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キネシオテーピング®の理解と臨床応用方法
【 入 門 編 】
人間総合科学大学 SPTラボ理学療法士 吉田 一也
2003 早稲田医療技術専門学校 卒 業 関町病院 入 職(東京都練馬区) 太田医療技術専門学校 非常勤講師2009 早稲田医療技術専門学校 専任教員2011 埼玉県立大学大学院 修士課程 修 了 人間総合科学大学 入 職 助 教(埼玉県さいたま市) SPTラボ 代 表2013 獨協医科大学大学院 博士課程 在 籍 中
吉田一也 理 学 療 法 士キ ネ シ オ テ ー ピ ン グ 指 導 員
8 Colors
KinesioⓇ Tex
キネシオテックス®( Kinesio® Tex )
キネシオテーピング®を行うためには、専用のテープを用いる。正式名称はキネシオテックス®(Kinesio® Tex)と言い、日本ではKinesio® Tex +PLUS、海外ではKinesio® Tex Goldという商品が販売されている。人種によって皮膚の可動性、毛の量、体格などが異なるため、日本と海外とでテープの伸張性を変えている。現在日本で販売されているキネシオテープは、『Kinesio® Tex +PLUS Wave』と『Kinesio® Tex +PLUS EDFG』の二種類である。
ちなみに後発品の代表例としては、「キネシオロジーテープ」や「KTテープ」がある。知らない人も多いが、どちらも協会が認める正規品ではなく後発品である。
キネシオテックスⓇの粘着面
スポーツ・一般向き Kinesio® Tex +PLUS Wave
敏感肌・医療従事者向け Kinesio® Tex +PLUS EDFG
キネシオテーピングⓇの構造
空SPACE
動MOVE
冷COLD
狭NARROW
滞OVERDUE
熱HEAT
キネシオテーピングⓇの対象は「狭」「滞」「熱」の状態
これをテープを使って、「空」「動」「冷」の状態に変化させることが目的キネシオテックスⓇの目的
テープ貼付前 テープ貼付後スペ|スが広くなる
表皮・真皮
リンパ液表 層 筋
深 層 筋
表皮・真皮
リンパ液
深 層 筋
表 層 筋
テープ
※ 各組織間に空間が無い状態 ※ テープの伸縮性によって各組織間に 空間が生まれた状態
空SPACE動MOVE冷COLD
狭NARROW滞
OVERDUE熱HEAT
キネシオテーピングⓇの原理
キネシオテーピングⓇの原理
前スライドの図は、身体の断面を模式化したもので、表層から皮膚、皮下組織、脂肪、表層筋膜、表層筋、深層筋膜、深層筋の順に層になっている。
左図のように身体に不調や痛みが生じている場合には、これらの組織間の滑走が不十分になった状態と考えられる。例えば、皮膚炎などで皮膚に問題がある場合や、皮下組織にリンパ液が溜まったり、血腫が溜まったり、脂肪が多く存在したりする場合には、皮膚と皮下組織間での滑走が不十分となる。
右図はテープを貼付した後の変化を示している。ある程度伸ばされたテープ(0から10%伸張)を皮膚に貼付することによって縮もうとするテープの力を利用して皮膚を持ち上げ、各組織間に10μ(ミクロン)ほどの隙間と作る。この隙間を作ることこそが、キネシオテーピング®の原理となる。
キネシオテーピングⓇの対象
皮 膚 膜テープ
角 質 層
顆 粒 層
有 棘 層
基 底 層コラーゲン
エラスチン
線維芽細胞基 底
皮下脂肪
表 皮
真 皮
皮下組織
キネシオテーピングⓇの対象
昔はキネシオテープのことを「筋肉テープ」と呼んでいた時期もあった。それは、筋肉の走行に沿って貼ることで筋力(筋出力)がアップすると言われていたからである。しかし、最近ではキネシオテープのことを「筋肉テープ」と言うことはほとんどなくなっている。
最近ではキネシオテーピング®の表層へのアプローチが注目されている。テープの伸張率を0~10%程度で皮膚に貼付することで表皮~真皮にアプローチすることができると言われている。キネシオテーピング協会の加瀬会長によれば、「テープを一枚貼ることで表皮に、同一部位にもう一枚重ね貼りすることで真皮までアプローチ可能である。」と報告している。
テープの伸張率と対象部位の関係
キネシオテックスⓇの切り方
I字キネシオテックス X字キネシオテックス
Y字キネシオテックス 熊手状キネシオテックス(リンパキネシオテックス)
貼 付 法
※ テープの両端を引っ張りながら皮膚に貼付
※ テープの一端をまず皮膚に貼ってから、 もう一端を引っ張りながら皮膚に貼付
テープの伸張方向 皮膚の誘導方向
動MOVE
空SPACE
冷COLD
伸張率 0~10%程度
貼 付 法
前スライドの図のように貼付法は2パターンある。
一つ目の貼付法は、テープの両端を引っ張りながら皮膚に貼り付ける方法で(上図参照)、テープの両端を引っ張って貼付することでテープ中央部に縮まる力を利用する。テープの中央部付近に皮膚を誘導したり、皮下組織の組織間の隙間を広げたりすることが可能となる。ピンポイントの圧痛点や血腫などがある場合には、この貼付法が有用である。
二つ目の貼付法は、まずテープの一端を先に皮膚に貼り付けておき、その後にもう一端を引っ張りながら皮膚に貼り付ける方法である(下図参照)。この方法では、貼り始めの部分に皮膚を誘導することができる。自分の意図する方向に皮膚を誘導したい場合には、この貼付法が有用なので、セラピストにはこちらの貼り方を工夫することが有益な使用方法と言える。
た わ む
た わ む
キネシオテックス®を用いて各組織間に隙間を作った場合、前スライドの写真のように貼付部分の皮膚に皺(しわ)が寄ってたわむ。
このような皺を徒手的に作り出そうとしてもなかなかできるものではない。この皺を作ることこそがキネシオテーピング®でしかできない専売特許と考えている。
痛みの軽減 関節矯正
体液循環改善 筋機能改善
キネシオテーピングⓇの4つの効果
キネシオテーピングⓇの4つの効果
① 体液循環改善 皮膚(表皮・真皮)へのアプローチにより、各組織間に隙間を作り、リンパやその他の体液の循環を促すことができる。また、皮膚に貼られたテープが身体の運動時によく擦れることによって、リンパ管のフィラメントが刺激されてリンパの流れがさらに改善される。特に海外では、リンパ浮腫や慢性浮腫へのキネシオテーピングⓇが多用されている。
キネシオテーピングⓇの4つの効果
② 筋機能改善 体液循環と同様の機序で各組織間の隙間ができることによって筋が無理なく収縮と弛緩を繰り返せるようになる。また、運動疲労によって一時的な筋肉の肥大などによる筋の滑走不全にも有用と考えられる。
さらに、過度に伸張された筋肉や過度に縮んだ筋肉を正常化する効果もある。
キネシオテーピングⓇの4つの効果
③ 痛みの軽減 体液循環の不良や筋の滑走不全によって引き起こされるものに関してはテープを貼付直後に消失ことが多い。
また、皮膚に貼付するため皮膚に点在する感覚受容器を変調させて、痛みを緩和させる効果もある。皮膚にある低閾値の機械受容器や侵害受容器が賦活されて中枢神経内の痛覚を抑制してくれる。
キネシオテーピングⓇの4つの効果
④ 関節矯正 筋肉の過緊張によって引き起こされた関節の偏位を正常化することができる。副次的な効果として、筋機能が改善し、全身状態が改善されることによって時間経過とともに関節の矯正が可能となる。キネシオテープは伸縮性に優れたテープのため、関節を強引に矯正する目的では使用するほどの強度はない。関節を固定したい場合は、スポーツテープを用いて固定することが望ましい。
その他の効果⑤ 治療効果時間の延長⑥ 皮膚感覚入力の向上⑦ 神経系へのアプローチ⑧ 表皮基底層にある幹細胞の活性化⑨ 癒着の剥離
など
キネシオテーピング × 理学療法
キネシオテーピングの理論を理学療法に応用する
キネフィジオの流れ①
☆ 可動性:動きやすさ
★ 筋出力:力の入りやすさ
☆ パフォーマンス: 動作・スポーツ特性に合わせて
キネフィジオの流れ②
☆ 可動性:立位動的評価
★ 筋出力:MMT, 歩行 etc
☆ パフォーマンス: 各動作・スポーツ動作
キネフィジオの流れ③
テープの色分け
☆ 可動性:ブルー
★ 筋出力:ピンク
☆ パフォーマンス:ブラック
「伸」のキネシオテーピング
テープ皮下組織
筋 肉
起始部停止部
「伸」のキネシオテーピング
動MOVE
の応用皮膚S K I N
の誘導 筋肉の収縮方向と同方向に皮膚を誘導する貼付法である。まず、起始部から停止部方向にテープを貼ることで、皮膚を停止部から起始部方向に誘導することが可能となる。この方法であれば、筋肉の収縮方向と同方向へ皮膚を誘導することができ、皮膚と筋肉間の組織間摩擦が少なくなる。筋肉を痛めている場合や血腫などがあり、安静を強いられている場合には、この貼付法が有用だと考えられる。安静を保つことから、この貼付法は「静」のテーピング法と言える。また、この誘導方法では、関節可動域の拡大にも有利なため「伸」のテーピング法とも言える。
テープ皮下組織
筋 肉
停止部 起始部
「力」のキネシオテーピング
「力」のキネシオテーピング
動MOVE
の応用皮膚S K I N
の誘導
筋肉の収縮方向と逆方向に皮膚を誘導する貼付法である。まず、停止部から起始部方向にテープを貼ることで、皮膚を起始部から停止部方向に誘導することが可能となる。この方法であれば、筋肉の収縮方向と逆方向へ皮膚を誘導することができる。筋出力を上げたい場合やスポーツなどでのパフォーマンスを向上させたい場合などでは、この貼付法が有用だと考えている。動きやすく、力が入りやすくなる傾向もあるため、この貼付法は「力」のテーピング法とも言える。
キネシオテックスⓇ使用上の注意
テープを初めて使用する方やかぶれやすい体質の方は、テープの切れ端を皮膚に48時間貼り、発赤などの症状が出るか確認する必要がある(パッチテスト)。
使用中に発赤、かぶれ、かゆみなどの症状が出た場合は、直ちにテープの使用を中止し、専門医に相談する。
傷や皮膚炎などの皮膚表面に障害がある場合はその部位への使用は禁忌となる。
汗でテープが貼りにくい場合は、まずよく汗を拭き取り、ベビーパウダーをひと掴みセラピストの手になじませてからテープ貼付部分に塗り込むことによって最適な状態に近づけることができる。
男性の場合は、特に手足の体毛が問題になる。体毛がテープと皮膚の間に入ってしまうため、痛みや違和感を生みやすくなるため、テーピングをする前に毛を剃るように指示をすることが大切である。
参考書籍(一部)
keynote for Mac