立命館大学理工学部機械工学科流体力学II 流体力学IIogami/fdm2/c1/newC1.pdf · 立命館大学理工学部機械工学科流体力学ii 3 1.1 粘性とは流体が何かにくっつくような性質（粘着力

立命館大学理工学部機械工学科　流体力学II

1

流体力学II

第１章粘性流体第２章ナビア-ストークス方程式の解第３章　境界層第４章　実験的研究第５章　数値計算法


2

第１章粘性流体

1.1　はじめに

流体力学Iではおもに粘性のない流体を扱った．流体力学IIでは粘性のある流体について学習し，運動方程式の導出，その近似解や厳密解について学習する．流体力学I，IIでは流体の圧縮性は考慮しないが，圧縮性流体については流体工学で学習する．


3

1.1　粘性とは

流体が何かにくっつくような性質（粘着力のある性質）


4

粘着条件or滑りなし条件

図1-1　非粘性流体と粘性流体

速度＝０

速度＝０


5

滑り無し条件


6

(1.1)

uyτ µ

∂=

∂　　　

粘性力せん断応力

図1-2 壁近傍の速度分布


7

物質温度t ℃

密度ρ g/cm3

粘性係数μ g/(cm・s)

空気01020

1.293 ×10－3

1.2471.205

1.710×10－4

1.7601.809

水01020

0.99980.99970.9982

1.792×10－2

1.3071.002

表1-1 空気と水の密度と粘性係数


8

考察１

表1-1を見てわかることは何か？


9

　

　粘性係数の単位がg/(cm・s)となることを式

(1.1)から確かめよ。なお、g/(cm・s)はPで表さ

れポアズとよばれる。

　また、粘性係数の単位はSI単位ではPa・sとな

ることも確かめよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　

考察２


10

問題 1　流体を２枚の平行平板に挟み，上の平板を一定速度Uで動かすと流体の速度分布は図のように直線状になる（クェット流れとよばれる）．このとき，平板の面積をSとすればいくらの力が平板にかかるか求めよ.


11

1.2.1 オイラーの運動方程式

非粘性流体の運動方程式

(1 )1 .2xu u u Fu vt x y

pxρ

∂−

∂ ∂ ∂+

∂=+

∂+

∂ ∂　　　

(1 )1 .3yv v v Fu vt x y

pyρ

∂−

∂ ∂ ∂+

∂=+

∂+

∂ ∂　　　

圧力による加速度

外力による加速度

流体の加速度

1.2 ナビア・ストークス方程式


12

1.2.2 せん断応力

τ τ µ

τ

τ

∂ ∂ = = + ∂ ∂ 軸に垂直な面に作用する応力の成分

軸に垂直な面に作用する応力の成分

(1.4)

::

xy yx

xy

yx

u vy x

x yy x


13

1.2.3 垂直粘性応力

τ µ

τ µ

∂=

∂∂

=∂

　　　

2

2 (1.5)

xx

yy

uxvy


14

1.2.4 　ナビア・ストークス方程式の導出

図1-3　粘性力が作用する

x方向の力の成分を取り出すと，　　　　

ττ ∂∂∆ = +

∂ ∂　　　　　　　(1.6)

xyxxF dxdy dxdyx y

∆F


15

ττ ∂∂∆ = +

∂ ∂ (1.6)xyxxF dxdy dxdyx y

µ∂ ∂

∆ = + ∂ ∂

2 2

2 2 (1.7)u uF dxdyx y

に以下の２式を代入すると　　　　

質量　　　　の微小流体部分を加速させることに寄与dxdyρ

τ τ µ∂ ∂

= = + ∂ ∂ (1.4)xy yx

u vy x

τ µ τ µ∂ ∂

= =∂ ∂

　　　2 , 2 (1.5)xx yyu vx y


16

結局，粘性流体の運動方程式は

　　　　　となる．同様にy方向の運動方程式は

　　　　　　　　

νρ

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + = − + + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

2 2

2 21

(1.8)x

u u u p u uu v Ft x y x x y

νρ

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + = − + + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

2 2

2 21

(1.9)y

v v v p v vu v Ft x y y x y

粘性項

粘性項


17

µν

ρν

=

動粘度（動粘性係数）:

ただし


18

1.2.5 　レイノルズ数

ナビア・ストークス方程式を三次元で表示すると以下のようになる．　　 ν

ρ

νρ

νρ

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + = − + + + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + = − + + + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ + + + = − + + + + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

　　　　　　　　　　　　　　

2 2 2

2 2 2

2 2 2

2 2 2

2 2 2

2 2 2

1

1

1

(1.

x

y

z

u u u u p u u uu v w Ft x y z x x y zv v v v p v v vu v w Ft x y z y x y z

w w w w p w w wu v w Ft x y z y x y z10)

これをベクトルで表すと以下のようになる．　　　　　　　

　　21( grad) grad (1.11)ptv v v F vνρ

∂ + ⋅ = − + ∇∂


19

この式の無次元化を行うことでレイノルズ数を導く．次元とは長さ，質量，時間の３つである．

代表長さを，代表速度をとする．

このときとおくとは次元を持たない．' 'L U

x Lx x=


20

とおけばは無次元となる．

2

2

', ', ',',

( / ) ',',

/ '', ', ', ', ', ', '

x Lx y Ly z LzU

t L U tp U p

U Lx y z t p

v v

F Fv F

ρ

= = =====

これらを式(1.19)に代入すると


21

　　2' 1( ' grad) ' ' grad ' ' (1.12)' pt Rev v v F v∂ + ⋅ = − + ∇∂

ここで

　　　　　　　　　　　　　　　であり，レイノルズ数とよばれる重要な無次元パラメータである．

　　　　(1.13)ULRe ν=


22

無次元化の利点

１．円柱周りの流れをコンピュータでシミュレートする場合，直径，流速，動粘性係数の３つがパラメータとなるが，運動方程式を無次元化することによりレイノルズ数のみをパラメータとすることができる．


23

２．直径が1mの円柱を流速1m/sの水に置いたときにできる流れと，直径が2mの円柱を流速0.5m/sの水に置いたときにできる流れは相似である．

コンピュータを用いてシミュレートすればそれらの違いは全くない．　現実には多少の違いが生まれる（例えば流体の運動が重力の影響を受ける場合など）．


24

３．長さが20mのスペースシャトルの性能実験を行うときに，わざわざ実物大の模型を実験室に持ち込まなくても，長さが1mの小型模型で用が足りるのは，流体の運動に相似性があるためである．


25

1.3 運動の相似則

図1-4　レイノルズの実験

平均流速パイプの径流体の動粘度

ud

ν層流

　　乱流


26


27

　　　　をレイノルズ数(　　)と言い，遷移を与える値を臨界レイノルズ数という．　　　　　　　

Re/ud ν

　レイノルズはが一定の値より大きくなると乱流への遷移が起きることを発見．

/ud ν

↑約２０００


28

層流から乱流への遷移


29

層流から乱流への遷移


30

レイノルズ数は流体の慣性力（運動量(流量)）

と粘性力

との比を表す．

レイノルズ数の物理的意味

　　　2 2

(1.14)U L ULRe ULρµ ν= =

2 2 2( )QU UL U U Lρ ρ ρ= =2U L ULLµ µ=


31

問題２　　速度30m/sで飛行する航空機の模型実験を流速10m/sの水槽で行う．このとき模型の大きさは実物の何倍にすればよいか．また，実験を流速100m/sの空気中で行う場合はどうか．ただし，空気，水の動粘性係数をそれぞれ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

とする．

5 2

6 2

1.56 10 cm /s1.01 10 cm /s

νν

−

−

= ×= ×


32

問題３　　自動車事故の検証を行うために模型実験が行われることがある。自動車の運動の相似性を保証するために考慮すべきパラメータにはどのようなものがあるか考えてみよ。例えば車の大きさな

ど。


33

恐竜がどのくらいの速度で走っていたのかを推測するために，運動の相似性が考慮された．このとき無次元パラメータとして

フルード数（　　　　　）が用いられた．2 /( )U gl


34

　流体に作用する慣性力と重力の比で表される．　

　自由表面をもつ流れの模型実験の相似パラメーターとして用いられる．

フルード数

2 2 2

3Fr U L UgL gL

ρρ= =

テキストによってはもある．Fr UgL=


35

表面の波が流れに逆らって進む速さを特徴づける物理量


36

図1-5　相対歩幅長　　　とフルード数/s l 2 /( )v gl


37

問題４　　コンプソグナトゥスの体長が70cm，体高が25cm，歩幅が50cmであるとき，その速度はいくらになるか．


38

問題５　体の大きさが２倍になると，走

る速度は何倍になると考えられるか．　


39

1.4 ナビア－ストークス方程式の解

図1-6　質点の運動

高校の物理：質点の座標と速度を求める．


40

図1-7　NACA6409翼

ナビア・ストークス方程式は流れ場全体の解を与える．

Documents

立命館大学理工学部機械工学科 流体力学II 流体力学IIogami/fdm2/c1/newC1.pdf · 立命館大学理工学部機械工学科 流体力学ii 3 1.1 粘性とは 流体が何かにくっつくような性質（粘着力

立命館大学理工学部機械工学科流体力学II 流体力学IIogami/fdm2/c1/newC1.pdf · 立命館大学理工学部機械工学科流体力学ii 3 1.1 粘性とは流体が何かにくっつくような性質（粘着力