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欧州環境インサイト 02 EBS (ヨーロッパ・ビジネス・サービス)がお届けする欧州環境市場最新情報 2009 9 世界初の浮体式洋上風力発電の実証試験が 9 月初 め、ノルウェー沖の北海で始まった。海上に浮かぶ構 造の浮体式タービンは、通常の洋上風力より深い海域 で使用できる次世代技術として注目されている。 これはノルウェーの国営石油大手、スタットイルヒ ドロ( StatoilHydro )が手がける「ハイウィンド Hywind)」と呼ばれるプロジェクト。同国南部のカ ルモイ地方の沖 10 キロの海域に容量 2.3MW の浮体式 の風力タービンを設置した。今後 2 年間に渡り、風や 波が構造物にどのような影響を与えるかを調べ、技術 的な課題を洗い出す。浮体式ではこれまでも小型の装 置や発電機を搭載しないタイプの試験はあったが、 2MW 級のフルスケールの実証試験は初めてだ。 設置した実証機は、ブレードの直径 80 メートル、タ ワーの高さ 65 メートル、総重量 5,300 トンという巨大 なもの。タワーを支える浮体構造物は円柱形で、底に 入れてある重りにより、下部の 100 メートル分は海面 下に沈む。これを 3 本のワイヤーで海底につなぎとめ る。ちょうど、小石を入れたペットボトルを縦にして プールに浮かべる要領だ。スタットイルヒドロが海底 油田の分野で培った浮体構造の技術を活用、風力ター ビンはドイツのシーメンス製だ。 成長分野は陸から海へ 基礎を海底に固定する通常の洋上風力発電(着床 式)の場合、設置できる海の深さは最大でも 60 メート ル。それ以上の深海の場合には浮体式が必要となる。 今回の実証機は水面下 100 メートルまで構造物がある 目次 世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始 P.1 シスタイック 自動車向け太陽電池を量産 P.2 英国政府、電気自動車などの導入支援を加速 P.2 EBS 環境レポート最新号紹介 P.3 EBS 企業概要 P.4 1 ため、設置に適した水深は 120700 メートルだ。 風力発電の技術が陸から浅い近海、さらに深い海へ と向かって進んでいるのは、陸から離れた海上ほど強 い一定の風が吹いており、風力発電の効率が高くなる からだ。欧州では風力発電の成長分野は陸上から洋上 へ急速に移っている。比較的遠浅の海に恵まれたドイ ツ沖の北海や英国沿岸では大規模な洋上ウィンドファ ームの計画が相次いでいる。業界団体の欧州風力エネ ルギー協会(EWEA)の予測によれば、欧州の洋上風 力発電容量は 2008 年末時点の 1.5GW から 2020 年に 40GW に急増すると見込まれる。 海底地形や景観上の問題により通常の洋上風力が適 さない海域では浮体式が期待されており、ノルウェー に加えスペイン、フランスなどで検討されている。遠 浅の海の少ない日本にも適しているとされる。 一方で洋上風力発電は、陸地までの海底ケーブル設 置など投資・保守コストがかさむ、台風など強風・波 浪への対策が必要、漁業への影響などの課題もある。 世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始 Øyvind Hagen / StatoilHydro

02 欧州環境インサイト - EBS (UK) Ltd · ebs 環境レポート最新号紹介. p.3. ebs 企業概要. p.4. 4 1 ため、設置に適した水深は120~700 メートルだ。

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欧州環境インサイト 02

欧州環境インサイト 02 号 2009年 9月

■英国三菱商事会社 篠原徹也 氏

環境・新エネ分野で欧州に注目 鳩山新政権による「CO2排出を 2020 年までに 1990 年比で 25%削減」という野心的

な方針は、EU においても高く評価され、本年末のコペンハーゲンでの COP15*でも

日本政府の動静は多いに注目を集めるものと予想されます。ポスト京都議定書の枠組

みに関する議論が一層進展することが期待されます。

EU はこれまで、環境・新エネルギー分野において、他地域・国にとっての先進事例

となるような基準や制度作りで世界をリードしてきましたが、今後も環境、新エネル

ギー政策は EU の重要事項として設定されることは間違いないと思われます。

弊社においても、環境・新エネルギー関連分野は、欧州での重点分野として位置づ

けており、様々な取り組みを行ってきています。最近の事例としては、世界最大級の

総合新エネルギー事業会社である、スペインのアクシオナ社(Acciona S.A.)が開発し

た、世界最大の太陽光発電事業(ポルトガル MOURA 地区の発電所)への参画を行い

ました。今後も太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、バイオマスなど、新たなプロジ

ェクトの発掘や推進を行っていきたいと考えています。 * 国連の気候変動枠組み条約第 15 回締約国会議

■篠原徹也 氏: 現在、英国三菱商事会社にて地域戦略、新規分野開発支援を担当。2005 年 10 月~2008 年 2 月

までドイツ・デュッセルドルフ駐在の後、2008 年 2 月よりロンドンに駐在。

EBS(ヨーロッパ・ビジネス・サービス)がお届けする欧州環境市場最新情報

号 2009 年 9 月

世界初の浮体式洋上風力発電の実証試験が 9 月初

め、ノルウェー沖の北海で始まった。海上に浮かぶ構

造の浮体式タービンは、通常の洋上風力より深い海域

で使用できる次世代技術として注目されている。

これはノルウェーの国営石油大手、スタットイルヒ

ドロ(StatoilHydro)が手がける「ハイウィンド

(Hywind)」と呼ばれるプロジェクト。同国南部のカ

ルモイ地方の沖 10 キロの海域に容量 2.3MW の浮体式

の風力タービンを設置した。今後 2 年間に渡り、風や

波が構造物にどのような影響を与えるかを調べ、技術

的な課題を洗い出す。浮体式ではこれまでも小型の装

置や発電機を搭載しないタイプの試験はあったが、

2MW 級のフルスケールの実証試験は初めてだ。

設置した実証機は、ブレードの直径 80 メートル、タ

ワーの高さ 65 メートル、総重量 5,300 トンという巨大

なもの。タワーを支える浮体構造物は円柱形で、底に

入れてある重りにより、下部の 100 メートル分は海面

下に沈む。これを 3 本のワイヤーで海底につなぎとめ

る。ちょうど、小石を入れたペットボトルを縦にして

プールに浮かべる要領だ。スタットイルヒドロが海底

油田の分野で培った浮体構造の技術を活用、風力ター

ビンはドイツのシーメンス製だ。

成長分野は陸から海へ

基礎を海底に固定する通常の洋上風力発電(着床

式)の場合、設置できる海の深さは最大でも 60 メート

ル。それ以上の深海の場合には浮体式が必要となる。

今回の実証機は水面下 100 メートルまで構造物がある

目次 世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始 P.1

シスタイック 自動車向け太陽電池を量産 P.2

英国政府、電気自動車などの導入支援を加速 P.2

EBS 環境レポート最新号紹介 P.3

EBS 企業概要 P.4

1 4

ため、設置に適した水深は 120~700 メートルだ。

風力発電の技術が陸から浅い近海、さらに深い海へ

と向かって進んでいるのは、陸から離れた海上ほど強

い一定の風が吹いており、風力発電の効率が高くなる

からだ。欧州では風力発電の成長分野は陸上から洋上

へ急速に移っている。比較的遠浅の海に恵まれたドイ

ツ沖の北海や英国沿岸では大規模な洋上ウィンドファ

ームの計画が相次いでいる。業界団体の欧州風力エネ

ルギー協会(EWEA)の予測によれば、欧州の洋上風

力発電容量は 2008 年末時点の 1.5GW から 2020 年に

は 40GW に急増すると見込まれる。

海底地形や景観上の問題により通常の洋上風力が適

さない海域では浮体式が期待されており、ノルウェー

に加えスペイン、フランスなどで検討されている。遠

浅の海の少ない日本にも適しているとされる。

一方で洋上風力発電は、陸地までの海底ケーブル設

置など投資・保守コストがかさむ、台風など強風・波

浪への対策が必要、漁業への影響などの課題もある。

E U R O P A B U S I N E S S S E R V I C E S

EBS (UK) Ltd. 1 Heathcock Court , 415 Strand London WC2R 0NT UK Tel : +44 (0)20 7240 4250 Fax : +44 (0)20 7240 4238 E-mai l : ebs@ebsukl td .com

EBS 東京オフィス:(株)アミット内 〒104-0033 東京都中央区新川 2-1-1 進藤ビル 5F Tel : 03 6280 4707 Fax : 03 6425 7786 Web : h t tp : / /www.ebsukl td .com

事業内容 • 政策・産業・市場調査 • 競合調査 • コンサルティング • 産業レポート出版 ・ビジネスマッチング ・顧客開拓支援 調査実績 (欧州環境関連)

・環境政策 ・地球温暖化政策 ・再生可能エネルギー政策 ・省エネルギー政策 ・新エネルギー政策 ・太陽光発電の動向 ・電気自動車動向 ・WEEE 指令実施状況 ・RoHS 指令実施状況 ・EuP(エコデザイン)指令 ・EU 排出権取引制度と現状 ・バイオ燃料規制改正の経

緯と今後の影響 ・EU の環境・消費者団体、

環境志向自治体の概要 ・先進環境技術動向 ・環境ビジネス ・英国のエネルギー産業

(その他)

・EU の IT 市場・IT 政策 ・各種産業競争力調査 ・欧州技術動向調査 ・レアメタル事業者の動向 ・CEマーク実施状況調査 ・産業クラスター調査 ・欧州の地域開発・誘致策 ・英国の中小企業政策

欧州環境インサイト 02 号 2009年 9月

世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始

Øyvind Hagen / StatoilHydro

EBS の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ EBS(ヨーロッパ・ビジネス・サービス)は 1990 年に英国法人として設立された独立系シンク

タンクです。創立時より政府機関や企業のための市場調査・コンサルティングや企業化調査・運

営事業に携わってきており、現在では日系企業の欧州関連ビジネスや欧州企業の対日投資発掘調

査など、大小多岐に渡るプロジェクトを手掛けています。日本、欧州の民間および政府機関より

高い評価と信頼を得て今日に至っています。欧州各国や EU の産業・経済、政策、社会制度等の

委託調査に加え、各種産業レポートの制作・販売を行っております。また、パートナーサーチや

ビジネスマッチング、顧客開拓支援も行います。スタッフは、各業界のビジネス経験豊かな日本

人と英国人からなるプロ集団で、日本語、英語、ドイツ語、フランス語等を駆使し、日本および

欧州の政策やビジネスに精通しています。 欧州市場に ご興味をお持ちの皆様へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

弊社 EBS では、欧州内の環境ビジネスに関する情報をいち早くお届けするニュースレター「欧

州環境インサイト」(当面年 4 回発行、無料)を発行しています。また、10 月よりニュースメー

ル(当面月 1 回発行、無料)の発行も行います。欧州市場あるいは弊社発行のニュースレター・

ニュースメールまたは産業レポートにご興味をお持ちの方は下記までご連絡下さい。ウェブから

のお申込みも承っております。弊社では将来、より深い情報をお届けする会員サービスをご提供

させて頂く予定です。詳細は追って発表させて頂きます。

さいずへんkささ

シスタイック 自動車向け太陽電池を量産 注目企業インタビュー

ドイツのシスタイック(Systaic)は住宅と調和す

るデザイン性の高い太陽電池モジュールの開発、販売

を手がける。新規事業としてエコカー向けの自動車用

モジュールにも乗り出した。成長に向けての戦略をハ

ンス=ヨルグ・ヘルツェンバイン COO に聞いた。

―事業の概要は?

「Energy Roof」と呼ぶ住宅屋根用モジュール、自

動車用モジュール、大規模太陽光発電プラントの 3 分

野が事業の柱だ。住宅用と自動車用の 2 分野は、現在

はまだ売上は小さいが、これから大きく伸びると期待

している。温暖化対策やエコカーの普及により、双方

とも潜在市場は非常に大きいからだ。現在、発電プラ

ント事業が売上の 9 割以上を占めるが、今後、住宅及

び自動車用モジュールが上昇する一方、発電プラント

は次第に下がり、いずれ逆転するだろう。

―住宅用モジュールの製品戦略は?

当社は美観に優れた製品を得意とする。太陽電池が

社会に広がるにつれ、見た目の美しさは重要だ。当社

は高付加価値の製品に特化したプレミアム戦略を採用

しており、価格は競合他社に比較して確かに高い。た

だし、それが不利になるとは考えていない。製品の付

加価値は高く、設置時やその後のサービスのレベルも

高い。そうした製品を求める需要は必ず存在する。

―自動車向け市場の見通しは?

近い将来、プラグインハイブリッド車(PHV)や

電気自動車(EV)が主流になれば、自動車を取り巻

くエネルギーの使い方は大きく変わるだろう。住宅の

電力と自動車の電力は一体化してくる。例えば、住宅

太陽電池モジュールからの電力が余っている場合には

停車中の自家用車のバッテリーに貯め、逆に住宅用の

電力が足りない場合には自動車太陽電池モジュールか

らの電力を住宅に送るといった具合だ。当社は住宅用

と自動車用太陽光発電モジュールの両方を量産ベース

で手がけており、化石燃料社会から電気を主軸とする

未来社会への変化に対応できる。

―日本市場をどう見るか?

成長性に大いに期待している。日本政府は太陽光発

電を推進する政策を打ち出しており、住宅屋根モジュ

ールと自動車モジュールは高い成長ポテンシャルを持

っている。もちろん発電プラント事業の可能性もある

が、これは大規模工場の屋根などに限られるだろう。

日本にはエレクトロニクスや自動車分野でリーディン

グ企業が多い。例えばハイブリッド車でも日本企業が

先行している。一方、当社は自動車用太陽電池モジュ

ールを量産する世界で唯一の会社。太陽光発電の分野

で、日本とドイツ企業が協力できることは多い。 (インタビュー全文と同社の詳しい解説は、産業レポ

ート「環境ビジネス 2009-10 年版」に掲載)

英国政府が EV など低炭素自動車(LCV:Low Carbon Vehicle)の普及に向けて本腰を入れ始めた。

LCV には EV のほかハイブリッド車や PHV、燃料電

池車などがあるが、このうち今後数年で新たな市場拡

大が見込まれているのが PHV と EV だ。ただ、とも

に車両価格が高いうえ、特に EV では外出先で電池を

充電するための充電インフラが欠かせないのが難点と

なっている。そのため政府が今年の 4 月から 9 月にか

けて次々と打ち出した支援策でも、この 2 点に焦点を

あてている。

まず車両を買いやすくするため補助金制度が導入さ

れる。EV または PHV の新規購入時に 2,000~5,000ポンドを支給するもので、総額では約 2 億 3,000 万ポ

ンドに上る。2011 年から開始の予定だ。充電インフ

ラの整備では 2008 年 10 月に 1,000 万ポンドの予算

を計上したが、今年 4 月にはこれを 2,000 万ポンドに

倍増。さらに 7 月 15 日に発表した「低炭素産業戦

略」の中には 1,000 万ポンドの追加が盛り込まれた。

北東イングランドを重点支援地域に指定 「低炭素産業戦略」は、再生可能エネルギーへの支

援拡大とともに LCV 促進もうたったものだが、具体

2 3

英国政府、電気自動車などの導入支援を加速

ハンス=ヨルグ・ヘルツェンバイン COO

画像は「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版」です。

詳細目次、サンプルページは弊社ウェブにてご覧いただけます。

www.ebsukltd.com

EBS 産業レポート最新号紹介

策の 1 つとして低炭素経済地域(LCEA: Low Carbon Economic Area)を設けて重点的に支援することを打ち

出している。その第 1 号に選ばれたのが北東イングラ

ンドで、自動車産業の集積地という背景から LCV を推

進する LCEA に決まった。これと併せて同地域に生産

拠点を持つ日産自動車が、2010 年半ばから EV 用のリ

チウムイオン電池生産を開始すると発表。今後 5 年間

で 2 億ポンドを投じる計画だが、これに続いて同地で

EV の車両生産にも乗り出すと見込まれている。北東イ

ングランドでは充電インフラの整備に加えて、研究開

発施設の創設、LCV の生産・メンテナンスを専門とす

るトレーニングセンターの設置が進められ、国内のモ

デル地域となる予定だ。

こうした勢いに乗って 9 月 9・10 日にはロンドン近

郊のミルブルックで LCV の会議と展示会が開かれ、自

動車メーカーやサプライヤー、大学、研究機関、地方

自治体など国内外の LCV 関係者が一堂に集まった。も

ちろんこれも政府の後押しによるものだ。この場では

充電インフラ整備のためロンドンやグラスゴー、バー

ミンガム、北東イングランドのニューキャッスルなど 9都市に 1,100 万ポンドを投じることも発表。各都市を

つなげば国内の「インフラ・ハイウェー」が構築でき

るわけだ。2015 年に EV を 5 万台以上導入という目標

に向け、準備は着々と進んでいる。 (欧州を中心とする電気自動車の動向は、産業レポー

ト「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版」に掲載)

「これだけは知っておきたい EU 環境規制 2009-10 年版」 94 頁 好評発売中

300 ポンド(税別)/360 ユーロ(税別)/49,350 円(税込)

地球温暖化対策は EU 環境政策の中で産業界にとってま

すます重要となってきた。2 年にわたる協議の末、2008年末に「気候変動・エネルギー政策パッケージ」で 6 つの

指令・規則が採択された。温室効果ガス排出削減、再生可

能エネルギー、エネルギー効率をキーとする地球温暖化対

策、エコデザインや WEEE、廃車指令を通した製品ライ

フサイクル、REACH の EU 環境三大規制分野の最新動向

を分かりやすく解説する。

■EU の環境規制を支える基本政策 ■製品ライフサイクル規制(エコデザイン指令、WEEE・RoHS 改正) ■化学物質規制 REACH の基本 ■気候変動・エネルギー政策(EU 排出権取引制度、自動車排ガス規制、再生可能エネルギー促進指令等)

「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版

-始動する電気自動車」

128 頁 好評発売中 350 ポンド(税別)/420 ユーロ(税別)/58,800 円(税込)

世界的な景気悪化を受け、欧州でも 2008 年下半期から

販売台数と生産の大幅な縮小が続いているが、この試練が

自動車業界の大きな転換点になろうとしている。EU や各

国政府の景気刺激策に後押しされ電気自動車(EV)の導

入が一気に始動し、エコカーの開発が加速している。本書

では過去 1 年間の欧州自動車業界の動向とともに、EV 関

連のベンチャー企業からエネルギー会社や部品メーカーを

巻き込んだ欧州の地殻変動に焦点をあてる。

■欧州の電気自動車の現状と見通し ■電気自動車の普及を支える行政・業界の事例検証 米テスラモータース、英エレクトロモーティブ等注目企業インタビュー

■統計で見る欧州の自動車市場 ■大転換期で模索する乗用車メーカー各社の最新動向

「EU で注目の環境ビジネス 2009-10 年版」 約 80 頁 10 月上旬発売予定

300 ポンド(税別)/360 ユーロ(税別)/49,350 円(税込)

太陽光や風力、バイオマス利用など欧州の環境ビジネス

は依然世界をリードしている。本書は再生可能エネルギー

を中心に、欧州環境市場の主な分野別市場規模や動向を解

説すると同時に、伸び盛りの注目企業にスポットを当て、

インタビューによりその成長戦略を明らかにする。巻末に

は欧州の主な環境企業のデータをまとめた。欧州環境市場

と企業の今がわかる、環境ビジネス従事者必携の一冊。

■欧州再生可能エネルギー市場の最新動向 ■これから伸びる環境ビジネス ■欧州企業 50 社プロファイル ■注目企業の素顔に迫る シスタイック(ドイツ)、アクシオナ(スペイン)、スウェイ(ノルウェー)等の欧州の成長企業にインタビュー

さいずへんkささ

シスタイック 自動車向け太陽電池を量産 注目企業インタビュー

ドイツのシスタイック(Systaic)は住宅と調和す

るデザイン性の高い太陽電池モジュールの開発、販売

を手がける。新規事業としてエコカー向けの自動車用

モジュールにも乗り出した。成長に向けての戦略をハ

ンス=ヨルグ・ヘルツェンバイン COO に聞いた。

―事業の概要は?

「Energy Roof」と呼ぶ住宅屋根用モジュール、自

動車用モジュール、大規模太陽光発電プラントの 3 分

野が事業の柱だ。住宅用と自動車用の 2 分野は、現在

はまだ売上は小さいが、これから大きく伸びると期待

している。温暖化対策やエコカーの普及により、双方

とも潜在市場は非常に大きいからだ。現在、発電プラ

ント事業が売上の 9 割以上を占めるが、今後、住宅及

び自動車用モジュールが上昇する一方、発電プラント

は次第に下がり、いずれ逆転するだろう。

―住宅用モジュールの製品戦略は?

当社は美観に優れた製品を得意とする。太陽電池が

社会に広がるにつれ、見た目の美しさは重要だ。当社

は高付加価値の製品に特化したプレミアム戦略を採用

しており、価格は競合他社に比較して確かに高い。た

だし、それが不利になるとは考えていない。製品の付

加価値は高く、設置時やその後のサービスのレベルも

高い。そうした製品を求める需要は必ず存在する。

―自動車向け市場の見通しは?

近い将来、プラグインハイブリッド車(PHV)や

電気自動車(EV)が主流になれば、自動車を取り巻

くエネルギーの使い方は大きく変わるだろう。住宅の

電力と自動車の電力は一体化してくる。例えば、住宅

太陽電池モジュールからの電力が余っている場合には

停車中の自家用車のバッテリーに貯め、逆に住宅用の

電力が足りない場合には自動車太陽電池モジュールか

らの電力を住宅に送るといった具合だ。当社は住宅用

と自動車用太陽光発電モジュールの両方を量産ベース

で手がけており、化石燃料社会から電気を主軸とする

未来社会への変化に対応できる。

―日本市場をどう見るか?

成長性に大いに期待している。日本政府は太陽光発

電を推進する政策を打ち出しており、住宅屋根モジュ

ールと自動車モジュールは高い成長ポテンシャルを持

っている。もちろん発電プラント事業の可能性もある

が、これは大規模工場の屋根などに限られるだろう。

日本にはエレクトロニクスや自動車分野でリーディン

グ企業が多い。例えばハイブリッド車でも日本企業が

先行している。一方、当社は自動車用太陽電池モジュ

ールを量産する世界で唯一の会社。太陽光発電の分野

で、日本とドイツ企業が協力できることは多い。 (インタビュー全文と同社の詳しい解説は、産業レポ

ート「環境ビジネス 2009-10 年版」に掲載)

英国政府が EV など低炭素自動車(LCV:Low Carbon Vehicle)の普及に向けて本腰を入れ始めた。

LCV には EV のほかハイブリッド車や PHV、燃料電

池車などがあるが、このうち今後数年で新たな市場拡

大が見込まれているのが PHV と EV だ。ただ、とも

に車両価格が高いうえ、特に EV では外出先で電池を

充電するための充電インフラが欠かせないのが難点と

なっている。そのため政府が今年の 4 月から 9 月にか

けて次々と打ち出した支援策でも、この 2 点に焦点を

あてている。

まず車両を買いやすくするため補助金制度が導入さ

れる。EV または PHV の新規購入時に 2,000~5,000ポンドを支給するもので、総額では約 2 億 3,000 万ポ

ンドに上る。2011 年から開始の予定だ。充電インフ

ラの整備では 2008 年 10 月に 1,000 万ポンドの予算

を計上したが、今年 4 月にはこれを 2,000 万ポンドに

倍増。さらに 7 月 15 日に発表した「低炭素産業戦

略」の中には 1,000 万ポンドの追加が盛り込まれた。

北東イングランドを重点支援地域に指定 「低炭素産業戦略」は、再生可能エネルギーへの支

援拡大とともに LCV 促進もうたったものだが、具体

2 3

英国政府、電気自動車などの導入支援を加速

ハンス=ヨルグ・ヘルツェンバイン COO

画像は「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版」です。

詳細目次、サンプルページは弊社ウェブにてご覧いただけます。

www.ebsukltd.com

EBS 産業レポート最新号紹介

策の 1 つとして低炭素経済地域(LCEA: Low Carbon Economic Area)を設けて重点的に支援することを打ち

出している。その第 1 号に選ばれたのが北東イングラ

ンドで、自動車産業の集積地という背景から LCV を推

進する LCEA に決まった。これと併せて同地域に生産

拠点を持つ日産自動車が、2010 年半ばから EV 用のリ

チウムイオン電池生産を開始すると発表。今後 5 年間

で 2 億ポンドを投じる計画だが、これに続いて同地で

EV の車両生産にも乗り出すと見込まれている。北東イ

ングランドでは充電インフラの整備に加えて、研究開

発施設の創設、LCV の生産・メンテナンスを専門とす

るトレーニングセンターの設置が進められ、国内のモ

デル地域となる予定だ。

こうした勢いに乗って 9 月 9・10 日にはロンドン近

郊のミルブルックで LCV の会議と展示会が開かれ、自

動車メーカーやサプライヤー、大学、研究機関、地方

自治体など国内外の LCV 関係者が一堂に集まった。も

ちろんこれも政府の後押しによるものだ。この場では

充電インフラ整備のためロンドンやグラスゴー、バー

ミンガム、北東イングランドのニューキャッスルなど 9都市に 1,100 万ポンドを投じることも発表。各都市を

つなげば国内の「インフラ・ハイウェー」が構築でき

るわけだ。2015 年に EV を 5 万台以上導入という目標

に向け、準備は着々と進んでいる。 (欧州を中心とする電気自動車の動向は、産業レポー

ト「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版」に掲載)

「これだけは知っておきたい EU 環境規制 2009-10 年版」 94 頁 好評発売中

300 ポンド(税別)/360 ユーロ(税別)/49,350 円(税込)

地球温暖化対策は EU 環境政策の中で産業界にとってま

すます重要となってきた。2 年にわたる協議の末、2008年末に「気候変動・エネルギー政策パッケージ」で 6 つの

指令・規則が採択された。温室効果ガス排出削減、再生可

能エネルギー、エネルギー効率をキーとする地球温暖化対

策、エコデザインや WEEE、廃車指令を通した製品ライ

フサイクル、REACH の EU 環境三大規制分野の最新動向

を分かりやすく解説する。

■EU の環境規制を支える基本政策 ■製品ライフサイクル規制(エコデザイン指令、WEEE・RoHS 改正) ■化学物質規制 REACH の基本 ■気候変動・エネルギー政策(EU 排出権取引制度、自動車排ガス規制、再生可能エネルギー促進指令等)

「欧州自動車産業の最新動向 2009-10 年版

-始動する電気自動車」

128 頁 好評発売中 350 ポンド(税別)/420 ユーロ(税別)/58,800 円(税込)

世界的な景気悪化を受け、欧州でも 2008 年下半期から

販売台数と生産の大幅な縮小が続いているが、この試練が

自動車業界の大きな転換点になろうとしている。EU や各

国政府の景気刺激策に後押しされ電気自動車(EV)の導

入が一気に始動し、エコカーの開発が加速している。本書

では過去 1 年間の欧州自動車業界の動向とともに、EV 関

連のベンチャー企業からエネルギー会社や部品メーカーを

巻き込んだ欧州の地殻変動に焦点をあてる。

■欧州の電気自動車の現状と見通し ■電気自動車の普及を支える行政・業界の事例検証 米テスラモータース、英エレクトロモーティブ等注目企業インタビュー

■統計で見る欧州の自動車市場 ■大転換期で模索する乗用車メーカー各社の最新動向

「EU で注目の環境ビジネス 2009-10 年版」 約 80 頁 10 月上旬発売予定

300 ポンド(税別)/360 ユーロ(税別)/49,350 円(税込)

太陽光や風力、バイオマス利用など欧州の環境ビジネス

は依然世界をリードしている。本書は再生可能エネルギー

を中心に、欧州環境市場の主な分野別市場規模や動向を解

説すると同時に、伸び盛りの注目企業にスポットを当て、

インタビューによりその成長戦略を明らかにする。巻末に

は欧州の主な環境企業のデータをまとめた。欧州環境市場

と企業の今がわかる、環境ビジネス従事者必携の一冊。

■欧州再生可能エネルギー市場の最新動向 ■これから伸びる環境ビジネス ■欧州企業 50 社プロファイル ■注目企業の素顔に迫る シスタイック(ドイツ)、アクシオナ(スペイン)、スウェイ(ノルウェー)等の欧州の成長企業にインタビュー

欧州環境インサイト 02

欧州環境インサイト 02 号 2009年 9月

■英国三菱商事会社 篠原徹也 氏

環境・新エネ分野で欧州に注目 鳩山新政権による「CO2排出を 2020 年までに 1990 年比で 25%削減」という野心的

な方針は、EU においても高く評価され、本年末のコペンハーゲンでの COP15*でも

日本政府の動静は多いに注目を集めるものと予想されます。ポスト京都議定書の枠組

みに関する議論が一層進展することが期待されます。

EU はこれまで、環境・新エネルギー分野において、他地域・国にとっての先進事例

となるような基準や制度作りで世界をリードしてきましたが、今後も環境、新エネル

ギー政策は EU の重要事項として設定されることは間違いないと思われます。

弊社においても、環境・新エネルギー関連分野は、欧州での重点分野として位置づ

けており、様々な取り組みを行ってきています。最近の事例としては、世界最大級の

総合新エネルギー事業会社である、スペインのアクシオナ社(Acciona S.A.)が開発し

た、世界最大の太陽光発電事業(ポルトガル MOURA 地区の発電所)への参画を行い

ました。今後も太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、バイオマスなど、新たなプロジ

ェクトの発掘や推進を行っていきたいと考えています。 * 国連の気候変動枠組み条約第 15 回締約国会議

■篠原徹也 氏: 現在、英国三菱商事会社にて地域戦略、新規分野開発支援を担当。2005 年 10 月~2008 年 2 月

までドイツ・デュッセルドルフ駐在の後、2008 年 2 月よりロンドンに駐在。

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号 2009 年 9 月

世界初の浮体式洋上風力発電の実証試験が 9 月初

め、ノルウェー沖の北海で始まった。海上に浮かぶ構

造の浮体式タービンは、通常の洋上風力より深い海域

で使用できる次世代技術として注目されている。

これはノルウェーの国営石油大手、スタットイルヒ

ドロ(StatoilHydro)が手がける「ハイウィンド

(Hywind)」と呼ばれるプロジェクト。同国南部のカ

ルモイ地方の沖 10 キロの海域に容量 2.3MW の浮体式

の風力タービンを設置した。今後 2 年間に渡り、風や

波が構造物にどのような影響を与えるかを調べ、技術

的な課題を洗い出す。浮体式ではこれまでも小型の装

置や発電機を搭載しないタイプの試験はあったが、

2MW 級のフルスケールの実証試験は初めてだ。

設置した実証機は、ブレードの直径 80 メートル、タ

ワーの高さ 65 メートル、総重量 5,300 トンという巨大

なもの。タワーを支える浮体構造物は円柱形で、底に

入れてある重りにより、下部の 100 メートル分は海面

下に沈む。これを 3 本のワイヤーで海底につなぎとめ

る。ちょうど、小石を入れたペットボトルを縦にして

プールに浮かべる要領だ。スタットイルヒドロが海底

油田の分野で培った浮体構造の技術を活用、風力ター

ビンはドイツのシーメンス製だ。

成長分野は陸から海へ

基礎を海底に固定する通常の洋上風力発電(着床

式)の場合、設置できる海の深さは最大でも 60 メート

ル。それ以上の深海の場合には浮体式が必要となる。

今回の実証機は水面下 100 メートルまで構造物がある

目次 世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始 P.1

シスタイック 自動車向け太陽電池を量産 P.2

英国政府、電気自動車などの導入支援を加速 P.2

EBS 環境レポート最新号紹介 P.3

EBS 企業概要 P.4

1 4

ため、設置に適した水深は 120~700 メートルだ。

風力発電の技術が陸から浅い近海、さらに深い海へ

と向かって進んでいるのは、陸から離れた海上ほど強

い一定の風が吹いており、風力発電の効率が高くなる

からだ。欧州では風力発電の成長分野は陸上から洋上

へ急速に移っている。比較的遠浅の海に恵まれたドイ

ツ沖の北海や英国沿岸では大規模な洋上ウィンドファ

ームの計画が相次いでいる。業界団体の欧州風力エネ

ルギー協会(EWEA)の予測によれば、欧州の洋上風

力発電容量は 2008 年末時点の 1.5GW から 2020 年に

は 40GW に急増すると見込まれる。

海底地形や景観上の問題により通常の洋上風力が適

さない海域では浮体式が期待されており、ノルウェー

に加えスペイン、フランスなどで検討されている。遠

浅の海の少ない日本にも適しているとされる。

一方で洋上風力発電は、陸地までの海底ケーブル設

置など投資・保守コストがかさむ、台風など強風・波

浪への対策が必要、漁業への影響などの課題もある。

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欧州環境インサイト 02 号 2009年 9月

世界初の浮体式洋上風力、ノルウェーで実証試験開始

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