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ISO 9000/IATF 16949マネジメント システムと設計のしくみ設計品質作り込みのしくみ顧客要求を漏れなく設計に反映させるには市場における想定外のトラブルを未然に 防止するには
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●2●3●4
第2章
設計のしくみ確立と設計品質作り込み法
14 機 械 設 計
1.�ISO�9000/IATF�16949 マネジメントシステムと設計のしくみ
ISO 9000などのマネジメントシステムでは,設計のしくみについてどのように規定しているでしょうか。ISO 9000 の 2015 年版と,自動車関係の品質マネジメントシステムである IATF 16949(TS
16949)について設計に関する要求事項を整理してみます。
(1)ISO 9000:2015 ISO 9000 の 2015 年版では,設計に関する要求事項として以下の項目が規定されています。
設計・開発の計画 設計・開発のインプット 設計・開発の管理
設計・開発のアウトプットおよび設計・開発の変更
設計・開発のレビュー,検証,妥当性確認
ものづくりの源流である設計・開発工程は,製品品質の大部分を決定づける重要な工程である,という考えから,品質管理のポイントとして,①インプットで押さえる,②アウトプットで押さえる,③レビュー,検証,妥当性確認の3 段階の確認活動で押さえるという構成を取っています。 言い換えれば,設計・開発工程を,入口と出口と確認活動の規定に絞り,品質を確保すると同時に新しい発想を制約しないという姿勢が貫かれています(図2―1)。
(章のねらい)
この章では,設計のしくみに焦点を当てて解説します。
一般的にしくみとは,①組織 ②制度 ③プロセス ④コンピュータシステムな
どを指します。
しくみ化とは,処理をコンピュータ化する意味だけではなく,決められた通り,
仕事の流れ(プロセス)が守られるように,全体を整えることです。そうすること
によって,いつ,誰が,何度やったとしても,良い成果が出せるようになります。
特に,設計の仕事の進め方は「人に依存」します。効率の良い仕事の進め方をす
る人もいれば,遅い人もいます。また間違いが多い人もいます。
設計業務をしくみ化するというのは,設計者の仕事の進め方を,なるべく「一番
仕事ができる人」に合せるという意味にも捉えられます。仕事の進め方で属人的な
やり方を極力廃し,決められた仕事の流れを前提に,うまく流れるように設計手順
を決め,適切な手法やツールを導入します。
各企業がどのようなしくみを作るかは,その目的によって違ってきます。目指す
ものが不明確なままで,システム化しようとしたり,手法の導入だけを目的とした
りしたしくみでは期待した効果は得られません。
では,設計のしくみの「目指すもの」とは何でしょうか?
この章では,設計のしくみの目的と構成について解説します。
15第 62 巻 第 4 号(2018 年 3 月臨時増刊号)
第2章 設計のしくみ確立と設計品質作り込み法
図2―1 ISO 9000設計プロセス
デザインレビュー
顧客のニーズ・期待
設計開発インプット
設計開発プロセス
検証
妥当性確認
設計開発アウトプット
成果品またはサービス
ISO 9000:2015設計品質の押さえどころは ①設計開発インプット ②設計開発アウトプット ③デザインレビュー/検証/妥当性確認
図2―2 APQPフロー
フェーズ 1
フェーズ 2
フェーズ 3
フェーズ 4
フェーズ 5
IATF 16949が要求している製品実現プロセス:APQP(Advancet Product Quality Planning)
APQPは新製品開発を5つのフェーズに分類
計画
製品の設計開発
工程の設計開発
製品と工程の妥当性確認
量産
フィードバック評価および是正処置
IATF 16949が要求している設計プロセス
APQP計画
製品設計・開発
製造設計・開発
インプット■対象範囲の明確化(顧客,製品)■顧客要求■市場調査■社内品質保証に関するデータ■製品と工程の条件■製品信頼性調査
アウトプット⇒インプット■顧客要求事項■製品の機能・性能 ・品質・信頼性の到達目標■材料,部品リスト■適用予定工程フローチャート■特殊特性計画(製品,製造工程)■新製品品質計画書(APQP計画書)
アウトプット⇒インプット■設計FMEA■製造および組立設計■設計検証および審査結果■製品および材料仕様書■図面■新治工具,新設備に関する条件■製品,工程の特殊特性■試作コントロールプラン■検査,測定装置に関する条件■製品実現の可能性検討結果
アウトプット■製品,工程品質システム確認■製造工程プロセスフロー図■製造工程レイアウト図■工程FMEA■量産試作コントロールプラン■作業,工程指示書■測定システム解析(MSA)計画書■工程能力(Cpk)調査・分析計画書
16 機 械 設 計
(2)IATF 16949(TS 16949)の要求事項 2016 年 10 月,ISO 9000:2015 を基準とした自動車産業向け品質マネジメントシステム規格として,IATF 16949が発行されました。これは,従来の ISO/TS 16949 に代わる,自動車産業の品質マネジメントシステムを対象とする国際規格です。
IATF 16949 は自動車関係製品の品質を確保するため,ISO 9000では規定していない,より具体的な実現手段を規定しています。
IATF 16949 は製品実現(一連の製造プロセス)を達成する手段として,先行製品品質計画(APQP:ADVANCED PRODUCT QUALITY
PLANNING)またはプロジェクトマネジメントを用いることを要求しています(図2―2)。
APQP は新製品開発を 5 つのフェーズに分類し,不具合発生前にリスクを削減,低減させるため,潜在的故障モードの想定,妥当性確認などを実施し,市場クレームなどを減少させていくしくみの構築と,継続的改善を行うことを要求しています。
また APQPは,部門横断チームによって構成され,チームはそれぞれ 5つのフェーズに関連する要員で構成されます。
2.設計品質作り込みのしくみ ISO 9000,IATF 16949 を参考に,設計のしくみをどのように構築していったらよいかを考えてみます。 IATF 16949では,不具合発生前にリスクを削減,低減させるため,潜在的故障モードの想定妥当性確認などを実施し,市場クレームなどを減少させていくしくみの構築を求めています。 これは,自動車のみならず,あらゆる製品の設計に共通した課題であると考えられます。 設計品質作り込みのための重要なポイントは ① 市場あるいは顧客の要求事項を確実に設計
にインプットさせること ② 市場あるいは顧客の暗黙の要求事項,法的
な制約を確実に設計にインプットさせること
③ 市場あるいは顧客に受け入れられるタイミング,価格でより付加価値の高い製品の設計をアウトプットすること
④ 市場あるいは顧客のあらゆる使用環境を考慮した製品の設計をアウトプットすること
⑤ 部品ばらつき,製造ばらつきを考慮し,製造しやすい製品の設計結果をアウトプットすること
図2―3 設計のしくみ
顧客要求事項
設計・開発計画
工程設計量産試作
工程設計
設計アウトプット
製品
設計検証
妥当性確認
設計審査(セルフチェックリスト)
製品企画 機能設計 信頼性設計 製造性設計
QFD
リスクアセスメント・FTA
標準化・モジュール化設計技術
ロバスト設計
CAE
信頼性評価試験
DFMEA
組込み機器設計
PFMEA
●企画品質
●設計品質
●製造品質
●使用品質
■ 設計プロセス ■ 設計技術(固有技術)・手法
設計ノウハウ集・過去トラブル集
ユニット化・モジュール化設計
システムの信頼性設計
基本設計詳細設計試作評価
設計インプット
商品企画