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中国 IPTVInternet Protocol TV)市場調査報告 2005 9 CICC 北京事務所 堀江 哲夫

中国 IPTV Internet Protocol TV)市場調査報告 · PDF fileiptvが中国it市場のホットトピックスとなっている。iptvには電信キャリア、ベンダー、icp

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中国 IPTV(Internet Protocol TV)市場調査報告

2005年 9月

CICC北京事務所

堀江 哲夫

はじめに IPTVが中国 IT市場のホットトピックスとなっている。IPTVには電信キャリア、ベンダー、ICPのみな

らずケーブルテレビキャリア、CCTV(中国中央電視台)などコンテンツプロバイダーとしての機能も

持つ放送会社、家電業界からも高い関心が寄せられている。

2003 年 10 月 米国マイクロソフト社はインターネットベースのテレビ技術をケーブルテレビ業者や

電話会社向けに開発していることを発表した。同社のWindows Media 圧縮ソフトを利用した技術で

VOD などの動画配信サービスを可能にするというものであった。

セットトップボックス(STB)が設置されたテレビに xDSL ブロードバンド網上で映像を配信する IPTV

はネットワーク技術の向上等により高画質提供が可能になったことで普及にはずみをつけた。IPTV

は日本でも 1990 年代に登場したがテレビ自体がアナログであったこと、通信環境が未整備等の理

由で浸透しなかった。しかしアジア・パシフィック地域では 2003 年以降発展し IPTV 世界市場にお

ける契約世帯数の約半分 200 万世帯に至った。これはブロードバンドネットワークの急速な普及に

加え、ブロードバンドサービスプロバイダーがビデオコンテンツ配信に積極的に取り組んだことが要

因となっている。欧州でもイタリアで光ファイバーベース(FTTH)のサービスFast Webが開始、その

ほか France Telecom, Telefonica など有力通信キャリアが xDSL ベースのサービスを開始、更に

TPS, Canal+などの Pay TV 業者によるサービス提供を始めている。

昨年のECリサーチ社のIPTV市場調査によれば2007年には欧州市場は大きく発展し32億ドル、

従来市場の北米地域、アジア地域を加えた世界市場は75億ドルとなるだろうと報告されている。そ

こに中国市場での IPTV 導入が「通信と放送の融合」という大きな流れの中から一機に動き始めて

きた。

今年 5 月 12 日、国家広播電影電視総局(国家ラジオテレビ総局)は、上海文広新聞伝媒集団

(SMG)の上海テレビが国内で初めてインターネットテレビ(IPTV)の営業許可を取得し、また同局

が携帯電話テレビサービスの経営を認可されたと正式に発表した。

上海テレビはテレビ、ハンディターミナル向けの番組放送を認可され、そのサービスは自社放送と

番組編成・運営の 2つに分けられる。これによって同局は IPTV によるテレビ放送とオンデマンド放

送が可能となり、他の放送番組やオンデマンド番組を編集して自社ネットワークから放送できる。

中国においては「75 号文書」で放送と電信の企業協力の禁止している。しかし IPTV はブロードバ

ンド会社と放送会社の協力によってTV番組が放送され、関係するブロードバンド会社にとっては

幅広い IPTV 市場参入の機会が生まれてくる。

2004年の中国国内のブロードバンドユーザーは2630万で、2008年には1億近くになるとされてお

り、IPTV 市場は 1千億元を超えると期待されている。

更に中央電視台(中央テレビ、CCTV)の子会社である中視網絡発展有限公司(中視網絡)は、IP

TVライセンスの獲得が内定したことを明らかにした。通信会社との提携をすでに始めており、チャ

ンネル数は80近くに増えるという。

すでに中国電信や中国網通との提携を進めており、各地でテストを行っていることを明らかにした。

中国電信によると、テストが行われているのは、北京市、上海市、江蘇省、雲南省、新疆ウイグル自

治区、河北省、河南省、黒龍江省である。

また、中国電信に続き、中国網通はインターネット通信大手の電訊盈科(PCCW)と合弁会社を設

立して、IPTV市場に進出の準備を進めている。

この流れと並行して中国モバイル市場でも大きな動き、提携があった。中国移動集団公司(中国移

動)と上海文広新聞伝媒集団(SMG)は、北京市で戦略パートナーシップ協議に調印し、携帯電

話によるテレビ放送業務の共同開発を行うと発表した。両社は、中国移動のモバイルデータ通信

サービス「移動夢網(モンターネット)」上でテレビチャンネルを開発する準備を完了、ユーザーはオ

ンラインでもオフラインでもテレビ番組を視聴することができるようになる。番組は、SMG傘下の東

方龍移動信息公司が編集するが携帯電話端末の特性やユーザーのニーズを考慮して、短編ドラ

マの放送などが予定されているという。コンテンツには、携帯電話だけで放送される番組や、通常

のテレビで放送された番組と関連のある番組などがある。この提携は、中国移動とMTVの提携に

続く、第3世代(3G)技術のコンテンツとしても注目されている。業界関係者は、「3G規格における

最大のネックは、相応するコンテンツがないことだ」としてきた。3Gの最大の特徴である高速データ

通信により、携帯テレビや携帯映画など、新たなモバイルエンターテイメントの登場として期待され

ている。現時点で移動通信ライセンスを持たない中国電信、中国網通の放送会社との提携は、将

来のライセンス取得、移動通信市場(3G)参入を見据えてのものであることは言うまでもない。

電信業界においてはブロードバンドサービス発展の切り札として、更に次世代モバイル

サービスのキラーコンテンツ「動画コンテンツ」の確保の思惑からの国外を含めた多くの放送会社と

の「合従連衡」が始まるであろう。

IPTV産業は世界的にも大きな関心を集めている。5月にはインテルのCEOに就任したばかりのオ

ッテリーニ氏が訪中したが関係者との中心的議題はIPTVであったという。

国内放送会社にとっては国民福祉的な要素から極めて低く抑えられた「視聴料」の中で苦しい経

営を強いられている状況を大きく改善させる契機に、また国家計画に指定されながら遅々として進

まない「デジタルテレビ化計画」の挽回を図る絶好手段でもある。更に、設備改善のための投資資

金獲得にも国際的優良企業である「電信会社」との提携は有利に働くと思われる。

IT 関連企業にとって、テレビセット買替需要、STB 需要、ケーブル網改善需要、さらにデータサー

ビス発展が新たに創造するサービス・ソフトの新市場と、その期待は大きい。

中国政府(信息産業部)にとってもこの流れは十分に容認できるものである。第 10次 5カ年計画の

中で設定され、恐らく「達成」という結果になるであろう多くの目標の中で、実質的に「未達」となるも

のが二つある。インターネットユーザー2 億人達成と地方格差(IT デジタルデバイド)解消である。

IPTV 導入がこの大きな2つの難題同時解決の有効な手段となるかもしれない。

第1章 中国における IPTVの評価および分析 IPTVはブロードバンドネットワーク上で画像、音声、テキストを送受信し提供するイン ターネットプロトコルベースの双方向ビデオシステムである。デジタル TV 放送、VOD、HDTV更に個人ビデオサービス(Personal Video Recorder)といった種々サービスを提供する。IPTVの端末(Display Terminal)としては 2種類がある。 ひとつは PCである。電信キャリアが提供する ADSL,VDSL更に LANなどのブロードバンド網に接続された PC である。PC ユーザーは映画、TV 番組、ニュースフラッシュなど双方向のマルチメデイアコンテンツを得ることができる。この種のサービスはブロードバン

ドアクセスネットワークの急速な発展により中国において 3 年近く前から提供されるようになっている。ブロードバンドサービスプロバイダーは既に66業者がライセンスを受け

ている。但しこれらのサービス提供は PC ユーザーに厳しく制限され、TV ユーザー(TV視聴者)には提供されていない。 もう一つの端末は現在注目を浴びているテレビである。IP セットトップボックス(STB)をテレビに接続することで、家庭の TV視聴者は電信キャリアのブローバンドネットワークを通してのインターネットアクセスが可能になり、インターネットサーフィン、

VOD,HDTV,PVRなど双方向のブロードバンドサービスを享受することができる。 本稿では電信キャリアのブロードバンドネットワークを通して TV 端末によりビデオサービスを実現する IPTVに焦点を当て調査研究を行っている。 以下に幾つかの観点からこの IPTVの意義について論を進めたい。

Video

Text

Picture

Audio

TelecomNetwork

HFC CableNetwork

IP Multi-media server

Broadcasting head system

TV television

PC

IP set box

Source: In-Stat, 6/05

1) エンドユーザー(消費者)の観点からの分析 中国における IPTV導入に対しての最大の課題は、低料金でケーブルテレビを視聴でき、安価な VCD,DVD といった媒体で映画などを観ている視聴者(エンドユーザー)にどう食い込んでいくのか、という事であろう。エンドユーザーの立場からケーブル TV、DVD,ブロードバンド VAS(付加価値サービス)との比較検討する必要がある。

User

TV

PC

DVDPlayer

Receiver Terminal

Transition Platform

Cable Network

broadband Network(ADSL)

Movie

Contents

News

Chatting

Games

DVDDisco

…. ….

….

IP SBT

Source: In-Stat, 6/05

(1) 中国のダウンタウンまたは農村地域の各家庭においてアナログテレビは非常にポピ

ュラーな存在になっている。2004年末現在所謂 TV視聴者(ユーザー)は 3億 6,000万を超え、更にケーブルテレビユーザーは 1億人を超えた。ほとんど全ての世帯に少なくとも 1台以上のテレビが備えられ、幾つかの都市においては 2台目、3台目のテレビを購入するという傾向も出始めている。 中国ブロードバンドユーザーは2004年2,000万を超えたが、そのうち70%はADSL、残りが LAN その他のアクセスとなっている。ユーザー数、利用時間など漸増の傾向にはあるもののインターネットを勤務先で業務に利用しているケースがほとん

どである。 巨大な TVユーザーとブロードンバンドユーザーが IPTVユーザーになる下地は十分にあるのではないか。

(2) アナログテレビ、ブロードバンド VAS、DVD、デジタルテレビとの差別化の鍵は「双方向性」「使いやすさ」そして「価格」である。 ①アナログテレビ ケーブルキャリアが提供するアナログテレビサービスは現時点で中国ビデオ市場を

独占している。一般的に 50チャンネルが月僅か 18元で提供されている。この料金はケーブルネットワーク保守のコストを賄うのがせいぜいである。ほとんどの TV放送局はフリーコンテンツを利用しての TV宣伝広告サービスで全収入の 7割を得ているというのがアナログテレビサービスの実態である。 アナログテレビに較べると「双方向性」という面で IPTV は明らかに優れている。デジタルアプリケーションの流れの中でアナログテレビは早晩ビデオ市場での独占

的地位から脱落、低所得者層、「デジタル嫌い」のユーザーに限定されいずれ駆逐さ

れていかざるをえない。多くのユーザーは画像品質、双方向性、新規サービスの面

で優れているデジタルサービスメデイアに移行していくであろう。 ②ブロードバンド付加価値サービス(VAS) 多くのブロードバンド付加価値サービスの中で「オンラインムービー」は最も人気

のあるサービスのひとつである。中国電信はそのポータルの中でこのコンテンツを

提供している。加入者は一本 1元、またはコンテンツリストの中から何本かを選択するパッケージサービスを月 30 元でダウンロードすることができる。またパーソナルサイトまたは小規模WEBサイトでは無料で画像、音楽をダウンロードできるサービスもあり、多くのユーザーが利用している。 勿論これらの低料金サービスを得るために PC ユーザーはブロードバンドネットワークにアクセスする必要がある。彼らは PCスクリーンに限定されたこのサービスに必ずしも満足してはいない。例えば、3 人家族の場合一緒に映画なり、ゲームなりを楽しもうとしても 17 インチの PC スクリーンではこの希望を満たすことは難しい。「大きい画面」「使いやすさ」は IPTVが VASに大きく優れている点である。 ③DVD DVD プレイヤーも中国の家庭ではごく普通の備品になっているといえる。中国ではデイスク専門店、スーパーマーケット、書店、ショッピングセンターなど至る所

で容易にデイスクを購入することができる。封切された映画のデイスクを、海賊版

であるが、5~8元で販売している「然るべき市場」もある。一般的に正規版の映画、音楽のデイスクも 20元以下で購入できる。 IPTVの価格面での特長は「パッケージサービス」にある。ブロードバンド VASの場合数十から百以上のコンテンツが平均月 30 元であることは前述したとおりであるが、後述するデジタルテレビの基本サービス料も月 50 元程度に設定されていると言われている。IPTVも VAS、デジタルテレビにほぼ匹敵する 1コンテンツ 1元程度の料金体系は提供可能であろう。さらに DVD に比べ「コンテンツ」入手が至極容易であることも IPTVの利点であろう。 ④デジタルテレビ(デジタルケーブルテレビ) デジタルテレビはこの 5年間ケーブルキャリアが国家の指導の下大いに普及に注力しているプロジェクトである。2004 年末現在、有料デジタルテレビユーザーは約

100 万で普及率は1%にとどまっている。中国政府は 2005 年末 1,000 万ユーザーという当初の目標を 300万ユーザーと下方修正した。デジタルテレビに対する大きな期待は大きく後退したといえる。 今年 7月、国家広電総局は「全面的にCATVのデジタル化を推進するに関する意見(試行)」を発表、中国49の関連企業に対し、財政部・国家開発銀行、税務総局が2010年までに合計100億元の融資及び営業税減免の優遇政策を与え、デジ

タルテレビの普及を促進する方針を変えていない。また、民間企業の同分野の参与

も許可されている。その原因は、デジタルトップボックス1台価格は400~50

0元で、上海地区だけでも400万のCATVユーザーがあり、全部無料設置する

と約20億元の負担となり、デジタル CATV発展の大きな障害となっている。 デジタルテレビは「双方向性」のレベルという側面を除くと IPTVに匹敵するサービスであるといえる。双方向性の面でデジタルテレビは「リモコン」を利用しての

サービスとなるため、その範囲は限定的にならざるをえない。IPTV には限定的となる制限条件はなく非常に「フレキシビリテイ」のあるサービスといえる。

(3) IPTVの Key-Application IPTVは TV放送コンテンツ、VODなどのサービスをブロードバンドネットワークを通して TV加入者に提供するが大きな 2つの利点が考えられる。一つは TVユーザーに PCなしでブロードバンドコンテンツの享受を可能にする事である。 今一つの重要且つ大きな利点は、大きな TV スクリーンとインターネットの双方向サービスの結合により、これまで実現できなかった新サービス提供への道を切り開

いたことである。 ① TVショッピング IPTVプラットフォームでの TVショッピングは新規サービスといえる。 現在の TV ショッピングは「詐欺」的商法などの問題もあり、その市場規模は極めて小さく、その位置づけも単なる商品の「宣伝」といった程度である。 E Commerceが今後の有望ビジネス分野といわれ、若者を中心にネット上でオンライン購入する傾向も出てきている。これらインターネットの PC ユーザーと同様にIPTV ユーザーがオンライン購入を始めたならば、その市場規模は現状規模の約 8倍に拡大する。購入層も若年層から、PC でのオンライン購入には消極的な中高年層に広がっていく事が容易に予測され、更なる発展が見込まれるであろう。 ②遠隔教育(テレビ放送教育) 中国における教育ビジネスは巨大な市場である。PC ベースでのオンライン双方向教育は既にインターネットサービスの大きな業績である。 IPTV は TV ユーザーに対して更に双方向の画像を駆使した教育サービスの可能性を提供することができ、児童を持つ家族ユーザーの注目を浴びるサービスとなるで

あろう。

報道によれば中国衛星通信 7月、IPTV免許を取得、IPTV事業に乗り出した。衛星を使ったネットワークによりIPTVサービスを提供するという。カーバレジ

は全国の85%に達している。このため、コストはその他キャリアより低い。中国

衛星通信集団公司はまた、遠隔教育大手の電大在線遠程教育技術有限公司の株式を

買収し中央広播電視大学、TCL集団股分有限公司に次ぐ3位株主となった。 インターネット人口が爆発的に増加しているため、遠隔教育の開拓できる領域が広

いと判断しての遠隔教育事業参入である。「遠隔教育事業に進出することで、事業の

多様化を進める」ため、内部資源や技術的優位性を生かし、遠隔教育産業の発展に

寄与したいとしている。電大在線遠程教育も、中国衛通のブロードバンドネットワ

ークの活用で遠隔教育をさらに進めていく考えを重ねて強調している。第 1位株主の中央広播電視大学は 1979 年創立の総合大学であるが本格的な遠隔教育を2003年に開始し学生数(聴講生)は約147万人にのぼり、29の専攻科目をもつ。 高等教育分野も含めて教育ビジネス市場を狙うこの種の提携・合作は進みユーザー

にとって多くの選択肢が提供されるようになるであろう。 ③ テレビゲーム オンラインゲーム業界はいくつかのサクセスストーリと膨大な資金を「盛大」など

業界大手企業にもたらした。オンラインゲームはその大きな売上げと多くのユーザ

ーを背景にオンライン付加価値サービスとは独立した一つの「産業」にまで発展し

ている。もしテレビをオンラインゲーム端末とする状況に至れば、ゲームユーザー

が画期的に伸びていくことは疑いの余地もない。大きなスクリーンで、家族単位、

リビングで一緒にゲームを楽しむという情景が多く見られるようになるであろう。

更に IPTV ならではの高機能 TV ゲーム、家庭用 TV ゲーム、教育ゲームといったスペシフィックなゲームの登場も期待される。 ④ その他 中国都市部においては従来の音声コールから画像付のコールサービス(Video Call)が始まっている。これまではビジネス分野に限られていたが、最近は家庭用(プラ

イベート用)にこのサービスを受けているユーザーも出てきた。高価な端末(2,000~3,000元)、料金の高さ(0.5元/分)などから未だユーザーは極めて限られている。 IPTV ベースとなれば、端末は 500 元程度になるであろう。サービス料金の設定次第では大きく伸びるサービスとなろう。そのほか Online Home Medical Service, Online remote Monitoring(Community Safe Monitoring)など IPTVプラットフォームをベースにした既成の観念を超える新サービスの出現が可能となるであろう。

2) 供給サイド(サービスプロバイダー)の観点からの分析 IPTVサプライチェインの中で電信キャリアと ICPは重要なキープレイヤーである。

IPTVキャリアは IPTVサービスを提供するためのADSLがほとんどのブロードバンドネットワークを持つ。また、彼らはユーザーの多様な需要に対してコンテンツを

管理し、ユーザーが容易に希望するコンテンツを得るため、カスタマイズしたサイ

ト、チャンネルを設計しなくてはならない。電信キャリアもまた加入者からのサー

ビス料金回収のための課金システムを整備しコンテンツを統合的に管理する必要が

ある。 インターネットの急速な発展を背景に、中国において認可された ICPは 8,000 超にのぼる。ICP は映画、ゲーム、音楽、ニュース等の多くの付加価値コンテンツを創るわけだが、これまでそのコンテンツは PCベースのブロードバンド付加価値サービス(VAS)または携帯電話付加価値サービス向けであった。IPTV導入となれば、これら ICP 市場は TV ユーザー(視聴者)という新しい巨大消費者市場を得ることになり、大きなビジネスチャンスに活況を呈するであろう。 IPTVはブロードバンドアクセスネットワークの上で提供されるサービスである。中国において、独自のアクセスネットワーク(加入者アクセス)を持つ電信キャリア、

ケーブルテレビキャリアが IPTVサービスを提供することになる可能性は高い。ただし、ケーブルテレビキャリアにとって IPTV市場参入のため解決すべき課題は小さくない。彼らは現行のネットワークを双方向(bi-directional)可能な HFCシステムに改造、新設というネットワークアップグレードが必要になる。一方電信キャリアに

とっては、IPTVサービスの為この種の大きなネットワーク改造は不要であり、この意味で優位な立場にある。 (1) ケーブル(テレビ)キャリア ケーブルテレビキャリアは IPTVサービス導入に積極的とはいえない。最大の問題は上述した「ネットワーク改造」のための資金不足にある。 ケーブルテレビキャリアは 10年前、リストラ、組織改革を行なったが、電信キャリアの体制とは異なり「集団公司制」ではなく、地域単位などに分かれた個々のキャ

リアが分離独立した経営形態を採っている。そのマーケテイング・セールス力は電

信キャリアのそれに較べるべくもない。 現在多くのケーブルテレビネットワークは単方向(One Directional)HFCシステムとなっている。現在の HFC システム上で IPTV サービスを行なう為には One- Directional HFCをBi-Directional(双方向)にアップグレードしなければならない。 この 3 年間ケーブルテレビキャリアはデジタル(ケーブル)テレビサービス導入に注力してきた。HFCネットワーク上でこれまでの TV信号のアナログ伝送方式をデジタル伝送方式に改造する、というものである。しかし、この改造には長い期間と

巨額の投資が必要であり、実現には多くの難題を抱えているように見える。とくに

投資資金調達は多くのケーブルテレビキャリアにとって大きな問題である。ケーブ

ルテレビキャリアの売上げのベースは平均 18 元/加入者/月以下の「放送配信料」であるが、低料金に抑えられているため従業員給与、ネットワーク保守費の捻出にも

苦しんでいるキャリアも少なくない。とても新規投資に対応できる財務状況にはな

いのが現状である。外部より資金調達できるわけもない。結局は、国家広播電影電

視総局(SARFT)が計画し、促進しているデジタルテレビ計画を進めざるを得ない。デジタルテレビ計画は 2004 年末現在 120 万有料加入者に留まっており、当初の2,000万加入者獲得目標を大幅に下回っており、計画は遅れている。しかし SARFTはこの計画を継続する方針を堅持している。各種優遇政策、プロジェクト予算化な

どの支援策を打ち出しており、キャリアにとって唯一残された道のように見える。 ケーブルテレビキャリアには IPTVサービスがある部分でCompetitorになるであろうと観ている関係者も少なくない。加入者世帯がデジタルテレビと IPTVをひとつのテレビでそのサービスを受ける状況では、加入者はいずれかを選択しなければなら

ない。即ち、電信キャリアとケーブルテレビキャリアの「コンテンツ」と「サービ

ス」の競争という状況になる。 一方で IPTVはデジタルテレビを発展させる力になると観ている人もいる。IPTVサービスの普及はデジタルサービスへの消費者需要を増加させ、現時点では消費者に

認知されていないデジタルテレビの市場ポジションを向上に向かわせるというもの

である。上海で 2004年 9月に行なった市場調査によれば、デジタルテレビサービスが始まって 2 年を経ているにも関わらず、僅か6%の人のみがデジタルテレビを知っていた、という結果が出ている。電信キャリアが進めるであろう IPTVサービスがデジタルテレビサービスの市場認知度を高める可能性は大きく、ポジテイブに相乗

効果を期待するむきもある。この見方からデジタルテレビ・IPTV双方に対応できるDual-STBモデルを開発、商品化している企業ベンダーも出てきている。 (2) 電信キャリア 電信キャリア、特にデータサービス売上げアップに期待する固定電話サービスキャリ

アにとって、IPTVはブロードバンドサービスのキラーアプリになるであろう。 中国ブロードバンド加入者は急激な伸びをみせ 2004 年末現在、インターネットユーザー総数 9,400万に対して 2,000万に到達した。 ADSL サービスはこの 3 年間で急速に拡大した。2004 年下半期からその伸び率は下がってきているが、これは中国ブロードバンドのボトルネックになるであろうと言わ

れていた「PC 需要飽和」によるところが大きいと見られている。現在 PC ユーザーは 4,500万に対して TVユーザーは 3億 6,000万と言われている。特に農村部において PCユーザーは極めて少なく PCなしでブロードバンドネットワークにアクセスできる IPTVは電信キャリアのブロードバンドサービス拡大の切り札となるであろう。 電信キャリアは既存加入者の確保、新規加入者獲得のため次々と魅力的なコンテンツ

を提供し続けている。中国電信は「互聯星空 VNet」、中国網通は「天天在線」といった VAS プラットフォームを通して、映画、音楽、ゲーム、ニュースといった付加価値サービスを提供している。しかしながら「VNet」「天天在線」上のコンテンツに必ずしも満足しているわけではない。何故なら、より多くの加入者を惹きつけるキラー

アプリのサービスが未だ出てきていないからである。電信キャリアは IPTVにその役割を期待している。 現在、電信キャリアは 2つのブロードバンドサービスに課金し収入を得ている。 ひとつはブロードバンドアクセス料である。地域によって若干の差はあるが、通常月

額 60 元~150 元になっている。もうひとつがコンテンツサービスである。コンテンツサービス料は ICPと分割されすべて電信キャリアに入るわけではない。 中国において TVは最も重要なメデイアプラットフォームという存在になっている。多くの人はその余暇を TV 視聴に充てており、最近の調査では国内広告売上げの約 4分の 1は TVメデイア関連のものであり、TV放送局の大多数はその収入の 90%以上をテレビ広告 CMに依存している。中国の TV 広告宣伝(CM)市場は堅実な伸びを見せており、R&TI社の調査によれば 2004年その総売り上げは 690億元にのぼる。 電信キャリアの IPTVが成功すれば、ブロードバンドアクセス、コンテンツサービスからの収入のみならず、この TVプラットフォームに参入することが可能になる。 「メデイア ジャイアンツ」を目指す電信キャリアにとって非常に魅力的な市場であることは間違いない。 IPTV のもっとも重要、かつ最終的な目標は、加入者に対して音声、データ、画像の3サービスを一括して提供するという、「トリプルプレイ サービス」プロバイダーになるという点にある。3 つのサービスを提供できることで、容易な加入者囲い込み、Low-Userの高消費化などをもたらす。勿論、かかる「トリプルプレイ サービス」プロバイダー実現には、中国の法律、政治環境下ではいくつかの制限が現状では存在

していることは否めない。しかし、その開放は徐々に進んでいるおり、実現の可能性

を高めつつあるという事も紛れもない「流れ」ではある。 (3) ICP IPTVにおいて、ICPは PCアプリと TVのそれとを結ぶ役割を持つことになり、ICP自体を大きく変貌させていくであろう。 前述した盛大インタラクテイブのようなオンラインゲーム ICPの場合、IPTVは TVユーザーをブロードバンドゲームなどエンタテインメントコンテンツにアクセスさせ

るという大きなアドバンテージを得ることになり、新しいオンラインゲームのプラッ

トフォームを得ることになる。盛大は 2004 年下期からその準備を進めている。大画面で高画質の TVは新しいゲームコンテンツ、ゲーマーの潜在需要の拡大、顕在化をもたらすであろう。 IPTV は ICP にとって TV 放送、ブロードバンドネットワーク、DVD など現行のコ

ンテンツ販売チャネルに加え新しいコンテンツビジネスチャネルとなる。電信業界で

の ICP はキャリアのブロードバンドプラットフォームを通してそのサービスコンテンツを販売し、また一般的に TVプログラムの ICPはそのコンテンツを既存の TVプラットフォーム上で販売するのみである。IPTV時代になれば、すべての ICPはそのサービスを IPTVプラットフォーム上で再販することが可能になる。新華社、中央電視台、北京人民放送などは IPTVのコンテンツプロバイダーとしてのビジネスに注目している。また ICPにはスペシフィックなサービスのチャンスも生まれてくる。端末が PCということで限定されていた「ファミリーゲーム」といったブロードバンドサービスコンテンツがユーザーフレンドリーで大画面の TVとなることで実現するであろう。

3) 技術の観点からの分析 (1)ブロードバンド技術

IPTVサービスシステムは Contents-storage and managingシステム、ブロードバンドインフラシステムそして端末(Client Equipment/STB/TV)の 3つのサブシステムから構成される。技術の観点から IPTVにはいくつかの課題がある。この項では中国における IPTV技術の重要課題について評価、分析を進める。 中国では LAN、WLAN、ケーブルモデム、PLAアカウントはいるがブロードバンドインターネットアクセスの 80%以上が ADSLとなっている。 ADSL加入者は名目上 512Kbpsのサービスを受けている事になっているが、現実には100Kbps 程度が一般的である。規格どおりのサービスを享受している加入者は地域電信キャリアが1M~5M とアップグレードしている広東、上海などの沿海大都市の一

部に限られる。 LANは 10M~100Mが提供できるが、数多くのユーザーが同じ LANの中でこのバンドをシェアしなければならないため実質的なアクセススピードは ADSL のそれと大きく変わらないのが現実である。 このようなブロードバンドの現状で IPTV サービスを ADSL 加入者に対して提供するという事は電信キャリアにとって大きなチャレンジではある。ADSL プラットフォーム上で標準 TV 画質の IPTV サービスを行なうには1M~2M が必要である。仮に

HDTV レベルとなると 3M~5M が不可欠になる。ブロードバンドインフラの実態はIPTVの商用サービスを始めるに十分な環境を満たしていない。 さらに、ユーザー側にある ADSL モデムの CPE はキャリアサイトにある DSLAM と加入者線で接続されている。DSLAM側の信号送受信の帯域幅も限られてくることになる。この帯域は多くの場合 115M/622Mまたは 100M/1000Mであり、膨大なデータ量の伝送を必要とする IPTVサービスを提供するに十分とはいえない。加入者線の品質向上などブロードバンドネットワークの伝送効率に関係する課題は多い。 この解決の手段として既に電信キャリアは ADSL2/ADSL2+,VDSL,HDSL,FTTHなd

などの新技術をテストしている。

Broadband Network

ADSL

LAN

ADSL2

FTTx

VDSL

……..Source: In-Stat, 6/05

① ADSL2+ ADSL2+は下り Max.25Mbit/s、上り 800Kbit/s の仕様で長距離伝送、高速伝送、Easy-maintenanceを特長とし ADSLとコンパチブルな 2.2MHZの周波数となっている。中国では ADSL+2は未だ限られた地域でしか導入されていないがその普及の兆しは出てきている。VDSL,SHDSL などの他のブロードバンド技術に比べ、ADSL+2 は成熟した仕様、標準フレームワークであり、商用システムに適している。ADSL+2のチップベンダーには TI, GSV(Global Span Virata), Broadcom, ST, Infineonがある。彼らのチップセットは完全に国際標準に合致したものとはなっておらず、各ベンダーのチップ間の互換性などに課題があるが Interoperabilityなども含めてベンダー間の試験、調整が進められている。中国民族ベンダーも

ADSL+2 技術には強い関心をみせておりその商用システムへの採用への対応準備を進めている。 昨年 6月米国で開催された SUPERCOMM2004で Microsoft社と Lucent社は,Microsoft TV IPTV と Lucent 社の DSL 用局側収容モデム(DSLAM)およびADSL2+モデムの統合に向け MOU を交わし,ADSL2+回線で Microsoft TV IPTV対応セット・トップ・ボックスに対し,高精細のテレビ番組をオンデマンド配信のデモを行なっている。この両社は「(Microsoft TV IPTVが採用している)Windows Media 9 SeriesフォーマットとLucent社のADSL2+ソリューションで高精細テレビ・コンテンツを単一の ADSL2+回線で配信可能になった」と表明し

ている。 他のブロードバンド技術に比べると ADSL2+は帯域対応改善、双方向サービスなどの面では大きな効用はないが、現行 ADSL のアップグレードという意味では最善の技術といえる。2005年度中には ADSL+2の商用システムサービスが中国でも始まると思われる。

② VDSL IPTV導入は VDSL開発の契機になるであろう。VDSLは帯域改善、高速大量伝送に有効な技術で 50Mbpsにも到達するが伝送距離が 1.5キロと極めて短い。中国において、広東電信、北京通信(網通)、山東鉄通などの特定地域の電信キャリアで

は VDSLサービスを商用化しており 10Mを提供しているが、その加入者は未だ極めて少ない。VDSL は後述する FTTH 技術との併用で「短距離伝送」の欠点を克服することができる。このソリューションは中国の大都市地域では有効なものにな

ると考える。 ③ FTTH

FTTH は光伝送システムにより加入者エンドまで接続するブロードバンドネット

ワークで、100M(上り/下り)の伝送速度で大量伝送能力を持ち現時点では他の技術に追随を許さない最善の技術ソリューションである。IPTV サービスの高速アクセスを可能にする技術といえるが課題は高い「コスト」である。いくつかの電信キ

ャリアでは既に小規模ではあるがトライアルを行なっているが商用には今少しの

時間が必要であろう。

Technology Advantages and disavantages ADSL 2+ Advantages

♦ Support long transmission distance ♦ Easy to upgrade from ADSL Disavantages ♦ Can’t access to high speed ♦ Standard hasn’t been finalized It can be a appropriate way facing IPTV services in near future.

VDSL Advantages ♦ Enough bandwidth for IPTV Disadvantages ♦ Only support short distance

FTTH Advantages ♦ Enormous transmission capacity with 100M dual-direction

speed

Disadvantages ♦ Investment cost is very high and uneconomic currently

(2)電信ネットワークストラクチャーへの影響 IPTV サービスの関連データ伝送は 2 つの方式が考えられる。Point-to-point Broadcasting方式とMulticast方式である。どちらを採用するかでサポートする電信インフラのネットワーク技術は全く異なってくる。 Point-to-point方式はあるポイントから別のポイントに「リアルタイム」「双方向」でサービスを提供し、カスタマイズされたサービスを個々の加入者に提供する。 一方Multicast方式は複数の発信者(Dispatcher, Multicast resources)が多数の受信者に送信する。送信側は同じグループの所属するアドレスを持つ特定グループに

対し送信を行い、各チャネルを通してコンテンツを提供する。 電信ネットワークは Point-to-point 伝送をベースに構築されている。IPTV のように一方の方向のデータ量が膨大で上り/下りのバランスが大きく異なる時、その伝送効率は極端に低くなる。この課題を解決するには VDN(Video distribution network)/CDN(Contents distribution network)の考え方が必要である。 VDN/CDNはブロードバンドネットワーク上で急増するビデオ・ゲームなどエンタテインメントサービスに対応するため、既に大都市でのバックボーンネットワーク

として採用されている。IPTV サービスは高速・高画質を求めて、大量データ伝送を必要になりネットワークへの負荷は大きくなる。IPTV サービスの普及を考えれば電信キャリアとしては更なる VDN/CDN の構築が必要になってくるであろう。

ADSL の CPE は Multicast 方式には十分サポートできない。更にその標準化も未だなされておらず Interoperability も十分ではないため電信キャリアは各ベンダーのmulticast機能の試験を進めている状況である。 (3)Video Coding Format(画像圧縮技術) 画像品質を保持、伝送コストを削減するには Video Coding技術が不可欠である。 現在 4つの主要 Video Coding Formatがある。市場ではMPEG4が一般であり、H.264は近い将来普及するとみられている技術である。これらの技術は夫々別個に開発が進められているが、相互の Compatibility は非常に重要である。IPTV は初期段階にあり、IPTVのためのソリューションは未だ開発研究段階にある。

<圧縮技術比較>

Format Development MPEG4 ♦ MPEG4 has high compression rate, so its requirement

on bandwidth is relatively low ♦ Video of MPEG4 format have a lower definition than

MPEG2 ♦ Most IPTV system in China capitalizes MPEG4 format

MPEG2 ♦ MPEG2 has low compression rate with high video quality, so it need broader bandwidth than MPEG4

♦ The popular DVD use MPEG2 format ♦ Video MPEG2 format is growing quickly and has

increasing market share ♦ Contents in MPEG2 following MPEG4 dominate China

market WMV ♦ WMV is enterprise standard from Microsoft, it is widely

supported by PC subscribers

♦ As enterprise standard, it updating cycle is short with

poor stability

♦ Video in WMV format will take some risks in

commercial scale deployment

H.264 ♦ H.264 format is advanced with methods(ISOMPEG4-Part10)of high-efficiency calculation coding

♦ H.264 shows his top advantage facing IPTV, and probably dominates steam-media and IPTV services market in the future

4) 中国「政策」面からの分析 電信キャリアの IPTVサービス参入への願望は極めて強い。IPTVサービスライセンスの正式申請も進んでおり、内容については明確ではないが中国衛通が IPTV ライセンスを取得したとの報道もなされている。

中国衛星通信公司はこのほど、IPTV免許を取得、IPTV事業に乗り出した。衛星によ

りIPTVサービスを提供する。カーバレジは85%に達している。このため、コストはそ

の他キャリアより低い。更に傘下の北京中星寰通衛星通信技術有限責任公司はフランスのア

ルカテルと契約を締結した。アルカテルは1億ユーロを出資し、中星寰通の株式を買い取る。

また、中星寰通に衛星を設計・製造する。広電総局と提携し、コンテンツを提供する。

衛通はIPTV用STB製品を開発し、テストを行っている。さらに、近くにプラットフォ

ーム型サイトを開設する。同公司はIPTV、ネットワーク事業などの推進で、近くスター

トする3G事業に対応する。 (2005年 7月 Chinawave)

IPTVサービスはブロードバンドネットワークを通しての「情報サービス」であるため、中国では「オンライン情報サービス」に関する諸法令・政策に準拠して遂行されなけ

ればならない。 中国政府は「オンライン情報」に関して厳しく管理している。現状では如何なるオン

ラインコンテンツサービスプロバイダーも政府より下記 4 種のライセンスを取得しなければならない。 ☆ License for Transmitting online video and audio program ☆ License for online culture ☆ License for Internet Content Provider(ICP) ☆ License for Value-added services(VAS) 第 1 のライセンスは SARFT(国家広播電影電視総局)より発行され、残りの 3 つはMII(信息産業部)より発行される。MII はネットワーク構築及び運用に関しての管理責任を、SARFTはコンテンツリソースの管理を行なう。 IPTVライセンスは上述関係ライセンスの審査の下で発行されることになる。IPTVに最も影響のあるライセンスは第 1番目の License for Transmitting online video and audio programである。なぜならば IPTVは個々の端末で受けるオンラインビデオ・オーデイオサービスの一種でもあるからである。 SARFTは 2004年 10月半年有効期限の 60以上のライセンスを発行している。これらのライセンスは 2005年 4月中旬に期限切れとなっている。 これらライセンスは認可された業者に地域、サービスエリア、サービスタイプなど規

定し当該ビジネスを行なう法的な権利を与える。即ち、あるライセンス取得業者は全

国ベースで、一方ある業者は認可された限られた地域でのビジネスが可能という事に

なる。また、ある業者はニュースを除いたビデオ・オーデイオサービス、ある業者は

オンライン教育、とかホームドクターサービスとか特定サービスのみ、といったよう

に規定されビジネスを進めることになる。 上述 4ライセンスに加え、IPTVサービスプロバイダーは IPTVライセンスを SARFTより取得しなければならない。誰がそのライセンスを取得し、どのように SARFTはライセンスを発行するのかが業界の関心の的であるが、SARFTはケーブルテレビキャリア・放送会社(局)と電信キャリアのバランスをとりながら決めていくであろう。 2004年 4月末、SARFTは上海文広新聞伝媒集団(SMG)傘下の上海テレビが国内で初めて IPTVの営業許可を取得し、さらに携帯電話テレビサービスの経営も認可された

と正式に発表した。 上海テレビはテレビ、ハンディターミナル向けの番組放送を認可され、そのサービス

は自社放送と番組編成・運営の 2 つに分けられる。これによって同局は IPTV によるテレビ放送とオンデマンド放送が可能となり、他の放送番組やオンデマンド番組を編

集して自社ネットワークから放送できる。 上海文広新聞伝媒集団の張大鐘・総裁助理は「SMGは全国的なコンテンツプロバイダー、コンテンツベンダーであり、中国電信と中国網通を将来のパートナーとして考え

ている。具体的なサービスについては現在のところ研究・討論中」としている。 中国では 75号文書で放送と電信の企業協力の禁止している。しかし IPTVはブロードバンドキャリアと放送会社の協力によってTV番組が放送され、関係するブロードバ

ンドキャリアにとっても IPTV市場参入の機会が生まれてくる。 また中国移動と上海文広新聞伝媒集団(SMG)は、北京市で戦略パートナーシップ

協議に調印し、携帯電話によるテレビ放送業務の共同開発を行うと発表した。両社は、

中国移動のモバイルデータ通信サービス「移動夢網(モンターネット)」上でテレビチ

ャンネルを開発する準備を完了、ユーザーはオンラインでもオフラインでもテレビ番

組を視聴することができるようになる。番組は、SMG傘下の東方龍移動信息公司が

編集するが携帯電話端末の特性やユーザーのニーズを考慮して、短編ドラマの放送な

どが予定されているという。コンテンツには、携帯電話だけで放送される番組や、通

常のテレビで放送された番組と関連のある番組などがある。 この提携は、中国移動とMTVの提携に続く、第3世代(3G)技術のコンテンツと

しても注目されている。業界関係者は、「3G規格における最大のネックは、相応する

コンテンツがないことだ」としてきた。3Gの最大の特徴である高速データ通信によ

り、携帯テレビや携帯映画など、新たなモバイルエンターテイメントの登場として期

待されている。 更に 5 月には中央電視台(中央テレビ、CCTV)の子会社である中視網絡発展有限公司(中視網絡)がIPTVライセンスの獲得内定を明らかにした。通信会社との提

携をすでに始めており、チャンネル数は80近くに増えるという。 正式にライセンスを獲得したわけではないが、すでに中国電信や中国網通との提携を

進めており、北京市、上海市、江蘇省、雲南省、新疆ウイグル自治区、河北省、河南

省、黒龍江省など各地でテストを行っていると発表している。 このように現在のところ、SARFTの IPTVライセンスはケーブルキャリア・放送会社 にのみ出されているが、状況は中国電信、中国網通といった電信キャリアが彼らとの

「提携」の形で IPTVサービスに進出することを排除していない。 これまで、電信キャリアは MII の強い指導のもとで管理されてきたが、いまや電信キャリア自身が、広く IT市場に対して強い影響力を持つようになってきている。 電信キャリアが将来の有望な「ビジネス」として IPTVサービスを認識したならば、た

とえ電信キャリアに IPTVライセンスが発行されなくても、実効面で IPTVサービスのビジネスを行なうという状況を創りだしていくであろう。中国網通は資本提携関係に

ある香港 PCCWと IPTVサービスビジネスの共同研究を既に開始している。PCCWは旧香港テレコム時代、アジアで初めてブロードバンドベースの VODサービスを始めた電信キャリアである。 コンテンツに関して中国は未だ非常に厳しい規制下にあると言わざるを得ない。政治

的な側面での規制が一般的であるが、コンテンツ管理は多くの政府部門・機関が関与

しており、この「政治ファクター」は IPTVサービスの「流れ」を変えるものではないがその「発展のスピード」には影響を与えるかもしれない。

第2章 中国における IPTV発展トレンドの分析 1) ビジネスモデル IPTVヴァリューチェイン上、電信キャリアは IPTVサービスを送配信する Key-Driverである。電信キャリアが ICP から提供されるコンテンツを取り纏め、彼らのブロードバンドネットワークを通して IPTV加入者にサービスを提供する。システムソリューションベンダー、STBベンダーは設備機器、CPEを電信キャリアに納めることになる。

Source: In-Stat, 6/05

IPTV Carriers

Internet Contentproviders

Home electronic manufacturers

Telecom vendors

Users

IPTV solution

Source: In-Stat, 6/05

IPTV Carriers

Internet Contentproviders

Home electronic manufacturers

Telecom vendors

Users

IPTV solution

(1) STBはキャリアのバンドリング・サービス・パッケージの一つとして無償で加入者に提供されることになるであろう。 IPTVサービスはデマンド型というよりプッシュ型ビジネスの要素が強い。 IPTV は高い双方向性機能をもつビデオサービスの一種であるが、このサービス分野ではアナログ TV,DVD,ブロードバンド VAS など既存のサービスでユーザーの需要に対応できる市場環境にある。もっと Interactive で便利なこの新サービスを選択するチャンスをユーザーに提供するというスタンスをベースに IPTVビジネスは進められなくてはならない。 電信キャリアは IPTVサービスプロモートの為、いくつかの施策を実行してくるであろうが、恐らくは ADSLサービスビジネスで大成功した手法、経験を今回も採用すると思われる。ADSLの場合、加入者側の ADSL端末は無償で提供され、電信キャリアの売上げは加入者が支払う月々のサービス料から成っている。 さらに「デジタルテレビ発展促進計画」の例もある。 ケーブルテレビキャリアは現在希望ユーザーに対して、バンドリングサービスの中

でデジタルテレビ CPE の無償提供を行なっている。遅々として進まず困難続きだったこの発展促進計画の大きな前進、巻き返しとなるかを懸けてこの手法は進めら

れている。

ADSL、デジタルテレビの例をみるまでもなく、新サービス、新製品での市場参入にはこの手法が、中国消費者行動にも合致し極めて有効である。少なくとも初期導

入段階では電信キャリアは STB無償提供など様々なバンドリング・サービス・パッケージを打ち出していくであろう。

(2) この「STB 無償設置計画」を進めるためには電信キャリアは STB を直接ベンダーより購入する必要がある。STB購入先を決める要素は「価格」とこれまでの「関係」ということになろう。STBベンダーは 2つのタイプに分かれる。一つはアルカテル、UTスターコム、華為、中興といった Traditionalなテレコムベンダーである。彼らは CPE(STB)をシステム設備とともに「トータルソリューションベンダー」として電信キャリアに納入する形態をとるであろう。彼らは自社製造または OEM で対応していく。

いま一つのタイプは家電メーカーである。長虹、康佳、Haier などのホームエレクトロニクスメーカーは電信キャリアとのビジネス経験はほとんど皆無といってよ

い。彼らは知識、経験の不足という不利な側面を持った中で電信キャリアとのビジ

ネスをしなければならない。 (3) IPTV ビジネスにおいては、通常の電信ビジネス以上にベンダーと通信キャリアの

関係が深くなるであろう。電信キャリアは他社と差別化されたサービス提供のため

に特別仕様の CPE(STB)の納入をベンダーに要求することも十分にありうる。 言い換えれば、ベンダー側は単にキャリアが進めているビジネスを認識するだけで

はなく IPTV加入者の多岐に亘るデマンドをも十分に熟知し、これに対応できる開発・製造体制を構築しておかないとベンダー間競争での敗者にならざるをえない。

電信キャリアは自己のリスクを削減するため、買い取りではなく、レンタルをベン

ダーに対して要求するビジネス形態も考えられる。加入者側への保守・修理サービ

スをベンダーに要求することになるかもしれない。 市場シェア確保のため、ビジネスリスクを電信キャリアとシェアするか、といった

厳しい事業判断をベンダーに迫ることになるかもしれない。

2) 市場発展の駆動力となるファクターの分析 (1) IPTV加入者となる潜在ユーザーは 3億 6,000万にのぼる TVユーザー(視聴者)

と 2,000万を超えるブロードバンドユーザーである。 ビデオサービスにおいて中国で最も普及しているのはアナログ TVである。新しくユーザー側の機器を必要とせず、皆に親しまれているこのサービスは IPTVにとってその普及の障害、大きな壁ではある。 一方、2,000万を超えるブロードバンドユーザーを中心に人々は Internet Surfingに慣れ、ゲーム、オンラインビデオ、オンラインミュージック、e コマースなど

のインターネットサービスは大きく発展し、「インターネット」という言葉を知

らない人はいない。 まず TVユーザーにブロードバンドネットワークにアクセスさせることが重要であろう。アクセスした彼らがそのネットワーク上で可能になる IPTVに興味を持ち、IPTVユーザーに変えることは決して難しいことではない。 幾つかの導入トライアルを通して、IPTV サービス開始への市場環境は急速に整備されていくであろう。

(2) 経済成長の中で、中国国民は豊かになり、多くの家庭で高価なフラットな大スク

リーンの TV(プラズマ TV)が普及してきている。沿海大都市では 1万元程度と多くの家庭で購入できる程の価格レベルにまで下落している。 IPTVはアナログ TV、ブロードバンド VAS、DVD、デジタルテレビに比べ双方向性と便利さで大きな利点を持っている。指定のデマンドを送れば、希望する情

報、Entertainmentサービスを簡単に享受でき、極めて User-Friendlyな端末であるため老若男女を問わず容易に操作ができる。 近い将来多数の IPTVユーザーが、フラットで大きなプラズマ TV画面上で IPTVサービスを享受できるようになれば、此れまでサービスとは違った新しい感覚、

経験することになるであろう。既存ユーザーの MOU/ARPU(サービス利用時間/料金)増加、新規ユーザー開拓など IPTVサービス経営効率向上に大きく寄与することになる。IPTVサービスの発展とプラズマ TV、更なる新しい技術の TVの開発・出現は相乗効果を生み、両方の市場で大きなビジネスチャンスが生まれてく

るであろう。 (3) ARPU低下に悩む電信キャリアにとって IPTVサービスは「データサービス経営」

改善に非常に魅力のあるものであるが、一方でサービス競争力向上のためのブロ

ードバンドネットワークのアップグレードへの投資が不可欠になってくる。その

意味で IPTVサービスの全面展開には非常に慎重である。ICPの IPTVサービスへの関心は高く、IPTV キャリアとの協調には非常に積極的でコンテンツ番組提供などで電信キャリアに協力している。ICP にとって、IPTV は彼らのサービスをより多くの潜在的顧客に再販できる大きなチャンスを与えてくれるサービス

市場である。盛大などは既に、チップメーカー、STBベンダーと彼らのホームエンタテイメントビジネスにあうソリューション開発の交渉を始めている。 中国テレコム製造業は急速に発展した中国電信市場の下で大きく成長したが、電

信関連投資は安定した「調整期」に入っている。テレコムベンダーは新しい「投

資の波」を窺っているが、IPTV もそのひとつである。中興、華為など中国有力テレコムベンダーは期待されている IPTVソリューションについて市場調査を重ね、単なる機器設備、STBのベンダーではなく「ソリューション」ベンダーとして電信キャリアへのビジネスチャンスを狙っている。

3) 発展へのいくつかの障害・バリヤーについての分析 (1) 現在のところユーザー側から IPTVサービス導入への強い要求・需要は出てきて

いないと言わざるを得ない。従い、前述したようにサービス側からユーザー側へ

の強い「プッシュ」が必要という市場環境である。 ブラックマーケットで容易に得られる DVD の海賊版がはびこり、ほとんど無料に近いアナログ TVサービスが普及している。この現状で IPTVサービスが多くの支持を得ることは簡単なことではない。多くの中国人家庭ではサービスの「対

価」に対して非常に敏感であり「コンテンツ」に対して支払うという世間一般の

慣習、意識も高いとは言えない。これがユーザー側からの強い要求・需要がない

大きな理由である。これを打破できる IPTVのキーアプリケーションは未だ存在していない。 また、「海賊版」問題については,インターネットのオンラインビデオの 80%が「海賊版」であるといった調査もあり、長期的には IPTVサービス運用上,最大の課題になると考えるが、ここでは論じない。

(2) 前述したとおり、中国において IPTVサービスのためのブロードバンドネットワーク整備・アップグレードにはいま少しの「カネ」と「時間」を必要としている。 また、どのブロードバンド技術が IPTVに最適なのかの評価も定まっていないのが現状である。

(3) IPTV の標準統一化も大きな課題のひとつである。現時点では各ベンダーが個々の技術仕様でシステム機器、STBなどの開発を進めており、異機種間のインターフェイス問題が出ているが、未だ統一への動きは顕著ではない。仕様統一化がシ

ステム拡大、サービス拡大に不可欠であることは論を待たない。また製造、保守

などのコストの側面でも割高になってくる。 (4) サービスの成功の重要な鍵は「コンテンツ」にある。中国の TVユーザーはコン

テンツに対して支払を行なうという意識は高くないため、その支払を認識させる

ためには然るべき(支払いに足る)魅力的なコンテンツが不可欠である。 従来のアナログ TVコンテンツは勿論、デジタルテレビのそれとも差別化された

ものであることも必要であろう。単なる従来コンテンツの焼き直し、再利用では

意味が無く、IPTV独特のコンテンツスタイルを持つことが要求される。 電信キャリアはブロードバンド VAS を運用しているとはいうものの、コンテンツの技術革新・開発の経験が豊富とはいえない。電信キャリアとして、大量かつ

多様なコンテンツの提供体制(コンテンツサプライチェイン)のみならず、一歩

踏み込んだコンテンツリソースのイノベーションに対しての研究・開発体制の構

築も必要になるだろう。

第 3章 中国 IPTV市場フォーキャスト(2005年~2010年) 1)加入者数 2004年末まで、IPTV市場には極めて少数のトライアルユーザーがいたが本稿では

2005年を IPTVのイニシャルイヤーという認識で論を進めたい。 中国電信及び網通はそのネットワーク試験を 2004年下半期に行ない、2005年初に

は数都市で商用トライアルを始めた。この 2つの電信キャリアは IPTVへの本格的参入について最終的判断はしていないが、IPTV を巨大な潜在需要を持つ市場という見方は変えていない。 IPTV 市場は技術の成熟、キラーアプリの出現等で市場が高成長段階に入る初期段階の 2005年から 2007年まではゆっくりと成長していくであろう。 2008 年の北京オリンピックで IPTV のエンターテーメント性は市場を喚起し大きな成長段階に入ると予測する。電信キャリアの IPTV本格展開はオリンピック前の2007年から始まり、2008年にユーザー数がオリンピックという最高のコンテンツを得て、大きく伸びるであろう。ただしこの期間内に IPTVサービスを全国展開と行なうことはないと考える。 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)が発表した「第15

回中国インターネット発展状況統計報告」によると、2004年末現在、中国のイ

ンターネット利用者数は9400万人となったが、地域ごとに見てみると、広東省

が1188万人となって、ほかを大きく引き離している。そのほか、山東省が84

8万人、江蘇省が661万人。浙江省が534万人、四川省が523万人。上海市

は431.6万人。北京市は402万人となっている。しかし、人口に対する普及

率で見てみると、北京が27.6%、上海が25.8%と他省市に比べてかなり高

水準となっている。事業の側面から電信キャリアとしてはインターネット利用者数、

普及率などをベースにブロードバンドの高速化を優先していかざるを得ないであ

ろう。IPTV のサービス展開もこの「高速化」に並行して遂行される。まずは沿海地域を中心に大都市から中小都市へ展開する形になるであろう。予想される対象地

域のTVユーザー数(世帯数)、IPTVユーザー数については下記表を参照願いたい。

2005E 2006E 2007E 2008E 2009E 2010ESubscribers (Millions) 0.10 0.34 0.80 3.40 8.50 18.20Yearly added subscribers (Millions) 0.24 0.46 2.60 5.10 9.70 Growth Rate (%) 240% 135% 325% 150% 114%Covered Subscribers (Millions) 0.50 2.00 5.00 10.00 23.00 40.00Covered Subscribers Growth Rate (%) 300% 150% 100% 130% 74%Penetration Rate (%) 20% 17% 16% 34% 37% 46%

また普及率という面では向こう 3 年は高くはならないであろう。普及段階に入る2008年から成長し、2008年には 34%、2010年には約半数の 46%と期待される。市場の成長率を考慮するとこれ以上の普及率には達しないと考える。 勿論 IPTVサービスが市場に受け入れられていけば、電信キャリアが展開する IPTVサービスエリアも全国規模に拡大していく可能性はある。ブロードバンドアップグ

レード投資優先度、収入を生む魅力あるコンテンツ供給体制構築、TV ユーザーの消費行動、センスの変化、中国経済成長の行方など不確定要素を考慮し、ここでは

Strictlyな Forecastをしている。予想加入者とその成長率を下記グラフの通り。

0.10 0.34 0.80

3.40

8.50

18.20

240%

135%

325%

150%

114%

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2.00

4.00

6.00

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12.00

14.00

16.00

18.00

20.00

2005E 2006E 2007E 2008E 2009E 2010E

Subs

crib

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(Milli

ons)

0%

50%

100%

150%

200%

250%

300%

350%

Gro

wth

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e (%

)

なお、米国 IDC調査報告書のように「今は小規模なテストが実行されているに過ぎないが、今後2年間で徐々に普及していく。IPTVの普及にはコンテンツの充実が必要不

可欠とだが加入件数は、04年の4万件から、09年には1500万件にまで急増する」

と強気の予測している調査会社もあることを付言しておく。 2)STB(セット・トップ・ボックス)市場 多くのテレコムベンダー及び家電メーカーは IPTV市場での大きなビジネスのチャ

ンスを見込み、IPTVソリューション、STB端末などの供給体制構築を進めている。既に 20 以上のベンダーが電信キャリアにサイトトライアル、ラボテストなどのため IPTV STBを納入している。

STB 市場は海外ベンダーよりの輸入分も含めて、2008 年に 390 万台、2010 年には 1,455万台の売上げ規模になるであろう。

STBの平均価格は 800元(対電信キャリア)前後から始まるであろうが、電信キャリアからベンダーへの圧力、市場の拡大(加入者数の増加)により、2007年以降急

落していき、2007年には 650元、2008年には 500元になり、2010年には当初価格の半分の 400元程度となるであろう。

China IPTV STB shipment and revenue 2005-2010

2005E 2006E 2007E 2008E 2009E 2010ETotal STB Shipment (Millions) 0.20 0.56 1.25 5.15 12.80 27.35Yealy STB Shipment (Millions) 0.20 0.36 0.69 3.90 7.65 14.55Average Price Per Set( RMB) 800 720 650 500 450 400STB Renevue (Millions RMB) 160.0 259.2 448.5 1950.0 3442.5 5820.0 China IPTV STB shipment 2005-2010

0.20 0.36 0.69

3.90

7.65

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0.0

2.0

4.0

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16.0

2005E 2006E 2007E 2008E 2009E 2010E

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t (M

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China IPTV STB shipment revenue 2005-2010

160.0 259.2 448.5

1950.0

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2005E 2006E 2007E 2008E 2009E 2010E

STB

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(Milli

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B)

第 4章 IPTVキャリア、ICP及びベンダー 1)IPTVキャリア(候補) (1)中国電信 ①中国電信は旧来の電信キャリアから包括的な「情報サービスプロバイダー」へ

の改革を進めている。長期的戦略として情報産業とカルチャー関連産業を統合し

て新しい情報産業を構築するというものである。 VNetは中国電信ブロードバンドアプリケーションのブランドであるが、中国電信

はこれを「One Stop Center for Broadband Information and Entertainment」と位置づけブロードバンド加入者に多岐に亘る VAS(付加価値サービス)を提供している。VNet は中国電信のブロードバンドアクセスサービスである INet とともに運用され、2004年末現在中国ブロードバンドサービスの 3分の 2のシェアを持ち 500余の ISPが VNet上でサービスを提供している。

NewMov は VNet 上で提供されるブロードバンドビデオサービスのブランドであるが中国電信はこのサービスの延長で IPTVへの展開に高い関心を持っている。

2004 年下半期から中国電信は多くの市場調査を行い小規模ではあるが幾つかのIPTVトライアル、テストを行なってきた。将来本格化するであろう IPv6ネットワーク上での IPTV技術についても研究を進めている。

②中国電信にとって IPTV 戦略を遂行する上でコンテンツは非常に重要な問題である。IPTVプラットフォームにより適した、Specificなコンテンツ供給管理体制が不可欠という認識のもと、2004年以降放送・テレビ分野のサービスプロバイダーの協力を積極的に進めてきている。

2004年 12月、中国電信は SMG(上海メデイアグループ)傘下で 100%子会社のONTV との合作契約に調印した。本提携は中国電信が ONTV を単なる ICP から「戦略的パートナー」の位置づけで協力関係を築いたという表明でもあった。SMGとはそれまで VNetポータルでのコンテンツ提供という関係であったが、中国電信は SMGとの関係強化により IPTV戦略実現に一歩踏み込んだといえる。中国電信はこの他にも ICCTV、CTV-Mediaといった放送関連のSPとの提携も結んでいる。

中国電信とメデイア関連 ICP の収入の分配は一般的には4:6となっている。中国電信はコンテンツサービス料を加入者より徴収し、その 60%を ICPに払うというシステムである。IPTVも初期段階では加入者規模も極めて小さく、そのサービスビジネスモデルも手探り状態となる。また大きな売上げ、利益が期待されるわ

けではないでもない市場環境で如何なる新制度を ICP との間で築くか、大きな課題になってくる。

③IPTVサービス導入には幾つかのチャレンジが必要である。技術的にもネットワーク帯域(伝送速度)、Multi-Broadcasting、Video Codingの問題がある。 中国電信はオープンな IPTV技術連盟を 2004年 10月設立し 10社を超える企業が加盟した。この連盟は 5 つの分科会があり IPTV 技術の成熟化、異機種間インターフェイス仕様を進めるため IPTV標準の統一化実現を目指している。

広東電信研究院では ADSL2+ほかブロードバンドアップグレード技術の試験が行なわれ、2005年 2月にはラボ試験、サイトトライアルともに終了した。このトライアルには華為、中興、シーメンスなどが参加している。

④ VNet 部門の幹部によれば、中国電信としては 2005 年には Nation-wide で IPTVサービスを展開するという計画であるという。中国電信は確かに IPTV の市場性、将来性には大きな関心を払っているが、一方でユーザー需要、ネットワーク技術、

ビジネスモデル、政府の方針など未だ不透明な課題も十分認識している。 中国電信は市場、ベンダーなど関係者に積極性をみせつつも、慎重に、確実に IPTVサービス市場参入を図るという戦略をとるであろう。

(2)中国網通 ①中国網通は北方 10省に中国第 2のブロードバンドネットワークを有するキャリア

で 3 分の1のシェアを持つ。2005 年 5 月に中国電信のVNetに対抗するブロードバンドコンテンツプラットフォーム「天天在線」(www.116.com.cn) を構築した。

中国網通の直近の戦略目標はブロードバンド発展、北京オリンピック対応と国際

化の 3つである。ブロードバンド発展戦略の中で「Broadband City Plan」なる計画があり IPTVがその中核をなしている。

②「天天在線」でビデオサービスが重要な地位を占めているのは中国電信と同様

であるが、中国網通は香港 PCCW と大陸での IPTV、無線ブロードバンドサービスのための合弁会社を新しく設立した。中国網通の投資パートナーである PCCWは香港における「Now Broadband TV」での IPTV運営の成功経験を通して中国網通に事業協力するとしている。

③ICP からのコンテンツリソースの管理の面でも「天天在線」プラットフォームの役割は大きく、このプラットフォームを通してコンテンツプロバイダーとの関

係を強化し、映画などビデオコンテンツの充実に注力している。中国網通はメデ

イア業界の Giant企業で、コンテンツの開発・製作・配給を行なっている Yorton of Stellar Megomedia Group の提携を強化した。さらに放送・テレビ関連の有力コンテンツプロバイダーである北京 IPTV、CITVC とも提携、彼らのオーデイオ、ビデオのコンテンツが網通ブロードバンドプラットフォーム上で提供されること

になった。 ④中国網通は関連企業を集めての IPTV MAN Multicast Forumを開催、ビデオ配

信技術の議論を進めるなどの活動のほか、四川省では約400加入者という小規

模ながら IPTVのトライアルも四川政府と地元企業のサポートを受け 2004年スタート、2005年 4月まで行なった。このシステムは成都など省内の大都市も含めたシステムに拡張することが計画されており、IBM も 2005 年 2 月、この計画への参加を表明した。計画では向こう 2年で 30万加入者のシステムになるという。重慶においても 2005 年 1 月 華夏 Interactive 社の協力で DVD ベースではあるがVODサービスを始めた。約 5000万元の投資を 2社が負担、網通(重慶)がブロードバンドのアップグレード投資を行い、華夏がサービスコンテンツ、TVプログラムの提供を行なうというものである。ブロードバンドネットワークを通して、

TV番組視聴または VODサービスを享受できることになる。初期段階は無料サービスで網通(重慶)としては重慶市内で向こう 2 年以内に加入者を 4 万にするという計画である。網通によるトライアルはこの他北京、天津更に黒竜江省、遼寧

省でも行なわれている。 ⑤中国網通としては改善しない固定通信ネットワークの ARPUの下降傾向を食い

止め、新しい「収入源」サービスを見つけんと懸命な努力を行なっている。ただ

中国電信市場で Follower の地位にある中国網通としては、Leader である中国電信の動きを注視しながら事業判断をせざるをえない。当面はコンテンツ面での体

制整備強化、サービス運営面でのノウハウ吸収・強化に努めていくという戦略を

とらざるを得ない。 2)ICP (1)ICCTV 中視網絡発展有限公司(中視網絡) ICCTVは 2003年に CCTVと中国国際テレビとの合弁でコンテンツプロバイダー

企業として資本金 5000万元で設立された。ICCTVは CCTVが著作権をもつ番組を全世界に販売するトップ代理店という位置づけで、豊富なコンテンツを武器に

電信キャリアのビデオサービス、IPTVサービス発展に大きな影響力を持つ。 約 100人のスタッフを持つ ICCTVは北京、上海、江蘇の電信キャリアとコンテン

ツビジネス契約を結んでおり、2005年 5月には更に 5省と交渉を始めている。 現時点でこのコンテンツビジネスはTVセットを通した IPTVサービス向ではなく

PCベースのブロードバンド加入者向けの付加価値サービス(VAS)向けである。 北京では 2004年 5月よりトライアルサービスを始め 2005年からは有料されている。江蘇省では 2005年 4月にトライアルを終え、5月より商用サービスに入っている。上海は未だトライアル段階にある。 サービス料は月 30元であるが有料ユーザーは 22万を超え、今年中には更に 6万のユーザー増が見込まれている。 ICCTVは中国電信、中国網通に対して強力なコンテンツパートナーであり、IPTVライセンスを取得の候補の一番手グループの一社で既に内定済となっている。

(2)EastTV EastTV( www.ontv.sh.cn) はIPTVライセンスを取得した上海テレビを所有するSMG(上海メデイアグループ)によって 2004年 12月に設立され、恐らく国内一と言われる膨大なコンテンツリソースを所有する。 彼らは SMG傘下の放送局、上海電視台(上海テレビ)、東方電視台(Eastern TV Station)、東方衛星電視台(Eastern Satellite TV Station)などの関連 TV放送局所有のコンテンツ一切を管理所有している。 EastTVは中国電信、長城ブロードバンドなど多くのブロードバンドキャリアと協力関係にあり、彼らのブロードバンド加入者に、そのオンライン TVコンテンツを提供している。パッケージ サービス料は月 20 元である。上海市内でのサービスも 2005年 4月に開始、今年中に 10万加入者を目指しており、2006年には上海近郊都市にもそのサービスエリアを拡大し 20万加入者とする計画である。

豊富な動画コンテンツを所有するEastTVが IPTVサービス発展の鍵を握るコンテンツプロバイダーになる可能性は高い。 (3)Shanda(盛大) Shandaは中国で最も有名なオンラインゲームプロバイダーである。韓国ゲームベンダーの代理店から始め、豊富な資金量をバックに、特定分野に強い小規模

企業を買い取っていくことで企業の技術力、営業力を高め、市場シェアを拡大、

短期間に大きく成長していった。 今 Shanda はその事業力点をオンラインゲームから「デジタルエンタテーメントサービス」に移しつつある。オンラインゲームで得た高い市場認知度、統一

化された販売チャネル、豊富な資金などを武器に、Shandaは家族をターゲットにした映画、音楽などのエンタテーメントサービスプロバイダーへの戦略を打

ち出している。IPTVはその実現のための重要な事業ターゲットになっている。 既に彼らは国内の家電分野の企業、STB ベンダー数社と交渉を始めている。自分達の提供するサービスに最適の仕様の製品を開発・製造させることがその目

的である。INTEL更に PCメーカー数社に対して Shanda仕様の Plug-in-IPTV Deviceの開発・設計を委託したという。 また、マイクロソフトと共同でIPTV用セットアップボックスを研究開発す

る事業計画を立てており、「オンラインゲームとテレビを融合させたい」として

いる。 (4)BJPTV 北京網視 BJPTV (www.bjiptv.com.cn)は北京人民電視台によって設立されたIPTVプラットフォームで、放送メデイア関連の中国最初のコンテンツプロバイダーである。

中国網通ブロードバンドプラットフォームに様々なオーデイオ・ビデオサービ

スを提供している。ビデオサービスのトライアルは 2004 年 12 月より開始し

2005年 5月より有料化されている。サービスエリアは北京、天津、河北省、黒竜江省などで、TV番組、MTV、映画などのコンテンツを提供している。オンラインゲーム、オンライン教育サービスなどコンテンツも計画中である。

3)関連ベンダー (1)UTスターコム UTスターコムは中国トップの PHSベンダーとして中国通信市場の重要ベンダーの

1 社であるが、第 3 世代移動通信導入の動きの中で、PHS に替わる主要製品の開発に 2年前より注力している。IPTVはその候補の一つになっている。 彼らの IPTVソリューションは「MVision」と呼ばれる「Triple Play」を可能にするEnd-to-Endのソリューションを電信キャリア、ブロードバンドサービスプロバイダーに提供するものである。 mSwitchなる自社技術を核に H.264ベースでリアルタイムに DVD品質のビデオサービス提供を可能にし、Broadband TV, Time-shifted TV , VOD, Internet-Gaming, Video Telephonyなどに対応するソリューションである。 STBに関しては、Media Console MC 2108/2008/1028/1018シリーズの製品を持っている。MC2108 は TV ユーザー向けビデオ・オーデイオマルチメデイアサービス対応機種でWM9 MPEG2/4及び H.264に対応している。MC2008はその上位機種でMC1028/1018は基本機能搭載の低価格機種である。 MVisonは海外に実績があり、日本 Yahoo社の Yahoo! BBに最初に採用され数百万のユーザーに対応している。更に米国 DSSI社でアラバマ州、フロリダ州で 10万加入者対応の TVoIP(TV over IP)ソリューションとして採用されており、中南米のグアテマラ、メキシコでの実績も持つ。 中国では、ハルピン、遼寧、四川、山東での小規模トライアルに参加、更にコンテ

ンツに関しても SMG などコンテンツプロバイダーとの合作を進めている。STB 無償配布案を電信キャリアに提唱している企業としても知られ長期的な IPTV Value Chain戦略をベースに本事業を推進している。 (2)中興 2004 年より ZXV10IPTV/VOD なるソリューションを開発、市場にリリースしている。ミドルウエア、ストリームサーバー、エンコーダ、ネットワークプラットフォ

ーム、STBから構成される。MPEG2,MPEG4,WMV9に対応、IPTVVOD,NVOD,EPGなどリアルタイムビデオオーデイオサービス向けソリューションである。 2004年インド・ニューデリー及び近郊都市向け IPTVネットワークプロジェクトをインド通信大手 ATLAS社と契約、更に 2005年 4月には第 2期拡張プロジェクトを受注することで合意している。第 2期分契約額は 2億 900万米ドルにのぼり、拡張後はインドの 36都市を結ぶ、世界最大級の IPTVネットワークとなる。 更に中国においても幾つかのトライアルに参加しており、2005年には広東省トライ

アルベンダーの 1 社に選ばれている。中国で最初の商用 IPTV を運営する雲南電信プロジェクトベンダーにも選ばれ、昆明などにシステムを納入している。 (3)華為 華為 IPTVソリューションは Video Service System, IP/ATM MAN, Broadband Access Network, Household Networkからなる SmartAXDSLAMである。 SmartAXDSLAMは広東省・シンセン市の 10以上の幼稚園で「Baby online」というサービスブランドで導入されている。ADSL を通して幼稚園の園児を保護者は家庭で TV+STBで見ることができるサービスである。 華為の IPTVソリューションは海外でも実績があり、フランス LD COM、メキシコ TELMEX、ブラジル BRT、シンガポールテレコム、香港 PCCWなどに納入されている。

(4)アルカテル・上海ベル(ASB) ASB は親会社で IPTV 分野のパイオニア、IPTV ベンダーとして世界有数の企

業であるアルカテル社よりの技術をベースに IPTV事業を進めている。 核となる製品は 5950 Open Media Series(OMS)で BTV、VOD,NPVR,TV Internet、TV Mailの機能を持ち、彼らの Open Platformで各サービスプロバイダーからのソリューションをインテグレートし付加価値サービスを実行する

ものである。 2005年 2月アルカテル社は米国マイクロソフト社と次世代テレビサービスの普及推進に向け共同研究開発契約を締結している。「Triple Play」(音声、データ、画像)ソリューションのリーディングカンパニーであるアルカテルと、ソフト

ウェアソリューションのリーディングカンパニーであるマイクロソフトの間で

結ばれた前例のない画期的な提携関係である。両社は、世界のブロードバンド

通信事業者向け「Alcatel/Microsoft®」統合型 IPTV配信ソリューションの開発を行い、IPTVサービスプロバイダーが IPTVサービスを開始する際の導入コストの削減と、サービス開始までの時間を短縮させるという。 さらに以下を含む一連の国際的に共同イニシアチブを展開するという。

-1) 世界中の異なる文化や個々の市場のニーズに対応する新しいアプリケーションの開発とカスタマイズ。

-2) 大規模なサービス展開に向けた信頼性向上のためのアプリケーションとネットワーク回復力の強化。

-3) 家庭向けに高品質なコンテンツを安全に配信するためのコンテンツ、セキュリティ、デジタル著作権管理の統合。

- 4) インテリジェント・ビデオパケットの処理によるサービス品質の管理。 - 5) アプリケーション・プラットフォームおよびホームネットワークを含む

全ネットワーク・コンポーネンツ用管理システムのエンド・トゥ・エン

ドの統合。 ASB は中国では電信キャリアと協力し、網通(大連など)、中国電信(上海)、中国移動向けに小規模のトライアルを行なっている。ASB は IPTV キャリアとの強い連携に重点を置いているが、更に SMGなどのコンテンツプロバイダーとの IPTV市場共同開拓、Shanda(盛大)などのサービスプロバイダーとはアプリの共同開発といった提携を結ぶなど IPTV チェーンで重要な地位を占める有力「企業」とのアライアンスで市場競争力を高めるという基本戦略をとる。

(5) Openwave Technologies Inc. Openwave社は On-Demand Broadband Entertainment企業を目指すハイテ

ク企業で、Streaming Media、VOD, Time-shifted TVなどの End-to-endソリューションをネットワークキャリアに提供する。彼らの Content Delivery Network(CDN)は中国で 70%のマーケットシェアを誇っている。 彼らの双方向ビデオプラットフォームは廉価で MPEG4、デジタルコンテンツ変換、ユーザー識別の機能を備えている。彼らの強みは CDNに加え廉価な STB製造ルート、中広網通信息技術からの豊富コンテンツを得られるというところ

にある。 中国網通-杭州でのトライアルは Openwaveのブランドを中国市場に知らしめるほどの成功をおさめたが、さらに中国電信-広東電信とはトライアルの後、

IPTV分野の広い範囲での共同開発に合意している。 彼らの仕様は中国 IPTV 市場で将来デファクトとなる可能性も高く、その動きには注目する必要がある。

(6)Trans Video Trans Video社は中国で最初に IPTVソリューションH.264 Fromatを納入した

米国 AvantaLion社が投資した北京ハイテク企業である。 彼らは neTVという End-to-endのソリューションをもつ。このソリューションは高品質画像を提供し、イリーガルなアクセスを抑えるため、CPU+DSP で構成されるDMD Internet Family Digital Media Playerを CPEに採用している。

STBは H.264対応の DMD2000と DMD3000の 2タイプがある。 彼らのビジネスはこれまで TVキャリア向けに限られていたが、IPTVキャリア

にとって投資効率の高い H.264 ソリューションを武器に IPTV 市場本格参入を図り、Kylin TVなどにそのソリューションを提供している。

(7)Coship Coship社はデジタルテレビ、ケーブルテレビ、衛星通信、光伝送、LED分野の

ハイテク企業で、最近中国最大のデジタルテレビ用STB製造工場を建設し IPTV向けの STB 市場にもターゲットをあてている。High-Definition と双方向機能

に重点をおき、ADSL+IP STB, Ethernet+ IP STBを電信キャリア向けに開発、製造している。衛星、ケーブルキャリア向けの STBも供給できるという。

TYPE FEATURES

CIPS101B Accord with international media streaming standards ISMA

CIPS101C Support ISMA1.0/1.1 and MPEG

CIPS101AB MPEG-4 STB based on DSLAM broadband network

AnySight100 Embedded browser function

AnySight100CM Embedded browser function and internal cable

Anysight120 Accord with international media streaming standards ISMA and multimedia services

Anysight200 Digital STB based on IP

AnySight200A Completely accord with DVB-T standards and general IP streaming standard

AnySight300 High-level IP STB, support MPEG-2

(8)家電メーカー ①四川長虹 家電の雄であり、特に TVセットについてはトップ企業である長虹も近年の TV

セット売上げ激減に苦しんでいる。彼らはその生産ラインを第 3世代移動通信、 IPTVにシフトしていく計画で長虹信息技術なる子会社を設立した。 中国電信とは IPTVとデジタル通信サービスに関しての「戦略的パートナー シップ」合意書を締結、更にマイクロソフト社とも IPTV STB技術に関する アライアンス契約を結んだ。 盛大(Shanda)とも IPTV STBの共同開発契約を結んでおり 2005年 10月

には最初の STB製品が市場にリリース予定となっている。 彼らのターゲットは IPTV用 STB市場にある。

②TCL TCL は中国 TV セット製造で最大の企業であるが、中国 IPTV 市場のパイオニ

アのひとつでもある。 彼らの HiD TVは IPTV用として製造されたモデルである。さらに TCLはデジタルテレビ及び IPTVの両方をサポートする IPTV STBのデユアルモードシリーズを数タイプ製造している。更に IP Module搭載のチップの開発も計画しており、コスト削減のみならず技術開発力アップにも繋がると期待されている。 TCLは近く IP機能搭載の TVセットの発売を言明している。

③夏新 今年 6 月 30 日「夏新:MSと提携し世界初の液晶IPTV発表 」の記事が注

目を浴びた。中国の大手3C(通信機器、デジタル家電、パソコン)メーカー

である厦門夏新電子(AMOI)は米マイクロソフトと提携を結び彼らのパソ

コンにマイクロソフトのWindows XPをプレインストールするほか、

携帯電話やIPTVにもマイクロソフト社のOSを導入するというものであっ

た。市場ではマイクロソフトが中国のIPTV産業に力を入れていることのあ

らわれだとみている。夏新は 6 月末にWindowsを搭載する大型液晶テレビタイプのIPTVシリーズを発表した。マイクロソフト・オフィスと次世代

インターネットプロトコルのIPv6をサポートし、無線LANの標準規格で

あるWi-Fiにも対応する製品である。

<結論と提言> 中国の IPTVサービス導入には未だ多くの課題を残している。その本格サービスに不可欠なブロードバンドネットワークインフラの整備、画像圧縮技術なども含めた関連技術の標準

化、サービスに対する中国消費者行動の未熟性改善、海賊版問題も含むコンテンツ問題な

ど一朝一夕には解決は難しいかもしれない。しかし、市場環境がその解決を強く促すこと

になるであろう。導入は慎重に、しかし着実に進められていくであろう。 まず、中国電信、中国網通など電信キャリアの事情である。中国移動、中国聯通の移動通

信業者に比べ、彼ら固定通信業者の経営は ARPU低下などに加え、地方格差解消のための通信網建設資金負担などがあり、必ずしも順調とは言えない。米国、香港などへの海外上

場を行なっていることから株主サイドからのプレッシャーも小さくない。 彼らは移動通信第 3 世代導入に大きな期待をかけているが、PHS(小霊通)で加入者囲い込みをかけてはいるものの、新規参入の不利は否めない。既存移動通信業者を巻き込んで

の「再編」騒ぎが、消えては再燃と繰り返される事情も奈辺にある。 固定通信網で音声サービスの伸張が期待できない現状では「データサービス」に頼らざる

を得ない。中国は未だ基幹通信業務を他国キャリアには開放しておらず、WTO加盟の際の条件でも 2007年まで、その寡占状況、優位性は確保されている。 この条件下でデータサービス主体への事業構造を変革していく必要があるが、先進国の例

を見るまでもなく、鍵は「コンテンツ」にある。 そこでコンテンツリソースの事情である。 国家体制上、コンテンツへの規制は小さくない。ブロードバンドとなれば当然「動画」と

いうことになるが、国内に調達可能な豊富なコンテンツが存在しているわけでもない。 一つが現在注目を浴びているゲームコンテンツ、特にオンラインゲームコンテンツである。

ギャンブル好きと言われる国民性もあり、爆発的な伸びを見せている。早晩中央政府の規

制・監視が出てくるだろうが、当面は急増していくであろう。 もう一つの大きなリソースが TV放送局の所有・製作している「プログラム・コンテンツ」である。所有している国内外の映画も含めると膨大なリソースとなる。また彼らは「動画

コンテンツ」製作の高い能力、ノウハウを所有していることも大きな魅力である。 放送業者と通信業者の合作は中国政府通達 75号文書で禁止されているが、放送業者はこれらコンテンツを管理・所有する子会社をコンテンツプロバイダーとして設立、電信業者の

ブロードバンド VASに販売、提供している。このビジネス形態の線上で IPTVコンテンツ合作が可能となる。勿論将来の規制は予想されるが既に合作関係は深まっている。 背景には政府指導で極めて低く抑えられている視聴料、これに起因する放送業者の経営不

振がある。種々規制の下で、彼らの所有するリソース販売で経営改善をせざるを得ない苦

肉の策ともいえる。 放送業者は政府(国家広播電影電視総局)指導のもとでデジタルテレビ化計画を進めてい

る。中国の大都市ではケーブルテレビが主体であり、ここでいうデジタルテレビ化もケー

ブルテレビのデジタル化である。本文で紹介しているとおり、この計画は遅々として進ん

でいない。最近様々な優遇政策、資金支援を政府として打ち出しているが、決め手となる

策は見つかっていない。最大の問題は政府も含めた放送業界の資金不足、調達能力不足で

ある。ケーブルテレビ放送については電信業とは異なり 2004年には開放され、外資企業の参入も認められているが、現在まで大都市市内の限定サービス分野を除き名乗りを上げて

いる外資企業はいない。 デジタルテレビ化計画において、外資企業の本格的なサポートはなく、国内企業主体で実

行されていることも遅延の理由のひとつであろう。市場認知度も極めて低い。 外資企業に高い市場性を期待させつつ、資金を含めた支援をさせるというこれまでの手法

がとれないでいるのが苦戦の源である。外資企業が積極的でない大きな理由はデジタルテ

レビ計画で予想されるビジネスパートナーの「安定性」「信頼性」「将来性」「プロジェクト

損益性」への不安、不信である。 電信キャリアはその点信用に足るビジネスパートナーである。資金調達も含めてその事業

能力への信頼度は高い。電信キャリアの IPTVへの積極的な経営判断がなされれば、多くの外資企業から支持されることは間違いない。 外資企業、特に IPTVではマイクロソフト、インテルの米国勢、更にアルカテル、フランステレコムなどのフランス勢を中心にした欧州勢が強い関心を見せている。これも背景に電

信キャリアとのビジネスとの認識があればこそである。この IPTVコンセプトを最初に打ち出したマイクロソフトは、政府トップレベルを通して導入のための施策を図るであろう。

最近の多岐に亘る民族系有力企業との合作もその一連と思われる。 国内民族系企業の関心も高い。IPTV 導入で様々な相乗効果、波及効果が期待されている。低迷している固定電話設備ベンダーにはブロードバンドネットワーク機器、供給過剰状態

の家電メーカーにはプラズマ TVなどハイエンドな高品位 TV需要、更に STB新規需要が期待できる。また過当競争状況にあるソフト・サービス業界にはサービスアプリ、コンテ

ンツ関連の新規需要を齎すであろう。 中国政府がその指導力をもって行なわなければならない事は多くはないが、「技術標準化」

「関連国内企業の管理・指導」の 2点については早急に取り進めていく必要がある。 前者については問題点を本論で述べたので省略するが、後者については関係官庁の思惑も

絡んで「参入企業過剰→市場過当競争→需給バランス崩壊→関連産業の低迷」というサイ

クルに陥りやすい。TVなどの家電産業、携帯端末産業、ソフト産業などで繰り返した過ちをしないための施策が不可欠である。IPTVサービス発展にも欠かせない。デジタルテレビ計画など並行して進められている幾つかの国家指導プロジェクト間の調整、並存の道の模

索・研究にも関与し、業界を指導する事が必要となってくる。中期的には統一化が望まし

いが、当面は地域格差(大都市と中小都市、都市部と農村部など)の現状を認識した「ダ

ブルスタンダード」「複数システムの共存(併用)」の施策をとるのが現実的と考える。 デジタルテレビの先行きは政治的要素も多く不透明なところがあるが、市場性を重視する

電信キャリアを核とするマルチメデイアサービスは、投資効率、市場需要、技術開発など

の要素をベースに進められる。ブロードバンド VASをベースに IPTVサービスを Overlayしていく戦略をとっていくのではないか、と考える。 北京オリンピックがコンテンツサービスに対する消費者行動、意識の「革命」をもたらす

であろう。多くの人口と広い国土の中国ではこの世界最大のイベントの場に直に接する人

間は限られてくる。その分、情報を出来るだけビビッドに伝えるメデイア手段を求め、サ

ービス品質とその対価を意識するようになる。日本でも皇太子ご成婚、東京オリンピック、

エリザベス女王訪日、万国博、W 杯などで動画コンテンツに対する価値観、消費者意識が

成長してきた。いずれにしても時間が解決するのを待たざるをえないであろう。 日本において普及していないという事もあり、中国 IPTV市場の中で日系企業も含めた「日本」が存在感を示せる可能性は極めて小さい。 PCデイスプレイの高精度化という流れの中でヤフーを中心とする ISPが推し進めるブロードバンド VASが主体となっている日本市場の事情もある。放送の完全デジタル化も決定している。しかし、中国を舞台に IPTV市場動向も含めたマルチメデイアサービスの発展の中国際コンテンツサプライチェインが固まっていく可能性は極めて高い。この中に日系企業

も含めた日本が含まれず静観していくなら、その将来的地位は保証されなくなるであろう。

近い将来において日系企業の IT関連ビジネスの大きな障害となるかもしれない。 直近では移動通信第 3世代(3G)サービスなどの市場で、また中期的にはソフト産業、サービスアプリケーション産業を含めた IT産業において欧米中韓連携リングから外れた日系企業、日本の孤立という事態にならぬとも限らない。IPTV 市場の発展が日本 IT 戦略にそぐわぬものであるならば、その旨の情報を世界に向けて発信しなければならない。 前述したとおり IPTV 市場に関与するといっても、日本の出来ることは極めて限られる。IPTV技術標準化への Contribution、IPv6網上での IPTVサービス提案、加入者側端末である高品位 TVの次世代技術共同研究など、その項目・範囲は大きくはないが、関与は不可欠である。 中国式のビジネスモデルで、中国事業者が日本データサービス市場に進出という近未来も

全くの絵空事ではないかもしれない。