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1 プレス加工品の品質向上と その特徴

007-035 01章 訂 - Nikkanpub.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file5459e1a997bc6.pdf第1章 プレス加工品の品質向上とその特徴 10 1-1 プレス加工法の特徴と品質特性

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  • 章第 1プレス加工品の品質向上と

    その特徴

  • 第1章 プレス加工品の品質向上とその特徴

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    1-1 プレス加工法の特徴と品質特性

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    必要である。

     ②加工法は 5つある

     プレス加工には抜き加工、曲げ加工、絞り加工、成形加工および圧縮加工

    (冷間鍛造を含む)の 5つの加工法がある(図 1.3)。いかに複雑な形状の製品

    もこの 5つの加工法の組み合わせでできており、その中でも代表的な加工法が

    抜き加工、曲げ加工および絞り加工の 3つである。

     ③金型を使って製品を加工する

     プレス加工は金型の形状および寸法を製品に写す加工であり、製品の品質の

    大部分は金型の精度で決まる(図 1.4)。逆にプレス加工中の品質の変化(ば

    らつき)は非常に小さいため、この特徴を生かすと品質管理を簡略化した上に

    信頼性を向上し、その上生産性の向上が可能になる(図 1.5、図 1.6)。

     プレス加工後の製品の形状および寸法の大部分が金型で決まるため、製品の

    品質は作業者の個人差に左右されにくく、加工に必要な条件を整えれば、自動

    化が容易で信頼性の高い生産が可能である。例えば材料を同じ金型に入れて加

    工する場合、経験20年の熟練者が入れても、入社したばかりの新人が入れても、

    加工後の製品のできばえは同じである。逆にいえば多くの場合、製品の品質向

    上の前に、金型についての品質向上とその管理が必要であるといえる。

    1―1 プレス加工法の特徴と品質特性

    1―1―1 プレス加工の特徴

     プレス加工は、切削加工その他の加工方法に比べて非常に変わった特徴があ

    る。プレス加工品の品質向上はこの特徴をしっかり掴んで対処する必要があり、

    一般的な従来からの品質管理(QC手法)では時間および費用が多く掛かるが

    効果は少ない(図 1.1)。このため「品質を厳しく要求されるとコストアップ

    になる」などといった間違った考えを持つ人もおり、実際に品質向上とそのた

    めの管理が生産性を阻害し、逆に品質向上を妨げている例もある。

     プレス加工の品質向上で最も重要なことは、まず「プレス加工」の特徴を

    しっかり掴み、理解をすることである。プレス加工には、次のような大きな特

    徴がある。

     ①塑性加工の一種である

     プレス加工は圧延、鍛造および押出し加工などと同じように、金属に大きな

    力を加えて変形させ、その変形が元に戻らない性質(塑性)を利用した塑性加

    工の一種である(図 1.2)。このため加工には大きな力(加圧力)を必要とす

    るが、加工精度を向上させるために、機械および金型は特に高い強度と剛性が

    図 1.1 プレス加工での一般的な品質管理の限界

    一般的な品質管理共通部分 プレス加工の品質向上

    統計的品質管理QC7つ道具品質管理部門の強化

    プレス加工法(抜き加工曲げ加工その他)プレス作業金型製作技術設備の保全

    図 1.2 塑性加工(プレス加工)の原理

    大きな力で変形

    加工前の形状 加工後の形状加工

    図 1.3 5 種類のプレス加工法

    抜き加工 曲げ加工 絞り加工 成形加工 圧縮加工

  • 第1章 プレス加工品の品質向上とその特徴

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    1-1 プレス加工法の特徴と品質特性

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     金型は修理または保守をしたとき、加工ミスをしたとき、加工中に金型を調

    整したときなどは別な金型に変わったと考え、品質の詳細な確認が必要である。

    ただし、被加工材の材料の変化など、金型以外の要因での変化が問題になる加

    工の場合はそれらの管理が重要になる。

     ④自動化が容易である

     切削加工などで三次元の複雑な形状を作るには、その形状に沿って刃物が動

    く必要がある。このため自動で加工をするには、製品ごとに異なる形状に合わ

    せた三次元の動きを制御する必要があり、製品の形状が複雑になるほど自動化

    は困難になる。

     これに対してプレス加工は製品形状および寸法の大部分は金型で決まるため、

    自動化は製品形状に関係なく点(金型)から点(次の金型)への単純な移動の

    みでよく、自動化が簡単で生産性も高い上に、品質への影響も少ない(図 1.7)。

     ⑤部分品が多く、単独で商品になる例は少ない

     プレス加工品の主要な商品である自動車をはじめ、その他の商品も非常に多

    くの部品が使われている。別々に作られたこれらの部品を組み合わせたとき、

    ピッタリ合わない部分は調整のため、部品の形状および寸法の変更が必要にな

    る(図 1.8)。

     このとき最も安価で容易な方法としてプレス加工品、特に小物部品がその対

    象になりやすい(図 1.9)。これは図面規格に合格していても、機能面で問題

    となる典型的な例であり、図面を変更して修正をするが、図面の変更ができな

    い場合は図面規格と機能の両方を満たす厳しい要求品質が求められる(図

    素材 金型 製品

    図 1.4 製品の形状と寸法は金型で決まる

    区分ごとの数

    大きさ

    大きさごとに区分した数量大きさがばらつく実際に作った製品

    正しい大きさ規格の中心(狙い値)

    図 1.5 個々に加工をする製品の寸法とその分布

    区分ごとの数

    大きさ

    大きさごとに区分した数量同じ金型で加工正しい大きさ規格の中心(狙い値)

    図 1.6 プレス加工品の寸法とその分布

    機械(装置)の動き製品形状製品形状 装置の動き 製品形状

    製品形状のとおり移動するNC工作機械

    製品形状に関係なく点から点へ移動するプレス加工用の装置

    図 1.7 工作機械とプレス加工での自動加工の動き