56

は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」
Page 2: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

は じ め に

 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ

に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

プログラムは、学部教育、卒後臨床研修、卒後臨床研修修了後の地域医療人の育成・支援を3つの柱

としています。

 プログラムの介入による効果を測る指標として、それぞれの対象の地域医療への意識について、介

入前と介入後にアンケート調査を行い、比較することによって効果を測ることとしました。「医学部

6年生を対象とした卒後臨床研修・地域医療アンケート」、「臨床研修医を対象とした『地域保健・医

療研修における指導に対する評価・研修環境に対する評価』アンケート」、「地域医療従事者を対象と

したQOL・地域医療に関するアンケート」、「地域住民を対象とした地域医療に関するアンケート」が、

これに当たります。「地域医療従事者を対象としたQOL・地域医療に関するアンケート」、「地域住民を

対象とした地域医療に関するアンケート」については、比較対照として地域中核病院従事者・地域住

民についても調査を行いました。

 また、学部教育の一環として、臨床実習開始前の医学部医学科学生と、保健学科学生(看護学専

攻・検査技術科学専攻・放射線技術科学専攻)及び歯学部口腔生命福祉学科学生によりチームを構成

し、地域医療とチーム医療をテーマとしたワークショップ、地域医療病院での訪問診療を中心とした

フィールドワーク・地域医療体験実習を行いました。このワークショップ、フィールドワークの効果

を評価するために、その前後で地域医療についてのアンケート調査を行い、比較検討を行いました。

「『学生によるワークショップとフィールドワーク』アンケート」がこれに当たります。

 これらの調査は各対象の地域医療に対する意識についての介入前調査ですが、それぞれ特徴的な結

果が得られています。また、「『学生によるワークショップとフィールドワーク』アンケート」につい

ては、有意差のある項目がみられています。

 本プログラムの推進ならびにアンケートにご協力いただいた皆様に感謝の意を表します。

新潟大学医歯学総合病院長

(地域医療教育支援コアステーションリーダー)

下 条 文 武

1

Page 3: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

―中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成―

平成17年度 アンケート報告書

 

はじめに 

医学部6年生を対象とした卒後臨床研修・地域医療アンケート  …………1

     概要

     アンケート

     結果(表) 

臨床研修医を対象とした「地域保健・医療研修における

指導に対する評価・研修環境に対する評価」アンケート  …………………9

     概要

     アンケート

     結果 表

        グラフ

地域医療従事者を対象としたQOL・地域医療に関するアンケート ………18

     概要

     アンケート

     結果 表

        グラフ

        地域医療病院と地域中核病院間の比較

地域住民を対象とした地域医療に関するアンケート  ………………………39

     概要

     アンケート

     結果 表

        グラフ

        地域医療病院住民と地域中核病院住民間の比較

「学生によるワークショップとフィールドワーク」アンケート  …………44

     概要

     アンケート

     結果 表

        グラフ

用語解説 …………………………………………………………………………51

編集後記

3

目  次

Page 4: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

医学部6年生を対象とした卒後臨床研修・地域医療アンケートの概要

◆はじめに

 医学部医学科学生は、卒業までに地域医療に触れる機会が現状ではほとんどない。学ぶべき事が多

い中で地域医療に割くべき時間数がきわめて限られているためである。

 一方、平成16年度から開始された新臨床研修制度では、その研修期間内に地域保健・医療研修を盛

り込むことが規定されている。

 今回、私たちは「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」プログラムで医学部学生に対して地

域医療に関わるフィールドワークを行うことにより介入を試みる。その前情報として、これまで地域

医療にほとんど触れてこなかった現行制度における医学部6年生の卒後臨床研修、そして新臨床研修

制度に必修化された地域保健・医療研修についての意識を調査するためにアンケートを実施した。

◆対象および方法

 対象は平成17年度医学部医学科6年次生の99名。平成17年11月25日の本学最終試験終了後に行った。

 アンケートは、卒後臨床研修と、地域医療、将来の進路について特化したオリジナルである。あら

かじめ専任教員と兼任教職員を中心に評価ワーキンググループを立ち上げ、アンケート内容について

検討を行った。まず、新潟大学医歯学総合病院の卒後臨床研修プログラムである、内科、外科、救急

(麻酔)、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療、選択科目の各研修に対する期待と不安のそれ

ぞれの度合いについて質問した。その後、「地域医療について」と、「将来への思いについて」の複数

項目を質問した。質問項目は合計41問で、それぞれにvisual analogue scale(VAS)を用いて回答す

る形式とした。そのほかに、卒後臨床研修、地域医療について、それぞれ自由意見欄を設けた。

 アンケートの結果については、スタッフミーティングで詳細に検討を行った。検討項目としては、

まず、「卒後臨床研修に対する期待」、「卒後臨床研修に対する不安」の各項目では、地域保健・医療

研修と、その他の研修との間で比較検討した。「地域医療について」の項目では、地域医療実習の実

習量、地域医療に携わる医師のイメージ、地域医療についての自身のイメージの各質問項目について

検討した。また、「地域医療について」の項目の住民、患者、行政職との話しやすさについてと、「将

来への思いについて」の項目の、将来なりたい医師の職種、勤務場所、勤務病院の種類についての各

質問項目で、それぞれ各選択肢間で比較検討を行った。

 検定には対応のあるt検定を用い、統計分析にはヒューリンクス社の「SYSTAT 11 Windows 日本

語版」を用いた。

◆結 果

 医学部医学科6年次生99名全員から回答を得た。

 「研修に対する期待」の項目では、地域保健・医療研修は他の科目に比べて低い傾向があり、内科、

外科、救急(麻酔)、小児科、選択科目の各科目と比較して有意に低かった(p<0.0001)。産婦人科と

1

Page 5: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

比べてもやや低い傾向がみられ、精神科とほぼ同等であった。

 「研修に対する不安」の項目では、地域保健・医療研修は他の科目に比べて低く、内科、外科、救

急(麻酔)、小児科、産婦人科、精神科の各科目と比較して有意に低かった(p<0.0001)。選択科目と

比べてもやや低い傾向がみられた。

 「地域医療について」の項目では、「地域で働く医師は大変である」、「地域で働く医師は立派である」、

「地域医療を担うには他職種との連携が大切である」の質問項目についてVASが高い傾向があり、「地

域で働く医師は孤独である」、「地域医療には夢がある」、「地域医療を担うとしたら自信がある」、「地

域医療を担うのに必要な知識を知っている」、「へき地勤務によって、医師の能力は落ちない」の質問

項目についてVASが低い傾向がみられた。「話すことが苦にならない」の質問項目では、住民、患者

に対して、行政職が有意に低かった(p<0.01, p<0.0001)。

 「将来への思いについて」の項目では、「将来なりたい医師」は専門医、総合医の選択項目がそれぞ

れ行政医、研究者に比べて有意に高かった(各p<0.0001)。「将来働きたい場所」の質問項目では、都

市部の方がへき地より有意に高かった(p<0.0001)。「将来働きたい医療機関」の質問項目では、中規

模病院、大規模病院>診療所、小規模病院>大学病院と、有意差がみられた。

◆考 察

 「研修に対する期待」の項目では、地域保健・医療研修は他の研修科目より期待度が有意に低かった。

これは、医学生の地域保健医療に対する関心の低さを反映しているものと考えられる。一方で、「研修

に対する不安」の項目では不安度も有意に低かった。地域保健・医療研修に対しての不安感、抵抗感

は低いものと思われる。

 「地域医療について」の項目では、「地域で働く医師は立派である」、「地域医療を担うには他職種と

の連携が大切である」と思っている学生が多いが、一方で、「地域で働く医師は大変である」と思っ

ている学生が多かった。これらは、地域医療に対する肯定的なイメージがあるとも考えられるが、上

記の結果とあわせると、やはり、「立派な『赤ひげ』先生のする仕事」というような、自らの仕事と

しては結びつきづらい印象があるようにも思われる。

 「将来への思いについて」の項目では、「将来なりたい医師」の質問項目からは、やはり臨床医志向

が高く、専門医とともに総合医への希望も高かった。「将来働きたい場所」の質問項目からは、やは

り都市部志向が如実にあらわれていた。「将来働きたい医療機関」の質問項目からは、患者側にも言わ

れていることであるが、医学生も大病院志向が強いことがわかる。ただし、大学病院は非常に不人気

であった。

◆まとめ

 医学部医学科学生の卒後臨床研修・地域医療についての意識を調査するために、卒後臨床研修と地

域医療に関するアンケート調査を実施した。

 アンケートの結果からは、医学生の地域保健医療に対する関心の低さ、都市部志向、大病院志向が

あらわれていた。

2

Page 6: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

◆今後の展開

 平成18年度・19年度の医学部医学科6年生に対して、同一のアンケートを行い、今回の結果と比較

検討し、今回の「赤ひげチーム医療人の育成」プログラム介入による卒後臨床研修と地域医療に対す

るイメージの変化について、検証する予定である。

3

Page 7: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

4

Page 8: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

5

Page 9: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

6

Page 10: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

7

Page 11: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

8

「地域保健・医療研修に対する期待」との差(p-value)

標準偏差平均

p<0.000117.0 76.4 内科研修に対する期待①p<0.000122.2 62.3 外科研修に対する期待②p<0.000121.2 72.1 救急(麻酔)研修に対する期待③p<0.000124.7 63.9 小児科研修に対する期待④n.s.26.0 54.6 産婦人科研修に対する期待⑤n.s.25.8 49.2 精神科研修に対する期待⑥

24.5 49.5 地域保健・医療研修に対する期待⑦p<0.000119.1 75.9 選択科目研修に対する期待⑧

研修に対する期待

研修に対する不安

「地域保健・医療研修に対する期待」との差(p-value)

標準偏差平均

p<0.000121.4 54.9 内科研修に対する不安①p<0.000125.5 57.4 外科研修に対する不安②p<0.000123.8 61.4 救急(麻酔)研修に対する不安③p<0.000122.8 58.3 小児科研修に対する不安④p<0.000123.7 59.4 産婦人科研修に対する不安⑤p<0.000124.1 52.4 精神科研修に対する不安⑥

25.7 42.1 地域保健・医療研修に対する不安⑦n.s.24.1 46.4 選択科目研修に対する不安⑧

地域医療について

項目間の比較(p-value)標準偏差平均

⑬⑫⑪26.0 54.8 卒前教育としてもっと実習してみたかった①21.5 73.3 地域で働く医師は大変である②21.4 71.9 地域で働く医師は立派である③21.4 61.1 地域で働く医師は楽しそうである④23.2 50.2 地域で働く医師は孤独である⑤21.5 52.2 地域医療には夢がある⑥20.2 67.6 地域医療にはやりがいがある⑦24.6 36.2 地域医療を担うとしたら自信がある⑧22.1 22.9 地域医療を担うのに必要な知識を知っている⑨16.5 81.7 地域医療を担うには他職種との連携が大切である⑩

p<0.0123.6 67.0 話すことが苦にならない:住民⑪p<0.000123.1 66.3 話すことが苦にならない:患者⑫

p<0.0001p<0.0126.1 58.3 話すことが苦にならない:行政職⑬24.7 51.8 へき地勤務によって、医師の能力は落ちない⑭

項目間の比較(p-value)標準偏差平均

⑪⑩⑨⑧⑦⑥⑤④③②①p<0.0001p<0.000123.0 68.7 将来なりたい医師は:専門医①p<0.0001p<0.000122.4 64.2 将来なりたい医師は:総合医②

p<0.0001p<0.000125.6 28.2 将来なりたい医師は:行政医③p<0.0001p<0.000125.9 30.3 将来なりたい医師は:研究者④

p<0.000124.5 41.5 将来働きたい場所は:へき地⑤p<0.000120.7 58.6 将来働きたい場所は:都市部⑥

p<0.01p<0.00123.8 48.4 将来働きたい医療機関は:診療所⑦p<0.05p<0.05p<0.000122.3 50.5 将来働きたい医療機関は:小規模病院⑧p<0.0001p<0.0001p<0.00119.1 60.6 将来働きたい医療機関は:中規模病院⑨p<0.0001p<0.05p<0.0121.6 58.4 将来働きたい医療機関は:大規模病院⑩

p<0.0001p<0.0001p<0.0524.9 43.0 将来働きたい医療機関は:大学病院⑪

将来への思いについて

Page 12: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

臨床研修医を対象とした「地域保健・医療研修における

指導に対する評価・研修環境に対する評価」アンケート

◆はじめに

 地域保健・医療に対する本プログラム、特に研修医に対する教育的効果の成果を評価するためには、

本プログラム開始以前の状況把握が重要である。本プログラム導入以前の地域保健・医療研修におけ

る指導と研修環境に対する研修医の評価を調査するため、今回、以下のアンケート調査を実施した。

◆対象および方法

 対象は平成16年度新潟大学臨床研修病院群研修プログラムにより臨床研修を開始し、平成17年度に

8つの地域医療研修病院(研修協力施設)で地域保健・医療研修を行った研修医42名とした。各研修

医に対して地域保健・医療研修を含む各診療科研修の終了毎に、アンケート用紙を電子ファイル化・

電子メールにて配布し、電子メールにて回答を得た。研修医による各評価項目については表1にまと

めた。指導内容に対する評価は、A:満足、B:どちらかといえば満足、C:どちらかといえば不満、

D:不満の4段階評価とし、評価不能である場合をE評価とした。評価項目は8項目とし、最後に総合

的な評価を加えた。その他、特に良いと思われる点や改善して欲しい点をコメントしてもらった。研

修環境に対する評価は、研修した診療科毎にA:満足または適切、B:許容範囲内、C:不満の3段階

評価とし、評価不能Dを設けた。研修環境に対する評価の内容は、福利厚生に関する1項目、研修内容

に関した7項目、人的支援体制に関した3項目の、合わせて11項目の評価から構成されている。研修

施設を変更する時点での研修施設の研修環境に関する評価も、同様に3段階評価とした。福利厚生に

関する2項目、施設の設備に関する4項目、人的支援体制に関する2項目から構成されている。地域

保健・医療研修に対するこれらの評価結果を、他の研修科目や研修施設での評価と比較検討した。

◆結 果

 地域保健・医療研修における指導について、研修医からの評価を表2-Aにまとめた。比較対照群

としては、新潟大学医歯学総合病院(大学病院)で基本研修科目として研修した内科および外科での

評価、さらに大学病院以外の協力型研修病院で基本研修として研修した内科での評価の3群とした。

地域保健・医療研修では、総合評価においてA:満足と評価した割合が73%と高く、大学病院内科・

外科および協力型病院内科に比べて評価が高かった。医療面接・基本手技の指導、考え方の指導、研

修意欲の高め方、研修医の状況への配慮、コメディカルへの態度の指導といった各種項目においても、

地域保健・医療研修の評価は高かった。しかし、指導を受けた医療の水準では、大学病院内科、外科

より低く、患者・家族への態度の指導でも大学病院内科に比べ低かった。研修科毎の研修環境の評価

(表2-B)も、同様に3群と比較したが、休暇・休養、経験手技・検査の種類、経験手技・検査の数、

研修期間、教育システム、指導医同士の連携、コメディカルからの支援の項目において、大学病院内

科・外科および協力型病院内科に比べて評価が高かった。しかし、経験症例数で協力型病院内科より、

9

Page 13: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

経験症例の種類で大学病院内科・外科および協力型病院内科より評価が低かった。研修の期間および

その時期については、他の3群より高い評価を得た。研修施設毎の研修環境の評価(表2-C)は、

大学病院および協力型病院と比較した。食事と机・ロッカーについての評価は、大学病院および協力

型病院より高く、宿直室については、大学病院は評価不能が多く比較は難しいが、協力型病院より高

い評価であった。また、事務担当者からの支援、診療情報へのアクセスについての評価も大学病院よ

り高かった。一方、図書・医療情報検索の設備、技術研修用設備に関する評価は、大学病院および協

力型病院に比べて低かった。

◆考 察

 地域保健・医療研修に関する研修医の評価を考える上で、研修時期、研修期間が重要と思われる。す

なわち、今回の比較検討対照群の基本研修科目としての大学病院内科・外科および協力型病院内科は、

研修1年目に行われるのに対して、地域保健・医療研修は研修2年目に行われ、かつ研修期間が他の

研修科が通常2か月ないし1か月に対して1.5か月となっている。研修条件が異なる以上、直接比較を

行うことには若干の問題が存在すると思われる。しかし、今回はその点と考慮したとしても、指導に

対する評価では、全体的には高い評価を受けていた。一方、指導を受けた医療の水準、安全管理の指

導、そして患者・家族への態度の指導の面で、若干の問題点が残ると考えられる。また、診療科毎の

研修環境の評価と研修施設毎の研修環境の評価でも高い点は多いものの、経験症例数、経験症例の種

類そして、図書・医療情報検索の設備、技術研修用設備については改善の余地があると思われる。

 本プログラムを行うことによって、これらの点の改善を図ることを目指すが、本プログラムで導入

される地域支援テレビシステムは、まさに今回あげられた各種問題点を改善するに相応しいものと考

えることが出来る。本システムにより地域保健・医療研修に対する研修医の評価における問題点を改

善することで、研修医に対する教育的効果が十分期待し得ると思われる。一方、多くの評価が高かっ

たことから、地域保健・医療研修を担っている地域病院スタッフの奮闘も現時点では評価すべきこと

ながら、かなりの負担が向後に悪影響を及ぼす可能性も考慮する必要があろう。

◆今後の展開

 平成18・19年度に、研修医に対し同一のアンケートを施行し、今回の結果と比較検討し、今回の

「赤ひげチーム医療人の育成」プログラム介入による意識の変化について、検証する予定である。

10

Page 14: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

表1:研修医による各種評価項目と評価方法

1:指導に対する評価(評価対象は指導医個人ではなく,指導助手も含めた指導医群全体)

 A:満足  B:どちらかといえば満足  C:どちらかといえば不満  D:不満  E:評価不能

  1)医療面接・基本手技の指導 2)考え方の指導

  3)研修意欲の高め方 4)研修医の状況への配慮

  5)指導を受けた医療の水準 6)安全管理の指導

  7)患者・家族に対する態度の指導 8)コメディカルに対する態度の指導

 ◎総合評価

 ◇ 特に良いと思われる点 ◇ 改善して欲しい点

2:研修環境評価 ~診療科目毎~

 A :満足または適切  B:許容範囲内  C:不満  D:評価不能

 ◇ 福利厚生

  1)休暇・休養

 ◇ 研修内容

  2)経験症例数 3)経験症例の種類

  4)経験手技・検査の種類 5) 経験手技・検査の数

  6)研修の時期 7) 研修期間

  8)症例検討会,講習会などの教育システム

 ◇ 人的支援体制

  9)研修医同士の連携 10)指導医同士の連携

  11) コメディカルからの支援

 ◇ 特に良いと思われる点 ◇ 改善して欲しい点

 ◇ 診療科等へのメッセージ

3:研修環境評価 ~研修施設毎~

 A:満足または適切  B:許容範囲内  C:不満  D:評価不能

 ◇ 福利厚生

  1)食事 2)宿舎

 ◇ 設備

  3)机・ロッカー 4)宿直室

  5)図書・医療情報検索の設備状況 6)技術研修用設備

 ◇ 人的支援体制

  7)研修事務担当者からの支援 8)診療情報へのアクセス

 ◇ 研修施設へのメッセージ

11

Page 15: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

12

指導に対する評価

⑨総合評価⑧コメディカルへの態度の指導

⑦患者・家族への態度の指導

⑥安全管理の指導

⑤指導を受けた医療の水準

④研修医の状況への配慮

③研修意欲の高め方

②考え方の指導

①医療面接・基本手技の指導

指導に対する評価

73.32250.01556.71750.01550.01573.32270.02176.72366.720A地域保健・医療23.3746.71440.01243.31346.71423.3726.7820.0630.09B3.313.313.316.723.313.313.313.313.31C0.000.000.000.000.000.000.000.000.00D0.000.000.000.000.000.000.000.000.00E

55.75439.43939.43933.33345.94552.55251.55156.65653.553A協力型病院内科41.24054.55457.65759.65950.04940.44041.44140.44039.439B2.123.032.026.161.015.157.173.037.17C0.000.000.000.000.000.000.000.000.00D1.013.031.011.013.132.020.000.000.00E

56.04736.03159.35140.73557.04950.04357.04965.15652.345A大学病院内科35.73051.24434.93051.24441.93633.72929.12526.72344.238B8.3710.595.858.171.2114.01210.597.062.32C0.000.000.000.000.002.322.321.211.21D0.002.320.000.000.000.001.210.000.00E

46.02936.52345.22854.03452.43361.93949.23160.33854.034A大学病院外科52.43354.03453.23342.92741.32628.61841.32634.92241.326B0.007.951.613.226.347.957.953.224.83C1.611.610.000.000.001.611.611.610.00D0.000.000.000.000.000.000.000.000.00E

①医療面接・基本手技の指導 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

②考え方の指導 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

③研修意欲の高め方

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

④研修医の状況への配慮 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

A:満足   B:どちらかといえば満足   C:どちらかといえば不満   D:不満   E:評価不能

表2:研修医による評価のまとめ(各項目の左:実数、右:%)表2-A

Page 16: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

13

⑤指導を受けた医療の水準 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑨総合評価 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑥安全管理の指導 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑦患者・家族への態度の指導

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑧コメディカルへの態度の指導 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

Page 17: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

14

研修環境(1)診療科目毎

⑪コメディカルからの支援

⑩指導医同士の連携

⑨研修医同士の連携

⑧教育システム

⑦研修期間⑥研修の時期

⑤ 経 験 手技・検 査の数

④ 経 験 手技・検 査の種類

③経験症例の種類

②経験症例数

①休暇・休養研修環境(1)

診療科目毎

60.01850.01531.0926.7820.7641.41230.0933.31020.0623.3770.021A地域保健・医療40.01243.31331.0966.72051.71548.31466.72063.31976.72366.72026.78B0.003.313.410.0024.173.413.313.310.0010.033.31C0.003.3134.5106.723.416.920.000.003.310.000.00D

51.04933.03117.01620.82011.51129.22828.42728.42721.92134.43345.844A協力型病院内科49.04748.94648.94665.66346.94568.86663.26067.46468.86659.45752.150B0.0011.7114.349.4940.6391.016.363.237.375.252.12C0.006.4629.8284.241.011.012.121.112.121.010.00D

31.32545.03651.34119.8168.6738.33122.51825.92123.51922.21837.030A大学病院内科52.54235.02837.53058.04735.82953.14361.34965.45354.34467.95548.139B13.81117.5147.5621.01753.1437.4615.0127.4622.2189.988.67C2.522.523.831.212.521.211.311.210.000.006.25D

25.01535.02128.81720.0123.3223.31420.31220.01226.71623.31461.737A大学病院外科61.73756.73461.03673.34435.02168.34162.73763.33860.03665.03930.018B6.745.031.713.3260.0365.0315.3915.0913.3811.775.03C6.743.328.553.321.713.321.711.710.000.003.32D

①休暇・休養 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

②経験症例数 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

③経験症例の種類

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

④経験手技・検査の種類 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

A :満足または適切   B:許容範囲内   C:不満   D:評価不能

表2-B

Page 18: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

15

⑤経験手技・検査の数 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑥研修の時期 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑦研修期間 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑧教育システム %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑨研修医同士の連携 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑩指導医同士の連携 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

⑪コメディカルからの支援 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院内科 大学病院内科 大学病院外科

Page 19: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

16

研修環境(2)研修施設毎

⑧診療情報へのアクセス

⑦事務担当者からの支援

⑥技術研修用設備

⑤ 図 書・医療情報検索の設備

④宿直室③机・ロッカー

②宿舎①食事研修環境(2)研修施設毎

39.31164.31810.7317.9567.91967.91953.61564.318A地域保健・医療60.71735.71053.61550.01428.6832.1925.0732.19B0.000.0021.4628.683.610.0014.343.61C0.000.0014.343.610.000.007.120.00D

50.01570.02126.7846.71450.01556.71746.71450.015A協力型病院46.71430.0933.31040.01240.01243.31313.3443.313B3.310.0030.0913.3410.030.006.726.72C0.000.0010.030.000.000.0033.3100.00D

38.31844.72125.51252.22420.0958.7279.1444.721A大学病院53.22546.82263.83034.81646.72137.01718.2848.923B8.548.546.4310.958.944.3213.664.32C0.000.004.322.2124.4110.0059.1262.11D

①食事 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

②宿舎 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

③机・ロッカー %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

④宿直室 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

A :満足または適切   B:許容範囲内   C:不満   D:評価不能

表2-C

Page 20: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

17

⑤図書・医療情報検索の設備 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

⑥技術研修用設備 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

⑦事務担当者からの支援 %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

⑧診療情報へのアクセス %

0

20

40

60

80

100

地域保健・医療 協力型病院 大学病院

Page 21: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

地域医療従事者を対象としたQOL・地域医療に関するアンケートの概要

◆はじめに

 今回の「赤ひげチーム医療人の育成」プログラムでは、

   ・地域支援テレビシステムによる大学病院の専門領域別の検討会への参加

   ・短期的な人的支援による研修等出席の機会を確保

   ・数ヶ月単位での医療研修の場の提供

 などの活動により、「地域医療に従事している医師に、大学病院のバックアップがあり、地域を支え

る大きな医療チームの一員であるといる意識を持ってもらう」という、ひとつの大きな目標がある。

 また、その結果として、地域医療病院の中で、医師を中心として、コメディカル、ひいては病院ス

タッフ全体が、「大きな医療チームの一員である」といる意識を持ってもらえれば、と考えている。

 これからの本プログラムの介入による効果を評価するための前情報として、地域医療を担っている

医療人の身体的、精神的な健康感や、地域医療に対する意識を測ることを目的に、新潟大学臨床研修

病院群研修プログラムで地域保健・医療研修を担当する9施設の職員を対象に、SF-36による健康関

連 QOL 調査と、地域医療に関するアンケート調査を実施した。

◆対象および方法

 対象は、地域保健・医療研修を担当する9施設(県立坂町病院、県立津川病院、県立加茂病院、県

立松代病院、県立柿崎病院、県立妙高病院、両津市民病院、厚生連栃尾郷病院、厚生連魚沼病院)の

全職員(臨時職員を含む)1,093名。各病院を通じて全職員に後記のアンケート用紙を配布し、769名(男

性162名、女性588名、無記入19名、平均年齢42.4歳)から回答を得た(回収率70.4%)。また地域医療

病院と比較する目的で、近隣の地域中核病院(新潟大学臨床研修病院群の協力型臨床研修病院)2施設

(県立六日町病院、県立十日町病院:計614名)にも同様のアンケートを配布し、408名(男性78名、女

性317名、無記入13名:平均年齢39.1歳)から回答を得た(回収率66.4%)。

 アンケートには、SF-36v2TM日本語版と、地域医療に関するオリジナル(地域医療アンケート)を用

いた。

 SF-36は、健康状態を測る質問紙として世界中で最も普及しているもので、健康状態を連続的にと

らえることが可能とされている。原版は英語であるが、各国で翻訳されて用いられており、SF-36v2

日本語版は原版との信頼性、妥当性が計量心理学的手法により証明されている。SF-36は、身体的健

康度と精神的健康度の2つのカテゴリーがあり、身体的健康度はPF(身体機能)、RP(日常役割機

能・身体)、BP(体の痛み)、GH(全体的健康感)の4つのサブスケールからなり、精神的健康度は

VT(活力)、SF(社会生活機能)、RE(日常役割機能・精神)、MH(心の健康)の4つのサブスケー

ルからなる。それぞれのサブスケールについて、日本人の国民標準値が調査、算出されており、この

国民標準値をベースにした偏差得点が得点となる。われわれはNPO健康医療評価研究機構との間で、

今回の調査のおけるSF-36v2TM日本語版の使用についてライセンス契約を締結している。

18

Page 22: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

 地域医療についてのアンケートは、職員間の協力、仕事への満足度、他職種への理解、病院の雰囲

気、地域医療への貢献、近隣の施設・高次医療機関との連携など14の質問項目について、それぞれに

rating scaleを用いて回答する形式とした。そのほかに、地域医療について自由意見の記入欄を設け

た。

 結果については、SF-36について、国民標準値との比較から考察を加えた。また、地域中核病院の結

果との間で比較検討し、統計学的考察を加えた。

 検定には対応のないt検定を用い、統計分析にはヒューリンクス社の「SYSTAT 11 Windows 日本

語版」を用いた。

◆結果および考察

<SF-36>

 地域医療病院9施設の全職種のデータでは、8つのサブスケールとも、偏差得点の平均値の50を下

回った。地域医療病院に勤める職員は、健康感が日本人の平均よりも低いということをあらわしてい

る。特に、身体的健康度よりも、精神的健康度が低い傾向がみられた。

 各サブスケールを職種別にみると、特に看護師、介護福祉士・介護員で、身体的健康度、精神的健

康度ともに低い傾向がみられた。これらの職種は、女性の割合が多い。SF-36は、同一の集団の中で

は女性のほうがスコアが低く出ることが知られている。しかし、今回は女性の国民標準値と比べて

も、これらの職種はすべてのサブスケールで低スコアであった。地域医療人の中で、特にこれらの職

種の人々により負担がかかっていることが推察される。また医師は、身体的健康度に比べて精神的健

康度の低得点が目立つ。医師には、精神的ストレスがかかっているものと思われる。

<地域医療アンケート>

 アンケートの結果からは、「1.職場でお互いに助け合い、協力し合っていますか」、「2.自分の仕事

に誇りを持っていますか」の質問項目で、比較的高いスコアであった。また、「6.職員はイキイキし

ていると思いますか」、「8.現在の仕事量は適当だと思いますか」、「11.病院全体が一丸となる雰囲気

がありますか」の質問項目で、比較的低いスコアであった。自分の仕事に対しての誇りはあるが仕事

に追われており、同じ職種内では協力し合っているが、他職種との連携は十分とはいえない、という

状況がうかがえる。

<地域医療病院と地域中核病院との比較>

 地域医療病院と地域中核病院との比較では、SF-36では、PF(身体機能)、GH(全体的健康感)の

サブスケールで地域医療病院が有意に低い傾向がみられた。地域医療病院職員のほうが、より身体的

な負担がかかっていることがうかがえる。

 地域医療に関するアンケートでは、「3.自分の仕事に満足していますか」、「6.職員はイキイキして

いると思いますか」、「7.正論を大事にする雰囲気がありますか」、「10.新しい仕事に取り組んでいこ

うという雰囲気がありますか」の各項目で、地域医療病院のほうが有意に低い傾向がみられた。また、

「9.地域医療に貢献していると思いますか」、「13.周囲の施設との連携は図られていると思います

か」の項目では、地域医療病院のほうが、有意に高い傾向がみられた。地域医療病院職員は、地域医

19

Page 23: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

療への貢献、周辺施設との連携についてはより高い意識を持っているが、仕事への満足度、職場の雰

囲気については、地域中核病院と比べると高い意識を持てずにいることがうかがえる。

◆今後の展開

 平成19年度に、上記11施設に対して同一のアンケートを施行し、今回の結果と比較検討し、今回の

「赤ひげチーム医療人の育成」プログラム介入による健康感と地域医療についての意識の変化につい

て、検証する予定である。

20

Page 24: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

21

Page 25: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

22

Page 26: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

23

Page 27: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

24

Page 28: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

25

Page 29: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

26

Page 30: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

27

Page 31: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

28

Page 32: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

29

Page 33: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

30

Page 34: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

31

A.  PF(身体機能)

B.  RP(日常役割機能・身体)

C.  BP(身体の痛み)

D.  GH(全体的健康感)

E.  VT(活力)

F.  SF(社会生活機能)

G.  RE(日常役割機能・精神)

H.  MH(心の健康)

項   目

SF-36 ▲ ▲ ▲

Total 平均値

男性 平均値

女性 平均値

標準偏差

女性男性total

標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数

9.648.95838.451.81629.449.6758A

11.346.058210.349.416211.146.8757B

10.045.75839.548.21629.946.3758C

9.246.65799.546.01629.346.5754D

9.842.958311.146.716210.243.8758E

12.044.258411.546.016111.944.7758F

11.545.557911.147.416211.445.9754G

9.943.858310.945.516210.144.2758H

全職種

0

10

20

30

40

50

60

70

A B C D E F G H (項目)

(平均値・標準偏差)

total職  種

標準偏差平均値回答数

6.652.520①医 師

9.648.1422②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

8.853.725③薬剤師

6.352.512④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

9.851.241⑤放射線技師、臨床検査技師

12.446.732⑥介護福祉士、介護員

8.651.853⑦栄養管理士、栄養士、調理師

6.252.2100⑧事 務

10.751.131⑨その他

PF(身体機能)

total職  種

標準偏差平均値回答数

10.849.120①医 師

11.844.7420②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

11.345.525③薬剤師

6.152.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

9.149.241⑤放射線技師、臨床検査技師

11.045.732⑥介護福祉士、介護員

8.950.653⑦栄養管理士、栄養士、調理師

8.850.7100⑧事 務

7.850.632⑨その他

RP(日常役割機能・身体)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

Page 35: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

32

total職  種

標準偏差平均値回答数

8.651.220①医 師

9.246.1418②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

9.049.125③薬剤師

8.547.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

10.345.141⑤放射線技師、臨床検査技師

8.943.732⑥介護福祉士、介護員

8.947.752⑦栄養管理士、栄養士、調理師

9.147.4100⑧事 務

10.148.232⑨その他

GH(全体的健康感)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

total職  種

標準偏差平均値回答数

11.446.720①医 師

9.841.6421②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

9.443.825③薬剤師

5.243.612④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

10.246.641⑤放射線技師、臨床検査技師

10.342.932⑥介護福祉士、介護員

9.050.153⑦栄養管理士、栄養士、調理師

9.347.0100⑧事 務

10.748.832⑨その他

VT(活力)

total職  種

標準偏差平均値回答数

11.843.020①医 師

12.542.6421②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

10.846.025③薬剤師

8.248.312④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

11.047.641⑤放射線技師、臨床検査技師

11.643.732⑥介護福祉士、介護員

8.949.553⑦栄養管理士、栄養士、調理師

10.647.5100⑧事 務

9.649.532⑨その他

SF(社会生活機能)

total職  種

標準偏差平均値回答数

9.150.420①医 師

10.144.9421②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

8.949.125③薬剤師

9.046.712④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

9.346.541⑤放射線技師、臨床検査技師

8.741.932⑥介護福祉士、介護員

9.249.954⑦栄養管理士、栄養士、調理師

9.649.199⑧事 務

8.249.932⑨その他

BP(身体の痛み)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

Page 36: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

33

total職  種

標準偏差平均値回答数

10.446.320①医 師

10.042.7421②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

8.744.825③薬剤師

5.241.212④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

10.746.441⑤放射線技師、臨床検査技師

10.744.732⑥介護福祉士、介護員

9.248.453⑦栄養管理士、栄養士、調理師

9.546.6100⑧事 務

10.346.632⑨その他

MH(心の健康)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

total職  種

標準偏差平均値回答数

10.446.420①医 師

11.744.6418②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

10.845.325③薬剤師

8.650.912④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

11.547.041⑤放射線技師、臨床検査技師

13.241.732⑥介護福祉士、介護員

8.752.154⑦栄養管理士、栄養士、調理師

9.848.199⑧事 務

9.946.932⑨その他

RE(日常役割機能・精神)

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ (職種)

(平均値・標準偏差)

Page 37: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

34

Total 平均値

男性 平均値

女性 平均値

標準偏差

A. 職場でお互いに助け合い、協力し合っていますか B. 自分の仕事に誇りを持っていますか C. 自分の仕事に満足していますか D. 他の職種の仕事を理解し、評価していますか E. この病院に勤めてよかったと思いますか F. 職員はイキイキしていると思いますか G. 正論を大事にする雰囲気がありますか H. 現在の仕事量は適当だと思いますか I. 地域医療に貢献していると思いますか J. 新しい仕事に取り組んでいこうという雰囲気がありますか K. 病院全体が一丸となる雰囲気がありますか L. 他部門との連携は図られていると思いますか M. 周囲の施設との連携は図られていると思いますか N. 高次医療機関との連携は図られていると思いますか

項   目

地域医療アンケート ▲ ▲ ▲

女性男性total標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数

1.34.05791.03.91611.24.0753A0.93.85771.13.61620.93.7752B0.93.25781.13.21621.03.1753C1.93.65760.93.71591.73.6748D1.13.35771.13.51621.13.3752E0.92.95781.03.01620.92.9753F0.83.15740.93.31610.93.1748G1.02.75751.03.01621.02.7750H0.93.65730.93.71600.93.6746I1.53.25720.93.31601.43.2745J0.92.85701.03.01600.92.8743K0.93.05721.03.11590.93.0744L0.83.25690.93.21600.83.2742M0.83.05691.03.11600.93.0742N

全職種

0

1

2

3

4

5

6(平均値・標準偏差)

A B C D E F G H I J K L M N (項目)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.83.620①医 師

1.34.0417②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

1.03.825③薬剤師

0.93.512④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.14.041⑤放射線技師、臨床検査技師

0.73.832⑥介護福祉士、介護員

1.04.153⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.7100⑧事 務

1.03.831⑨その他

職場でお互いに助け合い、協力し合っていますか

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.94.120①医 師

0.93.8417②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

1.13.525③薬剤師

1.03.412④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.04.041⑤放射線技師、臨床検査技師

0.93.832⑥介護福祉士、介護員

0.93.953⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.4100⑧事 務

1.13.631⑨その他

自分の仕事に誇りを持っていますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

Page 38: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

35

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.74.120①医 師

2.13.6416②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.83.725③薬剤師

0.83.612④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

0.83.741⑤放射線技師、臨床検査技師

0.73.732⑥介護福祉士、介護員

0.93.753⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.83.797⑧事 務

1.03.731⑨その他

他の職種の仕事を理解し、評価していますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.820①医 師

1.13.2416②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

1.13.325③薬剤師

1.02.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.13.541⑤放射線技師、臨床検査技師

0.83.132⑥介護福祉士、介護員

1.04.053⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.13.4100⑧事 務

0.93.732⑨その他

この病院に勤めてよかったと思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.220①医 師

0.92.8417②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.82.925③薬剤師

1.12.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

0.93.141⑤放射線技師、臨床検査技師

0.83.032⑥介護福祉士、介護員

0.93.253⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.0100⑧事 務

0.92.932⑨その他

職員はイキイキしていると思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.520①医 師

0.93.1417②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

1.03.025③薬剤師

1.02.412④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.13.341⑤放射線技師、臨床検査技師

1.03.032⑥介護福祉士、介護員

1.03.553⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.2100⑧事 務

1.03.532⑨その他

自分の仕事に満足していますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

Page 39: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

36

total職  種

標準偏差平均値回答数

1.13.120①医 師

1.02.6416②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.82.825③薬剤師

1.02.612④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.12.941⑤放射線技師、臨床検査技師

1.02.432⑥介護福祉士、介護員

0.93.452⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.099⑧事 務

0.83.132⑨その他

現在の仕事量は適当だと思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.54.120①医 師

0.93.6412②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.83.625③薬剤師

1.03.612④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

0.93.640⑤放射線技師、臨床検査技師

0.83.632⑥介護福祉士、介護員

0.83.753⑦栄養管理士、栄養士、調理師

1.03.599⑧事 務

0.93.731⑨その他

地域医療に貢献していると思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.220①医 師

0.83.1416②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.92.925③薬剤師

0.93.112④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

0.93.241⑤放射線技師、臨床検査技師

0.93.431⑥介護福祉士、介護員

0.93.352⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.298⑧事 務

0.83.232⑨その他

正論を大事にする雰囲気がありますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

1.03.320①医 師

1.63.1411②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.83.425③薬剤師

0.82.912④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.03.240⑤放射線技師、臨床検査技師

0.93.432⑥介護福祉士、介護員

0.83.553⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.399⑧事 務

0.93.331⑨その他

新しい仕事に取り組んでいこうという雰囲気がありますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

Page 40: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

37

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.420①医 師

0.93.0411②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.93.125③薬剤師

0.92.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.03.340⑤放射線技師、臨床検査技師

0.83.232⑥介護福祉士、介護員

0.93.253⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.198⑧事 務

0.93.231⑨その他

他部門との連携は図られていると思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.83.420①医 師

0.83.2409②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.93.025③薬剤師

0.93.012④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

0.93.440⑤放射線技師、臨床検査技師

0.73.232⑥介護福祉士、介護員

0.73.253⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.299⑧事 務

0.83.331⑨その他

周囲の施設との連携は図られていると思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.92.920①医 師

0.92.7410②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.92.825③薬剤師

1.02.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.02.940⑤放射線技師、臨床検査技師

0.93.032⑥介護福祉士、介護員

0.93.353⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.099⑧事 務

0.93.131⑨その他

病院全体が一丸となる雰囲気がありますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

total職  種

標準偏差平均値回答数

0.93.320①医 師

0.93.0410②看護師、準看護師、看護助手、保健師、助産師

0.93.025③薬剤師

0.92.812④理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士

1.03.240⑤放射線技師、臨床検査技師

0.62.832⑥介護福祉士、介護員

0.93.052⑦栄養管理士、栄養士、調理師

0.93.199⑧事 務

0.83.231⑨その他

高次医療機関との連携は図られていると思いますか

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

(平均値・標準偏差)

(職種)

Page 41: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

38

p-value標準偏差平均値回答数項  目

n.s.1.24.0753地域医療病院職場でお互いに助け合い、

協力し合っていますか①0.94.1405地域中核病院

n.s.0.93.7752地域医療病院自分の仕事に誇りを持って

いますか②0.93.8405地域中核病院

p<0.011.03.1753地域医療病院自分の仕事に満足していま

すか③0.93.3405地域中核病院

n.s.1.73.6748地域医療病院他の職種の仕事を理解し、

評価していますか④0.83.5404地域中核病院

n.s.1.13.3752地域医療病院この病院に勤めてよかった

と思いますか⑤1.03.3403地域中核病院

p<0.010.92.9753地域医療病院職員はイキイキしていると

思いますか⑥0.93.1403地域中核病院

p<0.050.93.1748地域医療病院正論を大事にする雰囲気が

ありますか⑦0.93.3404地域中核病院

n.s.1.02.7750地域医療病院現在の仕事量は適当だと思

いますか⑧1.02.8404地域中核病院

p<0.0010.93.6746地域医療病院地域医療に貢献していると

思いますか⑨1.03.4398地域中核病院

p<0.051.43.2745地域医療病院新しい仕事に取り組んでいこ

うという雰囲気がありますか⑩0.83.3398地域中核病院

n.s.0.92.8743地域医療病院病院全体が一丸となる雰囲

気がありますか⑪0.92.9398地域中核病院

n.s.0.93.0744地域医療病院他部門との連携は図られて

いると思いますか⑫0.83.0398地域中核病院

p<0.010.83.2742地域医療病院周囲の施設との連携は図ら

れていると思いますか⑬0.83.1398地域中核病院

n.s.0.93.0742地域医療病院高次医療機関との連携は図

られていると思いますか⑭0.83.0398地域中核病院

地域医療病院と地域中核病院_地域医療アンケート

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ (項目)

(平均値・標準偏差)

p<0.01p<0.01

p<0.05p<0.001 p<0.05

p<0.01

地域医療病院平均値    地域中核病院平均値   標準偏差

地域医療病院と地域中核病院との比較 ▲ ▲ ▲

p-value標準偏差平均値回答数項  目

p<0.059.449.6758地域医療病院

PF(身体機能)①9.750.8405地域中核病院

n.s.11.146.8757地域医療病院

RP(日常役割機能・身体)②11.547.2403地域中核病院

n.s.9.946.3758地域医療病院

BP(身体の痛み)③10.546.5405地域中核病院

p<0.019.346.5754地域医療病院

GH(全体的健康感)④9.648.1404地域中核病院

n.s.10.243.8758地域医療病院

VT(活力)⑤9.543.8404地域中核病院

n.s.11.944.7758地域医療病院

SF(社会生活機能)⑥12.444.8406地域中核病院

n.s.11.445.9754地域医療病院

RE(日常役割機能・精神)⑦10.447.0403地域中核病院

n.s.10.144.2758地域医療病院

MH(心の健康)⑧8.844.8404地域中核病院

地域医療病院と地域中核病院_SF-36

0

10

20

30

40

50

60

70

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧

p<0.05p<0.01

(項目)

(平均値・標準偏差)

地域医療病院平均値    地域中核病院平均値   標準偏差

Page 42: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

地域住民を対象とした地域医療に関するアンケートの概要

◆はじめに

 地域医療の現場において、地域住民はどの様に地域医療機関を見ているのだろうか。地域に医療機

関は必要だと皆が感じているが、そこで働く職員、あるいは医療機関に対する地域住民の視線はどの

様なものであるか、調べることとした。

◆対象および方法

 地域住民に対しては、地域保健・医療研修を担当する9施設(県立坂町病院、県立津川病院、県立加

茂病院、県立松代病院、県立柿崎病院、県立妙高病院、両津市民病院、厚生連栃尾郷病院、厚生連魚

沼病院)の外来患者を対象に、Rating Scale による地域医療に関するアンケート調査を実施した。ま

た、このRating scaleでは「とてもそう思う」を5とし、「まったくそう思わない」を1として、統計

処理を行った。つまり、数字が大きいほど「そう思う」度合いが強いこととなる。

 地域住民へのアンケート調査では、900枚のアンケート用紙を配布し、762名から回答を得た(回収

率84.7 %)。回答者の性別は、男性310名、女性450名、無記入2名で、平均年齢は61.6歳であった。

 また、地域医療病院と比較する目的で、近隣の地域中核病院(新潟大学臨床研修病院群の協力型臨

床研修病院)2施設(県立六日町病院、県立十日町病院)にも同様のアンケートを200名に配布し、

111名から回答を得た(回収率55.5%)。回答者の性別は、男性51名、女性59名、無記入1名で、平均年

齢は57.7歳であった。

 検定には対応のないt検定を用い、統計分析にはヒューリンクス社の「SYSTAT 11 Windows 日本

語版」を用いた。

◆結果および考察

 アンケート結果からは、「この病院で働く職員は大変そうである」あるいは「がんばっているなぁ

と思う」については「とてもそう思う」傾向が高かった。一方、「楽しそうである」については前二

つの設問に比し「そう思わない」傾向が強く出ていた。つまり、地域住民の視点としては、地域医療

病院の職員は、頑張って働いていて大変そうであるが、あまり楽しそうではない、ということになる。

 また、「他の病院とよく連絡が取れている」については、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」

度合いが小さかった。地域との連携においては、地域住民からはまだまだ不足している部分があるよ

うに捉えられていた。

 さらに、地域医療病院と比較するためにアンケートを実施した近隣の地域中核病院2施設と比較し

たところ、「この病院で働く職員はがんばっているなぁと思う」、「この病院で働く職員は楽しそうであ

る」、「この病院は他の病院とよく連絡が取れている」、「この病院で働く職員は頼りがいがある」、「こ

の病院で働く職員は地域のことをよく知っている」の5項目で、地域医療病院が有意に高値であった。

地域医療病院は、より地域住民から親近感、信頼感を得ていることがうかがえる。

39

Page 43: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

◆今後の展開

 当プログラムにより大学病院と地域医療病院、あるいは地域医療病院間で連携をより緊密に図るよ

う努力することが、地域医療病院勤務中の職員にも好影響を及ぼすことが示唆された。このプログラ

ムにより介入を続け、2年後にも評価をする予定である。

40

Page 44: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

41

Page 45: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

42

Page 46: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

43

① この病院で働く職員は大変そうである

② この病院で働く職員はがんばっているなぁと思う

③ この病院で働く職員は楽しそうである

④ この病院は他の病院とよく連絡が取れている

⑤ この病院で働く職員は頼りがいがある

⑥ この病院で働く職員は地域のことをよく知っている

0

100

200

300

400

500

600

700

800(平均値・標準偏差) (回答数)

項   目

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭

0

100

200

300

400

500

600

700

800(平均値・標準偏差) (回答数)

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭

0

100

200

300

400

500

600

700

800(平均値・標準偏差) (回答数)

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭

Total 平均値

男性 平均値

女性 平均値

標準偏差

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

女性男性total

標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数標準偏差平均値回答数

0.94.04470.94.03070.94.0756①

0.94.14500.84.13080.94.1760②

0.83.44210.83.42920.83.4715③

0.93.64040.83.62810.93.6686④

0.93.84190.83.82930.93.8714⑤

0.93.64140.83.62860.93.6702⑥

地域医療病院_住民

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ (項目)

(平均値・標準偏差)

p-valuetotal

標準偏差平均値回答数

n.s.0.94.0756地域医療病院住民

①1.03.8110地域中核病院住民

p<0.010.94.1760地域医療病院住民

②0.93.9110地域中核病院住民

p<0.00010.83.4715地域医療病院住民

③0.73.0109地域中核病院住民

p<0.0010.93.6686地域医療病院住民

④0.83.295地域中核病院住民

p<0.050.93.8714地域医療病院住民

⑤0.93.6106地域中核病院住民

p<0.00010.93.6702地域医療病院住民

⑥0.83.2102地域中核病院住民

地域医療病院住民と地域中核病院住民

0

1

2

3

4

5

6

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ (項目)

(平均値・標準偏差) 地域医療病院平均値    地域中核病院平均値   標準偏差 p<0.01

p<0.0001p<0.001 p<0.05

p<0.0001

Page 47: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

「学生によるワークショップ・フィールドワーク」アンケートの概要

◆はじめに

 平成18年3月13日から15日までの3日間、医学部医学科学生7名、医学部保健学科学生5名及び歯学

部口腔生命福祉学科学生6名の計18名によるワークショップとフィールドワーク(WS・FW)を実施

した。初日の学部学科を越えた学生によるワークショップ「赤ひげチーム医療」では、「心に残る学

習(絵)」によるアイスブレーキングの後、「地域医療を取り巻くもの」、「地域医療の問題点」、「赤ひ

げチーム医療に必要なもの」、「フィールドワークの目標」をテーマとしたグループワークと全体発表

を行った。2日目は季節はずれの大雪の中、午前中に全員で中越地震被災地である長岡市陽光台の山

古志仮設住宅群、山古志陽光台診療所を見学し、同地区の行政の方々、保健師、診療所の医師、看護

師から説明を受け、前日のワークショップでの疑問点などを質問した。午後は4チームに分かれ、そ

れぞれ厚生連魚沼病院、魚沼市立ゆきぐに大和病院、湯沢保健医療センター、県立松代病院で、各施

設の現状と問題点について説明を受け、その後各チームとも多少内容は異なるものの訪問診療、訪問

看護に同行した。最終日は、各チームで「フィールドワーク・ワークショップで学んだこと、感じたこ

と」を話し合い、全体での発表会と質疑応答を行うとともに、全員がレポートを作成し3日間のワー

クショップとフィールドワークを終了した(「学部学科を越えた学生によるワークショップとフィール

ドワーク報告書」参照)。

 今回のワークショップ・フィールドワーク前後で、学生の地域医療に対する意識に変化がみられる

かどうかを調査するために、アンケートを実施した。

◆対象および方法

 対象は、今回のワークショップ・フィールドワークに参加した、医学部医学科7名(男性7名)、

保健学科5名(女性5名)、歯学部口腔生命福祉学科6名(男性1名、女性5名)。

 3月13日のワークショップ開始時(プレアンケート)と3月15日のワークショップ終了時(ポスト

アンケート)に、同一の内容のアンケートを実施した。アンケートは、地域医療について特化したオ

リジナルで、地域医療、地域医療人に対するイメージ、コミュニケーション、将来の進路などについ

て、計19の質問項目からなる。それぞれ、visual analogue scale(VAS)を用いて回答する形式とし

た。各項目について、それぞれプレアンケートとポストアンケート間でWilcoxonの符号順位検定を用

いて比較検討した。統計ソフトとしてヒューリンクス社の「SYSTAT 11 Windows 日本語版」を用い

た。その他に、プレアンケートでは地域医療についての自由意見を記入式で設問した。また、ポスト

アンケートでは、今回のワークショップ、フィールドワークを友達や後輩に薦められるかについて

VAS形式で設問した。さらに、自由意見を記入式で設問した。

◆結果および考察

 各項目では、「3. 地域で働く医療人は楽しそうである」、「5. 地域医療には夢がある」の2項目で、ポ

44

Page 48: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

ストアンケートの方が、VASが有意に上昇した(表1)。また、「7. 地域医療を担うとしたら自信があ

る」、「8. 地域医療を担うには他職種との連携が大切であると思う」、「13. 将来働きたい場所は:へき

地」、「16. 将来働きたい医療機関は:小規模病院」、「17. 将来働きたい医療機関は:中規模病院」など

の項目が、ポストアンケートのほうが、VASが高値となる傾向がみられた。今回のワークショップ、

フィールドワークの経験から、以前よりも、地域医療、チーム医療への前向きな気持ち、意欲が得ら

れているのではと考えられる。

 プレアンケートの自由意見欄では、「地域医療についてあまり知らないので、今回学びたい」など

の意見があった。

 ポストアンケートでは、「今回のワークショップ・フィールドワークを友達や後輩に薦められます

か」という質問項目を設け、VAS形式で回答してもらった。結果は89.9±13.7と高得点であった。ま

た、自由意見欄では、「とても充実していて楽しかった」、「まだ進路が決まっていない段階でこのよう

な経験ができてよかった」、「次回も参加したい」、「今後も続けてほしい」、「もっと時間にゆとりがほ

しい」などの前向きな意見が多かった。

◆今後の展開

 平成18年度は、ワークショップ、フィールドワークの規模を拡大し、年4回行う予定である。

45

Page 49: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

46

Page 50: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

47

Page 51: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

48

Page 52: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

49

Page 53: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

50

p-value標準偏差平均WS・FW項    目

0.79n.s.15.774.4前

地域で働く医療人は大変である①23.972.4後

0.83n.s.16.671.9前

地域で働く人は立派である②21.374.3後

0.0098p<0.0117.263.0前

地域で働く医療人は楽しそうである③14.576.4後

0.36n.s.30.437.0前

地域で働く医療人は孤独である④28.730.0後

0.014p<0.0516.761.7前

地域医療には夢がある⑤13.477.1後

0.093n.s.15.277.2前

地域医療にはやりがいがある⑥13.784.5後

0.12n.s.21.638.9前

地域医療を担うをしたら自信がある⑦21.953.0後

0.18n.s.13.686.2前

地域医療を担うには他職種との連携が大切であると思う⑧7.592.3後

0.49n.s.25.931.4前

地域住民と話すことが苦にならない(相手を想定した場合に)⑨22.124.3後

0.38n.s.24.333.4前

患者(患者家族を含む)と話すことが苦にならない(相手を想定した場合に)⑩21.825.3後

0.59n.s.22.538.9前

行政職(福祉課長や保健師など)と話すことが苦にならない(相手を想定した場合に)⑪23.334.7後

0.95n.s.20.437.9前

へき地勤務によって、医療人の能力は低下すると思う⑫32.438.6後

0.16n.s.17.548.1前

将来働きたい場所は:へき地⑬13.759.4後

0.96n.s.20.146.9前

将来働きたい場所は:都市部⑭20.746.3後

0.28n.s.18.945.1前

将来働きたい医療機関は:診療所⑮19.050.8後

0.1n.s.19.846.8前

将来働きたい医療機関は:小規模病院⑯18.656.8後

0.076n.s.15.248.2前

将来働きたい医療機関は:中規模病院⑰19.759.1後

0.86n.s.18.150.8前

将来働きたい医療機関は:大規模病院⑱22.951.5後

0.79n.s.22.443.9前

将来働きたい医療機関は:大学病院⑲25.145.2後

13.789.9今回のワークショップ・フィールドワークを友達や後輩に薦められますか

表1.アンケート結果

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ (項目)

(平均値・標準偏差) p<0.01 p<0.05

WS・FW前平均値      WS・FW後平均値    標準偏差

Page 54: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

用 語 解 説

QOL quality of life,生活の質

有意差 統計学などで、確かに差があり、それは偶然起こったものではないといえるかどう

かを検討した結果の差。

p-value ある仮説(仮定)が正しいとした場合に、実際に得られたデータが仮説に反するよ

うなデータであったときに、そのデータが出現する確率

VAS visual analogue scale

もともとは、疼痛の度合いを測るために作られたスケールで、長さ100mmの線上

で、左端は、無痛“no pain”、右端はこれまで感じた最悪の痛み“the worst pain I

ever felt”と説明して、現在感じる痛みの程度を被検者に鉛筆(など)で示しても

らう。

示された点までの長さ(mm)が、得点となる。

これを5段階など、段階に分けて得点化したのがrating scaleである。

今回のように、疼痛以外の度合いを測るスケールとしても用いられている。

偏差得点 いわゆる「偏差値」を得点としたもの。

偏差値とは、平均が50点、標準偏差が10点となるように換算したもの。

標準偏差 分散あるいは不偏分散の平方根である。平均値と同じ次元を持つ。

t検定 仮説が正しいと仮定した場合に、統計量がt分布に従うことを利用する統計学的検

定法の総称である。

Wilcoxonの符号付順位和検定

対応のない2群のデータ間で、データが、正規分布に従わなかったり、標本数が少

ない時に用いるノンパラメトリック検定のひとつ。

51

Page 55: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」

編 集 後 記

 今回の「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」プログラムにおいて、平成17年度はその初年

度にあたりますが、プログラムの前調査として、平成17年12月の発足式以来、平成18年3月の年度末

までに、学部教育、卒後臨床研修、卒後臨床研修修了後の地域医療人の育成・支援の3つの柱につい

て、それぞれアンケート調査を行いました。

 その結果を、今回、この報告書にまとめましたが、こうして振り返ると、これだけの期間でよくこ

こまで集められたな、と思わずにはいられません。

 これは、なんと言いましても、今回の一連のアンケートにお答えいただいた、ワークショップ・

フィールドワークに参加していただいた学生の皆様、医学部医学科6年生の皆様、研修医の皆様、地

域医療病院・地域中核病院の職員の皆様、そして、地域医療病院・地域中核病院の地域住民の皆様の

御協力の賜物です。本当にありがとうございました。

 地域医療に関して、これだけの量と質のデータを扱う機会を得たことは、本当に貴重なことと思い

ます。今回のアンケート結果については、まだ前調査の段階ですが、すでに御報告させていただいた

とおり、いくつかの興味ある結果を得ることができました。

 

 平成19年度には、今回と同様のアンケート調査を用いて、今回の「赤ひげチーム医療人の育成」プ

ログラムを進めた上での評価をさせていただきたいと考えております。その節は、また、どうぞよろ

しくお願いします。

「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」プログラム

評価ワーキンググループ

鈴木 榮一 長谷川隆志 赤澤 宏平

染矢 俊幸 高橋  姿 村松 芳幸

大内 章嗣 二瓶 惠子

新潟大学医歯学総合病院 地域医療教育支援コアステーション

井口清太郎 藤澤 純一 太田 求磨

52

Page 56: は じ め には じ め に 新潟大学医歯学総合病院が、平成17年度に文部科学省が新規に募集した「地域医療等社会的ニーズ に対応した医療人教育支援プログラム」に採択された「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」