14
デジタル写真測量の理論と実際 1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry 1.1 写真測量の歴史 histroy of photogrammetry (初期) 1480 年レオナルド・ダ・ビンチはパース(遠近投影法)について次のように書いている。「全ての物は眼と光 線でできる視錐で眼に到達する。その視錐線はその中間に置いたガラス板に光点として刻まれる。眼に近いとこ ろでそれらは交わり、これらの像は小さくなる。 パースは全ての物の表面からの光点をガラスの裏にマークした、 滑らかで透明なガラス板の裏の物体を見ることに他ならない。」と述べている。1492 年彼は Magic Lantern(灯機)を発明し、これやカメラオブスクラを用いて、中心投影とパース(空気遠近法)により素描作成を開始する。 パースと射影幾何学の原理は、写真測量の理論が発展する基礎となった。なお,パース(遠近法)において遠く のものは色が変化し,境界がぼけるという空気遠近法を発見した。 1525 Albrecht Duerer はパース幾何の法則を用いて真のパース描画用の器械を製作した。1759 Johan Heinrich Lambert "Perspectiva Liber" (自由パース)の論文で、(image)が作られる空間点を割り出すために 交会法を用いるパースによる像の数学的原理を発展させた。 1883 年ドイツの R. Sturms Guido Haick 射影幾何学と写真測量間の関係を初めて開発した。 1.1.1 に示す透視図(パース)の描き方は次のとおりである。テーブルに楽器を置き、楽器と壁の間に木枠 の窓を設置する。開閉できるようにした木枠の窓には、紙を貼る。テーブルに置かれた楽器の 1 つの点と壁の 1 つの点(視点)を糸で結び、糸が木枠の窓と交差する点にペン先を合わせる。次に、糸をいったん外し、紙の窓を 閉じてペン先の位置に点を打つ。又、窓を開き、次の点を求めていく。これを繰り返し、最後に紙の上で打った 点を結ぶと正確な楽器の形が描けるというのが「透視図」を描く仕組みである。 1.1.2 Niépce の写真 (a) 透視図の発明 b)ピラミッド状の線 (c) マジックランタン(Whikipedhia1.1.1 透視図(パース)

デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

デジタル写真測量の理論と実際

第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

1.1 写真測量の歴史 histroy of photogrammetry

(初期)

1480 年レオナルド・ダ・ビンチはパース(遠近投影法)について次のように書いている。「全ての物は眼と光

線でできる視錐で眼に到達する。その視錐線はその中間に置いたガラス板に光点として刻まれる。眼に近いとこ

ろでそれらは交わり、これらの像は小さくなる。パースは全ての物の表面からの光点をガラスの裏にマークした、

滑らかで透明なガラス板の裏の物体を見ることに他ならない。」と述べている。1492 年彼は Magic Lantern(幻

灯機)を発明し、これやカメラオブスクラを用いて、中心投影とパース(空気遠近法)により素描作成を開始する。

パースと射影幾何学の原理は、写真測量の理論が発展する基礎となった。なお,パース(遠近法)において遠く

のものは色が変化し,境界がぼけるという空気遠近法を発見した。

1525 年 Albrecht Duerer はパース幾何の法則を用いて真のパース描画用の器械を製作した。1759 年 Johan

Heinrich Lambert は"Perspectiva Liber" (自由パース)の論文で、像(image)が作られる空間点を割り出すために

交会法を用いるパースによる像の数学的原理を発展させた。

1883 年ドイツの R. Sturms と Guido Haick は射影幾何学と写真測量間の関係を初めて開発した。

図 1.1.1 に示す透視図(パース)の描き方は次のとおりである。テーブルに楽器を置き、楽器と壁の間に木枠

の窓を設置する。開閉できるようにした木枠の窓には、紙を貼る。テーブルに置かれた楽器の 1 つの点と壁の 1

つの点(視点)を糸で結び、糸が木枠の窓と交差する点にペン先を合わせる。次に、糸をいったん外し、紙の窓を

閉じてペン先の位置に点を打つ。又、窓を開き、次の点を求めていく。これを繰り返し、最後に紙の上で打った

点を結ぶと正確な楽器の形が描けるというのが「透視図」を描く仕組みである。

図 1.1.2 Niépce の写真

(a) 透視図の発明 (b)ピラミッド状の線 (c) マジックランタン(Whikipedhia)

図 1.1.1 透視図(パース)

Page 2: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

(写真の発明)

最初の写真は画家 Joseph Nicephone Niépce (Nee-ps ニエ・プシュと発音)(1765-1833)によってポジのイメ

ージを 8 時間かけて撮影された(図 1.1.2)。Jacques Mandé Daguerre ダギュールはニエ・プシュと共同研究す

ることに同意することで、ニエ・プシュの発明したエリオグラフィーの技術をすべて聞き出したが、ニエ・プシ

ュの生存中はほとんど何もせず、ニエ・プシュの死んだ 1833 年後の 1837 年露光時間 10~20 分(その後 1 分以

内)というダゲレオタイプのプロセスにより、最初の実用的写真を開発した。ダゲレオタイプは特許にせず、こ

れを仏科学者・首相のアラゴ(ナポレオン III 世の時代)にもちかけ、フランス政府はその有用性を認め、終身

年金を与える。そのことによりダゲレオタイプの写真技術は奇しくも世界中に広まることになる。同時に、1840

年ごろフランス人測地学者でもあった Dominique François Jean Arago はフランス科学技術アカデミーにダゲ

レオタイプを用いて写真測量 することを唱え始めた。

(平板写真測量)

1849 年 Aimé Laussedat (1819 年 4 月 19 日~1907 年 3 月 18 日)は地上写真を初めて用いて地形図を編集し

た。ロスダーは写真測量の父と呼ばれ、ロスダーはそのプロセスを iconometry [icon (ギリシャ語)”像”と-metry

(ギリシャ語)”計測の技術、プロセス又は科学”]と呼んだ。

図 1.1.3 Photogrammetric perspective by Hauck from Fig.7 in History of Photogrammetry (ISPRS)

Page 3: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

図 1.1.4 において点OℓとOrはそれぞれ視準した角Ψℓ, Ψrの透視図を作成した点である。点OℓとOrから角度Ψℓ, Ψrの線

を引く。点OℓとOrから距離n ∙ fの点を通り、先に引いた線に直交する直線を引く。この垂線は、それぞれ、像ℓ、

rの水平写像を表す。ここで、nは縮尺係数である。2 枚の透視図における対応点の水平写像Pℓ′、Pr′と投影点Oℓ

とOrを結ぶことにより点 P の水平位置が求められる。また、既知点OℓとOrの一つたとえば点Orと点 P の標高差

を求めるには、次のようにする。点Pr′を通り、直線Pr′Orに垂直な直線上に点Pr′からの距離がn・Zrとなる点[Pr]

をとり、その点[Pr]と点Orを結ぶ。直線[Pr] Orは投影線OrP の水平面の rabattament を表し、描画縮尺での量Δ

Zrは点 P と既知点Orとの標高差となる。同様に、既知点Oℓに対する標高の差ΔZℓも決定することができる。ΔZr

とΔZℓとの差は、水準測量で測定できる 2 既知点OrとOℓの標高差に等しくなる。このことを制約条件として使用

することができる。この一般的な手順によって、1850 年にロスダーが作成したバンセンヌ城の図面を図 1.1.5 に

示す。オリジナルの図化縮尺は 1:2,000 である。

1859 年にパリで行われた最初の実験において、フランス科学アカデミーの代表団によって詳しく調査・検討

が行われた結果、この実験は将来の図化が写真の利用によるべきというロスダーの確信を確実にするものとなっ

た。その結果、1861 年の春、フランス国防省の命令によって、ロスダーは彼の考案した地形測量用カメラを用い

て、最初の地形図の図化をベルサイユ(Versailles)近くのビュック村(Buc)で行った(図 1.1.6)。野外作業とし

ては、基線長 200mの 4 個の三角点の設置およびコロイド湿板の 8 枚の写真を撮影した。図化面積は約 200 ヘク

タールで、2 日間を費やした。同じ年の秋、ロスダーの指導のもとに、フランス陸軍工兵隊は、モンバレリアン

城(Mont Valerien)の地図作成を行った。このときには、コロイド湿板の代わりに、乾いたロウ紙(wax paper)を

図 1.1.4 Laussedat の方法 図 1.1.5 平板写真測量

図 1.1.6 Buc 村の地形図 1:2,000

Page 4: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

使用した以外は、前回と同じ方法が採用された。

(「写真測量」“photogrammetry”)

1893 年 Albrecht Meydenbauer (1834 年 4 月 30 日-1921 年 11 月 15 日)は初めて用語"photogrammetry"を

用いた。彼は王立プロシャ写真測量研究所を設立し、1909 年まで所長を務めた。メイデンバウエルは建築写真

測量を行い、また当時のカメラが写真測量に適さないと考え、1867 年最初の地上写真用カメラを設計した。こ

れはマッピングのための最初の 105 度の広角レンズ Pantoshop レンズであり,ドイツ Freybrug の地形図やセ

ントメアリー教会の構造図に使われた。

(写真測量の発展)

(1)1850 ~1900 年:平板写真測量

1765-1833 年 Joseph Nicephone Niépce ネープス(ニエ・プシュ):最初の写真発明

1839 年 Daguerre ダギュール(仏): ネープスに師事し写真術ダゲレオタイプの発明

1839 年 Porroタキオメータ一号機の発明、1858年望遠鏡、コンパス及びレベル付属パノラマカメラ発明

1849 年 Laussedat (仏): 地図作成に写真の利用; 写真経緯儀の設計; 地上測量の平板測量と同様の三角測量法の

利用

1858 年 Nadar (仏):パリの写真撮影に熱気球を初めて使用

1858 年 Chevallier(仏)写真平板測量機の発明-写真乾板-

1860 年 Boston (米):市民戦争中、陸軍は気球撮影を行った

1865 年 Porro(伊)-Koppe(独)の原理による写真ゴニオメータの設計

1885 年 Kodak(米)ニトロセルロースのフィルム、1890 年ロールフィルム

1890 年代 Adams (米):射線法の利用

Scheimpflug (独): 光学偏位修正の開発

(2)1900 ~1960 年:アナログ写真測量

1895 年 Deville (カナダ): オーバーラップする写真のステレオ観測の最初の器械を製作

1903 年 Wright Brothers (米):飛行機で飛行

1901 年ごろツァイス社の Pulfrich(独):測標(メスマーク)を用いての非常に精密な計測装置ステレオコンパレー

タの開発

1901 年ごろ Fourcade (南アフリカ): 同様の機械の開発

1908 年 Von Orel (オーストリア): ステレオオートグラフ:プルフリッチのステレオコンパレータにリンクする

最初のステレオ図化機の製作

図 1.1.6 Meydenbauer の地上カメラ 図 1.1.7 Laussedat の地上カメラ

Page 5: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

器械的投影のアナログ図化機で有名:地上座標の計算のために器械的解法が利用される

1920 年 Nistri (伊)と 1921 年 Zeiss (独):ムルチプレックス:最初の光学的アナログ図化機

1919 年 Hugershoff (独): Autokartograph

1923 年 Bauersfeld (独): Stereoplanigraph

1923 Poivilliers (仏) と 1926 年 Wild (スイス): 光学的・器械的ステレオ図化機の開発

1924 年 Von Gruber (独): アナログステレオ図化と標定の理論;空間空中三角測量

1929 年 Lacmann と 1933 年 Ferber: 微分偏位修正

1950 年代 Russell Bean (米): Orthophotoscope

(3)1960 年~1990 年(現在):解析法

1941 年 Zuse (独):電子計算機の発明

1943 年 Aitken (米):軍のサポートでさらに電子計算機を発達させた

1899 年 Finsterwalder (独):空中写真の解析的図化

1945 年 Earl Church (米)空間後方交会法

1953 年 H. Schmid と Duane Brown (米):実用目的での解析写真測量の応用;バンドル法ブロック調整(空中三

角測量);(欧州の写真測量の工場で製作された)ステレオコンパレータ

1973 年 Ackermann (独): 独立モデル法の空中三角測量調整

1957 年 Helava (フィンランド,米):解析図化機の発明 (AP)

1965 年 OMI-Bendix: UNAMACE

1976 年 Zeiss (独)と Matra (仏):新しい解析図化機の紹介

1980 年 Kern と Wild (スイス):解析図化機の紹介:画像相関

1958 年 G. Hoborough (カナダ): Wild Stereomat (オートメーション化の可能性)

US Military: DTM とコレレータによる電子的オルソフォトの作成

1970 年 Hoborough: Gestalt Orthophotomapper

1984 年 Kern と Zeiss: オルソフォトの作成:線地図のデジタル取得

(4)デジタル写真測量(現在~)

デジタル衛星画像 (Landsat MSS の打上 1972 年 7 月; 1982 年 Landsat TM の打ち上げ;15mパンクロバンド

の Landsat 7;SPOT シーン; MOMS—20m;高解像度入手可: IKONOS—1m; QuickBird--0.61m),2008 年

Geoeye(0.41m), DigitalGlobe(0.46m), RapidEye(5m)

(写真測量の利用)

フォトグラメトリーとは、物体を撮影したアナログ写真(又はデジタル画像)からその物体の性質(品質、形

態)を判定し、そしてその物体の物理量(位置、流さ、体積)を非接触で計測する技術である。以下では、フォ

トグラメトリーの概念、原理、歴史などから理論と実際について述べていく。

1.2 フォトグラメトリーの概念 concept

フォトグラメトリーは、写真(画像)に記録された像(image)からその対応する被写体の物理量(quantitative)

及び質情報(qualitative)を取得する技術である。写真像は二次元座標であるが、2 か所から撮影したステレオ画

像から三次元モデルを構築し、フォトグラメトリーでは被写体の空間を再現し三次元座標(X,Y,Z)を求めることが

できる。物理量とは、被写体の位置、長さ、面積、体積を求めることを表す。質情報は、写真に写されている被

写体の性質を読み取る技術により、空中写真の場合、家屋、田、畑、池、道路、鉄道、堤防、地形などの地図情

報や地質などの地表面の構造を取得する。質情報から被写体の性質を読み取ることを写真判読 (photo-

interpretation)という。

Page 6: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

1.2.1 写真の種類・解像度と問題点 classification and problems

(種類)

写真(photograph)の原理は、ハロゲン化銀は光が当たると銀イオンが還元され、金属銀微粒子の核ができる現

象による。感光して銀粒子核の潜像となってもそのままでは画像にはならない。感光した部分にある銀はごく少

量なため、現像液により適当な量まで銀粒子を増量させて可視化する必要がある。また、感光しなかった部分は

それ以上感光しては困るので不要な部分のハロゲン化銀は定着液により取り除く。可視的な電磁波の特定な波長

領域のみに感光するようにし、三原色に対応するようにして、感光層を重ねるとカラー写真になる。これがアナ

ログ写真(銀塩写真)である。

デジタル写真(digital image)は画像を電子データとして記録するためにCCDイメージセンサ(電荷結合素子)

や CMOS(相補性金属酸化膜半導体)の固体素子を用いている。デジタルカメラはカメラレンズ交換式一眼レ

フ、コンパクトカメラやデジタルカメラ付き携帯電話があり、撮像素子の大きさは 35mm版

(CanonEOS1dsMarkIII:36mm×24mm、5616×3744)、4/3 フォーサーズ(Four thirdsLumixDMC-L10K:

18mm×13.5mm、3648×2736)のなどが開発されている。

なお,CCD(charge coupled device)はレンズから入射された光をフォトダイオードが受光し,フォトダイオー

ドが光の信号を電気信号に変える原理を利用して 2 種類のφH パルスと 4 種類のφV パルス,残留電荷をリセッ

トするφR パルスにより駆動する。フォトダイオードに溜まった電荷は 4 種類のφV パルスによって押し下げら

れ,掃き出された光の電荷をφH パルスによってアンプ回路に流し込み,次のφH パルスが電荷を受ける前にφ

R パルスによってリセットをかける動作を行う。CCD には 3 層 CCD と単層 CCDがある。

また、写真の光の波長による分類では写真(画像)はモノクロ、カラー、赤外、フォールスカラー、X 線写真

などがある。

写真測量において、撮影する位置から分類すると、空中写真(aerial)や地上写真(terrestrial)に分けられる。前

者は飛行機、ヘリコプタ、気球、ラジコンヘリ、クレーンあるいは人工衛星から、後者は地上にカメラを設置し

て対象物を撮影して、計測する。

さらに、空中からあるいは宇宙から撮影されるものは中距離・遠距離写真測量、撮影距離が 20m以下のものを

近接写真測量 close-range といっている。

また、写真測量はパソコンで処理できるようになり、解析法が適用でき、非計測用カメラ(一眼レフカメラ等)

の使用が可能になった。

(解像度)

空中写真のカメラでは 1mm中で 100 本の線が分解できるような解像度が要求されるが、デジタル写真では

2,000dpi(dot per inch)というように解像度を表す。これは 1 インチ(25.4mm)中に 2,000 の画素(pixel)が存在

する。なお、写真の粒子は 1-5μm の大きさに対し、デジタル画像では 1.75-6μmのものが開発されている。ま

た、デジタル画像の色調(グレースケール)はビットで表し、8 ビットならば 256 色(2 の 8 乗)、12 ビットな

らば 4,096、32 ビットでは 16,77,216 色で表される。

表 1-2-1 フィルムカメラの写真縮尺と地図情報レベル

地図情報レベル 撮影縮尺

500 1/3,000~1/4,000

1000 1/6,000~1/8,000

2500 1/10,000~1/12,500

5000 1/20,000~/25,000

10000 1/30,000

表 1-2-2 DMC カメラの場合

Page 7: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

地図情報レベル 地上画素寸法

500 90~120mm×2×B/H

1000 180~240mm×2×B/H

2500 300~375mm×2×B/H

5000 600~750mm×2×B/H

10000 900mm×2×B/H

(B=基線長、H=撮影高度)

(問題点)

アナログ写真はフィルムや印画紙を使用する従来の銀塩写真(silversalt photograph)、デジタル写真(デジタ

ル画像)は色調(グレースケール)を数値で表現する画像のことである。ここで問題とするところは、①歴史が

証明するように、アナログ写真においてガラス乾板やフィルムならば 100-150 年程度しか保存できず、また印画

紙は 100 年ぐらいが限界である。(大正 13 年、昭和 3 年及び昭和 17 年大阪市都市計画、防空目的で撮影された

空中写真が乾板、印画紙で現存する。)②CCDカメラのデジタル画像、フィルムカメラで撮影したアナログ写真

を変換したデジタル画像、また衛星画像はデジタル画像であるが、これらはフィルム、テープや HDD で記録さ

れている。デジタルは何年保存できるのかは不明である。

1.2.2 空中写真 aerial photograph

(定義)definition

空中写真は、人工衛星、航空機、ヘリコプタ、気球、ラジコン飛行機、ラジコンヘリ、無人マイクロ飛行物体

などの位置(platform)から撮影された写真や画像データのことをいう。空中写真は、撮影する位置によって、

写真の利用目的が異なる。たとえば、人工衛星から撮影された画像は、リモートセンシング技術により、グロー

バルな地球環境の監視や植生分布の解析などに用いられている。一方、航空機やヘリなどによる高度の低い撮影

の空中写真は、地形図の作成、災害調査、環境調査、遺跡調査などに利用されている。また、商業用の高解像度

衛星(IKONOS、QuickBird など)が打ち上げられ、特に GoogleEarth などではその衛星画像を無料でインタ

ーネットにおいて閲覧できる。

(DEM)

DEM というのは「デジタル地形モデル」(digital elevation model)であり、ステレオ空中写真によるモデル計

測、ステレオ自動相関や航空レーザスキャニング等により構築されている。10 年前に、スペースシャトルに合成

開口レーダを搭載し、地球をグローバルに計測したデジタル地形データ(DEM、DSM)が取得されている。こ

の DEM は SRTM(Shuttle radar topography mission)と呼ばれ、米国は 1”(30m)間隔、その他の世界では 3”

(90m)間隔にデータが無償で USGS や NASA から GeoTiff, HGT, DTED, ArcGrid, GridFloat などのフォマ

ットでダウンロードできる。日本では 50mメッシュ、10m及び 5mメッシュ(xml)が国土地理院によって提供さ

れている。これらの DEM は、写真測量ではデジタルオルソ画像の作成に利用できる。

1.2.3 地上写真 terrestrial photograph

フォトグラメトリーは、ロスダーによる地上写真を用いて測定したのが始まりである。気球写真による空中写

真は Nadar により、飛行機の初飛行はライト兄弟が行ったが、日本では明治 43 年(1910)徳川好敏陸軍大尉が

東京代々木練兵場においてアンリ・ファルマン機の飛行が初飛行とされる。明治 44 年(1911)4月に所沢飛行

場が開場し、徳川機に同情した伊東中尉がコダックカメラで地上の風物を撮影した。これが飛行機による空中写

真撮影の嚆矢である。

地上写真は地上にある撮影位置から、比較的近い距離から撮影される。撮影距離が 20m以内の写真を測る場

合、近接写真測量(close-range photogrammetry)と呼ばれている。地上写真の利用方法は、撮影条件(基線長、

Page 8: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

焦点距離、フィルムサイズ、CCD サイズなど)によって計測の制約が生じるが、主に交通事故の現場検証図の作

成、埋蔵文化財の発掘調査、遺跡・遺物の復元、ダム・トンネル・橋梁などの構造物の劣化調査、海岸の波高調

査、医学における背骨の計測、歯科の矯正などの検査に利用されている。

1.3 フォトグラメトリーの原理と誤差

(中心投影)central projection

写真の像(イメージ)は、被写体から反射した光がレンズ中心を直進し、フィルム面や CCD 面に投影される

ものであり、写真像、レンズ中心および被写体が同一直線上に存在する関係が成り立っている。これは中心投影

の原理であり、その条件を共線条件(co-linearity condition)という。これを代数的に 11 個の変数で表した分数式

を DLT(direct linear transformation)といい、Illinois 大学の Karara と Abdel Aziz によって開発された。DLT

はカメラの傾き、レンズの位置ではなく、カメラの空間的な位置を直接決定できる利点があるが、幾何学的な要

素解が不明という欠点がある。ただし、DLT におけるパラメータと幾何学的要素の関係は一対一で解明されてい

る。

中心投影は、基本的にはガウス・ニュートンの薄肉レンズ公式 1/a+1/b=1/f(a:撮影距離、b:画像距離、f:焦点

距離)がカメラによる像の結像で成り立つとき、光学的に鮮明で、物理数学的に正確な像が得られる。

(誤差)error

フォトグラメトリーでは、この中心投影の原理を利用し、共線条件や DLT などにより対象物の位置を求めて

いる。しかし、現実にはその光の直進を妨げる大気の散乱、屈折、レンズの歪などの要因があり、それを除去す

ることにより計測精度を向上させることができる。また、非計測用カメラでは、内部標定要素(主点位置、画面距

離、レンズ収差)を解析することにより、計測に利用できるようになる。ただし、非計測用カメラによる計測精度

は計測用カメラとは同等にはならない。

1.3.1 フォトグラメトリーの原理 principle

写真測量の計測原理は、フィルム面や CCD 面に投影された像と被写体との幾何学的関係から被写体の形状に

関する情報を取得する技術である。被写体、レンズ中心、およびフィルム面や CCD 面上の像のそれらの 3 点が

同一直線上にある共線条件を用いて計測する。共線条件や DLT(direct linear transformation; Karara et al,

1971)はカメラのセルフキャリブレーション等に使用する。ただし、1 台のカメラで撮影した 1 枚の写真から被

写体の奥行きを含む三次元情報を取得することはできない。そこで、異なる 2 箇所の位置から撮影した 2 枚一組

の実体写真(stereo pair;ステレオ写真)から一対の光線を交会させて、三次元情報を取得する。その場合には、

共面条件が使用される。

1.3.2 フォトグラメトリーの計測精度の劣化要因

(1)誤差の要因 cause of error

フォトグラメトリーの計測精度の劣化要因は、2.2 節で述べるように、コンパレータの誤差(xy軸の縮率、

xy軸の非直交度)、フィルム媒体の伸縮とひずみ、CCD面の非平面性、レンズ歪(半径収差、接線収差)、大気

の屈折、観測機器の誤差、人的観測誤差などが考えられる。また、空中写真や衛星写真などでは、地球曲率や空

気の散乱による影響も考慮する必要がある。

レンズ収差(lens distortion)は、光の直進性を妨げる要因として最も大きいといわれている。この要因は、

アナログカメラだけでなく、デジタルカメラでも考慮しなければならない問題である。特に、一般のカメラ用レ

ンズは、計測用カメラレンズに比べ、結像位置ずれがフィルムの周辺に行くほど大きいため、レンズ収差につい

て考慮する必要がある。

(2)水平位置誤差と高さ(奥行き)の誤差の算定 horizontal and vertical errors

Page 9: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

写真測量の水平位置の誤差は(σ∆r)は高低差による像のずれの式Δr

r=

⊿h

Hから、σ∆r=

r

Hσhで表される。仮に、

写真縮尺1/mb=1/330、カメラの焦点距離f=20mm、画面主点から像まで放射状に測った最大距離 r=21.6mm、

H=6.6m,σh=1mとすれば、写真測量の水平位置誤差はσ∆r=r

Hσh=

21.6mm

6.6m× 1m=3.2mmとなる。ここで、Hは

撮影距離(対地高度)である。

また、写真測量の高さ(地上写真の場合奥行き)の誤差(σ∆h)は視差式∆h=(H

f) (

1B

H⁄)・∆pから、σh=(

H

f) (

1B

H⁄)・

σpで表される。例えば、写真縮尺1/mb=1/333、カメラの画面距離 f=20mm、写真サイズsx×s=36mm×24mm、

オーバーラップp=85%、画像の画素寸法σp=6.41μm、主点基線 b=sx(1-p)=36mm(1-0.85)=5.4mm,基線 B=b

× (H/f)=5.4mm× (6.6m /20mm )=1.78m,B/H=1.78/6.6=0.27 から、 σh=(H

f) (

1B

H⁄)・σp=(

6.6m

20mm)・ (

1

0.27) ×

0.00641mm=7.9mmとなる。

1.3.3 フォトグラメトリーの特徴

1) 特殊な技術・設備が必要である(撮影用手飛行機、カメラ、図化機など)

2) 作業が能率的・経済的である

3) 飛行機などにより数時間で撮影できる

基準点測量、撮影以外はほとんど室内作業なので、天候や地形、交通等の自然的・人為的な外部条件の影響を受

けることが少ない。

4) 一様な精度が確保される

5) 等高線は直接測定されている

6) 空中写真は長く保存できる

7) オルソ画像としてそのまま利用できる

1.4 フォトグラメトリーの沿革と応用 history and applications

1.4.1 フォトグラメトリーの発明と基礎 inventions and foundation

[1]写真の発明 invention of photograph

1727 年ドイツ人で Altdorf 大化学の教授であったシュルチェ〔Johann Heinrich Schulze〕ならびに 18 世紀

中期におけるイタリア人の Turin 大物理学教授ベカリア〔Giovanni Battista Beccaria〕により硝酸銀の感光性

の発見が銀塩写真の始まりとされている。ダゲール〔Louis Jacques Mandé Daguerre〕は 1829 年ネープスに学

びはじめ、間もなく共同研究を開始して、1839 年 Daguerreotype を発明した。

[2]地上写真の図化 terrestrial plotting

1849 年フランス人ロスダー〔Aimé Laussedat〕は、地上写真を用いた平板写真測量によって始めて地形図を

編集し、1851 年ピレーネ山中で新地図の作成に従事するとともに、カメラルシダによりバンセンス城の図面を

描画し、さらに 1861 年写真経緯儀(Phototheodolite)によりベルサイユ近くのビュック(Buc)村の縮尺 1:2 000

の地図を作成した。彼は写真測量の父と呼ばれている5。

[3]アナログ図化機 analog plotters

アナログ図化機の標定において、まず写真主点をプロジェクタのレンズ光軸と一致させ、またカメラの画面距

離 principal distance(focal length)とプロジェクタの画面距離を同じにします。それを内部標定 interior

orientation といい、これを行うことによって投影時の光線が撮影時と同じ状態になる。もしも、それぞれレンズ

の性質が同じならばカメラでの入射光線の方向とプロジェクタでの射出光線方向とは同じになる。これをポロ・

Page 10: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

コッペの原理という。1839 年 Paulo Ignazio Pietro Porro (November 25,1801 – October 8, 1875)はタキオメー

タの発明を行い、1865 年レンズ収差を相殺する写真ゴニオメーターを製作したが、Carl Koppe (1884-1910)も

同様の原理を発見している。

次に、左右のプロジェクタから射出する対光線はカメラ位置が未定なのでまだ空間では交わっていない。そこ

で、カメラの回転角と平行移動量を未知数として選んだ 5 個の量を解けば対光線は空間で交会する。これは 1892

年にドイツのシフナー〔F. Schiffner〕が見い出した相互標定である。また、1915 年ごろガッサーとドイツのフ

ォングルーバ〔Otto von Gruber〕は、その機械法を解明した。最後に、7個の未知量であるモデルの縮尺とモ

デルの基準面を決めれば、そのステレオモデルは地面と相似になる。それを絶対標定という。以上の 3 つの標定

が終了すれば、実際の地面と相似なステレオモデルになる。

[4]デジタルフォトグラメトリーdigital photogrammetry

1)スキャナ scanner for aerial films

デジタルフォトグラメトリーを可能にした最大の要因は 23cm×23cmサイズの空中写真用スキャナの開発にあ

る。デュポンは 2540dpi、ベクセル社 UltraScan5000 は幾何精度 2μm(5080dpi)、アグファ社 ACS100 は

2400dpi、スクリーン社 DT-S1045AI は 8000dpi、Z/I Imaging 社 PhotoScan は 7μm(幾何精度 2μm)、LH

Systems 社 DSW600(図 1.4.1.4 参照)は 4.5μmなどの解像度の写真測量用スキャナを製造してきた。

図 1.4.1.1 アナログ図化機の原理 図 1.4.1.2 アナログ図化機 “Wild A8”

図 1.4.1.3 Leica RC-30 (フィルムカメラ)

Page 11: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

2)デジタル航空カメラ digital aerial camera

Leica は航空機搭載型で後方、直下及び前方を同時に撮影する 3 つの 12bit/画素のラインセンサをもった装置

を開発した。そのセンサは、地表面の DEM(digital elevation model)、又は DSM(digital surface model)を自動

的に取得し、同時に直下画像からデジタル画像を得る航空センサ ADS40 である。また、Z/I 社はイメージのぶれ

補正 FMC を可能にした 12bit/画素のマトリックス配列の CCD 航空カメラ DMC150(図 1.4.1.5 参照)を、さ

らにベクセル社(MicroSoft 社)は 12 bit/画素の航空 CCDカメラの UltraCam-D を製造している。これら航空

センサや CCD カメラを用いることで従来のようなデジタル変換なしに、デジタル画像が直接取得できるように

なった。

図 1.4.1.5 航空デジタルカメラ

Leica scanner “DSW” Vexcel Ultrascan5000

図 1.4.1.4 Scanner for aerial film.

Leica ADS60

図 1.4.1.6 航空センサ

Trimble ( Rolleimetric

AIC4x)49.1mm×36.9mm

6.8μm、f=60,70,100mm

Leica社 RCD100

7216×5412 画素

f=30,60,100mm

Vexel 社 UCD

4008×2676(9μm)

f=28mm

Z/I Imaging 社 DMC

7680×13824 画素

f=25, 120mm

RolleiMetric AIC 4x

135megapixel

Page 12: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

表 1-4 デジタル航空カメラの諸元の比較

カメラ ADS40 Leica DMC Z/I UltraCamX to Xp

CCD_Pan 12000 12000 13824 7680 18310 11310

pixel size 0.0066 0.012 0.006

CCD_mm 79.2 79.2 165.888 92.16 109.86 67.86

color 3000 2000 5770 3770

pixel_size 0.012

CCD_mm 36 24

f pan(mm) 62.77 120 100,75,125

f color,NIR 62.77 25 28

(DMC 航空カメラの場合の撮影計画)flight planning for DMC camera

デジタル航空カメラを用いて撮影するときには、オーバーラップ(p)及びサイドラップ(q)は従来のフィルムカメ

ラの場合とは異なり、p=80%、q=60%のように設定する。仮に UltraCamXp(画面サイズ 110mm×68m

m、焦点距離f=100mm)を用い、地図情報レベル 1000 を、測量範囲東西 10km×南北 6kmを撮影する場

合、コース当たりの画像枚数、コース数等はいくらかを計算してみる。ただし、コースはデジタル画像の短辺に

平行、撮影基準面は標高 10mとする。

(解答)

① 画像縮尺1/mb=1/8,000、

② 撮影高度H = f × mb=800m、海抜撮影高度 Ho=H+h=800+10=810m、

③ 撮影基線b = sb × (1 − p) =13.6mm、撮影基線B = b × mb =108.8m、

④ コース当たりの画像枚数Np/c = [10km

0.1088km] + 1 + 2 =95 枚/コース(コース両端に 1 枚ずつ撮影点を増やす)、

⑤ 画像上コース間隔w = sa × (1 − q) = 110mm(1 − 0.6) = 44mm、実コース間隔W = w × mp = 352m、

⑥ コース数C = [6km

0.352km] =17 コース、

⑦ 全モデル数Nm = Nm/c × C = (95 − 3) × 17 = 1564画像となる。

註①:コース数 C の計算で 17.045 となるが、実際の画像幅Sa = sa × ma = 110m × 8,000 =880m、南北の余り

= C × W − 10km = 17 コース× 352m − 6km = −16m、南北の余りの半分=-8m、サイドラップの半分(30%)

= Sa × 0.3 = 880m × 0.3 = 264m、南北の余りの半分を考慮すると余裕は−8m+264m

880m= 29%となる。

作業規程の準則では、サイドラップは 30%であり、南北の余裕は 15%以上なので、上の計算は適合していると

いえる。

註②:2009 年度測量士国家試験写真測量午後 No3(国土地理院)で「DMC 航空カメラ」を使用する場合の撮影

計画が初めて出題されたことから、DMC での撮影計画を Excel プログラム化し、公開しています。

3)近接用カメラ close-range cameras

最初の写真測量は、地上測量用カメラによる地上写真の図化から開始された。航空機の開発に伴い、空中から

航空カメラにより撮影した空中写真による地図作成が主な作業になり実施された。写真測量におけるカメラで写

真を撮影して、この写真から元の現地を計測するということは、この撮影した写真から現地を再生するという原

理に基づかれる。そのため、カメラの内部標定要素である焦点距離、主点及びカメラレンズの収差が既知である

のは絶対条件である。

Page 13: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

従来の写真測量はアナログ写真測量であって、まず撮影した写真はフィルム又は印画紙であり、これに基づき

撮影したときの光線を再現するには光学的に行うしかなく、また器械的な再生が行われるようになった。光学的・

器械的な光線の再生には各種の光学的・器械的誤差の補正には多大な装置の費用がかかる欠点があり、またそれ

らの誤差を完全に取り除くことはできなかった。そのため、まず現場を記録するカメラは計測用でなければなら

ず、そのカメラの性能は誤差が少ないもので、また内部標定要素既知のカメラが使用された。写真を計測する装

置はステレオ図化機であり、当初は光学的、又は器械的に投影するアナログ図化機であり、ステレオモデルの計

測点を特定するメスマークの直径は 20-40μm で行っていた。

ところで、コンピュータにおいて画像が扱えるようになり、フィルムをスキャナでデジタル化できるようにな

り、次いでカメラも銀塩写真から CCD や CMOSという撮像素子が開発され、直接デジタル画像が取得できるよ

うになった。

コンピュータを使用した写真測量が実施できるようになったので、完全な解析法が適用でき、カメラの内部標

定要素が簡単に求められるようになった。そのため、非計測用カメラも写真測量の対象になった。

空中写真測量に対し、地上写真においてデジタル地形である DEM をステレオ画像から取得する場合、その形状

が複雑なことからかなりの制約があるが、それを克服する画像マッチングが開発され、デジタル近接写真測量が

行われている。

4)デジタル図化機 digital plotters

アナログ図化機の次に続く図化機は、フィンランド生まれのヘラバ〔Uuno (Uki) Vilho Helava;1923-94〕に

(6708×8956) 40.2mm×53.7mm、

6μm、レンズ HCD F=28mm

図 1.4.1.7.2 non-metric camera

“Hasselblad hd-60” (非計測用)

2552×1920、2/3”型、Rollei D-Apogon

f=10-30mm

図 1.4.1.7.1 Rollei d7(計測用)

6668×4992(48.01mm×35.94mm) f=40mm

図 1.4.1.7.3 Rolleiflex Hy6(非計測用)

Page 14: デジタル写真測量の理論と実際 - w01.tp1.jpw01.tp1.jp/~a540015671/program/ch1_photogrammetry.pdfデジタル写真測量の理論と実際 第1章 フォトグラメトリー(写真測量)photogrammetry

より、1957 年カナダの NRC(National Research Council)で発明された解析図化機(Analytical Plotter)であっ

た。解析図化機は、専用のコンピュータにより自動的にステレオモデルが標定され、イメージと地図との関係を

デジタル座標に変換する画期的なものであった。

解析図化機にはフィルムを、一方 1980 年代から開発が始まったデジタル図化機にはデジタル画像を使用する。

デジタル図化機には、当初ワークステーションを使用したが、現在では解析写真測量のソフトコピーをパソコン

にインストールしたステレオ図化機となっている。デジタル図化機では単一デジタル画像やステレオモデルの自

動標定、余色やポラロイド光線による CRT 上でのステレオ観測、空中三角測量、自動相関による DEM 取得、

及びオルソ画像の作成などのメニュが用意されている(次節参照)。デジタル図化機には、Stereo Capture

(DAT/EM 社)、SocketSet(LH Systems 社)、DiAP(ISM 社)、DVP(DPV GS 社)、イメージステーション(Z/I

社、図 1.4.2.1 参照)、SoftPlotter(Vision 社)、DMS (R-Wel 社)、図化名人(アジア航測)、MapMatrix (Vision

Tec 社)、Lensphoto(Lenssoft 社)などがある。

1.4.2 デジタルフォトグラメトリーの GIS への応用 Application to GIS

GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは、位置や空間に関する様々な情報を、コンピ

ュータを用いて重ね合わせ、情報の分析・解析を行ったり、情報を視覚的に表示させるシステムである。 元々は

マーケティングなど専門的な分野での利用が一般的であったが、最近では、カーナビゲーションシステムなど私

たちの生活の中での身近な利用へと、その活用範囲が広がってきている。GIS データの基となる地図データや環

境データは、写真判読、写真測量、画像処理によって得られたデータが中心になっている。広義の GIS は空間参

照システム、空間情報システムなどがある。狭義の GIS は、環境管理、都市計画支援、資源管理、遺跡管理、森

林管理など地理学的な意味もある。

(a) Z/I Imaging “ImageStation”

図 1.4.2.1 Digital Plotter(デジタル図化機)

(b) Socet Set LH Systems “DPW”