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特集 SF6ガスの応用-1 SF6と はどんなものか

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特集 SF6ガ スの応用-1

SF6と は どん な もの か

-その応用 と性質-

SF6,絶 縁,ガ ス絶 縁,遮 断 器,プ ラ ズマ応 用宅間 董

1.ま え が き

第VI族 元素 の 硫黄(S)と 第VII族元 素 の フ ッ素(F)6

個か ら成 る六 フッ化硫 黄(SF6)が 種々 の分野 で用 いられ

てい る。第IV族 の炭 素 とハ ロゲ ンか ら成 るフロン類 は,炭

素の数,ハ ロゲンの種類,数,結 合の仕方 によって多種多

様な ものが存在 し,ス プ レー剤や冷媒 など種々の用途 に用

い られ ている。 ところがSと ハ ロゲ ンの組 み合わせ はSF

2,S2F2,SF4な どの低 フ ッ化物 が あるが,す べて有 毒か

不安 定で ほ とん ど用途 はない。SF6だ けが安 定で,例 えば

絶縁物 としては数 ある フロン類の どれ よ りも優れ ていて,

ガ ス絶 縁 とい えばほ とん ど例 外 な く常 にSF6が 用 い られ

る。高山の連 なる 日本 アルプス に対 して,離 れて立 つ富士

山が我が国 の最高峰 であ るとい う感 じがす る。

SF6は,天 然 に は存 在 し な い。1900年 に Moissan と

Lebeau が初 めて合成 し,報 告 してい る。フ ッ素中 で硫黄

を燃 や して合成 したのであるが1902年 あ るい は1904年 と

して い る文献 もあ る。Moissan はダ イヤ モ ン ドを初 め て

人工 的 に作 った(現 在 では間違 いあ るいはで っち上 げとさ

れてい る)こ とで有名 な フラ ンスの化 学者で あるが,SF6

については合成 した ものの利用法 は特 に検討 しなか った よ

うであ る。

1930年 代 にアメ リカの電気 機器 の大 メー カであ るゼネ

ラル エ レク トリック(GE)社 で い ろい ろなハ ロゲ ン化 合

物 の電 気 的 特性 を調 べ た。1937年 に な っ て Charlton と

Cooper がSF6の 絶 縁性 能 の優 れ て い る こ とを明 らか に

し,翌 年絶 縁物 と しての 特許 を出願 して い る(登 録 は

1940年)。GE社 の研 究者 は この よ うな分 子構造 の気体 が

あれ ば優れ た性能 を もつ はず と予 想 してSF6を 合 成 した

た くま ・ただす(正 員) 1966年 東京大学大学院電気工学専

攻博 士課程修了。工学博 士。同年同大学電気工学科講師。1967

年(財)電 力中央研究所入所。1989~1993年 九州大学客 員教授。

1995年3月 よ り京 都大学工学部 教授。高電圧工学,放 電,電

磁界解析,核 融合な どの研究 に従事。IEEE Fellow。

そ うであ る。我 が国 では,鈴 木松 雄博 士 か ら1941年(昭

和16年)にSF6の 絶縁 特性 が報 告 されて い るが,「 電気

装置 」な る名称 のSF6の 特許(第141039号)は,出 願 が

昭和12年,登 録 が昭和16年 で ある。

本稿 で は,以 下SF6が 何 に使 わ れ,ど ん な物 で あるか,

なぜ使わ れるか,ど んな欠点が あるかな どを,筆 者が専門

としてきた絶縁面 を中心に解説す る。

2.SF6は 何 に用 い られ る か

SF6が 商業べー スで生産 され るよ うにな った のはア メ リ

カで1940年 代の後半 ころか らであ る。主 な絶縁 を高 気圧

気体 で行 う絶縁 方式がガス絶縁(気 体絶縁 ともい う)で あ

るが,初 めは直 流高電圧 電源,コ ンデンサ,変 圧器 な どを

対象 に,空 気,窒 素,炭 酸 ガ ス,フ ロ ン(特 に フロン12)

が 用い られて いた。1950年 代 か ら徐 々にSF6が 主役 とな

るが,SF6ガ ス絶 縁が真 に重要 な意味 を もつ よ うにな るの

は,1960年 代後 半にお けるガス絶縁 開閉装置(GIS:Gas

Insulated Switchgear)の 登場で ある。 これは変電所 の開

閉装 置や接 続部 分 をすべ てSF6で 絶 縁す る もの で,世 界

的 には1966年 のフラ ンスの フィール ド試験 が最初で ある。

我が 国で は1968,1969年 に66,77kV GISの 運転 が始 ま

り,実 に5年 を経 ない うち に500kVのGISが 出現 した。

以来,広 い敷地 に母線 や接続導体が張 りめ ぐらされていた

変電所 の様相が,白 色 の金属容器が整然 とコンパ ク トに配

列 した近代 的な姿に どん どん変わ っていったので ある。

電力系統 の事故 の際 に大電流 を切 る(遮 断す る)設 備 が

遮断器で あるが,SF6は 高電圧大電 流の交流 アー クを消 す

(消弧)媒 体 として も抜群 の性 能 を有 して いる。SF6を 用

い る ガ ス遮 断 器(GCB:Gas Circuit Breaker)は,

1953~1955年 ころア メ リカの ウェス チ ングハ ウス社 で開

発 された か ら,GISの 開発 よ りはるか に早 い。我 が 国で

は1965年 に84kV GCB(二 重 圧 力 式)の 納 入 を皮 切 り

に,高 電圧 化 と大容 量化 が進 んで,1970年 ころか らは70

kV以 上の 系統で はGCBが もっぱ ら使 わ れ る ように なっ

た。

488 J.IEE Japan, Vol.115, No.8

特 集

電力 用のSF6ガ ス絶縁変圧 器 はアメ リカで1956年 に電

圧69kVが 製作 され たのが 最初 であ る。我 が国 で は1967

年の66kV 3 GVAか ら始 ま り,最 近 で はSF6絶 縁 の275

kV変 圧 器 が開発 され てい る。電 力 系統 で のSF6の 利 用

は,ほ かに管 路気中送電(ガ ス絶縁 ケーブル),低 気圧 タ

イプのC(コ ンパ ー トメ ン ト)-GIS,直 流用GISが あ り,

電圧階級 で はUHVに 至 る高電 圧 機器 か ら33kV以 下の

配電用開閉機器 まで広が りつつある。従来の大気(気 中)

絶縁,液 体(油)絶 縁 は次第 に固体絶 縁(ポ リエチ レンケ

ーブルな ど)とSF6に よ るガ ス絶縁 に移 りつつ あ る。 こ

れらについて は3編 で もっ と詳 しく解説 され る。

電力以外で は,か つて結核 治療のた めの人工気胸用の ガ

ス,大 気の流れや到達距離 を知 るための トレーサガ ス とし

て用い られ た こ ともあ る。 どち ら もSF6の 無 毒,無 害で

安定 な性質が利用 の重要 な条件 にな ってい る。

このような不活性 あるいは放 電 を生 じ難 いガス としての

利用が進む一方で,SF6の 全 く異 なる性質が利 用 されて い

る。高温,放 電,レ ーザの作用で分解 し,反 応性 のフ ッ素

原子や分解ガ スを生 じる特性の利用で ある。銅 の酸化精錬

の際 にビスマ ス,ア ンチモン,ひ 素 などの不純物 を除去 す

る とか,空 気や 炭酸 ガ スにわ ずかのSF6を 混 ぜて鋳 造 中

の溶融マ グネシウムの表 面を保 護す るなどの例が ある。 さ

らにSF6は 腐食 作用 の強 いガ ス として,半 導体 の エ ッチ

ングなどプ ラズマプロセスで重要な役割 を果 たす よ うにな

ったが,こ れ については2編 で解説 され る。

3.SF6と は どん な もの か(1)

SF6はS原 子 を中心 として,6個 のF原 子が図1の よ う

に完全 に対 称 に配置 した正 八面体の構造で ある。F原 子 は

八面体 の角の位置 にあるが,実 際 には原子 の広が りがあっ

て相互 に重 な り合 っ て いるの で,図2の ほ うが現実 に近

い。 この構 造 は,カ トリックの僧がかぶ る半球状 の帽子 に

似 て い る の で,「 法 帽 モ デ ル(ド イ ツ語 で Kalotten-

図1 SF6の 分 子構造

modell)」(2)と 呼 ばれ る こともある。SF6の 主な物理 的性

質 をまとめて表1に 示すが,空 気 の約5倍 の重 さで,無 色

無臭の不活性 な気体で ある。

S原 子 の標 準状 態に おけ る電子 配置 は,K,L閉 殻 の外

に3s電 子2個,3p電 子4個 のM殻 があ る。SF6で は こ

のM殻 の電子 の うち3s,3p電 子1個 ず つが励 起 されて

3s3p33d2の 電子状態 とな り,こ れ らの混成 で6個 の等価

な混成軌道 を作 る。 これ と各F原 子の1個 の2p軌 道 とが

6個 の電子対結合(共 有結合)を 作 ってSF6に なる。通常

は3d電 子 雲(軌 道)の 広が りは3s,3p軌 道 よ りもはる

か に大 き く,有 効 な混成軌道 を作れ ない という難点 がある

が,F原 子の強い電気陰性度のおか げで軌 道が収縮 し,小

さ くて強 固な結合 となる。

このよ うな結合 は,中 心 の原子 と周 囲の原子が両 方 とも

ある程度小 さ くて電気陰性度 の高 い ことが必 要で,Fと 同

じハ ロゲン元素 で もSCl6,SBr6,SI6は 存 在 しない。一方

Sを 同じ第VI族 元素 で置 き換 える と,SF6と 同 じ八面体構

造 の分子 を作 るがSF6の よ うに安定 で はない。SeF6(六

図2 SF6分 子 の様子(2)

表1 SF6の 主 な物理 的性 質

電学誌,115巻8号,1995年489

特 集

フ ッ化 セ レ ン),TeF6(六 フ ッ化 テル ル)な どで あ る。

SeF6はSF6よ り絶縁 耐力 が高 く,沸 点 も大気圧 で-64度

(昇華温度)と 低いが,非 常 に有 毒で あ る。 ウラ ンも第VI

族 に属す るが,UF6は 大気圧 の昇華 温度 が57度 の非常 に

反応性 に富 む固体 であ る。気体状態 でウラ ン濃縮 に用い ら

れ る重要な物質で あるが,絶 縁耐力 は知 られていない。少

な くとも筆者 は知 らないが,必 要 ない特性 か も知 れない。

4.SF6は なぜ 用 い られ るか(3)(4)

「SF6は 絶縁耐 力(絶 縁破壊 の電圧 あるい は火花電圧)

が高 いか らガ ス絶縁 に用 い られ る」 とい うのは正 し くな

い。「空気 と比べ て」 と付 けれ ばい くらか正 し くなる。絶

縁耐力 は試験条件 に よって変わ り,電 極 の配置,ギ ャ ップ

の長 さ,印 加電圧 な どに依存す るが,図3は 平等電界配置

にお け る代 表的 な例 で あ る。 同 じ大 気圧 な ら確 かにSF6

の放 電電圧 は空気 の3倍 近い値で ある。 また大気圧 では絶

縁油や高真空 よ り低 いが,気 体 は気圧 を上 げれば絶縁耐 力

が高 くなる とい う利点 が あ り,2気 圧 で ほぼ油に匹敵す る

性能 になる。

ところが 気体 につ いて いえば絶 縁耐力 がSF6以 上の 気

体 はい くつ もあ るので ある。例 えば,か つて しば しばガス

絶縁 に用 い られた フ ロン12(CCl2F2)の 絶縁 耐 力 はSF6

に匹敵 し,い くらか上 回 る ぐらいで あ る。 しか し比重 が

5g/lでSF6よ り軽 いに もかか わ らず,液 化温度 が-30度

な のが難 点で あ る。四 塩化 炭素(CCl4)に 至 っ て は同 じ

気圧 な らSF6の2倍 以 上 の絶縁 耐力 で あ るが,液 化温 度

が76度 と高 い。

絶縁 に用 いる気体 につ いて は,こ れ までアメ リカ,ド イ

ツ,我 が国 でか な り詳 し く調 査 され た。特 にア メ リカで

は,DOE(エ ネル ギ ー庁),EPRI(電 力研 究 所)が それ

ぞれオー ク リッジ国立研 究所,ウ ェスチングハ ウス社 に依

託 して広範 な検討 を行 った。 目的 はSF6の 代 わ りとな る

図3 絶縁耐力の比較(平等電界,交 流波高値)

よ うな新 しい気体 あるい は混合気 体 を見 つ ける こ とであ

る。我 が国 で は,1983年 か ら6年 間,電 気 学 会 で 「気体

絶縁へ の混合 ガスの応用」「混合 ガス絶縁 の進歩」 の二 つの

調査専門委員会 が活 動 して いる(3)。

結論 として,ガ ス絶縁が使 用 され る時 の-30度 か ら90

度 とい う広 い温度 範 囲全体 でSF6よ り優 れた 気体 は見 出

され なか った。絶 縁 に用 い る気体 は,絶 縁性 能(絶 縁耐

力)以 外の物理化学 的特性,特 に液化温 度の低 いこ とと,

無毒無 害で あ る ことが 重要 で ある。同 じ気圧 な らSF6よ

り絶縁耐力の高 い気体 の多 くは,温 度 が低 くな る と液化 し

て性能 を発揮で きないのであ る。SF6は 非 常 に重 い気体で

あ るの に液 化 温度(大 気 圧 で は昇 華 温度)が 低 く,-20

度 で も約7気 圧 まで気体 であ る。

アメ リカの検討 で は,CF3CN(沸 点-64度)の よ うに

CN基 を有 する気体 で,広 い温度範 囲でSF6の 絶縁耐 力 を

上 回る もの も見出 され たが,有 毒 で使用 でき るもので はな

い。有 毒性 の点 で はSF6は 「単 純窒 息 性気 体」 に分類 さ

れ る。つ ま り窒素の ような普通 の無毒の気体 と同 じで,閉

め切 った室内の大気中濃度 が増 えて酸素濃度 が減 少す るこ

とだ けが問題 になる気体 である。 また,有 毒性 の評 価で有

名 なア メ リカの Underwriters' Laboratories の設 けたラ

ンクはモルモ ッ トの吸 引に よる作 用 をも とに してい るが,

SF6は 最 も安全 なランク6で あ る。

初め に述べた ように,SF6の もう一つ のきわ めて優 れた

性能 は遮断器の アー ク放電 を消す(消 弧)性 能 であ る。 し

か し,「 接点(電 極)間 のアー クを切 る能力 が優 れてい る

か らSF6が 用 い られ る」 とい うの は正 し くない。交流 の

サイ クル に応 じて点滅 するアー ク放電が電圧 の零点で切れ

た後,導 電 性 を失 い絶 縁 を回復 す る能 力 がSF6は 抜群 に

優 れてい る,と いうのが正 しい。 この よ うな切 れた後 のア

ー クの導電率 は指 数関数 的 に減少 す るが,そ の 時定 数 は

「アー ク時定 数」 と呼 ばれ,ど の くらい絶 縁回復 が早 いか

図4 アー ク半径方向の温度分布

490 J.IEE Japan, Vol.115, No.8

特 集

図5 SF6ガ スと空気 の絶縁 破壊(火 花)電 圧 の比 較

(大気圧,雷 イ ンパル ス電圧)

を与 える。

図4はSF6中 と空 気中 のア ークの温度 分布 の例 で あ る

が,SF6で は高温 の中心部 だ けに電流が流れ る細 い集 中 し

たアー クになる。空気 のアークは太 くて温度 こう配が緩 や

かであ る。SF6の アー クが細 い中心部(弧 心)だ けに集 中

することか ら,切 れ た後 の冷 却が きわめて早 く,ア ー ク時

定数 は空気 よ り2け た も小 さい。 つ ま りSF6中 では アー

クの導電率の減少す る速度 が空気 の100倍 速い とい うこと

で ある。

5.SF6の 欠 点 は何 か

SF6を 用い るガス絶縁 の利 点 は,例 えば液体(油)絶 縁

と比 べ ると,誘 電率が低 く,損 失が少な く,不 燃性 で,取

り扱いやすい ことで ある。 その代 わ り,SF6に 限 らずたい

ていの気体 に共通す る欠点 であるが,冷 却能力が液体 には

るかに及 ばない。変圧器,特 に高電圧大容 量の変圧器 が今

なおほ とん ど油絶縁 なのはそのためであ る。 またガス絶縁

変圧器 といって も絶縁 はSF6で 行 うが,冷 却 はFC-75の

ような液体 フロ ンの浸漬や散布(蒸 発冷 却)で 行 うことも

ある。

気体の絶縁物 として考 える と,平 等電界 では図3に 示 し

た ように空気 の3倍 近い絶縁耐力 があるが,不 平等電界の

配 置で は著 し く性能 の低下す る ことが欠点 であ る。棒 電極

の放 電 実験 で は,図5に 示 す よ う に,ギ ャ ップ(電 極 間距

離)が 長 くな る と,大 気(大 気 圧 空 気)よ り も火 花 電 圧 が

低 くな る こ と もあ る(5)。し か も気 圧 を大 気 圧 か ら7気 圧 ま

で 上 げ て も火 花 電 圧 は ほ とん ど増 加 し な い 。 これ はSF6

ガ ス 中 の 電 極 か らの 放 電 路 が 導 電 性 の 高 い 「リー ダ(も と

も と は落 雷 を導 く先 駆 的 な 放 電 路)」 とな っ て,空 間 を伸

び 進 み や す い た め と考 え られ て い る。SF6を 絶 縁 に 用 い る

場 合 に は,電 極 に とが った 部 分 や 鋭利 な個 所 を生 じ な い よ

うに し,配 置 をで き るだ け平 等 電 界 にす る こ とが 重 要 で あ

る。

SF6に は環 境 上 の 問 題 は な い だ ろ うか 。SF6は 放 電 で 分

解 す る と,SF4な どの 低 フ ッ化 物,さ ら に残 留 酸 素 と結 合

してSOF2な どの 有 害 な 分 解 生 成 物 を生 じ る が,常 に 密 閉

容 器 内 で 用 い られ るの で,吸 収 剤 で す べ て 除 去 す る こ とが

で き る。 近 年S2F10と い う分 解 生 成 物 の 有 毒 性 が 懸 念 され

て 欧 米 で 多 くの研 究 が 行 わ れ た が,少 な くと もガ ス 絶 縁機

器 で は発 生 量 が 非 常 に少 な く問 題 にな ら ない 。

SF6を 使 用 す れ ば大 気 中 に漏 れ た り,い くら か放 出 され

た りす る の は避 け ら れ な い。 現 在SF6の 全 世 界 で の 生 産

量 は年 間 数 千 ト ンの オ ー ダ で,大 気 中 の 濃 度 は1~2ppt

(容 量 濃 度)で あ る。 これ は と も に フ ロ ン類 よ り2け た か

ら3け た ほ ど少 な い(6)。 した が っ て,例 え ば 温 室 効 果 に 及

ぼ すSF6の 寄 与 は炭 酸 ガ ス や フ ロ ン類 に比 べ て ご く ご く

わ ず か で あ る。 そ れ で も人 工 的 な ガ ス の濃 度 が 大 気 中 で 増

加 す る の は 好 ま し くな い と い う考 えか ら,欧 米 で はSF6

の漏 れ や放 出 をで き るだ け減 らす こ とや リサ イ ク リ ン グ,

場 合 に よ っ て は ガ ス絶 縁 にSF6で な く窒 素 を使 う こ と も

試 み られ て い る。

(平成7年5月8日 受 付)

文 献

(1)宅 間,柳 父:「SF6ガ スおよびその他の気体」,電気学会大学講

座高電圧大電流工学,p.55~62(昭63)

(2)W. Mosch & W. Hauschild:"Hochspannungsisolierungen

mit Schwefelhexafluorid", p.11, VEB Verlag Technik Berlin

(1978)

(3)電 気学会:気 体絶縁への混合ガスの応用,技 術報告(II部)第

248号(昭62)

(4)宅 間:「SF6に 代わって絶縁に使われるガスはあるか?」,電 学

誌,101, 8, p.777~781(昭56)

(5)宅 間,渡 辺,河 本:「SF6と 支持スペーサの絶縁特性」,電力中

央研究所総合報告No.32, p.17(昭52)

(6)L. Niemeyer & F. Y. Chu:"SF6 and the Atmosphere, IEEETrans, on EI, 27, 1, p,184~187(1992)

電学誌,115巻8号,1995年 491