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交流会と講演会 終了しました
~講演概要~
1.なぜステロイド/免疫抑制剤が必要か?
免疫疾患の発生機序
2.ステロイドについて基礎から学ぶ!
ステロイドとは、ステロイド骨格を持つ化合物の総称。体内で生理活性をもつものをステロイドホルモンといい、
ステロイドホルモンはたくさんある。女性ホルモンもステロイドの一種。一般的に我々がステロイドと呼んでいるもの
の正式名称は『糖質コルチコイド』。
3.ステロイド剤の作用/副作用
服用したステロイドは、速やかに吸収され、全身の細胞に運ばれる。人間は、およそ 37 兆個の細胞から成り
立っており、すべての細胞にステロイドの作用するコルチコイド受容体があるため、様々な副作用が出現する。
ステロイドの副作用の出現時期
数時間から
(パルス療法)
数日から
(30mg以上)
1-2 ヶ月
(30mg以上)
3 ヶ月以上
(PSL 5mg以下)
高血糖
不整脈
高血圧
不整脈
高血糖
精神障害
浮腫
感染症
大腿骨頭壊死
骨粗鬆症
満月様顔貌
高脂血症
精神障害
緑内障
ステロイド筋症
消化性潰瘍
高血糖
感染症
満月用顔貌
二次性副腎不全
骨粗鬆症
高脂血症
白内障
緑内障
ステロイド筋症
消化性潰瘍
高血糖
日 時 平成 29年 7月 1日(土)
場 所 サンシップとやま 福祉ホール
講 師 富山大学附属病院 免疫・膠原病内科 副科長 篠田 晃一郎 氏
参加者 75人(本人 59人 家族 12人 支援者 4人)
免疫疾患の共通の現象
これを抑えるために
ステロイド・免疫抑制剤を使う!!
・ステロイド
少量であれば炎症のみを抑えるが、大量であ
れば自己免疫現象も抑える
・免疫抑制剤・免疫調整剤
自己免疫現象を抑える
ステロイドなしでは効果が出るまで時間がかか
るのでステロイドを併用する
0
10
20
30
0-19 20-39 40-59 60-
1ヶ月間での感染症発生率
(㎎)
副作用のチェック項目
副作用 早期発見方法 対処
中心性肥満 体重測定、過食に注意 食事療法
糖尿病 血糖値、昼食後 2時間値、HbA1c 食事療法 糖尿病薬
脂質異常症 中性脂肪、LDL コレステロール 食事療法 脂質低下療法
骨粗鬆症
圧迫骨折
身長短縮⇒胸腰椎レントゲン
骨密度
食事療法、骨粗鬆症薬
(ステロイド骨粗鬆症ガイドライン参照)
大腿骨頭壊死 股関節レントゲン MRI 早期発見 脂質異常の治療
尿路結石 腹部エコー、尿中カルシウム濃度 水分の摂取、尿酸治療
胃潰瘍 貧血の検査、検便 早期発見 胃薬
組織脆弱性 皮膚、目等の観察 保護、乾燥予防
高血圧 血圧測定 塩分制限
感染症の予防
使用量によってリスクが異なる。投与量が増える
ほど細菌感染、結核菌感染、真菌感染、ウイルス
感染などが増加する。
4.ステロイド剤の使い方 減量の仕方!
ステロイド療法開始時の原則
①原則として飲み薬を使用する。内服困難、腸管病変などの際は点滴を使用する。
②投与量は、疾患及び重症度に応じて決定する。
③初期は分割投与(朝と夕、朝と昼と夕)する。プレドニンは 3-5時間で血中濃度が半減するため。
④病勢を抑えるため初期に多く、時にパルス療法を併用する。
プレドニンはやめることができるのか?
・やめている人もいる!ただ、免疫疾患では再燃(再発)が多いため、慎重な判断が必要。
・やめるための条件は、薬をやめても病気が悪化しないという医学的な見通しがあること。
・よく、「私は調子が良いのに、先生がステロイドを減らしてくれないのはどうして?」と言われる人がいる。
元気でも、水面下で病気が悪化していることもある。主治医は無理して減量して病気が悪化するのを恐
れている。主治医との話し合いが大切。
ステロイドは急にはやめられない!!
ステロイドを長期に服用していると、「体の中にこんなにたくさんステロイドがあるから作らなくてもいいよ」という
指令を脳に出す。そのため体の中でステロイドを作らなくなる。作り方も忘れている。長期休暇に入る。
長期休暇に入っていた副腎は急にはステロイドを作れない。そのため体の中にステロイドが足りない状態になっ
てしまう。疲れやすい、やせる、吐き気、血圧低下などが起きる(副腎不全)。
プレドニゾロンの一日量
(%)
5.免疫抑制剤について
免疫抑制剤の使用目的
・免疫抑制剤が無いと治療が困難な場合初回治療から導入
・プレドニン減量のため併用する
免疫抑制療法を行うことによるステロイド減量効果
・免疫抑制剤を併用することでステロイドを早く減量することができる。
・病気によっては免疫抑制剤を積極的に使う
・血管炎の治療では、早期に免疫抑制剤を併用する事により、プレドニン単独治療に比べ、約半分の
ステロイド剤で治療するという方法も提唱されている。
・また、免疫抑制剤の使用は感染症の増加に直接影響を与えなかったとのデータもある。
(感染症増加の危険因子は、10歳年齢が高い、間質性肺炎、プレドニンの平均投与量 30㎎以上)
免疫疾患における妊娠の考え方
①プレドニン 15㎎以下で、疾患が 6 か月以上安定していること
②重い内臓障害がないこと(腎臓、心臓など)
③妊娠禁忌の薬剤を回避すること(最近、種々の免疫抑制剤における妊娠禁忌の解除が検討)
まとめ
・ステロイドは現在も治療の中心であるが、可能な限りの減量が推奨
・そのために免疫抑制剤、免疫調整剤、生物学的製剤の併用が推奨
・副作用の管理もしっかりやる事
・手術、緊急入院の際には病状、投薬を説明
・悪性腫瘍の検診は自分でも意識すること(受診以外の検診、人間ドックの活用を)
~篠田先生への質問とコメント~
<ステロイド・免疫抑制剤の副作用について>
Q1:ステロイドを長期間服用しているが、副作用がないか心配。
ステロイド剤は副作用があるが、それにも代えがたいメリットがあるから使う。
今、我々の体の中では5㎎のプレドニンを生産している。プラス5㎎飲むと合計10㎎体の中に存在する。
10㎎でも骨粗鬆症が進行する。他の害としては、例えば本来ならない糖尿病になることもある。
Q2:ステロイドでムーンフェイスになったが太れないのはなぜか?
脂肪は増えるが筋肉は落ちるため。ステロイドが筋肉を分解して、皮下脂肪を増やす。そのため、見た感じ
は痩せているが、体幹は太って見える。体幹も痩せて見える場合は、体質か他の病気、例えば甲状腺の病
気、がん、糖尿病が無いかを調べることになると思う。
Q3:プレドニンを飲むと眠れないがどうしてか?
プレドニンを朝飲むと夜には効果がきれてくるが、治療のため夜飲むと夜眠れないという方が結構おられる。
その場合、基本的には①内服のタイミングを朝夜から朝昼にする②睡眠薬を使う③睡眠外来に相談して治
療薬と併用し、睡眠薬を処方してもらう、という方法がある。不眠を専門に扱う医師はあまり多くないが、総
合病院の精神神経科に不眠外来があることが多いのでそちらを紹介するようにしている。
Q4:マスクの使用は感染症予防に効果があるのか?
マスクは自分も守るためにするもの。プレドニンの量と感染の危険性のグラフでは、プレドニン 10 ㎎の人より
20㎎、20㎎より 30㎎そして 60㎎以上の人は 20%が感染症にかかる。10㎎以下だとほとんどない。
最近、マスクが社会に許容される時代になってきたので、人ごみに行くときはマスクをされている。量によって
も違うので、30㎎以上を飲んでいる時はかなり注意が必要。
Q5:免疫抑制剤の新薬を開始したが副作用が心配。
新しい薬を使うときに「海外で使えているから使う」という考え方もあれば、「人種が違えば副作用も違うの
で日本である程度安全なデータが出てから使う」という考え方でもいいと思う。免疫抑制剤の種類も増えてき
ているので、新薬の使用がどうしても心配であれば、ひとつ前のある程度実績のある免疫抑制剤を使ってもら
うという方法もあると思う。
Q6:免疫抑制剤の副作用が強く、長く同じ薬を飲み続けることができない。よくあることなのか?
よくある。その方に一番合う免疫抑制剤を探すのが免疫の病気を診るうえで大事である。免疫抑制剤に
よって副作用の出方が一人ひとり違うのでAさんはリウマトレックス、Bさんはタクロリムス、Cさんにはシクロス
ポリン(ネオラール)が一番良かったということがよくある。一つが副作用で使えなければそれをカルテに書き残
して、将来使わないようにする。そして別の薬にチャレンジする。必ずしも飲むと具合の悪くなる薬を使い続け
る必要はない。ただ、いろいろ探してそれしかない場合非常に悩ましいが、色々薬も出てきているので相談す
ることが必要。
Q7:コルベット、ケアラムの服用時に気をつけなければならない大きな副作用は有るか?
コルベット、ケアラムはリウマチの新しい薬で免疫調節剤にはいる。リウマチの薬ではあまり強くない薬なので感
染症も少ない。日本中からこの薬を使っている報告がされているが、かなり安全な薬と言われている。元々痛み
止めとして開発された薬のため胃腸障害に注意が必要。
Q8:シンポニーの注射をはじめたが、便秘、下痢、口内炎、寒けが極端に強くなってきた。治療薬との関係
性があるのかどうか。
関係性は分からないが、もし投与して、身体に合わなければ他の薬を探せばいいと思う。シンポニーはリウ
マチの薬だが、他にも薬があるので合う薬を探すように主治医の先生と相談を。
Q9:幼児期に腎移植をし、現在中学生。3種類の免疫抑制剤を内服中だが今後成長に伴ってどのような
ことに注意していけばよいか。
小児期に種々の理由でプレドニンを服用する場合、低身長が問題となる。ある報告では、平均的な身長
の伸びに戻るためには、プレドニンの量をおよそ 6 ㎎以下に減量することが好ましいとの報告もある。ステロイド
は骨の形成を押さえつけてしまうため、身長が伸びなくなってしまう。小児科の先生は、免疫抑制剤を併用す
るなどして早くプレドニンの量を減らすようにしており、プレドニンの量は10㎎以下、できれば5㎎以下にするよ
うに努力していると聞いている。
<ステロイド・免疫抑制剤の減量について>
Q10:今は症状が安定しているが、ステロイドをいつかやめることはできるのか?
やめている人はいる。やめるのを目標にしましょう。そのような日を目指して医療は進歩しているし、主治医
の先生もがんばっている。
Q11:免疫抑制剤を飲んでいるが、他にもたくさんの薬を飲んでいるので減らすことはできるか?
プレドニンも含め、病気が悪くならないのであれば、減らす事を目標にしている。プレドニンが十分減り、ある
いは中止できて、病気が安定していれば免疫抑制剤も減らしていくことが理想である。
Q12:重症筋無力症で10年来ステロイド10㎎、免疫抑制剤3㎎服用中。体がだるくて辛いので免疫抑
制剤をやめる方法はないか?
重症筋無力症の治療は、人によっては胸腺の手術をすることがある。胸腺の手術をし、飲み薬で治療し、
それでも難しければステロイド、そしてタクロリムスを使う治療が標準である。もしかしたら、ステロイドやタクロリム
スを使っていても動いた後に筋肉や筋力が落ちてくる重症筋無力症の症状が出てしまっているのかもしれない。
重症筋無力症は“抗アセチルコリン受容体抗体”、“抗MuSK抗体”をみながら薬の量を調整している。本人
はこの薬をやめた方がよくなると感じていても、主治医は、抗体値が変化しているとなかなか薬の量を減らせな
い。そこで行き違いがあると思うので、主治医に「病気の活動性のマーカーどうですか?」と聞いて理解してい
ただければと思う。
<ステロイド・免疫抑制剤との付き合い方>
Q13:ステロイドを 10年服用していると効かなくなると聞いたが本当か?
ステロイド抵抗性といって、はじめは効いていたが後に効かなくなるという事はある。明確な機序は分かって
いないが、あらゆる病気でおこりうるとは思う。そういう場合は免疫抑制剤を使用して治療していく。
Q14:重症筋無力症だが、ステロイドを服用している状態で手術をしても大丈夫か?
ステロイドを飲んでいても手術は可能。重症筋無力症の場合、手術の時に病気自体が悪くなることもある
ためそのあたりは、主治医とステロイドのカバーをどうするかの相談が必要。
Q15:ステロイド剤や免疫抑制剤を飲みながらの歯科治療はできるのか?
歯科治療は、ステロイドを飲んでいても可能。内科疾患で骨粗鬆症の治療をしている状態で歯を抜くと傷
が治らない“顎骨壊死”が増えるといわれおり、歯医者さんはステロイドと骨粗鬆症の薬に敏感になっている。
しかし適切な指示の元、ステロイドを飲んでいても歯科治療をして貰っている。理想は、骨粗鬆症、ステロ
イドの治療をする前に歯が全部きれいな事。虫歯が沢山あると副作用も出やすいため、日々の歯科管理で
注意する必要がある。
Q16:パルス療法を行っているが、体内にプレドニンはどのくらい残っているのか?
プレドニンの血中濃度自体は3~5 時間で半分になってしまう。血液から全身に回って、その後肝臓から
腎臓で分解されて無くなっていく。基本的には体から抜けるのは早いが、一つ一つの細胞に入った後にそこで
指令を出したものは長く続くのでどうしても副作用としては続いてしまう。
<骨粗鬆症予防薬について>
Q17:骨粗鬆症の薬を飲んでいるが、いつのまにか圧迫骨折をした。本当に薬が効いているのか不安。
骨粗鬆症の予防薬には様々な種類がある。おおよその薬の強さとして、ナンバー1、2 は注射薬。おそらく
今飲み薬で週に1回飲んでいる薬がナンバー3になる。骨折リスクの高い人ははじめからナンバー1、2の薬
を使う。今の骨粗鬆症の薬で圧迫骨折したのであれば、ナンバー1、2の薬を使いましょうと話が進むべき。
それは、薬には使用する順番があり、はじめから一番強い薬を使うのはナンセンスであるため、標準的な薬か
ら使い始める。しかし、骨密度が 60%と低い人ははじめから一番強い薬を使うことがある。骨粗鬆症は重要
なので、私も整形の先生と相談しながら、「この状況ならこっちの薬の方がいいよね」と相談しながらきめ細かく
やる必要がある。骨粗鬆症の治療も奥深い。
Q18:出産した後に、胃薬と骨粗鬆症の薬を中止して4年程経過するが、このまま服用しなくて大丈夫
か?
妊娠するときに胃薬と骨粗鬆症の薬をやめることは問題ない。
胃薬の再開について、最近ステロイドは 50、60 ㎎の大量でなく 5 ㎎程度であれば胃潰瘍に関係ないと
いわれている。胃カメラ等で明らかに胃潰瘍や十二指腸潰瘍が無い限り胃薬をグレードダウンしてやめていくと
いう流れになっている。
骨粗鬆症薬の再開に関しては、現在の年齢とステロイドの量が重要。50 歳以下、ステロイド 5 ㎎位、骨
密度 90%~100%あれば骨粗鬆症の薬は使わない場合がある。骨粗鬆症薬の長期服用で弊害も少し
出てきており、ドラックホリデー(薬の夏休み)といって、薬を 5年飲んだら少し飲むのを休むという考えが出て
きている。骨折のリスクがあまり高くない方はドラックホリデーの試みがなされてきている。ただ、プレドニンの量が
多く、骨密度が低いという状況であればドラックホリデーを設ける事よりも予防が大切なので予防薬を飲み続
ける必要がある。
出産後ということなので、年齢も若く骨密度が高いため内服を休み、骨密度を測りながら経過観察してい
るのだと思われる。骨粗鬆症については、『ステロイド性骨粗鬆症のガイドライン』があり、このガイドラインを基
に治療されることになっている。
<病気の症状について>
Q19:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグストラウス)のため体の疲れが大変。夜に体の力が抜
けたり、運転中に意識が遠のいて車の運転が出来なくなったり、洗髪、歯磨きで手をあげていられないと
いう症状がある。
病状が把握できていないのでコメントしづらいが、疲れやすさの原因がステロイド不足であれば薬を調節す
る必要があると思う。意識が遠のくことについては、この病気ではあまり聞かない事なので別の原因(貧血等)
が無いか確認してみる必要がある。
Q20:視神経脊髄炎と診断されて2年。症状が落ち着いたがしびれは残っている。ステロイドは飲まなくても
良いと言われて服用していないが再発しないか。
神経の病気の場合、痺れというのは必ずしも今病気が悪いという証拠ではない。一度障害されると神経の
再生まで時間がかかる。病気が悪くなくても昔の後遺症で痺れがずっと残ることはよくあること。薬をやめたのは、
しびれはあくまでも後遺症であって、病気は眠っている状態ということでやめられたと思われる。再発については、
視神経脊髄炎は、“アクアポリン 4抗体”という抗体値をみながら治療している先生もいる。
Q21:強皮症を 15年前発症。現在プレドニンを朝1回、7.5 ミリ服用中。やせて体重は 30キロ代。午後
から体がだるくなるので薬の増量を主治医に申し出たが、副作用を心配して増量して貰えなかった。薬
の飲み方でだるさを軽減することは可能か知りたい。
強皮症自体が痩せやすい病気。消化管での吸収不良が病気の本体としてあるため栄養が十分足りてな
いのかもしれない。ステロイドを朝1回飲んでも夕方には血液中からかなり減っている。また、強皮症で元々
吸収が悪いため、ステロイドを朝5㎎、昼2.5㎎のように分割して飲んだ方が良いかもしれない。そのように分
割して工夫して飲んでも治療効果に悪影響ないと思っている。
Q22:多発血管炎性肉芽腫症で8年目、80 歳代。手足のしびれ、むくみの症状が辛くて車椅子だが対症
療法はあるかどうか。
痺れに関しては、膠原病で神経に影響が出た場合、神経の再生に時間がかかる。症状を抑える方法が
ないため、様々な漢方薬やリリカ、てんかん薬を使って対処する。むくみについても利尿薬を用いて対処する。
ステロイドの種類を変える方法もあるが決定的な解決に繋がるかはやってみないと分からないので主治医と相
談を。
Q23:紫外線に気をつけなければいけないと言われるが、具体的に日常生活でどのように気をつけたらよい
か?
基本的に、多くの免疫の疾患で紫外線がよくない。全身性エリテマトーデス、シェーグレン、皮膚筋炎の方
は紫外線自体によって病気が暴れたりする。実際、夏でも長袖を着て、日傘をさして、日焼け止めを塗って
対処されている。どこまで強く対策をしたらよいかは個人差もある。最近は多くの方が紫外線を嫌がって対策
をしているので厳重に対策をしても目立ちませんと話される方もいる。
Q24:一年中冷えの症状の対応に悩んでいる。冬はもちろん、夏のクーラーでも冷える。
免疫の病気の場合、病気自体で冷えてしまうレイノー現象がある。これはまだいい治療法がなかなかない。
実際、薬を飲んでも少しレイノー現象の回数が減る程度で、対症療法として暖かくする事しかない。1 年中
冷えの対処に苦しんでいるとのことだが、西洋医学では冷えに対応できる薬が多くなく、患者さんによっては漢
方薬を使う。悩むときは漢方の先生に頼むことがある。
<その他>
Q25:ステロイド治療をしているが、抗体を除去する治療もあると聞いたがどのようなときにして貰えるの
か?
抗体を除去する治療は、免疫吸着療法や血漿交換療法がある。例えば、免疫の病気では血液中に〇
〇抗体というものができる。その抗体をカラムというものに吸着させて除去する方法。もうひとつは、血液ごと献
血で得られた血液成分と取り替える方法がある。ただ、抗体を産生する細胞が残っているため効果が必ずし
も長く続かない。そのため、免疫を抑制する治療をしてもなおかつ抑えられないときに抗体を除去する治療を
することがある。膠原病の分野でも急性期に行う治療である。
Q26:シクロスポリンを内服中。新聞でタクロリムス(プログラフ)がシクロスポリン(ネオラール)の 100
倍の効果があると書いてあり驚いた。この 100倍とはどういう意味か?また、どうして主治医は使ってくれ
ないのか?
平均的には、シクロスポリンは1日当たり 200 ㎎程度、タクロリムスは1日当たり 3 ㎎程度を使用する。
100倍強いということは、タクロリムスは 100分の1の少ない量でも、同じ程度の免疫抑制効果が出るという
こと。身体に 100 倍の量が入っているわけではない。二つの薬は似ているが、副作用の出方が微妙に違う。
シクロスポリンは腎臓に障害がでることがあり、プログラフは血糖が上がりやすいなど。このような点で使い分けた
り、二つの薬の血中濃度を測り、どちらが安定するかで使い分けたりする。
Q27:結節性多発動脈炎。家族にも免疫疾患の人がいるが、遺伝的な要因はあるか?
結節性多発動脈炎も他の動脈炎も遺伝病ではない。ただ免疫の病気は、いくつか家族で共有することは
あるので若干あるかもしれない。医学がこれから解明する部分ではあるが、遺伝病ではない。
Q28:遠くの病院から近医に変更したいが主治医に相談したらよいのか?
現時点では国が地域包括ケアシステムというシステムを導入して大きな病院、地域の病院、開業医、在
宅診療医が連携して、たとえ寝たきりになったとしても地域の先生に診てもらえるシステムを作っている最中だ
が、難病の場合にはまだ十分に体制が整っている訳ではない。難病は専門家が少ないので、病気の活動性
や、ステロイドの増減など判断に困ることがあり、そういった場合は十分な連携が必要である。地域の先生だ
けにおまかせするのはまだ現実的に難しいかなと思っている。
Q29:主治医との関係に悩んでいる。どのようにお付き合いしていったらよいか。
主治医も患者さんも人間なので合わない主治医-患者関係もあると思う。ある人はどの先生とも合わないと
いうのもあるだろうし、医師としても直すべきところはあると思う。
最近では、医療従事者と患者との対話を促進するため、患者・家族等に対する支援体制を構築した医療
機関が評価されるシステムがある(患者サポート体制充実加算)ので、主治医に直接言えないことでもそのよ
うな窓口で相談する事も出来る。またそのような相談窓口では、医療メディエーターという立場のスタッフも増え
てきており、主治医患者関係で悩んでいる患者さんの話しを聞き、解決に当たっている。この医療メディエーター
は、現在、日本中で育成が進んでいる。富大もメディエーターの育成をこれから進めていく。
このように病院も窓口を作る流れにあるし、相談したからといって、患者さんが不利益をこうむることが無いよう
にしなければならないというのがある。
個人的にはそのような場所で相談して、主治医の先生との関係が修復される、あ
るいは主治医を替えることによって解決することもある。そんな風に考えていけばいい。
不満を持ったまま、あきらめたままよりは前向きな方向にしていけばいいと思う。