11号 か らFASB基 準書 第96号 へ

法人税等の会計に関わる問題は,「ある期間に債務の確定 した法人税額は,

必ず しもその期間に財務会計上認識された取引に当てはまる適切な法人税費用2])

を表す とは限 らない。」 とい うこ とか ら出発 した。 それ を受 け る形 で,APB意

見書 籍11号 は,動 態 論 に基づ いて,適 正 な期 間損益計 算 を指 向 し,企 業 会計上

の税引前 当期利 益 と法 人税 の対応 関係 を重視 す る立場 をとった。 それ に伴 って

貸借 対照 表上 の繰延 税 金の資 産 及 び負債 に関 してその資産性 及 び負債性 に疑 問22)

を もたれ た。す なわ ち1967年12月 にAPB意 見書 第11号 が発 表 されて以 来,そ

の採 用 の結 果,多 くの米国 の企業 は,貸 借 対照 表上 の貸方残 高が,年 々膨 張 し,

税率 変更 の影響 が考慮 され なか ったた め,そ の負債概念 に対 して批判 を受 けた。

また繰 延税 金 の借 方残 高 に対 して も,そ れが必 ず しも将来 の税 金の減額 にな ら23)

ない ことか ら,・そ の資 産 性 に対 して も批 判 を受 け た。 またFASB基 準警 策96

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164一 経 理 知 識一一一

号 にお い て も,APB意 見書 第11号 に よ る税 効 果 会 計 の実 施 に関 して次 の よ う

な批 判 を した。 それ は,種 々の会 計上 の 要件 が首 尾 一 貫せ ず,そ の 適用 結 果 が

計 算 過程 につ い て述 べ られ てい るの みで,概 念 的明 確 さに欠 けて い る こ と,さ

らには要 件 の複 雑 さと不 明確 さの理 由か ら費 や され る時 間が結 果 と して の情 報24)

の有用性 に比べ,費 用 ・効果の面で見合っていないというものであった。

これらの批判に対 してFASB基 準書第96号 は,APB意 見書第11号 の資産 ・

負債概念の混乱 を取 り払 って統一概念に合わせた。すなわち,繰 延税金の借方

残高の資産性 を提起 している。それは繰延税金の借方残高は,税 金の還付可能

額 を上限にするということである。具体的にはその借方残高 は,欠 損金の繰戻

しによって実現 される税金軽減額を限度 として認識することが要求されること25)

となった。つまりそこでは欠損金の繰戻 しによって実現する部分に限って資産

性があると結論づけたのである。

同様に繰延税金の貸方残高についても,そ の負債性が論 じられた。繰延税負26)

債は,FASB概 念報告書No.6「 財務諸表の要素」における負債の定義 を満

たす。すなわち負債は,過 去の事象(例:割 賦販売)か ら生 じる。それは,企

業の現在の債務つ まりその税額 はまだ政府 に対 して支払うべ きではないが,法

令 と法規に基づ き,税 金は割賦売掛金が将来に回収された時に,支 払 うべ きも

のである。繰延税負債は,発 生の可能性が高い将来の損失を表す一つ まり将来

における課税金額は,そ の発生が,既 に企業の当期の貸借対照表において考え27)

られている事象から生 じる。

また繰延税金及び前払税金の見積は,毎 年度の税率の変更及 び会社の所得水

準により正確 を期 し難いと疑問視 された。それはAPB意 見書第11号 が,期 間

帰属差異の発生年度の費用収益対応を第一義的に考えて,そ の後の税率の変更28)

に際 し,修 正 計算 を しなか った こ とに起 因 して い た。 したが って法 人 税 の期 間

配分 の方 法 と して,繰 延 法 にか えて負 債 法 に した。

以 上 の こ とか ら,FASB基 準 書 第96号 は,APB意 見書 第11号 の代 替 方 法 と

して結 実 した ので あ る。 この両 者 の個 々 の差異 は,次 章 に譲 るが,レ イモ ン ド29)

・シ ンプ ソ ンRaymondSimpsonは ,次 の 二 点 を指 摘 して い る。 す な わ ち そ の

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一 税効果会計165

第一点は,改 正前では,繰 延税金が税務申告所得 と財務報告利益 との間の差異

に基づいて計上されていた。これらの繰延税金は,税 率の改正があっても修正

されることがなかった。 これに対 し,FASB基 準書箱96号 では,繰 延税金が

資産 ・負債の税務価額 と財務報告価額 との差異に基づいて計上 される。第二点

は,FASB基 準書第96号 では,税 率改正の ときに税負債 を再計算 し,純 利益30)

に税率改正の影響 を認識することを必要 としている。

W.FASB基 準 書第96号 の特 質

FASB基 準書籍96号 は,税 効果会計 の基本的な考 え方一すなわち繰延税金

を認識するといったことを踏襲 しているものの,損 益計算書重視のAPB意 見

書第11号 とは大 きく異な り,貸 借対照表重視の会計処理 を要求するものである。

そこで,両 者を対比する形でその差異の主な点を簡潔に述べることとしたい。

(イ)損 益計算書における法人税の概念

APB意 見書第11号 では,こ れを企業会計上の税引前利益の計算に含まれて

いる収益及び費用取引の税効果相当額 とする。

FASB基 準書第96号 では,こ れ を当期の納税額(還 付額)と 繰延税負債 ・

資産の期首 ・期末の差額 とす る。

(ロ)企 業会計上 と税務上 との認識の差異について

APB意 見書第11号 では,そ の差異 を期間帰属差異 と捉える。つ まり,期 間

差異 とは,企 業会計上の収益 ・費用の認識時期 と課税所得計算上の益金 ・損金

の認識時期 とが異なるが,長 期的には両者の取扱が一致するため,特 定の期間

や時点では税金の前払いや未払いが発生する項 目をいう。

FASB基 準書第96号 では,そ の差異 を暫定的差異 と捉 える。つ まり,税 法

と財務会計基準は,資 産,負 債,費 用,利 益及び損失の認識 と測定について異

なっている。そのため,次 の事項 との間に差異が生ずることになる。

a.当 該年度の課税所得金額 と税引前財務会計利益額

b.資 産 または負債の税務価額(taxbases)と 財務報告価額

このようにして生ずる差異を暫定的差異 と呼ぶ。

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166一 経 理 知 識一

(ハ)繰 延税金(費 用)の 計算方法

APB意 見書籍11号 において,繰 延税金 は,永 久差異を除外 した後の当期税

引前利益に基づいて法人税の税額計算を行 う。繰延税金(費 用)は,法 人税

(費用)増 額 と当期税金(費 用)と の差額として計算 される。

FASB基 準書籍96号 において,繰 延税負債 ・資産は,次 期以降の税務 申告

書上で表れるであろう暫定的差異を見積 り,そ れから未払いあるいは前払税金

として計算される。繰延税金は,繰 延税負債 ・資産の純増減額 として(す なわ

ち,期 首残高 と期末残高 との差額 として)計 算される。当期税金は,申 告書上

の税額 として別途計算 される。

(二)期 間差異 または暫定的差異の税効果計算に用いる税率

APB意 見書第11号 においては,そ の計算に際 して,期 間差異の税効果 には,

当該差異が発生 した時点で適用されている実効税率が用いられる。31)

FASB基 準 書 第96号 で は,暫 定 的 差異 の税 結 果(Taxconsequences)に は,

当該 暫定 的差 異 が将 来解 消 す る時 点 で適 用 され るで あ ろ う税 率が 用 い られ る。

また,還 付 予 定 分 につ い て は,還 付 税 率 を用 い る。

(ホ)税 法 ・税 率 の変 更

APB意 見 書 箱11号 に お い て は,税 金 の 期 間 配 分 の 方 法 と して 繰 延 法

(deferredmethod)を 採 用 して い るた め,繰 り延 べ られ る税 金 す な わ ち税 効

果 額 は,期 間差 異 が発 生 した期 間の 税率 に よ って計 算 され,税 率 の変 更が あ っ

た場 合 に も,税 額 の再 計算 は,行 われ な い。

FASB基 準 書 箱96号 に お い て,繰 延 税 負 債 また は繰 延 税資 産 は,税 法 また

は税率 の改 正 の影 響 につ き,改 正年 度 にお いて修 正 され な けれ ば な らない。 し

たが って,こ こで は税 金 の期 間配分 の方 法 と して負 債 法(liabilitymethod)が

採 用 され る。

(へ)繰 延 税 負債

APB意 見 書 第11号 で は,そ れ を将 来 の期 間 に 配分 され る期 間 差異 の税 効 果

と して の認識 され た繰 延 税 金 の累積 貸方残 高 を表す 。

FASB基 準書 箱96号 で は,そ れ は,当 期 まで に発 生 した事 象 の 繰 延 税 結 果

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一 税効果会計一167

として将 来支 払 うこ とになる税額 を表 して い る。 これ は,FASB概 念報 告書 第

6号 「財務諸 表 の要素」 の定義 に合致す る もので あ る。

(ト)繰 延税 資 産

APB意 見書 第11号 にお い て,繰 延 税資 産 は,将 来 の期 間 に配 分 す るた め に

繰 り延 べ られた期 間差 異 の税 効果(た だ し,実 現 の合 理 的保証 を条 件 とす る)

の累積 借 方残 高 を表 してい る。

FASB基 準書 第96号 にお いて,繰 延 税 資 産 は,欠 損 金 の繰 戻 しに よ って実

現 す る こ とに なる税 金軽 減額 を限度 と して認識 され る。 こ こで の税 金軽 減 額 は,

(1)当 期 の税金,(2)当 期以 前 の 支払 税金,そ れ に'(3)当 期 の繰 延 税負

債 の3項 目の減額 ない しは還付 可能 額 をい う。

(チ)繰 越 欠損金

APB意 見書 第11号 で は,繰 延 欠損 金利用 の実現 性 が,合 理 的 に概 念 を差 し

は さむ余 地 もな く確実 視 され る場 合 に財 務 会計 上 の繰 越欠損 金 の利 用 に よ り税

額が,減 額 された年 度 に,そ の減 額 された税額 を異常 項 目一 前期 損益 修 正 と し

て認識 す るこ とにな る。

FASB基 準書 第96号 で は,繰 越 欠損 金 は,繰 越 許 容期 間 に予定 され る暫定 的

差 異の取 り崩 しか ら生ず る課税所 得額 か ら控 除 され る。発 生 した年 度 に繰越 欠

損 金の 税結果 を認識 す るに至 った年 度 に,源 泉 とな った利 益 の 区分 に応 じて計

上 す る。

(リ)繰 延 税金 の貸借対 照表上 の分 類

APB意 見書 籍11号 にお いて は,繰 延税 金 を生 じる も と とな っ た資 産 あ るい

は負債 の種 類 に応 じて短期 と長期 に区分表示 され る。

FASB基 準 書 箱96号 にお い て は,暫 定 的 差 異 の 税務 上 の効 果 の タイ ミング

に よ り分類 され る。す なわ ち,営 業循 環が1年 の場 合 には,短 期 繰 延税 負債 は,

次年 度 に課税所得 になる暫定 的差異 に よる未 払税 額 をい い,長 期 繰 延税 負債 は,

2年 目以 降に課 税所得 にな る暫 定的差 異 に よる未 払税 額 をい う。営 業循 環が1

年超 の場 合 はそ の期 間に応 じて短期 ・長期 の分類 も還付 の タイ ミングに よって

決 まる。

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168 一 経 理 知 識-

V.わ が国への税効果会計の導入

わが国では,諸 外国がすでに 「税効果会計」の会計実務の実践の段階に入っ

ていることを鑑みて,昭 和43年6月 に,日 本公認会計士協会の会計制度委員会32)

は,研 究資料NO.2「 税金の期間配分について」 を発表 した。 この研 究資料

の中では次に掲げる四つの重要な点が指摘 されている。 ・

①企業に課される税金 を利益処分 とする実務 と費用 とする実務 とがあ り,商 法

規則の制定以後 「税金費用説」が台頭 し企業利益を税引後利益 として把握す

る慣行がむしろ一般化 している。

②税金 を費用 として認識 し企業成績を税引後利益で表現する場合にはその差額

をいかに処理するかが問題である。

③税金の期間配分の問題は,わ が国においてはまった く無視 されている。

④利害関係者に適正な利益 を報告するためには税引後利益(純 利益)の 確定に

重要な影響を与える税金の会計処理基準を統一することが必要である。

しか しなが ら,こ の研究資料は,「 税金の期間配分」の概要 と検討 さるべ き

要点を示 したものに過 ぎなかった。

その後,こ の研究資料 をふまえ昭和51年 に連結財務諸表規則 を正式 に発表 し

た。その第11条 には,法 人税等の期間配分について 『連結財務諸表の作成に当

り,連 結会社の法人税その他利益に関連する金額 を課税標準 として課 される租

税(以 下 「法人税等」 とい う。)に ついては,期 間配分の処理(収 益 または費

用の帰属年度の相違に基づ き,各 連結会社の課税所得の合計額 と連結財務諸表

上の法人税等控除前の利益に差異がある場合において,当 該差異に係 る法人税

等の額 を連結財務諸表の法人税等控除前の利益に期間配分の方法によ り合理的

に対応 させるための調整 を行なうことをいう。)を行 なうことがで きる。』 と規

定 されている。

このよケに連結財務諸表についてのみ任意規定なが ら認め られたのは,連 結

財務諸表が配当可能利益の確定 という商法決算 と直接結びつかない財務情報の33)

提供 とい う形で位置づ けられているためである。

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一 税効果会計一169

次に,税 効果会計がわが国の会計実務に導入できるかを商法と兼合いから検

討 しよう。商法においては資本維持のための配当可能利益計算を目的とする訳

であるが,企 業の実体に即 した財務諸表に基づ く理論上の税額が実際に支払う

べ き税額より多い場合,未 払税金が負債の部に計上されるので,商 法の計算規

定の趣旨に反 しないことは確実である。 しかしながら,理 論上の税額が,実 際

に支払うべ き税額より少ない場合(期 間損益の差に基づ くものに限る)そ の差34)

額を前払税金として処理することは疑問視される。ただ しこの場合であつても,

次に掲げる理由により商法の規定の趣旨に違反 しないと思われる。つまり法律

上の確定 した債務 として支払った金額であっても費用収益の対応原則に基づい35)

て,商 法の繰延資産の科 目以外で前払処理 しているものが多 く存在 しているこ

とである。たとえば商法規定以外の税法上の繰延資産,返 還不可能な条件の前36)

渡金,手 付 金 等 の よ うな項 目で あ る。 したが って商法 にお ける資 産 の本 質が将

来 の収益 に対 応す る未実 現 の集積 であ るか ら,資 産 その ものが そ もそ も費用 の

繰 延で あ る とい う考 え に立 つ と,現 行 商 法上繰延資 産 と して規定 された ものの

みで な く,慣 習法 上認 め られた ものや,会 計 慣行 として行 われ てい る もの も資37)

産 の部 に計 上 しうる こ とにな る。

この よ うに現 行 の商法 上 の資 産 ・負債概念 を概括 的 に検討 してみ る と,す で

に商法 に は,税 効果 会計 の導 入 の下地 が造 られてい る こ とに な る。あ とはわが

国の会計 界が 税効果 会計 を取 り入 れ るか どうかの問題 で あ る。

さ らに海外 の税効 果会 計 の採 用状況 を簡単 に見てみ よう。税効果 会計 を制度

と して整備 して い る国 は,米 国,英 国,オ ース トラ リア,カ ナ ダ,デ ンマ ー ク,

フ ラ ンス,ド イ ツ,ホ ンコ ン,フ ィンラ ン ド,オ ラ ンダ,ニ ュー ジー ラン ド,38)

シ ン ガ ポ ー ル 等 が あ る 。

特 に 英 国 で は,主 要 な 会 計 士 団 体 が 共 同 で 「会 計 実 務 基 準 書(Statements

ofStandardAccountingPractice以 下SSAPと す る)」 を設 定 し,公 表 し て き

た 。 こ の 基 準 書 の 中 でSSAP第11号 「繰 延 税 金 の 会 計(Accountingfordefer・

redtaxation)が 公 表 さ れ た 坑1978年10月 にSSAP第15号 「繰 延 税 金 の 会 計

(Accountingfordeferredtax)」(1985年5、 月 改 訂)に よ っ て 撤 回 さ れ た 。

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170一 経 理.知 識-

SSAP第15号 で は,.FASB基 準 書 第96号 が 公 表 さ れ る前 に,す で に 「一 部

計 上 方 式 、(partialprovisionbasis)」 と矛 盾 しな い とい う理 由 に よ り 「負 債 法j39)

の適用 を要 請 して い る。

1973年 に発足 した国際 会計 基 準委 員会(lnternationalAccountingStandards

Committee以 下IAS・Cと す る)は}1979年7月 に国 際 会計 基 準(lnternational

AccountingStandard以 下IAS・ とす る)第12号 「法 人税 等 の会 計(Accounting

forTaxesonIncome)」 を公 表 し,法 人税等 の会 計 に 関 して は税 効果 会 計 の適

用 の勧 告 を行 った。 そ の後IASCは,1989年 ユ月 に公 開草 案 第33号 「法 人税

等 の会計(案)」'を 公 表 し,意 見 を求 め てい る。

以 上の よ うに米 国の み な らず欧 州先進 諸 国 におい て も,税 効 果会計 の適 用 を

行 って い るこ とが 理解 され た6こ れ は と りもなお さず法 人税等 を会計 処理 す る

にあた って使 われ る税効 果会 計 が,必 要 不 可欠 な会計慣 行 にな ってい る こ とを

示 す ものであ る。

企業会計 上問 題 にすべ きこ とは輌 企業利 益 と課 税所得 との差異 をい か に処理

し,こ れ をいか に伝達 す るか とい うこ とであ る。つ ま り税 効果 会計 に よ らな け

れば,企 業利益 に対応 しな い税 額 を財務諸 表 に報 告 す る こ とになる ことか ら,

その財務 諸表 を利用す る外部 利 害 関係 者 の判断 を誤 らせ る こ とにな る。 つ ま り

税 引 き後の利益 は,単 に企業利 益 か ら法 人税等 を差 し引 いた数字 の残余 に過 ぎ

ない か らで あ る。

税効果 会計 は,企 業会 計 の究極 の 目的で あ る適正 な期 間損 益計 算,ま たそ れ

に伴 う情 報 の有用性,い ず れ を とって も,わ が 国の会計慣 行 に取 り入 れ な けれ

ばな らない もので あ る。 企業 利益 の過半 に及 ぶ法 人税等 の重要性 を考 えて も,

「税効 果会計」 を導 入 す る時機 が まさに到来 した とい え る。

注1>税 効果 とい った場 合,番 場嘉 一郎博士 も述べ られてい るよ うに(「 税効果 会

計 と制度的環境」 『企業会計』 第28巻 第1ユ号,1976年,20ペ ージ。)「企業 に とっ

て有利 な差額(ま たは有利 な差額の発生)の み を意味す るかの ごとき語弊が ある。

税効果 とい う言葉 を使 うとした場 合,そ れは企業に とって不利 なマ イナス税効果

を意味す ること もあ る と心得 るべ きで ある。」 とい うこ とが肝 要であ る。 したが

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一 税効果会計一一 171

って番場博士は,同 論稿において 「…… むしろ税効果 という代わ りに,税 額差異

とか税負担差異(ま たは税負担差額)と い うほうがぴった りしているだろう」 と

述べ られている。

2)わ が国法人税法においては,原 則的 に財務会計上の処理基準 と税務上の処理

基準が一致 しなければ認め られない。つ まり法人の課税所得計算は,法 人の会計

記録 を通 して行われるのであるが,こ れは株主総会等で承認 された 「確定 した決

算に基づ き」行われなければな らない。 これがいわゆる 「確定決算主義」 と呼 ば

れ る もので あ る。

3)損 金経理 とは,法 人が その確 定 した決 算にお いて費用又 は損失 と して経理 す

るこ とをい う(法 人税 法 第二条 第二十 六項)。 この こ とは.法 人税 法が,対 外 的

に実現 してい ない費用,こ とに法 人の内部取 引 に基づ く損失 は外部 的 には確 認 さ

れ ない ものであ る こ と等 を考慮 して,法 人の意思 の表現 を,確 定 した決算 にお い

て費用 又は損失 と して経理す る こ とを条件 と して,認 め た ものであ る。

4)わ が国の法 人税法 に対 して,米 国 の連邦所得税 法で は,課 税所得 は,わ が 国

の ご と く企業利益 か ら誘導計 算 を行 うので はな く,直 接税務上 の総益 金 か ら損 金

を控 除す る ことによ って課税 所得 計算 を行 う。す なわ ち ここで は完 全 に企業利益

と課税 所得 の切 断が見 られ る。 また若干 の例外(た とえば棚卸資 産 に関 して企 業

が,後 入先 出法 を税務 目的で採 用 した場 合 は,財 務 会計上 も後入先 出法 を採 用 し

なけれ ばな らない。)を 除い て課税 所得 計 算 と企 業利 益計 算 を別個 に行 うこ とが

で きるため,両 者 の 会計処 理方 法 を異 にす るこ とがで きる。

この よ うに米国 の税法 において,課 税所得計 算の際 に商事 上 の会計 処理 の拘

束 を弱 くしてお くの は会社法 自体が州 法で あ って,連 邦 としての統 一 的 な会社 法

規 定 を有せず,し か もその計算 規定 が大網 に と どまってい るか らで あ る。す な わ

ち法 人所得税 の課税所 得計算規 定 を定 め る内国歳 入法 は連邦 法で あ る ところか ら,

税 法上特定事項 の会計 処理 を商事上 の決算 で強制す る こ とは,会 社 法条の計 算規

定の異 なる各州 間の課税 の公平 を害 す るこ とに もな りかね ない と推 測 され る。

5)FASB基 準書 第96号 が発表 され た後 で,そ れ に関連 する同基準書 第100号 お

よび同基準 書 第103号 が公 表 された。 その 内容 は,発 効 日の変更で あ った。 当初

その適用 につ いて は,1988年12月15日 後 に開始す る事 業年度 に発効 す る こと とさ

れたが,こ れ らの基準書 に よ り,1991年12月15日 後 に開始す る事 業年度 か ら強制

適用す るこ とに した。

6)わ が 国 の 法 人 税 に対 して米 国 で は,"corporateincometaxes"あ る い は

"taxeson▲ncome"と い った用 語 を用 い て い る けれ ど も,一 般 的 に は"income

taxes"が 用い られ る。 本論稿 で は,わ が 国の所 得税 と区別 す る意 味 で,法 人税

とい う用語 で統 一す る こ とと した。

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172 一 一経 理 知 識一

7)APB,AccountingforIncomeTaxes,APBopinioftNo.11,Pai.14,December

1967.

8)法 人税法 の 「益 金 の額」 及 び 「損金 の額」の計 算 をす る際の 「別段 の定 め」

とは,法 人税法 第二編第 一章 第三款以下 の各規定,租 税特 別措 置法 第三章法 人税

法 の特例 の規定等 その他法令 の規定 に よる法 人税の課 税所得 の金額 の計 算 に関す

る各規定 で ある。

9)品 川 芳宣氏 は,そ の著書 であ る 「課税所 得 と企 業利 益』税 務研 究 会出版局,

1982年,6-8ペ ー ジにおいて,「 別段 の定 め」 をそれ ぞれの規定 の性 質 に応 じ,

三つ に分 類 している。詳細 は,同 書参照 。

10)昭 和15年 の税制 改正 に よ り,法 人税法(第 一種所得 税,法 人資本税 が一括 し

て法 人税 として独 立 した)が 所 得税法か ら独 立 して制 定 された際,・従 来,損 金算

入 とされて いた法 人税額が損 金不算入 とされ たが,そ の時 の改 正理 由は,法 人税

額 に費用性 が認 め られ るか否 かの費用理論 か らで はな く,法 人税額 を損 金不算 入

にす る こ とに よ り,租 税収 入の凹凸 を避 け,租 税負担 の適正,明 確 を期 す ため と

い う財政 政策上 の配慮で あ った。武 田昌輔r近 代 税制 の沿革一所 得税 ・法 人税 を

中心 と して一』(日 本 税理士連 合会 編 集 「現代税 務 全集一39』 ぎ ょうせ い,1983

年)120一134ペ ー ジ。

11)法 人税 法弟 二十二条 第五項 に よれば,「 資本 等取 引」 とは,法 人 の資 本等 の

金額(資 本 の金額 又は 出資金額 と資本積立 金額 との合 計額 をい う)の 増加 又 は減

少 を生 じる取引 及び法 人が行 う利益又 は剰 余金の分 配(い わゆ る商法 の中 間配 当

に規定 す る金銭 の分 配 を含 む。)を い う。

12)高 田正淳他編 「テ キス トブ ック会計学(6)税 務 会計』畑 山紀稿,有 斐 閣,

1981年,229ペ ージ。 同様 の見解 が,浦 野晴 夫r企 業会 計要 論一 企業 会計 原則 と

商法 ・税 法 の総合 的検 討一']中 央経済社,1989年,109ペ ージに も見 られ る。

13)中 島省 吾 「期 間費用 と して の法 人税」 「企業 会計』 第12巻 第1号,1960年,

49-52ペ ー ジ。

14)RobertT.Sprouse,"TheSignificanceoftheConceptoftheCorpdrationin

AccountingAnalyses,"TheAccountingReview,(1957>,p.372.

15)

16)

17)

18)

19)

武 田 昌 輔r新 講 税 務 会 計 通 論 』 森 山 書 店,1985年,180ペ ー ジ 。

高 松 和 男f会 計 学 概 論[三 訂 版]上 同 文 舘 出 版,1982年,26ペ ー ジ 。

RobertT.Sprouse,op.cit.,p.373.

Ibid.,p.374:

HomerA.Black,"InterperiodAllocationofCorporatelncomeTaxes."(New

York:AmericanInstituteofCertifiedPublicAccountants.Inc.1966),VI.

20>APBopinionNo.11,0p,ciL,par.24,,

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一一一税効果会言†一 173

21)Ibid.,par.8.`

22)こ の 問 題 は,APB意 見 書 第11号 が,発 表 さ れ る 以 前 にA.A.A,(米 国会 計 学

会)に よ る 「会 社 財 務 諸 表 会 計 お よ び報 告 諸 基 準(1957年 改 訂 版)」 に お い て 指

摘 され て い た もの で あ った 。 す な わ ち企 業 会 計 上 と税 務 会 計 上 の 差 異 は 明示 す べ

きで あ り,こ れ を表 示 す る様 式 と して 輌 そ の 差 額 を(次 期 以 降 で の税 額 の節 減 を

期 待 す る場 合 に)前 払 額,あ る い は 《逆 の 効 果 を予 想 す る場 合 に)見 越 負 債 額 と

して掲 記 す る場 合 が あ る。 しか しなが ら,こ れ らの項 目は 資 産 あ るい は負 債 と し

て の 通 常 の性 質 を備 え て い な い し,次 期 以 降 の 相 殺 の予 想 は不 確 定 で あ り,そ の

処 理 は 不 当 に 複 雑 で あ る等 か ら望 ま し くな い(AmericanAccountingAssocia,

tion,AccountingandReportingStandardsforCorporateFinancialiStatements,

1957Revision,中 島省 吾 訳 編,増 訂A.A.A.会 計 原 則,pp.57-58)。

23)青 山 監 査 法 人 「ア メ リカ の 会計 原 則」 東 洋 経 済 新 報 社,1989年,51ペ ー ジ 。

24)FASB,StatementofFinancialAccountingStandards(以 下SFAS)

No.96-AccountingforlncomeTaxes,1987,par197.

25)山 本 稔 「税 効 果 会 計 一 実 務 家 の 立 場 か ら一 」 『会 計 ジ ャー ナ ル』 第20巻 第13

号,1988年,46ペ ー ジ。

26)FASB,StatementofFinancialAccountingConcepts,(以 下SFAC)No.6:

Elementso正FinancialStatements,1985,par35.

27)FASB,SFASNo.96,0p.cit.,SUMMARY.

28)中 田 信 正 「ア メ リ カ に お け る税 効 果 会 計 の 改 正 -FASB基 準 書 箱96号 一 」

「産 業 経 理 」 第48号 第1号,1988年,11ペ ー ジ。

29)FASB,StatusReport,No.192,1988,p.1.

30)中 田信 正,前 掲 稿,1-2ペ ー ジ。

31)taxconsequencesは,FASB基 準 書 第96号 付 録Eの 用 語 解 説206に よれt',

あ る事 象 の 当 期 分 あ る い は繰 延 分 の 法 人税 上 の 影 響 とな る 。 そ の 意 味 は,取 引 等

の 事 象 に対 して税 法 規 定 を適 用 した 結 果 また は帰 結 を示 す もの で あ り,税 効 果 よ

り広 い 性 格 を持 って い る 。 す な わ ち税 効 果 が 主 と して 期 間帰 属 差 異 に 関 して 生 じ

る の に対 して,税 結 果 は す べ て の取 引 等 の事 象 に 関 して 生 じる こ とに な る。 した

が って 「税 結 果 」 は,広 義 の 「税 効 果 」 とい え る が,税 効 果 と区別 す る 意 味 で 税

結 果 も使 っ て い く。

32)日 本 公 認 会 計 士 協 会 会 計 制 度 委 員 会 「税 金 の 期 間 配 分 に つ い て(研 究 資 料

No.2)」OICPANEWS』 第116号,1968年,12-15ペ ー ジ。

33)大 迫 勝 「税 金 に関 す る会 計 情 報 一説 効 果 会 計 の す す め」 『企 業 会 計』 第36巻

第7号,1984年,120ペ ー ジ。

34)藤 野 信 雄 「個 別 財 務 諸 表 に お け る税 効 果 会 計 に つ い て一 日本 触 媒 化 学 工 業 の

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174 一一経 理 知 識一

訂 正 報 告 書 に 因 ん で」f商 事 法 務 」 第898号,1981年,25ペ ー ジ。・

35)同 上 稿,26ペ ー ジ。

36)同 上 稿,26ペ ー ジ。

37)宮 島 司 「わが 国 に お け る税 効 果 会 計 へ の対 応 一 商 法 学 者 の 立 場 か ら一 」f会

計 ジ ャー ナ ル」 第20巻 第13一号,1988年,43ペ ー ジ。

・38)'品 田正 「税 効 果 会計 ~ 海外 及 び我 が 国 の 導 入状 況 の検 討 一」r経 営 情 報 科 学』

第2巻 第1号,1989年,77-78ペ ー ジ。

39)菊 谷 正 人 「英 国 会計 基準 の研 究』 同文 舘 出版,1988年,141-153ぺt-・ ・一ジ。