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-1- 滿滿

び の 恩お れ 情 彼 る ら 世 光 れ 造 て な 第 イ て 獨 …aqlfaal.starfree.jp/nova/PDF/04_johano.pdf- 2 - 二 九 明 日 イ オ ア ン は イ イ ス ス の

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  • - 1 -

    イオアンに因る聖福音

    第一章

    太初に言有り、言は神と共に在り、言は

    じめ

    ことば

    ことば

    かみ

    とも

    ことば

    すなはちかみ

    なり。二

    是の言は太初に神と共に在り。三

    萬物は彼に由り

    ことば

    じめ

    かみ

    とも

    ばんぶつ

    かれ

    て造られたり、凡そ造られたる者には、一も彼に由らずして

    つく

    およ

    つく

    もの

    いつ

    かれ

    造られしは無し。四

    彼の中に生命有り、生命は人の光なり。

    つく

    かれ

    うち

    いのち

    いのち

    ひと

    ひかり

    光は

    に照り、暗

    は之を蔽はざりき。六

    神より遣さ

    ひかり

    くらやみ

    くらやみ

    これ

    おほ

    かみ

    つかは

    れし人あり、其名はイオアンなり。七

    彼は證の爲に來れり、

    ひと

    その

    かれ

    しよう

    ため

    きた

    光の事を證し、衆人をして彼に因りて信ぜしめん爲なり。

    ひかり

    こと

    しよう

    しゆうじん

    かれ

    しん

    ため

    彼は光に非ず、乃

    光の事を證せん爲に遣されたり。

    かれ

    ひかり

    あら

    すなはちひかり

    こと

    しよう

    ため

    つかは

    眞の光あり、凡そ世に來る人を照す者なり。一〇

    彼嘗て

    まこと

    ひかり

    およ

    きた

    ひと

    てら

    もの

    かれかつ

    世に在り、世は彼に由りて造られたり。而して世は彼を知

    かれ

    つく

    しかう

    かれ

    らざりき。一一

    己に屬する者に來れり、而して己に屬す

    おのれ

    ぞく

    もの

    きた

    しかう

    おのれ

    ぞく

    る者は彼を受けざりき。一二

    彼を受け、其名を信ずる者には

    もの

    かれ

    かれ

    その

    しん

    もの

    彼神の子となる權を賜へり。一三

    是れ血氣に由るに非ず、

    かれかみ

    けん

    たま

    けつ

    あら

    情欲に由るに非ず、人欲に由るに非ず、

    神に由りて生

    じようよく

    あら

    じんよく

    あら

    すなはちかみ

    うま

    れし者なり。一四

    言は肉體と成りて、我等の中に居りたり、

    もの

    ことば

    にくたい

    われ

    うち

    恩寵と眞實とに滿てられたり。我等彼の光榮を見たり、父

    おんちよう

    しんじつ

    われ

    かれ

    くわうえい

    ちち

    の獨生子の如き光榮なり。一五

    イオアン彼の事を證し、呼

    どくせい

    ごと

    くわうえい

    かれ

    こと

    しよう

    びて曰へり、我が嘗て、我の後に來る者は、我の前と爲れり、

    かつ

    われ

    のち

    きた

    もの

    われ

    さき

    蓋其本我より先なる者なりと言ひしは、

    斯の人なり。

    けだしそのもとわれ

    さき

    もの

    すなはち

    ひと

    一六

    彼の充滿より我等皆恩寵の上に恩寵を受けたり。一七

    かれ

    じゆうまん

    われ

    みなおんちよう

    うへ

    おんちよう

    蓋律法はモイセイに由りて授けられ、恩寵と眞實とはイイ

    けだしりつぱふ

    さづ

    おんちよう

    しんじつ

    スス

    ハリストスに由りて來れり。一八

    神を見し人未だ嘗て

    きた

    かみ

    ひといま

    かつ

    非ず、唯獨生の子、父の

    に在る者は、彼を彰せり。一九

    あら

    ただどくせい

    ちゝ

    ふところ

    もの

    かれ

    あらは

    イオアンの證は左の如し、イウデヤ人イエルサリムより

    しよう

    ごと

    じん

    司祭及び「レワィト」等を遣して、彼に爾は誰たると問ひ

    さいおよ

    つかは

    かれ

    なんぢ

    たれ

    し時、二〇

    彼承けて諱まざりき、承けて曰く、我はハリスト

    とき

    かれ

    いは

    われ

    スに非ず。二一

    又彼に問へり、然らば何ぞ、爾はイリヤな

    あら

    またかれ

    しか

    なに

    なんぢ

    るか。曰く、非ず。預言者なるか。答へて曰へり、否。二二

    いは

    あら

    げんしや

    こた

    いな

    彼等之に謂へり、爾は誰ぞ、我等を遣しゝ者に答を爲さ

    かれ

    これ

    なんぢ

    たれ

    われ

    つかは

    もの

    こたへ

    しめよ、爾は己の事を如何に云ふか。二三

    彼曰へり、我は野

    なんぢ

    おのれ

    こと

    かれ

    われ

    に呼ぶ者の聲、主の道を直くせよと云ふ者なり、預言者イサ

    もの

    こゑ

    しゆ

    みち

    なほ

    もの

    げんしや

    イヤの言ひしが如し。二四

    遣されし者はファリセイ等に屬

    ごと

    つかは

    もの

    ぞく

    せり。二五

    彼等又之に問ひて曰へり、爾ハリストスに非ず、

    かれ

    またこれ

    なんぢ

    あら

    イリヤに非ず、預言者に非ざれば、何ぞ洗を授くる。二六

    あら

    げんしや

    あら

    なに

    せん

    さづ

    オアン彼等に答へて曰へり、我は水を以て洗を授く、然れど

    かれ

    こた

    われ

    みづ

    もつ

    せん

    さづ

    しか

    も爾等の中に立てる者あり、爾等の識らざる者なり。二七

    なんぢ

    うち

    もの

    なんぢ

    もの

    彼は

    我の後に來りて、我の前と爲れる者なり。我は其屨

    かれ

    すなはちわれ

    のち

    きた

    われ

    さき

    もの

    われ

    そのくつ

    の帶を解くにも堪へず。二八

    此の事はイオルダンの外なるワ

    ひも

    こと

    そと

    ィファワラ、卽

    イオアンの洗を授くる處に行はれたり。

    すなはち

    せん

    さづ

    ところ

    おこな

  • - 2 -

    二九

    明日イオアンはイイススの己に來るを見て曰く、視

    あくる

    おのれ

    きた

    いは

    よ、神の

    、世の罪を任ふ者なり。三〇

    我が嘗て、我の後

    かみ

    こひつじ

    つみ

    にな

    もの

    かつ

    われ

    のち

    に來る者ありて、我の前と爲れり、蓋其本我より先なる者

    きた

    もの

    われ

    さき

    けだしそのもとわれ

    さき

    もの

    なりと云ひしは、卽

    斯の人なり。三一

    我は彼を識らざりき、

    すなはち

    ひと

    われ

    かれ

    然れども來りて、水を以て洗を授くるは、殊に彼がイズライ

    しか

    きた

    みづ

    もつ

    せん

    さづ

    こと

    かれ

    リに顯されん爲なり。三二

    イオアン又證して曰へり、我は

    あらは

    ため

    またしよう

    われ

    聖神、鴿の如く天より降りて、彼に止るを見たり。三三

    せいしん

    はと

    ごと

    てん

    くだ

    かれ

    とどま

    われ

    は彼を識らざりき、然れども水を以て洗を授けん爲に我を

    かれ

    しか

    みづ

    もつ

    せん

    さづ

    ため

    われ

    遣しゝ者は我に謂へり、爾が聖神の降りて、之に止るを見

    つかは

    もの

    われ

    なんぢ

    せいしん

    くだ

    これ

    とどま

    る者、此れ

    聖神を以て洗を授くる者なりと。三四

    我之を

    もの

    すなはちせいしん

    もつ

    せん

    さづ

    もの

    われこれ

    見、而して其神の子たるを證せり。三五

    明日イオアン又立

    しかう

    そのかみ

    しよう

    あくる

    また

    てり、其門徒の二人偕にせり。三六

    イイススの行くを見て曰

    そのもん

    にんとも

    いは

    く、視よ、神の

    なり。三七

    二門徒其言を聞きて、イイ

    かみ

    こひつじ

    もん

    そのことば

    ススに從へり。三八

    イイスス顧みて、彼等の其後に從ふ

    したが

    かへり

    かれ

    そのうしろ

    したが

    を見て、之に謂ふ、爾等何を求むるか。彼等曰へり、ラウ

    これ

    なんぢ

    なに

    もと

    かれ

    ワィ、(

    譯すれば夫子、)

    何にか居る。三九

    曰く、來りて見

    やく

    ふう

    なんぢいづく

    いは

    きた

    よ。彼等來りて、其居る所を觀、是の日彼と偕に居たり。

    かれ

    きた

    その

    ところ

    かれ

    とも

    時約十時なりき。四〇

    イオアンに聽きて、イイススに從ひ

    ときおよそじふ

    したが

    し二人の中一はアンドレイ

    シモン

    ペトルの兄弟な

    にん

    うちひとり

    すなはち

    きやうだい

    り。四一

    彼先づ其兄弟シモンに遇ひて、之に謂ふ、我等メ

    かれ

    そのきやうだい

    これ

    われ

    ッシヤ、(

    譯すればハリストス、)

    に遇へり。四二

    彼をイ

    やく

    すなはちかれ

    イススに攜へたり。イイスス彼に目を注ぎて曰へり、爾は

    たづさ

    かれ

    そゝ

    なんぢ

    イオナの子シモンなり、爾はキファ、(

    譯すればペトル、)

    なんぢ

    やく

    と稱へられん。四三

    明日イイスス

    ガリレヤに往かんと欲

    とな

    あくる

    ほつ

    し、フィリップに遇ひて、之に謂ふ、我に從へ。四四

    フィ

    これ

    われ

    したが

    リップはワィフサイダの人にして、アンドレイ及びペトルと

    ひと

    およ

    邑を同じくせり。四五

    フィリップはナファナイルに遇ひて、

    まち

    おな

    之に謂ふ、我等は、モイセイが其律法に、及び諸預言者が記

    これ

    われ

    そのりつぱふ

    およ

    しよ

    げんしや

    しる

    しゝ所の者に遇へり、是れイオシフの子、ナザレトの人、

    ところ

    もの

    ひと

    イイススなり。四六

    ナファナイル之に謂へり、豈ナザレトよ

    これ

    あに

    り善き者の出づるあらんや。フィリップ曰く、來りて觀よ。

    もの

    いは

    きた

    四七

    イイススはナファナイルの己に來たるを觀て、彼を指

    おのれ

    きた

    かれ

    して曰く、視よ、誠にイズライリ人にして、詭譎なき者な

    いは

    まこと

    じん

    いつはり

    もの

    り。四八

    ナファナイル彼に謂ふ、爾何に由りて我を知れる

    かれ

    なんぢなに

    われ

    か。イイスス答へて曰へり、フィリップが未だ爾を呼ばざ

    こた

    いま

    なんぢ

    る先、爾が無花果樹の下に在る時、我爾を見たり。四九

    さき

    なんぢ

    した

    とき

    われなんぢ

    ファナイル答へて彼に謂ふ、夫子、爾は神の子、爾はイズ

    こた

    かれ

    ラウワィ

    なんぢ

    かみ

    なんぢ

    ライリの王なり。五〇

    イイスス答へて曰へり、我が爾を

    わう

    こた

    われ

    なんぢ

    無花果樹の下に見たりと言ひしに因りて、爾信ず、爾此よ

    した

    なんぢしん

    なんぢこれ

    りも大なる事を見ん。五一

    又彼に謂ふ、我誠に誠に爾等

    おほい

    こと

    またかれ

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    に語ぐ、是より爾等は天開けて、神の使等が人の子の上に

    これ

    なんぢ

    てんひら

    かみ

    つかひ

    ひと

    うへ

    降するを見ん。

    のぼりくだり

  • - 3 -

    第二章

    第三日にガリレヤのカナに婚筵あり、イイススの

    だいさんじつ

    こんえん

    母も彼處に在りき、二イイスス及び其門徒も又婚筵に招かれ

    はゝ

    かしこ

    およ

    そのもん

    またこんえん

    まね

    たり。三

    酒の乏しきに因りて、イイススの母之に謂ふ、彼等

    さけ

    とぼ

    はゝこれ

    かれ

    に酒なし。四イイスス曰く、婦よ、我と爾と何ぞ與らん、我

    さけ

    いは

    をんな

    われ

    なんぢ

    なに

    あづか

    われ

    の時未だ至らず。五

    其母諸僕に謂ふ、彼が爾等に命ずる所

    ときいま

    いた

    そのはゝしよぼく

    かれ

    なんぢ

    めい

    ところ

    を行へ。六

    彼處にイウデヤ人の潔の例に從ひて、石の水

    おこな

    かしこ

    じん

    きよめ

    れい

    したが

    いし

    みづ

    甕六あり。各

    二三斗を容る。七イイスス諸僕に謂ふ、甕に水

    がめむつ

    おのおの

    さん

    しよぼく

    かめ

    みづ

    を滿たせ。之に滿たして、幾ど溢る。八

    又彼等に謂ふ、今挹

    これ

    ほとん

    あふ

    またかれ

    いま

    みて、司筵者に遞れ。乃

    遞れり。九司筵者は酒に變じたる水

    えんしや

    おく

    すなはちおく

    えんしや

    さけ

    へん

    みづ

    を嘗めて、(

    其奚れよるするを知らざりき、唯水を挹みし諸

    そのいづ

    たゞみづ

    しよ

    僕之を知れり、)新娶者を呼びて、一〇

    彼に謂ふ、凡の人は先

    ぼくこれ

    かれ

    およそ

    ひと

    づ旨酒を進め、酣

    なるに及びて、魯酒を進む、爾は旨酒

    よきさけ

    すゝ

    たけなは

    およ

    あしきさけ

    すゝ

    なんぢ

    よきさけ

    を留めて今に至れり。一一

    是くの如くイイスス

    ガリレヤの

    とゞ

    いま

    いた

    ごと

    カナに於て休徴の始を立てゝ、其光榮を顯せり、其門

    おい

    きうちよう

    はじめ

    そのくわうえい

    あらは

    そのもん

    徒彼を信ぜり。一二

    厥後彼親ら、及び其母、其兄弟、其門徒

    かれ

    しん

    そののちかれみづか

    およ

    そのはゝ

    そのきやうだい

    そのもん

    はカペルナウムに下りて、彼處に居りし日多からず。一三

    くだ

    かしこ

    おほ

    ウデヤ人の逾越節近づきて、イイスス

    イエルサリムに上れ

    じん

    ちか

    のぼ

    り。一四

    殿に於て牛羊鴿を市り、及び兌錢する者の坐せる

    でん

    おい

    うしひつじはと

    およ

    りやうがへ

    もの

    を見たれば、一五

    繩を以て鞭を爲りて、其衆及び羊牛を殿

    なは

    もつ

    むち

    つく

    そのしゆうおよ

    ひつじうし

    でん

    より逐ひ出だし、兌錢する者の金を散らし、其案を倒し、

    りやうがへ

    もの

    きん

    そのつくゑ

    たふ

    一六

    鴿を市る者に謂へり、此の物を此より取れ、我が父の家

    はと

    もの

    もの

    こゝ

    ちゝ

    いへ

    を貿易の家と爲す勿れ。一七

    是に於て彼の門徒は、錄して、

    あきなひ

    いへ

    なか

    こゝ

    おい

    かれ

    もん

    しる

    爾の家に於ける熱心は我を蝕むと、云へるを憶ひ起せり。

    なんぢ

    いへ

    ねつしん

    われ

    おも

    おこ

    一八

    イウデヤ人彼に謂へり、爾等に此等の事を行ふ權ある

    じんかれ

    なんぢ

    これ

    こと

    おこな

    けん

    を、何の休徴を以て我等に示さんか。一九

    イイスス彼等に答

    なに

    きうちよう

    もつ

    われ

    しめ

    かれ

    こた

    へて曰へり、爾等此の殿を毀て、我三日にして之を興さん。

    なんぢ

    でん

    こぼ

    われみつか

    これ

    おこ

    二〇

    イウデヤ人曰へり、此の殿を建つるには四十六年を經た

    じん

    でん

    じふろくねん

    るに、爾三日にして、之を興さんか。二一

    然れども彼は其

    なんぢみつ

    これ

    おこ

    しか

    かれ

    その

    肉體の殿を指して云ひしなり。二二

    彼が死より復活せし後、

    にくたい

    でん

    かれ

    ふくくわつ

    のち

    其門徒は、彼が曾て之を言ひしことを憶ひ起して、聖書とイ

    そのもん

    かれ

    かつ

    これ

    おも

    おこ

    せいしよ

    イススの言ひし言とを信ぜり。二三

    彼が逾越節筵にイエル

    ことば

    しん

    かれ

    パスハのまつり

    サリムに在りし時、多くの者彼が行ひし休徴を見て、其名

    とき

    おほ

    ものかれ

    おこな

    きうちよう

    その

    を信ぜり。二四

    然れどもイイスス自ら己を彼等に託せざり

    しん

    しか

    みづか

    おのれ

    かれ

    たく

    き、蓋

    衆人を知れり、二五

    又他人が人を證するを要せざ

    けだししゆうじん

    また

    にん

    ひと

    しよう

    えう

    りき、自ら人の中藏を知りたればなり。

    みづか

    ひと

    第三章

    ファリセイ等の中に名はニコディムと云ふ人あ

    うち

    ひと

    り、イウデヤ人の宰の一なり。二

    此の人夜イイススに來り

    じん

    つかさ

    ひとり

    ひとよる

    きた

    て、彼に謂へり、夫子、我等は爾が神より來りし師なるを知

    かれ

    ラウワィ

    われ

    なんぢ

    かみ

    きた

    る、蓋

    爾が行ふ所の休徴は、若し神之と偕にせずば、

    けだしなんぢ

    おこな

    ところ

    きうちよう

    かみこれ

    とも

    人行ふ能はず。三

    イイスス彼に答へて曰へり、我誠に誠

    ひとおこな

    あた

    かれ

    こた

    われまこと

    まこと

  • - 4 -

    に爾に語ぐ、人若し上より生れずば、神の國を見るを得ず。

    なんぢ

    ひと

    うへ

    うま

    かみ

    くに

    ニコディム彼に謂ふ、人既に老ゆれば、如何ぞ生るゝを得

    かれ

    ひとすで

    いかん

    うま

    ん、豈

    其母の腹に入りて、生るゝを得んや。五イイスス答

    あにふたゝびそのはゝ

    はら

    うま

    こた

    へて曰へり、我誠に誠に爾に語ぐ、人若し水及び神より

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    ひと

    みづおよ

    ○しん

    生れずば、神の國に入るを得ず。六肉より生れし者は肉なり、

    うま

    かみ

    くに

    にく

    うま

    もの

    にく

    神より生れし者は神なり。七我が爾に爾等上より生るべ

    ○しん

    うま

    もの

    ○しん

    なんぢ

    なんぢ

    うへ

    うま

    しと云ひしを奇しむ勿れ。八

    風は欲する所に吹く、爾其聲

    あや

    なか

    かぜ

    ほつ

    ところ

    なんぢそのこゑ

    を聞けども、其何より來り、何へ往くを知らず、凡そ神

    そのいづこ

    きた

    いづこ

    およ

    ○しん

    より生れし者は是くの如し。九

    ニコディム彼に答へて曰へ

    うま

    もの

    ごと

    かれ

    こた

    り、

    ぞ斯の事あるを得ん。一〇

    イイスス答へて曰へり、

    いづくん

    こと

    こた

    爾はイズライリの師たるに、猶斯の事を知らざるか。一一

    なんぢ

    なほ

    こと

    我誠に誠に爾に語ぐ、我等は知る所を言ひ、見し所を

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    われ

    ところ

    ところ

    證す、而して爾等は我等の證を受けず。一二

    我地の事を

    しよう

    しかう

    なんぢ

    われ

    しよう

    われ

    こと

    言ひしに、爾等信ぜざれば、若し天の事を云はゞ、爾等

    なんぢ

    しん

    てん

    こと

    なんぢ

    いづくん

    ぞ信ぜん。一三

    天より降りし人の子、仍天に在る者の外に、天

    しん

    てん

    くだ

    ひと

    なほてん

    もの

    ほか

    てん

    に升りし者なし。一四

    モイセイが野に在りて蛇を擧げし如

    のぼ

    もの

    へび

    ごと

    く、人の子も是くの如く擧げらるべし、一五

    凡そ彼を信ずる

    ひと

    ごと

    およ

    かれ

    しん

    者の亡ぶるなく、

    永遠の生命を得ん爲なり。一六

    蓋神

    もの

    ほろ

    すなはちえいゑん

    いの

    ため

    けだしかみ

    は世を愛して、其獨生の子を賜ふに至れり、凡そ彼を信ずる

    あい

    そのどくせい

    たま

    いた

    およ

    かれ

    しん

    者の亡ぶるなく、

    永遠の生命を得ん爲なり。一七

    蓋神

    もの

    ほろ

    すなはちえいゑん

    のち

    ため

    けだしかみ

    が其子を世に遣しゝは、世を定罪せん爲に非ず、乃

    世の彼

    その

    つかは

    ていざい

    ため

    あら

    すなはち

    かれ

    に由りて救はれん爲なり。一八

    彼を信ずる者は定罪せられ

    すく

    ため

    かれ

    しん

    もの

    ていざい

    ず、信ぜざる者は已に定罪せられたり、神の獨生の子の名を

    しん

    もの

    すで

    ていざい

    かみ

    どくせい

    信ぜざりし故なり。一九

    定罪とは左の如し、光世に來りし

    しん

    ゆゑ

    ていざい

    ごと

    ひかり

    きた

    に、人人光よりも多く

    を愛せり、彼等の

    の惡かり

    ひとびとひかり

    おほ

    くらやみ

    あい

    かれ

    おこなひ

    あし

    し故なり。二〇

    蓋凡そ不善を作す者は光を惡みて、光に就

    ゆゑ

    けだしおよ

    ぜん

    もの

    ひかり

    にく

    ひかり

    かず、彼の

    の責められざらん爲なり、其惡しき故なり。

    かれ

    おこなひ

    ため

    その

    ゆゑ

    二一

    然れども眞實を行ふ者は光に就く、彼の

    の顯れ

    しか

    しんじつ

    おこな

    もの

    ひかり

    かれ

    おこなひ

    あらは

    ん爲なり、神に在りて行はれし故なり。二二

    斯の後イイス

    ため

    かみ

    おこな

    ゆゑ

    のち

    ス其門徒と與にイウデヤの地に來り、彼等と偕に彼處に居り

    そのもん

    とも

    きた

    かれ

    とも

    しこ

    て、洗を授けたり。二三

    イオアンも又サリムに近きエノンに

    せん

    さづ

    また

    ちか

    在りて、洗を授けたり、彼處には水多き故なり、人人來りて洗

    せん

    さづ

    かしこ

    みづおほ

    ゆゑ

    ひとびときた

    せん

    を受けたり。二四

    蓋イオアン未だ獄に下されざりき。二五

    けだし

    いま

    ひとや

    くだ

    とき

    にイオアンの門徒はイウデヤ人の潔の事に就きて論を起せ

    もん

    じん

    きよめ

    こと

    ろん

    おこ

    り。二六

    イオアンに來りて、之に謂へり、夫子、爾と偕に

    きた

    これ

    ラウワィ

    なんぢ

    とも

    イオルダンの外に在りて、爾が證せし所の者、視よ、彼

    そと

    なんぢ

    しよう

    ところ

    もの

    かれ

    は洗を授け、人皆彼に往く。二七

    イオアン答へて曰へり、天

    せん

    さづ

    ひとみなかれ

    こた

    てん

    より授けられしに非ざれば、

    人一も受くる能はず。二八

    我が

    さづ

    あら

    ひといつ

    あた

    嘗て、我はハリストスに非ず、

    其前に遣されし者なり

    かつ

    われ

    あら

    すなはちそのまへ

    つかは

    もの

    と言ひしことは、爾等自ら我が爲に證す。二九

    新婦ある者

    なんぢ

    みづか

    ため

    しよう

    はなよめ

    もの

    は新娶者なり、新娶者の友、立ちて彼に聽く者は、新娶者の聲

    とも

    かれ

    もの

    こゑ

    喜ぶ。今我が此の

    は滿てられたり。三〇

    彼は長

    はなはだよろこ

    いま

    よろこび

    かれ

    ちやう

  • - 5 -

    ずべく、我は消すべし。三一

    上より來る者は萬有の上に在り、

    われ

    せう

    うへ

    きた

    もの

    ばんいう

    うへ

    地よりする者は地に屬し、其言ふ所も亦地に屬す、天より來

    もの

    ぞく

    その

    ところ

    また

    ぞく

    てん

    きた

    る者は萬有の上に在り。三二

    彼は其見し所、聞きし所を證

    もの

    ばんいう

    うへ

    かれ

    その

    ところ

    ところ

    しよう

    す、而して彼の證を受くる者なし。三三

    其證を受けし者

    しかう

    かれ

    しよう

    もの

    そのしよう

    もの

    は神の眞なるを印證せり。三四

    蓋神の遣しゝ者は神の

    かみ

    まこと

    いんしよう

    けだしかみ

    つかは

    もの

    かみ

    言を言ふ、神が神を與ふるには限量を以てせざればなり。

    ことば

    かみ

    ○しん

    あた

    ますめ

    もつ

    三五

    父は子を愛し、而して萬物を其手に授けたり。三六

    子を

    ちゝ

    あい

    しかう

    ばんぶつ

    その

    さづ

    信ずる者は永遠の生命を有ち、子を信ぜざる者は生命を見ざ

    しん

    もの

    えいゑん

    いのち

    たも

    しん

    もの

    いのち

    らん、

    神の怒は其上に止まる。

    すなはちかみ

    いかり

    そのうへ

    とゞ

    第四章

    イイススは、其門徒を得、及び洗を授くることイ

    そのもん

    およ

    せん

    さづ

    オアンより多きを、ファリセイ人が聞きたりと、知りし時、

    おほ

    じん

    とき

    二(

    然れどもイイスス親ら洗を授けしに非ず、其門徒此を爲

    しか

    みづか

    せん

    さづ

    あら

    そのもん

    これ

    せり、)

    イウデヤを離れて、復ガリレヤに往けり。四

    すなはち

    はな

    また

    かれ

    サマリヤを過ぐるべきに由りて、五サマリヤの邑シハリと名

    まち

    づくる處に來れり、イアコフが其子イオシフに與へたる地

    ところ

    きた

    その

    あた

    に近し。六彼處にイアコフの井あり。イイスス旅に疲れて、井

    ちか

    かしこ

    たび

    つか

    に坐せり。時約六時なり。七

    サマリヤの婦、水を汲

    かたはら

    ときおよそろく

    をんな

    みづ

    む爲に來れり。イイスス之に謂ふ、我に飮ましめよ。八

    ため

    きた

    これ

    われ

    けだし

    其門徒は食を市はん爲に邑に往けり。九サマリヤの婦彼に

    そのもん

    しよく

    ため

    まち

    をんなかれ

    謂ふ、爾はイウデヤ人たるに、如何にして我サマリヤの婦

    なんぢ

    じん

    われ

    をんな

    に飮むを求むるか。蓋イウデヤ人とサマリヤ人とは相交際

    もと

    けだし

    じん

    じん

    あひかうさい

    せざるなり。一〇

    イイスス之に答へて曰へり、若し爾は、神

    これ

    こた

    なんぢ

    かみ

    、及び我に飮ましめよと、爾に言ふ者の誰たるかを知

    たまもの

    およ

    われ

    なんぢ

    もの

    たれ

    らば、爾

    自ら彼に求めん、而して彼は爾に活ける水を與

    なんぢみづか

    かれ

    もと

    しかう

    かれ

    なんぢ

    みづ

    あた

    へん。一一

    婦彼に謂ふ、主世爾に汲む器なく、井も亦深

    をんなかれ

    しゆ

    なんぢ

    うつは

    またふか

    し、然らば何より爾に活ける水あるか。一二

    爾豈我が祖

    しか

    いづれ

    なんぢ

    みづ

    なんぢあに

    ちゝ

    イアコフより大なるか、彼は我等に此の井を與へ、己も、

    おほい

    かれ

    われ

    あた

    おのれ

    其諸子も、其家畜も、之より飮みたり。一三

    イイスス答へて謂

    そのしよ

    その

    ちく

    これ

    こた

    へり、凡そ此の水を飮む者は、復渇かん、一四

    然れども我が與

    およ

    みづ

    もの

    またかわ

    しか

    あた

    へんとする水を飮む者は、世世に渇かざらん、乃

    我が彼に

    みづ

    もの

    かわ

    すなはち

    かれ

    與へんとする水は、其中に於て永遠の生命に湧く水の泉と

    あた

    みづ

    そのうち

    おい

    えいゑん

    いのち

    みづ

    いづみ

    爲らん。一五

    婦彼に謂ふ、主よ、我に此の水を與へよ、我

    をんなかれ

    しゆ

    われ

    みづ

    あた

    が渇かず、亦此に來りて汲まざらん爲なり。一六

    イイスス之

    かわ

    またこゝ

    きた

    ため

    これ

    に謂ふ、往きて、爾の夫を呼びて、此に來れ。一七

    婦對

    なんぢ

    をつと

    こゝ

    きた

    をんなこた

    へて曰へり、我に夫なし。イイスス之に謂ふ、爾が夫な

    われ

    をつと

    これ

    なんぢ

    をつと

    しと言ひしは是なり、一八

    爾に五人の夫ありき、而し

    けだしなんぢ

    にん

    をつと

    しかう

    て今ある者は爾の夫に非ず、此れ爾

    眞を言へり。一九

    いま

    もの

    なんぢ

    をつと

    あら

    なんぢまこと

    婦彼に謂ふ、主よ、我觀るに爾は預言者なり。二〇

    我が先祖

    をんなかれ

    しゆ

    われ

    なんぢ

    げんしや

    せん

    は此の山に拜せり、然るに爾等は拜すべき處はイエルサリ

    やま

    はい

    しか

    なんぢ

    はい

    ところ

    ムに在りと言ふ。二一

    イイスス之に謂ふ、婦よ、我を信ぜ

    これ

    をんな

    われ

    しん

    よ、此の山にも非ず、イエルサリムにも非ずして父を拜せん

    やま

    あら

    あら

    ちゝ

    はい

  • - 6 -

    時は來る。二二

    爾等は拜する所を知らず、我等は拜する所

    とき

    きた

    なんぢ

    はい

    ところ

    われ

    はい

    ところ

    を知る、蓋

    救はイウデヤ人よりするなり。二三

    然れども時

    けだしすくひ

    じん

    しか

    とき

    は來る、今は是なり、眞の禮拜者は神を以て眞を以て拜

    きた

    いま

    これ

    まこと

    れいはいしや

    ○しん

    もつ

    まこと

    もつ

    はい

    せん、蓋父は是くの如く彼を拜する者を覓む。二四

    神は神

    けだしちゝ

    ごと

    かれ

    はい

    もの

    もと

    かみ

    ○しん

    なり、彼を拜する者は神を以て眞を以て拜すべし。二五

    かれ

    はい

    もの

    ○しん

    もつ

    まこと

    もつ

    はい

    婦彼に謂ふ、我知る、メッシヤ、卽

    ハリストスは來らん、

    をんなかれ

    われ

    すなはち

    きた

    彼來る時、

    く我に告げん。二六

    イイスス之に謂ふ、是れ

    かれきた

    とき

    ことごと

    われ

    これ

    我、爾と語る者なり。二七

    其門徒來りて、彼が婦と語

    われ

    なんぢ

    かた

    もの

    たまたまそのもん

    きた

    かれ

    をんな

    かた

    れるを異みたれども、一も、爾は何を求むるか、或は之

    あやし

    ひとり

    なんぢ

    なに

    もと

    あるひ

    これ

    と何を語るかと、云ひし者なし。二八

    時に婦其水甕を遺し

    なに

    かた

    もの

    とき

    をんなそのみづがめ

    のこ

    て、邑に往きて、人人に謂ふ、二九

    來りて、我が凡そ行ひ

    まち

    ひとびと

    きた

    およ

    おこな

    し事を我に告げし人を觀よ、是れハリストスに非ずや。三〇

    こと

    われ

    ひと

    あら

    人人邑を出でて、彼に往けり。三一

    此の際門徒彼に請ひて曰

    ひとびとまち

    かれ

    さいもん

    かれ

    へり、夫子、食へ。三二

    然れども彼は之に謂へり、我に食ふ

    ラウワィ

    くら

    しか

    かれ

    これ

    われ

    くら

    べき糧あり、爾等が知らざる者なり。三三

    故に門徒互に言

    かて

    なんぢ

    もの

    ゆゑ

    もん

    たがひ

    へり、豈孰か彼に食を饋りたる。三四

    イイスス彼等に謂ふ、

    あにたれ

    かれ

    しよく

    おく

    かれ

    我が糧は我を遣しゝ者の旨を行ひ、其功を成就するに在

    かて

    われ

    つかは

    もの

    むね

    おこな

    そのわざ

    じやうじゆ

    り。三五

    爾等は尚四月にして収穫は來らんと云ふに非ずや、

    なんぢ

    なほしかげつ

    かりいれ

    きた

    あら

    我爾等に語ぐ、爾等目を擧げて、田を觀よ、已に白くして穫

    われなんぢ

    なんぢ

    すで

    しろ

    るべし。三六

    穫る者は値を得て、實を永遠の生命に積む、播

    もの

    あたひ

    えいゑん

    のち

    く者も穫る者も共に喜ばん爲なり。三七

    蓋彼は播き此は穫

    もの

    もの

    とも

    よろこ

    ため

    けだしかれ

    これ

    ると云へるは、斯に於て眞なり。三八

    我爾等を遣して、

    こゝ

    おい

    まこと

    われなんぢ

    つかは

    爾等が勞せざりし所を穫らしむ、他人は勞し、爾等は其勞

    なんぢ

    らふ

    ところ

    にん

    らふ

    なんぢ

    そのらふ

    に入れり。三九

    彼の邑の多くのサマリヤ人は婦が、彼は我

    かれ

    まち

    おほ

    じん

    をんな

    かれ

    が凡そ行ひし事を我に告げたりと、證せし言に因りて彼

    およ

    おこな

    こと

    われ

    しよう

    ことば

    かれ

    を信ぜり。四〇

    故にサマリヤ人は彼に就きし時、偕に留ら

    しん

    ゆゑ

    じん

    かれ

    とき

    とも

    とゞま

    んことを請へり、彼は彼處に留りしこと二日なり。四一

    尚多

    かれ

    かし

    とゞま

    ふつか

    なほおほ

    くの者は彼の言に因りて信ぜり。四二

    而して婦に謂へり、

    もの

    かれ

    ことば

    しん

    しかう

    をんな

    我等は已に爾の言に因りて信ずるに非ず、蓋

    自ら聞き

    われ

    すで

    なんぢ

    ことば

    しん

    あら

    けだしみづか

    て、彼は誠に世の救主ハリストスなりと知れり。四三

    二日

    かれ

    まこと

    きうしゆ

    を越えて、彼彼處を出でゝ、ガリレヤに往けり。四四

    蓋イ

    かれか

    しこ

    けだし

    イスス親ら、預言者は其故土に於て尊ばれずと證せり。

    みづか

    げんしや

    そのふるさと

    おい

    たつと

    しよう

    四五

    ガリレヤに來りし時、ガリレヤ人彼を接けたり、凡そ彼

    きた

    とき

    じんかれ

    およ

    かれ

    がイエルサリムに節筵の時に行ひし事を見たればなり、

    とき

    おこな

    こと

    蓋彼等も亦節筵に往けり。四六

    是に於てイイスス復ガリレ

    けだしかれ

    またま

    こゝ

    おい

    また

    ヤのカナに來れり、嘗て水を酒に變ぜし所なり。適

    一の

    きた

    かつ

    みづ

    さけ

    へん

    ところ

    たまたまひとり

    王臣あり、其子カペルナウムに在りて病めり。四七

    彼はイイ

    わうしん

    その

    かれ

    ススのイウデヤよりガリレヤに來りしを聞きて、之に就き、

    きた

    これ

    下りて其子を醫さんことを請へり、蓋子は死に瀕めり。四八

    くだ

    その

    いや

    けだし

    のぞ

    イイスス之に謂へり、爾等若し休徴と奇蹟とを見ずば、信

    これ

    なんぢ

    きうちよう

    せき

    しん

    ぜざらん。四九

    王臣彼に謂ふ、主よ、請ふ、我が子の死せざ

    わうしんかれ

    しゆ

    る先に下れ。五〇

    イイスス之に謂ふ、往け、爾の子は生く。人

    さき

    くだ

    これ

    なんぢ

    ひと

  • - 7 -

    はイイススの之に言ひし言を信じて往けり。五一

    往く時、

    これ

    ことば

    しん

    とき

    其諸僕彼に遇ひて、告げて曰へり、爾の子は生く。五二

    そのしよぼくかれ

    いは

    なんぢ

    かれ

    は之に、其何の時に愈え始めしを問ひたれば、彼に謂へり、

    これ

    そのなん

    とき

    はじ

    かれ

    昨日第七時に熱退けり。五三

    父は、此れ

    イイススが彼

    ふだいしち

    ねつしりぞ

    ちゝ

    すなはち

    かれ

    に爾の子は生くと言ひし時なるを知れり。是に於て彼自ら

    なんぢ

    とき

    こゝ

    おい

    かれみづか

    及び其全家皆信じたり。五四

    此れ第二の休徴なり、イイス

    およ

    そのぜん

    みなしん

    だい

    きうちよう

    イウデヤよりガリレヤに來りて、之を行へり。

    きた

    これ

    おこな

    第五章

    厥後イウデヤ人の節筵ありて、イイスス

    イエル

    そののち

    じん

    つり

    サリムに上れり。二イエルサリムに羊の門の

    に池あり、

    のぼ

    ひつじ

    もん

    かたはら

    いけ

    エウレイの言にワィフェズダと曰ふ。三之に傍ひて五の廊

    ことば

    これ

    いゝつ

    らう

    あり、此の中に多くの病者、瞽者、跛者、血枯るゝ者臥し

    うち

    おほ

    びやうしや

    めしひ

    あしなへ

    もの

    て、水の動くを待てり。四

    蓋主の使時ありて池に下りて、水

    みづ

    うご

    けだししゆ

    つかひとき

    いけ

    くだ

    みづ

    を動かせり、水の動く後先づ池に入る者は、何の病を患ふ

    うご

    みづ

    うご

    のち

    いけ

    もの

    なん

    やまひ

    うれ

    るに論なく、愈ゆるを得たり。五彼處に一人三十八年病を患

    ろん

    かし

    ひと

    りさんじふはちねんやまひ

    うれ

    ふる者ありき。六

    イイスス彼が臥せるを見、其之を患ふるこ

    もの

    かれ

    そのこれ

    うれ

    と已に久しきを知りて、彼に謂ふ爾愈えんことを欲するか。

    すで

    ひさ

    かれ

    なんぢ

    ほつ

    病者答へて曰へり、主よ、然り、但水の動く時、我を扶

    びやうしやこた

    しゆ

    しか

    たゞみづ

    うご

    とき

    われ

    たす

    けて、池に下す人なし、我が來る時は、他人我に先だちて下

    いけ

    くだ

    ひと

    きた

    とき

    にんわれ

    さき

    くだ

    る。八

    イイスス彼に謂ふ、起きて、爾の牀を取りて行け。

    かれ

    なんぢ

    とこ

    其人直に愈え、其牀を取りて行けり、是の日は安息日な

    そのひとたゞち

    そのとこ

    り。一〇

    故にイウデヤ人愈されし者に謂へり、安息日なり、

    ゆゑ

    じんいや

    もの

    爾牀を取るは宜しからず。一一

    彼答へて曰へり、我を愈し

    なんぢとこ

    よろ

    かれこた

    われ

    いや

    ゝ者は、我に爾の牀を取りて行けと言へり。一二

    彼等問へ

    もの

    われ

    なんぢ

    とこ

    かれ

    り、爾に、牀を取りて行けと言ひし人は誰ぞ。一三

    愈され

    なんぢ

    とこ

    ひと

    たれ

    いや

    し者は其誰たるを知らざりき、蓋彼處には人の衆きに因り

    もの

    そのたれ

    けだしかしこ

    ひと

    おほ

    て、イイスス隱れたり。一四

    厥後イイスス此の人に殿に遇ひ

    かく

    そののち

    ひと

    でん

    て、之に謂へり、視よ、爾は愈えたり、復罪を犯す勿れ、恐

    これ

    なんぢ

    またつみ

    おか

    なか

    おそ

    らくは患に遭ふこと更に

    しからん。一五

    彼往きて、イ

    うれひ

    さら

    はなはだ

    かれ

    ウデヤ人に、我を愈しゝ者はイイススなりと告げたり。一六

    じん

    われ

    いや

    もの

    是に於てイウデヤ人イイススを窘逐して、殺さんことを謀れ

    こゝ

    おい

    じん

    きんちく

    ころ

    はか

    り、彼が安息日に此くの如き事を行ひし故なり。一七

    イイ

    かれ

    ごと

    こと

    おこな

    ゆゑ

    スス彼等に謂へり、我が父は今に至るまで爲し、我も亦爲す。

    かれ

    ちゝ

    いま

    いた

    われ

    また

    一八

    此れに緣りてイウデヤ人

    彼を殺さんことを謀れり、

    じんいよいよかれ

    ころ

    はか

    其第安息日を犯しゝのみならず、

    又神を己の父と言ひ

    そのたゞ

    おか

    すなはちまたかみ

    おのれ

    ちゝ

    て、己を神と齊しく爲しゝ故なり。一九

    イイスス彼等に答

    おのれ

    かみ

    ひと

    ゆゑ

    かれ

    こた

    へて曰へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、子は若し父の行ふ

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    ちゝ

    おこな

    所を見ずば、己に由りて何事をも行ふ能はず、父の行ふ

    ところ

    おのれ

    なにごと

    おこな

    あた

    ちゝ

    おこな

    所は、子も亦同じく之を行ふ。二〇

    蓋父は子を愛して、凡

    ところ

    またおな

    これ

    おこな

    けだしちゝ

    あい

    およ

    そ己の行ふ所を彼に示す、且此より大なる事を彼に示さ

    おのれ

    おこな

    ところ

    かれ

    しめ

    かつこれ

    おほい

    わざ

    かれ

    しめ

    ん、爾等の奇まん爲なり。二一

    蓋父が死せし者を起して、

    なんぢ

    あやし

    ため

    けだしちゝ

    もの

    おこ

    之を生かすが如く、子も亦欲する所の者を生かす。二二

    これ

    ごと

    またほつ

    ところ

    もの

  • - 8 -

    蓋父は何人をも審判せず、

    くの審判を子に委ねた

    けだしちゝ

    なんぴと

    しんぱん

    すなはちことごと

    しんぱん

    ゆだ

    り、二三

    衆皆子を敬ふこと、父を敬ふが如くせん爲なり。

    しゆうみな

    うやま

    ちゝ

    うやま

    ごと

    ため

    子を敬はざる者は、彼を遣しゝ父を敬はず。二四

    我誠に

    うやま

    もの

    かれ

    つかは

    ちゝ

    うやま

    われまこと

    誠に爾等に語ぐ、我が言を聽きて、我を遣しゝ者を信ず

    まこと

    なんぢ

    ことば

    われ

    つかは

    もの

    しん

    る人は、永遠の生命を有ち、且審判の爲に來らず、乃

    死よ

    ひと

    えいゑん

    のち

    たも

    かつしんぱん

    ため

    きた

    すなはち

    り生命に移れり。二五

    我誠に誠に爾等に語ぐ、時は來る、

    いの

    うつ

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    とき

    きた

    今は是れなり、死せし者は神の子の聲を聞かん、之を聞きて

    いま

    もの

    かみ

    こゑ

    これ

    生きん。二六

    蓋父が己の内に生命を有つが如く、此くの如

    けだしちゝ

    おのれ

    うち

    いのち

    たも

    ごと

    ごと

    く子にも己の内に生命を有たしめ、二七

    且彼に審判を行ふ

    おのれ

    うち

    のち

    たも

    かつかれ

    しんぱん

    おこな

    權を與へたり、其人の子たるに因りてなり。二八

    之を奇む勿

    けん

    あた

    そのひと

    これ

    あやし

    なか

    れ、蓋時は來る、凡そ墓の中に在る者は神の子の聲を聞か

    けだしとき

    きた

    およ

    はか

    うち

    もの

    かみ

    こゑ

    ん、二九

    而して善を行ひし者は生命の復活に出で、惡を爲

    しかう

    ぜん

    おこな

    もの

    いのち

    ふくくわつ

    あく

    しゝ者は定罪の復活に出でん。三〇

    我何事をも己に由りて

    もの

    ていざい

    ふくくわつ

    われなにごと

    おのれ

    行ふ能はず、聞く所に遵ひて審判す、而して我が審判は

    おこな

    あた

    ところ

    したが

    しんぱん

    しかう

    しんぱん

    義なり、蓋我己の旨を求めず、乃

    我を遣しゝ父の旨を求

    けだしわれおのれ

    むね

    もと

    すなはちわれ

    つかは

    ちゝ

    むね

    もと

    むるなり。三一

    若し我自ら己の事を證せば、我が證は眞

    われみづか

    おのれ

    こと

    しよう

    しよう

    まこと

    ならず。三二

    別に我の事を證する者あり、我其我を證する

    べつ

    われ

    こと

    しよう

    もの

    われそのわれ

    しよう

    證の眞なるを知る。三三

    爾等嘗て人をイオアンに遣しゝ

    しよう

    まこと

    なんぢ

    かつ

    ひと

    つかは

    に、彼は眞實の爲に證を作せり。三四

    然れども我は人より

    かれ

    しんじつ

    ため

    しよう

    しか

    われ

    ひと

    證を受けず、

    此を言ふは爾等の救はれん爲なり。三五

    しよう

    すなはちこれ

    なんぢ

    すく

    ため

    彼は燃え且光る

    たりき、爾等は其光に在りて暫く喜

    かれ

    かつひか

    ともしび

    なんぢ

    そのひかり

    しばら

    よろこ

    ばんと欲せり。三六

    然るに我にはイオアンの證より大なる

    ほつ

    しか

    われ

    しよう

    おほい

    者あり、蓋父が我に與へて成さしむる事、此の我が行ふ所

    もの

    けだしちゝ

    われ

    あた

    わざ

    おこな

    ところ

    の事は、我の爲に、父が我を遣しゝ事を證す。三七

    且我を

    わざ

    われ

    ため

    ちゝ

    われ

    つかは

    こと

    しよう

    かつわれ

    遣しゝ父自ら我の爲に證を作せり。惟爾等未だ嘗て其聲

    つかは

    ちゝみづか

    われ

    ため

    しよう

    たゞなんぢ

    いま

    かつ

    そのこゑ

    を聞かず、其形を見ざりき。三八

    且其言を爾等の衷に存

    そのかたち

    かつそのことば

    なんぢ

    うち

    そん

    せず、蓋彼の遣しゝ者は、爾等之を信ぜざるなり。三九

    けだしかれ

    つかは

    もの

    なんぢ

    これ

    しん

    聖書を探れ、蓋

    爾等は此に由りて永遠の生命を得んと意

    せいしよ

    さぐ

    けだしなんぢ

    これ

    えいゑん

    おも

    ふ、此れ我の事を證するなり。四〇

    然れども爾等は生命を

    われ

    こと

    しよう

    しか

    なんぢ

    いのち

    得ん爲に我に就くを欲せず。四一

    我榮を人より受けず。四二

    ため

    われ

    ほつ

    われえい

    ひと

    惟我爾等を知る、爾等の衷には神に於ける愛なし。四三

    たゞわれなんぢ

    なんぢ

    うち

    かみ

    あい

    われ

    は我が父の名に因りて來りしに、爾等我を接けず、若し他

    ちゝ

    きた

    なんぢ

    われ

    人己の名に因りて來らば、爾等之を接けん。四四

    爾等互

    にんおのれ

    きた

    なんぢ

    これ

    なんぢ

    たがひ

    に榮を相受け、獨一の神よりする榮を求めずして、豈信ずる

    えい

    あひ

    どくいつ

    かみ

    えい

    もと

    あにしん

    を得んや。四五

    我爾等を父の前に訴へんと意ふ勿れ、爾等

    われなんぢ

    ちゝ

    まへ

    うつた

    おも

    なか

    なんぢ

    を訴ふる者にモイセイあり、爾等が恃む所の者なり。四六

    うつた

    もの

    なんぢ

    たの

    ところ

    もの

    爾等若しモイセイを信ぜば、我をも信ぜん、彼は我の事

    けだしなんぢ

    しん

    われ

    しん

    かれ

    われ

    こと

    を書したればなり。四七

    若し爾等彼の書を信ぜずば、焉

    しる

    なんぢ

    かれ

    しよ

    しん

    いづくん

    ぞ我の言を信ぜん。

    われ

    ことば

    しん

    第六章

    厥後イイスス

    ガリレヤの海、

    ティワェリア

    そののち

    うみ

    すなはち

    ダの海の彼の岸に濟りしに、二

    衆くの民彼に随へり、彼が

    うみ

    きし

    わた

    おほ

    たみかれ

    したが

    かれ

  • - 9 -

    病者に行ひし奇蹟を見たればなり。三

    イイスス山に登り

    びやうしや

    おこな

    せき

    やま

    のぼ

    て、彼處に門徒と偕に坐せり。四

    時にイウデヤ人の節筵なる

    かしこ

    もん

    とも

    とき

    じん

    まつり

    逾越節近づけり。五

    イイスス目を擧げて、衆くの民の彼に來

    ちか

    おほ

    たみ

    かれ

    きた

    るを見て、フィリップに謂ふ、我等何處より餅を市ひて、彼等

    われ

    づこ

    ぱん

    かれ

    に食はしめんか。六

    之に言ひしは、彼を試みん爲なり、

    くら

    これ

    かれ

    こゝろ

    ため

    自ら何を行はんとするを知れり。七

    フィリップ答へて

    けだしみづか

    なに

    おこな

    こた

    曰へり、銀二百を以て餅を市ふとも、彼等の爲に

    少し

    ぎん

    ひやく

    もつ

    ぱん

    かれ

    ため

    おのおのすこ

    づゝを受くるに足らず。八

    其門徒の一、シモンペトルの

    そのもん

    ひとり

    兄弟アンドレイ、彼に謂ふ、九

    此に一の童子ありて、麰麥

    きやうだい

    かれ

    こゝ

    ひとり

    どう

    おほむぎ

    の餅五と小き魚二とを有てり、然れども是れ何をか此の

    ぱんいつゝ

    ちひさ

    うをふたつ

    しか

    なに

    多數に爲さん。一〇

    イイスス曰へり、人人を坐せしめよ。

    すう

    ひとびと

    其處に多くの草あり。是に於て人人席坐せり、數約五千な

    そのところ

    おほ

    くさ

    こゝ

    おい

    ひとびとせき

    すうおよそ

    せん

    り。一一

    イイスス餅を取り、感謝して、門徒に分ち與へ、門徒

    ぱん

    かんしや

    もん

    わか

    あた

    もん

    は席坐する者に與へたり、魚も亦然り、乃

    欲する所に從

    せき

    もの

    あた

    うを

    またしか

    すなはちほつ

    ところ

    したが

    へり。一二

    衆既に飽きて、彼門徒に謂ふ、餘りたる屑を聚

    しゆうすで

    かれもん

    あま

    くづ

    あつ

    めて、廢る所毋らしめよ。一三

    聚めて、食ひし者の餘

    すた

    ところなか

    すなはちあつ

    くら

    もの

    あま

    したる五の麰麥の餅の屑を十二の筐に盈てたり。一四

    人人

    いつゝ

    おほむぎ

    ぱん

    くづ

    じふ

    かご

    ひとびと

    イイススの行ひし奇蹟を見て曰へり、是れ誠に世に來るべ

    おこな

    せき

    まこと

    きた

    き預言者なり。一五

    イイススは彼等が來り、急に彼を執り

    げんしや

    かれ

    きた

    にはか

    かれ

    て、王と爲さんと欲するを知りて、復獨山に遁れたり。一六

    わう

    ほつ

    またひとりやま

    のが

    日の暮るゝ時、其門徒下りて海に至り、一七

    舟に登りて、海

    とき

    そのもん

    くだ

    うみ

    いた

    ふね

    のぼ

    うみ

    の彼の岸なるカペルナウムに往けり。既に昏くなりて、イイ

    きし

    すで

    くら

    スス彼等に來らず。一八

    風大に吹きて、海は浪たてり。一九

    かれ

    きた

    かぜおほい

    うみ

    なみ

    ぎ行くこと約二十五或は三十小

    里にして、彼等はイイス

    およそ

    じふ

    あるひ

    さんじふスタディヤ

    かれ

    スの海を屨みて、舟に近づくを見て、懼れたり。二〇

    彼は之

    うみ

    ふね

    ちか

    おそ

    かれ

    これ

    に謂ふ、是れ我なり、懼るゝ勿れ。二一

    門徒彼を舟に接けん

    われ

    おそ

    なか

    もん

    かれ

    ふね

    と欲せり、舟は直に往く所の地に着きたり。二二

    明日、海

    ほつ

    ふね

    たゞち

    ところ

    あくる

    うみ

    の彼の岸に立てる民は、彼處に門徒の登りたる舟の外に他の

    きし

    たみ

    かしこ

    もん

    のぼ

    ふね

    ほか

    舟なく、且イイススは門徒と偕に舟に登らずして、門徒のみ

    ふね

    かつ

    もん

    とも

    ふね

    のぼ

    もん

    往きしを見たり。二三

    時に他の舟はティワェリアダより主の

    とき

    ふね

    しゆ

    感謝して後餅を食ひし所の近く來れり。二四

    是に於て民は

    かんしや

    のちぱん

    くら

    ところ

    ちか

    きた

    こゝ

    おい

    たみ

    イイススの此に在らず、其門徒も在らざるを見て、己も亦舟

    こゝ

    そのもん

    おのれ

    またふね

    に登り、イイススを尋ねてカペルナウムに來れり。二五

    海の

    のぼ

    たづ

    きた

    うみ

    彼の岸に於て彼に遇ひて曰へり、夫子、爾は何の時にか此

    きし

    おい

    かれ

    ラウワィ

    なんぢ

    なん

    とき

    こゝ

    に來れる。二六

    イイスス彼等に答へて曰へり、我誠に誠に

    きた

    かれ

    こた

    われまこと

    まこと

    爾等語ぐ、爾等の我を尋ぬるは、奇蹟を見し故に非ず、

    なんぢ

    なんぢ

    われ

    たづ

    せき

    ゆゑ

    あら

    餅を食ひて飽きたる故なり。二七

    朽つる糧の爲に勞する

    すなはちぱん

    くら

    ゆゑ

    かて

    ため

    らふ

    勿れ、

    永遠の生命に存する糧、人の子が爾等に與へん

    なか

    すなはちえいゑん

    いのち

    そん

    かて

    ひと

    なんぢ

    あた

    とする者の爲に勞せよ、蓋父なる神は彼を印證せり。二八

    もの

    ため

    らふ

    けだしちゝ

    かみ

    かれ

    いんしよう

    彼等曰へり、我等何を行ひて、神の事を爲さんか。二九

    かれ

    われ

    なに

    おこな

    かみ

    わざ

    イスス答へて曰へり、神の事とは、爾等が彼の遣しゝ者を

    こた

    かみ

    わざ

    なんぢ

    かれ

    つかは

    もの

    信ずること、是なり。三〇

    彼等曰へり、爾何の休徴を行

    しん

    これ

    かれ

    なんぢなに

    きうちよう

    おこな

  • - 10 -

    ひて、我等をして之を見て、爾を信ぜしめんか、爾何を爲

    われ

    これ

    なんぢ

    しん

    なんぢなに

    すか。三一

    我等の先祖は野に在りて「マンナ」を食へり、錄

    われ

    せん

    くら

    しる

    されしが如し、天より彼等に餅を與へて食はしめたりと。三

    ごと

    てん

    かれ

    ぱん

    あた

    くら

    イイスス彼等に謂へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、モイ

    かれ

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    セイが爾に餅を天より與へしに非ず、乃

    我が父は爾等に

    なんぢ

    ぱん

    てん

    あた

    あら

    すなはち

    ちゝ

    なんぢ

    眞の餅を天より與ふ。三三

    蓋神の餅は天より降りて、世に

    まこと

    ぱん

    てん

    あた

    けだしかみ

    ぱん

    てん

    くだ

    生命を與ふる者なり。三四

    彼等曰へり、主よ、恒に我等に斯

    いのち

    あた

    もの

    かれ

    しゆ

    つね

    われ

    の餅を與へよ。三五

    イイスス彼等に謂へり、我は生命の餅な

    ぱん

    あた

    かれ

    われ

    いのち

    ぱん

    り、我に來る者は飢ゑず、我を信ずる者は永く渇かざらん。

    われ

    きた

    もの

    われ

    しん

    もの

    なが

    かわ

    三六

    然れども我爾等に嘗て、爾等我を見たれども信ぜずと

    しか

    われなんぢ

    かつ

    なんぢ

    われ

    しん

    言へり。三七

    凡そ父の我に與ふる者は、我に來らん、我に來

    およ

    ちゝ

    われ

    あた

    もの

    われ

    きた

    われ

    きた

    る者は、我之を外に逐はざらん。三八

    蓋我が天より降りし

    もの

    われこれ

    そと

    けだし

    てん

    くだ

    は、己の旨を行はん爲に非ず、

    我を遣しゝ父の旨を

    おのれ

    むね

    おこな

    ため

    あら

    すなはちわれ

    つかは

    ちゝ

    むね

    行はん爲なり。三九

    我は遣しゝ父の旨は、

    彼が我に與

    おこな

    ため

    われ

    つかは

    ちゝ

    むね

    すなはちかれ

    われ

    あた

    へし者の中、我其一をも亡はずして、末の日に於て

    もの

    うち

    われそのひとつ

    うしな

    すゑ

    おい

    ことごと

    之を復活せしめんとするに在り。四〇

    我を遣しゝ者の旨は

    これ

    ふくくわつ

    われ

    つかは

    もの

    むね

    凡そ子を見て之を信ずる者は、永遠の生命を有ち、我末

    すなはちおよ

    これ

    しん

    もの

    えいゑん

    いのち

    たも

    われすゑ

    の日に於て彼を復活せしめんとするに在り。四一

    時にイウ

    おい

    かれ

    ふくくわつ

    とき

    デヤ人、其我は天より降りし餅なりと言ひしに因りて、彼を

    じん

    そのわれ

    てん

    くだ

    ぱん

    かれ

    怨みて四二

    云へり、此れイオシフの子イイスス、我等が其父

    うら

    われ

    そのちゝ

    と母とを識れる者に非ずや、如何にして彼は我天より降れり

    はゝ

    もの

    あら

    かれ

    われてん

    くだ

    と言ふか。四三

    イイスス彼等に答へて曰へり、爾等相共に

    かれ

    こた

    なんぢ

    あひとも

    怨言する勿れ。四四

    我を遣しゝ父之を引かざれば、人我に

    うらみごと

    なか

    われ

    つかは

    ちゝこれ

    ひとわれ

    來る能はず、我に來る者は我末の日に於て之を復活せしめ

    きた

    あた

    われ

    きた

    もの

    われすゑ

    おい

    これ

    ふくくわつ

    ん。四五

    諸預言者に錄せるあり、彼等皆神に教へられんと、凡

    しよ

    げんしや

    しる

    かれ

    みなかみ

    をし

    およ

    そ父に聽きて學びし者は我に來る。四六

    此れ人曾て父を見た

    ちゝ

    まな

    もの

    われ

    きた

    ひとかつ

    ちゝ

    りと曰ふに非ず、惟神よりする者は彼父を見たるなり。四七

    あら

    たゞかみ

    もの

    かれちゝ

    我誠に誠に爾等に語ぐ、我を信じる者は永遠の生命を有

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    われ

    しん

    もの

    えいゑん

    いのち

    たも

    つ。四八

    我は生命の餅なり。四九

    爾等の先祖は野に在りて「マ

    われ

    いのち

    ぱん

    なんぢ

    せん

    ンナ」を食ひたれども、死せり。五〇

    夫れ天より降る餅は、

    くら

    てん

    くだ

    ぱん

    之を食ふ者死せざるを致さん。五一

    我は天より降りし生

    すなはちこれ

    くら

    もの

    いた

    われ

    てん

    くだ

    ける餅なり、此の餅を食ふ者は世世に生きん。我が與へんと

    ぱん

    ぱん

    くら

    もの

    あた

    する餅は、卽

    我の體なり、我が世の生命の爲に與へんとす

    ぱん

    すなはちわれ

    たい

    いのち

    ため

    あた

    る者なり。五二

    時にイウデヤ人互に論じて曰へり、彼如何

    もの

    とき

    じんたがひ

    ろん

    かれいか

    ぞ我等に其體を與へて、食はしむるを得ん。五三

    イイスス

    われ

    そのたい

    あた

    くら

    彼等に謂へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、爾等若し人の子

    かれ

    われまこと

    まこと

    なんぢ

    なんぢ

    ひと

    の體を食はず、其血を飮まずば、己の衷に生命を有たざら

    たい

    くら

    その

    おのれ

    うち

    いのち

    たも

    ん。五四

    我が體を食ひ、我が血を飮む者は、永遠の生命を有

    たい

    くら

    もの

    えいゑん

    いのち

    たも

    つ、我末の日に於て彼を復活せしめん。五五

    蓋我が體は眞

    われすゑ

    おい

    かれ

    ふくくわつ

    けだし

    たい

    まこと

    に糧なり、我が血は眞に飮物なり。五六

    我が體を食ひ、我

    かて

    まこと

    のみもの

    たい

    くら

    が血を飮む者は、我に居り、我も彼に居るなり。五七

    生くる

    もの

    われ

    われ

    かれ

    父我を遣し、彼父に由りて生くるが如く、我を食ふ者も我

    ちゝわれ

    つかは

    かれちゝ

    ごと

    われ

    くら

    もの

    われ

  • - 11 -

    に由りて生きん。五八

    斯れは

    天より降りし餅なり。爾等

    すなはちてん

    くだ

    ぱん

    なんぢ

    の先祖が「マンナ」を食ひて、死せし如きに非ず、此の餅を食

    せん

    くら

    ごと

    あら

    ぱん

    くら

    ふ者は世世に生きん。五九

    此等の事は、彼カペルナウムに教

    もの

    これ

    こと

    かれ

    をし

    ふる時、會堂に於て言へり。六〇

    其門徒の中多くの者之を聞

    とき

    くわいだう

    おい

    そのもん

    うちおほ

    ものこれ

    きて曰へり、難い哉斯の言、誰か之を聽くを得ん。六一

    かた

    かな

    ことば

    たれ

    これ

    イスス己の衷に其門徒が怨言するを知りて、彼等に謂へ

    おのれ

    うち

    そのもん

    うらみごと

    かれ

    り、此れ爾を惑はすか。六二

    爾等若し人の子が曩に在りし

    なんぢ

    まど

    なんぢ

    ひと

    さき

    所に升るを見ば如何。六三

    神は生かす者なり、肉は益なし。

    ところ

    のぼ

    いかん

    ○しん

    もの

    にく

    えき

    我が爾等に語りし言は神なり、生命なり。六四

    然れども

    なんぢ

    かた

    ことば

    ○しん

    しか

    爾等の中に信ぜざる者あり。蓋イイススは初より信ぜざ

    なんぢ

    うち

    しん

    もの

    けだし

    はじめ

    しん

    る者の誰たる、及び彼を賣らんとする者の誰たるを知れり。

    もの

    たれ

    およ

    かれ

    もの

    たれ

    六五

    又曰へり、故に我曾て爾等に我が父より之に與へらる

    また

    ゆゑ

    われかつ

    なんぢ

    ちゝ

    これ

    あた

    ゝに非ざれば、人我に來る能はずと言へり。六六

    是より其

    あら

    ひとわれ

    きた

    あた

    これ

    その

    門徒多く返りて、復彼と偕に往かざりき。六七

    イイスス十

    もん

    おほ

    かへ

    またかれ

    とも

    じふ

    二徒は謂へり、爾等も去らんと欲するか。六八

    シモンペト

    なんぢ

    ほつ

    ル彼に答へて曰へり、主よ、我等誰にか往かん、爾は永遠

    かれ

    こた

    しゆ

    われ

    たれ

    なんぢ

    えいゑん

    の生命の言を有つ。六九

    我等は爾がハリストス、活ける神

    いのち

    ことば

    たも

    われ

    なんぢ

    かみ

    の子たるを信じ、且知れり。七〇

    イイスス彼等に答へて曰へ

    しん

    かつ

    かれ

    こた

    り、我爾等十二を選びしに非ずや、而して爾等の中一人

    われなんぢ

    じふ

    えら

    あら

    しかう

    なんぢ

    うちひ

    とり

    は惡魔なり。七一

    是れ彼はシモンの子イウダ「イスカリオト」

    あく

    かれ

    を指して言へり、蓋此の人は十二の一にして、彼を賣らん

    けだし

    ひと

    じふ

    ひとり

    かれ

    とする者なり。

    もの

    第七章

    厥後イイスス

    ガリレヤを巡れり、蓋イウデヤを

    そののち

    めぐ

    けだし

    巡らんことを欲せざりき、イウデヤ人彼を殺さんと謀りたれ

    めぐ

    ほつ

    じんかれ

    ころ

    はか

    ばなり。二

    イウデヤ人の節筵なる張幕節近づけり。三

    イイ

    じん

    まつり

    ちやうまくせつちか

    ススの兄弟彼に謂へり、此を去りてイウデヤに往け、爾の

    きやうだいかれ

    こゝ

    なんぢ

    門徒も爾が行ふ所の事を見ん爲なり。四

    蓋人自ら顯れ

    もん

    なんぢ

    おこな

    ところ

    わざ

    ため

    けだしひとみづか

    あらは

    んと欲して、隱に事を行ふ者ならず。若し爾此等の事を

    ほつ

    ひそか

    こと

    おこな

    もの

    なんぢこれ

    こと

    行はゞ、己を世に顯せ。五

    蓋其兄弟も亦彼を信ぜざり

    おこな

    おのれ

    あらは

    けだしそのきやうだい

    またかれ

    しん

    き。六

    イイスス彼等に謂ふ、我の時未だ至らず、爾等の時

    かれ

    われ

    ときいま

    いた

    なんぢ

    とき

    は恒に備れり。七

    世は爾等を惡む能はず、然れども我を惡

    つね

    そなは

    なんぢ

    にく

    あた

    しか

    われ

    にく

    む、我其行ふ所の惡しきを證すればなり。八

    爾等は此の

    われそのおこな

    ところ

    しよう

    なんぢ

    節筵に上れ、我は未だ此の節筵に上らず、蓋我の時未だ盈

    まつり

    のぼ

    われ

    いま

    まつり

    のぼ

    けだしわれ

    ときいま

    たざるなり。九

    之を彼等に言ひて、ガリレヤに留まれり。

    これ

    かれ

    とゞま

    一〇

    然れども其兄弟の節筵に上りし後、彼も亦上れり、昭然

    しか

    そのきやうだい

    つり

    のぼ

    のち

    かれ

    またのぼ

    あら

    ならずして、

    隱然なるが如し。一一

    節筵の時、イウデヤ

    すなはちひそ

    ごと

    まつり

    とき

    人彼を尋ねて曰へり、彼は安に在るか。一二

    民の中に彼の事

    じんかれ

    たづ

    かれ

    いづく

    たみ

    うち

    かれ

    こと

    に於て多くの論ありき、

    は善なりと曰ひ、

    は否、

    おい

    おほ

    ろん

    あるひと

    ぜん