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海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTECTR 6 (1981) 油圧 ポンプの水中放射雑音 高川 真一*1 土屋 利雄*1 網谷 泰孝*1 中西 俊之*1 谷内 琢也*2 潜航中の潜水船と支援母船とは,水中音響によって位置測定や通信を行うが,水 中音響信号は周囲からの雑音に妨害されやすい。そこで,発生雑音レべルの引下 げを目標とし,その第1段階として,まず油圧ポンプからどのような水中雑音が 発生するかを調べた。そのため,水中で油圧ポンプを駆動する装置を製作し,海 洋科学技術センターの無響水槽で雑音計測を行った。 供試品として,一般に低雑音であるといわれるべーンポンプを用いたところ, 別途 計測 した ア キシ ャルプ ランジャ ポンプ より も雑 音 レ べ ル は か な り 高 く,又 この雑音はべーンに起因するものが顕著であること,明瞭な指向性は認められな いこと等がわかった。 Underwater Noise of Hydraulic Pumps Shinichi Takagawa*3, Toshio Tsuchiya*3, Yasutaka Amitani*3, Toshiyuki Nakanishi*3, Takuya Taniuchi*4 Underwater acoustics are utilized for position-detection and communication between sumersible boat and support ship. A weak point of these underwater acoustic signals is that they are easily obstructed by noises emitted from neighboring equipment. Therefore, it isvery important to achieve a minimum noise level. In this study, as an initial step in studying the noise problem, underwater noises emitted from hydraulic pumps driven in water were measured. In order to carry out this measurement, the driving mechanism for underwater hydraulic pumps was made and a vane pump was chosen as the test pump. To minimize the noise level, measurements were carriedout using the anechoic testtank of JAMSTEC. The result showed that, (1) The noise level of the vane pump was much largerthan that of the acialplunger pump which had been previously measured. (2) The noise resultingfrom the vane was evident. *1 深海開発技術部 *2 川崎重工業 株式会社神戸造船所(元 深海開発技術部) *3 Deep Sea Technology Department *4 Kawasaki Heavy Industry, Ltd., Kobe Ship Building Division (formerly, Deep Sea Technology Department)

油 圧 ポ ン プ の 水 中 放 射 雑 音 - GODAC Data Site ......Shinichi Takagawa*3, Toshio Tsuchiya*3, Yasutaka Amitani*3, Toshiyuki Nakanishi*3, Takuya Taniuchi*4 Underwater

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海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTECTR 6 (1981)

油 圧 ポ ン プ の 水 中 放 射 雑 音

高川 真一*1 土屋 利雄*1 網谷 泰孝*1

中西 俊之*1 谷内 琢也*2

潜航中の潜水船と支援母船とは,水中音響によって位置測定や通信を行うが,水

中音響信号は周囲からの雑音に妨害されやすい。そこで,発生雑音レべルの引下

げを目標とし,その第1段階として,まず油圧ポンプからどのような水中雑音が

発生するかを調べた。そのため,水中で油圧ポンプを駆動する装置を製作し,海

洋科学技術センターの無響水槽で雑音計測を行った。

供試品として,一般に低雑音であるといわれるべーンポンプを用いたところ,

別途計測したアキシャルプ ランジャポンプよりも雑音 レべルはかなり 高く,又

この雑音はべーンに起因するものが顕著であること,明瞭な指向性は認められな

いこと等がわかった。

Underwater Noise of Hydraulic Pumps

Shinichi Takagawa*3, Toshio Tsuchiya*3,

Yasutaka Amitani*3, Toshiyuki Nakanishi*3,

Takuya Taniuchi*4

Underwater acoustics are utilized for position-detection and

communication between sumersible boat and support ship. A weak

point of these underwater acoustic signals is that they are easily

obstructed by noises emitted from neighboring equipment. Therefore,

it is very important to achieve a minimum noise level.

In this study, as an initial step in studying the noise problem,

underwater noises emitted from hydraulic pumps driven in water were

measured.

In order to carry out this measurement, the driving mechanism

for underwater hydraulic pumps was made and a vane pump was

chosen as the test pump. To minimize the noise level, measurements

were carried out using the anechoic test tank of JAMSTEC.

The result showed that,

(1) The noise level of the vane pump was much larger than that of

the acial plunger pump which had been previously measured.

(2) The noise resulting from the vane was evident.

*1 深海開発技術部

*2 川崎重工業株式会社神戸造船所(元 深海開発技術部)* 3

Deep Sea Technology Department

*4 Kawasaki Heavy Industry, Ltd., Kobe Ship Building Division

(formerly, Deep Sea Technology Department)

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(3) Clear directivity of noise was not found.

(4) Others.

1. 目 的

潜航中の潜水船は支援母船と水中音響で位置測

定や通信を行う。

水中音響信号は周囲からの雑音の影響を受けて

妨害されやすい。とりわけ,深海底付近にいる潜

水船で受信する場合には, 到達信号音はかなり微

弱なものとなっており,これを受信する音響機器

の近傍にレベルの大きい雑音源があると,受信困

難になる恐れがある。

これを避けるためには,音響機器 自身の改善

(送波出力の増大やS/Nの改善等)や音響機器を

雑音源から遠ざける等,種々の方法が考えられる。

しかし,むしろ雑音源から発生する雑音レベルの

引下げ,とりわけ音響機器の使用周波数帯域にお

ける低雑音化か重要である。

潜水船の継続的雑音発生源には,電動機やプロ

ペラ,さらにはインバータすらもなり得るが,と

りわけ油圧ポンプと歯車からの雑音は顕著である。

そこでこれらから発生する雑音の減少化を目標

とし,まず油圧ポンプの水中音の発生状況を調べる

ため,水中で油圧ポンプを駆動する装置を製作し,

海洋科学技術センターの無響水槽で油圧ポンプの

雑音計測を行った。

2。 計測方法概要

油圧ポンプから発生する水中雑音の測定には,

水中に油圧ポンプを設置し,その近傍の所定の位

置にハイドロホンを配置して行った。

水槽には,周囲からの雑音がきわめて少く,ま

た5 KHz 以上の音は壁等からの反射がほとんど

なく,実際上の無限媒体とみなせる海洋科学技術

センターの無響水槽を用いた。

油圧ポンプは,後述の油圧ポンプ駆動装置を水

槽内に設置して駆動した。

計測系の概要を図1に示す。

2.1  無響水槽

使用した無響水槽は,形状が縦,横,高さ共に,

9mの立方体であり,各壁面には吸音材がはりつ

けてあり,また水面には同様の吸音材に浮体をつ

けて浮べてある。

この吸音材によって,5 KHz以上の周波数の

音について,界面における反射がほとんどな

JAMSTECTR 6 (1981)

図1 水中雑音測定系Underwater noise measurements

Bruel & Kjasr SpectralDynamics SD345

ana lyser

data recorder

ampli f i er

デ ータ レ コ ー ダ

分  析  器

増  幅  器

ハ イ ド ロ ホ ン

hydrophone

音  源noise source

noise source'hydrophone

'バ イ ト 卩 ホ ン

音 源

沖電気HP-7, Okidenki HP-7

Scientific A tlanta

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いようになっている。また,この水槽の暗雑音を

同様の測定系で測定したところ,オーバーオール

レベルで, ― 80dB(re 1u bar at 1 m )*以下

という,小さい値が得られ,このことから,本水

槽は暗雑音がほとんどない水槽であることが確認

されている1)。

C注) (ra In bar at 1m )*は以下省略する。

2.2  油圧ポンプ駆動装置

油圧ポンプから装置の概略を図2および写真1

に示す。

油圧ポンプから発生する雑音は,ポンプの吐出

圧,吐出流量,回転数によって変わる。

吐出圧と吐出流量は絞り弁によって任意に調整

できる。回転数は雑音の発生を極力押える必要が

あるので,プーリーやギヤ等の変速機は用いず,

原動機と軸系とを直結した形態を採用することと

した。原動機は簡便のため誘導電動機を用いるこ

ととし,今回の測定では回転数は1 種類のみとし

た。将来,回転数を変える場合は電動機本体を取

替えることになる。

駆動装置は,電動機‐ 軸系からなる駆動部と,

制御表示盤,並びに据置台からなる。

油圧ポンプは,図2中の電動機MI〔33〕で駆動

され,作動油〔1 〕のオイルタンクから〔32〕の

ホースを経由して油圧ポンプで吐出され,〔30〕の

ホースを経由して〔24〕の絞り弁で吐出量および

吐出圧の調整を受けたのち,〔20〕の流量計を経て

再びオイルタンクに戻るようになっている。

すなわち,電動機に与えたエネルギーは,油圧

ポンプならびに作動油を介して絞り弁で熱となっ

て消費される。このように,入力は熱として消費

されるため,長時間の運転の際には,油温か異常

に高くなる恐れがある。この場合には循環ポンプ

〔2〕を用いて作動油をオイルクーラー〔21〕に

通し,オイルクーラーを作動させ,油温を所定の

温度に保持できるようにしてある。

2.3  計測,記録,解析機器

ハイドロホンで受信した水中雑音は,その場で

解析する方法と記録,再生して解析する方法とが

ある。今回の測定は両者を併用しているか,主と

して後者による解析を行った。

J AM ST ECTR 6, (1981)

使用したハイドロホンは,沖電気製P7型で,

図3に示すように,約100 Hz から約50 KHz ま

で平担な受波周波数特性を有している。

増幅器にはサイアンティフィクアトランタ社製

自動較正装置付属の増幅器を使用し,ソニーDF

R 4515型のデータレコーダーで記録,再生してい

る。これによって約50.KHz までの再生は正確に

できる。

解析機器には,ブリュエルケアー社の オクタ

ーブバンド解析器とスペクトラルダイナミックス

社のスペクトル解析器とを使用した。

2.4  油圧ポンプの設置および計測点

油圧ポンプは,駆動装置軸部先端に取付けたの

ち,駆動装置と共に,無響水槽中に設置した台車

の試験機器取付用昇降塔の下部にボルトで固定し,

無響水槽の中央部,水深2mの位置に設置した。

ハイドロホンの設置位置,すなわち計測点は,

図4に示すように,油圧ポンプと同じ深度面を主

体とし,その他は油圧ポンプの直下並びに駆動軸

沿いの点を選んだ。なお,油圧ポンプの斜め下方

には,ハイドロホンの指向性の問題から計測点を

設けていなかった。

3. 油圧ポンプと計測状態

今回の雑音測定には,一般に低雑音であるとい

われているベーンポンプを供試品として選定し,

国内の2メーカーのベーンポンプ各1 台を採用し

た。

これらの。ベーンポンプは,いずれも吐出量可変

型であり,図5に示すような特性曲線を有する。

ベーンポンプの作動原理は,ローターとケーシ

ングが偏心して設置してあり,ローターに取付け

てあるベーンが遠心力でケーシングに密着し,口

-ターとケーシングの間の空間にある油を送り出

すものである。図5中のA~B間ではこの偏心量

はほとんど変化しないため,ほぼ一定の吐出量が

得られ,吐出圧が高くなってくると偏心量が次第

に小さくなって吐出量が小さくなり,Cで偏心量

がゼロとなり,吐出量もゼロとなる。

ベーンポンプの内部構造を写真2に示す。

潜水船では,マニピュレータ駆動等の場合は図

5中のBの状態で油圧ポンプを使用し,無負荷待

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図2 油圧ポンプ駆動装置管路系統図

Block diagram of driving instrument for hydraulic pump

機中ではC,すなわち吐出量ゼロの状態とする。

したがって水中雑音発生で問題となるのは,Bおよ

びCの状態であるので,測定には,ポンプの運転

状態としてBおよびCを主とし,参考にAを測定

した。両ポンプのA,BおよびC各点における吐

出流量および吐出圧を表1に示す。

実験に供した油圧ポンプは,共にベーンが13枚

あり,電動機回転数が約980 r pmであるので,発

生雑音の基本周波数は,軸の回転に起因するもの

約16.5Hz (= 980cpm), ペーンに起因するもの

約215 Hz { =軸の回転数(rps)× ベーンの数 }で

ある。

JAMSTECTR 6 (1981)

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写真1 油圧 ポンプ駆動装置

View of driving instrument for hydraulic pump

4. 解析および考察

4.1  駆動軸から発生する雑音

油圧ポンプから発生する雑音を解析するには,

ポンプ以外から発生する雑音,とりわけ駆動軸か

らの雑音がどの程度であるかを把握し,可能なら

ば測定した雑音から軸の雑音を差引く必要がある。

そこで駆動部に油圧ポンプをとりっけずに,空

運転を行い,。軸雑音を計測して解析した。その

結果を図6に示す。

この図から,約300 Hz 付近と約1 KHz 付近

に,かなり大きいレベルの成分が認められるが,

1 K Hz よりも高い周波数成分はそれほどレベル

が大きくなく,また周波数が高くなるにっれてレ

ベルが小さくなることがわかる。また,0~40 kHz

でのオーバーオールレベルは30dB 程度であった。

この雑音は,あくまで空運転時の雑音にすぎ

ず,油圧ポンプを駆動すると,ポンプの振動に伴

JAMSTECTR 6 (1981)

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図3 ハイドロホンHP-7の受波特性

Detectability of Hydrophone HP-7

平 面 図 側 面 図 油ポンプ ,音源hydraulic pump,sound soarce

図4 ハイドロホン設置位置

Hydrophone array

表1  ポンプ の吐出量と吐出圧

Drain and pressure of hydraulic pumps

図5 油圧ポンプ特性

Preformance of hydraulic

pump

JAMSTECTR 6 (1981)

吐 出 量drain

ポンプ I ・ pump l

ポンプ H, pump 11

吐 出 圧 (k9/d)pressure

運 転 状 態

operation condition

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図6 駆動軸単体雑音特性とポンプ駆動時雑音の比較

Noise analysis of driving shaft and hydraulic pump

写真2 ベーンポンプの内部構造

The inside of Vane pump

JAMSTECTR 6 (1981)

つて駆動軸から,空運転時とは全く異った周波

数特性の雑音が発生すると考えられる。しかし,

油圧ポンプ駆動時に軸雑音をとり出すことはきわ

めて困難である。そのため,次に述べる方法から測

定された雑音は,ポンプからのものであると推定

した。

すなわち,もし軸雑音がかなり大きく,計測さ

れた雑音から軸雑音を差引かなければ,油圧ポン

プの雑音が解析できないほどであるとすれば,油圧

ポンプからlm程度離れた計測点では,近距離音

場となり,球面拡散式が成立たなくなるはずで

ある。しかし,音場の状態を調べる測定を行った

ところ,図7に示すように,音場は油圧ポンプを

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図7 無響水槽音場特性

Acoustic properties of the underwater anechoic tank

水平測点配置 垂直測点配置horizontal view vertical view

実測曲線 measurement curve

decade

測 点 station

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中心とした球面拡散式がかなりの精度で成立って

いることが認められる。

その結果,軸雑音はそれほど大きくなく,計測

された雑音は,0.3およびlKHz 付近を除き油圧ポ

ンプから発生しているものとみなし得るとし,以

下の解析を行った。

4.2  解 析

次の3項目の解析を行うた。

(1) 各油圧ポンプのA,BおよびC各運転状態

における発生雑音の%オクターブバンド解析

イ図8および図9参照)

(2) 受信周波数帯域における雑音の指向特性

ぐ図10および図11参照)

(3) 0 ~20 KHz までの各油圧ポンプの雑音の周

波数狭帯域分析(図12参照)

4. 2.1 %オクターブバンド解析結果

各油圧ポンプの各運転状態における%オクター

ブバンド解析結果,次のようなことがいえるO

(1)BおよびC状態の油圧ポンプ共に基本周波

数(215 HZ) とその倍音および4倍音に 明

瞭なピークが認められる。しかし, 1 kHz よ

りも高い周波数成分では明瞭なピークは認め

られない。

(2) 1 KHZより高い周波数では,雑音レベル

はほぼ平担になる。機種によって10 kHz を

越えても平担のまま,または下がるものがあ

る。

(3)運転状態によって,雑音レベルは周波数に

よりもlOdB 程度差が生ずるところもある。

・0 ~40 K Hz までのオーバーオールレベルでは

最大でも数dB 程度しか差がない。

4. 2.2 指向特性

音響機器の受信周波数帯として,8.5 ~11.5

KHZC水中通話器), 5.5~10.5 kHz お よび7.5,

±0.125 K Hz (トランスポンダー)の雑音周波数

成分のオーバーオールレベルの指向特性を解析し

た。その結果,指向性はあまり明瞭には認められ

ず,また運転状態が変わっても指向特性はほとん

ど変化せず,全周にほぼ一様に放射していること

がわかった。

図8 油圧ポンプIの水中放射雑音の%オクターブバンド分析結果

lNoise analysis of Hydraulic Pump I

JAMSTECTR 6 (1981)

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周波数 frequency

図9 油圧ポンプIIの水中放射雑音の オクターブバンド分析結果

Noise analysis of Hydraulic Pump

図10  油圧ポンプIの水中放射雑音の指向特性

Directivity of noise underwaterHydraulic Pump X

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図11  油圧ポンプIIの水中放射雑音の指向特性

Directivity of noise underwater

Hydraulic Pump II

周波数 frequency

ポンプのB状態 ,B s tate of hydraulic pump

周波数> frequency

ポンプのC状態,C state of hydraulic pump

図12  油圧ポンプI,Hの水中放射雑音狭帯域分析(50 HZバンド幅)結果と

ビッカース製アキシャルプランジャポンプ(FVB-5)との比較

Comparison of Hydraulic Pump I and II with PVB-5

JAMSTECTR 6 (1981)

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4. 2.3 狭帯域分析

両油圧ポンプのBとCの運転状態における0 ~

20 KHz の周波数狭帯域分析を行った。その結果,

運転状態のいかんにかかわらず0~5 KHZの 間

に215 Hz を基本周波数とする高調波の明瞭なス

パイクが見られた。また5 KHZ以 上の高周波に

なっても雑音レベルはあまり下がらなかった。

これを米国ビッカース社のアキシャルプランジ

ャポンプPVB-5の計測結果と比較すると,

PVB-5 の方は基本周波数に近い低周波部では,

ベーンポンプと同程度の雑音レベルを有し,周波

数が高くなるにつれて急速に減少し, 5 K Hz 以

上では10 dB 以下となる。ベーンポンプは, 5 kHz

以上の周波数では,20~40 dBであり, PVB-5

に比して10~30 dB雑音レベルが大きい。またポン

プの回転数はPVB-5が1790 rpm であるのに

対し,ベーンポンプは約980 rpm である。一般に

回転数が上がれば雑音レベルが大きくなることか

ら,両者を同じ回転数で運転すると,その差はもっ

と大きくなると考えられる。したがって,当初, 静

かであると考えていたベーンポンプの水中雑音は,

PVB-5に比して,かなり雑音レベルが大きい

ことがわかった。また狭帯域分析結果から図13に

示すように,主な雑音源がペーンに起因しているこ

とがわかった。

ベ ーンに起因するスパイク

図13  ベーンポンプ雑音の500 Hz 幅狭帯域分析

12 JAMSTECTR 6 (1981)

500 Hz narrow band width analysis

of noise of Vane Pump

spikes owing to shaft revolution(b)軸目軸に起因するスパイク

Spikes owing to vane

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5。 まとめ

以上をまとめると,次のようなことがいえる。

(1)油圧ポンプ等,水中駆動機器の水中雑音測

定用の駆動機を製作し,機器の水中雑音を計

測できるようになった。

(2)アキシャルプランジャポンプ(ビッカース

製PVB-5)とベーンポンプの0 ~・20 K Hz

の狹帯域分析結果を比較すると,低周波の部

分を除いてベーンポンプの雑音レベルがかな

り大きい。また,回転数が小さいので,両ポ

ンプを同じ回転数で駆動するとベーンポンプ

の雑音レベルはもっと大きくなると考えられ

る。

(3)ベーンポンプの雑音の オクターブバンド

分析の結果,運転状態によって雑音レベルは,

周波数10 dB 程度の差が生ずるところもある

が,40 K Hz までのオーバーオールレベルで

は数dB 程度しか差がない。

(4)ベーンポンプの雑音の狭帯域分析結果によ

れば,ベーンに起因する雑音が顕著であるこ

とがわかった。

(5)水中通話器やトランスポンダの受信周波数

帯域におけるポンプ雑音の指向特性は,明瞭

な指向性は認められず,また。運転状態が変

わってもほとんど変化がなかった。

(6)駆動軸単体から発生する雑音はかなりレベ

ルが小さいが,負荷時にも,このレベルが保

たれるかどうかは不明である。今回の測定は

軸雑音も含めたままで行うが,いずれは両者

を分離して計測してみる必要がある。

JAMSTECTR 6 (1981)