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PHANTASY STAR ARKS

魔法少女ままあみセタ ダ でPHANTASY STAR ARKSで

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魔法少女リリカルなのは ~PHANTASY STAR

ARKS~

名も無いアークス

【注意事項】

 このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので

す。

 小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を

超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。

  【あらすじ】

 タイトルから分かる通り、リリカルなのは×PSO2のコラボです。

 内容的にはリリカルなのはの物語にPSO2の主人公を介入させてたら面白そうだ

と思ったネタ作品です。

 そのため、ご都合主義の部分があるのですが多少目を瞑って頂けると幸いです。

 ネタバレと言う程程ではないですが、一応作品中に出てくる主人公はEP1〜3を経

験している前提の強さを基準にしています。

 しかし、フォトン≠魔力の扱いなのでその辺りは認識はご了承下さい。(PSO2の

世界設定や単語を使うため、出来るだけ知らなくても分かりやすく書いていきたいと思

いますがどちらも知っているとより楽しめると思います。)

 最後に投稿者の筆記能力は低いため、誤字脱字等あると思いますが教えて頂いたり、

暖かい目で脳内変換して下さると大変嬉しく思います。

 拙い作品ですが、少しでも楽しんで下さい。

 更新ペースはかなりゆっくりなので、気長にお待ち下さい。

  目   次  

───────

魔法と絆の交わり 

1

魔法と絆の交わり

  無限に広がるこの宇宙の何処か……銀河系のとある場所に一際大きな輝きを放ち、暖

かな光を持つ超巨大装置のような物体がゆっくりと宇宙を移動していた。そして周り

には、それより小さいが数百万の生物が生活する上で十分な大きさと生活スペースが確

保出来ているほど大きな船団が、数多くその周囲を飛行している。

 そして、その船団に住む人々はその船を『オラクル』と呼び、そして又……その巨大

装置を『マザーシップ』と称した。

『オラクル』の目的はただ一つ。全宇宙を闇に包み込もうとする『深遠なる闇』という存

在から、宇宙を守ることである。

 絶対的敵性存在である『深遠なる闇』に対抗するために『オラクル』内で組織された

部隊、『アークス』は存在する。

『アークス』は『深遠なる闇』の力を浄化出来る『フォトン』という力を扱える存在。『深

遠なる闇』が生み出す『ダーカー』という力を分散させた物を殲滅しうる、唯一の存在

だ。

 そのため、アークスは各惑星を巡り、ダーカーの影響を調査し…その存在が認められ

1 魔法と絆の交わり

れば、即座に殲滅する。

 それが、アークスの任務である。

 オラクルは、全体的な能力のバランスに優れ、環境への適応能力が高い種族。身体の

強さとフォトンへの適応力の釣り合いが取れておりあらゆるクラスに適応することが

可能で、安定性に優れている『ヒューマン』。

 フォトンの扱いに長けており、その使役、適応に才を見せる種族。ことフォトンの扱

いにおいては、どの種族よりも繊細で丁寧であり非力な身体をフォトンの使役により強

化し、補っており、特徴的な尖った耳を持つ『ニューマン』。

 機械によって構成された屈強な肉体を持ち、継戦性に優れた種族。人工的な身体であ

るため、若干フォトンの扱いを苦手としているがそれを補って余りあるほどの精緻かつ

強固な身体をウリとしている『キャスト』。

 額の角とオッドアイが特徴的な種族。攻撃的なフォトンの扱いに長けているが、その

性質のフォトンのためか自らの生命力が他の種族の中でも低い。しかしそれに有り余

る攻撃性は全種族でも随一である『デューマン』という四種族が互いに認め合い集結し、

『深遠なる闇』と戦い続けている。

 終わり無き戦い……しかし彼らはけして挫けず、未来の希望のために戦い続けてい

た。

2

 そして、今ここに……新たなる歴史が生み出されようとしていた。

 〜オラクル船団内部〜

 船団の中でも重要エリアに分担され、限られた者しか踏み入る事が出来ない船の中枢

部『艦橋(かんきょう)』。

 数ある船団のシップの中の1つに全ての船団を管理する存在がいた。

 その者の名は『シエラ』。キャストである彼女は、シップの管理兼とある役職『 守護

輝士(ガーディアン)』の専属オペレーターもこなす……万能キャストである。

 一般のアークスは通常任務を行う際は自らの実力に合っているかを理解し、任務を管

理するオペレーターから承認を受けて初めてキャンプシップ(小型宇宙船)に乗り込み

各惑星へと旅立てる。

『守護輝士』という役職は、これまでオラクルに対して多大なる貢献し、信用するに値す

ると認められた者にのみ与えられる特別な役職である。

 ならその役職にしか与えられない特権とは……

『特定の部署に所属することなく、自分の意思で行動を決める事が出来る。』

 つまり、自らの意思でどんな場所だろうと任意で出撃する事が認められていること。

それは他のアークスに認められ、絶対的信頼を寄せられているアークスだからこその役

職なのだ。

3 魔法と絆の交わり

 艦橋の中、中央部分にある浮遊した椅子に腰掛け制御しているシエラ。お気に入りの

メガネを掛け、管理に勤しんでいた。

 無数のパネルがシエラの目の前で展開され、彼女の出すパネルの音以外響かない静か

な中、無数にあるゲートエリアに繋がる大きな扉が開いた。

 この中枢部に入られるのはごく一部しか入れない場所であり、普段は滅多に誰も来な

い所だ。しかし、最近はここに良く来る人物がいる。コールドスリープからつい最近解

凍された、かの有名な守護輝士の一人である。

 その音にシエラは反応し、目の前にある管理を最低限まで終わらそうと先程よりも手

の動きを早めた。

 後ろからゆっくりと近付く足音。しかしシエラは慌てず、最低限の管理を終えてゆっ

くりと椅子ごと後ろを向いた。

 丁度その足音は自分の前の近くに止まり、ゆっくりと顔を上げてその人の顔を確認し

た。シエラは自分の予想通りの人であったのを確認して口を開いた。いつもの溢れる

笑顔で……

「こんにちは!」

  〜地球(とある地方)〜

4

 ここは海鳴(うみなり)市。海が隣接しており、緑豊かな街。

 そんな何処にでもある街に一際不可思議な現象が起こっていた。

 空は茜色……いや、紅く染まっており、深い林の中で一人の少年と黒く赤い瞳が不気

味で原型を留めていないような物体相対していた。

 その状況は圧倒的に少年が不利であった。独特の服装をしている少年は、身体から

所々に血が出ており息も絶え絶えの状態だ。

 化け物の気配を察知した途端、ポケットから取り出した赤い玉を持ち前へと突き出し

た。その途端、赤い玉が光り輝きそれを中心に緑色の魔法陣が空中に描かれた。

 それに察知した瞬間、尋常ではない速度で少年に近付いてきた。ただの少年ならその

場で逃げ出すに違いない。しかし、その少年は脚が動かないのか。それとも最後のチャ

ンスだと言わんばかりに、口を開いた。

「絶えなる息吹、光となれっ!許されざるものを、封印の輪にっ!」

 化け物が大きく飛び上がり、少年に襲い掛かる瞬間。

「ジュエルシード!封印っ!!」

 呪文を唱える方が早く、化け物は魔法陣に直撃した。

 しかし……一つの触手が魔法陣の間を通り少年の脇腹を突き刺さった。だが化け物

の身体自体は魔法陣に触れていたため一部を撒き散らしながら吹き飛び、完全には倒し

5 魔法と絆の交わり

きれておらず傷を負いながら化け物はその場から逃げてしまった。

 少年は追撃する力もなく、横腹の激痛に唸らせながらその場で崩れ落ちそうになる身

体を手で地面を押さえた。

「逃がしちゃ…た。追い掛けなく…ちゃ…」

 遂に限界が来たのかその場で倒れてしまう。

「(どうか…僕の声を聞いて…力を貸してっ!魔法の…力を…)」

 その言葉を紡ぎ終えた瞬間、少年の身体が光り輝き動物の姿となった。先程の少年が

持っていた赤い玉が近くに転がりながら……

 〜艦橋内部〜

 艦橋内ではシエラと先程入ってきたアークスがいた。楽しそうに話をしている様子

だ。

「さて、談笑もこの辺りにしておかないと私がマトイさんに怒られそうですね。」

 シエラが笑いながらそういうともう一人はシエラとは違い苦笑いをしていた。

「さてっ!今回の任務はこの前の続きで『地球』での探索でいいんですね?」

 先程の楽しそうな声とは違う、仕事の声色をしていた。そして対する人物も頷いた。

 惑星『地球』は最近発見された新たな惑星であり、未だに未知数の場所であるためま

だまだ謎が多く一般なアークスでは現段階で任務以外では行けないようになっていた。

6

 そして、その『地球』を偶然見つけた守護輝士は単身未知の惑星について調査に勤し

んでいた。

 普段から何度も調査に赴いた成果か、初めの内よりも座標が安定し想定通りの所に着

けるようになり始めていた。

「座標惑星『地球』。アークスシップ転移完了。偽装隠蔽シーケンス……終了。いつでも

行けますよっ!」

 シエラの言葉と共に守護輝士の周りに移動シーケンスが発動された。その瞬間……

「(どうか…僕の声を聞いて…力を貸してっ!)」

「「っ!?」」

 守護輝士の頭に響いた声…それと同時に発令した警告音。

「座標指定強制変更っ!キャンプシップでの転移が身体強制転移にっ!?一体何がっ!」

 先程の表情とは違う緊迫の状態で彼女が生まれたこの2年の間にこれ程のエラーに

直面するのは初めてだった。このオラクルは演算の海である『マザーシップ』が存在す

る。『マザーシップ』とは、この宇宙の法則を全て識っていると言っても過言ではない存

在。

 そんなバックアップがあるオラクルがトラブルを起こるわけがなく、もしあるのだと

すれば……外部からの強力な力のみ。

7 魔法と絆の交わり

 現状において、最大限の対処法をしているにも関わらず全く転移を停止する事が出来

ていない状況に自らの未熟さを呪いながらも手を止めず、口を開いた。

「今の私の力ではこの転移を止められませんっ!座標は地球になっているため恐らくそ

う時間は掛からずに貴方を見つけられると思います。現地でどんな状況なのかは不明

ですので、到着時どんな危険があるのか判明出来ないため、覚悟しておいて下さいっ!」

 私がこの人に掛けられる言葉。この人は数々のアークス危機をこれまで何度も救っ

てきてくれた英雄。そんな人に掛けるなんておこがまし話かもしれない。いや、それが

この人の専属オペレーターを任されている私の勤めであり義務。

 ううん…それとはまた別…この人がコールドスリープから開放されてから短い時し

か過ごしていないけれど、私の事をいつも気に掛けてくれるこの人を…失望させたくな

い!

 そんな思いを託し、一瞬その人を振り向いた。丁度その時、彼と目が合った。今の貴

方の目には私はどう映っているのだろう。今の状態に恐怖しているのか、あるいは絶望

しているのか…

 けれど、この人はしっかりと私の目を見て頷いてくれた。ただそれだけ…けれど、私

にとっては大きな力をくれる。この人なら大丈夫。他の誰でもなく、この人だから信じ

られる。だから私はいつも通りに見送るだけ。

8

「お気を付けてっ!」

 その瞬間転移シーケンスが強制発動し、あの人は地球に飛んだ。同時にあのけたたま

しい警告音も止まり、先程の忙しさが嘘のように一瞬思えた。

 呼吸を整え、即座にシップに異常がないかを確認した。

「(空気も正常…乗員のバイタルも正常値に移行確認。全オペレーターに異常なしと報

告…ウルク司令官にこの事を報告しないとっ!)」

 通信を極秘コードに切り替え、ウルク司令官直通通信に繋いだ。

「シエラっ!一体何が会ったのっ!?」

 尋常でない状況にウルク司令官の声はいつもより余裕がない。ことの事実を語るべ

く、ゆっくりと口を開きながらこの後の行動を考えていた。

「(待っていてくださいね…すぐに見つけますからっ!)」

 〜地球(とある家)〜

 一件の家から携帯のアラームが部屋の中で響いている。自分で付けたはずのアラー

ムを鬱陶しそうに止めようとするも指先が触れ、ベットの下に落ちた。何とかアラーム

を止めて、布団から身体を起こした。

「ふぁ〜。何か、変な夢見ちゃった…」

「(私、高町なのは。私立聖祥大付属小学校に通う、小学3年生!)」

9 魔法と絆の交わり

「(ここ高町家においては、3人兄妹の末っ子さんです 。)」

 制服に身を包み包んで鏡を見ながら髪型をセットし、自慢の髪をツインテールに纏め

る。そのままリビングに行くと朝食を作る女性と、イスに腰掛け朝刊を読んでいる男性

がいた。

「おはよー」

「あっ、なのはおはよう。」

「おはよう、はのは。」

 なのははそのまま女性の所に行き、朝食の手伝いを貰いに来た。

「はい、これお願いね。」

「はーい。」

 飲み物が入れられているコップをお盆に乗せられて渡された。

「(この2人が、私のお父さんとお母さん!)」

「ちゃんと1人で起きられたな〜。偉いぞ〜」

 そう言って男性はなのはが持ってきたお盆から自分のコップを取った。

「(こちら、お父さんの高町士郎さん。駅前の喫茶店『翠屋』のマスターさんで、一家の

大黒柱さん!)」

「朝ごはん、もうすぐ出来るからね?」

10

 女性がなのはと士郎に向かってそう言った。

「(そして、お母さんの高町桃子さん。喫茶翠屋のお菓子職人さん。綺麗で優しい、なの

はの大好きなお母さん!)」

「(因みに、翠屋は駅前商店街にあるケーキとシュークリーム。自家焙煎コーヒーが自慢

の喫茶店。学校帰りの女の子や、近所の奥様に人気のお店なの!)」

 ふと、なのはが家族全員が揃っていないことに気付いた。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」

「ああ、道場にいるんじゃないか?」

 士郎が思い出した様になのはに言った。

 なのははこの9年間で見慣れた道場を覗くと、稽古をしている自分の兄と姉がいるの

を確認し、顔を出した。どうやらまだ姉の稽古をしていたらしい。

「お兄ちゃんお姉ちゃんおはよ〜!朝ごはんだよ〜!」

「おはよ」

「あっ、なのは。おはよう」

 まだ稽古をしているんじゃないかと予想していたなのはは、持っていたタオルをその

まま姉に渡した。

「はい!」 「ありがとう」

11 魔法と絆の交わり

「(この2人が、私のお兄ちゃんとお姉ちゃん!)」

「じゃあ美由希、今朝はここまで。」

「(お兄ちゃんの高町恭也さんは、大学一年生!お父さん直伝の剣術家で、お姉ちゃんの

お師匠様!)」

 充分に汗を拭いてから姉は笑みを見せた。

「はい、じゃあ続きは学校から帰ってからね?」

「(そして、お姉ちゃん。高町美由希さんは高校2年生!)」

 2人は先に着替えてくると言い、なのはは先にリビングに着いた。既にテーブルには

美味しそうなご馳走が朝から並んでいて、内心兄達が早く来ないかとなのはは待ち侘び

ていた。数分すると兄達がリビングに来て朝食始まった。

『いただきます〜』

「ん〜!今朝も美味しいな〜。特にこの、スクランブルエッグが。」

「ほんと〜!トッピングがトマトとチーズと、それにバジルが隠し味なの〜」

「ふふっ、皆あれだぞ?こんな料理上手なお母さんを持って幸せなんだから分かってん

のか〜」

 2人の新婚夫婦気分に当てられているのか、食卓に甘い雰囲気が漂っていた。しか

し、子どもたちはいつも通りと言わんばかり普通に対応していた。

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「分かってるよ。ねぇ、なのは?」

「うん!」

 身内から見てもそう思えるが、この夫婦なら傍から見てもそう見えてしまうだろう。

「もう、やだ貴方ったら〜」

「ん〜?あはは!」

「(高町家の両親は未だ新婚気分バリバリです!)」

 士郎はもたれ掛かる桃子を見て、照れくさいのか2人で笑いあっている。

「美由希、リボンが曲がってる。」

「えっ?ほんと?」

「ほら、貸してみろ?」

 恭也は美由希が黄色い大きなリボンを直そうとしているのを止め、綺麗に直してい

た。

「にゃはは…(お兄ちゃんとお姉ちゃんもとっても仲良しで…愛されてる自覚はとって

もありますが、この一家の中ではなのはは微妙に浮いているかもしれません。)」

  いつも通りの時間に送迎バスが来た。なのはの家からは少し遠いため送迎バスでも

無いとなのはの足ではすこし遅れてしまう。

13 魔法と絆の交わり

「おはようございま〜す」

 バスに乗車しながらいつもの運転手さんに挨拶をした。

「なのはちゃ〜ん」

 なのはは、バスの最後尾座席からほんわかした聞き覚えのある声を聞いた。そちらを

見ると、見慣れた2人の女の子がいた。

「すずかちゃん、アリサちゃん。」

「おはよう!」

「おはようなのはちゃん」

「うん、おはよう」

 アリサが横に移動したお陰で、なのははすずかとアリサの間に座った。

「(アリサ・バニングスちゃんと、月村すずかちゃんの2人とは1年生のクラスから同じ

クラス。今年からは同じ塾にも通ってるの!)」

  〜学校〜

「この前皆に調べてもらった通り、この街にも沢山のお店がありましたね。そこで働く

人たちの様子や工夫を実際に見て聞いて、大変勉強になったと思います!」

 学校での街中調査でのまとめを行っていたなのはのクラスは、『お店で働く人』をテー

14

マに体験学習をしていた。

「このように色々な場所で、色々な仕事があるわけですが、皆は将来どんなお仕事に就き

たいですか?」

「今から考えて見るのもいいかも知れませんね?」

 夢のある子どもたちにとって沢山の夢があるのか、何人もの生徒が考えたような表情

を見せていた。それはなのはも例外ではなかった。

  昼食時、今日は天気も良いということでなのはたち3人は屋上にあるベンチに座って

お弁当を食べていた。なのはというと桃子が作ってくれた海苔の鉢巻をしたタコさん

ウインナーを齧り付いていた。

「将来か〜。アリサちゃんとすずかちゃんは、もう結構決まってるんだよね?」

「うちはお父さんとお母さんも会社経営だし、一杯勉強してちゃんと跡を継がなきゃ…

くらいだけど?」

「私は機械系が好きだから、工学系で専門職がいいなと思ってるけど…」

 自分の友たちがあやふやながら進みたい道をある程度決めている事実に、なのはは少

しの不安を覚えた。

「そっか〜2人とも凄いよね〜」

15 魔法と絆の交わり

「でも、なのはは喫茶翠屋の2代目じゃないの?」

 アリサはさもそう思っていたようになのはに聞いていた。しかし、なのははしっかり

とした肯定ができずにいた。

「うん…それも将来のビジョンの一つではあるんだけど、やりたいことは何があるよう

な気がするんだけど…まだそれが何なのかはっきり理解しないんだ。」

 自分のあやふやさに少し負い目を感じてか下を向いてしまう。

「私、特技も取り柄も何も無いし…」

 謙遜を負っているなのはに突然の言葉が来た。

「バカちんっ!」

 なのはは自分の左頬に冷たさを感じた。それはアリサのお弁当のカラアゲにかける

べきはずのレモンの輪切れだった。

「自分からそういうんじゃないのっ!」

 アリサが思わず立ち上がりなのはに向かって投げ掛けた。

「そ、そうだよ。なのはちゃんにしか出来ない事、きっとあるよ!」

 すすがもいつもより少し強めの声でなのはに声をかけていた。アリサはというとそ

こから更に追い打ちをかけた。

「大体理数の成績は、この私より良いじゃないの!それで取り柄がないとは、どの口が言

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う訳!えぇ〜!!」

 そう言って、なのはの口の両端を持ちグニグニと引っ張っていた。

「だってなのは文系苦手だし、体育も苦手だし〜」

 目に涙を浮かべながら苦しそうだが、先程の落ち込んでいた表情が出ることはなかっ

た。

  学校も終わり、3人は塾に向かう途中の公園を歩いている最中である。

「今日のすずか、ドッチボール凄かったよね〜!」

「うん!カッコよかったよね〜!」

「そんなことないよ〜」 

 学校でのすずかの武勇伝を喜んでいる途中、吠えて来た犬に向かってアリサが『be

 quiet!』と叫んだのは気にしないでおこう。彼女の淑女的立場に関わる。

 なのはとすずかはアリサから塾に早く着く近道を教えて貰った。薄暗い林の中を見

て不安になった2人だったが、半信半疑ながらもアリサに着いていった。

 3人で林の中を歩いていると、なのはが夢に出てきた内容を思い出し自然と足が止

まった。

「ここ、昨夜夢で見た場所?」

17 魔法と絆の交わり

「なのは?」

「どうしたの、なのはちゃん?」

 急に止まったなのはを不思議に思い、すずかとアリサが声をかけた。

「ううん!何でもない!ごめんごめん。」

「大丈夫?」

「うん!」

 2人に心配をかけまいとすぐに頭で考えていた事を忘れて2人の後に着いていった

が、どうにも不思議な違和感が消えなかった。

 また暫く歩いていると、急になのはの頭の中で誰かの声が聞こえた。

「(助けて…)」

 明らかにハッキリとした声で……

「なのは?」

「今、何か聞こえなかった?」

「何か?」

「何か、声みたいな」

 自分だけにしか今の声が聞こえなかったことに不思議に思いながらも2人に聞いて

みた。

18

「別に?」

「聞こえなかったよ?」

 確かに聞こえた、助けを求めてた声。どうしても先程の声が空耳じゃないと感じたな

のはは、もう一度声を聞こうと何度も周りを見渡しながら耳を澄ませた。

 すると…

「(助けて!)」

 さっきより明らかに聞こえてきた声。なのはは無意識にその声の方に走った。

「「なのは(ちゃん)!?」」

 アリサとすずかもなのはの慌てた様子を見て、後を付いていく。

 なのはが無我夢中で声が聞こえた方に走っていくと、1匹のフェレットが傷だらけ

で、周りの地面に血が付いてぐったりと倒れていた。

 それを見たショックで身体を少しふらつかせたが、フェレットを抱えて出血場所を確

認しようとした。しかし、フェレットからは周りの地面には血が付着しているのにも関

わらず出血しているような傷は何処にも見当たらず、体毛にすら血は付着していなかっ

た。

 不思議に思いながらも、アリサとすずかに此処を見せるのも酷だと思いすぐさま走っ

てきた方向に歩いた。暫らくすると2人と合流し、傷だらけのフェレットに驚きつつも

19 魔法と絆の交わり

近くの動物病院に連れて行くことになった。

  3人で動物病院に連れて行き、獣医に見てもらっている間待合室で待機していた。

 暫らくすると獣医が出てきた。

「傷はそんなに深くないけど、随分衰弱しているみたいね。きっと、ずっとひとりぼっち

だったんじゃないかな?」

 あのフェレットが死んでいないようで、安心した3人は一先ずホットした。

『院長先生、ありがとうございます!』

「いいえ、どういたしまして!」

 無闇にフェレットを触らない条件で3人はフェレットの様子を見せてくれることに

なった。

「先生、これってフェレットですよね?誰かのペット何でしょうか?」

「フェレット…なのかな?変わった種類だけど…それに、この首輪に付いてるのは宝石

なのかな?」

 院長先生が触ろうとするとそれに気付いたのか、それとも丁度目が覚めたのか。すっ

と顔を上げた。

 クルクルと近くにいる人を見渡していると、その瞳はなのはに止まった。固まってい

20

るなのはにアリサは声をかけた。

「なのは、見られてる。」

「えっ!?あっ、うん…えっと、えっと…」

 戸惑いながらも、ゆっくりと指先をフェレットの顔に近付ける。すると、指先を小さ

く一舐めした。その後、すぐにフェレットは寝てしまったので暫くの間、動物病院で預

かってもらうことになった。

 そのまま、塾に行った3人は勉強ではなくあのフェレットをどうしようかという問題

に悩まされていた。

 当然先生にバレればお叱りを受ける為、3人並んでノートに書いて情報交換をしてい

た。

 アリサの家には庭にも部屋にも沢山の犬がいるため飼えず、すすがの家も猫大家族が

いる程飼っている。残っているのはなのはだけだが、自営業で喫茶店を扱っているため

ペットを飼うには難しいと考えていた。

 しかし、聞かずに無理というのも嫌だということで一度家族に相談してみる事にし

た。

 その夜家族全員が揃っている夕食前に、今日のフェレットについて話していた。

「う〜ん、フェレットか…」

21 魔法と絆の交わり

「うん…」

「所で、何だ?フェレットって?」

 その瞬間、なのはは肩の力がガクッと下がったのを子どもながらに感じていた。

「イタチの仲間だよ、父さん。」

「大分前から、ペットとして人気の動物なんだよ?」

 なのはの兄達からフェレットの話を聞いてもどうやらピンと来てないらしい。する

と、料理が完成したのか桃子が席に着いた。

「フェレットって、ちっちゃいのよね?」

「う〜んと、これぐらい」

 実際見たフェレットの大きさを思い浮かべながら手で表していた。

「暫く預かるだけなら、籠に入れておけてなのはがちゃんとお世話出来るんならいいか

も。恭也、美由希、どう?」

「俺は異存ないけど。」

「私も!」

 母の言葉に兄達も乗ってくれたようだ。その事を知って、なのはの顔が綻んだ。

「だそうだよ?」

「良かったわね?」

22

「…うんっ!ありがとうっ!」

 なのははまた一つ、家族の暖かさに触れたように感じた。

 なのはは就寝前にアリサたちに今日の夕食前のメールで送り、家で預かれることに

なったと伝えた 。

 丁度眠ろうとした途端、夕方あの公園で感じたような不思議な声が聞こえた。

「(聞こえますか…僕の声が…聞こえますか!)」

 その時に、やっと確信を持った。

「あっ、昨夜の声と昼間の声と同じ声…」

「(聞いてください…僕の声が聞こえている貴方。僕に少しだけ、力を貸してくださいっ

!)」

「(お願い…僕の所へっ!時間が…危険が…もうっ!)」

 その直後、先程の声は聞こえなくなり身体がよろけてベットに倒れてしまった。

 もしかすると、あのフェレットが助けを求めてるんじゃないかと思ったなのははすぐ

さま着替えて動物病院に向かった。

 〜海鳴市周辺〜

 時同じく、夜の明かりが街を照らしている中。少し離れた路地裏にとある人物がい

た。かの緊急状態から地球に到着した守護輝士だ。

23 魔法と絆の交わり

 地球の時刻では、昼間に地を着いたのだが一刻経ってもシエラからの連絡が取れず受

信もしないため先に調査を勧めていた。その調査で新しく分かったのが、今まで調査し

ていた調査とはまた違った土地であると把握した。 

 そして、1番の疑問…この街には『幻想種』が存在していないことだった。それどこ

ろか原人民が何の驚異も無く街中を歩いていたため、その生活風景等を調査していた。

 ある程度の人柄や、彼らと対話をすると様々な情報を手に入れた。まず、この土地は

『海鳴』という名であること。エーテルの存在を知らない。と様々な矛盾が起こってい

るのを確認出来た。

 あまりにも想定外であり、未知の惑星だからこその異常事態への対応をシエラとの通

信が取れてから調査を再開しようと一息つこうとした時、あの声が頭の中に響いた。

「(誰かっ…早くっ!)」

 あの時に聞こえた声の者と同じだと考え、自分に聞こえたあの助けを呼ぶ声の主が焦

りを感じているのだと知り走り出した。アークスがこの地球に来てから、ある一定の速

度から起こる超常現象を起こして。

 通常のダッシュより二段階、速度を上げる。『ソニックラン』

 それは、鍛え上げられた肉体と如何なる惑星に対しても適応するアークスだからこそ

行える超人の領域。

24

 先程までいた守護輝士の場所には僅かな砂埃と、コンクリートでありながら靴底の跡

だけがくっきりと残っているだけだった。

 一人の少女が、平穏な日常から非日常に変わる足跡が徐々に近付きながら…

25 魔法と絆の交わり